説明

真空物理的蒸着のための成形アノードとアノード−シールド接続

【解決手段】物理的蒸着装置は、側壁を有する真空チャンバ、カソード、高周波電源、基板支持体、シールド及びアノードを含む。カソードは真空チャンバ内にあり、スパッタリングターゲットを含むように構成される。高周波電源はカソードに電力を印加するように構成される。基板支持体は真空チャンバの側壁の内側にあり、当該側壁から電気的に絶縁される。シールドは真空チャンバの側壁の内側にあり、当該側壁に電気的に接続される。アノードは真空チャンバの側壁の内側にあり、当該側壁に電気的に接続される。アノードは環状体と当該環状体から内向きに突出する環状フランジとを含み、プラズマ生成用のターゲットの下の体積を画定するように環状フランジは配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には高周波(RF)スパッタリング物理的蒸着(PVD)に関し、より具体的にはRFスパッタリングPVD装置の成形アノードとストラップに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波スパッタリングPVDは、基板上に薄膜を堆積する方法である。基板は、真空チャンバ内において、RF電源に接続されたターゲットに対向するように配置される。RF電力が始動されると、プラズマが形成される。正のガスイオンは、ターゲット表面に引き寄せられ、ターゲットにぶつかり、運動量移行によりターゲット原子を取り去る。取り去られたターゲット原子は、その後、基板上に堆積して薄膜層を形成する。
【0003】
物理的蒸着の間、堆積される薄膜の特性を制御することは大切であるといえる。真空チャンバ壁方向に拡散するプラズマのために或いは堆積の反転のために、処理又は膜の安定性に問題が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般的に、一態様において、物理的蒸着装置は、側壁を有する真空チャンバ、カソード、高周波電源、基板支持体、シールド及びアノードを含む。カソードは、真空チャンバ内にあり、スパッタリングターゲットを含むように構成される。高周波電源は、カソードに電力を印加するように構成される。基板支持体は、真空チャンバの側壁の内側にあり、当該側壁から電気的に絶縁される。シールドは、真空チャンバの側壁の内側にあり、当該側壁と電気的に接続される。アノードは、真空チャンバの側壁の内側にあり、当該側壁と電気的に接続される。アノードは、環状体と、当該環状体から内向きに突出する環状フランジとを含み、環状フランジは、プラズマ生成用ターゲットの下方の体積を画定するように配置される。
【0005】
これら及び他の実施形態は、以下の特徴の一つ又は複数を任意に含みうる。環状体は上部及び下部を含みうるものであり、当該上部は当該下部よりカソードに近接して配置されうる。環状フランジは、下部から内向きに突出しうる。アノードの上部の上方の間隙は、プラズマ形成を防ぐように構成されうる。
【0006】
環状フランジ内の環状開口は、基板支持体とほぼ同じ半径を有しうる。環状フランジは、環状体から水平方向に突出しうる。環状フランジは、環状体から下方向且つ内方向に突出しうる。カソード又はターゲットに対してより近接する環状フランジの半径は、カソード又はターゲットからより離れた環状フランジの半径より大きくされうる。
【0007】
ターゲットはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含有しうる。真空チャンバは、真空ポンプ、プロセスガス制御装置、又は圧力測定装置を含みうる。カソードは、ターゲットに接着されるように構成された金属の受け板を更に含みうる。カソードは、マグネトロンアセンブリを含みうる。
【0008】
一般的に、別の態様において、物理的蒸着装置は、側壁を有する真空チャンバと、カソードと、高周波電源と、基板支持体と、シールドと、アノードと、真空チャンバを介してアノード及びシールドを直接的に接続する導電体とを含む。カソードは、真空チャンバ内にあり、スパッタリングターゲットを含むように構成される。高周波電源は、カソードに電力を印加するように構成される。基板支持体は、真空チャンバの側壁の内側にあり、当該側壁から電気的に絶縁される。シールドは、真空チャンバの側壁の内側にあり、当該側壁と電気的に接続される。アノードは、真空チャンバの側壁の内側にあり、当該側壁と電気的に接続される。導電体は、アノードとシールドとの間におけるガス流を許容するように構成される。
【0009】
これら及び他の実施形態は、以下の特徴の一つ又は複数を任意に含みうる。導電体は、アノードとシールドとを接続する少なくとも一つのストラップを含みうる。導電体はメッシュであってもよい。
【0010】
導電体は、アノードの下面とシールドの頂部との間に接続されうる。導電体は、アノードの頂部とシールドの外面との間に接続されうる。導電体は、アノード及びシールドに対して、少なくとも4点で接続されうる。
【0011】
導電体は、銅を含みうる。ターゲットは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含みうる。
【0012】
