説明

真空蒸着装置

【課題】被蒸着部材と蒸発源の少なくとも一方を直線移動させて、複数の異種材料を被蒸着部材に均一な成分量比で蒸着する。
【解決手段】異種の第1,第2蒸着材料を加熱して気化させる蒸発装置12と、真空蒸着容器11内で蒸発装置12から気化された第1,第2蒸発材料を蒸着させるガラス基板13と、ガラス基板13をx方向に移動させる基板保持移動装置とを具備し、蒸発装置12に、各蒸発部21A,21Bから導入された第1,第2蒸発材料をそれぞれ第1拡散容器23A,23Bで拡散した後に、ガラス基板13に向かって第1,第2蒸発材料をそれぞれ放出する第1ノズル筒25aおよび第2ノズル筒25bを近接配置したノズル組25A,25Bを設け、ノズル組25A,25Bをガラス基板13の移動方向に直交する横断方向にライン状に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被蒸着部材と蒸発装置の少なくとも一方を直線方向に移動させつつ、蒸発装置で加熱されて気化された複数の異種材料を被蒸着部材に蒸着する真空蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被蒸着部材である基板を直線方向に移動させつつ、移動方向と直交するライン方向に沿って配置された開口から材料を放出させて蒸着し、有機ELディスプレイを製造する成膜装置がたとえば特許文献1に開示されている。
【0003】
上記有機ELディスプレイの基本構造は、ガラス基板上に配置された陽極(透明電極)上に、ホール輸送層、発光層、陰極が順次配置されたもので、少なくとも、上記発光層は有機材料が蒸着により形成されている。
【0004】
一般的に、ガラス基板上に蒸着により薄膜を形成する場合、真空容器内に有機材料の蒸発源を配置しておき、真空状態で蒸発源を加熱し、その蒸気を同じく真空容器内に配置された基板の表面に付着させることにより薄膜が形成される。
【0005】
上記有機材料を蒸着させる際に、主成分であるホスト材料に微量添加成分であるドーパント材料を混合させる場合があり、この場合、2つの異なる材料を異なる割合で且つ均一な成分量比でガラス基板上に蒸着させる必要がある。
【0006】
このように、複数の異種材料を蒸着させる装置、方法等として、特許文献2に示すように、真空チャンバー内の被蒸着部材に対向する下部位置に2個のセルを配置し、各セルの放出孔から異種材料をそれぞれ放出するようにしたものがある。また特許文献3,4に示すように、別個に設けられた蒸発源で発生した材料を混合室で混合して放出させるものがある。
【特許文献1】特開2004−269948
【特許文献2】特開2003−297565
【特許文献3】特開2002−30418
【特許文献4】特開2003−155555
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、被蒸着部材に蒸着される蒸着膜厚は、所謂コサイン則による分布を示すことが知られているが、特許文献2に示すように、異種材料を別のセル室に入れて同時に蒸着させようとする場合、離れた位置の放出孔から放出された材料のコサイン則による膜厚分布では、部位によって成分量比が一定にならないため、品質が一定であるとはいえない。
【0008】
すなわち、図12に示すように、特許文献2の構成を特許文献1に適用して直線移動する基板3に蒸着する場合、基板3の移動方向の前部にホスト材料用の蒸発装置1を配置し、基板3の移動方向の後部にドーパント材料用の蒸発装置2を配置して蒸着すると、基板3に形成される蒸着膜全体における異種材料の成分量比が等しくなっても、膜厚方向において、最初に蒸着されるホスト材料の成分量比が膜厚の基板側で大きく、また次いで蒸着されるドーパント材料の成分量比が膜厚の表面側で大きくなり、膜厚方向において成分比率が不均一になるという問題がある。なお、図12において蒸発装置1,2の放出範囲を示す直線間に示された曲線は、蒸発流分布曲線である。
【0009】
またこれを解消するために、図13に示すように、複数の防着板4を配置して材料を蒸着制御することも行われているが、各材料の蒸発流分布自体を変えるものではなく、防着板4により遮られた部分の材料が基板3に付着しないため、材料の利用効率が低下するという問題が生じる。
【0010】
さらにまた特許文献3,4に示すように、混合した後の材料を、多数の放出孔から放出することで、被蒸着部材と放出孔との間の距離を短くして材料の利用効率の低下を改善し、成分量比も均一にしやすくなるが、異種材料を混合した後で放出する場合は、温度差の異なる異種材料を取り扱うことが困難になる。
