説明

真円度測定装置及びその心ずれ量補正方法

【課題】心ずれ量を算出して補正することにより、基準測定物とは異なる直径値の測定物の直径値を正確に算出する。
【解決手段】測定物の中心と回転の中心を一致させて、測定物を検出器に対して相対的に回転させ、測定物の真円度を測定する真円度測定装置において、直径値の異なる複数の基準測定物26−1、26−2をそれぞれ測定し、その測定差を検出する手段と、前記測定差に基づいて、前記基準測定物26−1、26−2の母線と前記検出器の前記基準測定物に対する検出点とのずれ量である心ずれ量Yを算出する手段と、前記算出した心ずれ量Yに基づいて、任意の測定物の測定値を補正する手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真円度測定装置及びその心ずれ量補正方法に係り、特に、真円度測定装置の検出器の測定子を測定物に当接させる検出点と測定物の母線とのずれを示す心ずれ量を算出して心ずれ量の補正をする機能を備えた真円度測定装置及びその心ずれ量補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、円筒物などの円形の物体の真円度を測定する真円度測定装置(真円度測定機)が知られている。この真円度測定装置は、例えば、円筒物などの円形の断面を有する測定物(ワーク)を回転可能な載置台の上に載置して、ワークの表面に先端子(測定子)を接触させ、ワークの回転に伴う先端子の変位を測定して検出することにより円形断面の外形形状を測定する。
【0003】
例えば、特許文献1には、真円度測定機において、円柱状ワークに対して第1の検出器の接触子を水平に、かつ直径方向に案内する水平腕と、この腕の先端に設けられて第1の検出器の接触子を直径の位置の2点に向かって接触可能とした第1の検出器の支持枠と、水平腕の水平移動量を検出する径読取りの第2の検出器とから構成される真円度測定機の直径測定装置が記載されている。この装置は、まずマスターピースを回転台の上にセットし、第1の検出器の接触子をマスターピースの右側面に当て、第2の検出器の読みを求め、次いで接触子をマスターピースの左側面に当てて、第2の検出器の読みを求め、これら第2の検出器の2つの読みからマスタの既知寸法によりこの装置の誤差値を算出しておく。そして、マスタの代わりにワークをセットし、同様にして直径寸法を測定して、誤差補正を行っている。
【0004】
また、特許文献2には、真円度測定機の原点情報取得及び測定物の表面形状を測定する検出器の校正を行う真円度測定機用基準治具であって、この基準治具は、回転テーブル上のXYテーブルの上面に取り外し可能に載置され、段付きの円板状に形成されたた台座と、台座の上段部にプローブ(検出器)の感度校正を可能とする校正マスタが設けられ、校正マスタの上方に、その最下面、最上面のX軸方向及び右側面、左側面のZ軸方向の測定可が可能なように配置された原点ボール(基準球)を備え、プローブの各姿勢におけるプローブに設けられたスタイラス(センサ)の位置ずれを求めて補正値とするものが記載されている。これは、真円度測定機用基準治具を測定物回転機構の上に載せ、真円度測定機の検出器のセンサを基準球に接触させることで真円度測定機の原点情報を得るとともに、検出器のセンサを校正マスタに関与させることで検出器の感度校正を行うようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−259211号公報
【特許文献2】特許第4163545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、真円度測定装置のテーブル上に測定物を設置して検出器の測定子を測定物に当接させて検出を行う際、測定物の母線と測定子を測定物に当接させる検出点とを一致させることが非常に難しく、従来基準となる測定物の直径値と異なる直径値の測定物については、正確な直径値を測定することができないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みて成されたものであり、測定物の母線と検出点とのずれ量である心ずれ量を算出して補正することにより基準となる測定物の直径値とは異なる直径値を有する測定物であっても正確な直径値を算出することのできる真円度測定装置及びその心ずれ量補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、測定物の中心と回転の中心を一致させて、測定物を検出器に対して相対的に回転させ、測定物の真円度を測定する真円度測定装置において、直径値の異なる複数の基準測定物をそれぞれ測定し、その測定差を検出する手段と、前記測定差に基づいて、前記基準測定物の母線と前記検出器の前記基準測定物に対する検出点とのずれ量である心ずれ量を算出する手段と、前記算出した心ずれ量に基づいて、任意の測定物の測定値を補正する手段と、を備えたことを特徴とする真円度測定装置を提供する。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、測定物の母線と検出点のずれである心ずれ量を算出して補正することにより、基準測定物の直径値と異なる直径値を有する測定物であっても、その正確な直径値を算出することが可能となる。
