説明

真空容器およびプラズマ処理装置

【課題】 真空容器として十分な機械的強度を維持しつつ、軽量化を図ると共に、その材料費および加工費を極力軽減できる真空容器を提供する。
【解決手段】 プラズマ処理容器100aは、角筒形状に成形された下部容器1と、この下部容器1に組み合わされる上部容器10とを有している。上部容器10は、枠体21と、この枠体21に絶縁部材23を介して連結されたシャワーヘッド25と、これら枠体21およびシャワーヘッド25の上方に配設された梁構造体27とを備え、シャワーヘッド25を構成するベース板31は大気圧の外部空間に露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板などの被処理体に対して真空状態でプラズマ処理などを行う際に、被処理体を収容する真空容器および該真空容器を備えたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)に代表されるFPDの製造過程においては、真空下でガラス基板等の被処理体に、エッチング、成膜等の各種処理が施される。プラズマを利用して前記処理を行うために、真空引き可能なプラズマ処理容器を備えたプラズマ処理装置が使用される。プラズマ処理容器は、真空状態でプラズマ処理を行うため、容器内外の圧力差に耐え得るだけの強度が必要である。そのため、従来のプラズマ処理容器では、内部に被処理体を収容する容器本体と、この容器本体に対して開閉可能に構成された蓋体を、共にアルミニウム等の材質の肉厚な部材で形成することにより、真空装置としての機械的強度を持たせていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、近年、FPD用の基板に対する大型化の要求が強まっており、それに対応してプラズマ処理容器も大型化する傾向にある。現在では一辺が2mを超える巨大な基板を処理対象とするプラズマ処理容器も製造されており、今後、さらに大型化することが必至である。このようにプラズマ処理容器が大型化した結果、大気圧に耐えうる強度を維持するためには、容器を構成する部材の厚みを増加させる必要がある。例えば、現在の第8世代(2200mm×2400mm)の液晶ディスプレイ用基板を処理するプラズマ処理容器でさえも、蓋体に加わる大気圧は60tを超える。このため、蓋体のたわみを防止するには、蓋体の肉厚を200mm程度まで厚くする必要がある。その結果、蓋体についての材料費や加工費だけでも膨大になり、その削減が求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開2006−283096号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、真空容器として十分な機械的強度を維持しつつ、軽量化を図ると共に、その材料費および加工費を極力軽減できる真空容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る真空容器は、被処理体に対し真空状態で所定の処理を行なう処理空間を形成する真空容器であって、上部が開口した箱型をなし、内部に被処理体を載置する載置台が配置される下部容器と、前記下部容器に対して開閉可能に構成され、閉状態で前記下部容器と気密に接合される上部容器と、を備え、
前記上部容器は、前記下部容器の開口端に当接させられる第1の枠体と、該第1の枠体に固定された梁構造体と、前記梁構造体に外側から連結されて支持された状態で前記処理空間に処理ガスを導入するシャワーヘッドと、を有し、
前記シャワーヘッドの上部を大気圧空間に露出させた状態で前記梁構造体によって大気圧に対する耐圧強度を持たせている。
【0007】
本発明の第1の観点に係る真空容器において、前記シャワーヘッドは、多数のガス吐出孔を有して前記載置台に対向配備されたガス噴射板と、該ガス噴射板を支持するベース板と、前記ガス噴射板と前記ベース板とによって区画される内部のガス拡散空間と、を有しており、大気圧の外部空間に露出した前記ベース板を前記梁構造体によって支持するように構成することが好ましい。この場合、前記ベース板は、前記処理空間を真空にした状態で単体では大気圧に対する必要な耐圧強度を有さない厚みで形成されていることが好ましい。
【0008】
本発明の第1の観点に係る真空容器において、前記シャワーヘッドを上部電極とし、前記載置台を下部電極として、前記処理空間内にプラズマを発生させるための一対の対向電極を形成していることが好ましい。
【0009】
本発明の第1の観点に係る真空容器において、前記ベース板と前記第1の枠体との間に、絶縁性材料からなるスペーサー部材を配備することが好ましい。
【0010】
また、本発明の第1の観点に係る真空容器は、前記ベース板と前記梁構造体との間に、導電性プレート部材を備えており、前記ベース板から前記導電性プレート部材を介して前記第1の枠体へ向けて電流の経路が形成されるように構成されていることが好ましい。この場合、前記ベース板と前記導電性プレート部材が、前記ベース板の中央部において電気的に接続されていることが好ましい。
【0011】
本発明の第1の観点に係る真空容器において、前記梁構造体と前記シャワーヘッドを、前記シャワーヘッドの高さ位置を可変に調整可能な複数の連結手段によって連結することが好ましい。
【0012】
本発明の第1の観点に係る真空容器において、前記梁構造体がアーチ形状の梁部材を有していることが好ましい。
【0013】
本発明の第2の観点に係る真空容器は、被処理体に対し真空状態で所定の処理を行なう処理空間を形成する真空容器であって、
上部が開口した箱型をなし、内部に被処理体を載置する載置台が配置される下部容器と、
前記下部容器に対して開閉可能に構成され、閉状態で前記下部容器と気密に接合される上部容器と、
を備え、
前記上部容器は、前記下部容器の開口端に当接させられる第1の枠体と、該第1の枠体に固定された梁構造体と、下部電極としての前記載置台に対向して配置されると共に、前記梁構造体に外側から連結されて支持された上部電極と、を有し、
前記上部電極の上部を大気圧空間に露出させた状態で前記梁構造体によって大気圧に対する耐圧強度を持たせている。
【0014】
本発明の第2の観点に係る真空容器は、前記上部電極と前記梁構造体との間に導電性プレート部材を備えており、前記上部電極から前記導電性プレート部材を介して前記第1の枠体へ向けて電流の経路が形成されるように構成されていることが好ましい。この場合、前記上部電極と前記導電性プレート部材が、前記上部電極の中央部において電気的に接続されていることが好ましい。
