説明

眼の表面潤滑の治療的補充及び強化

本発明は、眼の境界欠乏症、それに関連する症状、又は、眼の表面で眼の境界欠乏症に関連する又は原因となる望ましくない状態を治療するための製薬学的組成物、その使用方法を提供する。本発明の製薬学的組成物は、眼科治療に許容できる平衡塩類溶液の中でけん濁された、ヒトPRG4タンパク質、潤滑剤フラグメント、ホモログまたはそのアイソフォームを含む。本発明の製薬学的組成物は、局所投与のための製薬学的に許容されるキャリヤーの中に、眼科治療に許容できる粘滑剤、賦形剤、血管収縮剤、血管収縮剤、軟化剤、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸と表面活性リン脂質からなる群から選ばれる一つ以上の眼科治療に許容できる薬剤を含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2008年5月7日出願の米国仮出願第61/051,112号の利益を主張する。
【0002】
[発明の技術分野]
本発明は、眼の潤滑性の調節に関連するものである。詳細には、本発明は、角膜および結膜表面の潤滑性の欠乏により起こる疾患を治療するための製薬学的組成物、およびその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
プロテオグリカン4(proteoglycan 4(prg4))遺伝子は、巨核球刺激因子(Megakaryocyte Stimulating Factor)(MSF)、ルブリシン(lubricin)、及び、スーパーフィシャル・ゾーン・プロテイン(Superficial Zone Protein)(SZP)を容易にコード化する(1)。ルブリシンは、最初に滑液から分離されて、軟骨とガラスの界面で滑液に類似してイン・ビトロ(in vitro)での潤滑能力が示された(2)。ルブリシンは、後で滑膜線維芽細胞(3)の製品と確認されて、そのうえJayら(3−9)によって、ラテックス・ガラスの界面で、境界潤滑能力を有することが示された。940のアミノ酸(10)(エクソン6によってコード化される)の大きなムチンのような領域の中のOにリンクされたβ(1−3)Gal−GalNAcオリゴ糖は、部分的に、境界潤滑能力を考慮することがその後示された(8)。SZPは、最初に表面的な地帯から外植体軟骨の表面で局所化されて、馴化培地から単離された(11)。SZPも、軟骨ガラスの界面で潤滑能力を示した(12)。これらの分子は、集合的に、PRG4と呼ばれている。PRG4は、関節滑膜(58)、腱(13)と半月板(14)の表面に存在することも示された。そのうえ、生理的で病態生理学的濃度において、並べられた関節軟骨面の境界潤滑に貢献することが、PRG4について示された(59)。
【0004】
ヒトで屈指症−関節症−内反股−心膜炎症(CACP)症候群が引き起こされる変異によって、prg4の機能的な重要性は、示された。CACPは、内反股奇形、心膜炎症と胸水と共に、屈指症、非炎症性関節症と肥大性滑膜炎によって現れる(15)。また、PRG4−ヌル・マウスにおいて、軟骨悪化と以降の関節不全は、観察された(16)。したがって、PRG4発現は、健康な滑膜関節の必要な成分である。
【0005】
PRG4はムチン族のメンバーである。そして、それは通常、上皮裏の上で豊富で、多くの機能(潤滑と微生物(17)を侵略することからの保護を含む)を提供する。分子間ジスルフィド結合(18)を通してマルチマーを形成する専門グリコシレーション・パターンとその能力で、ムチンの機能的な特性は通常、測定される。そして、その両方は慢性疾患(例えば嚢胞性線維形成(喘息))(17)で変えられる。滑液から単離される(2、19)PRG4の生物化学的性質は、潤滑特性に影響すると見られる、O−グリコシレーションにおける分子多様性を示した(8)。近年、ウシ滑液から単離される(2、19)PRG4は、C末端(20)の不対のシステインに加えて、N末端基及びC末端の両方で、保存されたシステインの豊富なドメインにより示唆されるように、単量体形態に加えて、スルフィド結合ダイマーとして存在することが示されてきた。
【0006】
滑膜関節のような組織において、潤滑の物理化学的なモデルは、流体膜若しくは境界潤滑として区分されて来た。機能している潤滑は、関節組織上への垂直力及び接線力に依存し、これらの表面間の接線方向の動きの相対比率に依存し、そして、荷重と運動の両方の時間履歴に依存する。摩擦係数μは、定量的測定尺度であり、そして垂直力に対する接線摩擦力の相対比率として定義される。流体が仲介する潤滑モデルの1つは、流体静力学である。荷重の開始時及び典型的に長く続く時間、軟骨の中の間質液は、この組織の二相性の性質ため加圧さる。そして、液はまた浸出メカニズムにより関節面同士の間の凹凸へと押し込まれる。加圧された間質液及びトラップされた潤滑だまりは、従って、せん断力に対して殆どない抵抗力をもってして垂直荷重を支持することに大変貢献してよく、非常に低いμを容易になす。また、荷重及び/又は運動の開始時に、搾り膜、流体力学的なまた弾性流体力学的な流体膜潤滑は、加圧、運動、及び、変形作用により、相対的運動状態にある2つの面の間の隙間を通して及び/又はその隙間から粘性のある潤滑剤を駆動するために、生じる。
【0007】
境界潤滑に対して流体圧/膜が生じる関連性のある程度は、古典的に要因の数に依存する(31)。潤滑膜が、弾性的に変形可能で、重なり合うすべる表面同士間を流れることができるとき、弾性流体潤滑が生じる。圧力、表面粗さ、相対的な滑り速度は、完全な流体潤滑が壊れ始め、潤滑が新たな体制に入るのが何時であるかを決定する。更に速度が減少すると、間接表面に付着する潤滑膜が寄与するようになり、潤滑の混合体制(混合潤滑)が生じる。もし速度が更に減少し、数分子からなる超薄潤滑層が残ると、境界潤滑が生じる。潤滑の境界モードは、従って、相対滑り速度及び軸方向の荷重のような、流体膜の形成に影響する要因からは不変であるような定常滑りの間、摩擦係数(相対的な運動状態にある2つの接触表面間の測定される摩擦力と課される垂直力の比)によって示される(35)。間接軟骨に対して、流体圧や他のメカニズムによって補完されるが、境界潤滑はきっと生じると結論付けられてきた(36−39)。
【0008】