真空チャンバは、真空ポンプ、プロセスガス制御装置、及び圧力測定装置のうちの少なくとも一つを含みうる。カソードは、ターゲットに接着されるように構成された金属の受け板を更に含みうる。カソードは、マグネトロンアセンブリを含みうる。
【0013】
いくつかの実施形態は、以下の利点の一つ又は複数を有しうる。アノードは、プラズマ放電からの戻りRF電流の収集及び電気的接地の両者に対して十分な表面積となるように設計されうる。アノードとシールドとを接続する導電体は、シールドを接地アノードと同じ電位にすることにより、プラズマ放電領域の外側に向かうプラズマの漏出を低減することができる。RFシールドの表面積の増加は、全アノード−カソード表面積を増加させることにより、堆積工程を安定化することができる。第2のシールドは、チャンバ壁上へのターゲット材の堆積量を減らすことができる。
【0014】
本発明の一つ又は複数の実施形態の詳細が、添付図面と以下の明細書に記載される。本発明の他の特徴、態様及び利点は、本明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、拡張アノードを含む物理的蒸着装置の一実施形態の断面の概略図である。
【図1A】図1Aは、図1の拡張アノードの拡大図である。
【図2】図2は、物理的蒸着装置に使用されるアノードの透視図を示す。
【図3】図3は、拡張シールドを含む物理的蒸着装置の一実施形態の断面の概略図である。
【図3A】図3Aは、図3の拡張シールドの拡大図である。
【図4】図4は、物理的蒸着装置に使用されるシールドの上部の概略図である。
【図5】図5は、拡張アノードの無い物理的蒸着装置の、自己バイアスDC電圧とガス流とを関連付けた例示的グラフを示す。
【図6】図6は、拡張アノードを含む物理的蒸着装置の、自己バイアスDC電圧とガス流とを関連付けた例示的グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
個々の図中における同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【0017】
基板上に薄膜を生成するためにRF物理的蒸着(又はスパッタリング)を利用する場合には、望ましくない場所、例えばアノードとシールドとの間、の真空チャンバ内のプラズマ密度又はプラズマの存在にバラつきがあり、このことが堆積膜の特性のバラつきにつながる可能性がある。堆積膜の特性は、アノード、シールド、及びアノードとシールドとの間の電気的接続部の幾何学的配置、寸法及び形状を変更することにより制御されうる。
【0018】
図1を参照すると、物理的蒸着装置100は真空チャンバ102を含むことができる。真空チャンバ102は円筒状であって、側壁152、上面154及び底面156を有しうる。マグネトロンアセンブリ118は真空チャンバ102の上部に位置しうる。マグネトロンアセンブリ118は、交番磁極を有する一組の磁石を含みうる。マグネトロンアセンブリ118は静止していてもよいし、あるいは真空チャンバ102の半径に垂直な軸を中心に回転してもよい。物理的蒸着装置100は、電力供給装置104と、対応する負荷整合ネットワークとを更に含みうる。
【0019】
一つ又は複数の基板を支持するためのチャックすなわち基板支持体110は、真空チャンバ102の底面156の近傍において、ただし底面156上に間隔を空けて、真空チャンバ102内に収容されうる。基板支持体110は、PVD処理中に基板116が薄膜で被覆されるように基板116を保持するような構成を持つ基板クランプ板等の基板保持機構122を含みうる。基板支持体110はグランドから電気的に絶縁されてもよく、それによりDC電圧又はRF電源120等の電源によって基板支持体110に独立的にバイアスをかけることができる。例えば700℃までの所定温度で基板116の温度を維持するために、温度制御装置(図示せず)を基板支持体110上に配置することができる。
【0020】
カソードアセンブリ106は、真空チャンバ102の内部であって真空チャンバ102の上面154近傍に収容されうる。カソードアセンブリ106は、金属の受け板(図示せず)に接合可能なターゲット126を含みうる。ターゲット106は、一般に、外端160を有する円形としうる。ターゲットは、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(「PZT」)によって作ることができる。カソード106は、電力供給装置104によってRF電力が印加される場合に、RF電流の電極として働くことができる。カソードアセンブリ106は、絶縁体リング150により真空チャンバ102から電気的に絶縁されうる。
【0021】
アノード108も真空チャンバ102内に収容されうる。アノード108は、RF電流戻り経路を与えるようにカソード106の対抗電極をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、アノード108と基板支持体110とを同一部品としうる。しかしながら他の実施形態では、図1に示されるように、基板支持体110がフローティングであるか或いはアノード108とは異なる電位に保持されるように、アノード108は基板支持体110から電気的に絶縁されてもよい。アノードは真空チャンバ側壁152に接地されうる、すなわち本文脈では電気的に接続されうる(アノードはグランドに対して実際に結合される必要は無い)。
【0022】