【0015】
本発明の第3の観点に係る真空容器は、被処理体に対し真空状態で所定の処理を行なう処理空間を形成する真空容器であって、
内部に被処理体を載置する載置台が配置される下部容器と、
前記下部容器に対して開閉可能に構成され、閉状態で前記下部容器と気密に接合される上部容器と、
を備え、
前記下部容器は、前記上部容器に当接させられるとともに前記載置台を支持する支持部を有する第2の枠体と、該第2の枠体に固定された梁構造体と、を有しており、
前記第2の枠体の前記支持部で前記載置台を支持しつつ、前記載置台の底部を大気圧空間に露出させた状態で前記梁構造体によって大気圧に対する耐圧強度を持たせている。
【0016】
本発明の第4の観点に係るプラズマ処理装置は、上記いずれかに記載の真空容器を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の真空容器によれば、第1の枠体と梁構造体とシャワーヘッドにより上部容器を構成し、シャワーヘッドの上部を大気圧の外部空間に露出させた状態で、梁構造体によって真空容器として必要な耐圧強度を持たせる構成とした。このため、従来の真空容器に必要であった、耐圧強度を有する肉厚で重い蓋体を設けてシャワーヘッドを保護する必要がなくなり、従来の真空容器に比べて、容器の上部を大幅に軽量化できるとともに、材料費・加工費などを大幅に節減することができる。
【0018】
また、本発明の真空容器によれば、蓋体を設けず、シャワーヘッドの上部が大気圧の外部空間に露出した状態になっていることから、シャワーヘッドに対するメンテナンスなどを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、図1〜図5を参照しながら、本実施の形態に係る真空容器を備えたプラズマエッチング装置100について説明を行う。図1は、プラズマエッチング装置100の外観を示す斜視図であり、図2は、プラズマエッチング装置100の概略構成を示す断面図である。また、図3および図4は図2の要部を拡大した断面図である。プラズマエッチング装置100は、例えばFPD用のガラス基板(以下、単に「基板」と記す)Sに対してプラズマエッチング処理を行なうための装置として構成されている。なお、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0020】
図1および図2に示したように、プラズマエッチング装置100は、矩形をした基板Sに対してエッチングを行なう容量結合型の平行平板プラズマエッチング装置として構成されている。このプラズマエッチング装置100は、例えば内面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる角筒形状に成形された下部容器1と、この下部容器1に組み合わされる上部容器10とを有している。下部容器1と上部容器10とによって、真空容器であるプラズマ処理容器100aが構成されている。
【0021】
図2に示したように、下部容器1は、底壁1aおよび4方の側壁1bにより構成されて上部が開口した筐体である。底壁1aと側壁1bとは、例えば切削加工などによって箱型に一体成型され、表面にアルマイト処理(陽極酸化処理)が施されている。なお、下部容器1は接地電位となっている。
【0022】
下部容器1内の底部には、枠形状の絶縁部材3が配置されている。絶縁部材3の上には、基板Sを載置可能な載置台であるサセプタ5が設けられている。
【0023】
下部電極でもあるサセプタ5は、基材7を備えている。基材7は、例えばアルミニウムやステンレス鋼(SUS)などの導電性材料で形成されている。基材7は、絶縁部材3の上に配置され、両部材の接合部分にはOリングなどのシール部材13が配備されて気密性が維持されている。絶縁部材3と下部容器1の底壁1aとの間も、シール部材14により気密性が維持されている。基材7の側部外周は、絶縁部材17により囲まれている。これによって、サセプタ5の側面の絶縁性が確保され、プラズマ処理の際の異常放電が防止されている。
【0024】
上部容器10は、図示しない開閉機構により、下部容器1に対して開閉可能に構成されている。上部容器10を閉じた状態で上部容器10と側壁1bとの接合部分には、シール部材としてのOリング19が配備され、上部容器10と側壁1bとの接合部分の気密性が確保されている。
【0025】
上部容器10は、主要な構成として、第1の枠体としての枠体21と、この枠体21に絶縁部材23を介して連結されたシャワーヘッド25と、これら枠体21およびシャワーヘッド25の上方に配設された梁構造体27とを備えている。なお、シャワーヘッド25を枠体21に直接連結する場合は、絶縁部材23は不要である。
【0026】
枠体21は、下部容器1と同様の材質、例えば内面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムなどにより形成され、全体として略四角形の枠状をしている。枠体21は、下部容器1の側壁1bの上端(下部容器1の開口端)に当接されている。枠体21と側壁1bとの当接部位には、前記Oリング19が配備されて真空容器としての気密性が保たれている。
【0027】
梁構造体27は、枠体21の上に、枠体21と略同様の大きさで載置された枠形状の外梁27aと、この外梁27aの内側に格子状に配設された内梁27bと、を有している。梁構造体27としては、十分な剛性を持つ材質例えば鉄、ステンレスなどを用いることができる。梁構造体27を構成する部材としては、例えばH形鋼などを好ましく用いることができる。外梁27aと内梁27b、および内梁27bどうしの交差部位は、例えば溶接等の方法で接合されている。外梁27aは、枠体21に、例えばボルト等の連結手段(図示省略)で固定されている。
【0028】
シャワーヘッド25は、サセプタ5の上方においてサセプタ5と平行に、かつサセプタ5に対向して配備されている。シャワーヘッド25は、プラズマ処理容器100a内で処理ガスのプラズマを生成させるための上部電極としても機能する。シャワーヘッド25は、例えば陽極酸化処理したアルミニウムなどからなるベース板31と、サセプタ5との対向面に多数のガス吐出孔33を備えたガス噴射板35とを有している。ベース板31は、例えば65mmから75mmの範囲内の肉厚で形成されている。従って、ベース板31は、プラズマ処理容器100a内を真空状態(例えば1×10−3Pa以下の真空状態)とした場合に、それ自体(単体)では、大気圧に抗する耐圧強度は有していない。ベース板31とガス噴射板35との間には、ガス拡散空間36が形成されている。ベース板31とガス噴射板35は、両部材の周辺部およびガス拡散空間36に架渡された複数の吊部材38により固定されている。上部電極としてのシャワーヘッド25は、下部電極としてのサセプタ5とともに一対の平行平板電極を構成している。
