説明

真空メカニカルジョイント

【課題】真空チャンバ内の部材を支持する軸線方向に移動可能な棒状の支持部材をその軸線に直交する軸回りの自由度を含む所定数の自由度を持ってチャンバ外壁に傾動自在に連結する真空メカニカルジョイントであって、支持部材用のアクチュエータを真空チャンバの外部に配置し、且つ、真空チャンバの気密性も確保できるものを提供する。
【解決手段】チャンバ外壁13に固定され、支持部材7が遊挿される孔813を有する固定ジョイント部材81と、固定ジョイント部材81に、チャンバ外壁13の外側で所定数の自由度を持って傾動自在に連結される可動ジョイント部材83とを備える。支持部材用のアクチュエータ84を可動ジョイント部材83に搭載する。また、支持部材7が挿通される可撓性及び伸縮性を有する筒状隔壁85を設け、その一端部を孔813に連通する状態で固定ジョイント部材81に気密に固定し、他端部を支持部材7に気密に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内の部材を支持する軸線方向に移動可能な棒状の支持部材をその軸線に直交する軸回りの自由度を含む所定数の自由度を持って真空チャンバの外壁に傾動自在に連結する真空メカニカルジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空チャンバ内の部材である例えば基板ステージを3本の棒状支持部材で支持し、各支持部材を各アクチュエータにより軸線方向に移動させて、基板ステージを任意の方向に傾動自在とするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、支持部材の先端部をボールジョイント等の3自由度のジョイントを介して基板ステージに連結すると共に、支持部材の基端部にアクチュエータを連結し、このアクチュエータを、ユニバーサルジョイント等の2自由度のジョイントを介して、支持部材の軸線に直交する軸回りとこの軸に直交する軸回りとの2自由度を持って真空チャンバの外壁内面に傾動自在に連結している。そのため、アクチュエータは真空チャンバ内に配置されることになる。
【0003】
また、従来、ベース板と可動板との間に軸線方向に移動可能な6本の棒状支持部材を配置し、基板ステージを並進3自由度、回転3自由度の計6自由度で動かすことができるようにした6自由度のパラレルリンク機構が知られている(例えば、特許文献2参照)。このものでも、支持部材の基端部にアクチュエータを連結し、このアクチュエータを、2自由度以上のジョイントを介してベース板の内面に傾動自在に連結している。ここで、可動板に相当する真空チャンバ内の部材を上記パラレルリンク機構で支持することも考えられるが、この場合、ベース板に相当する真空チャンバの外壁の内面にアクチュエータが傾動自在に連結されることになる。そのため、アクチュエータは真空チャンバ内に配置されることになる。
【0004】
このように、従来は、支持部材用のアクチュエータが真空チャンバ内に配置されるため、アクチュエータでの発塵で発生するパーティクルにより真空チャンバ内が汚損されることがある。また、かかる不具合を生じないように、アクチュエータとして、その外部へのパーティクルの飛散を防止する真空仕様のものを用いた場合には、コストアップを招く。更に、真空チャンバの容積をアクチュエータの収納スペース分大きくする必要があって、真空チャンバが大型化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−65300号公報
【特許文献2】特開平11−274031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、支持部材用のアクチュエータを真空チャンバの外部に配置し、且つ、真空チャンバの気密性も確保できるようにした真空メカニカルジョイントを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、真空チャンバ内の部材を支持する軸線方向に移動可能な棒状の支持部材をその軸線に直交する軸回りの自由度を含む所定数の自由度を持って真空チャンバの外壁に傾動自在に連結する真空メカニカルジョイントであって、前記外壁に固定され、前記支持部材が前記傾動を許容する隙間を存して挿通される孔を有する固定ジョイント部材と、前記固定ジョイント部材に、前記外壁の