【0011】
これは、有機ELディスプレイの表示部を製造する有機材料は、安定性が低く、また異種材料間で蒸発温度が異なるとともに分解してその性能を失う分解温度(蒸発温度より高い)も異なることに起因する。すなわち、異種材料をそれぞれ独立して坩堝で加熱する場合には、蒸発温度以上で、分解温度未満に設定するだけでよく比較的制約が小さいが、異種材料を混合する場合には、混合する部分で混合される材料の全ての蒸発温度以上で、かつ分解温度未満に保持して、蒸着と分解とによる材料の劣化を防ぐ必要が生じるため、坩堝により個別に加熱する場合に比べて制約が大きくなる。
【0012】
有機ELディスプレイなどは一部製品が出回っているが、確立された分野とはいえず、特に、その材料においてはこれからどのようなものが出てくるかも知れず、蒸発温度と分解温度による制約を装置が大きく受ける構成は望ましいとはいえない。
【0013】
本発明は上記問題点を解決して、被蒸着部材と蒸発源とを相対移動させて異種材料を蒸着させる場合、被蒸着部材に均一な異種材料の成分量比で蒸着することができる真空蒸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、異種の蒸着材料をそれぞれ加熱して気化させる複数の蒸発装置と、真空蒸着容器内で前記蒸発装置から気化された複数の蒸発材料を蒸着させる被蒸着部材と、前記蒸発装置と被蒸着部材の少なくとも一方を直線方向に移動させる移動装置とを具備し、前記蒸発装置に、異種の蒸着材料をそれぞれ加熱して気化する複数の蒸発部と、前記各蒸発部から導入された蒸発材料をそれぞれ拡散する複数の拡散部と、前記各拡散部にそれぞれ設けられて被蒸着部材に向かって蒸発材料を放出するノズル群とを設け、前記ノズル群は、異種の蒸発材料をそれぞれ放出する複数のノズルを近接配置したノズル組を有し、前記ノズル組が前記移動装置による移動方向を横断する方向にライン状に配置されたものである。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、各ノズル組は、異種の蒸発材料をそれぞれ放出するノズルが、移動装置による移動方向の前後位置に配置されたものである。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、各ノズル組は、異種の蒸発材料をそれぞれ放出するノズルが、移動装置による移動方向を横断する方向の前後位置に配置されたものである。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、各ノズル組は、隣接するノズル組で異種の蒸発材料をそれぞれ放出するノズルが千鳥位置に配置されたものである。
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明において、各ノズル組は、異種の蒸発材料を放出するノズルが、同一軸心状に外嵌するように中心側と外周側とに配置されたものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、異種の蒸発材料を放出するノズルが近接配置されたノズル組を、移動装置による移動方向を横断する方向にライン状に配置したので、ノズルから放出される異種の蒸発材料の蒸発流分布がほぼ重なり、被蒸着部材に均一な成分量比で異種の蒸発材料を蒸着することができる。また異種の蒸発材料は、蒸発源から拡散部を介して複数のノズルに導入されるので、均一な放出が可能となり、均一な厚みの蒸着膜を形成することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、各ノズル組において、異種の蒸発材料を放出するノズルを千鳥位置に配置することにより、さらに異種の蒸発材料の蒸発流の混合が図れ、より均一な成分量比の蒸着膜を形成することができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、各ノズル組において、異種の蒸発材料を放出するノズルを同一軸心状に配置することにより、異種の蒸発材料の蒸発流が重なり、蒸着膜における異種材料の成分量比をより均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
真空蒸発装置の実施の形態1を図1〜図5を参照して説明する。
【0022】
