説明

真空バルブ

【課題】従来の自動リーク機構を備えずに、簡単な構成で真空ポンプの全閉状態を確実に維持できる真空バルブを実現する。
【解決手段】排気路33に介在されたバルブハウジング34、及び該バルブハウジングの内部に摺動自在に収納され弁座38に当接又は離間して排気路33を開閉する弁機能体40と、該弁機能体に形成された仕切り部43の一側に画成されたバネ室51、及び該バネ室に装着されたバネ部材52と、仕切り部43の他側に画成され該バルブハウジング壁に設けられた貫通孔47を介して大気と連通する大気圧室50と、バネ室51を弁機能体40の出口側排気路36又は大気圧室50に選択的に接続可能な連通路53〜55とからなり、弁機能体40の入口側端面42aから大気圧室50に至る部位で同一の外径とするとともに、大気圧面50aを形成して大気圧による閉動作方向の作用力を負荷した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロールポンプ、ベーンポンプ等の真空ポンプを用いて真空チャンバを真空圧とする場合に、真空ポンプと真空チャンバとを接続する排気路に介設される差圧式真空バルブの応答性を高め、真空ポンプ停止時に真空チャンバに排気ガスが逆流するのを確実に防止できるようにした真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空ポンプにより真空チャンバ内の空気を吸引して排出させる真空装置は周知である。例えば、真空蒸着装置において、例えば半導体ウエーハの表面に金属蒸着膜を形成する場合、まず装置の蒸着室内の雰囲気を真空ポンプで排気して高真空にし、高真空状態で蒸着を行い、蒸着終了後には蒸着室内の圧力を大気圧に戻すことが行なわれている。
【0003】
真空ポンプが停止するときの真空チャンバと真空ポンプ間の差圧によって発生する逆流を防止する手段として、真空チャンバと真空ポンプとを接続する排気路に真空バルブを介設している。自動開閉機能を有する真空バルブとしては、直動ソレノイド式又は差圧式の自動開閉バルブが使用されている。
【0004】
直動ソレノイド式は、開閉の応答性が良いものの、ストロークが大きく取れないことから排気抵抗が大きかったり、バルブの開閉動作を維持するためにソレノイドが多量の電力を消費するという問題がある。
これに対し、差圧式の真空バルブは、弁体に対して開動作方向に加わる力と閉動作方向に加わる力との差圧によって開動作又は閉動作を行なうものであるため、ストロークを大きく取ることができるとともに、消費電力を低減できるという利点がある。
【0005】
特許文献1(特開平5−272456号公報)には、差圧式の真空バルブの一例が開示されている。この構成を図3に基づいて説明する。図3において、この差圧式真空バルブは、ボデイ1とボンネット2を備え、ボデイ1に図示しない真空ポンプに接続された吸引ポート3が形成されるとともに、ボデイ1の外周に放射方向に取り付けられたポート部材4に、図示しない真空チャンバに接続された真空ポート5が形成されている。
【0006】
吸引ポート3と真空ポート5を直接連通させる主流路6の真空ポート5側に弁座7が形成されている。ボデイ1とボンネット2の間はプレート9で気密に区画され、ボンネット2の内部は、受圧体の一例であるピストン10によって、真空作用室11と外部に開口した大気室12とに区画されている。真空作用室11は、後述するバイパス流路13によって吸引ポート3と真空ポート5とに連通している。
【0007】
真空作用室11内には、ピストン10をプレート9に向けて付勢する調圧ばね14が縮設され、調圧ばね14の付勢力は、ボンネット2に気密に螺着された調圧機構15を構成する調圧ねじの回転によって調整することができる。
一端がピストン10に螺着された中空の弁棒18は、プレート9を気密に貫通した先端に、弁座7を開閉する弁体19が取り付けられており、またピストン10側の先端に大径のオリフィス23が取り付けられている。
【0008】