外側で前記所定数の自由度を持って傾動自在に連結される可動ジョイント部材と、前記可動ジョイント部材に搭載され、前記支持部材を軸線方向に移動させるアクチュエータと、前記固定ジョイント部材と前記可動ジョイント部材との間で前記支持部材が挿通される可撓性及び伸縮性を有する筒状隔壁とを備え、前記筒状隔壁の一端部は、前記孔に連通する状態で前記固定ジョイント部材に気密に固定され、前記筒状隔壁の他端部は、前記支持部材に気密に固定されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、支持部材が可動ジョイント部材と固定ジョイント部材とを介して真空チャンバの外壁に所定数の自由度を持って傾動自在に連結されることになる。そして、真空チャンバの外壁の外側で固定ジョイント部材に連結される可動ジョイント部材に支持部材用のアクチュエータを搭載することで、真空チャンバの外部にアクチュエータが配置されることになる。そのため、アクチュエータとして真空仕様のものを用いなくても、アクチュエータでの発塵で発生したパーティクルによる真空チャンバ内の汚損を防止でき、更に、真空チャンバの小型化を図ることができる。
【0009】
また、本発明によれば、筒状隔壁の内部空間は、固定ジョイント部材の孔を介して真空チャンバに連通するが、筒状隔壁の一端部と他端部を夫々固定ジョイント部材と支持部材に気密に固定するため、筒状隔壁の内部空間は大気には連通しない。従って、固定ジョイント部材の孔を介しての真空チャンバと大気との連通が筒状隔壁により遮断され、真空チャンバの気密性を確保できる。更に、筒状隔壁は、支持部材の傾動に伴なって撓むと共に、支持部材の軸線方向移動に伴なって伸縮する。そのため、支持部材の動きが筒状隔壁によって妨げられることはなく、支持部材の動きの円滑性も確保できる。
【0010】
尚、筒状隔壁の他端部を、支持部材ではなく、可動ジョイント部材に固定することも考えられる。然し、これでは、支持部材をアクチュエータに連結するために可動ジョイント部材に形成する支持部材用の挿通孔に筒状隔壁の内部空間が連通するため、この孔と支持部材との間の隙間を閉塞するシール手段が必要になる。これに対し、本発明の如く筒状隔壁の他端部を支持部材に固定すれば、筒状隔壁だけで真空チャンバの気密性を確保でき、構造の簡素化を図ることができる。
【0011】
また、本発明において、前記可動ジョイント部材を前記支持部材の軸線に直交する第1軸回りと第1軸に直交する第2軸回りとの2自由度を持って前記固定ジョイント部材に傾動自在に連結する場合には、前記固定ジョイント部材と前記可動ジョイント部材との間に、前記筒状隔壁が挿通される環状の中間胴部材を備え、中間胴部材に前記可動ジョイント部材を前記第1軸回りに傾動自在に連結すると共に、前記固定ジョイント部材に前記中間胴部材を前記第2軸回りに傾動自在に連結することが望ましい。
【0012】
これによれば、可動ジョイント部材が中間胴部材を介して固定ジョイント部材に第1軸回りと第2軸回りとの2自由度を持って傾動自在に連結されることになる。そして、環状の中間胴部材に筒状隔壁が挿通されるため、筒状隔壁に対し中間胴部材が干渉することはなく、この干渉で支持部材の動きが妨げられることを防止できる。
【0013】
また、前記固定ジョイント部材を前記孔の孔軸回りに相対回転自在な外周側部材と内周側部材との2部材に分割し、前記外周側部材を前記外壁に気密に固定し、前記内周側部材に、前記孔を形成すると共に、前記可動ジョイント部材を前記所定数の自由度を持って傾動自在に連結すれば、内周側部材の回転自由度と合わせて前記所定数+1の自由度のジョイントを構成できる。また、固定ジョイント部材を2部材に分割しなくても、前記可動ジョイント部材に対し前記支持部材をその軸線回りに回転自在とすれば、支持部材の回転自由度と合わせて前記所定数+1の自由度のジョイントを構成できる。尚、固定ジョイント部材を2部材に分割する場合、前記筒状隔壁の一端部を前記孔に連通する状態で前記内周側部材に気密に固定するが、外周側部材と内周側部材との間を介して真空チャンバが大気に連通することを筒状隔壁で防止することはできない。従って、外周側部材と内周側部材を相対回転自在に気密性を持って連結して、真空チャンバが外周側と内周側の両部材間を介して大気に連通することを防止することが必要になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の真空メカニカルジョイントを組み付ける真空チャンバの一例を示す断面図。