【0010】
また、請求項2に示すように、前記測定物の中心とは、測定の際、前記検出器が接触する前記測定物の外周の点が形成する図形の最小二乗円の中心であることを特徴とする。
【0011】
これにより、測定物が真円でない場合であっても、なるべく真円に近い形で正確な測定を行うことができる。
【0012】
また、同様に前記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、測定物の中心と回転の中心を一致させて測定物を検出器に対して相対的に回転させるようにして、直径値の異なる複数の基準測定物をそれぞれ測定して、その測定差を検出する測定差検出工程と、前記検出した測定差に基づいて、前記基準測定物の母線と前記検出器の前記基準測定物に対する検出点とのずれ量である心ずれ量を算出する心ずれ量算出工程と、測定物の中心と回転の中心を一致させて測定物を検出器に対して相対的に回転させるようにして、任意の測定物を測定して得られた測定値を、前記算出した心ずれ量に基づいて補正する工程と、を備えたことを特徴とする真円度測定装置における心ずれ量補正方法を提供する。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、測定物の母線と検出点のずれである心ずれ量を算出して補正することにより、基準測定物の直径値と異なる直径値を有する測定物であっても、その正確な直径値を算出することが可能となる。
【0014】
また、請求項4に示すように、前記測定物の中心とは、測定の際、前記検出器が接触する前記測定物の外周の点が形成する図形の最小二乗円の中心であることを特徴とする。
【0015】
これにより、測定物が真円でない場合であっても、なるべく真円に近い形で正確な測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、測定物の母線と検出点のずれである心ずれ量を算出して補正することにより、基準測定物の直径値と異なる直径値を有する測定物であっても、その正確な直径値を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る真円度測定装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の真円度測定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】検出器回転形真円度測定装置の測定機本体の外観を示す斜視図である。
【図4】真円度測定装置で測定物の測定を行う際心ずれのない理想的な場合を示す平面図である。
【図5】真円度測定装置で測定物の測定を行う際心ずれがある場合を示す平面図である。
【図6】既知の異なる直径を有する2つの基準測定物を測定して心ずれ量を求める様子を示す平面図である。
【図7】測定した半径の値を算出した心ずれ量Yを用いて補正する方法を示す平面図である。
【図8】測定物の外径あるいは内径を測定した値を心ずれ量で補正する場合を示す平面図である。
【図9】既知の異なる直径を有する3つの基準測定物を測定して心ずれ量及び先端球の直径を求める様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る真円度測定装置及びその心ずれ量補正方法について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る真円度測定装置の外観を示す斜視図である。
【0020】
この真円度測定装置は、測定機本体と演算処理装置とから構成されており、図1には、真円度測定装置10の測定機本体11を示す。
【0021】
測定機本体11は、ベース(基台)14上に測定物(ここでは図示省略)を載置する載物台(XY/傾斜テーブル)12が設けられている。載物台(XY/傾斜テーブル)12は、X方向微動つまみ22及びY方向微動つまみ24を備えている。X方向微動つまみ22及びY方向微動つまみ24はそれぞれ載物台移動軸に連結しており、これらの微動つまみ22、24によって載物台12をX方向及びY方向に微動送りすることができ、載物台12の水平位置を微調整することができるようになっている。
【0022】