バイパス流路13は、ボデイ1とボンネット2に形成した流路20と、弁棒18の中空部に形成された流路18aよりなり、バイパス流路13を流れる空気の流量を調節するため、流路20に可変絞り機構21の一例としてのニードル弁が設置されている。該ニードル弁の開度は、弁体22を回転させてボンネット2に対して進退させることによって調節する。
【0009】
かかる構成において、図示しない真空ポンプの運転が停止し、かつ真空チャンバ内が大気圧又はそれに近いときは、該大気圧とピストン10に作用する調圧ばね14の付勢力との和が大気室12内の大気圧を上回るため、弁体19が下降して主流路6を閉鎖する。一方、吸引ポート3と真空ポート5とはバイパス流路13によって連通しており、この状態で真空ポンプを運転すると、真空チャンバ内の雰囲気は、バイパス流路13の可変絞り機構21により排出量を制御されて、徐々に真空ポンプに吸引される。
【0010】
従って、真空チャンバ内の雰囲気が大きく攪拌されないので、塵埃の舞い上がり等のトラブルを防止することができる。その後、真空チャンバ内のガス圧の低下により、真空作用室11における真空圧の作用力と調圧ばね14の付勢力との和が大気室12の大気圧の作用力より小さくなると、ピストン10が上昇して弁体19が主流路6を開放する。これによって、真空チャンバ内のガスが主として主流路6を通って排出される。この場合、真空チャンバ内のガス密度が低下しているので、真空チャンバ内の雰囲気が攪拌されることはない。
【0011】
また、特許文献2(実開平7−41173号公報)には、特許文献1と同様の差圧式真空バルブが開示されている。特許文献2に開示された差圧式真空バルブは、バルブの閉動作を流体圧アクチュエータ等の駆動部によって行なうものである。
【0012】
【特許文献1】特開平5−272456号公報
【特許文献2】実開平7−41173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
差圧式の真空バルブは、閉動作に連動して、真空チャンバ側排気路と真空ポンプ側排気路とを自動リークさせる機能をもつのが一般的である。これは、真空チャンバ側排気路と真空ポンプ側排気路とから真空バルブの弁体に加わるガス圧力の差圧を小さくすることによって、弁体が開く方向に作用する力を低減させ、全閉状態を維持させるようにしたものである。
【0014】
真空バルブの全閉状態を維持しないと、真空チャンバ側と真空ポンプ側との差圧により、真空ポンプ側のガスが真空チャンバ側に逆流する事態が発生する。これは非常に短時間で起こる。そのため、逆流したガスにより真空チャンバの真空破壊が起こったり、真空ポンプの摩耗粉が真空チャンバに侵入して、真空チャンバ内に配置された機器類の汚染を起こすおそれがある。また、真空ポンプが給油式である場合に、真空ポンプの油が真空チャンバに侵入するおそれがある。
【0015】
即ち、真空ポンプ側からの逆流により、真空ポンプの摩耗粉が真空チャンバに侵入したり、あるいは、真空ポンプが給油式の場合は、その潤滑油が真空チャンバに侵入するおそれがある。
【0016】
しかし、前述の自動リーク機構を具備すると、真空バルブの複雑化し、部品点数が増え、製造コストが増加する。また、シール部分が増え、リーク発生の危険性が増えるとともに、開閉動作の手順が増え、開閉動作の応答性が悪化するという問題がある。また、同時に、故障や不具合いの発生頻度は増えるという問題がある。
【0017】
また、真空ポンプからの逆流を防ぐため、真空バルブを閉じた後に真空ポンプを停止する必要がある場合、あるいは真空ポンプが稼動した後、真空ポンプの稼動状態が安定するまで真空バルブを全閉状態としておく必要がある場合など、真空ポンプが稼動中でも真空バルブを全閉状態としておきたい場合がある。
【0018】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、差圧式の真空バルブにおいて、真空バルブの構成を複雑かつ高コストとすることなく、弁閉鎖時に全閉状態を確実に維持できるようにすることを目的とする。また、真空ポンプが稼動中でも必要な時に、全閉状態を確実に維持できる真空バルブを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる目的を達成するため、第1の本発明の真空バルブは、