【図2】実施形態の真空メカニカルジョイントの斜視図。
【図3】実施形態の真空メカニカルジョイントの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、1は真空チャンバを示している。真空チャンバ1の底壁11には、図示省略した真空ポンプに連なる排気管12が接続されており、真空ポンプによって真空チャンバ1内が所定の真空度に保持される。尚、この真空チャンバ1は、ガラス基板Sの上方にマスクMを対向配置した状態で、ガラス基板Sの上面にプラズマCVD法によりバリア膜等の薄膜を形成する成膜処理を行うものである。
【0016】
真空チャンバ1内には、ガラス基板Sを支持する基板ステージ2が設けられている。基板ステージ2は、シリンダ等の駆動源3により昇降される、真空チャンバ1の底壁11を気密に貫通する昇降ロッド31の上端に連結されている。そして、基板ステージ2を、昇降ロッド31の動きで、図外の搬送ロボットと基板ステージ2との間でのガラス基板Sの受け渡しを行う下降位置と、成膜処理を行う上昇位置との間で昇降させるようにしている。
【0017】
真空チャンバ1内には、更に、上昇位置の基板ステージ2上のガラス基板Sに近接対向するようにマスクMを保持するマスク保持体4が設けられている。マスク保持体4は環状の枠体で構成されている。そして、マスクMの周縁部下面に形成した段差部をマスク保持体4の内周面に嵌合させることで、マスクMがマスク保持体4に位置決め保持されるようにしている。
【0018】
また、真空チャンバ1は、環状の天井壁13を備えており、天井壁13の内周に、絶縁部材14を介してガス導入部5が装着されている。ガス導入部5は、天板51と、天板51の周縁部に垂設した周壁52と、周壁52の下端に取り付けた、複数の透孔53aを有するシャワ―プレート53とで構成される。天板51には、天板51とシャワープレート53との間に画成される空間にプロセスガスを供給するガス供給管54と、高周波電源55とが接続されている。
【0019】
成膜処理に際しては、プロセスガスをシャワープレート53を介して真空チャンバ1内に導入すると共に、ガス導入部5に高周波電源55からの電力を供給して、真空チャンバ1内でプラズマを発生させる。すると、プラズマ中でプロセスガスが分解されて、このガスがマスクMに形成した所定パターンの開口部(図示省略)に合致するガラス基板Sの上面部分に供給され、この部分に気相からの析出により薄膜が形成される。
【0020】
ここで、ガラス基板Sの所定部分に正確に成膜するには、ガラス基板Sに対しマスクMを正確に位置合わせすることが必要になる。そのためには、ガラス基板Sに対するマスクMのずれ量を計測する必要がある。そこで、ガラス基板Sの周縁部の複数箇所にアライメントマークSmを形成すると共に、マスクMの周縁部の複数個所に、ガラス基板Sの各アライメントマークSmの上方に位置するように、透孔から成るアライメントマークMmを形成している。尚、図1では1箇所のアライメントマークSm,Mmのみを図示している。また、基板ステージ2に、ガラス基板Sの各アライメントマークSmの下方に位置するように、透光性部材を嵌め込んだ撮像孔21を設けると共に、真空チャンバ1の底壁11に、各撮像孔21の下方に位置させて、透光性部材を嵌め込んだ撮像窓15を設け、各撮像窓15の下方にCCDカメラ等から成る撮像手段6を配置している。
【0021】
ガラス基板Sに対するマスクMのずれ量の計測は、基板ステージ2にガラス基板Sを載置して、基板ステージ2を上昇位置に上昇させた後、成膜処理を開始する前に行う。このずれ量の計測に際しては、先ず、各撮像手段6によりガラス基板Sの各アライメントマークSmとガラス基板S越しにマスクMの各アライメントマークMmとを撮像する。次に、各撮像手段の画像データに基づいて、各アライメントマークSmに対する各アライメントマークMmの変位を求め、この変位からガラス基板Sに対するマスクMのずれ量(水平の直交2方向たるX,Y方向と鉛直軸回りのθ方向のずれ量)を計測する。
【0022】