また、載物台12には、X方向傾斜つまみ25及びY方向傾斜つまみ23が設けられておりX方向及びY方向に傾斜調整がされるようになっている。
【0023】
また、載物台12の下部には回転機構15が設けられている。回転機構15は、載物台12を回転駆動することにより載物台12の上に載置された測定物を回転させるものである。
【0024】
またベース14上には上方に略垂直に延びるコラム(支柱)27が立設されており、コラム27にはスライダ28が上下動可能に装着されている。スライダ28には水平アーム(径方向移動軸)29が水平方向に駆動可能に装着されている。
【0025】
水平アーム29の先端には、検出器30が設けられ、検出器30は測定子31を備えている。真円度測定装置10は、この測定子31を載物台12上に載置された測定物に接触させて測定物を測定し、測定で得られる検出信号を検出器30を介して演算処理装置に送り演算処理装置で処理するようになっている。なお、水平アーム29の先端には心ずれ調整機構32が設置されている。
【0026】
図2に、真円度測定装置10の構成を表すブロック図を示す。
【0027】
図2に示すように、真円度測定装置10は、測定機本体11と演算処理装置13で構成される。測定機本体11については、図1の説明と重複する点もあるが再度説明することとする。
【0028】
測定機本体11は、ベース14上に回転機構15によって回転する載物台12が設けられている。載物台12には、水平方向の微調整及び垂直方向に対する傾斜調整を行うための、X方向微動つまみ22、Y方向微動つまみ24及びX方向傾斜つまみ25、Y方向傾斜つまみ23が設けられている。
【0029】
載物台12は、軸受16、エンコーダ18、モータ20等を備えた回転機構15によって回転される。載物台12は、軸受16を介してモータ20によって回転可能に支持されている。モータ20の回転軸にはエンコーダ18が取り付けられ、回転角が高精度に読み込まれるようになっている。軸受16は、例えば、超高精度の静圧エアーベアリングが用いられ、載物台12は非常に高い回転精度(例えば、0.005μm)で回転される。
【0030】
またベース14上に立設されたコラム(支柱)27にはスライダ28が上下動可能に装着され、スライダ28には水平アーム(径方向移動軸)29が水平方向に駆動可能に装着されている。そして、水平アーム29の先端には、検出器30が設けられ、検出器30には測定子31が設置されている。また、検出器30には差動変圧器を用いた電気マイクロメータが使用されており、測定物26に接触する測定子31の変位量を検出するようになっている。
【0031】
測定時には、測定物26を載物台12上に載せ、測定子31を測定物に接触させて測定を行う。測定で得られる検出信号は、検出器30を介して演算処理装置13に送られる。
【0032】
演算処理装置13は、増幅器33、A/D変換器34、演算/処理手段36及びこれらの制御を行うためにメモリに記憶されたプログラム38からなり、さらに処理結果を表示する表示手段を備えている。
【0033】
測定子31を測定物26に接触させて得られた検出信号は検出器30を介して演算処理装置13に送られる。演算処理装置13では、まず増幅器33で増幅された後、A/D変換器34によってデジタル信号に変換されて、演算/処理手段36に入力される。
【0034】
この真円度測定装置10で測定物26の真円度等を測定する場合には、測定物26を載物台12上に載置した後、最初に載物台12の回転中心と測定物26の中心との偏心補正と、載物台12の回転軸に対する測定物26の傾斜補正を行う。これにより、載物台12の回転中心と測定物26の中心とは一致しているものとする。
【0035】
次に、検出器30の測定子31を測定物26の側面に接触させた状態で、載物台12がモータ20によって1回転され、測定物26の側面1周分のデータがアナログ電圧値として採取される。アナログ電圧値として得られた検出信号は、上述したように増幅器33で増幅され、A/D変換器34でデジタル信号に変換されて、演算/処理手段36に入力される。演算/処理手段36は、エンコーダ18から入力される回転角度データと、検出器30で検出された変位データとから測定物26の真円度を演算し、演算結果を表示手段40に表示する。
【0036】
なお、以上説明してきた真円度測定装置10は、測定物26を載せた載物台12が回転し、測定子31は前後方向(水平アーム29の移動方向)及び上下方向(スライダ28の移動方向)に移動するだけで、測定子31は回転しない、載物台回転形の真円度測定装置であったが、本発明は、このような載物台回転形真円度測定装置に限定されるものではない。載物台は回転せず、測定子が前後方向及び上下方向に移動するとともに、測定子が測定物の回りを回転して測定する、検出器回転形の真円度測定装置にも適用可能である。