境界潤滑においては、荷重は表面体表面の接触により担持され、そして、関連する摩擦特性は、潤滑剤の表面分子によって決まる。このモデルが反対側に位置する対向する軟骨層の総面積の〜10%超において接触し、これが摩擦の殆どが生じるところであるので、このモデルが重要であると提案されてきた(30)。更に、荷重時間の増加と静水圧の消失により、潤滑剤で覆われた表面は、加圧流体に対して次第に高くなる荷重の分担を支え、その結果として、この状態がだんだんと支配的になる(31,32)。境界潤滑は、本質的に、スティック・スリップを軽減し(31)、従って、定常運動と運動の開始との両方に対する抵抗を低減する。後者の状態は、長く続く圧縮荷重(例えば、インビボにおいて、座っている又は立っている)の後、荷重支持関節表面に関係している(33)。典型的な軟骨表面(34)の磨耗パターンは、また軟骨表面の境界潤滑が関節面の構造の保護と保持に対して極めて重要であると示唆している。
【0009】
荷重時間の増加と流体力学的圧力の散逸に伴い、潤滑された表面は、加圧された液体に対して相関的に段々に高くなる比率で荷重を支持する。その結果、μはこの潤滑モードにますます左右されるようになる。境界潤滑モードは、例えば、相対的すべり速度と軸方向の力のような、流体膜の形成に影響するファクターに依存しない定常すべりの間のμの値によって示される。境界潤滑は、本質的に、スティックスリップを軽減し、従って、定常運動及び運動開始の両方に対する抵抗を減少させるようになる。
【0010】
滑液の中の及び関節面でのPRG4の蓄積は、PRG4の境界潤滑能力の重要な機能的な決定要素でありそうである。近年では、PRG4の重要な、3倍の分泌が、自由腫脹または静的に圧縮した培養(27)と比較して、培養軟骨外植体のダイナミックな剪断荷重から生じることが示された。生理的レギュレータが存在する、ホメオスタシスで病理学的状況では、軟骨細胞によるこのPRG4合成と分泌は、滑液の内でPRG4の濃度に、かなり貢献することができた(23)。表面に結合するPRG4の量が分泌率と相関するように見えないが、特に機械的な動揺(26、27)の影響を受けて、表面結合PRG4が滑液(25)で内因性PRG4で交換することができることを、前の研究は示唆する。関節の内のPRG4代謝の時空間面の説明は、特に関節面で、関節軟骨の低摩擦係数に対するPRG4の貢献の理解を進めて、おそらく、この機能(40、41)の喪失を防止するための治療につながる。処理について、異なる分子量のいろいろなPRG4分子の潜在的にさらなるであるか代替機能について、決定されるべきものがより多くの残りと(10、27、28、61)。さらに、潤滑で生理活性で機能的である表面で孤立した亜細胞(29)から組織設計された軟骨をつくることに、関節面の近くで軟骨細胞のPRG4発現を刺激する化学的で機械的な要因の組合せは、役立つであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
生物学的界面での境界潤滑の正確なメカニズムは現在のところわかっていない。しかしながら、プロテオグリカン4(PRG4)は関節ジョイントにおける境界潤滑としての重要な役割を果たしているであろう。この分泌される糖タンパク(glycoprotein)は、摩擦力、細胞粘着、及び、タンパク質の沈着に対して、関節表面を保護すると考えられている。さまざまな天然及び遺伝子組み替えルブリシン蛋白及びアイソフォーム(isoforms)が分離され特徴付けられている。例えば、米国特許第5,326,558号、6,433,142号、7,030223号および7,361,738号は、ヒト巨核球刺激因子(human megakaryocyte stimulating factors)(MSFs)の系統そして血小板の減少のような病状または疾患を治療するための1又はそれ以上のMSFを含む製薬学的組成物を開示している。米国特許第6,960,562号及び6,743,774号はまた、MSFの純粋なフラグメントを実質的に含む、潤滑性のポリペプチド(polypeptide)やトリボネクチン(tribonectin)を開示し、また、トリボネクチンを全身的に投与することにより又は組織に直接投与することにより関節を潤滑する方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、様々な実施例において、眼の表面の境界潤滑分子を治療的な補充及び潤沢を含む、眼の潤滑性を管理するのため、製薬学的組成物及びその使用方法を提供する。本発明のある実施例に記述されていることから、マウスの涙腺及びマイボーム腺のみならず、人の角膜および結膜上皮細胞においてPRG4 mRNAが発現する―このことはPRG4タンパク質が上記眼の表面においてこれらの組織に存在することを示唆するが―ということが観察される。本発明のある実施例に記述されていることから、PRG4タンパク質は、眼瞼のまばたき、コンタクトレンズの着用、及び、他の望ましくない条件において発生する重大なせん断力から角膜や結膜を守る働きをすることが観察される。膜の組成や機能に与える、炎症、炎症性サイトカイン、性ステロイド不均衡、及び、プロテアーゼのインパクトを含む涙液膜のインパクトは、境界潤滑性を促進する眼の組織に対する治療コースを暗示する。本発明は、様々な実施例において、眼の表面の境界潤滑分子を治療的な補充及び潤沢を含む、眼の潤滑性を管理するのため、製薬学的組成物及びその使用方法を提供する。
【0013】
ある実施例において、本発明は、治療的に有効な濃度のPRG4タンパク質(PRG4 protein)からなる眼の表面への局所適用に適する製薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、また、眼科治療に許容可能な粘滑薬、眼科治療に許容可能な賦形剤、眼科治療に許容可能な収斂剤、眼科治療に許容可能な血管収縮剤、眼科治療に許容可能な軟化剤からなる群から選択される1またはそれ以上の眼科治療に許容可能な薬剤を含むことが出来る。
【0014】
本発明において考慮される眼科治療に許容可能な粘滑剤の例は、制限されることなく、カルボキシメチルセルロースナトリウム(carboxymethylcellulose sodium)(例えば、約0.2から2.5%w/v)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose)(例えば、約0.2から2.5%w/v)、ヒプロメルロース(hypromellose)(例えば、約0.2から2.5%w/v)、メチルセルロース(methylcellulose)(例えば、約0.2から2.5%w/v)、デキストラン70(dextran 70)(例えば約0.1%w/v)、ゼラチン(gelatin)(例えば約0.01%w/v)、グリセリン(glycerin)(例えば約0.2から1%w/v)、ポリエチレングリコール300(polyethylene glycol 300)(例えば、約0.2から1%w/v)、ポリエチレングリコール400(polyethylene glycol 400)(例えば、約0.2から1%w/v)、ポリソルベート80(polysorbate 80)(例えば、約0.2から1%w/v)、プロピレングリコール(propylene glycol)(例えば、約0.2から1%w/v)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)(例えば約0.1から4%w/v)、ポビドン(povidone)(例えば、約0.1から2%w/v)を含む。