説明

真菌感染及び/又は原生生物感染の治療

本発明は、アポリポタンパク質の硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来するペプチドの反復を含むポリペプチドを、真菌感染及び/又は原生生物感染を治療又は予防するために使用することに関する。本発明はさらに、そのようなペプチドにより表面又は物体の汚染を処置又は防止するためにそのようなペプチドを使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物活性を有するポリペプチド、その誘導体又は類似体、及び前記をコードする核酸に関する。より具体的には、本発明は、抗真菌活性及び/又は抗原生生物活性を有するポリペプチド、その誘導体又は類似体に関する。本発明はさらに、そのようなポリペプチド、誘導体、類似体又は核酸の医薬としての使用、及び治療方法における使用もまた提供する。本発明はさらに前記ポリペプチドで被覆した物体及び表面に及ぶ。
【背景技術】
【0002】
抗微生物ペプチドは先天的な免疫系の重要な構成要素であり、一般的には20−40アミノ酸を含み、正味の正電荷を有し、さらにこれまでのところ大半が非哺乳動物種で同定されている。これらの両要件により、ヒト又は哺乳動物における治療薬としての前記の有用性が制限される。これは、そのような大型ペプチドの産業的製造の困難さのため、及び非ヒト起源のペプチドの副作用のおそれによるものである。2006年までにトリエステ(Trieste)国際抗菌ペプチドデータベース(http://www.bbcm.units.it/~tossi/amsdb.html)に挙げられたほぼ890の配列のうち、わずかに35がヒト起源であり、これらのうち3つだけが長さが20未満のアミノ酸である。短い合成抗微生物ペプチドもいくつか開発された。しかしながら、それらが非ヒト起源であったために抗原性又は毒性作用のおそれが付随するという欠点を有する。
そのようなペプチドは、6つのグループに性状が分類され(J.P. Bradshaw, Biodrugs, 2003, 17:235-240)、以下の3つのクラスがもっとも研究されている(H.G. Bowman, J. Int. Med., 2003, 254:197-215):
(i)システインを欠き、しばしば溶液中でα-ヘリックス両親媒性構造をもつ直鎖状ペプチド、例えばヒトLL-37(配列番号:1):-LLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFLRNLVPRTES;
(ii)平面的なダイマーβ-シートをペプチドに付与する3つのジスルフィド結合を有するペプチド、例えばヒトα-ディフェンシン:-HNP-1(配列番号:2)
【0003】

【0004】
(iii)ある種のアミノ酸(例えばプロリン、アルギニン、トリプトファン又はヒスチジン)に異常な偏りをもつペプチド、例えばブタPR-39(配列番号:3):-RRRPRPPYLPRPRPPPFFPP RLPPRIPPGF PPRFPPRFP;又はウシのインドリシジン(配列番号:4):-ILPWKWPWWP WRR。
真菌の増殖を阻害する能力をもついくつかのペプチドが発見された。そのようなペプチドの例にはセクロピン、ブフォリン、プリューオリジン、ピローコリシン、メタルニコウイン、シェペリン、AcAMP1及びAc-AMP2、ヒスタチン、タキプレシンII、アンドロクトニン、プロテグリンI、αディフェンシン及びβディフェンシン、ペナエイジン、タキシチン、ヘリオミシン、ディフェンシンタンパク質WT1、alfAFPディフェンシン、So-d1-7、DmAMP1が含まれる。さらにまた、いくつかのペプチドでは、さらに原生動物を阻害することが見出された(例えばメガイニン及びデルマセプチン)。他のものは、真菌及び原生動物の両方を阻害することが示された(例えばガンビシン)。しかしながら、現時点では、そのような物質がそれらの抗真菌及び/又は抗原生動物活性を付与するメカニズムは十分には理解されていない。
学術文献に記載されている多くの抗細菌ペプチドが強い陽イオン的特徴を有し、しばしばアルギニン及びリジン残基から成る。しかしながら、アルギニン及びリジンを含むペプチドが全て抗微生物活性を有するというわけではない。例えばAzumaら(Peptides, 2000, 21:327-330)は、アポリポタンパク質Eのペプチド誘導体はゲンタマイシンの抗細菌作用に比して強い抗細菌作用を有することを報告した。しかしながら、Azumaらのペプチド、アポE134-151(長さが18アミノ酸)は、142及び147位の両位置にアルギニンを含んでいるにもかかわらず、全く活性をもたなかった。同様に、Azumaは、ペプチドアポE134-155(長さが22アミノ酸)は非常に低い抗細菌活性を有し、ペプチドアポE134-159(長さが26アミノ酸)は抗細菌活性が極めて低下することを示した。最終的には、Azumaらは、アポE由来ペプチドの抗細菌活性を精査しただけで、他の抗微生物作用、例えば真菌又は原生生物に対する作用は全く調べなかった。
【0005】
Azumaらが実施した研究に続いて、本発明の発明者は、アポリポタンパク質B及びE系のある種のポリペプチドのウイルスに対する作用を調べた。前記発明者は、ある種のポリペプチドは確かに抗ウイルス活性を有することを明らかにした。発明者の研究の結果はPCT/GB2004/005438及びPCT/GB2004/005360に記載されている。これらの抗ウイルスポリペプチドは、ペプチド:アポE141-149(LRKLRKRLL-配列番号:5)及びアポB3359-3367(RLTRKRGLK-配列番号:6)の直列反復及びそれらの変種の他に、配列番号:5又は配列番号:6の近縁の改変物の反復を含む。これらのペプチドは、アポリポタンパク質E及びBのLDLレセプター/HSPGレセプター結合領域に由来するか、又はそれらを含んでいる。発明者はいずれの仮説にも拘束されないが、これらの抗ウイルスポリペプチドはおそらく多数のメカニズムによってそれらの抗ウイルス作用を示し、ウイルスの付着に影響を与えるメカニズムが特に重要と考えている。発明者は、これらアポリポタンパク質のLDLレセプター/HSPGレセプター結合領域に由来するペプチドのダイマー化(直列反復又はその変種として)が抗ウイルス作用に重要であると提唱している。
ウイルス及び細菌のそれぞれに対するその異なる作用態様のために、抗ウイルス剤は抗細菌剤とは無関係であるという事実にもかかわらず、発明者はまた、上記で考察した抗ウイルスペプチド系のポリペプチドが何らかの抗細菌特性を有するか否かを調べることにした。この研究の結果はPCT/GB2005/000769に記載されている。驚いたことに、発明者は、抗ウイルス活性に加えて、これらポリペプチドはまた抗細菌活性を示すことを見出した。
【発明の開示】
【0006】
本発明の発明者は、アポリポタンパク質B及びE系のこれらポリペプチドに関する研究を続けた。したがって、ウイルス、細菌及び真菌のそれぞれに対するその異なる作用態様のために抗ウイルス剤及び抗細菌剤は抗真菌剤及び他の微生物に対して活性を示す物質とは無関係であるという事実にもかかわらず、本発明の発明者はまた上記考察の抗ウイルスペプチド及び/又は抗細菌ペプチド系のポリペプチドが何らかの抗真菌特性を有するか否か、又は他のいずれかの微生物に対して何らかの活性を示すか否かを精査することにした。
特に、発明者は、これらアポリポタンパク質のLDLレセプター/HSPGレセプター結合領域に由来するペプチドの反復(例えば直列反復)構築物が抗微生物効果、例えば真菌又は他の微生物(例えば原生動物)に対する効果を有するかもしれないと考えた。特に発明者は、予想に反してアポE141-149領域の反復が、抗真菌活性及び/又は抗原生生物活性を示すかもしれないと考えた。驚いたことに、下記に規定するポリペプチドは、以前に示された抗ウイルス活性及び抗細菌活性に加えて、確かに抗真菌活性及び他の微生物に対する活性も示した。
本発明の第一の特徴にしたがえば、真菌感染及び/又は原生生物感染の治療用医薬の製造を目的とする、アポリポタンパク質の硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来するペプチドの反復を含む、ポリペプチド、又はその誘導体若しくは類似体の使用が提供される。
“その誘導体又は類似体”という用語は、ポリペプチド内のアミノ酸残基が、類似の側鎖又はペプチド骨格特性を持つ残基(天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸又はアミノ酸模倣体にかかわりなく)によって置換されているポリペプチドを意味する。さらにまた、そのようなペプチドの一方の末端又は両端は、N及びC末端保護基、例えばアセチル又はアミド基と類似の特性を有する基によって保護されてあってもよい。いったん最終的なポリペプチドが形成されたなら、又は反復ペプチド(例えば9mer)の開発中でも、アミノ酸配列が変更され、短縮され又は改変されえることは理解されよう。
好ましくは、本発明のポリペプチドは、アポリポタンパク質のHSPGレセプター結合領域に由来するペプチドの少なくとも2つの反復を含む。前記ポリペプチドは同じペプチドの反復を含むことができる(すなわちホモダイマー又は同じペプチドのポリマー)ことは理解されよう。また別には、前記ポリペプチドは2つ又は3つ以上の関連するペプチドの反復を含むことができる(すなわちペプチドモノマーの2つ又は3つ以上のペプチドタイプを含むヘテロダイマー又はポリマー)。前記ポリペプチドが異なるペプチドを含む場合、そのようなペプチドは、本発明の第一の特徴で定義したアポリポタンパク質のHSPGレセプター結合領域であるか、又はそれらに由来するという特徴を共有するであろうということは理解されよう。
本発明のポリペプチドは、そのようなペプチドが当業者には直列反復として知られる態様でN-末端がC-末端に連結されたダイマー又はポリマーを含むことが好ましい。したがって、本明細書で“直列反復”と称されるときは、文脈が他の態様を指示しないかぎり、アポリポタンパク質のHSPGレセプター結合領域であるか、又は前記に由来するペプチドの反復を意味する。そのような直列反復は、上記で考察されたように、ホモダイマー(すなわち単一ペプチドのポリマー)でも、又はヘテロダイマー(すなわち関連ペプチドのポリマー)でもよい。
【0007】
本明細書で用いられる“〜に由来するペプチド”という用語は、改変されたアポリポタンパク質のHSPGレセプター結合領域由来のペプチドを指すか又は前記を含むことが意図される。適切な改変には、アミノ酸の置換、付加又は欠失が含まれえる。誘導体ペプチド又は改変ペプチドは、本発明の第一の特徴にしたがって直列反復として編成される。驚くべきことに、さらに完全に予想に反して、本発明の第一の特徴のポリペプチド、その誘導体又は類似体は抗真菌活性及び/又は抗原生成物活性を提示することが示された。
“その短縮型”という用語が本明細書で用いられるときは、本発明のポリペプチド又は構成ペプチドのサイズが、1つ又は2つ以上のアミノ酸の除去又は欠失により減少していることを意味する。アミノ酸の減少は、前記ペプチドのC又はN末端から残基が除去される場合でも、又は構成ペプチド内部から1つ又は2つ以上のアミノ酸が欠失する場合でもよい。
発明者らは、上記に定義したポリペプチドは抗ウイルス活性及び抗細菌活性を有することを以前に見出した。しかしながら、発明者らが驚いたことには、第一の特徴のポリペプチドを真菌及び原生生物について試験したとき、実施例で示したように、それらはまた抗真菌有効性及び原生生物に対する活性もまた示した。したがって、発明者らはこれらポリペプチドについて新規な医学的適用を示したと考えている。
本発明の第一の特徴の医薬は人間の治療で使用しても、又は獣医的使用のために用いてもよい。前記医薬は、好ましくは人間及び他の哺乳動物の真菌感染を治療するために用いられる。
真菌感染及び/又は原生生物感染の予防又は治療に用いられるポリペプチドは、治療される対象者と同じ種に由来する。前記対象者がヒトであるときは、前記ポリペプチドはヒトのアポリポタンパク質に由来する反復をベースにするのが好ましい。
【0008】
“真菌感染”という用語は、真菌による感染又は真菌によって引き起こされる感染を意味する。治療することができる感染には以下が含まれる:ブラストミセス症、コクシジオイデス真菌症、クリプトコッカス症、ヒストプラスマ症、スポロトリクス症、クロモブラスト真菌症、ロボ真菌症、皮膚糸状菌症、爪真菌症、砂毛症、菌腫、フザリウム症、粃糠疹、変色、白癬性毛瘡、頭部白癬、体部白癬、股部白癬、黄癬、黒色癬、足白癬、フェオフィホ真菌症、リノスポリジウム症、アスペルギルス症、真菌性角膜炎、カンジダ症。
“原生生物感染”という用語は、原生生物による感染又は原生生物によって引き起こされる感染を意味する。原生生物による感染によって引き起こされる疾患には、ジアルジア鞭毛虫症及び他の胃腸疾患(アメーバー赤痢及び下痢を含む)、皮膚及び内臓リーシュマニア症、シャーガス病、コクシジウム症、白点病(ick)、トリコモナス症、アフリカ眠り病、赤潮感染症(red tides)、トキソプラスマ症、マラリア、及び微生物性角膜炎(アカントアメーバー角膜炎を含む)が含まれる。
一般的に、抗ウイルス剤、例えばアシクロビル、リバビリン又はエンフビルチド(T-20)は、それらの完全に異なる作用態様のために真菌感染に対して有効であることは稀である。同様に、抗真菌剤(例えばブテナフィン、ブトコナゾール又はナフチフィン)は、ウイルス感染に対して有用であることは滅多にない。したがって、本発明者には、本発明の第一の特徴のポリペプチドが、抗ウイルス及び抗細菌有効性、並びに真菌及び/又は原生生物感染に対してもまた活性を示したことは非常に大きな驚きであった。本発明のペプチドが、生物界にまたがって活性を有すること、すなわちモネラ界(細菌及びウイルス)及び真菌界及び原生生物界で活性を有することは完全に予想外であった。本発明者は、本発明のペプチドがそのような融通性及びそのような広域活性を有することに驚愕した。なぜならばそのようなことは滅多に生じないからである。
【0009】
本発明者はいかなる仮説にも拘束されないが、本発明のポリペプチドによる抗真菌/抗原生生物メカニズムは、膜又は真菌若しくは原生生物内の標的部位を介した真菌又は原生生物への直接的損傷作用が関与する可能性があると示唆している。さらにまた、細胞内寄生体(例えばプラスモディウム)の付着又は宿主細胞内への侵入の阻止もまた可能である。驚くほどわずかな数のペプチド配列のみ(すなわち本発明の第一の特長によって定義される配列)が真菌及び/又は原生生物に対して有効であることが判明したのはこれらの理由によるものかもしれない。
本発明のポリペプチドの大半が、驚くべきことに抗真菌剤及び/又は抗原生生物剤の両方としての活性を有していた。本発明のいくつかの実施態様で、前記ペプチドが上記の抗微生物活性の組合せを示すことができるということはありえることである。例えば、前記ペプチドは抗真菌活性又は抗原生生物活性のどちらか(並びに抗細菌活性及び抗ウイルス活性の種々の組合せ)を示すことができる。第一の特徴の好ましいポリペプチドは、抗真菌活性及び抗原生生物活性を、抗細菌活性及び抗ウイルス活性に加えて提示する。本発明のポリペプチドによって示されるこの四重活性は、真菌感染、原生生物感染、並びにウイルス感染及び細菌感染を好ましくは同時に予防又は治療するためにそれらを用いることができるので非常に有益であることは明白であろう。
本発明の第一の特徴のポリペプチドは、ヒトのアポリポタンパク質B又はヒトのアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域由来のペプチドの反復を含むことができる。本発明の第一の特徴のポリペプチドは、Law & Scott(J. Lipid Res., 1990, 31:1109-20)が定義した、アポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来するペプチド、又は、アポリポタンパク質E LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来するペプチド(J. Lipid Res., 1995, 36:1905-1918)の直列反復(上記に定義したとおり)を含むのが好ましい。アポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターBはアポリポタンパク質BのHSPGレセプター結合領域内に位置し、アポリポタンパク質Eのアポリポタンパク質E LDLレセプター結合ドメインクラスターBはアポリポタンパク質EのHSPG結合ドメイン内に位置するであろう。
【0010】
本発明者は網羅的な実験を実施して、アポリポタンパク質由来ペプチド及びその誘導体の抗真菌活性及び抗原生生物活性を判定した。アポE及びアポB由来のペプチド及び誘導体が特に注目された。本発明者は、アポE141-149モノマー配列(表1及び配列番号:5参照)、アポB3359-3367(表1及び配列番号:6参照)、及び改変アポB3359-3367(表1及び配列番号:7参照)は検出可能な抗真菌活性を持たないことを見出した。しかしながら、驚いたことには、本発明者は、そのようなペプチドの反復(すなわち本発明の第一の特徴のポリペプチド)は、抗真菌活性及び/又は抗原生生物活性を確かに示すことを見出した。実施例1及び4は本発明のポリペプチドの抗真菌有効性を示し、実施例2及び5は本発明のポリペプチドの抗原生生物活性を示している。
発明者はいずれの仮説にも拘束されないが、アポE141-149ペプチド(配列番号:5に基づく)及びアポB3359-3367ペプチド(配列番号:6に基づく)及び改変アポB3359-3367(配列番号:7に基づく)中の陽イオン性アミノ酸残基は、直列反復の形態にあるときは、抗真菌活性及び抗原生生物活性を生じさせる。本発明者はまた、これらペプチドのある種の誘導体(前記ペプチド配列の改変型および短縮型を含む)もまた抗真菌活性及び/又は抗原生生物活性を有することを確認した。
発明者は、抗真菌活性及び抗原生生物活性をもつポリペプチド、特にアポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域由来のペプチドの反復をベースにしたポリペプチドについていくつかの詳細な分析を実施した。発明者は、アポE141-149(すなわち配列番号:5の9-mer)のアミノ酸について、アポB3359-3367(すなわち配列番号:6の9-mer)のアミノ酸及び改変アポB3359-3367(すなわち配列番号:7の9-mer)のアミノ酸との配列アラインメントを実施した。前記配列アラインメントは表1に示されている。これら3種の9-mer又はその誘導体は、本発明のポリペプチドで反復されて少なくとも18-merを形成し、前記は場合によって短縮されていてもよいことは理解されよう。
【0011】
表1:抗真菌/抗原生生物特性を示す有効なペプチド配列の分析

下線が付与された残基は、アポB3359-3367及びアポE141-149で同じ残基であることを示している。
【0012】
