説明

真空保存装置

【課題】容器内を所定の内圧にできると共に効率良く吸引作業を行なえ、さらに、液体の誤吸入を防止する真空保存装置を提供する。
【解決手段】開閉可能な弁を有する真空保存用の容器と、該容器内を減圧する吸引装置2とから成る真空保存装置であって、吸引装置2は、容器内のエアーを吸引する減圧ポンプPとその減圧ポンプPを駆動させる電気モータMとを有するポンプユニット21と、ポンプユニット21の駆動・停止を制御する制御部50と、備えている。そして、上記制御部50は、予め実測したポンプユニット21の負荷電流特性、及び、駆動中のポンプユニット21への電流値から、容器内が所定の内圧となったか否かを判定する真空度判定手段55aを有し、さらに、制御部50は、電流値から、減圧ポンプPが液体を誤吸入したか否かを判定する液体誤吸入判定手段55bを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空保存装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食料品等の良好な保存状態を保つ目的や漬物等を即席で製造するために、開閉可能な弁を有する真空保存容器と、その真空保存容器の内部エアーを吸引可能な吸引装置と、から成る真空保存装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−199681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、容器の内圧(真空度)が容易に確認できないため、保存や漬物の製造に適した所定の内圧となる前に吸引作業を止めてしまい、十分な保存効果を得ることができないといった問題や、所定の内圧となっているにも関わらず吸引作業が継続され、作業に無駄が生じ効率が悪いと言う問題があった。
また、吸引作業の際に、誤って液体を吸入してしまうと、吸引装置から液体が溢れ、容器や周辺を汚してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、容器内を所定の内圧にできると共に効率良く吸引作業を行なえ、さらに、液体の誤吸入を防止できる真空保存装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の真空保存装置は、開閉可能な弁を有する真空保存用の容器と、該容器内を減圧する吸引装置とから成る真空保存装置に於て、上記吸引装置は、上記容器内のエアーを吸引する減圧ポンプと該減圧ポンプを駆動させる電気モータとを有するポンプユニットと、上記ポンプユニットの駆動・停止を制御する制御部と、備え、上記制御部は、予め実測した上記ポンプユニットの負荷電流特性、及び、駆動中の上記ポンプユニットへの電流値から、上記容器内が所定の内圧となったか否かを判定する真空度判定手段を有し、さらに、上記制御部は、上記電流値から、上記減圧ポンプが液体を誤吸入したか否かを判定する液体誤吸入判定手段を有するものである。
【0007】
また、上記制御部は、上記ポンプユニットの駆動時間から、上記容器内が密封状であるか否かを判定する密封不良判定手段を有するものである。
また、上記吸引装置には、上記ポンプユニットへ電気を供給する蓄電池が設けられ、上記ポンプユニットの駆動中の電圧値から、上記蓄電池を交換すべきか否かを判定する電池交換時期判定手段を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の真空保存装置によれば、容器内が所定内圧(真空度)となると自動的にポンプユニットが停止するので、電源を手動で切り忘れる心配がなくなり、手間が省かれる。さらに、切り忘れによる電気の不要な消費(例えば、蓄電池の早期消耗)を防止できる。また、液体を誤吸入すると自動的にポンプユニットが停止して、電気の不要な消費(例えば、蓄電池の早期消耗)を防止し、かつ、容器や周辺を汚さないで済む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】実施の形態の使用状態の斜視図である。