この真空蒸着装置は、図1〜図3に示すように、たとえば有機ELディスプレイの表示部を製造するもので、真空蒸着容器11の蒸着室11a内で、たとえば2種類の蒸着材料をガラス基板(被蒸着部材)13に蒸着する。ここで、異種の蒸着材料、2種類のうち、主成分であるホスト材料を第1蒸着材料A、また微量添加成分であるドーピング材料を第2蒸着材料Bといい、第1,第2蒸着材料A,Bを加熱して気化させたものをそれぞれ第1蒸発材料、第2蒸発材料という。
【0023】
この真空蒸着装置は、真空ポンプ(図示せず)が接続されて蒸着室11aを形成する真空蒸着容器11と、第1,第2蒸着材料A,Bをそれぞれ加熱して気化させる蒸発装置12と、複数の保持ローラ14aを介してガラス基板13を一定高さに保持し水平な移動方向(以下、x方向という)に沿って所定速度で移動させる基板保持移動装置(移動装置)14とを具備している。
【0024】
前記蒸発装置12は、真空蒸着容器11の下部で外側に設けられて第1蒸着材料Aを加熱し気化する第1蒸発部(蒸発部)21Aおよび第2蒸着材料Bを加熱し気化する第2蒸発部(蒸発部)21Bと、第1,第2蒸発部21A,21Bから蒸発された第1,第2蒸発材料をそれぞれ蒸着室11a内に導入する第1,第2誘導管22A,22Bと、蒸着室11a内に設けられて第1,第2蒸発材料をそれぞれガラス基板13に向かって放出する放出部23とを具備し、前記第1,第2誘導管22A,22Bには、真空蒸着容器11の外側に、第1,第2蒸発材料の流量をそれぞれ調整する第1,第2流量制御弁24A,24Bが介在されている。
【0025】
前記第1蒸発部21Aおよび第2蒸発部21Bは、第1,第2蒸着材料A,Bをそれぞれ収容するセル(坩堝)21a,21aと、これらセル21a,21aに収容された第1,第2蒸着材料A,Bを加熱し気化する加熱装置21b,21bが設けられている。
【0026】
前記放出部23には、上下2段に所定の隙間をあけて配設された第1拡散容器(拡散部)23Aおよび第2拡散容器(拡散部)23Bと、複数のノズル組25A,25Bを有するノズル群25とが具備されている。前記第1,第2拡散容器23A,23Bは横長の箱体状で、x方向に直交する横断方向(以下、y方向という)に沿って配置されている。第1拡散容器23A内には第1蒸発材料を均一に分散させる拡散空間(バッファ空間ともいう)が形成され、さらに第2拡散容器23Bを貫通した第1誘導管22Aが接続されている。また第2拡散容器23B内には第2蒸発材料を均一に分散させる拡散空間(バッファ空間ともいう)が形成され、さらに第2誘導管22Bが接続されている。
【0027】
前記ノズル群25は、図4に示すように、y方向に沿って所定間隔tごとにライン状に配置された複数のノズル組25A,25Bからなり、各ノズル組25A,25Bは、第1拡散容器23Aの上面の所定位置に突設された第1ノズル筒(ノズル)25aと、第2拡散容器23Bの所定位置に突設された第2ノズル筒(ノズル)25bとがそれぞれx方向に近接配置されている。また第1ノズル組25Aと第2ノズル組25Bは、y方向に交互に配置されるとともに、第1ノズル筒25aと第2ノズル筒25bが逆位置に配置され、全体として第1ノズル筒25aと第2ノズル筒25bがいわゆる千鳥状に配置される。
【0028】
ここで「近接配置」とは、第1ノズル筒25aと第2ノズル筒25bとが互いに接している状態から、図4に示す所定の隙間δ(たとえば約15mm以下)をあけて配置された状態を含むものとする。
【0029】
また第1ノズル筒25aは第1拡散容器23Aの上面に突設され、さらに第2ノズル筒25bは、基端部が第2拡散容器23Bの上面に接続開口され、先端部が第1拡散容器23Aの貫通穴に断熱部材を介して挿入されてその上面に突出されているが、図11(a)に示すように、上部に配置される第1拡散容器23Aの第1ノズル筒25aを筒状とせずに、第1拡散容器23Aの上面板に穿設開口されたノズル口(ノズル)25a’としてもよい。
【0030】
基板保持移動装置14は、たとえば図示するローラ駆動式の直線移動機構が採用され、ガラス基板13の両側辺部を、それぞれx方向に所定間隔ごとに配置された保持ローラ14aにより下方から保持させるとともに、保持ローラ14aを駆動装置(図示せず)により回転させることでガラス基板13を所定速度でx方向に移動させる。なお、ローラ駆動式以外に、ねじ軸式やラック・ピニオン式などの公知の他の直線移動機構を採用してもよい。
【0031】