このアラインメントのデータから、発明者は、アポリポタンパク質B(アポB3359-3367(配列番号:6))又は改変アポリポタンパク質B(アポB3359-3367(配列番号:7))又はアポリポタンパク質E(アポE141-149(配列番号:5))の硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来するペプチドの直列反復、又はその短縮型を含む抗真菌ポリペプチドの各々で繰り返される(保存された)アミノ酸モチーフが存在することに気付いた。このモチーフはトリペプチド、アルギニン-リジン-アルギニン(RKR)に一致し、配列番号:5及び配列番号:7及び配列番号:6のアミノ酸4、5、6位に見出される。発明者は、抗真菌活性及び抗原生生物活性を示す本発明のポリペプチドは全てこれらRKRモチーフを含むことに気付いた。
したがって、本発明のポリペプチドは少なくとも2つのRKRモチーフを含むことが特に好ましい(すなわち前記ポリペプチドはRKRモチーフを含むペプチドの直列反復を含む)。
本発明のポリペプチドは少なくとも2つ又は3つ以上のRKRモチーフ(すなわち各反復に付き1つのRKRモチーフ)を含むことは理解されよう。前記ポリペプチドが、トリマー(3x)反復、テトラマー(4x)反復、又はさらに大きな数の反復を含む状況では、前記ポリペプチドは好ましくは、それぞれ少なくとも3つ又は少なくとも4つのRKRモチーフを含む。
好ましいペプチドは2つのRKRモチーフを含み、18アミノ酸又はそれより少ないアミノ酸から成る。
【0013】
本発明のある実施態様では、第一の特徴のポリペプチドは、RKRモチーフを含むペプチドのダイマー反復を含むことができ、好ましくは下記式Iを有する:
{abcRKRxyz}+{a'b'c'RKRx'y'z'}
式中、a、b、c、a'、b'、c'、x、y、z、x'、y'、z'はアミノ酸残基であり、さらに、前記ポリペプチドは、配列番号:5、配列番号:6又は配列番号:7又はその誘導体の反復であるペプチドabcRKRxyz及びペプチドa'b'c'RKRx'y'z'を含む。そのような誘導体は、配列番号:5、配列番号:6、又は配列番号:7のペプチドにおいてRKRモチーフ以外の少なくとも1つのアミノ酸残基がアルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)に置換されていて良いペプチド又はその誘導体を含み得る。前記ペプチドはまたヒスチジン(H)置換を含むことができる。
アミノ酸置換はアルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、若しくはトリプトファン(W)、又はその誘導体によることが好ましい。
【0014】
適切には1つ又は2つ以上、より適切には2つ又は3つ以上、さらに適切には3つ又は4つ以上のアミノ酸残基が、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)、又はその誘導体によって置換されえる。本発明のある実施態様では、本発明の第一の特徴のポリペプチドの4つ又は5つ以上、より好ましくは5つ又は6つ以上、さらに好ましくは6つ又は7つ以上のアミノ酸残基が、これらアミノ酸又はその誘導体によって置換されえることが好ましい。好ましくは、置換又は代用される残基は、式Iによって定義されるペプチドの第1、第2、第3、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第16、第17又は第18番目の残基である。
本発明のポリペプチドは18アミノ酸(又はその誘導体)を含んでよく、それによって上記で述べた置換を含む又は含まない、式Iによって定義される配列と一致する。この事例では、アミノ酸の1位はaに対応し;2位はbに対応し;3位はcに対応し;4位は(RKRモチーフの)アミノ酸Rに対応し;以下もこのように続く。
しかしながら、発明者は、驚くべきことに、式Iを基にした短縮ペプチドもまた抗真菌剤及び/又は抗原生生物剤として有効性を有することを見出した。したがって、好ましいペプチド又はその誘導体は18未満のアミノ酸を有することができる。例えば、本発明の第一の特徴のいくつかのペプチドは、長さが17、16、15、14、13、12、11、10又はそれ未満のアミノ酸でもよい。欠失は好ましくは式Iによって定義されるペプチドの1、2、8、9、10、11、17及び/又は18位で生じる。
【0015】
本発明者はまた驚くべきことに、式Iを基にしたポリペプチドであるが付加されたアミノ酸残基を有するポリペプチドもまた抗真菌剤/抗原生生物剤として有効性を有することを見出した。したがって、好ましいポリペプチド又はその誘導体は18よりも多いアミノ酸を有することができる。例えば本発明の第一の特徴にしたがえば、いくつかのポリペプチドは、長さが19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又はそれより多いアミノ酸でありえる。付加は、N-若しくはC-末端で、又はポリペプチドのコア内で実施することができる。付加は、式Iで定義された残基“a”の前(すなわちポリペプチドのN-末端)、又は“a’”の前(すなわちポリペプチドのコア内)のどちらかで実施することができる。付加は、式Iで定義された残基“z”の後(すなわちポリペプチドのコア内)、又は“z’”の後(すなわちポリペプチドのC-末端)のどちらかで実施することができる。
しかしながら、付加は好ましくは式Iによって定義されるペプチドの0、1、2、8、9、10、11、17及び/又は18位で生じる。もっとも好ましくは、付加は前記ペプチドの0位の前で実施される。すなわち、アミノ酸は、式Iによって定義された残基“a”の第一のアミノ酸の前のN-末端に付加される。
【0016】
式Iのポリペプチドは好ましくは以下のアミノ酸を含む:
a及びa'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
b及びb'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
c及びc'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、システイン(C)、スレオニン(T)から選択されるか、又は欠失されてあり;
x及びx'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、システイン(C)、グリシン(G)から選択されるか、又は欠失されてあり;
y及びy'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、システイン(C)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてあり;
z及びz'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、システイン(C)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてある。
式Iのポリペプチドは少なくとも1つの付加されたアミノ酸を含むことができる。前記付加されるアミノ酸は、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択することができる。好ましくは、付加アミノ酸は、式Iのペプチドの“a”位のアミノ酸の前、すなわちN-末端に付加される。
【0017】
したがって、本発明のポリペプチドは、{abcRKRxyz}及び{a'b'c'RKRx'y'z'}の18mer(式中abc、a'b'c'、xyz、及びx'y'z'は上記のように定義される)又はその短縮型を含むことができることは理解されよう。例えば、aはa’と異なっていてもよく、さらにbはb’と異なっていてもよく、さらにcはc’と異なっていてもよく、以下同様であることは理解されよう。
第一の特徴にしたがえば前記ポリペプチドは好ましくは下記式IIのホモダイマーであってもよい:
{abcRKRxyz}+{abcRKRxyz}
式中、a、b、c、x、y、及びzは式Iについて定義したとおりである。
式Iのポリペプチドの場合のように、式IIのポリペプチドは、少なくとも1つの付加されたアミノ酸を含むことができる。前記付加されるアミノ酸は、それぞれ独立にアルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択することができる。好ましくは、付加アミノ酸は、式IIのペプチドの“a”位のアミノ酸の前、すなわちN-末端に付加される。
したがって、本発明のポリペプチドは、{abcRKRxyz}及び{abcRKRxyz}の18mer(式中abc及びxyzは上記のように定義される)又はその短縮型を含むことは理解されよう。
【0018】
式IIによって定義されるポリペプチドは好ましくは以下のアミノ酸を含む:
aは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
bは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
cは、それぞれ独立に、フェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
xは、それぞれ独立に、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
yは、それぞれ独立に、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
zは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてある。
これらの好ましいポリペプチドは、少なくとも1つの付加されたアミノ酸を含むことができる。前記付加されるアミノ酸は、フェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)又はロイシン(L)でありえる。好ましくは、付加アミノ酸は、式IIのポリペプチドの“a”位のアミノ酸の前、すなわちN-末端に付加される。
【0019】
本発明者らはまた、アポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域由来ペプチドの単なる直列ダイマー(2x)反復より大きなもの又はその短縮型を含むポリペプチドを本発明にしたがって利用することが可能であることも理解していた。例えば、アポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域由来ペプチドのトリマー(3x)反復、又はテトラマー(4x)反復、又は前記よりも大きい数の反復を含むポリペプチドを有用な抗真菌剤及び/又は抗原生生物剤として用いることができる。
したがって、好ましくは、前記ポリペプチドは下記式IIIを有することができる:
{abcRKRxyz}n
式中、a、b、c、x、y及びzは、式I又はIIに関して上記で定義したとおりであり、nは2、3、4又は5に等しいか、又はそれより大きい。
他の好ましいポリペプチドは、式Iに定義した18merペプチドの反復(又はその短縮型)を含むことができる(例えば、式Iのペプチドを含む9merのヘテロダイマーの反復)。
【0020】
第一の特徴のポリペプチドは、アポE141-149(配列番号:5)の反復又はその誘導体及び短縮型を含みえるのがもっとも好ましい。そのようなペプチドは本発明の重要な実施態様を表す。したがって、第二の特徴では、ペプチドアポE141-149(配列番号:5)又はその短縮型の反復、又はペプチドアポE141-149(配列番号:1)の変種(前記変種では、少なくとも1つのロイシ(L)残基が、トリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)、システイン(C)又はフェニルアラニン(F)によって置換される)の反復を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体の、真菌及び/又は原生生物感染又は汚染の治療用医薬の製造のための使用が提供される。
“ペプチドアポE141-149の反復”とは、ペプチド配列、LRKLRKRLL(配列番号:5)(すなわち9mer)の反復を含むポリペプチドを指す。前記ポリペプチドは好ましくは、アミノ酸配列、LRKLRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:8)(すなわち18mer、前記は配列番号:5の直列反復ダイマーである)を含む。配列番号:8はまた本明細書ではGIN1又はGIN1pと称される(pは、(例えばアセチル基による)N-末端の保護及び(例えばアミド基による)C-末端の保護を示す)。GIN1pはまた本明細書ではMU10とも称される。
“その短縮型”とは、反復(例えば18-merの配列番号:8)がアミノ酸の除去によりサイズが縮小されていることを意味する。アミノ酸の減少は、C-及び/又はN-末端から残基が除去されることによって減少しても、又はポリペプチドのコア内(例えば配列番号:8のアミノ酸2−17)から1つ又は2つ以上のアミノ酸が欠失することによって減少してもよい。
【0021】
本発明者は、アポE141-149直列反復中でトリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)、システイン(C)又はフェニルアラニン(F)でロイシンを置き換えることができること、及びそのようなポリペプチドは驚くべき抗真菌活性及び/又は抗原生生物活性を有することを明らかにした。
本発明の第二の特徴のポリペプチドは、アポE141-149又はその短縮型のダイマー反復を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体を含み、配列番号:8のダイマーの少なくとも1つのロイシン残基が、トリプトファン(W)又はフェニルアラニン(F)残基によって置換されていることを特徴とすることがより好ましい。
配列番号:8のダイマーの少なくとも1つのロイシン残基が、トリプトファン(W)残基によって置換されているのがもっとも好ましい。
下記でさらに詳細に考察されるように、配列番号:8は、複数の別個の置換及び欠失を用いて操作して抗真菌活性及び/又は抗原生生物活性を有するポリペプチドを生成することができる。本発明の第二の特徴のポリペプチドは、トリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)、システイン(C)又はフェニルアラニン(F)置換からそれぞれ独立に選択される少なくとも2つの置換を有することが好ましく、より好ましくは3つ又は4つ以上の置換を有する。これら複数の置換は、トリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)によることが好ましく、さらに、トリプトファン(W)による複数の置換が存在することがもっとも好ましい。
K、R、Y、F、C又はWによる1つ又は2つ以上のLの置換に加えて、少なくとも1つの更なるアミノ酸(好ましくは少なくとももう1つのロイシン残基)がアルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)で置換されることが好ましい。そのような更なる置換はF又はWが特に好ましい。
【0022】
本発明者はまた、アポE141-149又はその短縮型若しくは変種の単なるダイマーより大きい直列反復を含むポリペプチドを本発明にしたがって用いることができることを認識している。例えばトリマー、テトラマー又はそれより多い反復を抗真菌剤及び/又は抗原生生物剤として用いることができる。
第二の特徴のポリペプチドは、更なるアミノ酸が前記に付加されるように合成することができる。例えば、1つ、2つ、3つ又は4つ以上のアミノ酸を、配列番号:8のペプチド又は上記に定義したようなペプチドの誘導体のC-又はN-末端に付加することができる。また別には、前記ポリペプチドは、配列番号:5の9アミノ酸より大きいペプチドの直列反復を含むことができる。そのようなペプチドは、配列番号:8のN-末端、C-末端に及び/又は9番目と10番目の間にアミノ酸を付加することができる。アミノ酸は、配列番号:8のC-末端、又は9番目と10番目のアミノ酸の間に付加されることがもっとも好ましい。続いてそのようなペプチドを配列番号:8由来のポリペプチドのために上記に記載したように改変することができることは理解されよう。
置換されたポリペプチドは18アミノ酸(又はその誘導体)を含み、それによってアポE141-149の直列反復ダイマーの完全長に対応させることができる。しかしながら驚くべきことに、本発明者らは、配列番号:8に基づく幾つかの選択された短縮ポリペプチドもまた抗真菌剤及び/又は抗原生生物剤として有効性をもつことを見出した。したがって、好ましいポリペプチド又はその誘導体は、18未満のアミノ酸を有することができる。例えば、本発明の第二の特徴のいくつかのポリペプチドは、長さが17、16、15、14、13、12、11、10又は10未満のアミノ酸でありえる。
【0023】
当業者には既知でありえる複数のアミノ酸変種を含むアポE141-149の直列反復にW、Y、R、K、C又はFの改変型置換を導入することができることは理解されよう。そのようなポリペプチドもまた、前記改変がその化学的特徴を顕著には変化させないことを条件として抗真菌活性及び/又は原生生物活性を有するであろう。例えば、R又はKの側鎖アミン上の水素はメチレン基で置換することができる(-NH2 −> -NH(Me)又は-N(Me)2)。
本発明の第二の特徴の他の好ましいポリペプチド(アポE141-149に由来するペプチドの直列反復を含む)は、以下のアミノ酸配列の1つを含むことができる:
(a)WRKWRKRWWWRKWRKRWW(配列番号:9)。このポリペプチドは、全てのロイシンがトリプトファン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN7又はMU4と称される。
(b)WRKWRKRWRKWRKR(配列番号:10)。このポリペプチドは、全てのロイシンがトリプトファン残基で置換され、さらにアミノ酸9、10、17及び18の切り出しにより短縮されているアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する(すなわち14merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN32と称される。
(c)WRKWRKRWWLRKLRKRLL(配列番号:11)。このポリペプチドは、ロイシンセットの一部がトリプトファン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する(すなわち18merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN34と称される。
(d)YRKYRKRYYYRKYRKRYY(配列番号:12)。このポリペプチドは、全てのロイシンがチロシン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する(すなわち18merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN41またはMU6と称される。
