説明

真空樹脂インフュージョン成形用ジビニルアレーンジオキシド配合物

約400mPa・s未満の低い粘度を有することができる、(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)側鎖ヒドロキシル基を含まないポリアミノエーテルとのブレンドを含んでなる真空樹脂インフュージョン成形法用の樹脂配合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空樹脂インフュージョン成形法(infusion molding process)(真空樹脂含浸注入成形法)に有用な、ジビニルアレーンジオキシドを基材とする樹脂配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
真空樹脂インフュージョン成形法にエポキシ樹脂を用いることはよく知られている。真空樹脂インフュージョン成形法には、例えば25℃において300mPa・s未満の低粘度を有するエポキシ樹脂配合物が必要である。しかし、従来のエポキシ樹脂は、典型的には、粘度が300mPa・sより高い。従って、従来のエポキシ樹脂を真空樹脂インフュージョン成形法に用いる場合には、従来のエポキシ樹脂配合物を真空樹脂インフュージョン成形法に利用できるように、エポキシ樹脂の粘度を低下させて必要な低粘度を達成するために、従来のエポキシ樹脂には、典型的には、反応性希釈剤が必要であり、添加されている。
【0003】
また、従来のエポキシ樹脂及び反応性希釈剤を含む樹脂配合物を硬化させる場合には、問題が生じる。即ち、得られる硬化された熱硬化性樹脂が低下した耐熱性を示す。耐熱性は硬化された熱硬化性樹脂に重要な性質であり、硬化された熱硬化性樹脂はいくつかの商業用の工業標準規格を満たさなければならない。例えば、Germanischer Lloyd(ドイツ船級協会)は、硬化された熱硬化性樹脂が70℃又はそれ以上の加熱撓み温度(ISO 75 Method A)を有することを要求している。低下した耐熱性は、比較的高価な脂環式アミン硬化剤を配合物中に含ませることによっては、一部分しか補うことができない。従って、真空樹脂インフュージョン成形、特に風力タービン翼、発電機ナセル及びノーズコーンなどの大型部品の真空樹脂インフュージョン成形には、脂環式アミン硬化剤の使用を必要としない、硬化後に低い粘度及び良好な耐熱性を有するエポキシ樹脂配合物が必要とされている。
【0004】
ジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)などのジビニルアレーンジオキシド(divinylarene dioxide)は、比較的低い液体粘度(例えば25℃において25mPa・s未満)及び高い剛性(例えばBicerano(非特許文献1)の方法を用いて、側鎖を含まないジオキシドの回転自由度の計算値によって測定した場合に、10又はそれ以下)を有するクラスのジエポキシドである。ジビニルアレーンジオキシドの剛性は、真空樹脂インフュージョン成形用の配合物中にこれまで用いられてきた従来のエポキシ樹脂より高い。得られるジビニルアレーン系配合物は、必要な耐熱性を得るのに脂環式アミン硬化剤の使用を必要としない。従って、真空樹脂インフュージョン成形に有用なジビニルアレーン系配合物を提供することは、技術的な改良となるであろう。
【0005】
特許文献1は多官能性アミンによるDVBDOの硬化を記載し、特許文献2はエポキシ樹脂、硬化剤及びヒドロキシル官能性アミンから製造される組成物を記載している。前記2つの先行技術文献は、いずれも、DVBDO用の多官能性アミン硬化剤としてポリアミノエーテルを使用することについては何も記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第854679号
【特許文献2】特開昭62−153316号公報(JP62153316)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Prediction of Polymer Properties,Dekker,New York,1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、(a)ジビニルアレーンジオキシド及び(b)ポリアミノエーテルを含む、真空樹脂インフュージョン成形法に使用する樹脂配合物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、真空樹脂インフュージョン成形法に使用する樹脂配合物を対象とする。本発明の樹脂配合物は、(a)ジビニルアレーンジオキシド及び(b)ポリアミノエーテルを含み、前記ポリアミノエーテルは側鎖ヒドロキシル基を含まない。本発明の一態様においては、樹脂配合物は低い粘度を有する(例えば25℃において400mPa・s未満)。