【図3】吸引装置の一例を示す要部断面図である。
【図4】吸引装置の一例を示す分解斜視図であり、(a)は全体分解斜視図であり、(b)は要部分解斜視図である。
【図5】容器の一例を示す斜視図である。
【図6】使用状態の要部断面図である。
【図7】使用状態の別の要部断面図である。
【図8】吸引装置のブロック説明図である。
【図9】制御部を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
本発明の真空保存装置は、図1及び図2に於て、開閉可能な弁体12が取着された蓋本体10と、蓋本体10によって内部が密閉される透明な樹脂成型品の容器本体9と、を有する保存用の容器1を備えている。また、容器1内のエアーを弁12を介して吸引し、容器1内を減圧可能な短円柱状の吸引装置2を備えている。
【0011】
図3と図4に於て、吸引装置2は、吸引容器1の内のエアーを吸引するための流体用ダイヤフラムポンプ等の減圧ポンプPと、減圧ポンプPを駆動させるための直流用小型の電気モータMと、を有するポンプユニット21を備えている。また、ポンプユニット21の電気モータMへ電気を供給する乾電池や充電池等の蓄電池Bと、ポンプユニット21の電気モータMの駆動・停止を制御可能な制御基板から成る制御部50と、を備えている。
【0012】
制御部50は、押しボタン式等の電源スイッチである手動操作手段51と、発光ダイオード(LED)等の表示手段59と、を有している。また、図8に示すように、蓄電池Bからポンプユニット21への電流を測定するための電流測定手段52と、ポンプユニット21にかかる電圧(蓄電池Bの電圧)を測定するための電圧測定手段53と、ポンプユニット21への電気の供給を制御可能な制御スイッチ等の駆動・停止手段58と、を有している。
【0013】
さらに、制御部50は、容器1内が所定の内圧となったか否かを判定する真空度判定手段55aと、減圧ポンプPが液体を誤吸入したか否かを判定する液体誤吸入判定手段55bと、容器1内が密封状であるか否かを判定する密封不良判定手段55cと、蓄電池Bを交換すべきか否かを判定する電池交換時期判定手段55dと、電源スイッチである手動操作手段51の切り忘れか否かを判定する切り忘れ判定手段55eと、を有する判定手段55を備えている。
判定手段55は、CPU(中央演算処理装置)等の演算手段、及び、ROMやRAM等の記憶手段から成るものである。また、判定手段55は、手動操作手段51の入力信号、電流測定手段52からの電流値信号、電圧測定手段53からの電圧値信号、を読取及び記憶して演算可能に設けられている。また、制御部50は、判定手段55の判定に基づいて、駆動・停止手段58や表示手段59を制御可能に設けている。
【0014】
真空度判定手段55aは、予め実測したポンプユニット21の負荷電流特性、及び、駆動中のポンプユニット21への電流値から、容器1内が所定の内圧となったか否かを判定する。
予め実測したポンプユニット21の負荷電流特性とは、先ず、負圧計によって内圧が測定可能な実験用の容器1と、駆動中のポンプユニット21への電流値が測定可能な測定器を準備し、実験用の容器1の内部エアーを吸引装置2で実際に吸入した際の、容器1内の真空度と、内部エアーを吸引中(負荷がかかっている際)のポンプユニット21の電流値と、の関係である。また、駆動中のポンプユニット21への電流値(以下、駆動電流値という場合もある。)とは、使用者が吸引装置2を駆動させた際に制御部50によって計測される電流値である。なお、所定の内圧とは、食料品保存や、漬物の製造・保存に適した内圧であって、大気圧を0KPaとした場合に、−25KPa以下−55KPa以上である。より好ましくは−35KPa以下−45KPa以上である。
【0015】
ポンプユニット21は、容器1内を所定の内圧とする場合に、電流値が上昇した後に低下し次第に安定する負荷電流特性を有するものである。つまり、ポンプユニット21の電流値がピーク値(最大値)を越えて低下した所定の値のとき、容器1の容積に関係なく、その容器1内を所定の内圧とするものである。