真空ポンプと真空チャンバとに連結され該真空チャンバ内の雰囲気を排気する排気路に介設され該排気路を開閉する真空バルブにおいて、
前記排気路に介在されたバルブハウジング、及び該バルブハウジングの内部に摺動自在に収納され該バルブハウジング内に形成された弁座に当接又は離間して該排気路を開閉する弁機能体と、
該弁機能体に一体に形成され該バルブハウジング内を2つの領域に仕切る仕切り部と、
該仕切り部に対して弁機能体の開動作方向に画成されたバネ室、及び該バネ室に装着され該弁機能体に対して閉動作方向へバネ力を付勢するバネ部材と、
該仕切り部に対して弁機能体の閉動作方向に画成され該バルブハウジング壁に設けられた貫通孔を介して大気と連通する大気圧室と、
該バネ室を弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に選択的に接続可能な連通路と、からなり、
弁機能体の入口側排気路に面する入口側端面から該大気圧室に至る領域で同一の外径とすることによって、該入口側端面と対面する面を形成しないように構成するとともに、
該大気圧室に面する弁機能体に弁機能体の入口側端面と対面する大気圧面を形成し、該大気圧面に大気圧による閉動作方向の作用力を負荷するようにしたものである。
【0020】
第1の本発明において、真空バルブを稼動させて真空チャンバの排気運転を実施する場合には、前記連通路を介してバネ室と弁機能体の出口側排気路とを連通させて、真空ポンプを稼動する。真空バルブの稼動によって該出口側排気路は大気圧より低い真空圧になり、該出口側排気路と連通したバネ室も真空圧になる。弁機能体の仕切り部には、バネ室側からバネ部材の付勢力とバネ室内のガス圧による作用力が負荷され、大気圧室側から大気圧による作用力が負荷される。バネ室が真空圧となることにより、弁機能体に作用する開動作方向の力が閉動作方向の力より大きくなるため、弁機能体は弁座を離れる方向に動き、排気路を開放する。
【0021】
その後、真空チャンバ内を真空状態として、排気運転を終了する場合は、真空ポンプの稼動を停止すると同時に、連通路を切り替えてバネ室と大気圧室とを連通させる。これによって、バネ室が大気圧となる。そのため、弁機能体に作用する閉動作方向の力が開動作方向の力より大きくなるため、弁機能体は弁座に接近する方向に動き、排気路を閉鎖する。
【0022】
第1の本発明においては、弁機能体の入口側排気路に面する入口側端面から該大気圧室に至る領域で同一の外径とし、該入口側端面と対面する面を形成しないように構成したことにより、真空ポンプの運転により真空バルブの出口側排気路を真空圧とした時に、真空バルブの閉鎖時に、入口側排気路から弁機能体の入口側端面に負荷される開動作方向の力を生じないようにしたものである。
【0023】
さらに、大気圧室に面する弁機能体に弁機能体の入口側端面と対面する大気圧面を形成し、該大気圧面に大気圧による閉動作方向の作用力を負荷するようにしたため、弁機能体の閉動作後に、全閉状態を確実に維持することができる。従って、真空ポンプの稼動中に真空バルブを閉動作する時も全閉状態を確実に維持することができる。
【0024】
第1の本発明において、弁機能体の入口側端面に開口し該弁機能体の長手方向に穿設された空洞部を形成するようにしてもよい。これによって、弁機能体の軽量化が可能になり、弁機能体の動きをさらにスムーズに行なうことができる。なお、この場合、該空洞部の半径方向に位置する周面に負荷されるガス圧は、弁機能体の半径方向に負荷されるので、弁機能体の開閉動作に影響を与えることはない。
【0025】
次に、第2の本発明の真空バルブは、
真空ポンプと真空チャンバとに連結され該真空チャンバ内の雰囲気を排気する排気路に介設され該排気路を開閉する真空バルブにおいて、
前記排気路に介在されたバルブハウジング、及び該バルブハウジングの内部に摺動自在に収納され該バルブハウジング内に形成された弁座に当接又は離間して該排気路を開閉する弁機能体と、