(e)LRKLRKRLRKLRKR(配列番号:13)。このポリペプチドは、アミノ酸9、10、17及び18の切り出しにより短縮されているアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応(すなわち14merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN8と称される。
(f)LRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:14)。このポリペプチドは、アミノ酸1、2及び3の切り出しにより短縮されているアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する(すなわち15merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN2と称される。
(g)FRKFRKRFFFRKFRKRFF(配列番号:15)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU7と称される。
(h)WRKWRKRWWRKWRKRWW(配列番号:16)。このポリペプチドは、9位のW残基が欠失した配列番号:9に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU58と称される。
(i)WRKWRKRWRKWRKRW(配列番号:17)。このポリペプチドは、9、10及び18位のW残基が欠失した配列番号:9に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU59と称される。
(j)WRKWRKRWWFRKWRKRWW(配列番号:18)。このポリペプチドは、10位のW残基がFで置換されている配列番号:9に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU60と称される。
(k)WRKWRKRFFWRKWRKRFF(配列番号:19)。このポリペプチドは、9、10、17及び18位のW残基がF残基で置換されている配列番号:9に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU61と称される。
(l)WRKRWWRWRKRWWR(配列番号:20)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU81と称される。
(m)LRKLRKRLLRLRKLRKRLLR(配列番号:21)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU82と称される。
(n)WRKWRKRWWRWRKWRKRWWR(配列番号:22)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU83と称される。
(o)LRKLRKRLLWRKWRKRWW(配列番号:23)。このポリペプチドは、10、13、17及び18位のL残基がW残基で置換されている配列番号:8に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU111と称される。
(p)LRKLRKRLLLRKLRKRWW(配列番号:24)。このポリペプチドは、17及び18位のL残基がW残基で置換されている配列番号:8に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU112と称される。
(q)LRKLRKRLLWRKWRKRLL(配列番号:25)。このポリペプチドは、10及び13位のL残基がW残基で置換されている配列番号:8に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU113と称される。
(r)WRKWRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:26)。このポリペプチドは、1及び4位のL残基がW残基で置換されている配列番号:8に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU114と称される。
(s)WRKLRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:27)。このポリペプチドは、1位のL残基がW残基で置換されている配列番号:8に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU115と称される。
(t)WRKWRKFFFRKWRKRWW(配列番号:28)。このポリペプチドは、8、9及び10位のW残基がF残基で置換され、7位のR残基が欠失している、配列番号:9に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU116と称される。
(u)WRKWRKRWWFRKFRKRFF(配列番号:29)。このポリペプチドは、10、13、17及び18位のW残基がF残基で置換されている、配列番号:9に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU117と称される。
(v)CRKCRKRCCCRKCRKRCC(配列番号:30)。このポリペプチドは、全てのロイシンがシステイン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する(すなわち18merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU12と称される。
(w)RRKRRKRRRRRKRRKRRR(配列番号:31)。このポリペプチドは、全てのロイシンがアルギニン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する(すなわち18merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU16と称される。
(x)MRKMRKRMMMRKMRKRMM(配列番号:32)。このポリペプチドは、全てのロイシンがメチオニン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する(すなわち18merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU5と称される。
(y)IRKIRKRIIIRKIRKRII(配列番号:33)。このポリペプチドは、全てのロイシンがイソロイシン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する(すなわち18merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU8と称される。
(z)HRKHRKRHHHRKHRKRHH(配列番号:34)。このポリペプチドは、全てのロイシンがヒスチジン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する(すなわち18merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU19と称される。
【0024】
もっとも好ましい実施態様では、本発明の第二の特徴のポリペプチド(アポE141-149由来ペプチドの直列反復を含む)は、以下のアミノ酸配列の1つを含む:
(i)WRKWRKRWWWRKWRKRWW(配列番号:9)。このポリペプチドは、全てのロイシンがトリプトファン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:8)に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN7又はMU4と称される;
(ii)FRKFRKRFFFRKFRKRFF(配列番号:15)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU7と称される;
(iii)LRKLRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:8)、すなわち配列番号:4の直列反復ダイマーである、18-merである。本明細書では、配列番号:8はまたGIN1又はGIN1pと称される(pは、(例えばアセチル基による)N-末端の保護及び(例えばアミド基による)C-末端の保護を示す)。GIN1pはまた本明細書ではMU10とも称される;及び
(iv)WRKWRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:26)。このポリペプチドは、1及び4位のL残基がW残基で置換された配列番号:4に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU114と称される。
さらにまたQSTEELRVRLASHLRKLRKRLL(配列番号:35)(ただ1つのRKRモチーフを含む)も、有用な抗真菌剤であることが判明した。このペプチドは本明細書で言及されるときはGIN11と称される。
【0025】
本発明の第一の特徴のまた別の実施態様にしたがえば、好ましいポリペプチドは、アポリポタンパク質BのHSPGレセプター結合領域由来のペプチドの反復、又はその変種若しくは短縮型を含む。したがって、第三の特徴では、真菌感染及び/又は原生動物感染、又は汚染の処置のための医薬の製造を目的とする、アポリポタンパク質BのHSPGレセプター結合領域由来のペプチドの反復を含むポリペプチド、又はその誘導体若しくは類似体の使用が提供される。
好ましくは、本ポリペプチド、その誘導体又は類似体は、アポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来する反復を含む。好ましくは、前記ポリペプチド、その誘導体又は類似体は、ペプチドアポB3359-3367(配列番号:6)の反復又はその短縮型若しくは変種を含む。
本発明の第三の特徴のポリペプチドは、アミノ酸配列:RLTRKRGLKRLTRKRGLKを有する、アポB3359-3367(配列番号:6)の直列ダイマー反復(すなわち18mer)(配列番号:36)でありえる。
本発明の第三の特徴のペプチドはまた本明細書に定義したように短縮されてあってもよい。アミノ酸の減少は、C-及び/又はN-末端の残基の除去によるものでも、又はペプチドのコア内(すなわち配列番号:36のアミノ酸2−17)の1つ又は2つ以上のアミノ酸の欠失によるものでもよい。
第三の特徴のポリペプチドは少なくとも2つのRKRモチーフを含み、前記ポリペプチドがトリマー、又はテトラマーなどであればそれより多くのRKRモチーフを含むのが好ましい。
第三の特徴の好ましいポリペプチドは、ペプチドアポB3359-3367の直列ダイマー反復(すなわち配列番号:36のポリペプチド)又はその短縮型を含み、前記は、RKRモチーフ以外で少なくとも1つのアミノ酸残基が、グリシン(G)、スレオニン(T)、ヒスチジン(H)、トリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置き換えられていることを特徴とする。
【0026】
適切には1つ又は2つ以上、より適切には2つ又は3つ以上、さらに適切には3つ又は4つ以上のアミノ酸残基が、グリシン(G)、スレオニン(T)、ヒスチジン(H)、トリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置き換えられえる。好ましくは4つ又は5つ以上、より好ましくは5つ又は6つ以上、さらに好ましくは6つ又は7つ以上のアミノ酸残基がこれらのアミノ酸又はその誘導体によって入れ替えられえる。好ましくは置換又は入れ替えられる残基は、配列番号:36の第1番目、第2番目、第3番目、第7番目、第8番目、第9番目、第10番目、第11番目、第12番目、第16番目、第17番目又は第18番目の残基である。
好ましくは、第三の特徴のポリペプチドは、配列番号:36のポリペプチド又はその短縮型を含み、前記は、少なくとも1つのアミノ酸残基がトリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置き換えられていることを特徴とする。
適切には1つ又は2つ以上、より適切には2つ又は3つ以上、さらに適切には3つ又は4つ以上のアミノ酸残基が、トリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置き換えられえる。好ましくは4つ又は5つ以上、より好ましくは5つ又は6つ以上、さらに好ましくは6つ又は7つ以上のアミノ酸残基が、トリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置き換えられえる。好ましくは置換又は置き換えられる残基は、アポB3359-3367の反復アミノ酸配列の第1番目、第2番目、第3番目、第7番目、第8番目及び/又は第9番目の残基、又はそれらの組合せである。
【0027】
本発明のポリペプチドは18のアミノ酸(又はその誘導体)を含み、それによって上記で述べた置換を含む又は含まない完全長の配列番号:36に対応させることができる。しかしながら、発明者らは、驚くべきことに、配列番号:36をベースにした短縮ポリペプチドもまた抗真菌剤及び/又は抗原生生物剤として有効性を有することを見出した。したがって、好ましいポリペプチド又はその誘導体は18未満のアミノ酸を有することもある。例えば、本発明の第三の特徴のいくつかのポリペプチドは、長さが17、16、15、14、13、12、11、10又はそれ未満のアミノ酸でもよい。欠失は好ましくは、配列番号:36の1、2、8、9、10、11、17及び/又は18位で生じる。
好ましい実施態様では、第三の特徴のポリペプチドは好ましくは下記式IVを有することができる:
{abcRKRxyz}+{a'b'c'RKRx'y'z'}
式中、
a及びa'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)のいずれかから選択することができる正に荷電した残基;ロイシン(L);トリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてあり;
b及びb'は、それぞれ独立にロイシン(L);アルギニン(R);リジン(K)から選択されるか、又は欠失されてあり;
c及びc'は、それぞれ独立に、スレオニン(T);トリプトファン(W);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択され;
x及びx'は、それぞれ独立に、グリシン(G);トリプトファン(W);ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択され;
y及びy'は、それぞれ独立に、ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択されるか、又は欠失されてあり;
z及びz'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基;又はロイシンから選択されるか、又は欠失されてある。
【0028】
第三の特徴のポリペプチドは好ましくは下記式Vを有することができる:
{abcRKRxyz}+{abcRKRxyz}
式中、
aは、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)のいずれかから選択することができる正に荷電した残基;ロイシン(L);トリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてあり;
bは、それぞれ独立にロイシン(L);アルギニン(R);リジン(K)から選択されるか、又は欠失されてあり;
cは、それぞれ独立に、スレオニン(T);トリプトファン(W);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択され;
xは、それぞれ独立に、グリシン(G);トリプトファン(W);ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択され;
yは、それぞれ独立に、ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択されるか、又は欠失されてあり;
zは、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基;又はロイシン(L)から選択されるか、又は欠失されてある。
【0029】
式Vのポリペプチドはより好ましくは以下のアミノ酸を含むことができる:
aは、それぞれ独立に、トリプトファン(W);アルギニン(R);ロイシン(L);から選択されるか、又は欠失されてあり;
bは、それぞれ独立にロイシン(L);アルギニン(R)又はリジン(K);から選択されるか、又は欠失されてあり;
cは、それぞれ独立に、トリプトファン(W);スレオニン(T);リジン(K)から選択され;
xは、それぞれ独立に、トリプトファン(W);グリシン(G);ロイシン(L);アルギニン(R)から選択され;
yは、それぞれ独立に、ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択されるか、又はここで切断短縮されてあり;
zは、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基;又はロイシン(L)から選択されるか、又はここで切断短縮されている。
【0030】
発明者らはまた、アポB3359-3367(配列番号:36)の単なるダイマー直列反復より大きいもの又はその変種若しくは短縮型を含むポリペプチドも本発明にしたがって利用することができることも知った。例えば、配列番号:6のトリマー、又はテトラマー、又はそれより大きい数の反復を含むポリペプチドを、有用な抗真菌/原生動物剤として用いることができる。
したがって、本ポリペプチドは好ましくは下記式VIを有することができる:
{abcRKRxyz}n
式中、a、b、c、x、y及びzは、式IV又はVについて上記で定義したとおりであり、nは2、3、4又は5に等しいか、又はそれより大きい。モノマーペプチド{abcRKRxyz}は、上記で定義したように同一でも異なっていてもよいことは理解されよう。
他の好ましいポリペプチドは、式IV又はVに定義した18merペプチド(又はその短縮型)の反復を含むことができる(例えば、式IVによって定義した9merペプチドのヘテロダイマーの反復)。
【0031】
本発明の第三の特徴の好ましい他のポリペプチドは以下のアミノ酸配列の1つを含むことができる:
(a)RTRKRGRRTRKRGR(配列番号:37)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、GIN36と称される;
(b)LRKRKRLLRKRKRL(配列番号:38)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、GIN37と称される;