【0029】
図3は、連結手段29によるベース板31と梁構造体27の取付け構造を示す拡大断面図である。シャワーヘッド25のベース板31は、梁構造体27の外梁27aおよび内梁27bに、ベース板31の高さ方向の位置を調整可能な連結手段29により機械的に固定され、複数の接続部材115により電気的に接続されている。この連結手段29は、絶縁スペーサー101、スクリューアジャスタ102、ボルト103、ナット104および絶縁部材105を有している。梁構造体27は、ベース板31に絶縁スペーサー101およびスクリューアジャスタ102を介してボルト103により取付けられている。スクリューアジャスタ102は、梁構造体27の取付孔106に挿入され、ナット104によって締結されている。ボルト103は、絶縁部材105の上からスクリューアジャスタ102内に挿入され、ベース板31を梁構造体27の方へ引き付けるように固定されている。ボルト103とスクリューアジャスタ102との間には絶縁のための隙間が形成されている。このようにスクリューアジャスタ102とナット104を用いた取付け構造としたことにより、スクリューアジャスタ102の固定位置(ナット104による締結位置)を上下に微調整することができるため、梁構造体27にベース板31を確実に固定できる。なお、絶縁スペーサー101および絶縁部材105を装着せず、連結手段29によってベース板31と梁構造体27との間の電気的接続を図ることも可能であり、その場合は、接続部材115を省略することができる。また、例えば治具などを用いて高さ調整を行うことにより、絶縁スペーサー101を省略してもよい。さらに、スクリューアジャスタ102とボルト103との間を大気(隙間)で絶縁する代わりに、絶縁部材を介在させて絶縁してもよい。
【0030】
シャワーヘッド25の上部中央付近には、ガス導入口37が設けられている。このガス導入口37には、処理ガス供給管39が接続されている。この処理ガス供給管39には、2つのバルブ41,41およびマスフローコントローラ43を介して、エッチングのための処理ガスを供給するガス供給源45が接続されている。処理ガスとしては、例えばハロゲン系ガスやOガスのほか、Arガス等の希ガスなどを用いることができる。
【0031】
前記下部容器1の底部の4隅には、排気口51が4箇所に形成されている。排気口51には排気管53が接続されており、この排気管53は排気装置55に接続されている。排気装置55は、例えばターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、これによりプラズマ処理容器100a内を所定の減圧雰囲気まで真空引きすることが可能に構成されている。
【0032】
また、下部容器1の一方の側壁1bには、該側壁1bに貫通形成された開口部としての基板搬送用開口61が設けられている。この基板搬送用開口61は、ゲートバルブ(図示省略)によって開閉される。そして、このゲートバルブを開にした状態で基板搬送用開口61を介して基板Sが搬入出されるようになっている。
【0033】
サセプタ5の基材7には、給電線71が接続されている。この給電線71にはマッチングボックス(M.B.)73を介して高周波電源75が接続されている。これにより、高周波電源75から例えば13.56MHzの高周波電力が、下部電極としてのサセプタ5に供給される。なお、給電線71は、底壁1aに形成された開口77を介して処理容器内に導入されている。
【0034】
また、上部容器10の下面には、枠体21、絶縁部材23およびシャワーヘッド25(ガス噴射板35)の連結部分を覆うように、例えばセラミックスなどの絶縁材料により枠状に形成されてなるシールドプレート81が配備されている。このシールドプレート81は、プラズマ処理容器100a内で生成されたプラズマを、サセプタ5の上方空間(つまり、基板Sの上方)にフォーカスさせるとともに、枠体21、絶縁部材23およびガス噴射板35の接合境界部分をプラズマによる曝露からシールドする機能を有している。
【0035】
図4に拡大して示したように、シールドプレート81は、螺子91等の固定手段で絶縁部材23に装着されている。螺子91は、プラズマ処理容器100a内(プラズマ生成空間)に金属材料が露出することを避ける目的で、図示のように、螺子頭91aが通常の螺子に比べて低く形成されており、かつ、例えばセラミックス(アルミナ)や石英などの絶縁材料からなるカバー93によって、螺子頭91aが絶縁被覆されている。また、螺子頭91a及びカバー93を、シールドプレート81に埋め込んだ構成にしても良い。
【0036】
シールドプレート81は、枠状をなしており、その内周側が外周側に比べて傾斜的に肉薄に形成されたテーパー部81aを有している。プラズマ処理容器100aでプラズマエッチング処理を繰り返し行うと、容器内部に反応生成物などによる堆積物が形成されていく。特に部材と部材の接合部分の段差が形成されている場合、段差部分はプラズマに直接曝され難くなるため、堆積物が蓄積されやすく、パーティクル発生の原因となりやすい。テーパー部81aは、シールドプレート81とガス噴射板35との間に形成される段差を極力小さくし、段差部分における堆積物の蓄積を防止する機能を有している。
【0037】
また、図5(a)に、シールドプレート81が装着された上部容器10を下方から観た状態(つまり、上部容器10の下面)を示すとともに、同図(b)に、シールドプレート81のコーナー部81bの拡大図を示した。上記と同様に、堆積物の蓄積を抑えてパーティクルの発生を防止する観点から、矩形の枠状をなすシールドプレート81の内周の4隅のコーナー部81bは、丸みを持った形状に加工されている。このように、テーパー部81aを設け、さらに角を丸め加工することで、堆積物の蓄積を極力抑え、パーティクルの発生を防止している。なお、シールドプレート81は、図5(c)に示したように断面形状が半球状あるいは半楕円形状となるように形成してもよい。
【0038】
次に、以上のように構成されるプラズマエッチング装置100における処理動作について説明する。まず、図示しないゲートバルブが開放された状態で、被処理体である基板Sが、図示しない搬送装置によって基板搬送用開口61を介して下部容器1内へと搬入され、サセプタ5へ基板Sの受渡しが行われる。その後、ゲートバルブが閉じられ、排気装置55によって、下部容器1内が所定の真空度まで真空引きされる。
