説明

真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法

【課題】製造されるチタンインゴットの鋳肌不良の発生を抑制することができる真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法を提供する。
【解決手段】真空アーク炉2の中に吊下げたチタンでなる消耗電極1と、真空アーク炉2の水冷銅るつぼ3の底部に敷き詰めたチタンスタート材の間にアーク4を発生させ、消耗電極1からチタン溶滴を滴下させ、そのチタン溶滴が集まって形成された溶融プール5が冷却されて凝固することでチタンインゴット6を製造する際に、アーク4を4.0〜20.0sec/回転の回転速度で回転することで、溶融プール5を攪拌させてチタンインゴット6を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空アーク溶解法を用いてスポンジチタン等のチタン材料からチタンインゴットを製造する真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法に係り、より詳しくは、真空アーク溶解法を用いてチタンインゴットを製造するにあたり、製造されるチタンインゴットの鋳肌不良(表面欠陥)の発生を抑制することができる真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チタン(Ti)は、溶融温度では空気により激しく酸化される活性な金属であり鉄鋼材料のように耐火性るつぼで大気雰囲気溶解することは難しいため、様々な特殊溶解技術が開発されてきた。現在ではチタンインゴットは、真空アーク溶解法、プラズマアーク溶解法、電子ビーム溶解法、コールドクルーシブル誘導溶解法などにより製造されている。これらの製造方法のうち、チタンインゴットの製造に最も多く用いられているのが、真空アーク溶解法である。
【0003】
従来から、この真空アーク溶解法を用いてスポンジチタン等のチタン材料からチタンインゴットが製造されてきたが、製造されたチタンインゴットの表面に凹凸、しわ、ひけ巣等の鋳肌不良(表面欠陥)が発生することが多く、これら鋳肌不良が発生したチタンインゴットを用いて、次工程で、鍛造、圧延のような機械加工を行うと、鍛造製品や圧延製品に、その鋳肌不良が表面欠陥としてそのまま引き継がれてしまうという問題があった。
【0004】
そのため、チタンインゴットに一定深さ以上の鋳肌不良が発生した場合は、その表面をグラインダーや旋盤等で切削除去する作業を行うことが必要となり、余計な製造工程を必要とする問題、材料の無駄があるという問題等も兼ね備えていた。
【0005】
以上のような種々の問題が発生しないようにするには、真空アーク溶解法を用いてチタンインゴットを製造する際に、製造されるチタンインゴットに鋳肌不良が発生することがないようにしてチタンインゴットを製造することが必要である。そのため、従来から以下に示すような、様々な製造方法の改善が試されており、実際に鋳肌不良の発生が抑止されていた。それら従来の技術によれば、それなりの鋳肌不良発生抑止効果を得ることができてはいたものの、依然、鋳肌不良はある程度は発生しており、確実に鋳肌不良の発生を抑止することができる製造方法とは言い切れなかった。また、チタンインゴットの製造のために、様々な追加材料を必要とする製造方法等もあり、実用化が困難な製造方法でもあった。
【0006】
特許文献1には、チタンインゴット等の製造に用いる水冷銅ルツボを四隅にRを設けた角柱状に形成するとともに該ルツボの内面をCaO系、ZrO系、TiO系、Al系等の耐火物で内張りし、かつ電極溶解時に上記ルツボの内部上下方向に5〜75ガウスの磁場を付加してチタンインゴット等を製造する方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、ステンレス鋼等の金属・合金の鋳塊の製造において、被溶解金属を消耗電極として使用し、これをそれぞれの熱源により水冷銅鋳型内に溶解滴下させて鋳塊製造する際に、鋳型内に溶解滴下した溶湯が凝固収縮することで形成する鋳型と鋳塊の間のギャップに溶解金属を充填して鋳塊を製造する方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、スポンジチタンを主原料とする消耗電極を用いてインゴットに溶解する方法であって、溶製されたインゴットを炉内で冷却し、その表面温度が300〜700℃になった段階で炉外に放出して、前記インゴットの表面温度が100〜200℃になるまで水冷した後、その表面を乾燥させる方法が開示されている。
【0009】
