説明

真空装置

【要 約】
【課題】均一なプラズマを形成して基板を均一に処理する。
【解決手段】本発明の真空装置1は複数のアンテナ22を有しており、各アンテナ22と高周波電源6までの間には調整コンデンサ30が配置されている。調整コンデンサ30は下部電極31と上部電極33とで絶縁シート32が挟まれて構成されており、下部電極31と上部電極33との重なり面積sを変えることで、各アンテナ22から高周波電源6までのインピーダンスを一致させることができる。各アンテナ22には同じ大きさの高周波電圧が印加されるから、真空槽11内には均一なプラズマが発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空装置の技術分野に係り、特に、複数のアンテナからマイクロ波を放出してプラズマを生成する真空装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は従来技術のエッチング装置101を示している。
このエッチング装置101では真空槽111の内壁面に形成された複数の孔112内にそれぞれアンテナ122が配置されており、各アンテナ122に高周波電圧を印加すると各アンテナ122から真空槽111内に向けてマイクロ波が放出されるように構成されており、真空排気系119により、真空槽111の内部を真空雰囲気にした後、ガス導入系118からエッチングガスを導入してマイクロ波を放出すると、エッチングガスがプラズマ化し、基板107表面のエッチングが行なわれるようになっている。
【0003】
アンテナ122と電源106がそれぞれ接続される接続経路140のインピーダンスは、アンテナ122が異なっても同じ値になるように設計されているが、接続経路140を構成する接続板141〜143の僅かな取り付け状態の相違等から、インピーダンスが完全には等しくならず、そのため各アンテナ122から放出されるマイクロ波の強度に相違が生じ、真空槽111内に形成されるプラズマが不均一になるという問題がある。
本発明のような真空装置は下記特許文献に記載されている。
【特許文献1】特開2000−31121号公報
【特許文献2】特開2004−186532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、各アンテナと高周波電源との間のインピーダンスを等しくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、真空槽と、前記真空槽の内部に配置された複数のアンテナとを有し、前記アンテナはマッチングボックスを介して高周波電源に接続され、前記高周波電源から前記各アンテナに高周波電圧が印加されると、前記各アンテナから前記真空槽の内部にマイクロ波が放出されるように構成された真空装置であって、前記マッチングボックスと前記各アンテナの間には平行平板型の調整コンデンサがそれぞれ挿入され、前記調整コンデンサの電極の重なり面積を調整し、前記調整コンデンサの容量値を変更することで、前記高周波電源と前記アンテナの間のインピーダンスを変更できるように構成された真空装置である。
本発明は、前記調整コンデンサは、下部電極と上部電極と、前記下部電極と前記上部電極に挟まれた絶縁シートとを有し、前記絶縁シートは前記下部電極と前記上部電極に密着された真空装置であって、前記下部電極と前記上部電極は相対移動可能に構成され、重なり合う面積を変更できるように構成された真空装置である。
また、本発明は、前記マッチングボックスと前記各調整コンデンサとが電気的に接続される接続経路は、根本集中部から前記各調整コンデンサまでの間に複数回分岐された真空装置である。
【発明の効果】
【0006】
高周波電源から各アンテナまでのインピーダンスが等しくなり、各アンテナに印加される電圧が同じ大きさになるから、均一なプラズマが形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の一例の真空装置1を示している。
この真空装置1は真空槽11を有しており、真空槽11の天井には複数の小孔12が形成されている。
各小孔12内には、マイクロ波放出装置20がそれぞれ配置されている。各マイクロ波放出装置20は、フランジ21と、フランジ21から立設されたアンテナ22を有している。ここでは、各マイクロ波放出装置20のフランジ部21はそれぞれ同じ形状同じ大きさ同じ材質である。また、各マイクロ波放出装置20のアンテナ22もそれぞれ同じ形状同じ大きさ同じ材質である。
【0008】
フランジ21は小孔12よりも大径であり、アンテナ22が小孔12内に位置し、真空槽11の内部雰囲気側に配置された状態で、フランジ21が真空槽11の大気側に配置され、絶縁板24を介して真空槽11の天井に固定されている。フランジ21と絶縁板24の間と、絶縁板24と真空槽11の天井の間にはそれぞれオーリング26、27が配置されている。
【0009】
他方、真空槽11の底壁には、小孔12よりも大径の取り付け孔13が形成されており、取り付け孔13の内部には、台座35が絶縁リング36を介して真空槽11底壁と密着して配置されており、真空槽11の内部を真空排気したときに、マイクロ波放出装置20が取り付けられた部分や台座35が取り付けられた部分から真空槽11内に大気が侵入しないようにされている。
【0010】
フランジ21の大気側の表面上には、板状の下部電極31が配置されている。