【0039】
次に、バルブ41を開放して、処理ガスをガス供給源45から処理ガス供給管39、ガス導入口37を介してシャワーヘッド25のガス拡散空間36へ導入する。この際、マスフローコントローラ43によって処理ガスの流量制御が行われる。ガス拡散空間36に導入された処理ガスは、さらに複数のガス吐出孔33を介してサセプタ5上に載置された基板Sに対して均一に吐出され、下部容器1内の圧力が所定の値に維持される。
【0040】
この状態で高周波電源75から高周波電力がマッチングボックス73を介してサセプタ5に印加される。これにより、下部電極としてのサセプタ5と上部電極としてのシャワーヘッド25との間に高周波電界が生じ、処理ガスが解離してプラズマ化する。このプラズマにより、基板Sにエッチング処理が施される。
【0041】
エッチング処理を施した後、高周波電源75からの高周波電力の印加を停止し、ガス導入を停止した後、下部容器1内を所定の圧力まで減圧する。次に、ゲートバルブを開放し、サセプタ5から搬送装置に基板Sが受け渡され、下部容器1の基板搬送用開口61から搬出される。以上の操作により、基板Sに対するエッチング処理が終了する。
【0042】
本実施の形態に係るプラズマ処理容器100aでは、従来のFPD用プラズマ処理容器に必要であった肉厚で重い蓋体を使用せず、枠体21とシャワーヘッド25と梁構造体27とを有する上部容器10に置き換える構成とした。真空状態では、上部容器10の梁構造体27によって、ベース板31が大気圧に抗して吊り上げられるように固定されるため、真空装置として十分な機械的強度を維持できる。このため、シャワーヘッド25の上部をなすベース板31を大気圧の外部空間に露出させた状態にしておくことができる。従って、耐圧性の蓋体で上部を覆っていた従来のプラズマ処理容器に比べて、上部容器10を大幅に軽量化することができるとともに、材料費・加工費などを大幅に節減することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、梁構造体27とベース板31とを、ベース板31の高さ位置を可変に調整可能な連結手段29によって連結したことにより、ベース板31の高さ位置を調整することができる。
【0044】
また、従来の蓋体構造と違い、上部電極(シャワーヘッド25)を構成するベース板31が露出した状態であるため、上部電極に対する作業性も良く、メンテナンス等を容易に行うことができる、という効果も奏する。
【0045】
また、本実施形態のプラズマエッチング装置100では、ベース板31の中央部の上方に梁構造体27の内梁27bが位置しないように(重ならないように)に内梁27bを格子状に配設したので、ベース板31の中央部にガス導入設備(ガス導入口37)を接続したり、他の付属設備(例えばインピーダンス整合装置など)を配設したりすることが可能になる。ガス導入口37をシャワーヘッド25のベース板31の中央に設けることにより、シャワーヘッド25へガスを偏りなく均一に導入できる。その結果、基板Sの上方空間へガスを均一に導入できる。従って、大容積のプラズマ処理容器100a内においても、基板Sの上方空間に安定的にプラズマを生成させ、処理の均一化を図ることができる。また、ベース板31の中央部の上方にインピーダンス調整装置などの設備を配設できることにより、プラズマエッチング装置100のフットプリントを抑え、省スペース化できる。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、図6および図7を参照しながら本発明の第2の実施の形態について説明する。図6は、図2に示した第1の実施の形態のプラズマエッチング装置100とほぼ同様の構成のプラズマエッチング装置の要部を示す断面図である。以下では、第1の実施の形態(図1から図5)との相違点を中心に説明し、同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。また、本実施の形態のプラズマエッチング装置の全体の構成は、第1の実施の形態のプラズマエッチング装置100を参照することにより把握できるので、図示を省略する。
【0047】
このプラズマエッチング装置は、第1の実施の形態のプラズマエッチング装置100との相違点として、上部電極であるシャワーヘッド25のベース板31と、梁構造体27との間に導電性プレート111および支持プレート113を備えている。ベース板31と導電性プレート111は、例えば断面コの字形をなす接続部材115によって電気的に接続されている。なお、導電性プレート111および支持プレート113は、図示しないボルト等の固定手段によって梁構造体27に固定されている。また、支持プレート113と梁構造体27の接合は、溶接を用いても良い。
【0048】
導電性プレート111は、ベース板31と枠体21とを電気的に接続する役割を果たす部材であり、低電気抵抗の導電性材料、例えばアルミニウム、銅などで構成されている。図7に、ベース板31上に導電性プレート111を配置した状態の平面図を示した。なお、図7では、導電性プレート111の形状を表現するため、梁構造体27および支持プレート113を除いて描画している。導電性プレート111は、平面視において梁構造体27と近似した形状をなしており、梁構造体27の下方に重ねて配置されている。つまり、導電性プレート111は、外梁27aに対応する形状の枠状部分111aと、内梁27bに対応する格子状部分111bとを有している。また、導電性プレート111の枠状部分111aは、略同じ大きさを有する枠体21上に当接した状態で重ねて配置されている。なお、導電性プレート111は、複数の部分に分割されていても良いが、一体物でも良い。
【0049】
図7に示したように、ベース板31の中央部付近には、ベース板31と導電性プレート111とを電気的に接続する接続部材115が複数箇所(図7では4箇所)に配備されている。これらの接続部材115は、ベース板31の中央部付近から導電性プレート111の格子状部分111bを介して枠状部分111aへ向けて、均等な電流経路が形成されるように配置されている。このように、導電性プレート111の中央付近から周辺へ均等に流れた電流は、さらに枠状部分111aを介して下方の枠体21へ均等に伝えられる。このように、導電性プレート111の形状は、上部電極の一部であるベース板31の中央部から周囲の枠体21へ電流を偏りなく均等に流す機能を有しており、これによって後述するように、プラズマエッチング装置におけるエッチング処理の均一性を向上させることができる。