【0010】
ジビニルアレーンジオキシド、特にジビニルベンゼンから得られたもの、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)とポリアミノエーテルとを含んでなる真空樹脂インフュージョン成形用配合物は、低い粘度(例えば25℃において400mPa・s未満)及び良好な耐熱性(例えばTgが80℃超)を有する新規組成物である。
【0011】
本発明の別の態様は、前記樹脂配合物を用いる真空樹脂インフュージョン成形法を対象とする。
【0012】
本発明の得られるジビニルアレーン系配合物の利点の1つは、この配合物が必要な耐熱性を得るのに脂環式アミン硬化剤の使用を必要としないことである。本発明のジビニルアレーン系配合物は真空樹脂インフュージョン成形に特に有用である。本発明の新規ジビニルアレーン系配合物の主な用途はタービン翼、発電機ナセル及びノーズコーンなどの繊維強化構造用複合材料の製造である。
【発明の効果】
【0013】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドは、真空樹脂インフュージョン成形のための、当業界で知られたエポキシ樹脂よりはるかに低い粘度を有する。例えばジビニルアレーンジオキシドと共に用いられる、1,4−ジアミノブタンなどのポリアミノエーテルの非エーテル類似体は、公知エポキシ樹脂との相溶性が比較的乏しいので、真空樹脂インフュージョン成形用配合物においては有用でない。しかし、新規組成物としての、ジビニルアレーンジオキシドとポリアミノエーテルとの組合せは、低い粘度と良好な耐熱性との独特なバランスを有し、真空樹脂インフュージョン成形用配合物中に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、下記の具体的な態様に限定するのではなく、本発明は、添付した「特許請求の範囲」の真の範囲に含まれる全ての代替形態、変更形態及び均等形態を含む。
【0015】
本発明は、一般に、(a)ジビニルアレーンジオキシド及び(b)ポリアミノエーテルを含んでなり、25℃において400mPa・s未満の粘度を有する、真空樹脂インフュージョン成形法に使用するための樹脂配合物である。
【0016】
ジビニルアレーンジオキシド、特にジビニルベンゼンから得られたもの、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)は、比較的低い液体粘度を有するが、従来のエポキシ樹脂よりも高い剛性を有するクラスのジエポキシドである。
【0017】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドは、例えば環中の任意の位置に2つのビニル基を有する、任意の置換又は非置換アレーン核を含むことができる。ジビニルアレーンジオキシドのアレーン部分は、ベンゼン、置換ベンゼン類、縮環(ring-annulated)ベンゼン類、置換縮環ベンゼン類、同族的に結合された(homologously bonded)ベンゼン類、置換された、同族的に結合されたベンゼン類又はそれらの混合物を含んでいてもよい。ジビニルアレーンジオキシドのジビニルアレーン部分は、オルト、メタ若しくはパラ異性体又はそれらの任意の混合物であることができる。追加の置換基は飽和アルキル、アリール、ハロゲン、ニトロ、イソシアネート又はRO−(式中、Rは飽和アルキル又はアリールであることができる)を含むH22−耐性基からなることができる。縮環ベンゼン類は、例えばナフタレン、テトラヒドロナフタレンなどを含むことができる。同族的に結合された(置換された)ベンゼン類は、例えばビフェニル、ジフェニルエーテルなどを含むことができる。
【0018】
一態様において、本発明において使用するジビニルアレーンジオキシドは、例えば本出願と同一出願日にMarksらによって出願された米国特許出願第61/141,457号(代理人整理番号67459)に記載された方法によって製造できる。
【0019】
本発明の樹脂配合組成物中に使用するジビニルアレーンジオキシドは、一般に、下記の一般化学構造I〜IV:
【0020】
【化1】

【0021】
によって示すことができる。
【0022】