また、基板ステージ2の傾き等でガラス基板SとマスクMとが平行にならず、ガラス基板SとマスクMとの間の隙間が広くなる部分が生ずると、隙間の広い部分では、マスクMの開口部以外の部分の下にガスが回り込んで成膜精度が悪化してしまう。そのため、ガラス基板Sに対するマスクMの傾きを計測し、ガラス基板2に対しマスクMが平行になるようにマスク保持体4を傾動させることが必要になる。
【0023】
そこで、マスクMとガラス基板Sとの間の3箇所の隙間量を図示省略したレーザー変位計等の測定手段により測定し、3箇所の隙間量からガラス基板Sに対するマスクMの傾き方向及び傾き角度を計測するようにしている。
【0024】
マスク保持体4は、真空チャンバ1の天井壁13に開設した開口部13aを通して下方にのびる6本の棒状支持部材7(図1では2本の支持部材のみを図示)で支持されている。各支持部材7は、その軸線方向に移動可能であって、その下端がボールジョイント等の3自由度のジョイント41を介してマスク保持体4に連結されている。また、各支持部材7は、後述する2自由度の真空メカニカルジョイント8により、支持部材7の軸線に直交する第1軸回りと第1軸に直交する第2軸回りとの2自由度を持って真空チャンバ1の外壁たる天井壁13に傾動自在に連結されている。これにより、天井壁13とマスク保持体4とを結ぶ6自由度のパラレルリンク機構が構成される。そして、公知のパラレルリンク機構と同様に、各支持部材7の軸線方向移動量を制御することにより、マスク保持体4をX、Y方向及びZ方向(鉛直方向)に移動させると共にθ方向に回転させ、更には、任意の方向に傾動させることができる。そのため、マスク保持体4を、ガラス基板Sに対するマスクMのずれ量の計測結果に応じて、X,Y方向に移動させたりθ方向に回転させて、ガラス基板Sに対しマスクMを位置合わせすることができ、更に、マスク保持体4を、ガラス基板Sに対するマスクMの傾き方向と傾き角度の計測結果に応じた所定の方向に所定角度傾動させて、ガラス基板Sに対しマスクMを平行にすると共に、マスク保持体4をZ方向に移動させて、ガラス基板SとマスクMとの間の隙間量を正規値にすることができる。
【0025】
以下、図2、図3を参照して、真空メカニカルジョイント8について詳述する。真空メカニカルジョイント8は、真空チャンバ1の天井壁13に固定される固定ジョイント部材81と、環状の中間胴部材82と、天井壁13の外側(上方)で固定ジョイント部材81に中間胴部材82を介して連結される可動ジョイント部材83とを備えている。
【0026】
固定ジョイント部材81は、天井壁13の上面に開口部13aを覆うようにして気密に固定される円板部811と、円板部811の周囲の180°離れた2箇所に立設した一対の突片部812とを有している。円板部811の中央部には、支持部材7が上記傾動を許容する隙間を存して挿通される孔813が形成されている。可動ジョイント部材83は、円板部831と、円板部831の周囲の180°離れた2箇所に垂設した一対の突片部832とを有している。
【0027】
尚、真空メカニカルジョイント8は、マスク保持体4よりも大径の配置円上に配置されている。そのため、支持部材7は、その中立姿勢(マスク保持体4を所定の設定位置に支持するときの姿勢)において、軸線が鉛直方向に対し傾斜している。そこで、固定ジョイント部材81の円板部811の上面を、支持部材7の中立姿勢での軸線に直交する傾斜面に形成し、この傾斜面の法線に沿うように各突片部812を突設している。
【0028】
中間胴部材82の外周面には、周方向に180°離れた2箇所に一対の第1軸部821が突設されると共に、第1軸部821から周方向に90°離れた2箇所に一対の第2軸部822が突設されている。そして、可動ジョイント部材83の各突片部832に各第1軸部821を軸受け821aを介して軸着して、中間胴部材82に可動ジョイント部材83が第1軸部821回りに傾動自在に連結されるようにしている。また、固定ジョイント部材81の各突片部812に各第2軸部822を軸受け822aを介して軸着して、固定ジョイント部材81に中間胴部材82が第2軸部822回りに傾動自在に連結されるようにしている。尚、第1軸部821と第2軸部822を夫々可動ジョイント部材83と固定ジョイント部材81の突片部832,812に突設し、各軸部821,822を中間胴部材82に軸着するようにしてもよい。
【0029】