本発明において考慮される眼科治療に許容可能な賦形剤/軟化剤の例は、制限されることなく、水ラノリン(anhydrous lanolin)(例えば約1から10%w/v)、ラノリン(lanolin)(例えば約1から10%w/v)、軽油(light mineral oil)(例えば、約50%w/v以下)、鉱油(mineral oil)(例えば約50%w/v以下)、パラフィン(paraffin)(例えば約5%w/v以下)、ペトロラクタム(petrolatum)(例えば約100%w/v以下)、白色軟膏(white ointment)(例えば約100%w/v以下)、白色ペトロラクタム(white petrolatum)(例えば約100%w/v以下)、白色ワックス(white wax)(例えば約5%w/v以下)、黄色ワックス(yellow wax)(例えば約5%w/v以下)を含む。本発明において考慮される眼科治療に許容可能な収斂剤の例は、制限されることなく、硫酸亜鉛(zinc sulfate)(例えば約0.25%w/v)を含む。本発明において考慮される眼科治療に許容可能な血管収縮剤の例は、制限されることなく、塩酸エフェドリン(ephedrine hydrochloride)(例えば約0.123%w/v)、塩酸ナファゾリン(naphazoline hydrochloride)(例えば約0.01から約0.03%w/v)、塩酸フェニレフリン(phenylephrine hydrochloride)(例えば、約0.08から約0.2%w/v)、及び、塩酸テトラヒドロゾリン(tetrahydrozoline hydrochloride)(例えば約0.01から約0.05%w/v)を含む。
【0015】
これらの実施例のいくつかにおいて、粘滑薬、賦形剤、収斂剤、血管収縮剤、軟化剤、及び、電解質は、PRG4誘導化合物(inducing compound)及びPRG4タンパク質を、眼科治療的に許容な様式において、送達(deliver)する手段を提供する。眼科治療に許容可能な組成物は、投与により許容不可の眼に対する毒性、灼熱感、かゆみ、かすみ等を欠いているならば、眼の表面への局所投与に適している。
【0016】
ある実施例において、本発明の製薬学的組成物は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、及び、リン脂質を限ることなく含む、追加の治療的薬剤の1又はそれ以上を治療有効濃度において、更に含んでいる。典型的なリン脂質は、L−α−ジパルミトイルフォスファジルコリン(L−a−dipalmitoylphosphatidylcholine)、ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)、及び、スフィンゴミエリン(sphingomyeli)を含むが、これに限定されるものではない。
【0017】
ある実施例において、本発明は、塩化ナトリウム(sodium chloride)(NaCl)0.64%、塩化カリウム(potassium chloride)(KCl)0.075%、塩化カルシウム二水和物(calcium chloride dihydrate)(CaCl・2HO)0.048%、塩化マグネシウム六水和物(magnesium chloride hexahydrate)(MgCl・6HO)0.03%、酢酸ナトリウム三水和物(sodium acetate trihydrate)(CNaO・3HO)0.39%、クエン酸ナトリウム二水和物(sodium citrate dehydrate)(CNa・2HO)0.17%、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)及び/又は塩酸(hydrochloric acid)(PHを約7.5に調製)からなる、浸透度が約300mOsms/Lを、限定することなく、含む少なくとも3つの電解質からなる眼科治療に許容可能な平衡塩類溶液にけん濁された、治療有効濃度のPRG4タンパク質を含む、眼の表面への局所投与に適する製薬学的組成物を提供する。
【0018】
ある実施例において、本発明は、約128mMのナトリウム(Na)、約24mMのカリウム(K)、約113mMの塩素(Cl)、約0.4mMのカルシウム(Ca2+)、約0.3mMのマグネシウム(Mg2+)、約5mMのHCO3−、約1mMのクエン酸塩、約14mMのリン酸塩、約15mMの酢酸塩、及び、浸透度約300mOsms/Lの塩酸及び/又は水酸化ナトリウム(PHを約7.5に調製)を含む、眼科治療に許容可能な平衡塩類溶液にけん濁された、治療有効濃度のPRG4タンパク質を含む眼の表面への局所投与に適した製薬学的組成物を提供する。
【0019】
本発明は、更に、必要とする個人において眼の潤滑性の欠乏又はそれに伴う症状を治療する方法を提供する。本発明の方法は、治療有効濃度のPRG4タンパク質を含む製薬学的組成物を、必要とする個人の眼の表面への局所的に投与する工程を含む。ある実施例において、本発明の製薬学的組成物は、例えば、PRG4タンパク質を含み、眼科治療に許容可能な粘滑薬、眼科治療に許容可能な賦形剤、眼科治療に許容可能な収斂剤、眼科治療に許容可能な血管収縮剤、眼科治療に許容可能な軟化剤からなる群より選択される1又はそれ以上の眼科治療に許容可能な薬剤を含む眼科治療に許容可能な構成物と組み合わせて投与されるものである。
【0020】
いくつかの実施例において、上記に論じたように、治療有効濃度のヒアルロン酸ナトリウム、又は、ヒアルロン酸、又は、上記説明した表面活性リン脂質を含む、眼科治療に許容可能な溶液と組合せて、PRG4タンパク質を含む製薬学的組成物を投与される。更に、ある実施例において、PRG4タンパク質を含む製薬学的組成物は、リン酸緩衝生理食塩水または上記説明したように1またはそれ以上の電解質を含む眼科治療に許容可能な平衡塩類溶液と組み合わせて投与される。
【0021】
本発明は、アンドロゲン欠乏症(androgen deficiency)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、乾性結膜炎(keratoconjunctivitis sicca)(KCS)のような、眼の境界ループに涙がないまたは涙膜が不安定であるためにおこる、眼の潤滑性の欠乏またはそれに関連する症状を治療する方法を提供する。そのような方法は、本発明の製薬学的組成物を、必要とする個人の眼の表面に局所的に投与する工程を含む。