(c)LRKRKRLRKLRKRKRLRK(配列番号:39)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、GIN38と称される;
(d)WRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:40)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、GIN33と称される;
(e)LLRKRLKRLLLRKRLKRL(配列番号:41)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU24と称される;
(f)RRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:42)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU28と称される;
(g)KRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:43)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU29と称される;
(h)LRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:44)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU30と称される;
(i)HRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:45)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU31と称される;
(j)RWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:46)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU32と称される;
(k)RRWRKRWRKRRWRKRWRK(配列番号:47)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU33と称される;
(l)LRWRKRWRKLRWRKRWRK(配列番号:48)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU35と称される;
(m)HRWRKRWRKHRWRKRWRK(配列番号:49)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU36と称される;
(n)RWRKRWRKRWRKRWRK(配列番号:50)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU37と称される;
(o)RWRKRGRKRWRKRGRK(配列番号:51)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU69と称される;
(p)RWRKRWRKRWRKRWRK(配列番号:52)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU71と称される;
(q)RKRGWKWRKRGWKW(配列番号:53)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU73と称される;
(r)RLTRKRGRLTRKRG(配列番号:54)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU74と称される;及び
(s)WRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:55)、このポリペプチドは本明細書で言及されるときは、MU27と称される。
【0032】
本発明のポリペプチドの誘導体を用いて、真菌感染及び/又は原生生物感染を治療することができる。そのような誘導体は前記ポリペプチドのin vivo半減期を増加又は減少させることができる。本発明のポリペプチドの半減期を増加させることができる誘導体の例には、前記ポリペプチドのペプトイド誘導体、前記ポリペプチドのD-アミノ酸誘導体、及びペプチド-ペプトイドハイブリッドが含まれる。
本発明のポリペプチドを多数の手段(例えば生物学的な系におけるプロテアーゼ活性)によって分解に付され得る。そのような手段は前記ポリペプチドの生体利用性を制限し、したがってそれらの生物学的機能を達成する前記ポリペプチドの能力を制限するであろう。生物学的背景において安定性が強化された誘導体を設計し、製造することができる広範囲の確立された技術が存在する。そのようなポリペプチド誘導体は、プロテアーゼ介在性分解に対して耐性が高まった結果として生体利用性を改善することが可能であった。好ましくは、本発明の使用に適した誘導体又は類似体は、それらが由来したペプチドよりもプロテアーゼ耐性が強い。
好ましくは、前記ポリペプチドは、N及びC末端を保護することによってよりプロテアーゼ耐性にすることができる。例えば、N末端はアセチル基によって、またはアルキル若しくはアリール基によって、またはアルキル-CO-若しくはアリール-CO-基(前記の各々は場合によって置換されてあってもよい)によって保護することができる。C末端は、アミド基によって又は置換アミド基によって保護することができる。
ポリペプチド誘導体及びそれらが由来するポリペプチドのプロテアーゼ耐性は、周知のタンパク質分解アッセイの手段によって判定することができる。続いて、ポリペプチド誘導体及びポリペプチドのプロテアーゼ耐性の相対値を比較することができる。
【0033】
本発明のポリペプチドのペプトイド誘導体は、本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチドの構造に関する情報から容易に設計することができる。市販のソフトを用い確立されたプロトコルにしたがってペプトイド誘導体を開発することができる。
レトロペプトイド(全てのアミノ酸が逆の順序でペプトイド残基によって置き換えられている)もまた、アポリポタンパク質由来の抗菌ポリペプチドを模倣することができる。レトロペプトイドは、ペプチド又はペプトイド-ペプチドハイブリッド(1つのペプトイド残基を含む)と比較したとき、リガンド結合溝で反対の向きで結合すると予想される。結果として、ペプトイド残基の側鎖は本来のペプチドの側鎖と同じ方向に向くことができる。
本発明のポリペプチドの改変形のさらに別の実施態様は前記ポリペプチドのD-アミノ酸形を含む。L-アミノ酸ではなくD-アミノ酸を用いるペプチドの調製は、通常の代謝過程によるそのような薬剤の望ましくない一切の分解を大きく減少させて、投与されねばならない薬剤の投与頻度とともに、その量を減少させる。
ポリペプチド配列における他の改変もまた意図され、本発明の特許請求の範囲内に包含される。前記は、例えば翻訳時又は翻訳後に、例えばアセチル化、アミド化、カルボキシル化、ホスホリル化、タンパク分解切断又はリガンドとの結合によって生じる改変である。
【0034】
本発明者は、本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体を任意の真菌又は原生生物感染の予防又は治療で使用することができると考える。本発明のある好ましい実施態様にしたがえば、医療的に重要な種(例えば動物及び人間)を本発明の第一、第二又は第三の特徴にしたがって治療して、真菌による感染原因を予防又は治療することができる。“真菌”という用語は、真菌界の多数の真核生物の一切を指す。これらの生物は葉緑素を欠く傾向を有し、形態は単細胞から多細胞と広く、しばしば子実体を形成する分枝した糸状菌糸でありえる。したがって前記真菌は糸状菌でもよい。
医療的に(例えば人間で又は獣医の立場で)重要な真菌感染を引き起こし、さらに本発明のペプチドによって治療することができる真菌種の例は、以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:ツボカビ門(Chytridiomycota);接合菌門(Zygomycota);子嚢菌門(Ascomycota);担子菌門(Basidiomycota);地衣類(Lichens);不完全菌類(Deuteromycota);ミトスポリジア(Mitosporidia);及びストラミニピラ(Straminipila)。
本発明のペプチドが活性を有しえる好ましいツボカビ門は、以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:ネオカリマスチクス目(Neocallimasticales);コウマクノウキン目(Blastocladiales);ツボカビ目(Chytriddiales);スピゼロミケス目(Spizellomycetales);及びサヤミドロモドキ目(Monoblepharidales)。
本発明のペプチドが活性を有しえる好ましい接合菌門は、以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:ケカビ目(Mucorales);又はハエカビ目(Entomophthorales)。
本ペプチドが活性を有する好ましい担子菌門は、以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:スポリジウム目(Sporidiales);及び菌蕈綱(Hymenomycetes)。好ましいスポリジウム目にはクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)が含まれ、好ましい菌蕈綱にはマラセジア(Malassezia)種が含まれえる。
【0035】
本発明のペプチドが活性を有する好ましいケカビ目は、以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:ケカビ科(Mucoraceae);アブシジア属(Absidia);アポフィソミセス属(Apophysomyces);ケカビ属(Mucor);リゾムコール属(Rhizomucor);ハリサシカビモドキ科(Syncephalastraceae);クサレケカビ科(Mortierellaceae);サクセナ科(Saksenaeaceae);エダケカビ科(Thamnidiaceae);及びクスダマカビ科(Cunnighamellaceae)。
本ペプチドが活性を有する好ましいケカビ科はクモノスカビ属(Rhizopus)、例えばリゾプス・アーリズス(Rhizopus arrhizus)を含むことができる。好ましいアブシジア属にはアブシジア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)が含まれる。好ましいアポフィソミセス属にはアポフィソミセス・エレガンス(Apophysomyces elegans)が含まれる。好ましいハリサシカビモドキ科にはシンセファラストルム・ラセモスム(Syncephalastrum racemosum)が含まれる。好ましいサクセナ科にはサクセナエア・ヴァシフォルミス(Saksenaea vasiformis)が含まれる。好ましいエダケカビ科にはコケロミセス・レクルバツス(Cokeromyces recurvatus)が含まれる。好ましいクスダマカビ科にはクニンガメラ・ベルトレチアエ(Cunninghamella bertholletiae)が含まれる。
本発明のペプチドが活性を有する好ましいハエカビ目は、以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:バシジオボルス科(Basidiobolaceae);ハエカビ科(Entomophthoraceae);コムプレトリウム科(Completoriaceae);アンキリステス科(Ancylistaceae);メリスタクラッセアエ(Meristacracceae);及びネオジギテス科(Neozygitaceae)。好ましいバシジオボルス科にはバシジオボルス・ラナルム(Basidiobolus ranarum)及びラカジア・ロボイ(Lacazia loboi)が含まれる。好ましいアンキリステス科にはコニジオボルス・コロナツス(Conidiobolus coronatus)及びコニジオボルス・インコングルウス(Conidiobolusu incongruus)が含まれる。
【0036】
本ペプチドが活性を有する好ましい子嚢菌門は、以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:子嚢菌綱(Ascomycetes)及びエンドミケス綱(Endomyetes)。
本発明のペプチドが活性を有する好ましい子嚢菌綱は、以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:ホネタケ目(Onygenales);ヒストプラズマ(Histoplasma)種;ホネタケ科(Onygenaceae);ラボウルベア菌類(Laboulbeniomycetes);プロトアスコミセテス(Protoascomycetes);真正子嚢菌類(Euascomycetes);カエトチリウム目(Chaetothyriales);子嚢菌類(Ascomycotina);パラコクシジオイデス(Paracoccidioides);クラドスポリウム(Cladosporium);エンドミケス類(Endomycetes);サッカロミケス目(Saccharomycetales);ジポドアスクス科(Dipodascaceae);及びサッカロミケス科(Saccharomycetaceae)。
好ましいホネタケ目にはアルスロデルマ科(Arthrodermataceae)、例えばエピデルモフィトン(Epidermophyton)種;ミクロスポルム(Microsporum)種;及びトリコフィトン(Trichophyton)種が含まれる。好ましいヒストプラスマ(Histoplasma)種にはヒストプラスマ・カプスラツム(Histoplasma capsulatum)が含まれる。好ましい真正子嚢菌は以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:ビポラリス(Bipolaris)種、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、コクシジオイデス・イムミチス(Coccidioides immitis)、コクシジオイデス・ポサダシイ(Coccidioides posadasii)、クルブラリア(Curvularia)種、フォンセカエア(Fonsecaea)、レプトスファエリア(Leptosphaeria)種、マドゥレラ(Madurella)、ネオテスツジナ(Neotestudina)種、フィアロフォラ(Phialophora)、ピエドライア(Piedraia)種、シューダレシェリアム(Pseudallescheriam)、ピレノカエタ(Pyrenochaeta)、セドスポリウム(Scedosporium)種、スコプラリオプシス(Scopulariopsis)種及びスポロスリクス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)。好ましいカエトチリウム科にはエキソフィアラ(Exophiala)種及びワンギエラ(Wangiella)種が含まれる。好ましい子嚢菌類にはアクレモニウム(Acremonium)種が含まれる。好ましいパラコクシジオイデスにはパラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)が含まれる。好ましいエンドミケス類にはサッカロミケス目(ジポドアスクス科(Dipodascaceae)及びサッカロミケス科(Sacharomycetaceae)を含む)が含まれる。好ましいジポドアスクス科には、ジポドアスクス(Dipodascus)及びアルスロコニジア(arthroconidia)が含まれる。
【0037】
本発明のペプチドが活性を有するもっとも好ましいサッカロミケス科は以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:カンジダ、ユウロチウム目(Eurotiales)及びボタンタケ目(Hypocreales)。
本発明のペプチドが活性を有しえる好ましいカンジダ種の例は、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis);カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata);カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis);カンジダ・クルセイ(Candida krusei);カンジダ・ルシタニアエ(Candida lusitaniae);及びもっとも好ましくはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)から成る群からそれぞれ独立して選択することができる。もっとも好ましいカンジダ・アルビカンスはカンジダ・アルビカンス6862である。
好ましいユウロチウム目にはアスペルギルス(Aspergillus)種が含まれる。本発明のペプチドが活性を有しえる好ましいアスペルギルスは以下から成る群からそれぞれ独立に選択することができる:アスペルギルス・フラヴス(Aspergillus flavus);アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus);アスペルギルス・グラウクス(Aspergillus glaucus);アスペルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans);アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger);及びアスペルギルス・テルレウス(Aspergillus terreus)。もっとも好ましいアスペルギルスはA.フミガツスAF293である。
好ましいボタンタケ目にはフザリウム種が含まれる。本発明のペプチドが活性を有しえる好ましいフザリウムには、以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:フザリウム・ソラニ(Fusarium solani);フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum);及びフザリウム・クラミドスポルム(Fusarium chlamydosporum)。もっとも好ましいフザリウム種にはフザリウムspp5889又はフザリウムspp6507のどちらかが含まれる。
【0038】