【0016】
真空度判定手段55aは、予め得た負荷電流特性のピーク値と、所定の内圧となった時の電流値(負圧完了電流値と呼ぶ場合もある)から導き出された関係式を記憶している。そして、駆動電流値を監視しピーク値を検出するよう設けると共に、検出したピーク値と関係式によって算出された負圧完了電流値以下に駆動電流値がなった場合に、容器1内が所定の内圧となったと判定するように設けている。
【0017】
具体的に説明すると、真空度判定手段55aは、電流測定手段52により10ms間隔で32回測定される電流の平均値を駆動電流値とし、前後に測定した駆動電流値を比較してピーク値を検出する。そして、関係式をピーク値×0.9として、その解であるピーク値の90%の値を負圧完了電流値とするように設けると共に、駆動電流値が負圧完了電流値以下の場合に所定の内圧となったと判定するように設けている。また、真空度判定手段55aは、ポンプユニット21の駆動直後のノイズのような不要なピークを検出しないように、ポンプユニット21が駆動して所定時間経過後にピーク値の検出を開始するように設けている。
【0018】
液体誤吸入判定手段55bは、駆動電流値から減圧ポンプPが液体を誤吸入したか否かを判定する。ポンプユニット21は、減圧ポンプPが液体を吸入した場合に、電気モータMに負荷がかかり、駆動電流値が上昇するものである。
液体誤吸入判定手段55bは、液体を誤吸入した場合の電流値を予め実測したポンプユニット21の液体誤吸入電流特性、及び、駆動電流値、から液体を誤吸入したか否かを判定するように設けられている。予め実測したポンプユニット21の液体誤吸入電流特性とは、ポンプユニット21への電流を測定可能な測定器を準備し、実験用の容器1の内部に液体(水)を入れて、実際に液体を誤吸入させた際の電流値の変化である。
そして、液体誤吸入判定手段55bは、実際に液体を誤吸入した場合の電流値を限界電流値として予め記憶している。また、測定した駆動電流値と予め記憶している限界電流値とを比較・演算するように設けると共に、限界電流値以上となった場合に液体を誤吸入したと判定するように設けている。言い換えると、限界電流値未満の場合は液体を誤吸入していないと判定する。
【0019】
または、液体誤吸入判定手段55bを、液体を誤吸入した場合を予測した電流値を限界電流値として予め記憶しているように設けても良い。
あるいは、液体誤吸入判定手段55bを、急激な駆動電流値の上昇を検知するように設けると共に、駆動電流値が急激に上昇した場合に液体を誤吸入したと判定するように設けても良い。急激な駆動電流値の上昇を検知するように設けるとは、測定した前後の駆動電流値の差を演算するように設ける場合や、所定の基準電流値と駆動電流値との差を演算するように設ける場合である。具体的には、限界電流値を450mA以上500mA以下としている。より好ましくは470mA以上490mA以下とする。
【0020】
密封不良判定手段55cは、ポンプユニット21の駆動時間から、容器1内が密封状であるか否か(密封不良か否か)を判定する。密封不良判定手段55cは、作業を行なうのに十分な時間を所定作業時間として予めを記憶している。また、駆動開始からの時間を測定するように設けると共にポンプユニット21の駆動時間が駆動開始から所定作業時間を越えると容器1の密封不良と判定するように設けている。具体的には、所定作業時間を、1分以上2分以下としている。より好ましくは、80秒以上100秒以下とする。なお、密封状でない(密封不良)とは、容器本体9に蓋本体10が適切に施蓋されていない場合や、容器本体9と蓋本体10のシールの損傷等によって、容器1内が外部と常時連通しているような場合である。
【0021】
電池交換時期判定手段55dは、ポンプユニット21が駆動中の蓄電池Bの電圧値(以下、駆動電圧値と呼ぶ場合もある。)から、蓄電池Bを交換すべきか否かを判定する。また、ポンプユニット21が駆動する前の蓄電池Bの電圧値(以下、駆動前電圧値と呼ぶ場合もある)から蓄電池Bを交換すべきか否かを判定する。