【0022】
ある実施例において、本発明は、更に、好ましくない又は欠乏する眼の潤滑に関連する状態に取り組み、それを治療する方法を提供する。病状の例としては、限定されることなく、涙液欠乏性(aqueous)若しくは蒸発性ドライアイ(evaporative dry eye disease)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、乾性結膜炎(keratoconjunctivitis sicca)、アンドロゲンの欠乏(androgen deficiency)、マイボーム腺の疾患(meibomian gland disease)、エストロゲン補充療法(estrogen replacement therapy)、コンタクトレンズの装着(contact lens wear)、屈折矯正手術(refractive surgery)、アレルギー(allergy)、短縮された涙膜破壊時間(reduced tear film breakup time)、アレルギー(allergy)、眼表面障害(ocular surface disorders)、増加する眼の表面及び涙膜中のプロテアーゼ・レベル(increased protease levels in the tear film and at the ocular surface)、慢性炎症(chronic inflammation)、高浸透度(hyperosmolarity)、及び、加齢(aging)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、眼の表面の境界潤滑内でのフィードバック・ループを説明する。
【0024】
【図2】図2は、ヒト角膜上皮細胞におけるPRG4 mRNA発現を説明する。ヒト角膜上皮細胞は、男性及び女性のドナーの角きょう膜の端から分離された。増幅検体は、アジレント2100バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)を使用してPRG4産生物の存在を求めてスクリーニングされた。縦レーンは:L.分子量ラダー(MW ladder)、1.テンプレート無しコントロール(No template control)、2.33歳の女性からの角膜組織、4.70歳の女性からの培養した角膜上皮細胞、6.53歳の男性からの培養した角膜上皮細胞である。
【0025】
【図3】図3は、ヒト結膜上皮細胞におけるPRG4 mRNA発現を説明する。ヒト角膜上皮細胞は、男性及び女性のドナーの角きょう膜の端から分離された。増幅検体はアガロースゲル電気泳動を使用してPRG4産生物の存在を求めてスクリーニングされた。縦レーンは:1.分子量ラダー(MW ladder)、2.テンプレート無しコントロール(No template control)、4.ヒト女性結膜(Human female conjunctiva)、5.ヒト男性結膜(Human male conjunctiva)である。
【0026】
【図4】図4は、ヒトの角鞏膜(corneoscleral)の縁組織サンプルにおいて、PRG4 mRNA発現を説明する。L.ヒト角膜上皮細胞が女性ドナーの角鞏膜の端から単離された。増幅検体は、アジレント2100バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)を使用してPRG4産生物の存在を求めてスクリーニングされた。縦レーンは、分子量ラダー(MW ladder)、1.ヒト肝臓cDNAスタンダード(cDNA standard)、2.24歳女性の角きょう膜端組織、3.51歳女性の角きょう膜端組織、4.ヒト結膜上皮細胞、である。
【0027】
【図5】図5は、ヒト結膜捺印細胞診検体におけるPRG4 mRNA発現を説明する。結膜捺印細胞診検体は、男性及び女性ドナーから単離された。増幅検体は、アジレント2100バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)を使用してPRG4産生物の存在を求めてスクリーニングされた。縦レーンは:L.分子量ラダー(MW ladder)、1から9.結膜の印象の細胞学上のサンプル(Conjunctival impression cytology samples)、10.ヒト結膜上皮細胞の繰り返し(Repeat of human conjunctival epithelial cells)(図3のレーン4)である。
【0028】
【図6】図6は、概略摩擦試験を例示する。角膜眼表面(605)は、不活性な非浸透性半硬式のゴム・プラグ・シリンダー(603)(半径r=6mm)の球状端に固定された。底の関節面を作っている機械的試験機(ボーズELF3200)の回転アクチュエータに、プラグ・シリンダー(603)は、付けられた。アニュラス(601)(外半径=3.2mm、内半径=1.5mm)は、まぶた(604)から叩かれた。軸方向荷重(N)とねじれ(fN)ロードセルに接続されるリニア・アクチュエータに、アニュラス(601)は付けられ、上の関節面を形成した。プラグ・シリンダー(603)のまわりに不活性なチューブを固定することによって、潤滑剤バス(602)は形成された。ωは角周波数である。
【0029】
【図7】図7は、PRG4タンパク質(ルブリシン)の添加による、イン・ビトロ(in vitro)瞼/角膜動摩擦の減少を示す。
【0030】
【図8】PRG4タンパク質(ルブリシン)の添加の1分後に測ったイン・ビトロ(in vitro)ふた/角膜の動摩擦の減少を、図8は示す。
【0031】
【図9】PRG4タンパク質(ルブリシン)の添加の5分後に測ったイン・ビトロ(in vitro)ふた/角膜動摩擦の減少を、図9は示す。
【0032】
【図10】図10は、PRG4タンパク質(ルブリシン)の添加に続いて、時間とともにイン・ビトロ(in vitro)瞼/角膜動摩擦の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[本発明の詳細な説明]
ここである実施例において、眼の潤滑性の欠乏(例えば、眼の境界潤滑欠乏)、又はそれに伴う症状を、治療有効濃度のPRG4タンパク質を含む製薬学的組成物を必要とする個人に対して眼の表面に局所投与する工程を含む、製薬学的組成物、治療方法が提供される。ここでいくらかの実施例において、眼科治療に許容可能調製のPRG4タンパク質を含む製薬学的な組成物が提供される。いくつかの具体的な実施例において、眼科治療に許容可能な平衡塩類溶液中にけん濁された治療有効濃度のPRG4を含む、眼の表面への局所投与に対して適切な製薬学的組成物が提供される。そして、眼科治療に許容可能な粘滑材(demulcent)、眼科治療に許容可能な賦形剤(excipient)、眼科治療に許容可能な収斂剤(astringent)、眼科治療に許容可能な血管収縮剤(vasoconstrictor)、眼科治療に許容可能な軟化剤(emollient)からなる群から選択される眼科治療に許容可能な薬剤の1又はそれ以上と組合せてもよいであろう。