特許文献4には、消耗電極をアークにより溶解し、滴下するチタンまたはチタン合金を凝固させてチタンインゴットを製造する方法であって、溶解初期のスターリング電流およびその反転時間を、それぞれ溶解定常期におけるスターリング電流の15〜80%、反転時間の35〜100%、またはそれぞれ溶解定常期におけるスターリング電流の80超〜100%、反転時間の35〜95%としてチタンインゴットを製造する方法が開示されている。
【0010】
特許文献5には、不活性雰囲気中の銅製水冷容器内で高融点金属を溶解してインゴットを製造する際に、高融点金属(Ti)の酸化物を30%以上含有するコーティング材が内面に被覆された銅製水冷容器を使用してインゴットを製造する方法が開示されている。
【0011】
これら特許文献に記載された技術は、その何れもが、先に説明したように、鋳肌不良の発生をある程度は抑止することはできたものの、まだ改善の余地がある技術であったり、実用化が困難な技術であったりして、更に新規な技術の開発に着手しているのが現状であり、より確実に鋳肌不良の発生を抑止することができるチタンインゴットの製造方法に関する新規な技術が開発されることが待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭61−143528号公報
【特許文献2】特開平9−70656号公報
【特許文献3】特開2003−41330号公報
【特許文献4】特開2003−221630号公報
【特許文献5】特開2003−239025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来の問題を解消せんとしてなされたもので、真空アーク溶解法を用いてチタンインゴットを製造するにあたり、製造されるチタンインゴットの鋳肌不良(表面欠陥)の発生を抑制することが確実にできる真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、真空アーク炉の中に吊下げたチタンでなる消耗電極と、前記真空アーク炉の水冷銅るつぼの底部に敷き詰めたチタンスタート材の間にアークを発生させ、前記消耗電極から順次チタン溶滴を滴下させ、そのチタン溶滴が集まって形成された溶融プールが冷却されて凝固することでチタンインゴットを製造する真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法において、前記アークを4.0〜20.0sec/回転の回転速度で回転することで、前記溶融プールを攪拌させて前記チタンインゴットを製造することを特徴とする真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法である。
【0015】
請求項2記載の発明は、前記チタンインゴットは、JIS1種のKS40系チタンインゴットであり、前記アークは、6.7〜10.0sec/回転の回転速度で回転する請求項1記載の真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法である。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記チタンインゴットは、JIS2種のKS50系チタンインゴットであり、前記アークは、4.0〜6.7sec/回転の回転速度で回転する請求項1記載の真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1記載の真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法によると、真空アーク溶解法を用いてチタンインゴットを製造するにあたり、鋳肌不良発生の原因となる水冷銅るつぼの内壁に付着形成されたスプラッシュを再溶解することができ、製造されるチタンインゴットの鋳肌不良(表面欠陥)の発生を抑制することが確実にできる。
【0018】
本発明の請求項2記載の真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法によると、真空アーク溶解法を用いてJIS1種のKS40系チタンインゴットを製造するにあたり、鋳肌不良発生の原因となる水冷銅るつぼの内壁に付着形成されたスプラッシュを再溶解することがより確実にでき、製造されるチタンインゴットの鋳肌不良(表面欠陥)の発生を更に確実に抑制することができる。
【0019】