電池交換時期判定手段55dは、電圧測定手段53により10ms間隔で32回測定される電圧の平均値を電圧値とし、ポンプユニット21が容器1内のエアーを十分な吸引力で吸引作業可能な電圧値を限界電圧値として予め記憶している。つまり、ポンプユニット21が単に駆動することが可能な場合の電圧値よりも高い電圧値を限界電圧値としている。また、吸引作業中に電力が消費され電圧低下する駆動電圧値を監視すると共に、測定した駆動電圧値が限界電圧値を越えていない場合(限界電圧値以下の場合)に蓄電池Bを交換すべきと判定するように設けている。さらに、手動操作手段51をON操作した場合に、駆動前電圧値を測定し、限界電圧値を越えていない場合に蓄電池Bを交換すべきと判定するように設けている。なお、限界電圧値は、蓄電池Bの最大電圧値の65〜85%の電圧値としている。例えば、蓄電池Bが4本の単三乾電池とした場合は、最大電圧値は6Vであり、限界電圧値は最大電圧値の75%である4.5Vとしている。
【0022】
切り忘れ判定手段55eは、例えば、使用者が電源を入れたまま吸引作業を行なわずに吸引装置2を放置しているような場合に、ポンプユニット21の駆動時間から、使用者が電源スイッチである手動操作手段51を切り忘れたか否かを判定する。切り忘れ判定手段55eは、所定作業時間が予め記憶されると共に、駆動時間が駆動開始から所定作業時間を越えると使用者が手動操作手段51を切り忘れたと判定するように設けている。切り忘れ判定手段55eが記憶している所定作業時間は、密封不良判定手段55cに記憶させた所定作業時間と同じである。
【0023】
そして、制御部50は、判定手段55の判定に基づいて、駆動・停止手段58を操作し、ポンプユニット21の駆動・停止を制御する。蓄電池Bを交換すべきと判定した場合、密封不良と判定した場合、液体誤吸入と判定した場合、切り忘れと判定した場合、はポンプユニット21の駆動を停止する。また、表示手段59に判定内容を表示する。例えば、表示手段59がLEDやランプである場合は、判定毎に点滅する速度(間隔)を異ならせることで上記の判定内容を表示して使用者に伝達する。具体的には、密封不良及び切り忘れと判定した場合は、タイムアウト用の表示として、表示手段59を0.5秒間隔で10秒間点滅させる。吸引作業中に蓄電池Bを交換すべきと判定した場合は、電圧低下用の表示として、表示手段59を0.25秒間隔で10秒間点滅させる。液体誤吸入用の表示としては、表示手段59を0.1秒間隔で10秒間点滅させる。
【0024】
次に、容器1は、図1と図5乃至図7に於て、蓋本体10に、容器1の内方向に窪んで弁12を包囲する水平面状の底面を有する環状凹溝10aと、弁12が設けられる円形凹状の弁室10bと、を有している。環状凹溝10aと弁室10bの間に環状壁部10cを有している。
また、弁12は、傘状弁体12aと、容器1内部と外部を連通する通気孔19の近傍の弁座12bと、から成り、傘状弁体12aが弁座12bに接触・離間することで、通気孔19を開閉するものである。
【0025】
蓋本体10は、中央部に貫孔11aを有する円盤状の蓋部材11と、蓋部材11の中央部近傍に揺動自在に枢着されると共に貫孔11aを施蓋可能な負圧解除用の揺動部材13と、貫孔11a近傍に取着されると共に蓋部材11と揺動部材13の間を密封するパッキン部材14と、を備えている。
【0026】
揺動部材13は、弁12と、弁室10bと、環状壁部10cと、通気孔19と、を有している。また、揺動部材13は、蓋部材11に設けられる係止突部11bと係合して貫孔11aを施蓋した状態に保持するための係止爪部13aを有している。貫孔11aを施蓋した状態の揺動部材13は、吸引装置2が容器1内のエアーを弁12を介して吸引可能に配設されている。施蓋状態から揺動されると、弁12が貫孔11a近傍から離間し、容器1内が貫孔11aを介して外部と連通状態となり容器1内の負圧状態を解除する。つまり、容器本体9から蓋本体10を容易に取り外させる。