本発明のジビニルアレーンジオキシド成分の前記構造I、II、III及びIVにおいて、各R1、R2、R3及びR4は、個別に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール若しくはアラルキル基、又は例えば、ハロゲン、ニトロ、イソシアネート若しくはRO基(式中、Rはアルキル、アリール又はアラルキルであることができる)を含むH22−耐性基であることができ;xは0〜4の整数であることができ;yは2又はそれ以上の整数であることができ;x+yは6又はそれ以下の整数であることができ;zは0〜6の整数であることができ;z+yは8又はそれ以下の整数であることができ;Arは、例えば1,3−フェニレン基を含むアレーンフラグメントである。
【0023】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド成分としては、例えばジビニルベンゼンジオキシド、ジビニルナフタレンジオキシド、ジビニルビフェニルジオキシド、ジビニルジフェニルエーテルジオキシド及びそれらの混合物が挙げられる。
【0024】
下記構造V:
【0025】
【化2】

【0026】
は、本発明において有用なDVBDOの好ましい化学構造の一態様である。
【0027】
下記構造VI:
【0028】
【化3】

【0029】
は、本発明において有用なDVBDOの好ましい化学構造の別の態様である。
【0030】
当業界で知られた方法によってDVBDOを製造する場合には、オルト、メタ及びパラの考えられる3つの異性体のうち1つを得ることが可能である。従って、本発明は、前記構造の任意の1つによって示されるDVBDOを個別に又はそれらの混合物として含む。前記構造V及びVIは、それぞれ、DVBDOのメタ異性体(1,3−DVBDO)及びパラ異性体を示している。オルト異性体は稀であり、通常、DVBDOは、ほとんどが、一般に、約9:1〜約1:9の範囲のメタ異性体(構造V)対パラ異性体(構造VI)の比で製造される。本発明は、好ましくは一態様として、約6:1〜約1:6の範囲の構造V対構造VIの比を含み、他の態様においては、構造V対構造VIの比が約4:1〜約1:4又は約2:1〜約1:2であることができる。
【0031】
一態様において、本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドは、例えば低粘度の液体エポキシ樹脂であるジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)である。本発明の方法において使用するジビニルアレーンジオキシドの粘度は、25℃において、一般に約10mPa・s〜約100mPa・s、好ましくは約10mPa・s〜約50mPa・s、より好ましくは約10mPa・s〜約25mPa・sの範囲である。
【0032】
本発明において使用するジビニルアレーンオキシドの濃度は、一般に、約0.1重量%(wt%)〜約99.9重量%、好ましくは約1重量%〜約99重量%、より好ましくは約2重量%〜約98重量%の範囲であることができる。
【0033】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドの有利な性質の1つは、配合物への使用を可能にし、又はオリゴマー化もホモ重合も引き起こすことなく、中程度(moderate)の温度(例えば約100℃〜約200℃)において数時間まで(例えば少なくとも2時間)加工することを可能にする熱安定性である。配合又は加工中におけるオリゴマー化又はホモ重合は、ゲル化(架橋)又は粘度の大幅な増加によって明らかになる。本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドは、中程度の温度での加工中又は配合中に、ゲル化も粘度の大幅な増加もしないような充分な熱安定性を有する。
【0034】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドの有利な性質のもう1つは剛性である。ジビニルアレーンジオキシドの剛性は、非特許文献1に記載されたBiceranoの方法を用いて、側鎖を含まないジオキシドの回転自由度の計算値によって測定する。本発明において使用するジビニルアレーンジオキシドの剛性は、回転自由度が一般に約6〜約10、好ましくは約6〜約9、より好ましくは約6〜約8の範囲であることができる。
【0035】