本発明の請求項3記載の真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法によると、真空アーク溶解法を用いてJIS2種のKS50系チタンインゴットを製造するにあたり、鋳肌不良発生の原因となる水冷銅るつぼの内壁に付着形成されたスプラッシュを再溶解することがより確実にでき、製造されるチタンインゴットの鋳肌不良(表面欠陥)の発生を更に確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】真空アーク溶解法を用いてチタンインゴットを製造する方法を示す真空アーク炉の縦断面図である。
【図2】本発明の実施例でKS40Mより成るチタンインゴットの製造に用いた消耗電極とチャージ材の内訳を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例でKS50より成るチタンインゴットの製造に用いた消耗電極とチャージ材の内訳を示す説明図である。
【図4】実施例で製造した全てのチタンインゴットの製造時のアーク回転速度(sec/回転)と鋳肌不良面積率の関係を示す説明図である。
【図5】アーク電圧の周波数(Hz)とアーク回転速度(sec/回転)の関係を示す説明図である。
【図6】実施例で製造したKS40系のチタンインゴットの製造時のアーク回転速度(sec/回転)と鋳肌不良面積率の関係を示す説明図である。
【図7】実施例で製造したKS50系のチタンインゴットの製造時のアーク回転速度(sec/回転)と鋳肌不良面積率の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて更に詳細に説明する。
【0022】
まず、図1に基づいて、一般的な真空アーク溶解法を用いてチタンインゴットを製造する方法について説明する。はじめに、購入した粒状のスポンジチタン等のチタン材料をコンパクトプレスによりブリケット状にする。そのブリケット状チタンのいくつかをプラズマ溶接により接合して図1に示すような棒状の消耗電極1とする。この消耗電極1を1次電極として真空アーク炉2の中に吊下げ、その消耗電極1の下端と水冷銅るつぼ3の底部に敷き詰めたチタンスタート材(図示しない)の間に大電流アーク4を発生させると、そのアーク4によって消耗電極1の下端からチタンが溶解して溶滴となり順次溶け落ちる。その溶け落ちた溶滴が集まって水冷銅るつぼ3内に形成された溶融プール5が下部から冷却されて凝固し、チタンインゴット6が得られる。
【0023】
品質の良いチタンインゴット6を得るためには、この1次溶解だけでは成分の均質化が十分ではないため、1次溶解で得られたチタンインゴット6を再度消耗電極1とし、2次溶解、更に必要な場合は2次溶解後に3次溶解、或いはそれ以上の回数の溶解を行って最終的なチタンインゴット6を得る方法が、真空アーク溶解法では一般的である。
【0024】
一般的な真空アーク溶解法は、以上に説明した手順で行われているが、更に効率良く真空アーク溶解を行うため、1次溶解時に、消耗電極1の水冷銅るつぼ3の間からチタンスクラップとスポンジチタンを混合したチャージ材(図示せず)を連続的に装入することにより、溶解所要時間と電力消費量を低減させる方法も実施されている。
【0025】
また、本発明では少なくとも最終的なチタンインゴット6を得る際の溶解時(例えば、2度の溶解を行う場合は2次溶解時)には、電磁攪拌によりアーク4を回転させて溶融プール5を攪拌させることで、チタンインゴット6の製造を行っている。アーク4が一箇所に集中してしまうと、そのアーク4が集中した部分の温度だけが高くなってしまい鋳造欠陥があるチタンインゴット6が製造される可能性が高くなるのでアーク4を回転させる。また、溶融プール5を攪拌させることにより、溶湯を水冷銅るつぼ3の内壁に激しく接触させ、水冷銅るつぼ3に付着して鋳肌不良発生の原因となっているスプラッシュを溶かすという効果もある。
【0026】
尚、アーク4の回転や溶融プール5の攪拌は、水冷銅るつぼ3の外周を囲むように螺旋状に配置されたソレノイドコイル7に電流を流すことにより行う。真空アーク溶解法では、消耗電極1と水冷銅るつぼ3の間に電流を通電することでアーク4を発生させる。その際、電流は溶融プール5の表面を水平方向に放射状に流れる。一方、ソレノイドコイル7に電流を通電すると、溶融プール5の垂直方向に磁場が発生する。ソレノイドコイル7により発生する磁場の影響で円周方向に力が働き、アーク4は回転し、溶融プール5は攪拌される。
【0027】
本発明者らは、鋭意研究の結果、操業に係るパラメータの中でも、アーク4の回転を特定の範囲に制御することで、水冷銅るつぼ3の内壁に付着形成されたスプラッシュが再溶解され、鋳肌不良の発生が抑制されることを見出した。
【0028】
本発明のチタンインゴットの製造方法では、少なくとも最終的なチタンインゴット6を得る際の溶解時に、アーク4を4.0〜20.0sec/回転の回転速度で回転することで、溶融プール5を攪拌させてチタンインゴット6を製造し、チタンインゴット6の表面に発生する鋳肌不良の面積率を、以後の鍛造工程や圧延工程で問題が発生しない範囲に抑制することができる。