本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体は任意の原生生物又は原生生物感染若しくは前記による汚染に対する処置で用いることができる。“原生生物”という用語は、原生生物界の一般的には単細胞のおびただしい真核生物のいずれかを指す。しかしながら、いくつかの原生生物は多細胞であることは理解されよう。原生生物は原生動物であってもよい。原生生物のいくつかの形態は、特に人間で疾患を引き起こす原因である。
例えば、本発明のペプチドが有効である好ましい原生生物(又はプロトシスタ)は以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:緑色植物(緑藻類);褐藻植物(褐藻類);炎色植物(双鞭毛藻類);黄金色植物(珪藻類);紅色植物(紅藻類);車軸植物(車軸藻類);及びミドリムシ植物(ミドリムシ)。
好ましい原生生物のさらに別の例には、アピコンプレックス門(Apicomplexa)内の生物が含まれる。前記は、例えば以下から成る群からそれぞれ独立に選択される:コクシジア(Coccidia);ヘモグレガリナ(Hemogregarina)種;エイメリア(Eimeria);イソスポラ(Isospora);サルコシスチス・クルジ(Sarcocystis cruzi);トキソプラスマ(Toxoplasma)種;クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種;及びシクロスポラ・カイエタネンシス(Cyclospora cayetanensis)。
さらに別の好ましい例には住血胞子虫類(Haemosporoina)が含まれる。もっとも好ましい住血胞子虫類にはプラスモディウム(Plasmodium)種が含まれる。プラスモディウム種はマラリア(毎年数百万人が死亡する疾患)を伝播する原生生物であることは理解されよう。好ましいプラスモディウム種は、三日熱マラリア原虫(プラスモディウム・ヴィヴァクス)(Plasmodium vivax);四日熱マラリア原虫(プラスモディウム・マラリアエ)(Plasmodium malariae);卵形マラリア原虫(プラスモディウム・オヴァレ)(Plasmodium ovale);及びもっとも好ましくは熱帯熱マラリア原虫(プラスモディウム・ファルシパルム)(Plasmodium falciparum)から成る群からそれぞれ独立して選択することができる。
好ましいイソスポラにはイソスポラ・ベリ(Isospora belli)が含まれる。好ましいトキソプラスマ種にはトキソプラスマ・ゴンディイ(Toxoplasma gondii)が含まれる。好ましいクリプトスポリジウム種にはクリプトスポリジウム・パルヴム(Cryptosporidium parvum)が含まれる。
【0039】
本発明のペプチドが有効である原生生物のさらに別の好ましい例には、ミクソゾア(myxozoa)門内の生物、例えばミキソボルス・セレブラリス(Myxobolus cerebralis)が含まれえる。
本発明のペプチドが有効である原生生物のさらに別の好ましい例には、繊毛虫(Ciliophora)門内の生物が含まれえる。本発明のペプチドが有効である好ましい繊毛虫は以下から成る群からそれぞれ独立して選択される:イクシオフシリウス・ムルチフィリチイス(Ichthyophthirius multifilitiis);及びトリコジナ(Trichodina)種並びにリトストマテア綱内の生物(大腸バランチジウム(Balantidium coli)を含む)。
本発明のペプチドが有効である原生生物のさらに別の好ましい例には、有毛根足虫門(Sarcomastigophora)内の生物が含まれえる。前記生物には、(i)マスチゴフォラ(Mastigophora)亜門(鞭毛虫類)内の生物;及び(ii)肉質虫亜門(Sarcodina)内の生物が含まれえる。
マスチゴフォラ亜門内の生物の好ましい例は、以下から成る群からそれぞれ独立に選択することができる:キロマスチクス・メスニリ(Chilomastix mesnili);ジエントアメーバ・フラギリス(Dientamoeba fragilis);トリコモナス・ヴァジナリス(Trichomonas vaginalis);ギアルジア・ラムブリア(Giardia lamblia);クリプトビア・サルモシチカ(Cryptobia salmositica);リーシュマニア(Leishmania)種、例えばトリパノソーマ・クルジ(Trypanosoma cruzi)。
肉質虫亜門内の生物の好ましい例は、以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica);及び自由生活性アメーバ、例えばネグレリス・フォウレリ(Naegleris Fowleri)、バラムシア・マンドリラリス(Balamuthia mandrillaris)及びアカントアメーバ(Acanthamoeba)種。本発明のペプチドが有効である好ましいアカントアメーバ種は以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:A.アストロニクシス(A.astronyxis);A.コマンドニ(A.comandoni);A.ジヴィオネンシス(A.divionensis);A.グリフィニ(griffini);A.ハチェッチイ(A.hatchetti);A.ヘアリイ(A.healyi);A. ヤコブシ(A.jacobsi);A.レンチクラタ(A.lenticulata);A.クルベルツォニ(A.culbertsoni);A.ルグヅネンシス(A.lugdunensis);A.マウリタニエンシス(A.mauritaniensis);A.パレスチネンシス(A.palestinensis);A.ペアルセイ(A.pearcei);A.ポリファーガ(A.polyphaga);A.プスツロサ(A.pustulosa);A.クィナ(A.quina);A.リソデス(A.rhysodes);A.ロイレバ(A.royreba);A.テルリコラ(A.terricola);A.トリアングラリス(A.triangularis);A.ツビアシ(A.tubiashi);A.ポリファーガ(A.polyphaga);及びA.カステラニイ(A.castellanii)。
【0040】
本発明者は、テスト真菌、アスペルギルス・フミガツスAF293、アスペルギルス・ニゲル、アスペルギルス・タルレウス、カンジダ・アルビカンス6862、フザリウム種 5889及びフザリウム種6507に対する抗真菌活性を決定するために実験(実施例1)を実施した。本発明のポリペプチドの抗真菌活性は表2に示されている。したがって、好ましくは、本発明のポリペプチドは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくはアスペルギルス種、カンジダ種及びフザリウム種の全てに対し抗真菌活性を提示する。好ましくは、本発明のポリペプチドは、アスペルギルス、カンジダ・アルビカンス6862、フザリウム種5889、及びフザリウム種6507の全てに対して抗真菌活性を示す。
本発明者らは、MU4、MU10及びMU114は特に、アスペルギルス種、特にA.フミガツスAF293、アスペルギルス・ニゲル及びアスペルギルス・テルレウスに対して活性を有することを見出した。さらに、本発明者らは、MU4、MU10及びMU114は特に、カンジダ種、特にカンジダ・アルビカンスに対して有効であることを見出した。さらにまた、本発明者らは、MU4、MU10及びMU114は特に、フザリウム種及び、特にF.グラミナリウム(F.graminarium)に対して有効であることを見出した。
本明細書に開示したポリペプチドの真菌殺滅活性の試験に加えて、本発明者はまた、テスト原生生物(すなわちアカントアメーバ・ポリファーガ(栄養型)に対する抗原生生物活性を決定するために実験を実施した(実施例2)。表3で分かるように、本発明の3つのペプチドの全て(MU4、MU7、MU10及び被検中のMU114)が、アカントアメーバ、特にアカントアメーバ・ポリファーガに対して反応性であった。
さらに別の好ましい抗真菌及び抗原生生物用途がそれぞれ実施例4及び5で示される。
【0041】
真菌及び/又は原生生物感染の治療に、本発明のポリペプチドを単一療法として(すなわち唯一の抗微生物剤として本発明を使用)又は抗真菌若しくは抗原生生物療法で用いられる他の化合物若しくは治療を併用して用いることができる。例えば、前記ポリペプチドは、例えば以下の通常の抗真菌剤と併用することができる:アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、フルシトシン、フルコナゾール、ブトコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ポサコナゾール、ラヴコナゾール、ヴォリコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、ニッコーマイシンZ、カスポファンギン、ミカファンギン(FK463)、アニドゥラファンギン(LY303366)、アンホテリシンB(AmB)、AmB脂質複合体、AmBコロイド分散液、リポソームAmB、AmB経口懸濁液、リポソームナイスタチン、局所用ナイスタチン、ピマリシン、グリセオフルヴィン、シクロピロキソラミン、ハロプロギン、トルナフテート、ウンデシレネート。
また別には、前記ポリペプチドは、例えば以下の通常の抗原生生物剤と併用することができる:プロパミジンイセチオネート、ブロリン、イミダゾール(例えばミコナゾール)、局所用アミノグリコシド(例えばネオマイシン)、及び局所用消毒剤(例えばポリヘキサメチレンビグアニド)、クロロヘキシジン、プロパミジン、クロロキン、ファンシダー(ピリメタミン、スルファドキシン)、アモジアキンキニン/キニジン、ハロファントリン、メフロキン、アルテムエーテル/アルテスネート、マラロン、クロロキン、プログアニル、及びドキシサイクリン。
【0042】
本発明のポリペプチドは、種々の多数の形態を有する組成物中で、特に前記ポリペプチドが用いられる態様に応じて処方することができる。したがって、例えば、本組成物は散剤、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エーロゾル、スプレー、ミセル、経皮パッチ、リポソームの形態であるか、又は人間又は動物に投与することができる任意の他の適切な形態でありえる。本発明の組成物の賦形剤は、前記組成物が投与される対象者が十分に耐性を有し、さらに好ましくは前記ポリペプチド又は誘導体の標的組織へのデリバリーを可能にするようなものでなければならないことは理解されよう。
本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を含む組成物は多数の方法で用いることができる。例えば経口投与は、錠剤、カプセル又は液体の形態で例えば経口的に摂取できる組成物中に前記化合物を収納することができる場合に要求することができる。また別には、前記組成物は血流中に注射によって全身的に投与することができる。注射は、静脈内(ボラス投与又は輸液)又は皮下注射(ボラス投与又は輸液)であろう。前記化合物は吸入によって(例えば鼻腔内から)投与してもよい。
本発明のポリペプチドを含む組成物は、経口的に投与しても又は全身的に投与してもよい。さらにまた、組成物は、エーロゾルによって、例えば噴霧装置を用いて(経鼻的投与できる)、又は吸入装置によって肺を介して投与してもよい。あるいは、前記組成物は局所的に、例えばクリーム又はゲルとして適用してもよい。局所投与は、治療されるべき対象者が皮膚の細菌感染を発しているときに有用である。前記組成物は膣内に適用してもよい(例えば、性交伝達疾患から対象者を保護することが必要な場合)。
ポリペプチド及びその誘導体はまた徐放性又は遅放性装置内に取り込ませることができる。そのような装置は、例えば皮膚上に又は皮下に挿入し、数週間又は数ヶ月にさえわたって前記化合物を放出することができる。そのような装置は、本発明のポリペプチド又は誘導体による長期治療が必要とされるとき、さらに通常頻繁な投与(例えば少なくとも毎日の注射)が必要とされるときに特に有利であろう。
必要とされるポリペプチド又は誘導体の量は、その生物学的活性及び生体利用性によって決定されることは理解されよう。それらは、投与の態様、用いられるポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の生理化学的特性、及び前記ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体が単独療法として又は併用療法として用いられるか否かに随時依存する。投与頻度はまた、上述の要因及び特に治療される対象者の体内での前記ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の半減期によって影響を受けるであろう。
【0043】
投与されるべき最適用量を当業者は決定することができ、さらに前記最適用量は、使用される個々のポリペプチド、調製物の濃度、投与の態様、治療又は予防される感染のタイプ、及び症状の進行状況にしたがって変動するであろう。治療される個々の対象者によって左右されるさらに別の要因も用量調節の必要をもたらすであろう。それらの要因には対象者の年齢、体重、性別、食生活及び投与時期が含まれる。
本ポリペプチドのIC50に関する情報が、個々の処方物中のポリペプチド濃度の算出、及び治療の必要がある対象者に投与されるべきポリペプチドの量の算出もまたを可能にすることを当業者は理解していよう。本発明者は、本発明のポリペプチド及びその誘導体は、好ましくはそのIC50値が約75μM以下、より好ましくは約60μM以下、さらに好ましくは約50μM以下、さらに好ましくは約40μM以下であるような真菌の増殖阻害有効性を有することを見出した。しかしながら、IC50値は好ましくは約30μM以下、より好ましくは約20μM以下、もっとも好ましくは約10μM以下である。実際のところ、本発明のペプチドの少なくともいくつかの事例では、約5μM以下、さらに約2.5μM以下(例えばMU4)というIC50値さえ得ることができることを確認したのは、本発明者の驚きであった。真菌についてのIC50値をどのように算出できるかは当業者には理解されていよう。
本発明のポリペプチド及びその誘導体は、好ましくは、それらのIC50値が約250μM以下であるような原生生物の増殖阻害有効性を有する。より好ましくは、原生生物増殖阻害のIC50値は約100μM以下であり、より好ましくは約50μM以下、もっとも好ましくは約40μM以下である。上記で述べたように、原生生物についてのIC50値をどのように算出できるかは当業者には理解されていよう。
公知の方法、例えば製薬工業で(例えばin vivo実験、臨床試験などで)通常的に用いられるような方法を用いて、本発明のポリペプチド又は誘導体の具体的な処方及び正確な治療計画(例えば1日の用量及び投与頻度)を確立することができる。
一般的には、1日の用量として本発明のポリペプチド又は誘導体の0.01μg/kg体重から0.5g/kg体重が、ウイルス感染の予防及び/又は治療のために用いられ得るが、前記は使用される具体的なポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体に左右される。より好ましくは1日の用量は0.01mg/kg体重から200mg/kg体重、もっとも好ましくはおよそ1mg/kgから100mg/kgである。
【0044】
1日の用量は1回の投与として与えることができる(例えば毎日1回の注射)。あるいは、使用されるポリペプチド又はその誘導体は1日に2回または3回以上の投与を必要とするかもしれない。一例として、本発明のポリペプチドは、毎日2回(又は症状の重篤度に応じて3回以上)、1日25mgから7000mg(すなわち体重70kgと仮定して)の間の用量で投与することができる。治療を受ける患者は、最初の投与を起床時に続いて夕方に第二回目の投与を(2回投与計画の場合)、又はその後3若しくは4時間間隔で投与を受けることができる。また別には、徐放性装置を用いて、反復投薬の必要なく患者に最適用量を用いることができる。
本発明は、治療的に有効な量の本発明のポリペプチド又は誘導体及び場合により医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。ある実施態様では、ポリペプチド又はその誘導体の量は約0.01mgから約800mgの量である。別の実施態様では、ポリペプチド、核酸又は誘導体の量は約0.01mgから約500mgの量である。また別の実施態様では、ポリペプチド又は誘導体の量は約0.01mgから約250mgの量である。また別の実施態様では、ポリペプチド又は誘導体の量は約0.1mgから約60mgの量である。また別の実施態様では、ポリペプチド又は誘導体の量は約0.1mgから約20mgの量である。
【0045】
本発明は、治療的に有効な量の本発明のポリペプチド又はその誘導体と医薬的に許容できる賦形剤を組み合わせることを含む、医薬組成物を製造する方法を提供する。“治療的に有効な量”とは、対象に投与されたときに真菌感染及び/又は原生生物感染の予防及び/又は治療を提供する、本発明のポリペプチド又は誘導体の任意の量である。この“対象”は、脊椎動物、哺乳動物、家畜又は人間である。
本明細書で用いられる“医薬的に許容できる賦形剤”は、医薬組成物の処方において有用な、当業者に公知の任意の生理学的賦形剤である。
好ましい実施態様では、前記医薬賦形剤は液体であり、医薬組成物は溶液の形態である。別の実施態様では、医薬的に許容できる賦形剤は固体であり、医薬組成物は散剤又は錠剤の形態である。さらに別の実施態様では、医薬賦形剤はゲルであり、組成物はクリームなどの形態である。
固体の賦形剤は1つ又は2つ以上の物質を含むことができ、前記物質はまた、香料、滑沢剤、可溶化剤、懸濁剤、充填剤、研磨剤、圧縮補助剤、結合剤又は錠剤崩壊剤として機能することができる。前記はまた被包化物質であってもよい。散剤では、前記賦形剤は微細に分割された固体であって、微細に分割された活性なポリペプチド又は誘導体と混合されている。錠剤では、活性なポリペプチド又は誘導体は、必要な圧縮特性を有する賦形剤と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。散剤及び錠剤は、好ましくは99%までの活性なポリペプチド又は誘導体を含む。適切な固体の賦形剤には、例えばリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ロウ及びイオン交換樹脂が含まれる。
【0046】
液体賦形剤は、溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、エリキシル及び加圧組成物の調製に用いられる。活性なポリペプチド又は誘導体は、医薬的に許容できる液体賦形剤、例えば水、有機溶媒、両者の混合物又は医薬的に許容できる油若しくは脂肪に溶解又は懸濁することができる。液体賦形剤は他の適切な医薬的添加物、例えば可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存料、甘味剤、香料、懸濁剤、膨張剤、着色剤、粘度調節剤、安定化剤、又は浸透圧調節剤を含むことができる。経口及び非経口投与を目的とする適切な液体賦形剤の例には、水(上記のような添加物、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロース溶液を部分的に含む)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール(例えばグリコール)を含む)及びそれらの誘導体、並びに油(例えばヤシ油及び落花生油)が含まれる。非経口投与のためには、賦形剤はまた油状エステル、例えばオレイン酸エチル及びイソプロピルミリステートであろう。滅菌液体賦形剤は、非経口投与を目的とした滅菌液体組成物で有用である。加圧組成物のための液体賦形剤は、ハロゲン化炭化水素又は他の医薬的に許容できる高圧ガスであろう。