本発明の方法において有用なポリアミノエーテルは、例えば直鎖又は分岐鎖ポリアミン(前記鎖は少なくとも1つの酸素原子を含む)及びそれらの混合物を含むことができる。本発明において有用なポリアミノエーテルの例としては、分子量が約200g/モル〜約4200g/モルの範囲のポリ(オキシプロピレン)ジアミン、及び分子量が約400g/モル〜約5500g/モルの範囲のポリ(オキシプロピレン)トリアミン並びにそれらの混合物が挙げられる。本発明において有用なポリアミノエーテルの他の例としては、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン;4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミン;4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン;及びそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
本発明において使用するポリアミノエーテルの濃度は、一般に約5重量%〜約95重量%、好ましくは約8重量%〜約60重量%、より好ましくは約10重量%〜約50重量%の範囲であることができる。本発明の別の態様において、ポリアミノエーテルの濃度は約11重量%〜約93重量%の範囲であることができる。
【0037】
本発明において有用なポリアミノエーテルは、インフュージョン配合物の粘度を大幅に増加させることなく、得られる熱硬化性樹脂の可撓性を改善するオリゴマー多官能性アミンである。これは、これらのオリゴマー多官能性アミンの新規用途にとって大きな利益である。これに対して、ポリアミン及びエポキシドから得られるもののような、側鎖ヒドロキシル基を有する先行技術のオリゴマー多官能性アミンは、インフュージョン組成物の粘度を大幅に増加させる粘度の高い液体又は半固体である。
【0038】
本発明において使用するポリアミノエーテルは、アミノ官能価間にブチル又はそれより大きい脂肪族連結基を有する先行技術のポリアミンとは異なり、エポキシ樹脂との相容性も良好である。
【0039】
本発明の配合物を調製する際に、一態様においては、一官能性成分を任意的に配合物中に含ませることができる。例えば、本発明の配合物の任意的な一官能性成分は、前記ジビニルアレーンジオキシドとは異なるエポキシ樹脂を含むことができる。本配合物中に使用する任意的なエポキシ樹脂は、例えばモノエポキシド、例えばフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル及びドデシルグリシジルエーテル並びにそれらの混合物を含むことができる。本発明において任意的に使用する一官能性成分は、例えばモノフェノール類、例えばフェノール、クレゾール、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール及びペンタデシルフェノール並びにそれらの混合物を含むこともできる。
【0040】
本発明において使用する任意的な一官能性成分の濃度は、一般に0重量%〜約50重量%、好ましくは約0重量%〜約25重量%、より好ましくは約0重量%〜約10重量%、最も好ましくは約0重量%〜約5重量%の範囲であることができる。別の態様において、一官能性成分は、約0.01重量%〜約50重量%であることができる。
【0041】
別の態様においては、任意的な多官能性エポキシ樹脂又は多官能性フェノール類を本発明の配合物に添加することができる。
【0042】
本発明の別の態様の一例として、ビスフェノールA若しくはビスフェノールFなどのジフェノール類;テトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン化ビスフェノール類;ビフェノール、チオジフェノール及びジナフトールなどのジフェノール類から得られたもの;並びに/又はブタンジオール若しくはポリプロピレングリコールなどのアルコール類から得られたもの;或いはそれらの混合物を含む1種又はそれ以上のエポキシ樹脂を、任意的に、本発明の配合物中にコモノマー、配合物添加剤又は両者として含ませることができる。
【0043】
本発明において使用する任意的なエポキシ樹脂の濃度は、一般に0重量%〜約99.9重量%、好ましくは約0.1重量%〜約99.9重量%、より好ましくは約1重量%〜約99重量%、最も好ましくは約2重量%〜約98重量%の範囲であることができる。別の態様において、エポキシ樹脂は約0.01重量%〜約99.9重量%であることができる。
【0044】
例えば他の樹脂、触媒、安定剤、充填剤、可塑剤など及びそれらの混合物を含む添加剤の各種組合せを本発明の配合物に添加することもできる。
【0045】
本発明に使用する添加剤の濃度は、一般に0重量%〜約99.9重量%、好ましくは約0.01重量%〜約99.9重量%、好ましくは約1重量%〜約99重量%、最も好ましくは約2重量%〜約98重量%の範囲であることができる。
【0046】