該弁機能体に一体に形成され該バルブハウジング内を2つの領域に仕切る仕切り部と、
該仕切り部に対して弁機能体の開動作方向に画成されたバネ室、及び該バネ室に装着され該弁機能体に対して閉動作方向へバネ力を付勢するバネ部材と、
該仕切り部に対して弁機能体の閉動作方向に画成され該バルブハウジング壁に設けられた貫通孔を介して大気と連通する大気圧室と、
該バネ室を弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に選択的に接続可能な連通路と、からなり、
前記弁機能体の入口側端面に開口し該弁機能体の長手方向に該バネ室の近傍まで穿設された空洞部を形成し、該空洞部の端面を前記バネ室に対面するように配置したものである。
【0026】
第2の本発明においては、入口側排気路から弁機能体に負荷される開動作方向の力を前記空洞部に形成された端面に負荷させるようにし、該端面をバネ室の近傍に位置させるとともに、該端面をバネ室に対面するように配置したことにより、入口側排気路から該端面に負荷される開動作方向の力を弁機能体の閉動作時にバネ室側から弁機能体に負荷される大気圧による作用力によって相殺するようにしたものである。
【0027】
これによって、弁機能体の閉動作後に、全閉状態を確実に維持することができるとともに、真空ポンプの稼動中に真空バルブを閉動作する時も全閉状態を確実に維持することができる。また、弁機能体に該空洞部を形成することによって、弁機能体の軽量化を可能し、これによって弁機能体の動きをスムーズにし、応答性を向上させることができる。
【0028】
第2の本発明において、弁機能体を、弁棒と、該弁棒の閉動作方向側端部に設けられ前記バルブハウジングに形成された弁座に当接又は離間して排気路を開閉する弁体と、該弁棒の開動作方向端部に設けられ該バルブハウジング内を前記バネ室と前記大気圧室とに仕切る前記仕切り部と、からなり、該弁棒を該バルブハウジングに一体に形成された支持部に摺動自在に支持させるとともに、該支持部と該仕切り部との間に該大気圧室を画成させ、空洞部の端面を該支持部の閉動作方向端よりバネ室寄りに配置させ、弁機能体の弁棒を弁体より小径にして該支持部と該弁棒間のシール面積を減少させるようにしてもよい。
【0029】
かかる構成とすれば、真空バルブの構成を簡易なものとすることができるとともに、かかる簡易な構成で真空バルブの弁開閉動作の応答性を向上させることができる。また、真空バルブの全閉機能向上に加えて、空洞部の端面を該支持部の閉動作方向端よりバネ室側に配置させることにより、入口側排気路から空洞部の該端面に負荷される開動作方向の力の分力が該支持部に負荷されることがない。そのため、該支持部に対して弁機能体の芯ズレを生じない。さらに、弁機能体の弁棒を弁体より小径にして該支持部と該弁棒間のシール面積を減少させるようにしているため、支持部と弁機能体との間のシール機能を向上できる。
【0030】
また、第1又は第2の本発明において、前記連通路を、前記バルブハウジング壁に設けられ前記弁機能体の出口側排気路、前記大気圧室及び前記バネ室を接続する連通路と、該連通路に設けられ該バネ室を該弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に切換え接続する三方弁と、から構成するようにすれば、簡単な構成で連通路の切換えを確実に行なうことができる。
【発明の効果】
【0031】
第1の本発明によれば、弁機能体の入口側排気路に面する入口側端面から該大気圧室に至る領域で同一の外径とすることによって、該入口側端面と対面する面を形成しないように構成するとともに、該大気圧室に面する弁機能体に弁機能体の入口側端面と対面する大気圧面を形成し、該大気圧面に大気圧による閉動作方向の作用力を負荷するようにしたことによって、真空バルブの構成を複雑かつ高コストとすることなく、弁機能体の閉動作時に、弁機能体に負荷される開動作方向の力を相殺してスムーズに閉動作させるとともに、閉動作後に、全閉状態を確実に維持することができる。また、真空ポンプの稼動中に真空バルブを閉動作したる時も全閉状態を確実に維持することができる。