【0027】
次に、吸引装置2は、図3及び図4に於て、制御部50と、蓄電池Bが収納される蓄電池用ケース部材39と、ポンプユニット21等が内装される収納空間部40を有する短円柱状のケーシング30を有している。蓄電池用ケース部材39と、制御部50と、ポンプユニット21は、収納空間部40内で内ホルダー部材35に保持されている。なお、図2に示した使用状態で、容器1側を下方と呼ぶ。容器1から吸引装置2を離間する方向を上方と呼ぶ。
【0028】
ケーシング30は、底壁30aから下方に突出して、容器1の環状凹溝10aに嵌入自在な環状凸隆部44を有している。環状凸隆部44は水平面状の下面を有している。容器1の環状凹溝10aや、テーブル等の水平状面部に面接触して、吸引装置2を起立(直立)状に載置可能としている。つまり、作業者は、容器1や吸引装置2を保持する必要がなく他の作業を行なうことができる。
【0029】
さらに、ケーシング30は、環状凸隆部44の内部に空間を設けることで、誤吸入した液体を貯液可能な貯液槽部41を形成している。そして、貯液槽部41に対応する底壁30aに吐出用配管部材37を介して減圧ポンプPの吐出口に連結される吐出用貫孔43を形成している。ポンプユニット21が液体を誤吸入しても、制御部50により停止されるだけでなく、吸い込んでしまった液体を貯液槽部41に収納するように設けている。つまり、誤吸入した液体の漏れや収納空間部40内で溢れるのを防止し、容器1及び周辺が汚れるのを防止できる。
【0030】
また、ケーシング30は、底壁30aと環状凸隆部44の内周面44aによって形成された空室部45を有している。空室部45に対応する底壁30aから下方に煙突状に突設されると共に環状凸隆部44と同心状の吸入口部42を有している。吸入口部42は吸入用配管部材36を介してポンプPの吸込口に連結されている。
【0031】
空室部45内に、吸入口部42が差し込まれる吸入孔3aを有する吸盤部材3を設けている。吸盤部材3の外周縁3bには、球状の係止膨出部3dを有する引張用の細杆3cが上方へ突設されている。また、吸盤部材3は、吸入孔3aの外周壁の一部を、上下方向に伸縮自在な蛇腹部3eとしている。吸盤部材3は、自然状態で環状凸隆部44の下面よりも突出しないように設けている。吸盤部材3がテーブル面等に直接触れず衛生的に吸引装置2を起立状に載置可能としている。
【0032】
また、吸入口部42に取着された吸盤部材3が下方へ引っ張られて蛇腹部3eが伸長した状態で、係止膨出部3dの下面側に接触する係止部46を底壁30aから突設させている。
吸盤部材3が容器1に吸着した状態から、ケーシング30を上方へ持ち上げると、吸盤部材3の係止膨出部3dを係止して細杆3cを介して外周縁3bを上方にめくり上げるように係止部46を設けている。
つまり、図7に示すように、吸引作業後に吸引装置2と容器1を離間させるようにケーシング30は上方に引き上げると、吸盤部材3は、蛇腹部3eが伸長し容器1に吸着した状態となると共に係止膨出部3dが係止部46により上方に引き上げられる。その後、係止膨出部3dが引っ張られることで、細杆3cを介しての外周縁3bが容器1から剥離され、吸盤部材3をスムーズに離間できる。
【0033】
また、ケーシング30は、図3と図4に於て、上方側にホルダー部材35が取着すると共に下方側に吸盤部材3が取着される有底短円筒状の基台ケース部材33と、基台ケース部材33と共に貯液槽部41を形成して基台ケース部材33の下方側に外嵌状に取着するキャップケース部材34と、基台ケース部材33と共に収納空間部40を形成して基台ケース部材33の上方側に外嵌状に取着するカバーケース部材32と、カバーケース部材32に外嵌状に取着される蓋ケース部材31と、を有している。つまり、蓋ケース部材31と、カバーケース部材32と、基台ケース部材33と、キャップケース部材34と、が上下方向に着脱自在に係合して短円柱状のケーシング30を形成している。具体的には、吸引装置2は直径が60mm以上80mm以下で、高さが90mm以上110mm以下の携帯可能な小型の短円柱形状に形成されている。