本発明の樹脂配合物は、成分(a)のジビニルアレーンジオキシドと成分(b)のポリアミノエーテルとを一緒に混合又はブレンドすることによって調製できる。成分(a)と成分(b)との混合順序は重要ではない。
【0047】
本発明の一態様において、樹脂配合物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの任意的なエポキシ樹脂を含むことができ、このような任意的なエポキシ樹脂を成分(a)のジビニルアレーンジオキシドに添加できる。別の態様において、任意的な他のポリアミンを本発明において使用する場合には、ジエチレントリアミンなどのこのような任意的なポリアミンを成分(b)のポリアミノエーテルに添加できる。好ましくは、全ての(a)成分を一緒に混合し、全ての(b)成分を一緒に混合し、次いで成分(a)と成分(b)とを混合して、インフュージョン成形法のための本発明の配合物を形成する。
【0048】
本発明の方法によって製造されるジビニルアレーンジオキシド系樹脂配合物の粘度は好ましくは25℃において約400mPa・s未満であるが、本発明の方法全体によっては、25℃において一般に約5mPa・s〜約300,000mPa・s、好ましくは約10mPa・s〜約5,000mPa・s、より好ましくは約20mPa・s〜約400mPa・sの範囲の粘度を有する別の組成物を含めることも企図される。例えば固体エポキシ樹脂(SER)又はフェノール系エポキシ樹脂(PER)を、例えばDVBDOと共に使用する場合には、粘度を低下させるために高温を用いれば、真空樹脂インフュージョン成形法にそれでも適用できる非常に高い粘度を有することが可能である。従って、より高い粘度を有するこれらの型の配合物は、本発明から除外しない。
【0049】
任意的に他のエポキシ樹脂と組み合わされたジビニルアレーンジオキシド成分とポリアミノエーテル成分とを一緒に混合し、次いで真空樹脂インフュージョン成形の硬化条件下で硬化させる。
【0050】
真空樹脂インフュージョン成形は、米国特許第4,902,215号に記載されたような、乾燥繊維強化材を真空下に入れ、熱硬化性樹脂を注入含浸(インフュージョン)させて複合材料を形成する方法である。
【0051】
配合物の硬化は、一般に約15℃〜約200℃、好ましくは約20℃〜約180℃、より好ましくは約25℃〜約150℃の範囲の温度で実施できる。
【0052】
ガラス転移温度(Tg)は、ISO 75 Method Aによって測定した場合の加熱撓み温度(HDT)の良好な指標である。Germanischer Lloydの要件によれば、硬化された熱硬化性樹脂に関して一般にHDTは70℃又はそれ以上であることが要求されている。
【0053】
本発明の結果として得られる生成物は、示差走査熱量測定法(DSC)を用いてTgによって測定した場合に、硬化後の耐熱性が良好である。本発明の硬化配合物のTgは、一般に約40℃〜約200℃、好ましくは約50℃〜約180℃、より好ましくは約60℃〜約170℃の範囲である。
【0054】
前述の有利な性質を示すので、DVBDOなどのジビニルアレーンジオキシド及びポリアミノエーテルを含む本発明の配合物は熱硬化性樹脂組成物及び物品のような多岐にわたる用途においても有用である。
【実施例】
【0055】
以下の実施例及び比較例は、本発明をより詳細に説明するものであり、本発明の範囲を限定するものと解してはならない。
【0056】
以下の例中で用いる種々の用語及び名称は、下記の通りである:
DVDBOはジビニルベンゼンジオキシドを意味し;DGEPBAはビスフェノールAのジグリシジルエーテルを意味し;D.E.R.383エポキシ樹脂は、The Dow Chemical Companyから市販されている、EEW180を有するDGEPBAエポキシ樹脂であり;Jeffamine D230ポリアミノエーテルは、Huntsman Performance Productsから市販されているポリ(オキシプロピレンジアミン)(D230)であり;ChemMod 67樹脂は、Polystar LLCから市販されているブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)であり;DSCは示差走査熱量測定法を意味し;そしてTgはガラス転移温度を意味する。
【0057】
以下の標準的な分析装置及び方法を例中で用いる:
粘度はARES Rheomechanical Analyzerによって測定する。
【0058】
実施例1
脂環式アミンを含まないDVBDO配合物
D.E.R.383エポキシ樹脂61.8g、DVBDO 10.9g、分子量230のJeffamine D230ポリアミノエーテル23.6g及びアミノエチルピペラジン3.7gの混合物は25℃で150mPa・sの粘度を有する。