【0032】
これによって、真空ポンプ側からの逆流により、真空ポンプの摩耗粉が真空チャンバに侵入したり、あるいは、真空ポンプの潤滑油が真空チャンバに侵入するおそれがなくなる。また、真空ポンプの稼動中に真空バルブを閉鎖して、真空ポンプの稼動状態が安定するまで真空バルブを全閉状態とすることができる。
【0033】
第2の本発明によれば、弁機能体の入口側端面に開口し該弁機能体の長手方向に該バネ室の近傍まで穿設された空洞部を形成し、該空洞部の端面をバネ室に対面するように配置したことにより、前記第1の本発明と同様の作用効果を得ることができるとともに、それに加えて、該空洞部を形成することによって、弁機能体の軽量化を可能にし、弁機能体の応答性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
(実施形態1)
【0035】
図1は、第1の本発明の一実施形態に係る真空バルブの縦断立面図である。図1において、内部雰囲気を排気されて真空状態とされる真空チャンバ31と真空ポンプ32との間に排気路33(33a、33b)が接続され、該排気路に該排気路を開閉可能とする真空バルブ30が介設されている。以下、真空バルブ30の構成を説明する。
【0036】
真空バルブ30は、排気路33にバルブハウジング34が介在され、バルブハウジング34には、真空チャンバ31に接続された入口側排気路33aに連通する真空ポート35と、真空ポンプ32に接続された出口側排気路33bに連通する吸引ポート36が形成されている。バルブハウジング34の内部には、弁機能体40がバルブハウジング34の長手方向に摺動可能に収納されている。
【0037】
弁機能体40は、バルブハウジング34の長手方向に配置された弁棒41と、真空ポート35側に面して弁棒41の端部に取り付けられた弁棒41より大径の円筒形状をなす弁体42と、弁棒41の他端に取り付けられた円板状のピストン43とから構成されている。バルブハウジング34の略中央部にはバルブハウジング34の中心側に突出した支持部37がバルブハウジング34に一体に形成され、該支持部37が弁機能体40をバルブハウジング34の長手方向に摺動可能に支持している。
【0038】
バルブハウジング34の真空ポート35近傍には弁座38が形成され、弁体42は、弁座38に当接又は離間して入口側排気路33aを閉鎖又は開放する入口側端面42aから支持部37に支持される部位まで円周面42bは同一外径をなしている。支持部37と弁機能体40との間には、シール用のOリング44が介装されている。弁座38と入口側端面42aとの間にはOリング45が介装されている。また、ピストン43とバルブハウジング34との間にOリング46が介装され、バルブハウジング34とピストン43との間をシールしている。これによって、ピストン43の両側に面して2つの密閉空間を形成している。
【0039】
ピストン43の一側(図1中ピストン43の左側であって、弁機能体40の閉動作方向a)には、バルブハウジング34に貫設された貫通孔47を介して外気と連通した大気圧室50が形成されている。一方、ピストン43の他側(図1中ピストン43の右側であって、弁機能体40の開動作方向b)には、バネ室51が形成されている。バネ室51には、一端がピストン43の一方の面43bに接続され、他端がバルブハウジング34の内壁に取り付けられたコイルバネ52が縮設されている。
【0040】
また、弁機能体40には、大気圧室50に面して大気圧面50aが形成され、大気圧面50aには大気圧が負荷され、該大気圧によって弁機能体40を閉動作方向aに押す作用力が負荷される。
【0041】
これによって、ピストン43には、大気圧室50側から一方の面43aに大気圧室50の大気圧による作用力が負荷されるとともに、バネ室51側からは、他方の面43bにコイルバネ52のバネ力とバネ室51内のガス圧による作用力との和が負荷される。
【0042】