真空メカニカルジョイント8は、更に、可動ジョイント部材83に搭載した、支持部材7をその軸線方向に移動させるアクチュエータ84を備えている。このアクチュエータ84は、モータ841と、モータ841により回転駆動されるボールナット842と、ボールナット842に螺挿される、支持部材7と一体のボールねじ843とから成る電動式送りねじ機構で構成される。より具体的に説明すれば、可動ジョイント部材83の円板部831上に、円板部831の中央部に形成した孔833と同心の第1筒部844aとその側方の第2筒部844bとを有するハウジング844を固定し、第2筒部844bの下端にモータ841を取り付けている。第2筒部844bには、モータ841に連結される駆動プーリ845が軸受け845aを介して軸支されており、第1筒部844aには、駆動プーリ845にベルト846を介して連結される従動プーリ847が軸受け847aを介して軸支されている。そして、従動プーリ847の中央部にボールナット842を固定し、モータ841により駆動プーリ845とベルト846と従動プーリ847とを介してボールナット842が回転駆動されるようにしている。また、ボールねじ843には、図示省略するが、ねじ溝に加えてスプライン溝が形成されている。そして、このスプライン溝に係合するボール(図示省略)を内蔵するボールスプライン筒848を第1筒部844aの下端部に固定し、ボールねじ843を回り止めしている。かくして、モータ841によりボールナット842を回転駆動することでボールねじ843、即ち、支持部材7がその軸線方向に移動される。
【0030】
ここで、支持部材7の軸線は、可動ジョイント部材83の孔833の孔軸(ボールナット842及びボールスプライン筒848の軸線)に合致する。そして、中間胴部材82に第1軸部821を介して可動ジョイント部材83を連結した状態において、第1軸部821は、上記孔軸、即ち、支持部材7の軸線に直交する。そのため、第1軸部821は、支持部材7の軸線に直交する上記第1軸となり、第2軸部822は、第1軸に直交する上記第2軸となる。従って、中間胴部材82に可動ジョイント部材83が上記第1軸回りに傾動自在に連結され、固定ジョイント部材81に中間胴部材82が上記第2軸回りに傾動自在に連結されて、可動ジョイント部材83が中間胴部材82を介して上記第1軸回りと上記第2軸回りとの2自由度を持って固定ジョイント部材81に傾動自在に連結されることになる。即ち、支持部材7を上記第1軸回りと上記第2軸回りとの2自由度を持って天井壁13に傾動自在に連結する2自由度のジョイントが構成されることになる。
【0031】
また、真空メカニカルジョイント8は、固定ジョイント部材81と可動ジョイント部材83との間で支持部材7が挿通される、可撓性及び伸縮性を有するベローズから成る筒状隔壁85を備えている。この筒状隔壁85は、環状の中間胴部材83に挿通されている。筒状隔壁85の一端部(下端部)は、固定ジョイント部材81に、これに形成した孔813に連通する状態で気密に固定されている。尚、本実施形態では、固定ジョイント部材81の円板部811の上面に孔813を囲うように筒状隔壁85の下端部を気密に固定しているが、孔813の周面に筒状隔壁85の下端部を気密に固定してもよい。
【0032】
また、筒状隔壁85の他端部(上端部)は、支持部材7に気密に固定されている。ここで、筒状隔壁85の下端部は、支持部材7が隙間を存して挿通される固定ジョイント部材81の孔813に連通させる必要性から、支持部材7よりも大径に形成される。そのため、筒状隔壁85の上端部をその下端部と同径に形成した場合、このままでは筒状隔壁85の上端部を支持部材7に固定できなくなる。そこで、本実施形態では、支持部材7に、ボールねじ843の下端に隣接して、径方向外方に張出すフランジ部71を設け、このフランジ部71に筒状隔壁85の上端部を気密に固定している。尚、フランジ部71を省略し、筒状隔壁85の上端部を縮径させて、支持部材7の外周面に筒状隔壁85の上端部を気密に固定してもよい。
【0033】
本実施形態の真空メカニカルジョイント8によれば、固定ジョイント部材81に真空チャンバ1の天井壁13の外側で傾動自在に連結される可動ジョイント部材83を設けて、この可動ジョイント部材83に支持部材7用のアクチュエータ84を搭載するため、真空チャンバ1の外部にアクチュエータ84が配置されることになる。そのため、アクチュエータ84として真空仕様のものを用いなくても、アクチュエータ84での発塵で発生したパーティクルによる真空チャンバ1内の汚損を防止できる。更に、真空チャンバ1内にアクチュエータを収納するものと異なり、真空チャンバ1内にアクチュエータの収納スペースを確保する必要がなく、真空チャンバ1の小型化を図ることができる。