【0059】
実施例2
脂環式アミンを含まないDVBDO配合物
D.E.R.383エポキシ樹脂57.4g、DVBDO 14.3g、分子量230のJeffamine D230ポリアミノエーテル24.5g及びアミノエチルピペラジン3.8gの混合物は25℃で100mPa・sの粘度を有する。
【0060】
比較例A
脂環式アミンを含むBDDGE配合物
D.E.R.383エポキシ樹脂64.9g、ブタンジオールジグリシジルエーテル(ChemMod 67樹脂)11.5g、分子量230のJeffamine D230ポリアミノエーテル17.3g、アミノエチルピペラジン3.2g及びイソホロンジアミン3.2gの混合物は25℃で200mPa・sの粘度を有する。
【0061】
実施例1、実施例2及び比較例Aの配合混合物を、それぞれ、金型中で注型して、200mm×300mm×4mmの寸法の透明な注型品を形成した。これらの注型品を70℃において4時間硬化させ、100℃において4時間後硬化させた。透明な注型品を、物理的性質について試験した。TgはTA Instruments製のモデルQ2000示差走査熱量測定計を用いて10℃/分の温度勾配で測定した。引張特性はASTM D638に従って測定した。曲げ特性はASTM D790に従って測定した。表Iは、前記試験の結果を記載し、本発明の組成物が、脂環式アミン硬化剤を用いなくても、低い配合物粘度と同等の改善された熱的及び機械的性質を共に提供することを示している。
【0062】
【表1】

【0063】
本発明の範囲から逸脱しなければ、前記方法において若干の変更を行えることは、当業者には明らかであろう。従って、本明細書中に開示した内容は全て、例示としてのみ解釈し、請求する保護範囲を限定するものとしては解釈しないことを意図する。更に、本発明の方法は、表を含む前記の具体的な実施例によって限定すべきでない。正確には、これらの実施例及び表は、本発明の方法を例示するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)側鎖ヒドロキシル基を含まないポリアミノエーテルとのブレンドを含んでなる樹脂配合物。
【請求項2】
前記ポリアミノエーテル成分(b)が側鎖ヒドロキシル基を有さないポリアミノエーテルを少なくとも50重量%まで含む請求項1に記載の樹脂配合物。
【請求項3】
前記樹脂配合物が25℃において約400mPa・s未満の粘度を有する請求項1に記載の樹脂配合物。
【請求項4】
前記樹脂配合物の粘度が25℃において約25mPa・s〜約300mPa・sの範囲である請求項1に記載の樹脂配合物。
【請求項5】
前記ジビニルアレーンジオキシドがジビニルベンゼンジオキシドであり、前記ジビニルアレーンジオキシドの濃度が約2重量%〜約98重量%の範囲である請求項1に記載の樹脂配合物。
【請求項6】
前記ポリアミノエーテルがポリ(オキシプロピレンジアミン)であり、前記ポリアミノエーテルの濃度が約10重量%〜約50重量%の範囲である請求項1に記載の樹脂配合物。
【請求項7】
前記ポリ(オキシプロピレンジアミン)がJeffamine D230である請求項6に記載の樹脂配合物。
【請求項8】
前記配合物がジビニルアレーンジオキシド以外のエポキシ樹脂を含み、前記エポキシ樹脂の濃度が約2重量%〜約98重量%の範囲である請求項1に記載の樹脂配合物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂がビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含み、前記のビスフェノールAのジグリシジルエーテルがD.E.R.383である請求項10に記載の樹脂配合物。
【請求項10】
約25℃〜約150℃の範囲の温度において硬化された請求項1に記載の硬化樹脂配合物を含んでなる硬化樹脂配合物。
【請求項11】
前記硬化樹脂のTgが約60℃〜約170℃の範囲である請求項10に記載の硬化樹脂配合物。
【請求項12】
請求項1に記載の樹脂配合物を用いることを含んでなる真空樹脂インフュージョン成形法。

【公表番号】特表2012−514077(P2012−514077A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543525(P2011−543525)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/065437
【国際公開番号】WO2010/077485
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】