【0034】
キャップケース部材34は、透明な樹脂成型品であって、円環状に形成され、下方向に凹設された円環状凹部34aを有している。この円環状凹部34aと、ケーシング30の底壁30aでもある基台ケース部材33の底壁と、に囲まれた空間が貯液槽部41である。つまり、キャップケース部材34と基台ケース部材33を着脱自在に設け、分離可能とすることで貯液槽部41内を容易に洗浄でき清潔に保てる。
【0035】
また、ケーシング30は、基台ケース部材33の外周面とキャップケース部材34の内周面の間に、貯液槽部41から外部及び収納空間部40への液体が漏れるのを防止するOリング等の液漏れ防止用(第1)シール部材27を介設している。また、カバーケース部材32の内周面と基台ケース部材33の外周面の間に、貯液槽部41及び外部から収納空間部40への液体の侵入を防止するOリング等の液体侵入防止用(第2)シール部材28を介設している。また、カバーケース部材32の外周面と蓋ケース部材31の内周面の間に、収納空間部40への液体等の侵入を防止するOリング等の防滴用(第3)シール部材29を介設している。液漏れ防止用シール部材27及び液体侵入防止用シール部材28は、基台ケース部材33に外嵌状に取着している。防滴用シール部材29はカバーケース部材32に外嵌状に取着している。
また、蓋ケース部材31の天井壁に、制御部50の手動操作手段51を操作可能な操作ボタン部31aと表示手段59を視認可能な窓部31bを設けている。また、操作ボタン部31a及び窓部31bから液体が侵入しないように、蓋ケース部材31の上面に図示省略の薄い防水シールを貼着している。即ちケーシング30は防水・防滴処理を施している。
【0036】
上述した本発明の真空保存装置の実施の形態の作用について説明する。
保存すべき食料品(図示省略)等の入った容器1の環状凹溝10aに吸引装置2の環状凸隆部44を嵌入させる。そして、蓋ケース部材31のボタン部31aを介して手動操作手段51をON操作する。
【0037】
手動操作手段51がON操作されると図9に示すように、制御部50が制御をスタートし、先ずステップS1に於て表示手段59を点灯させる。次にステップS2に進んで蓄電池Bの駆動前電圧値を測定する。
【0038】
ステップS3に於て、電池交換時期判定手段55dが、測定した駆動前電圧値が限界電圧値を越えているか否か比較・演算する。
測定した駆動前電圧値が限界電圧値を越えていなければ(限界電圧値以下の場合)、ステップS30に進み、蓄電池Bを交換すべきと判定する。さらに、表示手段59に電圧低下用の表示をさせる。制御部50は、駆動・停止手段58を介してポンプユニット21を駆動させず、さらに、表示手段59を消灯させ、自動で電源をOFFし強制終了する。
測定した電圧値が限界電圧値を越えていれば、ステップS4に進みポンプユニット21を駆動させる。
【0039】
次のステップS5に於て、密封不良判定手段55c及び切り忘れ判定手段55eは、ポンプユニット21の駆動時間を計測及び監視し、所定作業時間以内か否か判定する。
所定作業時間を越えていれば、ステップS50に進み、容器1が密封されていない状態(密封不良)、あるいは、ポンプユニット21を駆動させたまま使用者が吸引装置2を放置した切り忘れ状態と判定処理する。制御部50は、ポンプユニット21を停止させ、さらに、表示手段59にタイムアウト用の表示をさせる。その後、表示手段59を消灯し自動で電源をOFFし作業を強制終了させる。
所定作業時間以内であれば、ステップS6に進みポンプユニット21の駆動中の蓄電池Bの電圧値を測定する。
【0040】
次のステップS7に於て、電池交換時期判定手段55dが、測定した駆動電圧値が限界電圧値を越えているか否か比較・演算し、ポンプユニット21の駆動中に蓄電池が消耗して電圧が低下したか否かを判定処理する。