また第1,第2拡散容器23A,23Bには、第1,第2蒸発材料の冷却や付着を防止するために加熱ヒータ(図示せず)がそれぞれ設けられており、この輻射熱対策として、第1,第2拡散容器23A,23Bを覆い、かつ第1,第2ノズル筒25a,25bの対応位置に開口部が形成された防熱カバー(図示せず)が設けられる。さらにこの防熱カバー上に冷却板(図示せず)を設けて輻射熱を効果的に放散させることもできる。
【0032】
そして、この真空蒸着装置には、図2に示すように、ガラス基板13に蒸着される膜厚を調整する膜厚制御装置26が設けられている。この膜厚制御装置26は、蒸着作業開始時などに、真空蒸着室11内のノズル群25の上方に配置された膜厚センサ27の検出信号と、第1,第2蒸発部21A,21Bのセル21a,21aに設置された温度センサ28A,28Bの検出信号とに基づいて、一定の蒸発量が検出されると、第1,第2蒸発部21A,21Bの加熱装置21b,21bを一定温度に保持しつつ、第1,第2流量制御弁24A,24Bを所定の開度で開放し、さらに基板保持移動装置駆動部14bによりガラス基板13を所定速度で移動してガラス基板13上に蒸着膜を形成する。また、膜厚の制御に際して、セル21a,21aの温度を一定に保持し、第1,第2流量制御弁24A,24Bにより蒸発流量を制御することにより、膜厚を均一に制御することができる。
【0033】
また実施の形態1では、図4,図5に示すように、第1,第2ノズル筒25a,25bからガラス基板13までの蒸着距離Hが決定されると、x方向の上流側(下流側)の第1,第2ノズル筒25a,25bからガラス基板13の前辺部(後辺部)の移動始点(移動終点)までのノズル筒−始終点間距離:x0が決まる。またy方向で最も外側の第1,第2ノズル組25A,25Bの第1,第2ノズル筒25a,25bからガラス基板13の両側辺までのノズル筒−基板側辺間距離:y0も十分に長く決定される。ここでx0≧y0に設定されているが、ガラス基板13の中央部と、移動方向の前後辺部、左右側辺部も膜厚が均一となるように適宜設定されていればよい。なお、ノズル筒−基板側辺間距離:y0は、ライン状に配置されたy0におけるノズル組25A,25Bの間隔(ピッチ)を中央部より小さくしたり、y0における第1,第2ノズル筒25a,25bの口径を大きくすることにより、適宜短く変更することが可能となる。
【0034】
またここで、各ノズル組25の第1,第2ノズル筒25a,25bの口径を同一に設定し、x0≧y0とした場合に、蒸発レート10Å/secで、膜厚の均一性を±5%以内とすることができた。
【0035】
上記構成において、第1蒸発部21Aで加熱装置21bによりセル21aが加熱されて第1蒸着材料Aが気化され、気化された第1蒸発材料が第1誘導管22Aから第1拡散容器23Aの拡散空間に導入されて均一に分散され、さらに第1蒸発材料が第1拡散容器23Aから第1ノズル筒25aを介して上方に向かって放出される。また第2蒸発部21Bで加熱装置21bによりセル21aが加熱されて第2蒸着材料Bが気化され、気化された第2蒸発材料Bが第2誘導管22Bから第2拡散容器23Bの拡散空間に導入されて均一に分散され、さらに第2蒸発材料が第2拡散容器23Bから第2ノズル筒25bを介して上方に向かって放出される。そして、第1ノズル筒25aから放出された第1蒸発材料と第2ノズル筒25bから放出された第2蒸発材料が共に、基板保持移動装置14により移動されるガラス基板13上にそれぞれ蒸着される。
【0036】
上記実施の形態1によれば、蒸発装置12において第1,第2拡散容器23A,23Bでそれぞれ均一に分散された第1,第2蒸発材料が、近接配置された第1,第2ノズル筒25a,25bからそれぞれガラス基板13に向かって放出される。これにより各蒸発流がそれぞれコサイン則によりほぼ重なった状態で広がり、また第2ノズル筒25a,25bを有する第1,第2ノズル組25A,25Bがy方向にライン状に配置されることで、x方向に移動されるガラス基板13全体に成分量比が均一な蒸着膜を形成することができる。
【0037】
またライン状に配置された第1,第2ノズル組25A,25Bの第1,第2ノズル筒25a,25bが千鳥状に配置されることから、膜厚方向における成分量比のむらをなくして均一な蒸着膜を形成することができる。
【0038】
なお、図6(a)に示すように、各ノズル組25Eの第1,第2ノズル筒25a,25bがy方向に位置ずれした千鳥状の配置であってもよい。