また、バルブハウジング34には、吸引ポート36と、大気圧室50と、バネ室51とを連通する連通孔53,54及び55が穿設されている。そして、連通孔53〜55には、バネ室51を吸引ポート36又は大気圧室50に選択的に連通する三方電磁弁56が介設されている。三方電磁弁56は、コントローラ57によって連通路53〜55を前述の切り替え動作を行なうように作動される。
【0043】
かかる構成の本実施形態において、弁体42の入口側端面42aが弁座38に当接し、真空ポート35が弁機能体40によって閉鎖された状態で、真空チャンバ31の排気運転を開始する。この場合の運転手順は、コントローラ57によって三方電磁弁56を作動させ、吸引ポート36とバネ室51とを連通させる。同時に、真空ポンプ32を稼動させる。真空ポンプ32の稼動開始によって、吸引ポート36が急速に負圧となり、吸引ポート36とバネ室51とが連通しているために、バネ室51も負圧となる。
【0044】
真空ポンプ32の稼動によってバネ室51が真空圧になると、バネ室51も真空圧となる。これによって、弁機能体40に対して開動作方向bに負荷する力(入口側端面42a及びピストン43の面43aに負荷する力)が弁機能体40を閉動作方向aに負荷する力(弁体42の大気圧面50aに負荷する大気圧及びコイルバネ52のバネ力)を上回る。そして、弁機能体40が閉動作方向aに移動するため、真空ポート35が開放される。この状態で真空ポンプ32の稼動を継続し、真空チャンバ31内の空気を真空ポンプ32で吸引して真空チャンバ31内のを真空状態とする。
【0045】
真空チャンバ31を真空状態とした後、真空ポンプ32の稼動を停止する。真空ポンプ32の停止と同時に、コントローラ57によって三方電磁弁56を作動させ、連通路53と連通路55とを遮断し、連通路54と連通路55とを連通させる。この時バネ室51は真空圧であるため、大気圧室50内の空気がバネ室51内に流入する。
【0046】
大気圧室50とバネ室51とを連通したことによって、大気圧室50からバネ室51に空気が流入し、バネ室51を大気圧とする。これによって、ピストン43のバネ室51側の面43bに大気圧が負荷されるため、弁機能体40に対して閉動作方向aに負荷する力が弁機能体40を開動作方向bに負荷する力を上回る。そのため、弁機能体40が閉動作方向aに移動する。そして、真空ポート35が閉鎖される。
【0047】
このように、本実施形態によれば、弁機能体40を入口側端面42aからバルブハウジング34の支持部37に支持される部位までを同一外径とし、吸引ポート36に面する部位に入口側端面42aと対面する面を形成しない構成としたことにより、入口側端面42aに負荷される開動作方向bの力と入口側端面42aに対面する面に負荷される閉動作方向aの力との間で差圧を形成しないようにし、かつ弁機能体40に大気圧室50に面する大気圧面50aを形成して該大気圧面50aに閉動作方向aの力を負荷するようにしたので、弁閉鎖時に全閉状態を確実に維持することができる。
従って、真空ポンプ32の稼動中に真空バルブ30を閉動作する時も全閉状態を確実に維持することができる。
【0048】
これによって、真空ポンプ32側からの逆流により、真空ポンプ32の摩耗粉が真空チャンバ31に侵入したり、あるいは、真空ポンプ32が給油式の場合に、真空ポンプ32の潤滑油が真空チャンバ31に侵入するおそれがなくなる。また、真空ポンプ32の稼動中に真空バルブ30を閉鎖して、真空ポンプ32の稼動状態が安定するまで真空バルブ30を全閉状態とすることができる。
【0049】
しかも、前述の自動リーク機構を備える必要がないので、真空バルブの構成を複雑にすることがなく、コストアップを招かない。また、バルブ構成を簡素に維持できるので、シール箇所が増えず、このため、リーク発生の危険性が増加するおそれがないとともに、弁開閉動作も複雑にならないので、開閉動作の応答性も低下しない。
【0050】
なお、本実施形態の変形例として、図1において、弁体42の入口側端面42aに開口し弁機能体40の長手方向に空洞部58を穿設するようにするとよい。これによって、弁機能体40を軽量化することができるので、弁機能体40の開閉動作の応答性をさらに向上させることができる。