【0034】
ここである実施例において、眼の表面における眼の潤滑性の欠乏(例えば、低下した又は望ましくないような眼の境界潤滑欠乏)を治療するための製薬学的組成物と、それを使用する方法が提供される。本発明のある実施例の製薬学的組成物は、眼の粘滑薬、賦形剤、収斂剤、血管収縮剤、及び、軟化剤からなる群より選択される1又はそれ以上の眼科治療用の薬剤と組合せて、眼科治療に許容可能な平衡塩類溶液中にけん濁された、単離された又は精製されたPRG4タンパク質を含む。いくつかの実施例において、ここで提供される如何なる製薬学的組成物も、ヒアルロン酸ナトリウム、表面活性リン脂質、及び、局所投与のための眼科治療に許容可能なキャリヤ中の電解質からなる群から選択される1又はそれ以上の付加的な治療上の薬剤を更に含む。
【0035】
本発明は、ある実施例において、眼の表面の境界潤滑分子を治療的な補充及び潤沢を含む、眼の潤滑性を管理するために、新規なアプローチを提供する。眼の表面の潤滑性の重要性及び作用機構は、眼科領域(ophthalmic community)内で、これまで認識されてこなかったことは注意すべきである。何年もの間、整形外科の研究領域内での科学的コンセンサスは、流体潤滑が関節軟骨のための潤滑のもっとも有力なモードであり、境界潤滑は補足に過ぎなかった。さらに、軟骨表面の潤滑を研究しているそれらの研究者たちは、境界潤滑は、おそらく高い荷重と低い速度下で重要であり、そしてこのことは、相対的に低い軸荷重と相対的に速いすべり速度の眼の表面の状態とは異なるであろうと示唆する。例えば、(54)参照。さらに、境界角膜の糖衣(corneal glyocalyx)に関する境界潤滑は今まで考えられていなかった。Jayらは、角膜上皮は、潤滑性の源でありまた境界潤滑は眼の表面で重要な役割を担うという可能性を検閲して、ウシの関節液から精製された潤滑因子と“ヒト顎下(腺)唾液及び刺激された涙”から得た粘液性の“グリコプロテイン(糖タンパク)とを比較し”、“涙腺により分泌される(粘液成分である)ムチン(mucin)は、潤滑しない”と結論した。例えば、(55)参照。最近の涙膜力学の数学的モデルは、“角膜の粘液層が、水性フィルムに対して滑らない表面を提供するように取られ得”、そして、”モデルは、そのモデルが破損する臨界的に薄い値に涙膜厚さが到達する前までの展開を単に予測するだけであることに留意されるべきである”ように、涙膜の高さに対する“潤滑近似”を主張しつつ、境界潤滑の可能性を無視している。例えば、(57)参照。
【0036】
限定することのない例として、涙液欠乏性ドライアイ(aqueous dry eye disease)、蒸発性ドライアイ(evaporative dry eye disease)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、乾性結膜炎(keratoconjunctivitis sicca)、アンドロゲンの欠乏(androgen deficiency)、マイボーム腺の疾患(meibomian gland disease)、エストロゲン補充療法(estrogen replacement therapy)、コンタクトレンズの磨耗(contact lens wear)、屈折矯正手術(refractive surgery)、アレルギー(allergy)、短縮化された涙膜破壊時間(reduced tear film breakup time)、アレルギー(allergy)、眼表面障害(ocular surface disorders)、眼の表面及び涙膜の増加したプロテアーゼ・レベル(increased protease levels in the tear film and at the ocular surface)、慢性炎症(chronic inflammation)、高浸透度(hyperosmolarity)、加齢(aging)含む、ここで述べられる望ましくない条件から発生する大きなせん断力に対して、眼の潤滑を何とかして、角膜や結膜を保護する必要がある。
【0037】
いくつかの例において、角膜及び結膜の荷重については、せん断力の方が支配的になり易い。ある例では、まぶたの瞬きは、コンタクトレンズ磨耗と同様に眼の表面上皮細胞にかなりのストレスを引き起こす、そしてこのことは、損傷涙膜の存在において特にあてはまる。図1に示すように、せん断応力の上昇は、涙膜の不安定化、蒸発による涙の減少、高浸透度、腫脹圧迫の変化、及び、せん断応力のフィードバック上昇の原因となることが示唆される。いくつかの例において、上昇したせん断応力はまた、炎症、アンドロゲンの欠乏、及び、プロテオグリカンの発現の減少を促進すると考えられる。ある例においては、上昇したせん断力とその続発症は、時間とともに、眼の表面の境界潤滑の損失につながるであろう。
【0038】
眼の潤滑性の欠乏とそれに伴う症状は、ある適切な方法で決めることが出来る。いくつかの例では、眼の潤滑性の欠乏とそれに伴う症状は、定性的な(例えば、潤滑性が低いと感じる、ドライアイ、不快など)又は定量的な(例えば、機械的、生化学的、電気的、光学的な又は他の定量アッセイで測定する)何れかの方法で規定される。
【0039】
ある例では、涙液欠乏性ドライアイ、蒸発性ドライアイ、シェーグレン症候群、乾性結膜炎、アンドロゲンの欠乏、マイボーム腺の疾患、エストロゲン補充療法、コンタクトレンズ磨耗、屈折矯正手術、アレルギー、短縮化した涙膜破壊時間、損傷した涙膜、アレルギー、眼表面の損傷、眼の表面および涙膜のプロテアーゼ・レベルの増加、慢性的炎症、高浸透度、及び、加齢などが原因となって起こる眼の表面潤滑にとって望ましくない条件において、損傷涙膜が存在するであろう。これらの状態の中には、増加する蒸発量は、効率的な流体膜潤滑を妨げるかもしれないが、しかし細胞表面でのせん断応力を低下させるために分子の犠牲メカニズム及び境界潤滑を可能にする。本発明のある実施例は、眼の表面で境界潤滑分子の治療的調節、補充、及び、濃縮が、眼の表面の境界潤滑の欠乏に伴う好ましくない状態が眼の表面の損傷を促進するフィードバック・ループを中断することを提供する。
【0040】