【0037】
図3は、検出器回転形真円度測定装置の測定機本体の外観を示す斜視図である。
【0038】
図3に示すように、この真円度測定装置100の測定機本体111は、ベース114上に測定物を載せる載物台112が設けられている。載物台112は、X方向微動つまみ122及びY方向微動つまみ124を有している。なお、ここでは省略したが、前の例と同様にX方向傾斜つまみ及びY方向傾斜つまみを備えていてもよい。
【0039】
またベース114上には上方に略垂直に延びるコラム(支柱)127が立設されており、コラム127にはスライダ128が上下動可能に装着されている。スライダ128は、コラム127に設けられた送り装置150によって上下に移動されるようになっている。またスライダ128の下側には水平アーム(径方向移動軸)129が取り付けられており、水平アーム129には検出器130及び測定子131が設置されている。
【0040】
真円度測定装置100は、測定子131を載物台112上に載置された測定物に接触させながら、測定子131を測定物の回りに回転させて測定物を測定する。測定で得られる検出信号は、検出器130を介して図示を省略した演算処理装置に送られ、演算処理装置で処理されるようになっている。なお、水平アーム129と検出器130との間には心ずれ調整機構132が設置されている。
【0041】
以下、本実施形態の真円度測定装置10(あるいは100)による心ずれ量の算出とこれを用いた心ずれ量補正方法について説明する。
【0042】
真円度測定時には、図4に示すように、測定子31の先端球31aを載物台12(ここでは図示省略)上に載せた測定物26に接触させる。
【0043】
そして、載物台回転形の真円度測定装置10の場合には、図4に矢印Aで示すように載物台12を回転することによって測定物26を回転する。また、検出器回転形の真円度測定装置100の場合には、図4に矢印Bで示すように測定子31(先端球31a)を測定物26の外周に沿って回転させる。なお、測定物26の中心と載物台12の回転中心とは一致しているものと仮定する。また、ここで測定物26の中心とは、測定物26の外周を形成する図形(正確に言うと、先端球31aを接触させて測定する点(検出点)を含み載物台12の表面に平行な断面の外周の図形)の最小二乗円の中心であるとする。
【0044】
このとき、いずれの場合も測定子31の先端球31aが測定物26と接触しているようにする。例えば、載物台回転形の真円度測定装置10の場合には、図4に矢印Dで示すように、先端球31aを測定物26の外表面に常に押し当てながら、測定物26を矢印A方向に回転する。このとき、測定物26が真円でなく、測定物26の回転につれて半径が変化すると、先端球31aは回転中心側に寄って行ったりあるいは離れたり、矢印D方向内でその位置が変化する。
【0045】
この先端球31aの位置の変化を検出器30を介して検出し、演算/処理装置13で処理することにより測定物26の真円度が検出される。
【0046】
図4に示すように、測定子31の先端球31aを、矢印Dが示す検出方向に移動して測定物26と接触させて測定を行う検出点Pが、測定物26の中心を通る母線Mと一致している場合には、正確に測定物26の真円度を測定することができる。
【0047】
しかし、実際の測定においては、測定子31の先端球31aの測定物26に対する検出点Pが測定物26の母線Mと一致しているとは限らない。
【0048】
装置によっては、例えば図5に示すように、測定子31の先端球31aが測定物26と接触する検出点Qが、測定物26の母線Mと一致しない場合がある。この場合には、測定物26の母線Mと一致する検出点Pと、実際の測定での検出点Qとにおける、先端球31aの検出方向Dに関する先端球31aの中心間の距離εだけ測定誤差が生じる。
【0049】
また、検出点Pと検出点Qにおける、検出方向Dと垂直な方向に関する先端球31aの中心間の距離Yが、このときの検出点Qの母線Mからのずれを表しており、この値Yが心ずれ量である。
【0050】
次にこの心ずれ量Yを求める方法について説明する。
【0051】
以下述べる方法は、直径値の異なる2つの基準測定物(直径値が既知)を測定し、その測定値から心ずれ量Yを算出するものである。
【0052】
図6に示すように、既知の直径値の異なる2つの基準測定物26−1及び26−2をそれぞれ真円度測定装置10で測定する。基準測定物26−1の直径値をD、基準測定物26−2の直径値をDとする。また、先端球31aの直径をdとする。
【0053】
ここで、測定子31の先端球31aが、心ずれがなく、基準測定物26−1と正しく接触したと仮定した場合の検出点をPとする。すなわち検出点Pは基準測定物26−1の母線Mと一致しているとする。また、このときの検出値をRとする。Rは、基準測定物26−1の半径(D/2)と先端球31aの半径(d/2)の和、R=(D/2)+(d/2)となる。