図1、図1A及び図2を参照すると、アノード108は、環状体302を有することができ、環状体302から内向きに突出する環状フランジ304により拡張されうる。環状フランジ304は、PVD処理中にプラズマを保持することが可能な所望の放電空間128(図1を参照)を画定することができる。図1A及び図2に示されるように、環状体302は上部306及び下部308を含みうる。上部306は、下部308よりもカソード106の近くに配置されうる。上部306と真空チャンバ102の上面154との間の間隔148(図1を参照)は、その間におけるプラズマの形成を防止するように構成されうる。
【0023】
図1Aに示されるように、アノードの上部306の頂部320は、真空チャンバの上面154から鉛直方向に延在することができ、例えば円柱としうる。頂部320は、ターゲット126の端部160と平行に、当該端部160を取り囲むことができる。上部306の底部322は、頂部320の下端において内面から内向きに、例えば垂直方向へ、延在しうる。底部322は、例えば水平リングとして、実質的に水平方向へ内向きに延在しうる。リング322の内径は、ターゲット126とほぼ同じ半径を有しうる。下部308は、底部322の下面及び内端から延在しうる。下部308は、底部322から垂直に延在することができ、例えば円柱として、鉛直方向に延在しうる。その円柱の内壁は、ターゲット126とほぼ同じ半径を有することができる。図示しないが、別の突起が、シールド124の上部の配置のために間隙が形成されるように、外端近傍の底部322の下面から下方に延在しうる。
【0024】
環状フランジ304は、フランジの少なくとも一部がターゲット126の下方に延在するように、下部308から内向きに突出しうる。図1に示されるように、カソード106に近接するフランジ304の半径がカソード106から遠いフランジ304の半径より大きくなるように、すなわちフランジが漏斗形状を有するように、フランジ304は環状体302から内向きに下方に延在しうる。あるいは、図3に示されるように、フランジ304は環状体302から水平方向に延在しうる。いくつかの実施形態では、フランジ304は下部308の最下端から延在する。
【0025】
環状開口310(図2を参照)は、PVD処理中に基板116の実質的なシャドウイングが無いように、すなわち基板116の上面全体が薄膜で被覆されるように、基板支持体110とほぼ同じ半径を有しうる。
【0026】
真空チャンバ102はまた、薄膜材で被覆されることから真空チャンバ102の側壁を保護するためのRFシールド124を含みうる。シールド124は、例えば非磁性ステンレス鋼やアルミによって作ることができ、真空チャンバ102の側壁152に接地されうる。
【0027】
いくつかの実施態様では、シールド124は鉛直方向に延在する環状体402、例えば筒状の環状体402を含む。水平方向に延在するフランジ146は、環状体402の下端から内向きに延在しうる。水平方向に延在するフランジ146は、真空チャンバ102の底部近傍に配置することができ、フランジ304を越えて延在し、アノード108の下部308を取り囲んで下部308と部分的に鉛直に重なりうる。いくつかの実施形態では、鉛直に延びるフランジ146が、アノード108の下部308と基板保持機構122との間の間隙内へ延在しうる。フランジ146は、基板保持機構122と部分的に水平に重なりうる。
【0028】
シールド124の環状フランジ146内の環状開口406(図4を参照)は、基板116の実質的なシャドウイングが無いように、基板支持体とほぼ同じ半径を有することができる。間隙132は、意図した放電空間128からプロセスガスを排気できるようにするために、シールド124とアノード108との間に存在しうる。
【0029】
図3、図3A、図4を参照すると、いくつかの実施形態では、一連の同心環状突起404が環状フランジ146から例えばカソード106に向かって突出するように、シールドが延在しうる。環状突起404は環状体402と平行に延在しうる。図3に示されるように、環状突起404の高さは、真空チャンバの中心から側壁へ半径に沿って増加しうる。環状体402は、環状突起404の高さより高い高さを有しうる。
【0030】
図1を再び参照すると、物理的蒸着装置102は、アノード108とシールド124とを直接的に接続する導電体130、例えばストラップ、を含みうる。導電体130は、可撓性にすることができ、アノード108とシールド124との間でガスが流れるように構成されうる。例えば、導電体130はメッシュやワイヤストラップであってもよい。導電体130は、例えば銅やアルミによって作られうる。
【0031】
アノード108とシールド124との間にいくつかの接続部が存在しうる。例えば、導電体130は、アノード108及びシールド124に対して少なくとも4点で接続されうる。図1に示されるように、導電体130は、アノード108の下面とシールド124の頂部との間に接続されうる。導電体130はまた、アノード108の頂部とシールド124の外面との間に接続されてもよい。
【0032】