【0050】
支持プレート113は、導電性プレート111と略同じ大きさおよび形状をなしており、導通プレート111に重ねて配設されている。支持プレート113は、例えばSUS等の材質で構成されており、梁構造体27に直接ネジ穴等の加工を施さなくとも、導通プレート111を梁構造体27に取り付けられるようになっている。なお、支持プレート113は必ずしも配備する必要はない。
【0051】
本実施の形態に係るプラズマエッチング装置の他の構成は、第1の実施の形態のプラズマエッチング装置100と同様である。本実施の形態において、上部電極であるシャワーヘッド25のベース板31と、梁構造体27との間に導電性プレート111(および支持プレート113)を介在させた理由は、以下のとおりである。
【0052】
プラズマ処理装置100では、プラズマエッチング処理の間、高周波電源75から給電線71を介してサセプタ5(基材7)に高周波電力が供給される。このとき高周波電流は、下部電極(サセプタ5)からプラズマを介し、上部電極として機能するシャワーヘッド25を経て、梁構造体27から枠体21を通り、接地された下部容器1に流れる。
【0053】
このように、下部電極(サセプタ5)に供給された高周波電力は、下部電極(サセプタ5)と上部電極(シャワーヘッド25)の間にプラズマを形成し、上部電極(シャワーヘッド25)からベース板31、接続部材115、梁構造体27を通り、さらに枠体21および下部容器1へと流れる電流経路(RFリターン電流経路)を形成する。
【0054】
前記のとおり、従来技術では、上部容器10に相当する部分として、アルミニウム等の導電性の材質の肉厚な蓋体を備えていたため、上部電極からこの蓋体を介して上記RFリターン電流経路が形成されていた。しかし、本実施の形態では、蓋体を使用せずに、アルミニウムに比べて導電性が低い材質(例えば、鉄等)で形成された梁構造体27を有する上部容器10を備える構成とした結果、従来の蓋体を使用した構成に比べて、上部電極(シャワーヘッド25)から下部容器1までの間の抵抗が高くなる。そのため、下部電極(サセプタ5)からプラズマを介し、上部電極(シャワーヘッド25)に向かう適正な電流経路を流れる高周波電流が減少し、例えば、下部電極(サセプタ5)からプラズマを介し、下部容器1の壁に直接向かう不適正な電流経路を通る高周波電流が増加する懸念が生じる。このため、ベース板31と枠体21との間に、低抵抗の材料からなる導電性プレート111を介在させて電気的接続を図り、適正なRFリターン電流経路が形成できるようにした。このように、適正なRFリターン電流経路が形成されることによって、プラズマエッチング装置におけるエッチング処理の均一性を維持することができる。
【0055】
また、図7に示したように、複数の接続部材115をベース板31の中央部付近に接続したことにより、サセプタ5からシャワーヘッド25のベース板31の中央部付近を通って導電性プレート111へ電流を効率よく流すことが可能になる。従って、上部電極であるシャワーヘッド25が大型で、電流の方向が分散して適正な経路が形成されにくい傾向がある大型のプラズマ処理容器においても、サセプタ5からシャワーヘッド25へ向かう電流経路が適正化され、サセプタ5とシャワーヘッド25との間の空間にプラズマを集中させることが可能になる。その結果、エッチング処理の効率と基板Sの面内での処理の均一性を向上させることができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、導電性プレート111は、梁構造体27と近似した形状としたが、ベース板31の中央部から周囲の枠体21へ電流を偏りなく均等に流すことができ、かつ上部電極に対する作業性を損なわなければ、梁構造体27と近似した形状でなくとも良い。例えば、格子状に空いた部分を別の着脱可能な導電性プレートにて塞ぎ、ベース板31の上面全てを覆うように導電性プレートを形成しても良い。また、ベース板31と導電性プレート111の間を接続部材115によって直接接続する構成としたが、ベース板31と導電性プレート111との間に、上記RFリターン電流経路のインピーダンスを調整するインピーダンス調整装置(図示せず)を介在配備させてもよい。インピーダンス調整装置を設けることにより、RFリターン電流経路をさらに適正化できるため、サセプタ5の上方でプラズマをより安定して生成させることができる。
【0057】
[第3の実施の形態]
次に、図8を参照しながら本発明の第3の実施の形態について説明する。以下では、第1の実施の形態(図1から図5)との相違点を中心に説明し、同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。図8は、本発明の第3の実施の形態に係るプラズマエッチング装置200の外観構成を示す斜視図である。このプラズマエッチング装置200は、例えば内面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる角筒形状に成形された下部容器1と、この下部容器1に開閉可能に組み合わされる上部容器210とを有している。下部容器1と上部容器210とによって、真空容器であるプラズマ処理容器200aが構成されている。
【0058】
プラズマ処理容器200aの上部容器210は、主要な構成として、枠体21と、ベース板31を有する図示しないシャワーヘッド(上部電極)と、梁構造体201と、を備えている。梁構造体201は、断面H形をなし、平行に配置された4本のアーチ状梁211と、該アーチ状梁211に対して略直交して配置され、アーチ状梁211どうしの間を接続する接続梁221とを有しており、アーチ状梁211の両端はボルトなどにより枠体21に固定されている。アーチ状梁211と接続梁221とは例えば溶接等の方法で接合されている。アーチ状梁211の上面211aは緩やかな曲率を以って形成され、たわみ等の変形に対する機械的強度が高められている。各アーチ状梁211とベース板31との間には、横長の下板222が配置されている。下板222は、枠体21およびベース板31に固定されている。下板222とベース板31とは、例えばスクリューアジャスタを利用した高さ位置を可変に調整可能な連結手段(図3に示した連結手段29を参照)により連結されている。そして、各アーチ状梁211と下板222との間には、縦板状の複数のリブ223が設けられ、アーチ状梁211と下板222とに例えば溶接等の方法で接合されている。
【0059】