【0054】
また同様に、測定子31の先端球31aが、心ずれがなく、基準測定物26−2と正しく接触したと仮定した場合の検出点をPとする。すなわち検出点Pは基準測定物26−2の母線M(基準測定物26−1の母線と同じ)と一致している。このときの検出値をRとすると、Rは、基準測定物26−2の半径(D/2)と先端球31aの半径(d/2)の和、R=(D/2)+(d/2)となる。
【0055】
しかし、実際の測定においては心ずれが存在する。心ずれが存在する場合、測定子31の先端球31aが基準測定物26−1と接触する検出点をQとし、そのときの検出値をR’とする。同様に実際の測定において、心ずれが存在する場合、測定子31の先端球31aが基準測定物26−2と接触する検出点をQとし、そのときの検出値をR’とする。また、実際の測定における先端球31aの中心と測定物26−1(26−2)の母線Mとの距離(心ずれ量)をYとする。
【0056】
このとき図6からわかるように、検出値R’及びR’は、それぞれ以下の式(1)及び(2)で求められる。
【0057】
’=√[{(D/2)+(d/2)}−Y] …(1)
’=√[{(D/2)+(d/2)}−Y] …(2)
なお、ここで√[*]は、*の平方根を表す記号である。
【0058】
これより、2つの基準測定物26−1、26−1を測定して得られる測定値(R’−R’)は、次の式(3)で表される。
【0059】
(R’−R’)=√[{(D/2)+(d/2)}−Y
− √[{(D/2)+(d/2)}−Y]…(3)
従って、既知の直径値D、Dを有する2つの基準測定物26−1、26−2を測定して得られる測定値(R’−R’)から、式(3)を解いて心ずれ量Yを算出することができる。
【0060】
次に、測定した半径の値等を、算出した心ずれ量Yを用いて補正する方法について説明する。
【0061】
まず、半径を測定して補正する場合について、図7を参照して説明する。
【0062】
図7において、基準測定物26−0の既知のマスタ直径をDとし、これを直径dの先端球31aを用いて測定する場合を考える。
【0063】
図7において、測定半径をR’、上記のようにして、すでに求められている心ずれ量をYとする。
【0064】
この測定によって得られた測定半径R’を心ずれ量Yを用いて補正した校正半径をRとすると、校正半径Rは次の式(4)のようにして求めることができる。
【0065】
R=√[{(D+d)/2} − Y] …(4)
次に、図8を参照して、測定物の外径あるいは内径を測定する場合について説明する。
【0066】
まず、測定物26−3の外径を測定する場合を考えると、図8において、測定物26−3の中心から先端球31aの中心までの距離は、三平方の定理によって、√[R+Y]と求めることができる。従って、外径は、これの2倍から先端球31aの直径dを引けばよいので、外径Dは、次の式(5)のようにして求められる。
【0067】
D=2×√[R+Y]−d …(5)
次に、測定物26−4の内径を測定する場合は、先端球31aを測定物26−4に対して内接させるので、√[R+Y]で表される測定物26−4の中心から先端球31aの中心までの距離に対して先端球31aの直径dを足せばよいので、次の式(6)のようにして求められる。
【0068】
D=2×√[R+Y]+d …(6)
以上のように、本実施形態によれば、測定子の先端球が測定物と接触する検出点が測定物の中心を通る母線と一致しておらず、母線からずれている場合であっても、この心ずれ量を算出することにより、半径の測定値を心ずれ量を用いて補正することができる。
【0069】
このように、測定物の母線と検出点のずれ(心ずれ量)を算出して補正することにより、基準測定物の直径値と異なる直径値を有する測定物であっても、その正確な直径値を算出することが可能となる。
【0070】
また、このように算出した心ずれ量を用いて測定値の補正を行う他、算出した心ずれ量に基づいて、心ずれ調整機構32によって測定子30及び先端球31aの位置(基準位置)を調整するようにしても良い。
【0071】
以上説明した例は、直径値の異なる2つの基準測定物を測定して心ずれ量を算出していたが、測定する基準測定物は2つに限定されるものではない。例えば、直径値の異なる3つの基準測定物を測定してもよい。この場合には、心ずれ量だけでなく先端球の直径をも算出することができる。従って、先端球の直径が摩耗により変化している場合でも、その正確な直径値を求めることができる。
【0072】
以下、これを図9を参照して説明する。
【0073】