(実施形態2)
【0051】
次に、第2の本発明の一実施形態を図2に基づいて説明する。図2において、図1に示す前記実施形態と同一の符号を付した部位又は機器は前記実施形態と同一の部位又は機器であるため、それらの説明を省略する。
図2において、弁機能体40は、弁座38に当接又は離間して真空ポート35を閉鎖又は開放する円板状の弁体42と、バルブハウジング34の長手方向に延設された弁体42より小径の弁棒41と、弁棒41の開動作方向b端に一体的に設けられたピストン43からなる。そして、弁機能体40は、バルブハウジング34の中心側に突設されバルブハウジング34と一体に形成された支持部37によって弁棒41が矢印a又はb方向に摺動可能に支持されている。
【0052】
本実施形態では、大気圧室50の大気圧を弁機能体40に対して閉動作方向aに負荷される大気圧面50aは形成されていない。そして、弁機能体40の中心部には弁機能体40の長手方向に沿って空洞部61が穿設されている。該空洞部37の端面は、支持部37の閉動作方向aの端面37aを越えて、バネ室51の近傍に配置されている。
その他の構成は前記実施形態と同一である。
【0053】
本実施形態によれば、真空ポート35から弁機能体40に負荷される開動作方向bの力を空洞部61の端面61aに負荷させるようにし、該端面をバネ室51の近傍に位置させるとともに、該端面をバネ室51に対面するように配置したことにより、真空ポート35から端面61aに負荷される開動作方向aの力を弁機能体40の閉動作時にバネ室51側からピストン43の一方の面43bに負荷される大気圧による作用力によって相殺するようにしたものである。
【0054】
これによって、前述の自動リーク機構を備えることなく、簡単かつ低コストで、弁機能体40の閉動作後に、全閉状態を確実に維持することができるとともに、真空ポンプ32の稼動中に真空バルブ30を閉動作する時も全閉状態を確実に維持することができる。
また、弁機能体40に空洞部61を形成することによって、弁機能体40の軽量化を可能し、これによって弁機能体40の開閉動作の動きをスムーズに行なうようにし、弁機能体40の応答性を向上させることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、空洞部61の端面61aを支持部37の閉動作方向aの端面37aよりバネ室51側に配置し、該端面61aに真空ポート35のガス圧を負荷させるようにしたため、真空ポート35のガス圧が支持部37に向けて負荷されるのをなくすことができる。そのため、弁機能体40の芯ズレを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、弁構成を複雑にする移動リーク機構を備えることなく、簡単かつ安価な構成で、真空バルブの全閉機能を向上できるので、真空バルブ停止時に真空チャンバへの排気の逆流を防止できて、真空チャンバの真空破壊等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態に係る真空バルブの縦断立面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る真空バルブの縦断立面図である。
【図3】従来の真空バルブの縦断立面図である。
【符号の説明】
【0058】
30 真空バルブ
31 真空チャンバ
32 真空ポンプ
33a,33b 排気路
34 バルブハウジング
35 真空ポート(入口側排気路)
36 吸引ポート(出口側排気路)
37 支持部
37a 閉動作方向端面
38 弁座
40 弁機能体
41 弁棒
42 弁体
42a 入口側端面
43 ピストン(仕切り部)
47 貫通孔
50 大気圧室
50a 大気圧面50a
51 バネ室
52 コイルバネ(バネ部材)
53,54,55 連通路
56 三方電磁弁
57 コントローラ
61 空洞部
61a 空洞部端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプと真空チャンバとに連結され該真空チャンバ内の雰囲気を排気する排気路に介設され該排気路を開閉する真空バルブにおいて、