なお、下板222およびリブ223を設置せずにアーチ状梁211とベース板31とを連結することもできる。この場合、各アーチ状梁211とベース板31とは、例えば図示しないワイヤなどを介して連結することができる。ベース板31とワイヤとの接続部分は、例えばスクリューアジャスタを利用した高さ位置を可変に調整可能な連結手段(図3に示した連結手段29を参照)により連結できる。
【0060】
本実施の形態のプラズマ処理容器200aでは、梁構造体201に曲率を有するアーチ状梁211を使用したことにより、梁構造体201の強度が向上し、その分、梁構造体201を構成する部材を細くできるなど、上部容器210のさらなる軽量化が図られている。なお、本実施の形態のプラズマ処理容器200aでは、アーチ状梁211の両端が直接枠体21に固定されているが、各アーチ状梁211の両端に梁(図示省略)を配備し、この梁を介して各アーチ状梁211を枠体21に固定するようにしてもよい。また、アーチ状梁211及び接続梁221の本数は適宜変更してもよい。
【0061】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0062】
[第4の実施の形態]
次に、図9を参照しながら本発明の第4の実施の形態について説明する。以下では、第1の実施の形態(図1から図5)との相違点を中心に説明し、同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。図9は、本発明の第4の実施の形態に係るプラズマエッチング装置300の外観構成を示す斜視図である。このプラズマエッチング装置300は、例えば内面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる角筒形状に成形された下部容器1と、この下部容器1に開閉可能に組み合わされる上部容器310とを有している。下部容器1と上部容器310とによって、真空容器であるプラズマ処理容器300aが構成されている。
【0063】
プラズマ処理容器300aの上部容器310は、主要な構成として、枠体21と、ベース板31を有する図示しないシャワーヘッド(上部電極)と、梁構造体301と、を備えている。梁構造体301は、断面T字形をなす2本のアーチ状梁311と、該アーチ状梁311に対して略直交し、アーチ状梁311どうしの間を接続する複数(図9では4本)の断面T字形をなす接続梁313とを有している。アーチ状梁311と接続梁313とは、例えば溶接等の方法で接合されている。断面T字型をなすアーチ状梁311は、縦板311aと、この縦板311aに直交して接合された曲率を有する横板311bとを有している。
【0064】
また、断面T字型をなす各接続梁313は、縦板313aと、この縦板313aに直交して接合された平板313bとを有している。縦板313aの両端部315は、下端が弓状に曲率を以って形成されており、たわみ等の変形に対する接続梁313の強度を高めている。各アーチ状梁311とベース板31との間には、横長の下板312が配置されている。下板312は、枠体21に固定されている。また、下板312とベース板31とは、図示は省略するが、例えばスクリューアジャスタを利用した高さ位置を可変に調整可能な連結手段(図3に示した連結手段29を参照)により連結されている。なお、下板312を設置せずにアーチ状梁311とベース板31とを連結することもできる。
【0065】
各接続梁313と、ベース板31とは、図示は省略するが、例えばワイヤ等を介して、スクリューアジャスタを利用した高さ位置を可変に調整可能な連結手段(図3に示した連結手段29を参照)により連結されている。
【0066】
本実施の形態のプラズマ処理容器300aでは、梁構造体301に曲率を有するアーチ状梁311を使用し、これを接続梁313で接続したことにより、梁構造体301の強度が向上し、その分、梁構造体301を構成する部材を細くできるなど、上部容器310のさらなる軽量化が図られている。
【0067】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0068】
[第5の実施の形態]
次に、図10を参照しながら本発明の第5の実施の形態について説明する。以下では、第1の実施の形態(図1から図5)との相違点を中心に説明し、同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。図10は、本発明の第5の実施の形態に係るプラズマエッチング装置400の外観構成を示す斜視図である。このプラズマエッチング装置400は、例えば内面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる角筒形状に成形された下部容器1と、この下部容器1に開閉可能に組み合わされる上部容器410とを有している。下部容器1と上部容器410とによって、真空容器であるプラズマ処理容器400aが構成されている。
【0069】
プラズマ処理容器400aの上部容器410は、主要な構成として、枠体21と、ベース板31を有する図示しないシャワーヘッド(上部電極)と、梁構造体401と、を備えている。梁構造体401は、断面H字形をなし、曲率を以って複数方向(図10では3方向)に延設されたアーチ状梁411を有している。アーチ状梁411は、ベース板31の中央部分の真上で交差し、交差部位は例えば溶接等の方法で接合されている。各アーチ状梁411の端部の下方には、ベース板31に接続する縦板413が接合され、たわみ等の変形に対する各アーチ状梁411の強度を高めている。
【0070】
各アーチ状梁411とベース板31とは、例えば図示しないワイヤなどを介して連結されている。ベース板31とワイヤとの接続部分は、例えばスクリューアジャスタを利用した高さ位置を可変に調整可能な連結手段(図3に示した連結手段29を参照)により連結されている。
【0071】
本実施の形態のプラズマ処理容器400aでは、梁構造体401に曲率を有するアーチ状梁411を使用したことにより、梁構造体401の強度が向上し、その分、梁構造体401を構成する部材を細くできるなど、上部容器410のさらなる軽量化が図られている。なお、本実施の形態のプラズマ処理容器400aでは、アーチ状梁411の両端が直接枠体21に固定されているが、各アーチ状梁411の両端に接続するように梁(図示省略)を枠状に配備し、その枠状の梁を介して各アーチ状梁411を枠体21に固定するようにしてもよい(図1参照)。
【0072】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0073】
[第6の実施の形態]