また図6(b)に示すように、第1,第2ノズル筒25a,25bを千鳥状に配置するのでなく、第1,第2ノズル組25C,25Dの第1,第2ノズル筒25a,25bをy方向に沿ってほぼ接した状態で配置し、第1,第2ノズル組25C,25Dをy方向に沿って所定の間隔t’をあけてライン状に配置してもよい。なお、ここでは第1ノズル組25Cと第2ノズル組25Dとは、第1,第2ノズル筒25a,25bの位置がy方向に逆に配置され、第1ノズル筒25aが内側となるように、y方向の中心線CLの一方側に第1ノズル組25Cが、他方側に第2ノズル組25Dが配置されている。
【0039】
[実施の形態2]
この実施の形態2は、実施の形態1における第1,第2ノズル組25A,25Bの第1,第2ノズル筒25a,25bを、同心状に外嵌された二重管ノズルとしたもので、図7〜図9を参照して説明する。なお、実施の形態1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
すなわち、図7〜図9に示すように、ノズル群35におけるすべてのノズル組35Aは、第1拡散容器23Aの上板に突設された第1ノズル筒(ノズル)35aと、第2拡散容器23Bから第1拡散容器23Aの上下方向の貫通穴23aに断熱部材(図示せず)を介して挿入され第1拡散容器23A上に突出された第2ノズル筒(ノズル)35bからなり、第2ノズル筒35bは第1ノズル筒35a内に同一軸心上に配置されて二重管ノズルに構成され、第1拡散容器23Aの上にy方向に沿ってライン状に所定のピッチで配置されている。
【0041】
もちろん、図11(b)に示すように、第1ノズル筒35aを筒状とせずに、第1拡散容器23Aの上板に穿設開口された第1ノズル口(ノズル)35a’としてもよい。
上記実施の形態2によれば、ガラス基板13の移動方向と直交する方向にライン状に配置された複数のノズル群35を、各ノズル組35Aを第2蒸発材料を放出する第2ノズル筒35bの外周部に、第1蒸発材料を放出する第1ノズル筒35aを同一軸心上に外嵌して配置した二重管ノズルに構成したので、第1,第2蒸発材料の蒸発流が互いに重なり合ってガラス基板13に蒸着されることにより、ガラス基板13に均一な膜厚で蒸着膜を形成することができ、第1蒸着材料Aおよび第2蒸着材料Bの成分量比もさらに均一にすることができる。
【0042】
なお、上記実施の形態1,2では、蒸発装置12の第1蒸発部21Aと第2蒸発部21Bとを、真空蒸着容器11の外側に配置したが、次の実施の形態3のように、真空蒸着容器11内に蒸発装置12の全体を配置することもできる。
【0043】
[実施の形態3]
実施の形態1,2では、基板保持移動装置14を設けてガラス基板13をx方向に移動させたが、この実施の形態3では、蒸発源移動装置41により蒸発装置12をx方向に移動するように構成したもので、図10を参照して説明する。なお、先の実施の形態1,2と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
蒸発源移動装置41は、蒸着室11aの底部に複数のリニアレール42が敷設され、このリニアレール42にリニアベアリングを介して移動台43が移動自在に設置されている。そしてこの移動台43に、第1,第2蒸発部21A,21B、第1,第2誘導管22A,22B、第1,第2拡散容器23A,23B、第1,第2流量制御弁24A,24B、ノズル群25(または35)を有する蒸発装置12が設置されている。真空蒸着容器11の外側には、駆動ロッド44を介して移動台43を押し引き駆動するねじ軸式の駆動部45が設けられている。
【0045】
この駆動部45では、前記駆動ロッド44が、ガイドロッド45aに案内される駆動部材45bに連結され、さらに移動用回転駆動装置(電動モータ)45cにより回転駆動されるねじ軸45dがx方向に配設されている。そしてねじ軸45dに駆動部材45bに設けられた雌ねじ部材45eが螺合され、駆動ロッド44は真空シール用の蛇腹45fにより覆われている。したがって、移動用回転駆動装置45cによりねじ軸45dを回転駆動し雌ねじ部材45eを介して駆動部材45bを移動させ、さらに駆動ロッド44を介して移動台43をx方向に往復移動させることができる。
【0046】
またガラス基板13は基板保持具46により保持されている。
さらに蒸着作業開始前には、真空蒸着室11内の一方の端部(図10左側)で防着板で区画されたレート調整部に蒸発装置12を移動させて膜厚センサ27により蒸発流密度を検出し調整する。
【0047】