測定した駆動電圧値が限界電圧値を越えていなければ(限界電圧値以下の場合)、ステップS70に進み、蓄電池Bを交換すべきと判定する。制御部50は、ポンプユニット21を停止させ、さらに、表示手段59に電圧低下用の表示をさせる。その後、表示手段59を消灯し自動で電源をOFFし作業を強制終了させる。
測定した駆動電圧値が限界電圧値を越えていれば、ステップS8に進み駆動電流値を測定する。
【0041】
次のステップS9に於て、液体誤吸入判定手段55bが、測定した駆動電流値が限界電流値未満か否か比較・演算する。
駆動電流値が限界電流値未満でなければ(限界電流値以上の場合)、ステップS90に進み、ポンプPが液体を誤吸入したと判定処理する。制御部50は、ポンプユニット21を停止させ、さらに、表示手段59に液体誤吸入用の表示をさせる。その後、表示手段59を消灯し自動で電源をOFFし作業を強制終了させる。
測定した電流値が限界電流値未満であれば、ポンプユニット21を駆動させたままにし、次のステップS10に進む。
【0042】
次のSステップ10に於て、真空度判定手段55aは、ポンプユニット21が駆動開始してから電流のピーク値測定開始時間となったか否か判定する。
ピーク値測定開始時間であれば、ステップS11に進んで、測定された前後の駆動電流値を比較して得られた電流ピーク値を記憶する。
【0043】
ステップS12に於て、電流ピーク値の更新を確認する。更新されるとステップS13に進んで、更新された電流ピーク値から負圧完了電流値を演算しステップS14に進む。
電流ピーク値が更新されなくなると電流値が上昇から下降になったと判断しステップS14に進む。
【0044】
ステップS14に於て、真空度判定手段55aは、測定された駆動電流値が、演算した負圧完了電流値以下か否かを比較・演算する。
駆動電流値が負圧完了電流値を越えていれば、容器1内はまだ所定の内圧になっていないと判断し再びステップS5に戻る。密封不良及び切り忘れでなければ(所定作業時間以内であれば)、真空度判定手段55aは、駆動電流値の測定や負圧完了電流値の演算等を繰り返し行なう。
駆動電流値が負圧完了電流値以下であれば、ステップS15に進み、容器1内が所定の内圧(真空度)になったと判定処理する。制御部50は、ポンプユニット21を停止させ、その後、表示手段59を消灯し、作業が終了したことを使用者に知らせる。制御部50の制御処理が終了すると共に自動で電源がOFFとなり、容器1内が所定の内圧(真空度)となった状態で吸引作業を終了させる。
【0045】
また、スタート後にどのステップであっても、手動操作手段51がOFF操作された場合は、制御部50によってポンプユニット21は停止されると共に表示手段59は消灯され作業を強制終了する。
【0046】
なお、本発明は設計変更可能であって、例えば、蓄電池Bを省略して、代わりに、ACアダプタ付の100Vコンセント等を設けて、外部から電源をとっても自由である。また、駆動時間の測定・監視や密封不良判定手段55cの判定が行なわれる密封不良処理行程、駆動時間の測定・監視や切り忘れ判定手段55eの判定が行なわれる切り忘れ判定処理行程、電圧値の測定や電池交換時期判定手段55dの判定が行なわれる電池交換時期判定処理行程、駆動電流値の測定や液体誤吸入判定手段55bの判定が行なわれる液体後吸入判定処理行程は、上述したステップの順番でなくとも良い。また、各判定処理行程を平行(同時)処理するように設けても良い。
【0047】
