説明

真空チャンバー内汚染除去装置

【課題】光を照射する光源を真空チャンバー内に設置または導入し、真空チャンバー内壁部並びに使用部材に照射することで、チャンバー内壁並びに使用部材等に吸着した有機物などの汚染を取り除く事が出来る真空チャンバー内汚染除去装置に関する。
【解決手段】
真空チャンバー内の内壁部または使用部材に向けて光を照射する光源を有し、
前記光源より照射する光の波長が120〜360nmであることを特徴とする真空チャンバー内汚染除去装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバー内壁部並びに使用部材に付着する汚染を効率的に除去する事が出来る真空チャンバー内汚染除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空チャンバーを有する装置として、表面分析装置やドライエッチング装置あるいはスパッタリング装置等が挙げられる。そして、真空チャンバーは様々な分野で使用されている装置である。
【0003】
また、半導体業界においては、これらの装置を使用する際に、レジストゴミやスパッタゴミなどの発生による汚染が生じている。そして、この汚染は真空チャンバー内壁に吸着し、真空度を落とす原因となっている。
【0004】
上述した汚染を取り除く作業として、従来は装置の真空を停止し、チャンバーを大気開放して、人の手で汚れをふき取るなどにより汚染の除去を行っている。
【0005】
また、真空度が1×10-5Paを超える高真空チャンバーを用いる分野においては、イオン化されたチタンを飛ばし、飛ばしたチタンに汚染を付着させて、チタンと共に汚染を排気系に逃がす事も行われている。
【0006】
さらに、液体窒素などを用いて、冷却された金属を試料近傍に導入することで汚染をトラップする方法も行われている。
【0007】
また、真空装置の排気構造を改善することにより汚染を除去する真空装置の真空室汚染防止装置(例えば、特許文献1参照。)も知られている。
【0008】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平10−106692
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、真空装置のチャンバー内壁等に吸着した汚染については人の手を用いてふき取り掃除等により対応する方法が行われている。しかしながら、レジストの分解物やガスの残りなどの装置内壁に吸着する汚染は、作業する人やふき取りに使用する治具などに、二次汚染が発生する可能性がある。
【0010】
また、人の手が入らない、入り組んだ部分や箇所などもある。そして、そこに付着した汚染を除去するため、超音波洗浄を実施するなどの方法が行われているが、非常に手間と時間がかかるという問題がある。
【0011】
さらに、掃除後、汚染が完全に除去されているかを確認するために、再度真空装置のチャンバー内を真空吸引する。そして、真空度や装置管理用のウエハを流し、パーティクル数を検査機に入れ検査する。この後、汚染が残っているようであれば再度清掃作業を繰り返す事が必要となるなど、工程が多くなり、且つ、停止時間も長くなるという問題がある。
【0012】
また、清掃を怠った場合、汚染により装置の真空が維持できなくなる。そして、例えば、真空の引きが悪くなり真空排気系に余計な負荷がかかる。
【0013】
そして、製品や分析試料に不必要な汚染が付着するなどの弊害が生じ、製品の歩留まりの低下を来たす。さらに、表面分析関連においては分析結果に対する信頼性が低下するという問題がある。
【0014】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、チャンバー内の内壁部やチャンバー内の使用部材に吸着した汚染を、人の手を用いてふき取り掃除等を行うことなく、且つ、二次汚染の心配も無く、入り組んだ部分や箇所なども、時間を要せず、確実に取り除けることができる真空チャンバー内汚染防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記問題点を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、
真空チャンバー内の内壁部または使用部材に向けて光を照射する光源を有し、
前記光源より照射する光の波長が120〜360nmであることを特徴とする真空チャンバー内汚染除去装置である。
【0016】
次に、本発明の請求項2に係る発明は、
前記光源を真空チャンバー内に設置もしくは導入することを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバー内汚染除去装置である。
【0017】
次に、本発明の請求項3に係る発明は、
前記光源より照射する光の軌道が可変式であることを特徴とする請求項1または2に記載の真空チャンバー内汚染除去装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の真空チャンバー内汚染除去装置は以上の構成からなるので効果的にチャンバー内の内壁部やチャンバー内の使用部材に波長が120〜360nmの光を照射することで、チャンバー内の内壁部やチャンバー内の部材に吸着した有機物などの汚染を取り除く事ができる。さらに、光の軌道を可変式にすることにより、より効果的に効率よく汚染の除去ができる。
【0019】
また、本発明の真空チャンバー内汚染除去装置は従来チャンバーを大気開放し清掃後、再度チャンバーを真空吸引した後に性能テストを行い、不具合があればこの作業を繰り返すといった非効率な作業を実施する必要がない。
【0020】
さらに、本発明の真空チャンバー内汚染除去装置は、超音波洗浄機を用いて汚染を取り除く作業等が全く不要となるため、負荷が大幅に軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の真空チャンバー内汚染除去装置を実施の形態に沿って以下に図面を参照にしながら詳細に説明する。図1〜図2は本発明の一実施例を示す。
【0022】
図1は、試料導入口から光源を導入した本発明の真空チャンバー内汚染除去装置の一実施例の概略を説明するための説明図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の真空チャンバー内汚染除去装置20は光源部6と試料導入口3とポート4と真空排気部5と真空チャンバー1から形成されている。そして、真空チ
ャンバー1内には試料台2と可変式鏡体7が形成されている。
【0024】