上記実施の形態3によれば、実施の形態1,2の基板保持移動装置14に替えて蒸発装置12を移動させる蒸発源移動装置41を設け、基板保持具46によりガラス基板13を固定状態で保持されることにより、実施の形態1,2と同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態1〜3では、第1,第2拡散容器23A,23Bを上下に配置したが、ガラス基板13の移動方向に並べて設置することもできる。
また異種の蒸着材料を2種類としたが、3種類以上とすることもできる。この場合、複数の拡散容器を、上下位置に3段以上に配置したり、またはx方向への並設と上下配置とを組み合わせて設置してもよく、またノズル筒を折り曲げてたり傾斜させることもできる。
【0049】
さらに、蒸発源移動装置41と部材保持移動装置14とを並設し、蒸発装置12とガラス基板13とをそれぞれ相対方向に移動させて蒸着することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る真空蒸着装置の実施の形態1を示す蒸発装置の斜視図である。
【図2】同真空蒸着装置を示す横断面図である。
【図3】同真空蒸着装置を示す概略縦断面図である。
【図4】同蒸発装置のノズル組の配置とガラス基板の関係を示す平面図である。
【図5】同蒸発装置のノズル組の配置とガラス基板の関係を示す正面図である。
【図6】蒸発装置の第1,第2ノズル筒の配置の変形例をそれぞれ示す平面図で、(a)は千鳥配置の変形例、(b)はy方向の配置例を示すものである。
【図7】本発明に係る真空蒸着装置の実施の形態2を示す蒸発装置の斜視図である。
【図8】同真空蒸着装置を示す横断面図である。
【図9】同蒸発装置の拡散容器を示す横断面図である。
【図10】本発明に係る真空蒸着装置の実施の形態3を示し、蒸発装置の縦断面図である。
【図11】ノズル組の変形例を示す縦断面図で、(a)は実施の形態1のノズル組の変形例を示し、(b)は実施の形態2のノズル組の変形例を示す。
【図12】移動する基板に2つの材料を蒸着する場合の従来の蒸着装置の構成図である。
【図13】同従来の蒸着装置に防着板を付加した時の構成図である。
【符号の説明】
【0051】
A 第1蒸着材料
B 第2蒸着材料
11 真空蒸着容器
11a 蒸着室
12 蒸発装置
13 ガラス基板
14 基板保持移動装置
21A 第1蒸発部
21B 第2蒸発部
22A 第1誘導管
22B 第2誘導管
23 放出部
23A 第1拡散容器
23B 第2拡散容器
24A 第1流量調整弁
24B 第2流量調整弁
25 ノズル群
25A,25B ノズル組
25a 第1ノズル筒
25a’ 第1ノズル口
25b 第2ノズル筒
35 ノズル群
35A ノズル組
35a 第1ノズル筒
35b 第2ノズル筒
41 蒸発源移動装置
46 基板保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種の蒸着材料をそれぞれ加熱して気化させる複数の蒸発装置と、真空蒸着容器内で前記蒸発装置から気化された複数の蒸発材料を蒸着させる被蒸着部材と、前記蒸発装置と被蒸着部材の少なくとも一方を直線方向に移動させる移動装置とを具備し、
前記蒸発装置に、異種の蒸着材料をそれぞれ加熱して気化する複数の蒸発部と、前記各蒸発部から導入された蒸発材料をそれぞれ拡散する複数の拡散部と、前記各拡散部にそれぞれ設けられて被蒸着部材に向かって蒸発材料を放出するノズル群とを設け、
前記ノズル群は、異種の蒸着材料をそれぞれ放出する複数のノズルを近接配置したノズル組を有し、前記ノズル組が移動装置による移動方向を横断する方向にライン状に配置された
真空蒸着装置。
【請求項2】
各ノズル組は、異種の蒸着材料をそれぞれ放出するノズルが、移動装置による移動方向の前後位置に配置された
請求項1記載の真空蒸着装置。
【請求項3】
各ノズル組は、異種の蒸着材料をそれぞれ放出するノズルが、移動装置による移動方向を横断する方向の前後位置に配置された
請求項1記載の真空蒸着装置。
【請求項4】
各ノズル組は、隣接するノズル組で異種の蒸着材料をそれぞれ放出するノズルが千鳥位置に配置された
請求項1記載の真空蒸着装置。
【請求項5】
各ノズル組は、異種の蒸発材料を放出するノズルが、同一軸心状に外嵌するように中心側と外周側とに配置された
請求項1記載の真空蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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