図9に示すように、中心を同一とした直径が既知の3つの円C、C、Cを測定する場合を考える。3つの円C、C、Cの直径は、それぞれδ、δ、δとする。
【0074】
まず心ずれがない場合に、図に示すようにこれらの3つの円C、C、Cを測定したときの測定値をそれぞれρ、ρ、ρとする。
【0075】
また、心ずれ(心ずれ量Y)がある場合に、これらの3つの円C、C、Cを測定したときの測定値をそれぞれρ’、ρ’、ρ’とする。また、先端球31aの直径値をdとする。
【0076】
すると心ずれがない場合には、各測定値ρ、ρ、ρは、以下の式(7)〜(9)のようになる。
【0077】
ρ=δ/2 + d/2 …(7)
ρ=δ/2 + d/2 …(8)
ρ=δ/2 + d/2 …(9)
また心ずれがある場合の各測定値ρ’、ρ’、ρ’は、以下の式(10)〜(12)のようになる。
【0078】
ρ’=√[(δ/2 + d/2)−Y] …(10)
ρ’=√[(δ/2 + d/2)−Y] …(11)
ρ’=√[(δ/2 + d/2)−Y] …(12)
そこで、円Cと円Cとを測定して測定値ρ’−ρ’、及び円Cと円Cとを測定して測定値ρ’−ρ’、を得る。
【0079】
一方、上記式(10)〜(12)より、次の式(13)及び(14)が得られる。
【0080】
ρ’−ρ’= √[(δ/2 + d/2)−Y
− √[(δ/2 + d/2)−Y] …(13)
ρ’−ρ’= √[(δ/2 + d/2)−Y
− √[(δ/2 + d/2)−Y] …(14)
従って、測定値ρ’−ρ’及びρ’−ρ’と式(13)、(14)から、心ずれ量Y及び先端球31aの直径dを算出することができる。
【0081】
このように、直径値が既知の3つの基準測定物を測定することにより、心ずれ量Yのみならず先端球31aの直径dをも求めることが可能となる。
【0082】
なお、上では載物台回転形の真円度測定装置10を用いた例で説明したが、本発明は、検出器回転形の真円度測定装置100に対しても好適に適用可能である。
【0083】
以上、本発明の真円度測定装置及びその心ずれ量補正方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0084】
10…(載物台回転形)真円度測定装置、11…測定機本体、12…載物台(XY/傾斜テーブル)、13…演算処理装置、14…ベース(基台)、15…回転機構、16…軸受、18…エンコーダ、20…モータ、22…X方向微動つまみ、23…Y方向傾斜つまみ、24…Y方向微動つまみ、25…X方向傾斜つまみ、26…測定物、27…コラム(支柱)、28…スライダ、29…水平アーム(径方向移動軸)、30…検出器、31…測定子、31a…先端球、32…心ずれ調整機構、33…増幅器、34…A/D変換器、36…演算/処理手段、38…プログラム、40…表示手段、100…(検出器回転形)真円度測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定物の中心と回転の中心を一致させて、測定物を検出器に対して相対的に回転させ、測定物の真円度を測定する真円度測定装置において、
直径値の異なる複数の基準測定物をそれぞれ測定し、その測定差を検出する手段と、
前記測定差に基づいて、前記基準測定物の母線と前記検出器の前記基準測定物に対する検出点とのずれ量である心ずれ量を算出する手段と、
前記算出した心ずれ量に基づいて、任意の測定物の測定値を補正する手段と、
を備えたことを特徴とする真円度測定装置。
【請求項2】
前記測定物の中心とは、測定の際、前記検出器が接触する前記測定物の外周の点が形成する図形の最小二乗円の中心であることを特徴とする請求項1に記載の真円度測定装置。
【請求項3】
測定物の中心と回転の中心を一致させて測定物を検出器に対して相対的に回転させるようにして、直径値の異なる複数の基準測定物をそれぞれ測定して、その測定差を検出する測定差検出工程と、
前記検出した測定差に基づいて、前記基準測定物の母線と前記検出器の前記基準測定物に対する検出点とのずれ量である心ずれ量を算出する心ずれ量算出工程と、
測定物の中心と回転の中心を一致させて測定物を検出器に対して相対的に回転させるようにして、任意の測定物を測定して得られた測定値を、前記算出した心ずれ量に基づいて補正する工程と、
を備えたことを特徴とする真円度測定装置における心ずれ量補正方法。
【請求項4】
前記測定物の中心とは、測定の際、前記検出器が接触する前記測定物の外周の点が形成する図形の最小二乗円の中心であることを特徴とする請求項3に記載の真円度測定装置における心ずれ量補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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