前記真空チャンバー1はアルミニウムまたはアルミニウム合金あるいはステンレス等により形成されている。そして、真空チャンバー1内は1×10-1Pa〜1×10-8Pa程度の真空に保たれる。
【0025】
このため、高い気密性が要求される。そして、汚染が生じると、それを除去する事が難しく、一度真空チャンバー内を大気開放し、人の手による拭き掃除や、超音波洗浄をする必要があった。
【0026】
また、用途としては幅広い分野で使用されている。主な分析装置では、例えば、オージェ電子分光分析装置、X線光電子分光分析装置、飛行時間型2次イオン質量分析装置などが例示できる。
【0027】
また、集束イオンビーム(FIB)装置などでにも用いられている。特に上記装置についてはアルゴンガスなどを用いたエッチング機能を有するものも多く、レジストなどの有機系材料を削るため、真空チャンバー内が汚染されやすい。
【0028】
さらに、半導体製造装置では、例えば、ドライエッチ装置、スパッタリング装置等が例示できる。そして、これらの装置もレジストや金属をエッチングするためと、頻繁に開閉を繰り返すことなどから汚染されやすい。
【0029】
そして、上述した問題を改善するため、波長が120〜360nmである光を照射する光源を真空チャンバー内に設置または導入し、効果的にチャンバー内の内壁部やチャンバー内の使用部材に照射することで、真空チャンバー内壁に吸着した有機物などの汚染を取り除く事を突き止めた。
【0030】
また、汚染により真空度が落ちた際に真空チャンバー内壁部や使用部材に向けて波長が120〜360nmである光を照射することにより、真空チャンバー内1に付着した汚染を除去する事が可能となる。そして、360nmより長い波長の光であるとその光の持つエネルギーがC−CやC−Oの解離エネルギーよりも弱くなるため、汚染の除去が難しくなる。
【0031】
また、120nmよりも短い波長のエネルギーでは、扱いが難しく実用的でない。さらに、120〜360nmの範囲内において波長の長い光は、他のArFやエキシマよりも扱いが容易なため、汚染の度合いが低ければ望ましい。上記光で効果が見られない場合は、ArFやエキシマを使用することで、より効果的な汚染の除去が可能となる。
【0032】
さらに、光源を真空チャンバー内に設置、もしくは、サンプルや製品を出し入れする導入口やポートを用いて、真空チャンバー内に光源を導入することで、汚染により真空度が落ちた際に、真空チャンバー内に付着した汚染を除去する事が可能となる。
【0033】
また、真空チャンバー内1に設置または導入した光源による光の軌道を可変式にすることで、より広範囲の汚染を除去する事が可能となる。もし、可変せず固定させる方法にした場合、光源の数を増やすなどの方法をとる必要がある。そして、コストの上昇が生じる。
【0034】
また、内部に可変式鏡体7を形成させることで、真空チャンバー内1全面に光をいきわたらせることも可能である。そして、真空チャンバーが本来有する反射性を生かすことも出来る。
【実施例1】
【0035】
以下に本発明の具体的実施例を挙げて、さらに詳しく説明するが、それに限定されるものではない。
【0036】
図2に示すようなドライエッチ装置(Gatan社製model−682)における真空チャンバー1の空きポートからUV光(波長約254nm)を導入した。そして、通常は邪魔にならないよう光源をチャンバー内の外に出しておき、必要なときだけ内部に導入可能な方式にした。
【0037】
また、チャンバー内の汚染を直接分析することは出来ないため、擬似的にチャンバー内の試料台に1cm角に断裁したCuテープ10を2枚貼り、強制汚染させるためにカーボンテープ11を試料として用いた。そして、加速電圧6kV、電流値300μAにおいてアルゴンガスを1時間エッチングし続けた。このときの真空度はエッチングガスの導入前は約1.0×10-4Paだったものが3.0×10-2Paレベルまで落ちた。
【0038】
また、エッチング後、一方のCuテープ10にUV光を20分照射後、それぞれのCuテープ10を真空チャンバー内から取り出し、オージェ電子分光分析装置(ファイ社製 model−680 以下AES)で分析した。
【0039】
その結果、可視光照射したCuテープのカーボンによる汚染状況は、図3に示すように可視光を照射しないCuテープの汚染状況と比較してそれぞれの下地のCuに対するカーボン比率は98%と60%となり明確に汚染状況による違いが見られた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の真空チャンバー内汚染除去装置は上述した各種分析装置の真空チャンバーあるいは半導体製造装置の真空チャンバーの内壁に吸着した有機物などの汚染を取り除く事ができることはもとより、蒸着紙等の生産ライン等にも使用できる素晴らしい発明である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】試料導入口から光源を導入した本発明の真空チャンバー内汚染除去装置の一実施例の概略を説明するための説明図である。
【図2】本発明の真空チャンバー内汚染除去装置の一実施例を説明するための概略図である。
【図3】本発明の真空チャンバー内汚染除去装置の実施結果を説明するための測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1…真空チャンバー
2…試料台
3…試料導入口
4…ポート
5…真空排気部
6…光源
7…可変式鏡体
8…UV光源
9…エッチング銃
10…Cuテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバー内の内壁部または使用部材に向けて光を照射する光源を有し、
前記光源より照射する光の波長が120〜360nmであることを特徴とする真空チャンバー内汚染除去装置。
【請求項2】
前記光源を真空チャンバー内に設置もしくは導入することを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバー内汚染除去装置。
【請求項3】
前記光源より照射する光の軌道が可変式であることを特徴とする請求項1または2に記載の真空チャンバー内汚染除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−60212(P2008−60212A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233370(P2006−233370)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】