【0029】
真空アーク溶解法で、最終的なチタンインゴット6を得る際の溶解時でのアーク4の回転速度を20.0sec/回転超とすれば、製造されるチタンインゴット6の表面に発生する鋳肌不良の面積率が、以後の鍛造工程や圧延工程で問題が発生する程度に高くなる可能性がある。また、アーク4の回転速度を4.0sec/回転未満としても、製造されるチタンインゴット6の表面に発生する鋳肌不良の面積率が、以後の鍛造工程や圧延工程で問題が発生する程度に高くなる可能性がある。従って、少なくとも最終的なチタンインゴット6を得る際の溶解時に、アーク4を4.0〜20.0sec/回転の回転速度で回転させてチタンインゴット6を製造すれば、製造されるチタンインゴットの鋳肌不良(表面欠陥)の発生を抑制することができる。
【0030】
尚、一般的に用いられている代表的な純チタンには、JIS1種のKS40系と、JIS2種のKS50系がある。KS40系とKS50系の違いは、例えば、図2および図3に示すように、原料の配合量の違いであって、KS40系の方がKS50系よりスポンジチタンの配合量が多い。鋳肌不良発生の原因の一つは水冷銅るつぼの内壁に付着形成されたスプラッシュであるが、このスプラッシュはスポンジチタンがアーク溶解される時に発生しており、水冷銅るつぼの内壁に付着形成されるスプラッシュの厚さは、KS40系で約8mm、KS50系で約6mmである。従って、KS40系とKS50系では、そのスプラッシュを溶かすためのより好ましいアークの回転速度は異なることとなる。
【0031】
KS40系の場合、アーク5の回転速度を6.7〜10.0sec/回転とすれば、製造されるチタンインゴット6の表面に発生する鋳肌不良の面積率がより低くなり、製造されるチタンインゴットの鋳肌不良(表面欠陥)の発生をより確実に抑制することができる。一方、KS50系では、アーク5の回転速度を4〜6.7sec/回転とすることで、製造されるチタンインゴット6の表面に発生する鋳肌不良の面積率がより低くなり、製造されるチタンインゴットの鋳肌不良(表面欠陥)の発生をより確実に抑制することができる。
【実施例】
【0032】
本実施例では、1次溶解と2次溶解の2度の溶解で得られるチタンインゴットの鋳肌不良の発生について検討を行った。尚、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、3度以上の溶解を行う等、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術範囲に含まれる。
【0033】
本実施例では、純チタンに含まれる不可避的不純物の含有量の差により試験結果に影響がでないように、代表的な純チタンであるJIS1種のKS40系とJIS2種のKS50系のチタンインゴットを9本ずつ合計18本製造した。KS40系としてはKS40M、KS50系としてはKS50のチタンインゴットを夫々製造した。表1に純チタンの成分規格を示す。本実施例でチタンインゴットの製造に用いた消耗電極とチャージ材の合計質量は、8400kgであり、その内訳の詳細は、図2並びに図3に示す通りである。
【0034】
【表1】

【0035】
はじめに、1次溶解と2次溶解から得られる操業データー(アーク電圧、アーク電流、真空度、ソレノイドコイルに流す電流等)を定常状態と非定常状態に分けて事前確認を行った。
【0036】
真空アーク炉内での消耗電極の溶解が始まると徐々に電流を上げていき、その電流が38.5kA前後に到達した時点で安定すると、その状態を保つようにして消耗電極の溶解を続ける。これが定常状態である。その後、消耗電極の溶解が進み、消耗電極の長さが1/10より短くなると電流を下げる。これが非定常状態である。非定常状態での溶解時間は1.5時間程度で全操業時間に占める割合は多いが、非定常状態での溶解で得られるチタンインゴットの全体積に占める割合は1/10にも満たず、チタンインゴットの鋳肌不良の発生への影響は大きくないと考えられる。
【0037】
従って、本実施例では、電流値が安定している定常状態で得られるチタンインゴットの範囲について検討を行うこととした。定常状態で得られるチタンインゴットの範囲を上下45〜50に分割し、夫々を1つのセルとした。その1つのセル分の製造に要する時間は4〜5分であり、チタンインゴットの高さの50mm程度に相当する。
【0038】
次に、夫々のセルにおける鋳肌不良面積率を算出し(算出の仕方は以下に説明する)、縦軸に鋳肌不良面積率、横軸にアーク電圧の周波数(Hz)をとり、グラフを作成した。そのグラフを図4に示す。