次に、図11を参照しながら本発明の第6の実施の形態について説明する。以下では、第1の実施の形態(図1から図5)との相違点を中心に説明し、同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。図11は、本発明の第6の実施の形態に係るプラズマエッチング装置500の外観構成を示す斜視図である。このプラズマエッチング装置500は、例えば表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる角筒形状に成形された下部容器1と、この下部容器1に開閉可能に組み合わされる上部容器510とを有している。下部容器1と上部容器510とによって、真空容器であるプラズマ処理容器500aが構成されている。
【0074】
プラズマ処理容器500aの上部容器510は、枠体21と、ベース板31を有する図示しないシャワーヘッド(上部電極)と、梁構造体501と、を備えている。梁構造体501は、断面T字形をなし、複数方向(図11では4方向)に延設されたT字形梁511を有している。T字形梁511は、ベース板31の中央部分の真上で交差し、交差部位は例えば溶接等の方法で接合されている。各T字形梁511は、縦板511aと、この縦板511aに直交して接合された平板511bとを有している。縦板511aの下端は弓状に湾曲形成されており、T字形梁511の強度が高められている。
【0075】
各T字形梁511とベース板31とは、図示は省略するが、T字形梁511の平板511bの上面から、ワイヤ等を介して、スクリューアジャスタを利用した高さ位置を可変に調整可能な連結手段(図3に示した連結手段29を参照)により連結されている。
【0076】
本実施の形態のプラズマ処理容器500aでは、梁構造体501にT字形梁511を使用し、その縦板511aの下端を湾曲形成させたので、梁構造体501の強度が高く、その分、梁構造体501を構成する部材を細くできるなど、上部容器510のさらなる軽量化が図られている。なお、本実施の形態のプラズマ処理容器500aでは、T字形梁511の両端が直接枠体21に固定されているが、各T字形梁511の両端に接続するように梁(図示省略)を枠状に配備し、その枠状の梁を介して各T字形梁511を枠体21に固定するようにしてもよい(図1参照)。
【0077】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0078】
[第7の実施の形態]
次に、図12を参照しながら本発明の第7の実施の形態について説明する。以下では、第1の実施の形態(図1から図5)との相違点を中心に説明し、同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。本実施の形態では、梁構造体を下部容器にも配備した。図12に、本実施の形態に係るプラズマエッチング装置600の概略構成を示した。このプラズマエッチング装置600は、基板Sに対し真空状態でエッチング処理を行なうように構成されており、内部に基板Sを載置するサセプタ5が配置される下部容器1と、下部容器1に対して開閉可能に構成され、閉状態で下部容器1と気密に接合される上部容器10と、を備えている。下部容器1は、上部容器10に当接させられる第2の枠体としての下部枠体1cと、この下部枠体1cに固定された梁構造体611と、を有している。梁構造体611は、上部に配備された梁構造体27と同様の構成を有している。
【0079】
下部枠体1cの下端は、その内側に突出して支持部1dが形成されている。この支持部1dで、枠形状の絶縁部材3を支持することにより、間接的にサセプタ5(基材7)の底縁部を支持できるようになっている。
【0080】
梁構造体611は、下部枠体1cと略同様の大きさで配設された枠形状の外梁611aと、この外梁611aの内側に格子状に配設された内梁611bと、を有している。外梁611aは、高さ方向の位置を調整可能な連結手段613aにより、下部枠体1cに機械的に固定されている。内梁611bは、高さ方向の位置を調整可能な連結手段613bによりサセプタ5の基材7に固定されている。これによって、大気圧空間に露出した状態のサセプタ5に、大気圧に対する耐圧強度を持たせている。
【0081】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態のプラズマエッチング装置600では、プラズマ処理容器100aの上下に梁構造体27、611を配設したが、下部の梁構造体611のみを配設し、プラズマ処理容器100aの上部は梁構造体を用いない従来の構成とすることもできる。また、梁構造体611として、第2〜第6の実施の形態のいずれかの梁構造体と同様の構成のものを採用してもよい。
【0082】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は上記実施形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、下部電極(基材7)に高周波電力を印加するRIEタイプの容量結合型平行平板プラズマエッチング装置を例示して説明したが、上部電極に高周波電力を供給するタイプであってもよいし、容量結合型に限らず誘導結合型であってもよい。
【0083】
また、本発明の真空容器は、FPD用基板を処理対象とする真空容器に限らず、例えば半導体ウエハを処理対象とする真空容器にも適用できる。
【0084】
また、本発明の真空容器は、プラズマエッチング装置に限らず、真空状態で被処理体に処理を行う他の処理装置例えばアッシング装置、CVD装置等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマエッチング装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図1のプラズマエッチング装置の概略断面図である。
【図3】梁構造体とベース板との連結構造を示す図2の要部拡大図である。
【図4】シールドプレートの装着状態を示す図2の要部拡大図である。
【図5】シールドプレートの説明に供する図面であり、(a)はシールドプレートを装着した状態の上部容器の下面の状態を示し、(b)、(c)はシールドプレートのコーナー部の拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマエッチング装置の要部の断面図である。