ある例において、そしてここで、PRG4タンパク質が境界潤滑剤として目で重要な役割を果たすことを提供する。ある例において、この選択されたグリコプロテイン(糖タンパク)は、瞬きの間、コンタクトレンズの装着時、そして、ドライアイ疾患、アンドロゲンの欠乏、エストロゲン補充療法、損傷涙膜、アレルギー、加齢、眼の表面の疾患、及び、涙膜と眼の表面でのプロテアーゼレベルの増加が原因で起こる慢性の炎症や高浸透度といった、他のいかなる望ましくない眼の境界潤滑を引き起こす大きなせん断応力に対して角膜及び結膜を保護ために眼の表面を守る。
【0041】
他の実施例において、本発明は、眼の境界潤滑に対する犠牲的メカニズムを特徴とし、それによって、表面結合受容体が可逆的に、1又はそれ以上のゲル形成又は界面活性剤の構造と結合する。いくつかの例において、ゲル形成又は界面活性剤の構造は、せん断時には分離し、それによって、せん断応力が上皮面に到達すること防止する(又は、到達するせん断応力を減少させる)。ある例において、過渡的なせん断事象に続いて、ゲル形成の又は界面活性剤の構造は、干渉されない平衡状態に戻ることが許され、表面結合受容体と再結合する。いくつかの実施例では、全体の構造はせん断中に分離可能である。ある例において、この平衡の熱力学は、増大するせん断規模により受容体からの放出の確率を高くすることができる。しかし、何れかの1つの接続は、強い可逆性があるであろう。
【0042】
現在の発明の1つの実施例において、眼科治療に許容される平衡溶液にけん濁されるPRG4タンパク質を含む製薬学的組成物は、PRG4タンパク質が関連する又は結合する、眼の表面に局所的に適用される。この実施例のある例において、眼の表面でのまぶたのまばたきの間に摩擦を減少させるために、眼の表面におけるタンパク質の吸着を防止するために、そして、涙膜の不安定性によって起こるドライスポットを減らすを減らすために、犠牲的メカニズムを確立し、涙膜の中で内因性タンパク質及びプロテオグリカンと相互作用することを許可された表面結合レセプターとして、PRG4は働く。
【0043】
現在の発明の別の実施例において、1又はそれ以上のヒアルロン酸及びリン脂質構造と組合せて、PRG4は局所的に適用され、眼の表面に結びつき又は結合する。この実施例のある例において、PRG4は、眼の表面において瞼の瞬きの間に摩擦を減少させ、眼の表面でのタンパク質の吸着を防ぎ、涙膜の不安定性が原因で起こるドライスポットを減らす犠牲的メカニズムを確立するために、内因的に供給されるヒアルロン酸及び/又はリン脂質と相互作用する表面結合レセプターとして作用する。この実施例において、ヒアルロン酸とリン脂質の構造は、せん断事象の間PRG4から離れる。さらに他の実施例において、全体の構造は、せん断応力が上皮に達しないようにせん断事象の間分離している。
【0044】
更に他の実施例において、PRG4の機能フラグメント、多量体(例えば、二量体、三量体、四量体など)、ホモログ又はオルソルグは、犠牲的なメカニズムにおいて表面受容体及び/又はゲル形成構造として作用する。PRG4のホモログ及び機能性フラグメントは、主要なムチン様KEPAPTT反復ドメイン内(within the central mucin−like KEPAPTT−repeat domain)でより少ない反復を備えるそれらと、グリコシル化された及び非グリコシル化されたフォームのタンパク質と、スプライス変異と、遺伝子組換えフォーム等を含む。定性的に、機械的に、光学的に、電気的に、又は、生化学的アッセイで測定すると、PRG4の潤滑性のフラグメントは、ヒトPRG4の眼に関する潤滑効果のうち少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は、95%を示す。
【0045】
ここで使われているように、用語「RG4」、「PRG4タンパク質」、又は、「プロテオグリカン4」タンパク質は、「ルブリシン」タンパク質という用語と相互交換可能に使われている。PRG4は、UCL/HGNC/HUGO ヒト遺伝子命名データベース(Human Gene Nomenclature data base)に対して受容されてきた用語である巨核球刺激因子(megakaryocyte stimulating factor)(MSF)、及び、表在性ゾーンタンパク質(superficial zone protein(SZP))を包含するように使用されている。PRG4又はルブリシン・タンパク質はここで用いられるように、如何なる単離された若しくは精製された天然由来の又は遺伝子組み替えのルブリシン・タンパク質、ホモログ、機能性フラグメント若しくはモチーフ、アイソフォーム、および/または、そのミュータントをも意味する。ある実施例において、単離され又は精製されたPRG4タンパク質は、ヒト天然の又は遺伝子組み替えのルブリシン・タンパク質のアミノ酸配列を含む。他の実施例において、単離された又は精製されたPRG4・タンパク質は、全長のPRG4タンパク質又はアイソフォームの一次構造(isoforms’ primary structures)をコード化するprg4遺伝子のエクソンによりコード化されたアミノ酸配列を含む。プロテオグリカン4(prg4)遺伝子は12のエクソンを含む。ここで使用されるPRG4タンパク質は、prg4遺伝子のエクソン1−12、より好ましくは、エクソン6−12、そして最も好ましくは、9−12でコード化されたアミノ酸配列を含む。
【0046】
ここで使われるように、PRG4タンパク質は今知られている、又は、後で説明する何れかのPRG4タンパク質である。ある実施例において、好ましいPRG4タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に提供される。PRG4タンパク質は、如何なる公知のPRG4タンパク質又はアイソフォームの一次のアミノ酸配列と、少なくとも60%のホモロジで、好ましくは75%のホモロジで、より好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%かそれ以上のホモロジで共有する。ある実施例において、好ましいPRG4タンパク質は平均50kDaから400kDaのモル質量であり、1又はそれ以上のPRG4タンパク質の生物的活性部分、又は、潤滑フラグメントのような機能フラグメント、又は、それの相同体を含む。
【0047】
ここで使われるように、PRG4タンパク質は、そのタンパク質の生物学的活性部分(biologically active portion)を含む。ここで使われるように、PRG4タンパク質の“生物学的活性部分”は、その蛋白のアミノ酸配列に対してかなり相同な、又は、そのタンパクのアミノ酸配列由来のアミノ酸配列を含む蛋白の機能フラグメントを含み、そして、そのアミノ酸配列は、全長のタンパク質より少ないアミノ酸を含み、少なくとも1つの全長タンパク質の活性が発現する。一般的に生物活性部分は、少なくとも1つのタンパク質活性を有する機能的ドメイン(領域)又はモチーフ(刺激)を含む。タンパク質の生物学的活性部分は、例えば、10、25、50、100、200またはそれ以上の長さのアミノ酸のポリペプチドである。ある実施例において、PRG4タンパク質の生物学的活性部分は、望ましくない又は低下した眼の境界潤滑を取り扱うため他の治療薬剤と共に、又は、その治療薬剤として単独で使用できる。