以上のように、本発明は、開閉可能な弁12を有する真空保存用の容器1と、容器1内を減圧する吸引装置2とから成る真空保存装置に於て、吸引装置2は、容器1内のエアーを吸引する減圧ポンプPと減圧ポンプPを駆動させる電気モータMとを有するポンプユニット21と、ポンプユニット21の駆動・停止を制御する制御部50と、備え、制御部50は、予め実測したポンプユニット21の負荷電流特性、及び、駆動中のポンプユニット21への電流値から、容器1内が所定の内圧となったか否かを判定する真空度判定手段55aを有し、さらに、制御部50は、電流値から、減圧ポンプPが液体を誤吸入したか否かを判定する液体誤吸入判定手段55bを有するので、容器1内を所定の内圧(真空度)となると、自動的にポンプユニット21が停止するので、手動で電源を切る手間が省略でき、特に、従来の見づらかった真空表示部を確認するわずらわしさから開放される。かつ、切り忘れによる電気の不要な消費を防ぎ得る。また、吸入した液体が溢れるような液体の誤吸入を防止して容器1や周辺等が汚れず清潔に作業できる。不要な吸引時間を削減できる。圧力センサや液体感知センサ等の高価な部品を使用せず安価で小型に製造できる。ポンプユニット21の負荷電流特性を用いて制御するので、容器1の容積に左右されない安定した内圧制御を行なうことができる。
【0048】
また、制御部50は、ポンプユニット21の駆動時間から、容器1内が密封状であるか否かを判定する密封不良判定手段55cを有するので、容器1のシール不良等によって、容器1内が密封されていないにもかかわらず吸引作業が継続されてしまうような不要なポンプユニット21の駆動を防止でき、電気の不要な消費を防止でき、不要な吸引時間を短縮・削減できる。
【0049】
また、吸引装置2には、ポンプユニット21へ電気を供給する蓄電池Bが設けられ、上記制御部50は、ポンプユニット21の駆動中の電圧値から、蓄電池Bを交換すべきか否かを判定する電池交換時期判定手段55dを有するので、蓄電池Bの交換時期が容易にわかる。常に、適正な強い吸引力を得て迅速に容器1内を所定の内圧にすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 容器
2 吸引装置
12 弁
21 ポンプユニット
50 制御部
55a 真空度判定手段
55b 液体誤吸入判定手段
55c 密封不良判定手段
55d 電池交換時期判定手段
B 蓄電池
M 電気モータ
P 減圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な弁(12)を有する真空保存用の容器(1)と、該容器(1)内を減圧する吸引装置(2)とから成る真空保存装置に於て、
上記吸引装置(2)は、上記容器(1)内のエアーを吸引する減圧ポンプ(P)と該減圧ポンプ(P)を駆動させる電気モータ(M)とを有するポンプユニット(21)と、上記ポンプユニット(21)の駆動・停止を制御する制御部(50)と、備え、
上記制御部(50)は、予め実測した上記ポンプユニット(21)の負荷電流特性、及び、駆動中の上記ポンプユニット(21)への電流値から、上記容器(1)内が所定の内圧となったか否かを判定する真空度判定手段(55a)を有し、
さらに、上記制御部(50)は、上記電流値から、上記減圧ポンプ(P)が液体を誤吸入したか否かを判定する液体誤吸入判定手段(55b)を有することを特徴とする真空保存装置。
【請求項2】
上記制御部(50)は、上記ポンプユニット(21)の駆動時間から、上記容器(1)内が密封状であるか否かを判定する密封不良判定手段(55c)を有する請求項1記載の真空保存装置。
【請求項3】
上記吸引装置(2)には、上記ポンプユニット(21)へ電気を供給する蓄電池(B)が設けられ、上記制御部(50)は、上記ポンプユニット(21)の駆動中の電圧値から、上記蓄電池(B)を交換すべきか否かを判定する電池交換時期判定手段(55d)を有する請求項1又は2記載の真空保存装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−281214(P2010−281214A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132856(P2009−132856)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(593057263)多田プラスチック工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】