【0047】
滅菌溶液又は懸濁液である液体医薬組成物は、例えば筋肉内、硬膜下腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内及び特に皮下、脳内又は脳室内注射で利用することができる。ポリペプチド又は誘導体は滅菌固体組成物として調製することができ、前記を投与時に滅菌水、生理食塩水又は他の適切な無菌的注射用媒体を用いて溶解又は懸濁させることができる。賦形剤は必要な不活性結合剤、懸濁剤、滑沢剤、香料、甘味剤、保存料、色素及びコーティングを含むことが意図される。
本発明のポリペプチド又は誘導体は、滅菌溶液又は懸濁液の形態で経口的に投与することができる。前記は、他の溶質又は懸濁剤(例えば溶液を等張にするために十分な生理食塩水又はグルコース)、胆汁塩、アラビアゴム、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(エチレンオキシドと共重合させたソルビトールとその無水物のオレイン酸エステル)などを含む。
本発明のポリペプチドはまた、液体又は固体組成物形態で経口的に投与することができる。経口投与に適した組成物には、固体形(例えばピル、カプセル、顆粒、錠剤及び散剤)及び液体形(例えば溶液、シロップ、エリキシル及び懸濁液)が含まれる。非経口投与に有用な形態には無菌的溶液、乳濁液及び懸濁液が含まれる。
本発明のポリペプチド又は誘導体を用いて、任意の哺乳動物(例えば人間、家畜、ペット)を処置し、感染の発生を予防することができる。
例示すれば、本発明のポリペプチド又は誘導体を用いてカンジダ感染を予防することができる。この事例では、前記医薬はクリームとして処方するができ、さらに前記はペッサリーの形態で用いることができる。
さらに例示すれば、本発明のポリペプチド又は誘導体を用いて“汗疱状白癬”の感染を予防することができる。この事例では、前記医薬はクリームとして処方することができ、前記を皮膚の患部領域に塗布することができる。
【0048】
さらに例示すれば、本発明のポリペプチド又は誘導体を用いてマラリアを予防又は治療することができる。感染の予防に用いるときは、治療的に有効な量のポリペプチド(例えば約10mgのポリペプチド)を適切な組成物として、例えばクリーム、ローション又はエーロゾルによって対象者の皮膚に投与することが好ましい。人間でマラリアを予防又は治療することを目的とする方法が存在することは理解されているであろう。そのような治療方法(または治療計画)のあるものは、化合物キニーネを患者に静脈内投与することから成る。ローディング用量は、キニーネベースで約15mg/kg(約10mL/kg通常食塩水又は5%デキストロース内)であり、約4時間にわたって対象者に注射される。その後続いて、8時間毎に約キニーネベースで8.3mg/kgの維持投与量が4時間にわたって、キニーネの経口投与が可能になるまで患者又は対象者に輸液される。72時間を越える静脈内処置を必要とする患者では、前記投与量は、8時間毎に約5.6mg基剤/kgに減少させることができる。本発明者は、本発明のペプチドは単独で用いてもよいが、また現在存在するマラリア治療方法と一緒に又はそれらの補助として用いることもできると考える。例えば、治療的に有効な量の本発明のペプチド(例えば10mg)を、対象者に注射されるキニーネ溶液に添加することができる。本発明のペプチドは経口投与しても又はしなくてもよい。しかしながら、本ペプチドは経口投与しないことが好ましい。
本発明の第四の特徴にしたがえば、真菌感染及び/又は原生生物感染を予防及び/又は治療する方法が提供される。前記方法は、そのような治療を必要とする対象者に治療的に有効な量の本発明のポリペプチド、誘導体若しくは類似体又は核酸を投与することを含む。
本発明の第四の特徴の方法は、本発明の第一、第二及び第三の特徴の関連で述べた任意の医薬及び任意の使用を用いることができる。
【0049】
真菌感染及び/又は原生生物感染はまた、園芸及び/又は農業で重要な植物における問題でもありえることは理解されよう。したがって、上記で述べたペプチドの処方物を植物に適用するために調整することができる。したがって本発明の第五の特徴にしたがえば、植物の真菌感染及び/又は原生生物感染を予防又は治療する方法が提供される。前記方法は、本発明の第一、第二又は第三の特徴で定義したポリペプチドをそのような処置が必要な植物に適用することを含む。
上記に定義したポリペプチドは、作物などに散布する抗微生物剤として用いることができる。例えば、前記ペプチドはまた、植物種の真菌感染(穀類作物の真菌汚染、保存穀粒の真菌汚染、ジャガイモの胴枯病、及びブドウのべと病を含む)の処置に用いることができる。
農業で(例えば植物で)重要な真菌感染を引き起こし、本発明のペプチドによって処置することができる真菌種の例には子嚢菌類(Ascomycetes)が含まれる。前記は以下から成る群からそれぞれ独立して選択することができる:エリシフェ(Erisyphe);プクキニア(Puccinia);レプトシェリア(Leptoshaeria);タナテフォルス(Thanatephorus);ピリクラリア(Pyricularia);フィトプトラ(Phytopthora);プラスモパラ(Plasmopara);アルテルナリア(Alternaria);グイグナルジア(Guignardia);シュードセロコスポレラ(Pseudocerocosporella);ヴェンツリア(Venturia);モノリニア(Monolinia);及びウスチラゴ(Ustilago)。さらに、農業で重要な真菌のまた別の例には、ボトリオチス(Botryotinia)種;及びコクリオブス(Cochliobus)種;及びもっとも好ましくはマグナポルテ(Magnaporthe)種が含まれる。好ましいマグナポルテ種にはM. グリセア(M.grisea)(イネいもち病菌)が含まれる。
【0050】
本ポリペプチドを用いて、真菌感染又は原生生物感染を被った任意の植物種を処置することができる。農業又は園芸用の使用を目的とする正確な処方及び用量は、用いられるペプチド、処置される植物のタイプ、処置される植物のサイズ及び必要な処置の規模(例えば何エーカーが又は単一の植物が処置を必要とされるか)に左右されることは当業者には理解されよう。一般的には、ジャガイモ単一植物の処置に有効なポリペプチドの量は、約0.01−100mgである。より好ましくは、約10mgのポリペプチドが、植物体に直接又はその根に適切な処方物として、例えば液体又はスプレーによって与えられる。
本発明の第五の特徴にしたがって用いられるポリペプチドは、植物の処置に用いられる現在存在する処方物、例えば農薬、除草剤などに添加することができる。例えば、リドミルゴールド(Ridomil Gold)MZをジャガイモの植物の葉に適用し、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)によって引き起こされる後期の胴枯れ病を制御することができる。季節の初めに、1.2kgのリドミルゴールドMZを1エーカー当たりの作物に適用することができる。予防的処置は、病気が発生しやすい条件のときに開始される(すなわち感染の前)。14日間隔で3回までの適用を実施することができる。本発明者は、本発明のペプチドをリドミルゴールドMZ溶液に加えることによって、ジャガイモの胴枯れ病の予防を目的とするそのような処置を補充し、これを驚くほど改善できると考えている。
【0051】
発明者らは、本発明のポリペプチドはまた多数の他の抗微生物的使用に利用できる(臨床的であれ他の環境であれ)ことを知った。例えば、本発明のポリペプチドの患者、動物、又は植物への投与に加えて、前記は、真菌及び/又は原生生物汚染の予防又は処置のために、表面及び物体を被覆するために使用することができる。
したがって、第六の特徴において、真菌汚染及び/又は原生生物汚染を予防及び/又は処置する方法が提供される。前記方法は、その必要がある物体又は表面を、本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチドのある量(前記は真菌及び/又は原生生物の殺滅又は増殖の予防に有効な量である)で被覆することを含む。
本ポリペプチドは、無菌的であることが要求される表面又は物体を被覆するために特に有用でありえることは理解されよう。上記で考察したように、前記ポリペプチドの多くが抗真菌性、抗原生生物性であり、さらにまた抗ウイルス性及び抗細菌性であるという利点をもつ。したがって、前記ポリペプチドは、いくつかの生物界にわたる非常に広域の抗微生物作用を有するであろう。さらにまた、下記でより詳細に考察するように、前記ポリペプチドは表面に付着することができ、それによってより長期間有効である。
本ポリペプチドを用いて、生物学的又は医学的状況で使用されるか(例えば医療装置)、又は患者に何らかの感染をもたらす可能性がある真菌又は原生生物汚染を防止することが重要な任意の物体又は装置を被覆することができる。本発明の第六の特徴にしたがって被覆することができる医療装置の例には、レンズ、コンタクトレンズ、カテーテル、ステント、創傷治療包帯、避妊具、外科用インプラント及び代用関節が含まれる。
【0052】
本ポリペプチドは、バイオマテリアル並びにそれらから製造された物体及び装置の被覆に特に有用である。バイオマテリアルの真菌又は原生生物汚染/感染は、真菌又は原生生物がそのような物質を増殖の基質として利用することができるので特に問題となりえる。バイオマテリアル(例えばコラーゲン及び他の生物学的ポリマー)は、人工関節の表面を仕上げるために用いることができる。また別にはある種のインプラントは、実質的にそのようなバイオマテリアルを含むことができる。
本ポリペプチドを用いて、無菌的であることを要する環境内の表面を被覆することができる。例えば、前記ポリペプチドを医療環境で用いることができる。前記ポリペプチドを用いて、病室を清潔に保つことができる。前記ポリペプチドを用いて、手術教室の装置(例えば手術台)の他に壁及び床の表面を清浄にすることができる。発明者らは、前記ポリペプチドは、一般的に無菌性の改善に有用であろうと考える。
本ポリペプチドは物体及び表面の洗浄溶液として処方することができる。例えば、前記は、生理学的溶液の日常的構成成分でありえる(例えば生理学的食塩水の成分として)。
実施例3は、本発明のポリペプチドがいかに良好にコンタクトレンズに付着するかを示している。したがって、本発明のペプチドは、それらが生物学的シナリオで用いられる物品又は表面に強力に付着することが示されたので非常に有用である。
本発明のポリペプチドを適用することができる物体及び表面の上記リストは網羅的なものではないことは理解されよう。したがって、前記ポリペプチドは、真菌又は原生生物に汚染されやすいいずれの表面(例えば台所及び浴室の表面)及び製品(例えば便座又は便器そのもの)にも適用することができる。
【0053】
好ましい実施態様では、前記ポリペプチドは、コンタクトレンズの保存に用いられる生理食塩水溶液に含有させることができる。
本発明の好ましいポリペプチドは強く正に荷電している。このことにより、前記ポリペプチドは、広範囲の真菌及び原生生物の増殖を防ぐために表面及び物体を被覆するために特に適切となる。実施例3並びに図3及び4は、本発明のポリペプチドが、いかに良好に種々の表面、すなわちガラス(カバースリップ)、前もってバイオマテリアルのポリ(ラクチド-コグリコリド)(PLGA)で被覆しておいたガラス、及びコンタクトレンズに付着するかをはっきりと示している。
好ましくは、物体又は表面の被覆は、本発明のポリペプチドにとって適切なpH及び温度の水溶液を調製することによって実施できる。物体又は表面は、適切な量のポリペプチドを前記表面に固定又は吸収させるために十分な時間、又は真菌も敷くは原生生物を殺滅させるために十分な時間、前記水溶液に暴露される。
本発明の第六の特徴の好ましい実施態様では、本発明のポリペプチドの十分に濃縮された溶液を調製し、被覆されるべき物体と適切な時間接触させる。当業者は、必要な濃度のポリペプチド溶液の作製の仕方を認識していよう。なぜならば、前記作製の仕方は、使用されるべき個々のポリペプチド及び処理されるべき真菌又は原生生物及び被覆されるべき表面に左右されるからである。例えば、物体を前記溶液(例えば約40μMの本ポリペプチドを含む)に挿入し、約20℃で約15分放置することができる。本ポリペプチドに暴露した後、前記物体を、例えば適切な緩衝液(例えばPBS)中で洗浄することができる。物体を洗浄緩衝液に一晩放置することが要求されるかもしれない。洗浄後、ポリペプチドは物体に付着されており、前記防御ポリペプチドで被覆された物体は直ちに使用することができる。
【0054】
本発明の第七の特徴にしたがえば、本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチドで少なくとも部分的に被覆されたコンタクトレンズが提供される。コンタクトレンズの表面に適用されたポリペプチドは、使用者の眼に感染を生じさせえる真菌及び/又は原生生物汚染を防止する。
ある実施態様では、レンズは使い捨て1日レンズ(すなわち1日装着されその後廃棄される)でありえる。この事例では、レンズの使用前及びパッケージから取り出すときに真菌又は原生生物汚染が回避される。したがって、レンズはポリペプチドで前処置されるか、及び/又はポリペプチド含有溶液中に梱包することができる。前記ポリペプチド被覆レンズは、コンタクトレンズが装着されている間に使用者に起こりえる真菌感染の可能性を少なくする。
また別には、レンズは数ヶ月又は数年間毎日繰返し装着することができるが、取り出して洗浄し一晩溶液に保存される。このような事例では、レンズのポリペプチド被覆(第一回目の使用の前)及び/又は好ましくはレンズ洗浄溶液でのポリペプチドの使用によって、レンズが装着されている間に生じる使用者の真菌又は原生生物感染の可能性、又はレンズ保存中及び一晩の洗浄中のレンズの汚染の可能性は顕著に低下するであろう。
【0055】
また別の実施態様では、レンズは長期間装着レンズであってもよい。前記は長期間にわたって、例えば2日以上、数日、1週間、若しくは1ヶ月、又はそれより長い期間、定常的に眼に装着される。そのようなコンタクトレンズの使用者は真菌又は原生生物感染を起こす危険性が高い。したがって、この事例では、最初の使用の前にポリペプチドを用いてレンズを被覆することができる。そのような被覆レンズを使用することによって、そのような長期間にわたってレンズを装着している間に、真菌又は原生生物感染が発生する可能性は大きく低下するであろう。
好ましい実施態様では、コンタクトレンズは本発明のポリペプチドで被覆され、さらに適切な場合には、レンズは前記ポリペプチドを含む溶液で保存及び/又は洗浄される。
本発明のポリペプチド又は誘導体又は類似体の活性を高める物質を“間接的に”用いて前記のポリペプチド、誘導体又は類似体の活性を高めることができることは理解されよう。したがって、本発明の第八の特徴にしたがえば、真菌及び/又は原生生物感染の治療用医薬として使用される、本発明の第一、第二又は第三のポリペプチド、誘導体、又は類似体の生物学的活性を高めることができる物質が提供される。
本発明のポリペプチド、誘導体、又は類似体の生物学的活性を高めることができる物質は、多くの手段によってそれらの作用を達成することができる。例えば、そのような物質は、前記ポリペプチド、誘導体又は類似体の発現を高めることができる。あるいは、そのような物質は、例えば前記ポリペプチド、誘導体又は類似体の転換を低下させることによって、生物学的な系で本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体の半減期を高めることができる。
【0056】
発明者はさらに、本発明のいくつかのポリペプチド又は物質を組み合わせて、広域の真菌又は原生生物感染/汚染を(ウイルス及び細菌感染/汚染とともに)予防又は治療することができることを明らかにした。例えば、好ましくは、本発明の第一、第二又は第三の特徴のいずれかのポリペプチド(例えばMU4、MU7、MU10又はMU114から成る群からそれぞれ独立して選択されるポリペプチド)を組み合わせて真菌又は原生生物感染/汚染を予防又は治療することができる。しかしながら、ポリペプチドの異なる組合せを用いて異なる真菌又は原生生物感染を治療することができることは理解されよう。
さらにまた、本発明のポリペプチド及び物質は、保存料として使用することによって又は保存料と併用して、真菌又は原生生物による汚染又は前記の増殖を最小限にするか、予防又は処置することができる。したがって、前記ポリペプチドおよび物質を食品の保存料として使用することができる。さらに、前記ポリペプチド及び物質を、抗生物質及び他の抗真菌剤/抗原生生物剤を補完又は代用するために用いて、培養物中(例えば組織培養操作において)の真菌又は原生生物の増殖を最小限にするか又は予防することができる。さらにまた、前記ポリペプチドを診断薬としての選別剤として、例えば培地中の真菌又は原生生物増殖のために用いることができる。例えば、第一のポリペプチドを培養液に添加し(第一のポリペプチドは第一の真菌に対して特に活性を有する)、さらに第二のポリペプチドを前記培養液に添加することができる(第二のポリペプチドは第二の真菌に対して特に活性を有する)。同様な方法を用いて原生生物を診断することができよう。
【0057】
本発明のポリペプチド、類似体又は誘導体は、生物学的細胞によって有利に発現させることができる生成物の代表である。したがって本発明はまた、第九番目の特徴において、本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチド、誘導体又は類似体をコードする核酸配列を提供する。