【0034】
また、筒状隔壁85の内部空間は、固定ジョイント部材81の孔813を介して真空チャンバ1に連通するが、筒状隔壁85の下端部と上端部を夫々固定ジョイント部材81と支持部材7に気密に固定するため、筒状隔壁85の内部空間は大気には連通しない。従って、固定ジョイント部材81の孔813を介しての真空チャンバ1と大気との連通が筒状隔壁85により遮断されることになり、真空チャンバ1の気密性を確保できる。また、筒状隔壁85は、支持部材7の傾動に伴なって撓むと共に、支持部材7の軸線方向移動に伴なって伸縮する。従って、支持部材7の動きが筒状隔壁85で妨げられることはなく、支持部材7の動きの円滑性も確保できる。更に、環状に形成した中間胴部材82に筒状隔壁85が挿通されるため、筒状隔壁85に対し中間胴部材82が干渉することはなく、この干渉で支持部材7の動きが妨げられることを防止できる。
【0035】
尚、筒状隔壁85の上端部を、支持部材7ではなく、可動ジョイント部材83に固定することも考えられる。然し、これでは、可動ジョイント部材83の孔833が筒状隔壁85の内部空間に連通するため、孔833とボールねじ843との間の隙間をシールするシール手段が必要になる。これに対し、本実施形態の如く筒状隔壁85の上端部を支持部材7に固定すれば、筒状隔壁85だけで真空チャンバ1の気密性を確保でき、構造の簡素化を図る上で有利である。
【0036】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態の真空メカニカルジョイント8は、可動ジョイント部材83を第1軸(第1軸部821)回りと第2軸(第2軸部822)回りの2自由度を持って固定ジョイント部材81に傾動自在に連結した2自由度のジョイントで構成されているが、以下の如く2自由度のジョイントを構成することも可能である。即ち、固定ジョイント部材81を孔813の孔軸回りに相対回転自在な外周側部材と内周側部材との2部材に分割し、外周側部材をチャンバ外壁に固定し、内周側部材に、孔813を形成すると共に、可動ジョイント部材83を支持部材7の軸線に直交する軸回りの1自由度を持って傾動自在に連結すれば、内周側部材の回転自由度と合わせて2自由度のジョイントを構成できる。この場合、筒状隔壁85の一端部を孔813に連通する状態で内周側部材に気密に固定するが、外周側部材と内周側部材との間を介して真空チャンバ1が大気に連通することを筒状隔壁85で防止することはできない。従って、外周側部材と内周側部材を相対回転自在に気密性を持って連結して、真空チャンバ1が外周側と内周側の両部材間を介して大気に連通することを防止することが必要になる。
【0037】
ところで、6自由度のパラレルリンク機構を構成するには、支持部材7とマスク保持体4との間のジョイント41の自由度の数と真空メカニカルジョイント8の自由度の数との和を5以上にすることが必要であって、真空メカニカルジョイント8を上記の如く2自由度のジョイントとする場合、ジョイント41は3自由度のボールジョイントで構成せざるを得ない。然し、ボールジョイントの真空潤滑には未だ懸念があるため、ジョイント41を2自由度のものにすること、即ち、真空メカニカルジョイント8を3自由度のものにすることが要求される可能性がある。ここで、固定ジョイント部材81を上記の如く相対回転自在な外周側部材と内周側部材との2部材に分割する場合、内周側部材に可動ジョイント部材83を上記実施形態の如く2自由度を持って傾動自在に連結すれば、真空メカニカルジョイント8を3自由度のものに構成できる。また、固定ジョイント部材81を2部材に分割しなくても、上記実施形態において、支持部材7を可動ジョイント部材83に対し支持部材7の軸線回りに回転自在とすれば、真空メカニカルジョイント8を3自由度のものに構成できる。具体的には、可動ジョイント部材83にボールスプライン筒848を介して回り止めされるボールねじ843に支持部材7を回転自在に連結して、可動ジョイント部材83に対し支持部材7をその軸線回りに回転自在とする。但し、筒状隔壁85の捩りに対する剛性で支持部材7の回転が拘束されないように、筒状隔壁85を固定する支持部材7の部分であるフランジ部71はボールねじ843と一体とし、フランジ部71以外の支持部材7の部分を可動ジョイント部材83に対し回転自在とすることが望ましい。尚、筒状隔壁85が自由に捩れるものであるなら、フランジ部71を含む支持部材7全体を回転自在としてもよい。