【図7】導電性プレートを装着した状態の上部電極を示す平面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るプラズマエッチング装置の外観構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係るプラズマエッチング装置の外観構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に係るプラズマエッチング装置の外観構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態に係るプラズマエッチング装置の外観構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の第7の実施の形態に係るプラズマエッチング装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1…下部容器、1a…底壁、1b…側壁、3…絶縁部材、5…サセプタ、7…基材、10…上部容器、21…枠体、23…絶縁部材、25…シャワーヘッド、27…梁構造体、27a…外梁、27b…内梁、29…連結手段、31…ベース板、51…排気口、55…排気装置、61…基板搬送用開口、100…プラズマエッチング装置、100a…プラズマ処理容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に対し真空状態で所定の処理を行なう処理空間を形成する真空容器であって、
上部が開口した箱型をなし、内部に被処理体を載置する載置台が配置される下部容器と、
前記下部容器に対して開閉可能に構成され、閉状態で前記下部容器と気密に接合される上部容器と、
を備え、
前記上部容器は、前記下部容器の開口端に当接させられる第1の枠体と、該第1の枠体に固定された梁構造体と、前記梁構造体に外側から連結されて支持された状態で前記処理空間に処理ガスを導入するシャワーヘッドと、を有し、
前記シャワーヘッドの上部を大気圧空間に露出させた状態で前記梁構造体によって大気圧に対する耐圧強度を持たせたことを特徴とする、真空容器。
【請求項2】
前記シャワーヘッドは、多数のガス吐出孔を有して前記載置台に対向配備されたガス噴射板と、該ガス噴射板を支持するベース板と、前記ガス噴射板と前記ベース板とによって区画される内部のガス拡散空間と、を有しており、大気圧の外部空間に露出した前記ベース板を前記梁構造体によって支持したことを特徴とする請求項1に記載の真空容器。
【請求項3】
前記ベース板は、前記処理空間を真空にした状態で単体では大気圧に対する必要な耐圧強度を有さない厚みで形成されていることを特徴とする請求項2に記載の真空容器。
【請求項4】
前記シャワーヘッドを上部電極とし、前記載置台を下部電極として、前記処理空間内にプラズマを発生させるための一対の対向電極を形成していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の真空容器。
【請求項5】
前記ベース板と前記第1の枠体との間に、絶縁性材料からなるスペーサー部材を配備したことを特徴とする請求項4に記載の真空容器。
【請求項6】
前記ベース板と前記梁構造体との間に、導電性プレート部材を備えており、前記ベース板から前記導電性プレート部材を介して前記第1の枠体へ向けて電流の経路が形成されるようにしたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の真空容器。
【請求項7】
前記ベース板と前記導電性プレート部材が、前記ベース板の中央部において電気的に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の真空容器。
【請求項8】
前記梁構造体と前記シャワーヘッドを、前記シャワーヘッドの高さ位置を可変に調整可能な複数の連結手段によって連結したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の真空容器。
【請求項9】
前記梁構造体がアーチ形状の梁部材を有していることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の真空容器。
【請求項10】
被処理体に対し真空状態で所定の処理を行なう処理空間を形成する真空容器であって、
上部が開口した箱型をなし、内部に被処理体を載置する載置台が配置される下部容器と、
前記下部容器に対して開閉可能に構成され、閉状態で前記下部容器と気密に接合される上部容器と、
を備え、
前記上部容器は、前記下部容器の開口端に当接させられる第1の枠体と、該第1の枠体に固定された梁構造体と、下部電極としての前記載置台に対向して配置されると共に、前記梁構造体に外側から連結されて支持された上部電極と、を有し、
前記上部電極の上部を大気圧空間に露出させた状態で前記梁構造体によって大気圧に対する耐圧強度を持たせたことを特徴とする、真空容器。
【請求項11】
前記上部電極と前記梁構造体との間に導電性プレート部材を備えており、前記上部電極から前記導電性プレート部材を介して前記第1の枠体へ向けて電流の経路が形成されるようにしたことを特徴とする請求項10に記載の真空容器。
【請求項12】
前記上部電極と前記導電性プレート部材が、前記上部電極の中央部において電気的に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の真空容器。
【請求項13】
被処理体に対し真空状態で所定の処理を行なう処理空間を形成する真空容器であって、
内部に被処理体を載置する載置台が配置される下部容器と、
前記下部容器に対して開閉可能に構成され、閉状態で前記下部容器と気密に接合される上部容器と、
を備え、
前記下部容器は、前記上部容器に当接させられるとともに前記載置台を支持する支持部を有する第2の枠体と、該第2の枠体に固定された梁構造体と、を有しており、
前記第2の枠体の前記支持部で前記載置台を支持しつつ、前記載置台の底部を大気圧空間に露出させた状態で前記梁構造体によって大気圧に対する耐圧強度を持たせたことを特徴とする、真空容器。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の真空容器を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−278062(P2009−278062A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303717(P2008−303717)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】