図1を再び参照すると、物理的蒸着装置100は更に二次的チャンバシールド134を含みうる。そのチャンバシールドは、例えば非磁性ステンレス鋼又はアルミによって作ることができる。チャンバシールドの上部は、アノード108と真空チャンバ102の側壁との間に配置されうる。チャンバシールド134の下部は、シールド124及び真空チャンバ102の側壁の間に配置されうる。チャンバシールド134は、シールド124及び/又はアノード108と同心で、それらを取り囲むことができる。チャンバシールド134の高さはシールド124の高さ以上としうる。チャンバシールド134は、鉛直環状体142と、当該環状体142から(例えば鉛直環状体142の下端から)内向きに延在する環状フランジ144とを含みうる。チャンバシールド134の環状フランジ144は、シールド124の環状フランジ146の下方に延在しうるが、環状フランジ146より短い半径方向長さを有しうる。環状フランジ144は、基板支持体122よりチャンバの底部に近接しうる。チャンバシールドのフランジ144の内端は、基板支持体122の外端と鉛直方向に並べられうる。
【0033】
チャンバシールド130は、プロセスガスが真空チャンバ102内へ供給可能及び排出可能であるように構成されうる。例えば、チャンバシールド134は、ガス吸気口142又は真空吸気口114を覆わないように十分に短くすることができる。あるいはチャンバシールド134は、ガス吸気口142及び真空吸気口114の場所に対応する位置に穴(図示せず)を有していてもよい。更に、チャンバシールド134は、独立して取り外し可能であり、容易に洗浄可能であるとともに長期にわたって再利用可能である。
【0034】
図1に示されるように、チャンバシールド134は、導電体136によってシールド124に電気的に接続されうる。導電体136は、導電体130と同様の材料及び形状にしうる。したがって、導電体136は、シールド124とチャンバシールド134との間においてガス流を許容するように構成されうる。同様に、導電体136は、メッシュで構成可能であり、一つ又は複数のストラップであってもよく、銅又はアルミを含むことができる。また、導電体136は、シールド124の底面とチャンバシールド134の内面との間に接続されうる。
【0035】
物理的蒸着装置100は、更に、プロセスガス吸気口112、プロセスガス制御装置(図示せず)、真空吸気口114、圧力測定装置及び制御装置(図示せず)、及び複数の真空ポンプ(図示せず)を含みうる。
【0036】
スパッタリング又はPVD処理において、ガス吸気口112を介してアルゴンや酸素等のガスを供給可能である。真空ポンプ(図示せず)は、真空吸気口114を介し、例えば10−7トール以下の基礎真空度、及び例えば0.5ミリトール〜20ミリトールのプラズマ動作圧を維持することができる。500W〜5000W程度、例えば2000W〜4000W、あるいは3000W、の電力供給104がカソードアセンブリ106にもたらされると、ターゲット126は負にバイアスされるとともにアノード108は正にバイアスされ、これによりカソード104とアノード108との間の意図される放電空間128にプラズマが形成される。マグネトロンアセンブリ118は、カソード106の前面に及びその近傍に、例えば50ガウス〜400ガウス(例えば200ガウス〜300ガウス)の磁界を作り出すことができる。磁界は、電子をターゲット126の前面と平行な螺旋運動に制限することができる。
【0037】
ターゲット126上の負の自己バイアスDC電圧は、磁界によりターゲット126の表面近傍にとどめられる電子と共に、スパッタガスをイオン化して非反応性ガスの陽イオンを生成し、エネルギー陽イオンによるターゲット126の照射を容易なものにする。運動量移動は、PZT分子等の中性ターゲット材をターゲット106から移動させ、基板116上に堆積させて、基板116上に薄膜を生成する。
【0038】
基板116は、基板RFバイアス電力供給120により、接地に対して負にバイアスされうる。このようなバイアスは、表面から更なるターゲット原子を叩き出すのに(例えば基板表面をエッチングするのに)役立つ。
【0039】
スパッタされた材料は、真空チャンバ102においてターゲットから全方向に放出されるので、基板116の表面以外の面が被覆されうる。したがって例えば、ターゲット126が誘電体材料である場合、アノード108表面とシールド124表面は電気的絶縁材料で覆われうる。その結果、RF電流戻り経路を接地するための電気伝導が不十分となる可能性があり、アノード108、シールド124及び真空チャンバ102の側壁152の様々な部分間で間欠的な二次的プラズマの形成が生じる。このような不安定なプラズマ条件は、意図せぬ面上へのターゲット材の更なる堆積をもたらす可能性がある。
【0040】
さらに、カソード106に印加される高いレベルのRF電力や広範囲のスパッタガス圧を被覆処理で必要とする場合、意図した放電空間128の外側の領域でプラズマが形成される可能性があり、意図せぬ表面上へのターゲット材の堆積を生じさせる。例えば、2000W以上等の高いRF電力では、プラズマ強度の増加によりプラズマは真空チャンバ102の壁に向かって拡散しうる。別の例として、3.0〜7.0ミリトールの圧力範囲において、プラズマは、ターゲット106の直下の上部空間と意図した放電空間128全体との間で振動し始める可能性がある。これは、基板116上に堆積しているターゲット126からの材料というよりむしろ基板116からの材料がターゲット126上に堆積するように、不安定なプラズマ条件とスパッタ蒸着モードの逆転との両方を生じる可能性がある。しかしながら、以下に述べられるように、これらの問題はアノードフランジや導電性ストラップによって改善されうる。