下部電極31上には、シート状のフッ素樹脂から成る絶縁シート32(ここでは厚さ0.1mm)が配置されており、絶縁シート32上には板状の上部電極33(ここでは半径4cmの円形)が配置され、下部電極31と絶縁シート32と上部電極33によって平行平板型の調整コンデンサ30が形成されている。
【0011】
この調整コンデンサ30では、上部電極33と下部電極31は、それぞれ絶縁シート32に密着しており、上部電極33と下部電極31との間の電極間距離は絶縁シート32の厚みと等しくされている。
【0012】
上部電極33と下部電極31は、相対位置を変更して互いに重なり合う面積を変更して固定できるように構成されているが、上部電極33と下部電極31の間には絶縁シート32が位置するようにされており、上部電極33と下部電極31との間の電極間の誘電率は絶縁シート32の誘電率であり、上部電極33と下部電極31の重なり合う面積を変更することで、調整コンデンサ30の容量値を変更できるように構成されている。
【0013】
例えば、上部電極33と絶縁シート32と下部電極31にネジ穴を設けて絶縁した状態でネジ留め固定する場合に、下部電極31又は上部電極33のネジ穴断面をネジの断面よりもおおきくすることで上部電極33と下部電極31とが重なり合う面積を調節し、固定することができる。
【0014】
図2は調整コンデンサ30の拡大図であり、重なり合った部分の一方の電極の面積をs、絶縁シート32の厚みをt、絶縁シート32の誘電率をεとすると、調整コンデンサ30の容量CはC=ε・s/t(ε0を真空の誘電率、εrを絶縁シート32の比誘電率とするとε=ε0・εr)である。
【0015】
上部電極33と下部電極31は同じ形状、同じ面積に形成されている場合、重なり部分の面積sの最大値は、各電極の片面の面積Sと等しく、s=Sのときに容量値Cは最大値になる。図2は上部電極33をずらし、s<Sとした場合を示している。
【0016】
各マイクロ波放出装置20に接続された上部電極33は、接続装置40によってインピーダンス調整用のマッチングボックス5の出力端子に接続されている。マッチングボックス5の入力端子は配線によって、高周波電源6に接続されており、高周波電源6を起動して高周波電圧を出力すると、各小孔12内に配置されたマイクロ波放出装置20には、マッチングボックス5と接続装置40と調整コンデンサ30を介して電圧が印加される。
【0017】
接続装置40を説明すると、接続装置40は、複数種類の接続板41、45、51によって構成されており、調整コンデンサ30同士を接続する接続板41を一種類と、接続板41同士を接続する接続板45、51を一乃至二種類以上有している。各接続板41、45、51は、一つの集中部を中心として複数本の腕部が接続されて構成されている。
【0018】
調整コンデンサ30同士を接続する接続板41をコンデンサ接続板41とすると、図3(a)に示すように、コンデンサ接続板41は、ここでは一つの集中部42からは三本の腕部43a〜43cが放射方向に伸ばされて構成されている。
【0019】
各コンデンサ接続板41の腕部43a〜43cは、長さと幅は等しく、また、腕部43a〜43c間の角度も等しくされ、その結果、複数のコンデンサ接続板41の集中部42と腕部43a〜43c先端との間のインピーダンスは全て略同じ値になる。
【0020】
コンデンサ接続板41の腕部43a〜43cは板状であり、一枚のコンデンサ接続板41の三本の腕部43a〜43cの先端は、それぞれ異なるマイクロ波放出装置20上の上部電極33上に乗せられ、腕部43a〜43cと調整コンデンサ30は電気的に接続されている。従って、三個のマイクロ波放出装置20は、調整コンデンサ30と腕部43a〜43cを介して、一枚のコンデンサ接続板41の集中部42に電気的に接続されている。
【0021】
接続板同士(コンデンサ接続板41同士や他の接続板同士)を接続する接続板45、51は、この接続装置40では二種類有しており、コンデンサ接続板41同士を接続する接続板を接続板間接続板45(図3(b))、集中部52がマッチングボックス5に接続される接続板を根本接続板51(図3(c))とすると、コンデンサ接続板41の集中部42は接続板間接続板45の腕部47a、47b先端に接続され、接続板間接続板45の集中部46は、一枚の根本接続板51の腕部53a、53b先端に接続されており、根本接続板51の集中部52から各調整コンデンサ30の上部電極33までの間のインピーダンスが可及的に等しくなるようにされている。
【0022】
図4は上部電極33の配置図であり、この例では一台の高周波電源6で12個のアンテナ22に高周波電圧を印加する場合であり、コンデンサ接続板41によって3個の調整コンデンサ30がそれぞれ接続されている(図5)。
【0023】
そして、接続板間接続板45によって二枚のコンデンサ接続板41が接続され(図6)、根本接続板51によって二枚の接続板間接続板45が接続されており(図7)、根本接続板51の集中部52が配線55によってマッチングボックス5を介して高周波電源6に接続されており、根本接続板51の集中部52から各調整コンデンサ30までの間は、コンデンサ接続板41と接続板間接続板45と根本接続板51とによって、複数回分岐した枝分かれ状の接続経路が形成されている。
【0024】
ここでは、各調整コンデンサ30が同じ高周波電源6と同じマッチングボックス5に接続されているから、各調整コンデンサ30の上部電極33と、高周波電源6との接続経路のうち、マッチングボックス5を含む部分(根本接続板51の集中部52から高周波電源6までの間)のインピーダンスは同じである。