【0048】
いくつかの天然及び遺伝子組換えPRG4又はルブリシン・タンパク質の核酸及びアミノ酸配列、そしてPRG4タンパク質と様々なイソマーの特徴は、例えば、ターナーら(Turner et al.)の米国特許第5,326,558号、6,433,142号、7,030,223号、7,361,738号明細書、そしてジョイら(Jay et al)の米国特許第6,743,774号および6,960,562号に開示されている。フランネリーらの(Flannery et al.)米国公開特許第20070191268号明細書は、組換えPRG4又は本発明で有用なルブリシン分子を開示している。
【0049】
PRG4タンパク質の単離、精製、及び、遺伝子組換え発現のための方法は従来技術として本技術分野においてよく知られている。ある実施例において、前記方法は例えばPCR法又はRT−PCR法のような標準的な分子生物学の手法を用いてPRG4タンパク質又はイソマーをコード化しているmRNA及びcDNAをクローニングと単離することで開始する。PRG4タンパク質をコード化している単離されたcDNA又はイソマーはそれから発現ベクターへとクローンされ、そしてそれに遺伝子組換えPRG4タンパク質を産生するためのホスト細胞に転写されて発現される。
【0050】
ここで使われるときに、“組換え”とは、ポリヌクレオチド合成、又は、さもなければイン・ビトロ(in vitro)での操作(例えば”組換えポリヌクレオチド”)、細胞中の遺伝子産生物を産生するために組換えポリヌクレオチドを使う方法または他の生化学的方式、組換えポリヌクレオチドによりコード化されたポリペプチド(”組換えタンパク質”)を指す。“組換え”はまた、例えばPRG4遺伝子の活性ドメインおよび本発明のプライマーを使って増幅された核酸配列を含む融合蛋白の誘発又は構成的発現といった発現のために様々な情報源を表現カセット又はベクターへと配列を決定する様々なコード領域又はドメイン又はプロモータを有する核酸リガンドを包含する。
【0051】
ある実施例において、核酸でコード化されたPRG4タンパク質は、1又はそれ以上の突然変異、欠失、または組み込みが含まれる。そのような実施例において、核酸でコード化されたPRG4タンパク質は、核酸でコード化された野生型(wild type)PRG4タンパク質に対して、少なくとも60%ホモロジー、好ましくは、75%ホモロジー、より好ましくは、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は、それ以上のホモロジーである。
【0052】
ここで使われるように、用語”cDNA”は、逆転写酵素のような酵素によりcDNAへと転換され得る細胞又は有機体mRNAにおいて存在するmRNA分子に相補的なDNAを含む。ある実施例において、PRG4タンパク質をコード化しているcDNAは、従来技術としてよく知られているリアルタイムPCR(RT−PCR)法を用いてヒト角膜又は結膜上皮細胞で発現されるPRG4メッセンジャーRNA(PRG4 mRNA)から単離される。
【0053】
ここで使われるとき、用語「ポリヌクレオチド」、「核酸/ヌクレオチド」、そして「オリゴヌクレオチド」は、相互的に使用され、そしてある長さのヌクレオチドの多量体型であり、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの何れかであり、又は、その類似体である。ポリヌクレオチドは、周知のまたは周知ではない、何れの三次元構造を有してもよいし、何れの機能を果たしても良い。以下は、ポリヌクレオチドの限定的でない例である。遺伝子(gene)又は遺伝子フラグメント(gene fragment)、エクソン(exons)、イントロン(introns)、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボエンザイム、DNA、cDNA、ゲノムDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、如何なる配列の単離DNA、如何なる配列の単離RNA、核酸プローブ、及び、プライマーである。ポリヌクレオチドは、天然に存在するもの、合成物、組換え、又は、それらのうちの何れかの組み合わせでもよい。
【0054】
ポリヌクレオチドは、メチル基と結合したヌクレオチド及びヌクレオチド類似体のような修飾ヌクレオチドを含んでよい。もしあるのなら、ヌクレオチドの構造への修飾は、ポリマーのアセンブリの前後に分け与えられてもよい。ヌクレオチドの配列は、ヌクレオチドではない成分によって中断されることがある。ポリヌクレオチドは、例えばラベル(標識)成分と結合させることにより、重合の後さらに修飾してもよい。前記用語は二本鎖および単鎖分子も含む。ただし特定の又は必須でない限りは、本発明の何れの実施例は、二本鎖構造と二本鎖構造を作るために周知の又は予想される2つの相補的な単鎖構造のそれぞれをともに含む。
【0055】
ここで使われるように、用語”ポリヌクレオチド配列”は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット順の表記である。ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、そしてDNAのかわりに、ポリヌクレオチドがRNAのとき、チミンの場所にウラシル(U)の特定配列で構成される。このアルファベット順表記は、コンピュータにデータベースを入力できるし、例えば機能的なゲノム構造解析や相同性検索のような生物情報科学への適応のために使われることも可能である。
【0056】
ここで使われるとき、用語”遊離されたポリヌクレオチド/cDNA”は、ポリヌクレオチドの天然の発生源に存在するほかのポリヌクレオチド分子から分離されたポリヌクレオチド分子を含む。例えば、ゲノムDNAに関して、用語”遊離”は、ゲノムDNAが自然に結合する染色体から分離されたポリヌクレオチド分子を含む。好ましくは、”単離”ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドから誘導された有機体のゲノムDNAにおいて、ポリヌクレオチドの上下流に隣接する配列(すなわち、ポリヌクレオチドの5’と3’末端に位置する配列)から遊離している。例えば、様々な実施例において、本発明で使われているPRG4タンパク質をコード化している遊離ポリヌクレオチド分子は、そのポリヌクレオチドが誘導された細胞のゲノムDNA中のポリヌクレオチド分子の上下流に自然に隣接するヌクレオチド配列の約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb又は0.1kb少ないヌクレオチド配列を含む。更に、cDNA分子のような”単離”されたポリヌクレオチド分子は、組替え技術により生産されるときは他の細胞物質や培地を実質的に除外し、化学的に合成されるときは実質的に化学的前駆体や他の化学品を実質的に除外する。