【0041】
プラズマの物理的特性は、適切なスパッタガス圧、カソードへのRF電力、及び基板上へのバイアス電力を使用することにより制御可能である。加えて、プラズマの分布は、カソード106、アノード108及びウェハ支持体110上の基板ウェハ116の形状、寸法及び相対位置により画定される真空チャンバ内の空間体積を作ることによって制御可能である。
【0042】
例えば、全アノード108表面積が全カソード106表面積よりはるかに大きいと、RF電流を良好に導いて接地することができ、プラズマ形成をより安定化することができる。したがって、上述のようにアノード108が延在すると、アノード表面積が増加して、アノード108とシールド124との間の間隙132を介したプラズマのいかなる潜在的漏出も集めまとめることができる。増加されたアノード表面積とその物理的形状は更に、基板116上の堆積均一性を改善することができるように、プラズマ放電のための空間的コリメーターとして作用しうる。
【0043】
図5に示されるように、拡大された表面積をアノードが有さない場合、ターゲットバイアス502及び基板支持体バイアス504は、3.0〜7.0ミリトールのガス圧に非機能的に関係付けられうる(領域506を参照)。この圧力範囲は、上述したように、不安定なプラズマの形成に対応しうる。一方、図6に示されるように、拡大された表面積をアノードが有する場合、ターゲットバイアス602と基板支持体バイアス604はそれぞれガス圧と機能的に関連付けられて、処理中のプラズマ形成を安定化することができる。
【0044】
同様に、シールド124上の環状突起404は、全アノード−カソード比が実質的に増加するように、プラズマに接するアノード面積を事実上増加させることができる。
【0045】
別の例として、シールド124がアノード108と同じ電位にされると、シールド124は、プラズマの壁への拡散を物理的に遮断することに加えて二次的アノードとして作用することができる。いくつかの実施形態において、シールドは、特に電気的接続部から最も遠い領域において、局所的な電荷変動部を生じさせうる。したがって、アノード108とシールド124との間の空間は、キャパシタンスブリッジをもたらす可能性があり、プラズマの振動を生じさせる可能性がある。しかしながら、上述したように、導電体130がアノード108とシールド124との間に置かれると、シールドとアノードとの間の不連続性や変動がほとんどなくなるように、シールド124をアノード108のRF電位とほぼ同じ電位にすることができる。その結果、プラズマ放電領域の外側に向かうプラズマの漏出を抑えることができ、これにより真空チャンバ102の内面上へのターゲット材の堆積が低減される。
【0046】
同様に、シールド124及び真空チャンバ102の壁の間の二次的チャンバシールド134の配置により、真空壁上に堆積されるターゲット材の量を減らすことができる。また、導電材料136を介してアノード124にチャンバシールド134を電気的に接続することにより、チャンバシールドをアノード108及びシールド124と同じ電位にしうる。これにより、意図した放電空間129の外側の漂遊プラズマ生成の可能性を低減することができる。
【0047】
位置及び配向の用語(例えば、頂部)は、物理的蒸着装置内の部品の相対的な位置及び配向を説明するために使用されているが、当然のことながら、物理的蒸着装置自体は鉛直又は水平配向あるいは他の配向で保持されうる。
【0048】
本発明の特定の実施形態が説明された。他の実施形態が特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁を有する真空チャンバと、
前記真空チャンバ内のカソードであって、スパッタリングターゲットを含むように構成されるカソードと、
前記カソードに電力を印加するように構成される高周波電源と、
前記真空チャンバの前記側壁の内側にあり、前記側壁から電気的に絶縁された基板支持体と、
前記真空チャンバの前記側壁の内側にあり、前記側壁と電気的に接続されたシールドと、
前記真空チャンバの前記側壁の内側にあり、前記側壁と電気的に接続されたアノードとを備え、
前記アノードは、
環状体と、
前記環状体から内向きに突出する環状フランジとを含み、前記環状フランジはプラズマ生成用のターゲットの下方の体積を画定するように配置される物理的蒸着装置。
【請求項2】
前記環状体は上部及び下部を含み、前記上部は前記下部より前記カソードに近接する請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項3】
前記環状フランジは前記下部から内向きに突出する請求項2に記載の物理的蒸着装置。
【請求項4】
前記アノードの前記上部の上方の間隙は、プラズマ形成を防止するように構成される請求項2に記載の物理的蒸着装置。
【請求項5】
前記環状フランジの内側の環状開口は、前記基板支持体と略同一の半径を有する請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項6】
前記環状フランジは、前記環状体から水平方向に突出する請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項7】