本発明の第九番目の特徴の好ましい核酸は以下から成る群から選択することができる:配列番号:56(cttcgtaaacttcgtaaacgtcttctt)、配列番号:57(cgtcttactc gtaaacgtggtcttaaa)、配列番号:58(cttcgtaaacgtcttcttcttcgtaaacttcgtaaacgtcttctt)、配列番号:59(caatctactgaagaacttcgtgttcgtcttgctagtcatcttcgtaaacttcgtaaacgtcttctt)、配列番号:60(cttcgtgttcgtcttgctagtcatcttcgtaaacttcgtaaacgtcttcttcgtgatgctgatgatcttcaaaaacgtct tgctgtttatcttcgtgttcgtcttgctagtcatcttcgtaaacttcgtaaacgtcttcttcgtgatgctgatgatcttcaaaaacgtcttgctgtttat)、配列番号:61(cttcgtaaacttcgtaaacgtcttcttcttcgtaaacttcgtaaacgtcttctt)、配列番号:62(tggcgtaaatggcgtaaacgttggtggtggcgtaaatggcgtaaacgttggtgg)、配列番号:63(tggcgtaaatggcgtaaacgttggtggcgtaaatggcgtaaacgttgg)、配列番号:64(tggcgtaaat ggcgtaaacgttggtggcttcgtaaacttcgtaaacgtcttctt)、配列番号:65(tatcgtaaatatcgtaaacg ttattattatcgtaaatatcgtaaacgttattat)、配列番号:66(cttcgtaaacttcgtaaacgtcttcgtaaacttcgtaaacgt)、配列番号:67(cgtcttactcgtaaacgtgg tcttaaacgtcttactcgtaaacgtggtcttaaa)、配列番号:68(cgtactcgtaaacgtggtcgtcgtactcgt aaacgtggtcgt)、配列番号:69(cttcgtaaacgtaaacgtcttcttcgtaaacgtaaacgtctt)、配列番号:70(cttcgtaaacgtaaacgtcttcgtaaacttcgtaaacgtaaacgtcttcgtaaa)、配列番号:71(tggcgttggcgtaaacgttggcgtaaatggcgttggcgtaaacgttggcgtaaa)、配列番号:72(MU4)(tggcgtaaatggcgtaaacgttggtggtggcgtaaatggcgtaaacgttggtgg)、配列番号:73(MU7)(tttcgtaaatttcgtaaacgttttttttttcgtaaatttcgtaaacgttttttt)、配列番号:74(MU10)(ttacgtaaattacgtaaacgtttattattacgtaaattacgtaaacgtttatta)、及び配列番号:75(MU114)(tggcgtaaatggcgtaaacgtttattattacgtaaattacgtaaacgtttatta)。
【0058】
好ましい核酸にはさらに、本発明の好ましいポリペプチドのいずれかをコードする、これらの対応するDNA分子が含まれる。
遺伝暗号の縮退の故に、本発明の核酸配列は天然に存在する配列(例えばアポB又はアポE遺伝子内の配列)から変動しえることは理解されよう(ただし、コドンが本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチド、その誘導体又は類似体をコードすることを条件とする)。
本発明のポリペプチド、誘導体及び類似体は、そのような分子をコードする核酸配列の細胞による発現を含む技術によって投与することが有利な薬剤であることは理解されよう。そのような細胞による発現方法は、前記ポリペプチド、誘導体及び類似体の治療効果が長期にわたって要求される医薬的利用に特に適している。
したがって、本発明の第十番目の特徴にしたがえば、医薬として使用される、先に述べた本発明の特徴の核酸配列が提供される。
第11番目の特徴にしたがえば、真菌及び/又は原生生物感染の治療用医薬の製造を目的とする、前記核酸の使用が提供される。
前記核酸は好ましくは単離又は精製された核酸配列であろう。前記核酸配列は好ましくはDNA配列であろう。
前記核酸配列はさらに、その発現を制御及び/又は強化することができる配列要素を含むことができる。前記核酸分子を適切なベクターに含ませて、組換えベクターを生成することができる。前記ベクターは、例えばプラスミド、コスミド又はファージでもよい。
そのような組換えベクターは、前記核酸で細胞を形質転換するためのデリバリー系として非常に有用である。
【0059】
組換えベクターはまた他の機能的配列要素を含むことができる。例えば、組換えベクターは、それが細胞内で自律的に複製するように設計することができる。この事例では、核酸の複製を誘導する配列要素が組換えベクターに必要とされるであろう。また別には、組換えベクターは、前記ベクター及び組換え核酸分子が細胞のゲノムに組み込まれるように設計することができる。この事例では、標的とされる組み込みに有利な(例えば相同組換えによる)核酸配列が所望される。組換えベクターは又、クローニング過程で選別可能マーカーとして用いることができる遺伝子をコードするDNAを含むことができる。
さらに前記組換えベクターはまた、必要に応じて遺伝子の発現を制御するためにプロモーター又は調節因子を含むことができる。
前記核酸分子は、治療される対象者の細胞のDNAに組み込まれる核酸であってよい(必ずしもというわけではないが)。未分化細胞が安定的に形質転換され、遺伝的に改変された娘細胞の産生をもたらすであろう(この事例では、例えば特別な転写因子又は遺伝子活性化因子による、対象者における発現の調節が要求されるであろう)。また別には、治療される対象者の分化細胞の不安定な又は一過性形質転換に有利なように、デリバリー系を設計することができる。この事例では、形質転換細胞が死んだときにDNA分子の発現が停止する又は(理想的には必要な治療効果が達成されたときに)前記タンパク質の発現を停止するので、発現の調節は前述の事例ほど重要ではない。
あるデリバリー系は、前記核酸分子をベクター内に組み込むことなく対象者に前記分子を提供することができる。例えば、前記核酸分子はリポソーム又はウイルス粒子内に取り込むことができる。また別には、“裸の”核酸分子を対象者の細胞に適切な手段(例えば直接的エンドサイトーシスによる取り込み)によって挿入してもよい。
核酸分子は、トランスフェクション、感染、マイクロインジェクション、細胞融合、プロトプラスト融合又は弾道ボンバードメント(ballistic bombardment)によって、治療されるべき対象者の細胞に導入することができる。例えば、導入は、被覆金粒子による弾道トランスフェクション、核酸分子を含むリポソーム、ウイルスベクター(例えばアデノウイルス)、及び核酸分子の直接適用による直接的核酸の取り込みを提供する手段(例えばエンドサイトーシス)によることができる。
本発明の実施態様を以下の実施例及び図面を参考にして例示により説明する。
【0060】
実施例
本発明者は多数の実験を実施して、本発明のポリペプチドの抗真菌活性及び抗原生生物活性を調べた。前記ポリペプチドの活性は、異なる多数の真菌(実施例1及び4)及び原生生物(実施例2及び5)に対して試験した。さらに、発明者は、多様な表面(例えばコンタクトレンズ、ガラス及びバイオマテリアル“PLGA”で被覆した表面)に付着し、それによって真菌又は原生生物汚染を防止する前記ポリペプチドの能力(実施例3)を調べた。
ペプチド
ペプチド(本発明のペプチドを含む)は業者(AltaBioscience、University of Birmingham)から凍結乾燥形態で入手した。これらは5マイクロモル規模で製造された。アミノ酸配列がいったん利用可能になったならば、ペプチド合成のために利用することができる標準的技術を当業者は熟知していよう。N-末端はアセチル基の付加によって保護し、C-末端はアミド基の付加によって保護した。少量のペプチドを無菌的エッペンドルフ管に秤量し、その後十分なPBSAを添加して0.4mMのストック溶液を作製し、これを小分けして-85℃で凍結した。
ペプチドの分子量は、フィンニガン(Finnigan)のLASERMAT 2000MALDI-飛行時間型質量分析装置、又はサイエンティフィックアナリシスグループ(Scientific Analysis Group)のMALDI-TOF質量分析計を用いてレーザー脱離質量分析によって確認した。ペプチドのHPLC精製は、バイダック(Vydac)の分析用C-4逆相カラムを用い、溶媒として0.1%TFA及び0.1%TFA/80%アセトニトリルを用いて実施するか、又はいくつかのペプチドについては、ACE C18逆相カラムを用い溶媒として0.05%TFA及び60%アセトニトリルを用いて実施した。GIN1pペプチドについての典型的な質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)トレース(純度>95%)は、図1及び2に示されている。
【0061】
実施例1:ペプチドの抗真菌活性を試験する実験
4つの化合物を水溶液(400μM)として供給した。コントロール(通常の抗真菌薬剤、アンフォテリシンB)の他に、各テストペプチドの段階稀釈物を調製した。アンフォテリシンBはInvitrogen又はMelford laboratoriesから入手した。
被検ペプチドは以下のとおりであった:
(i)MU4−WRKWRKRWWWRKWRKRWW(配列番号:9);
(ii)MU10−LRKLRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:8);及び
(iii)MU114−WRKWRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:26)。
【0062】
前記ペプチドの最初の試験は以下の生物に対して実施した:
(1)アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)AF293(菌株保存機関株NCPF7367)
(2)カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)6826(臨床単離株)
(3)フザリウム種(Fusarium spp.) 5889(臨床単離株)
(4)フザリウム種(Fusarium spp.) 6507(臨床単離株)
(5)アスペルギルス・テルレウス(Aspergillus terreus)(臨床単離株)
(6)アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)(臨床単離株)
(7)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(オックスフォード株。この株はMIC試験で用いられる標準参照株である)。
ペプチドの各々を用い、黄色ブドウ球菌をコントロールとして試験した。適切な増殖培養液中の各生物懸濁物をペプチド稀釈物に添加し、各ペプチドについては40μMから0.04μM、アンフォテリシンBについては64−0.025μg/mLの濃度範囲となるようにした。真菌株はRPMI培養液中で試験した。RPMIは標準的なロスウェルパーク記念研究所(Roswell Park Memorial Institute)培養液である(H.C. Morton (1970) A survey of Commercially Available Tissue Culture Media. In Vitro 6:89-108)。
黄色ブドウ球菌はイソセンシテスト(Isosensitest)ブロス中で試験した。イソセンシテスト寒天は、多くの病院の検査室によって、ディスク拡散法を用いる細菌のMICのために用いられている標準的なMIC培地である。参照標準はオキソイドCM471である。細菌のブロス稀釈アッセイ用の、ブロス型のCM473でもまた入手可能である。NCCLS 参照番号M7-A4。引用した両NCCLS法は標準的な方法である。
黄色ブドウ球菌の最終接種は5x104cfu/mLとした。C.アルビカンスの最終接種は2x103cfu/mLとした。アスペルギルス・フミガツス及びフザリウム種の最終接種は2x104cfu/mLとした。
カンジダ及び黄色ブドウ球菌プレートは24時間のインキュベーション後に読み取り、アスペルギルス及びフザリウム株は48時間後に読み取った。薬剤を含まないコントロールと比較したとき>80%の増殖低下をもたらす最少の薬剤又は化合物濃度としてMICを得た。
【0063】
表2:ペプチドの抗真菌効果

【0064】
表2から、ペプチドMU4は試験した4つの真菌種の全てに対して活性を有する被検ペプチドでもっとも活性が高く、さらに驚いたことに黄色ブドウ球菌(グラム陽性細菌)に対してもまた活性を有することが分かるであろう。ペプチドMU4はまたアスペルギルス・ニゲルに対してもまた活性を有する。しかしながら、MU4は(種々の抗真菌薬剤に耐性であることが知られている)アスペルギルス・テルレウスに対しては低い活性を示す。
MU10及びMU114もまた抗真菌活性を示したが、その程度はMU4よりは低い。しかしながらMU10及びMU114は、フザリウム5889に対して抗真菌活性を示した。前記ペプチドの活性は、アスペルギルス種に対するよりもフザリウム種に対してより高い活性を有するという点で驚くべきものである。
結論
標準的な抗真菌検査法を用いたとき、本発明のペプチドは抗真菌活性を有することが示された。さらに驚いたことには、ある程度の抗細菌活性もまた存在する。ペプチドMU4は、アスペルギルス・フミガツス、アスペルギルス・ニゲル及びフザリウム種に対して特に強力である。他のペプチド(MU10及びMU114)はMU4よりも活性は低いが、なお抗真菌活性を示す。
【0065】
実施例2:ペプチドの抗原生生物活性を試験する実験
マイクロタイタープレートアッセイ法を用いて、テスト化合物をアカントアメーバ種の臨床単離株の栄養型に対してスクリーニングした。前記生物はアカントアメーバ・ポリファーガであった(使用した株及び方法論の詳細については以下を参照されたい:R. Hughes and S. Kilvington (2001) A comparison of hydrogen peroxide contact lens disinfection systems and solutions against Acanthamoeba polyphaga. Antimicrob Agents Chemother, 45:2038-2043)。アカントアメーバ・ポリファーガRos株をこの実験を通して使用した。最初この株は、1994年の英国のアカントアメーバ角膜炎の未発表症例から単離された。
マイクロタイタープレートアッセイの使用により、最少アメーバ栄養型殺滅濃度(MATC)及び最少栄養型抑制濃度(MITC)の決定が可能になった(最少アメーバ栄養型殺滅濃度(μg/mL)=栄養型によるチャレンジ(1x10-4)を殺滅する最低濃度であり、最少栄養型抑制濃度(μg/mL)=栄養型の集団の約50%の分裂を停止させるか又は死滅させる最低濃度)。続いて前記値を用い、殺滅時間実験に使用する薬剤濃度を選択して、アカントアメーバ殺滅カイネティクスを調べることができる。
被検ペプチドは以下のとおりであった:
(i)MU4−WRKWRKRWWWRKWRKRWW(配列番号:9);
(ii)MU7−FRKFRKRFFFRKFRKRFF(配列番号:15);
(iii)MU10−LRKLRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:8);及び
(iv)MU114−WRKWRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:26)。
【0066】
表3:ペプチドの抗原生生物効果

MITC=最少栄養型抑制濃度(μM)
MATC=最少アメーバ栄養型殺滅濃度(μM)
NR=MITCが認められなかったので記録していない
【0067】
結論
表3を参照すれば、MU4は、アカントアメーバ・ポリファーガの殺滅でもっとも低いMITC及びMATCを有し、もっとも強い抗原生生物活性を示すことが分かる。MU7及びMU114は、MATCがそれぞれ93.1及び98.8であり、アカントアメーバ・ポリファーガに対し良好な活性を示した。最後にMU10もまた、MATCが207.1であり抗原生生物活性を示した。
【0068】
実施例3:抗真菌/抗原生生物ポリペプチドによる医療装置の被覆
本発明のポリペプチドを用いて、真菌又は原生生物で汚染され易い医療装置を被覆することができる。そのような医療装置の例にはレンズ、カテーテル、ステント、創傷治療包帯及び避妊具が含まれる。前記ポリペプチドはまた、医療環境における表面(手術教室で使用される装置の表面を含む)にも適用することができる。本発明の発明者らは、本発明のポリペプチドはコンタクトレンズ、ガラス及びバイオマテリアル“PLGA”で被覆した表面に付着することを示した。
表面の被覆は、個々のポリペプチドについて適切なpH(例えばpH7.4)でポリペプチドの濃縮水溶液(例えば200μM)を調製することによって実施することができる。続いて、表面を適切な温度(例えば37℃)の前記水溶液に十分な時間(例えば2時間)暴露し、適切な量のポリペプチドを前記の表面に固定又は吸着させる。
本発明のペプチドをバイオマテリアル又は他の表面に固定させることができるか否かを試験するために、本発明者らはGIN1pの蛍光標識形を入手した(Advanced Biomedical, Oldham, UK)。この標識ポリペプチドの40μMストック溶液をPBSで調製し、その250μLを24ウェルマイクロタイターのウェルに加えた。続いて発明者らはこれらのペプチド溶液にいくつかの材料を静置した。前記材料は以下のとおりであった:(i)ジョンソンアンドジョンソンのアキュビュー(Acuvue)コンタクトレンズ;(ii)裸のガラスカバースリップ;又は(iii)バイオマテリアルのポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (PLGA)で先に被覆しておいたカバースリップ(被覆スライドはProf. Jian Lu(Department of Physics, University of Manchester)から提供された)。
ペプチド溶液中で20℃にて15分間インキュベートした後、前記材料を取り出し、続いて1mLのPBSに静置することによって洗浄した。さらに、前記材料を蛍光顕微鏡(Chroma 35002v2フィルターセット装着オリンパスIX70倒立顕微鏡を使用)で調べ、結果を写真により記録した。続いて、前記材料を1mLのPBSでさらに2回洗浄し、最終的に25mLのPBSに37℃で一晩放置して浸漬した。各洗浄後に蛍光レベルを観察して記録した(上記のように顕微鏡観察及び写真撮影による)。
【0069】
図3を参照すれば、40μMのGIN1p(すなわちMU10、蛍光タグを用いて合成)で15分間処理し、続いて4回洗浄(25mLのPBSでの一晩の浸漬を含む)したジョンソンアンドジョンソンのアキュビューコンタクトレンズが示されている。図3(a)は、オリンパスIX70顕微鏡を用いた、白色光又はGFP蛍光による照明下での未処理レンズ及びGIN1p処理レンズ(4回洗浄後)を示す。したがって、反復洗浄後でさえも、図3(b)に示すように蛍光を肉眼でさえ見ることができるほどレンズは顕著な量のペプチドを保持する。画像は、キャノンEOS300Dデジタルカメラを用い、ISO1600フィルム設定及び蛍光画像については0.3秒露光で捕らえた。
図4を参照すれば、ガラスカバースリップ(BG)又はバイオマテリアルのポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)で先に被覆しておいたカバースリップが示されている(前記は40μMのGIN1p(蛍光タグを用いて合成)とともに15分間処理し、続いて4回洗浄した(25mLのPBSでの一晩の浸漬を含む))。蛍光レベルは、各洗浄後(W1、W2、W3及びW4)のサンプルについてオリンパスIX70顕微鏡を用いて観察した。したがって、蛍光レベルはいずれの洗浄後にも顕著には低下せず、ポリペプチドは表面領域に堅固に付着することが分かる。画像は、キャノンEOS300Dデジタルカメラを用い、ISO1600フィルム設定で5秒露光により捕らえた。