【0025】
接続板41、45、51同士の取り付け方や接続板41、45、51の向きなどによって、各調整コンデンサ30とマッチングボックス5の出力端子との間のインピーダンスの値は異なってしまうが、その差は僅かであり、調整コンデンサ30の容量値を変更することで高周波電源6からアンテナ22までのインピーダンスを一致させることができる。
【0026】
ここでは、各マイクロ波放出装置20のフランジ21と根本接続板51の集中部52との間のインピーダンスを測定し、予め設定された値になるように、各調整コンデンサ30の上部電極33と下部電極31との重なり面積sを調整する。
【0027】
以上のような作業を行ない、アンテナ22と高周波電源6との間のインピーダンスをそれぞれ同じ大きさにした後、真空槽11に接続された真空排気系19を動作させ、真空槽11の内部を所定圧力まで真空排気した後、真空雰囲気を維持しながら基板7を真空槽11の内部に搬入し、ガス導入系18から真空槽11内に処理ガスを導入し、高周波電源6を動作させ、高周波電圧を出力すると各アンテナ22に同じ大きさの高周波電圧が印加され、同じ電力でマイクロ波が発射される。
【0028】
これにより、真空槽11内には均一なプラズマが形成され、真空槽11内に配置された基板7表面のエッチング等の処理が行なわれる。尚、基板7表面の処理を行う際には、台座35に電源8から高周波電圧を印加してもよい。
【0029】
上記は、三種類の接続板(コンデンサ接続板41と接続板間接続板45と根本接続板51)によって複数のアンテナ22をマッチングボックス5の出力端子に接続される一カ所の根本接続板51の集中部52に接続したが、マッチングボックス5の出力端子に接続される根本の集中部から接続板が複数回分岐し、枝分かれされた接続板によって、根本集中部と各調整コンデンサ30が接続されていればよい。
【0030】
例えば、図3(d)〜(f)に示すように、複数の板63a〜63c、67a、67b、73a、73bを組み合わせて同図(a)〜(c)と同じ形状の接続板61、65、71を構成させることで、マッチングボックス5に接続される一カ所の根本の集中部から枝分かれした接続板61、65、71を構成させて各調整コンデンサ30と高周波電源6とを接続してもよい。
また、上記絶縁シート32はシート状のフッ素樹脂であったが、他の絶縁性の樹脂のシートであってもよい。
【0031】
上記真空装置1はエッチング装置であったが、本発明の真空装置は成膜装置や表面改質装置等のマイクロ波によってプラズマを生成する真空装置に広く用いることができる。
また、絶縁シート32を直接フランジ21に密接させ、フランジ21を下部電極として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の真空装置の一例を説明する断面図
【図2】調整コンデンサの拡大断面図
【図3】(a)〜(f):接続板を説明する平面図
【図4】上部電極の配置図
【図5】コンデンサ接続板をコンデンサに接続した状態の配置図
【図6】接続板間接続板でコンデンサ接続板を接続した状態の配置図
【図7】根元接続板で接続板間接続板を接続した状態の配置図
【図8】従来技術のエッチング装置の断面図
【符号の説明】
【0033】
1……真空装置 5……マッチングボックス 6……高周波電源 11……真空槽 22……アンテナ 30……調整コンデンサ 31……下部電極 32……絶縁シート 33……上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽と、
前記真空槽の内部に配置された複数のアンテナとを有し、
前記アンテナはマッチングボックスを介して高周波電源に接続され、前記高周波電源から前記各アンテナに高周波電圧が印加されると、前記各アンテナから前記真空槽の内部にマイクロ波が放出されるように構成された真空装置であって、
前記マッチングボックスと前記各アンテナの間には平行平板型の調整コンデンサがそれぞれ挿入され、
前記調整コンデンサの電極の重なり面積を調整し、前記調整コンデンサの容量値を変更することで、前記高周波電源と前記アンテナの間のインピーダンスを変更できるように構成された真空装置。
【請求項2】
前記調整コンデンサは、下部電極と上部電極と、前記下部電極と前記上部電極に挟まれた絶縁シートとを有し、前記絶縁シートは前記下部電極と前記上部電極に密着された請求項1記載の真空装置であって、
前記下部電極と前記上部電極は相対移動可能に構成され、重なり合う面積を変更できるように構成された真空装置。
【請求項3】
前記マッチングボックスと前記各調整コンデンサとが電気的に接続される接続経路は、根本集中部から前記各調整コンデンサまでの間に複数回分岐された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の真空装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−177049(P2009−177049A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15977(P2008−15977)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】