前記環状フランジは、前記環状体から下方且つ内方向に突出する請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項8】
前記カソードに近い前記環状フランジの半径は、前記カソードから遠い前記環状フランジの半径より大きい請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項9】
前記ターゲットはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含む請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項10】
前記真空チャンバは少なくとも一つの真空ポンプを具備する請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項11】
少なくとも一つのプロセスガス制御装置を更に備える請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項12】
少なくとも一つの圧力測定装置を更に備える請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項13】
前記カソードは、前記ターゲットに接着されるように構成される金属の受け板を更に具備する請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項14】
前記カソードは、マグネトロンアセンブリを更に具備する請求項1に記載の物理的蒸着装置。
【請求項15】
側壁を有する真空チャンバと、
前記真空チャンバ内のカソードであって、スパッタリングターゲットを含むように構成されるカソードと、
前記カソードに電力を印加するように構成される高周波電源と、
前記真空チャンバの前記側壁の内側にあり、前記側壁から電気的に絶縁される基板支持体と、
前記真空チャンバの前記側壁の内側にあり、前記側壁と電気的に接続されるシールドと、
前記真空チャンバの前記側壁の内側にあり、前記側壁と電気的に接続されるアノードと、
前記真空チャンバを介して前記アノードと前記シールドとを直接的に接続する導電体であって、前記アノードと前記シールドとの間におけるガス流を許容するように構成される導電体と、を備える物理的蒸着装置。
【請求項16】
前記導電体は、前記アノードと前記シールドとを接続する少なくとも一つのストラップを含む請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項17】
前記導電体はメッシュを含む請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項18】
前記導電体は、前記アノードの下面と前記シールドの頂部との間に接続される請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項19】
前記導電体は、前記アノードの頂部と前記シールドの外面との間に接続される請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項20】
前記導電体は、前記アノード及び前記シールドと、少なくとも4点で接続される請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項21】
前記導電体は銅を含む請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項22】
前記ターゲットはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含む請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項23】
前記真空チャンバは少なくとも一つの真空ポンプを具備する請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項24】
少なくとも一つのプロセスガス制御装置を更に備える請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項25】
少なくとも一つの圧力測定装置を更に備える請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項26】
前記カソードは、前記ターゲットに接着されるように構成される金属の受け板を更に具備する請求項15に記載の物理的蒸着装置。
【請求項27】
前記カソードは、マグネトロンアセンブリを更に具備する請求項15に記載の物理的蒸着装置。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−512325(P2012−512325A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540827(P2011−540827)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/067147
【国際公開番号】WO2010/068625
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】