したがって、図3及び4は、3つの材料タイプの全てが徹底的な洗浄にもかかわらず類似レベルのGIN1pを保持するように見えることを示し、本ポリペプチドは多様な表面のコーティングに適切であることを示している(図1a及び図4に示すとおり)。特に、コンタクトレンズは、図3bに示すように、4番目の一晩洗浄後でさえも蛍光が裸眼で明瞭に見ることができるほど顕著な量の本ポリペプチドを(おそらくそれらの広い表面積のために)付着させることが判明した。
【0070】
結論
表2から、本発明のポリペプチドは、調査した一連の異なる6つの真菌の少なくとも1つ(2つでない場合及び3つでない場合)に対して抗真菌活性を示すことが分かるであろう。特に、MU4、MU10及びMU114は特に有効である。活性の最も高いものの一つはMU4であり、これはC.アルビカンス6862、アスペルギルス・フミガツス、フザリウム種 5889、フザリウム種6507、アスペルギルス・テルレウス及びアスペルギルス・ニゲルに対して活性を示す。
表3から、本発明のポリペプチドはまたアカントアメーバ・ポリファーガに対して抗原生生物活性を示すことが分かるであろう。特にMU4、MU7、MU10及びMU114は特に有効である。
MU4が真菌及び原生生物に対して顕著な活性を有したということは注目に値する。
本発明のこれらのポリペプチドの各々は、アポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来する。さらに、各ポリペプチドは直列反復であり、2つのRKRモチーフを含む。これらのデータは、本発明の直列反復が効果的な抗真菌剤及び抗原生生物剤であるという驚くべき特性を示している。
【0071】
実施例4:多数の真菌に対する抗真菌有効性
本発明者は、アポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質E由来のペプチドの拡張ライブラリーを調べることによって実施例1で実施した実験を拡張し、本発明のポリペプチドをさらに評価した。これらの実験は以下の真菌種を用いて実施した:
フザリウム・ソラニ1(Fusarium solani 1)(FS1);
フザリウム・ソラニ2(FS2);
フザリウム・ソラニ3(FS3);
フザリウム・ソラニ4(FS4);
アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus) 293(AF);及び
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(CA)。
FS1−FS4はブリストールPHLS(British Public Health Laboratory Service UK)から入手した。アスペルギルス・フミガツス293は、菌株保存機関株NCPF7367(National Collection of Pathogenic Fungi Public Health Laboratory, Mycological Reference Laboratory Myrtle Road, Kingsdown, Bristol BS2 8EL)として公に入手することができる。カンジダ・アルビカンスは標準的手段によって得た臨床単離株である。
各ペプチドについてのIC50値を決定するために用いた方法は、実施例1で述べたとおりである。約40μM以下のIC50値を良好な抗真菌活性と考えた。
表4はアポE由来のペプチドについてのデータを提供する。
【0072】
表4:6つの真菌種に対するアポE由来ペプチドのMIC値(>80%低下)

【0073】
表4では、MU1−MU20は、各L残基が別のアミノ酸で置換されたアポE141-149(MU10)をベースにしたペプチドの直列反復と対応することが理解されるであろう(MU1−MU9及びMU11−MU20)。本発明のポリペプチドは良好な抗真菌活性を提示し、被検真菌の少なくとも4つに対して40μMより小さいIC50値を有する。MU4、MU6、MU7、MU10、MU12、MU16及びMU18は特に有効な抗真菌ペプチドである。もっとも好ましいペプチドMU4はアンフォテリシンBに匹敵する活性を有する。表4は、アポE141-149をベースにしたペプチドの置換直列反復に基づく一連のペプチドで本発明のポリペプチドの定義から外れるものは本発明のペプチドと比較して有効性がないことを示す。
好ましいポリペプチドMU4(WRKWRKRWWの直列反復)は良好な抗真菌活性を有するが、前記のベースとなるモノマーMU45は有効ではない。このことは、アポE141-149の直列反復及びその誘導体(本明細書で定義されたもの)は驚くほど有効な抗真菌剤であることを示している。
表5は、アポBに由来するペプチドについてのデータを示す。
【0074】
表5:アポリポタンパク質由来ペプチドのMIC値

【0075】
表5から、(本発明のペプチドである)ペプチドMU27及びMU28は、評価した種々の真菌株の少なくとも5つに対して良好な抗真菌活性を示すことが分かるであろう。
MU25及びMU26は活性が低いことが分かるであろう。これらのペプチドは本発明のMU27及びMU28ペプチドと極めて類似するが、RKRモチーフが改変又は変更されている。
【0076】
実施例5:本発明のペプチドの抗マラリア効果
本発明のペプチドがマラリア原虫(plasmodium)のスポロゾイト(胞子虫体)による培養肝細胞感染の防止に有効であることを示し、それによって前記ペプチドがマラリアの予防及び治療に有効性を有することを示すために実験を行った。
方法
マラリア原虫のスポロゾイトの調製:3−5日齢のハマダラカ(Anopheles stephensi)を麻酔した、P.ベルゲイ(P. berghei)(NK65)感染スウィス・ウェブスターマウス(塗抹血液によって多数の配偶子母細胞期の寄生体について確認しておいた)を吸血させた。感染血液摂取後18から21日目に唾液腺のスポロゾイトを採集した。唾液腺の解剖前に、蚊を70%エタノールですすぎ、ダルベッコー改変イーグル培養液(Dulbecco's Modified Eagle Medium, DMEM)中で洗浄した。腺を穏やかに磨り潰し、80xgで3分遠心して蚊の残骸を除去し、スポロゾイトを血球計算器で数えた。
スポロゾイト生育アッセイ:Hepa1-6細胞(ATCC CRL-1830, American Type Culture Collection, Manassas, VA)(P.ベルゲイのスポロゾイトの生育を許容するマウス肝細胞の細胞株)をLab-Tekパーマノクスチャンバースライド(Nalgene Nunc Corp., Naperville, Il)に播種し(8x104細胞/ウェル)、コンフルエントになるまで増殖させた。実験の日に、スポロゾイトを蚊から切り出し、1%のBSAを含むダルベッコー改変イーグル培養液(DMEM; Invitrogen, Carlsbad, CA)と単独で、又は表示のポリペプチド(50μg)とともに1時間、28℃で前インキュベートし、さらに10%のウシ胎児血清を含むDMEM(完全培養液)中の前記細胞に阻害剤の継続存在下でプレートした。37℃で1時間後に、非付着スポロザイト及びポリペプチドを含む培養液を除去して完全培養液と交換した。40時間後に、細胞を冷メタノールで固定し、外赤血球期(EEF)をmAb 2E6で染色し(M. Tsuji, D. Mattei, R.S. Nussenzweig, D. Eichinger and F. Zavala. 1994, Demonstration of heat-shock protein 70 in the sporozoite stage of malaria parasites. Parasitology Research 80:16-21.)、続いてFITC結合抗マウス免疫グロブリンで染色した。各ウェルのEEF数をニコン蛍光顕微鏡で40xの対物レンズを用いて数えた。他の実験では、Hepa1-6細胞を完全培養液中で1時間、50μg/mLのポリペプチドで前処理し、洗浄し、続いてポリペプチドを含まない完全培養液中でスポロゾイトを加え、上記に概略したようにアッセイを続けた。
【0077】
結果
図5は、MU10及びMU4は両方ともP.ベルゲイのHep1-6細胞への侵入を阻害することを示している。細胞をこれらのペプチドで処理し、P.ベルゲイによる最終チャレンジ前に細胞培養液を用いて洗浄した追加実験では、MU4は、P.ベルゲイの侵入を阻止する能力を維持し、この化合物はこれらの細胞の表面に不可逆的に結合し、これによりその後の寄生体の侵入を防ぐことができることを示唆した。前記のげっ歯類モデルは、プラスモディウムの肝臓への侵入の研究に広く用いられており、ここで示した活性は、プラスモディウム・ファルシパルム(及び他のプラスモディウム種)の肝臓への侵入も同様に防止されえることをほぼ確実に意味する。
これらのデータは、本発明のペプチドをマラリア及び他の原生生物感染の治療に用いることができることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】典型的な質量分析データを示し、前記ペプチドが>95%の純度を有することを示している。
【図2】典型的なHPLCデータを示し、前記ペプチドが>95%の純度を有することを示している。
【図3】ジョンソンアンドジョンソンのアキュビュー(Acuvue)コンタクトレンズを示す。前記レンズは40μMのGIN1p(蛍光タグを有するシステイン残基を添加して合成した)で15分処理し、続いて4回洗浄したものである(実施例3で考察するように25mLのPBS中での一晩の浸漬を含む)。
【図4】ガラスのカバースリップ(BG)、またはバイオマテリアルのポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)で被覆しておいたカバースリップを示す。これらは、40μMのGIN1p(蛍光タグを有するシステイン残基を添加して合成した)で15分処理し、続いて4回洗浄したものである(実施例3で考察するように25mLのPBS中での一晩の浸漬を含む)。
【図5】本発明のペプチドによって仲介される、プラスモディウム種の肝細胞侵襲の抑制を示す:(A)細胞をプラスモディウム及びペプチドとともにインキュベートした;(B)実施例5で考察するように、細胞をプラスモディウムとともにインキュベートし続いてペプチドを添加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真菌感染及び/又は原生生物感染を予防又は治療する医薬の製造のための、アポリポタンパク質の硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来するペプチドの反復を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体の使用。
【請求項2】
ペプチドが、アポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ペプチドが、アポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターB又はアポリポタンパク質E LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ポリペプチドが少なくとも2つのRKRモチーフを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
ポリペプチドが、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7又はその誘導体の直列ダイマー反復を含み、前記配列において、RKRモチーフ以外の少なくとも1つのアミノ酸残基が、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)又はその誘導体によって置換されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
置換又は代用される残基が、前記ポリペプチドの第1番目、第2番目、第3番目、第7番目、第8番目、第9番目、第10番目、第11番目、第12番目、第16番目、第17番目又は第18番目の残基である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1つのアミノ酸置換がアルギニン(R)、フェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)残基、又はその誘導体である、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
ポリペプチドが下記式をもつ、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の使用:
{abcRKRxyz}+{a'b'c'RKRx'y'z'} (式I)
式中、
a及びa'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
b及びb'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
c及びc'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、スレオニン(T)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
x及びx'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、グリシン(G)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
y及びy'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてあり;
z及びz'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、システイン(C)から選択されるか、又は欠失されてある。
【請求項9】
ポリペプチドが少なくとも1つの追加アミノ酸を含み、前記追加アミノ酸はそれぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択することができ、さらに前記追加アミノ酸が、式Iのペプチド中で位置aのアミノ酸の前のN-末端に付加される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ポリペプチドが、ペプチドアポE141-149(配列番号:5)又はその変種の反復を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
直列反復が、トリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)置換からそれぞれ独立に選択される少なくとも2つの置換を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ポリペプチドが、配列配列番号:8−34のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
ポリペプチドが、アポBのHSPGレセプター結合領域由来のペプチドの反復を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
ポリペプチドがヒトのアポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来する、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
ポリペプチドが、アポB3359-3367(配列番号:6)又はその短縮型若しくは変種の反復を含む、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
ポリペプチドが、配列番号:36−55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、請求項13から15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
子嚢菌類感染の予防又は治療のための、請求項1から16のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項18】
アスペルギルス種、カンジダ種及びフザリウム種から成る群からそれぞれ独立に選択される真菌による感染の予防又は治療のための、請求項1から17のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項19】
肉質虫亜門の感染を予防又は治療するための、請求項1から18のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項20】
プラスモディウム種又はアカントアメーバ種による感染を予防又は治療するための、請求項1から19のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項21】
真菌感染及び/又は原生生物感染の予防及び/又は治療方法であって、そのような治療を必要とする対象者に、請求項1−16のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその誘導体若しくは類似体の治療的に有効な量を投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
真菌汚染及び/又は原生生物汚染を防止及び/又は処置する方法であって、その必要がある物体又は表面を、真菌又は原生生物の殺滅又は増殖防止に有効な量の、請求項1から21のいずれか1項に記載のポリペプチドで被覆することを含む、前記方法。
【請求項23】
医療装置、レンズ、コンタクトレンズ、カテーテル、ステント、創傷治療包帯、避妊具、外科用インプラント及び代用関節から選択される物体が被覆される、請求22に記載の方法。
【請求項24】
病院の病室表面、手術教室の表面、台所の表面及び公衆便所の表面から選択される表面が被覆される、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−546831(P2008−546831A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518952(P2008−518952)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002350
【国際公開番号】WO2007/000584
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(506203626)エイアイ2 リミテッド (6)
【Fターム(参考)】