【0038】
また、真空チャンバ1内の部材である例えば基板ステージ2を複数の支持部材7で単純に昇降させるだけであるなら、真空メカニカルジョイント8として、可動ジョイント部材83を支持部材7の軸線に直交する軸回りの1自由度を持って固定ジョイント部材81に傾動自在に連結する1自由度のジョイントを用いてもよい。
【0039】
また、筒状隔壁85は、全体として可撓性と伸縮性を有するものであればよく、その全長に亘って可撓性と伸縮性を有するものに限定されない。例えば、筒状隔壁85の長手方向中間に、中間胴部材82や可動ジョイント部材83の突片部832に固定される環状固定部材を介設し、この環状固定部材と固定ジョイント部材81との間の筒状隔壁の部分を可撓性を有するものとし、環状固定部材と支持部材7との間の筒状隔壁の部分を伸縮性を有するものとしてもよい。また、アクチュエータ84として電動式送りねじ機構以外の例えば油圧シリンダを用いることも可能である。但し、支持部材7の軸線方向移動量を精密に制御するには、上記実施形態の如く電動式送りねじ機構を用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0040】
1…真空チャンバ、13…天井壁(真空チャンバの外壁)、4…マスク保持体(真空チャンバ内の部材)、7…支持部材、8…真空メカニカルジョイント、81…固定ジョイント部材、813…孔、82…中間胴部材、821…第1軸部(第1軸)、822…第2軸部(第2軸)、83…可動ジョイント部材、84…アクチュエータ、85…筒状隔壁。



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内の部材を支持する軸線方向に移動可能な棒状の支持部材をその軸線に直交する軸回りの自由度を含む所定数の自由度を持って真空チャンバの外壁に傾動自在に連結する真空メカニカルジョイントであって、
前記外壁に固定され、前記支持部材が前記傾動を許容する隙間を存して挿通される孔を有する固定ジョイント部材と、
前記固定ジョイント部材に、前記外壁の外側で前記所定数の自由度を持って傾動自在に連結される可動ジョイント部材と、
前記可動ジョイント部材に搭載され、前記支持部材を軸線方向に移動させるアクチュエータと、
前記固定ジョイント部材と前記可動ジョイント部材との間で前記支持部材が挿通される可撓性及び伸縮性を有する筒状隔壁とを備え、
前記筒状隔壁の一端部は、前記孔に連通する状態で前記固定ジョイント部材に気密に固定され、前記筒状隔壁の他端部は、前記支持部材に気密に固定されることを特徴とする真空メカニカルジョイント。
【請求項2】
請求項1記載の真空メカニカルジョイントであって、前記可動ジョイント部材を前記支持部材の軸線に直交する第1軸回りと第1軸に直交する第2軸回りとの2自由度を持って前記固定ジョイント部材に傾動自在に連結するものにおいて、
前記固定ジョイント部材と前記可動ジョイント部材との間に、前記筒状隔壁が挿通される環状の中間胴部材を備え、
前記中間胴部材に前記可動ジョイント部材を前記第1軸回りに傾動自在に連結すると共に、前記固定ジョイント部材に前記中間胴部材を前記第2軸回りに傾動自在に連結することを特徴とする真空メカニカルジョイント。
【請求項3】
前記固定ジョイント部材は、前記孔の孔軸回りに相対回転自在に気密性を持って連結される外周側部材と内周側部材との2部材に分割され、前記外周側部材が前記外壁に気密に固定され、前記内周側部材に、前記孔が形成されると共に、前記可動ジョイント部材が前記所定数の自由度を持って傾動自在に連結され、更に、前記筒状隔壁の一端部が前記孔に連通する状態で前記内周側部材に気密に固定されることを特徴とする請求項1又は2記載の真空メカニカルジョイント。
【請求項4】
前記支持部材は、前記可動ジョイント部材に対し前記支持部材の軸線回りに回転自在であることを特徴とする請求項1又は2記載の真空メカニカルジョイント。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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