前記排気路に介在されたバルブハウジング、及び該バルブハウジングの内部に摺動自在に収納され該バルブハウジング内に形成された弁座に当接又は離間して該排気路を開閉する弁機能体と、
該弁機能体に一体に形成され該バルブハウジング内を2つの領域に仕切る仕切り部と、
該仕切り部に対して弁機能体の開動作方向に画成されたバネ室、及び該バネ室に装着され該弁機能体に対して閉動作方向へバネ力を付勢するバネ部材と、
該仕切り部に対して弁機能体の閉動作方向に画成され該バルブハウジング壁に設けられた貫通孔を介して大気と連通する大気圧室と、
該バネ室を弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に選択的に接続可能な連通路と、からなり、
弁機能体の入口側排気路に面する入口側端面から該大気圧室に至る領域で同一の外径とすることによって、該入口側端面と対面する面を形成しないように構成するとともに、
該大気圧室に面する弁機能体に弁機能体の入口側端面と対面する大気圧面を形成し、該大気圧面に大気圧による閉動作方向の作用力を負荷するようにしたことを特徴とする真空バルブ。
【請求項2】
前記弁機能体の入口側端面に開口し該弁機能体の長手方向に穿設された空洞部を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
真空ポンプと真空チャンバとに連結され該真空チャンバ内の雰囲気を排気する排気路に介設され該排気路を開閉する真空バルブにおいて、
前記排気路に介在されたバルブハウジング、及び該バルブハウジングの内部に摺動自在に収納され該バルブハウジング内に形成された弁座に当接又は離間して該排気路を開閉する弁機能体と、
該弁機能体に一体に形成され該バルブハウジング内を2つの領域に仕切る仕切り部と、
該仕切り部に対して弁機能体の開動作方向に画成されたバネ室、及び該バネ室に装着され該弁機能体に対して閉動作方向へバネ力を付勢するバネ部材と、
該仕切り部に対して弁機能体の閉動作方向に画成され該バルブハウジング壁に設けられた貫通孔を介して大気と連通する大気圧室と、
該バネ室を弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に選択的に接続可能な連通路と、からなり、
前記弁機能体の入口側端面に開口し該弁機能体の長手方向に該バネ室の近傍まで穿設された空洞部を形成し、該空洞部の端面を前記バネ室に対面するように配置したことを特徴とする真空バルブ。
【請求項4】
前記弁機能体が、
弁棒と、該弁棒の閉動作方向側端部に設けられ前記バルブハウジングに形成された弁座に当接又は離間して排気路を開閉する弁体と、該弁棒の開動作方向端部に設けられ該バルブハウジング内を前記バネ室と前記大気圧室とに仕切る前記仕切り部と、からなり、
該弁棒を該バルブハウジングに一体に形成された支持部に摺動自在に支持させるとともに、該支持部と該仕切り部との間に該大気圧室を画成させ、
前記空洞部の端面を該支持部の閉動作方向端よりバネ室寄りに配置させ、
弁機能体の弁棒を弁体より小径にして該支持部と該弁棒間のシール面積を減少させたことを特徴とする請求項3に記載の真空バルブ。
【請求項5】
前記連通路が、
前記バルブハウジング壁に設けられ前記弁機能体の出口側排気路、前記大気圧室及び前記バネ室を接続する連通路と、該連通路に設けられ該バネ室を該弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に切換え接続する三方弁と、からなることを特徴とする請求項1又は3に記載の真空バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−85242(P2009−85242A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252105(P2007−252105)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】