【0039】
参考のため、アーク回転速度(sec/回転)をモニターで確認して実測したところ、アーク電圧の周波数(Hz)とアーク回転速度(sec/回転)には、アーク電圧の周波数(Hz)×アーク回転速度(sec/回転)=100という関係があることが確認できた。この関係を示すのが図5である
【0040】
図4と、このアーク電圧の周波数(Hz)×アーク回転速度(sec/回転)=100という関係をもとに作成したのが表2である。鋳肌不良面積率は、チタンインゴットを、鍛造・圧延した後のスラブ状態の表面の鋳肌不良部をマーキングした表面スケッチから求めた。その表面スケッチをトップ部からボトム部まで45〜50個のセルに等分し、夫々のセル毎に鋳肌不良面積を求めた。1つのセルにおいて、鋳肌不良面積/全面積=鋳肌不良面積率であり、得られたデーターの平均値を表2に鋳肌不良面積率として示した。
【0041】
【表2】

【0042】
鋳肌不良面積率が0.1未満のものを◎で合格、鋳肌不良面積率が0.2未満0.1以上のものを○で合格、鋳肌不良面積率が0.2以上のものを×で不合格として表2の判定欄に示す。
【0043】
表2および図4によると、アーク回転速度が4.0〜20.0sec/回転で、鋳肌不良面積率が0.2未満で合格となっており、特に、アーク回転速度が6.7〜10.0sec/回転では、鋳肌不良面積率が0.1未満となることが確認できた。
【0044】
尚、KS40系とKS50系では、前記したように、より好ましいアークの回転速度は異なることとなるので、ここでは、KS40系とKS50系に分けて、アークの回転速度のより好ましい範囲を特定した。
【0045】
図4のグラフをKS40系とKS50系に分けて作成したグラフが図6と図7であり、図6はKS40系のアーク電圧の周波数(Hz)と鋳肌不良面積率の関係を、図7はKS50系のアーク電圧の周波数(Hz)と鋳肌不良面積率の関係を、夫々示す。
【0046】
図6によると、鋳肌不良面積率が0.1未満であるのは、アーク回転速度が6.7〜10.0sec/回転のときである。すなわち、KS40系の場合、アークを6.7〜10.0sec/回転の回転速度で回転することで、チタンインゴットの鋳肌不良(表面欠陥)の発生をより確実に抑制することができる。
【0047】
図7によると、鋳肌不良面積率が0.1未満であるのは、アーク回転速度が4.0〜6.7sec/回転のときである。すなわち、KS50系の場合、アークを4.0〜6.7sec/回転の回転速度で回転することで、チタンインゴットの鋳肌不良(表面欠陥)の発生をより確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…消耗電極
2…真空アーク炉
3…水冷銅るつぼ
4…アーク
5…溶融プール
6…チタンインゴット
7…ソレノイドコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空アーク炉の中に吊下げたチタンでなる消耗電極と、前記真空アーク炉の水冷銅るつぼの底部に敷き詰めたチタンスタート材の間にアークを発生させ、前記消耗電極から順次チタン溶滴を滴下させ、そのチタン溶滴が集まって形成された溶融プールが冷却されて凝固することでチタンインゴットを製造する真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法において、
前記アークを4.0〜20.0sec/回転の回転速度で回転することで、前記溶融プールを攪拌させて前記チタンインゴットを製造することを特徴とする真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法。
【請求項2】
前記チタンインゴットは、JIS1種のKS40系チタンインゴットであり、
前記アークは、6.7〜10.0sec/回転の回転速度で回転する請求項1記載の真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法。
【請求項3】
前記チタンインゴットは、JIS2種のKS50系チタンインゴットであり、
前記アークは、4.0〜6.7sec/回転の回転速度で回転する請求項1記載の真空アーク溶解法によるチタンインゴットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−37651(P2010−37651A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56835(P2009−56835)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】