【0057】
ここで使われている、「遺伝子(gene)」は、少なくとも1つの、転写及び翻訳された後、特定のポリペプタイドチド又はたんぱく質をコード化することができるオープン・リーディング・フレーム(読み取り枠)を有する、ポリヌクレオチドを含む。ここで説明されているポリヌクレオチド配列の何れも、それらが結合されている遺伝子の完全長コード配列表又はより大きいフラグメントを同定するためにも使用されてよい。より長いフラグメントの単離方法は、当業者に知られている。ここで使われるとき、「天然の又は天然に存在する(native or naturally−occurring)」ポリヌクレオチド分子は、例えば、天然に発生するヌクレオチド配列(例えば、天然のタンパク質をコード化した)RNA又はDNA分子を含む。
【0058】
ここで使われるように、用語「ポリペプチド(polypeptide)」又は「タンパク質」は取換可能であり、そして2又はそれ以上のアミノ酸サブユニット、アミノ酸類似体、又はペプチド模倣薬を含む。前記サブユニットは、ペプチド結合で結合されてもよい。ここで使われるように、用語「アミノ酸」は、天然の及び/又は天然でない又は合成アミノ酸の何れかを含み、グリシン(glycine)とD又はL光学異性体の両方、そしてアミノ酸類似体とペプチド模倣薬(peptidomimetics)を含む。3又はそれ以上のアミノ酸のペプチドは、共通にオリゴペプチドとして言及される。3又はそれ以上のアミノ酸以上のペプチド鎖は、ポリペプチド又はタンパク質として言及される。
【0059】
ある実施例において、PRG4タンパク質は、ここでPRG4タンパク質又は様々な相同体又はそのイソ型を指し、ヒト又は他のホスト細胞において自然に又は組換えで発現するものである。ここで使われている「発現する(express)」又は「発現(expression)」は、ポリヌクレオチドがRNA及び/又はポリヌクレオチドへと転写されたRNAに転写されるプロセスを含む。ポリヌクレオチドがゲノムDNAから誘導される場合、適当な真核生物宿主が選ばれるならば、発現はRNAのスプライシングを含む。発現のために必要とされる調節要素は、RNAポリメラ−ゼを結合するためのプロモーター配列とリボソーム結合のための転写開始配列とを含む。例えば、細菌発現ベクターは、ラック・プロモーター(lac promoter)のような、そして、開始コドンAUG及びシャイン・ダルガノ配列(Shine−Dalgarno sequence)の転写開始のためのプロモータを含む。同じように、真核細胞発現ベクターは、RNAポリメラーゼII(RNA polymerase II)、下流のポリアデニル化信号(downstream polyadenylation signal)、開始コドンAUG、及び、リボソーム(ribosome)の脱離のための終止コドン(termination codon)のための非相同又は相同のプロモーターを含む。そのようなベクターは、例えば一般的にベクターを構築するための以下に説明するようなに当技術分野においてよく知られた方法において記述される配列表によりアセンブルすることで、又は、商業的に入手することで得ることができる。ここで使われるように、用語ベクター灯は、ホスト細胞の中へ及び/又はホスト細胞の間へ挿入されたポリヌクレオチドを転写する自己複製核酸分子を含む。この用語は、細胞への核酸分子の挿入が主な機能であるベクターと、核酸の複製を主な機能とする複製ベクターと、及び、DNA又はRNAの転写及び/又は翻訳を主な機能とする発現ベクターとを含むように意図される。また、上記機能のうちの1以上を提供するベクターをも含むことを意図する。
【0060】
ここで使われるように、ホスト細胞灯は、ベクターに対する、又は外因性のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの組み込みに対する、受容体であり得る、又は、受容体であった、如何なる個別細胞又は細胞培養を含むことを意図する。それはまた、単細胞の子孫を含むことをも意図する。その子孫は、自然の、不測の、又は、計画的な変異のために起源の親細胞に対して完全に同定される(形態学的に、又は、ゲノム若しくは全DNA相補性において)必要はない。細胞は、原核又は真核細胞であってよく、そして限定されることなく、バクテリア細胞、酵母細胞昆虫細胞、動物細胞、そして哺乳類細胞、ネズミ科の動物、ラット、猿人類またはヒト細胞を含んでよい。ここで使われるように、ホスト細胞灯は、また遺伝的修飾細胞を含む。用語”遺伝的修飾細胞(genetically modified cells)”は、細胞又はその子孫の遺伝子型又は表現型を順に修飾するポリヌクレオチド配列又は外来遺伝子又は外因性遺伝子を含み及び/又は発現する細胞をもまた含む。遺伝的修飾細胞灯は、細胞内に導入されたポリヌクレオチド配列又は遺伝子を発現する又は含む細胞をまた含む。例えば、この実施例において、遺伝的修飾細胞は、その細胞に対して内因性である遺伝子を導入してきた。用語遺伝的修飾灯は、細胞の内因性のヌクレオチドに対する如何なる付加、削除、分裂も含んでいる。ここで使われるように、ホスト細胞は、ヒトPRG4タンパク質を発現する如何なる細胞もなり得る。
【0061】
ここで使われているように、「ホモログ(homologs)」は、それぞれ類似又は実質的に同一なアミノ酸配列又は核酸を有する2つのペプチド又は核酸としてここに規定される。用語「ホモログ(homolog)」は、遺伝コードの縮退のためヌクレオチド配列表の1つが異なる核酸分子をも更に含み、そして、そのようにして同一のアミノ酸配列をコード化する。好ましい実施例のうちの1つにおいて、ホモログは、PRG4タンパク質(例えば、SEQ ID NO:1)をコード化した核酸のアンタゴニスト(antagonists)、アゴニスト(agonists)、パラログ(paralogs)、オルソルグ(orthologs)、対立遺伝子多型(allelic variants)を含む。
【0062】
ここにおいて使用されるように、用語「オルソルグ(orthologs)」は、異なる種からの2つの核酸を意味するが、それらは、スペシエーション(speciation)によって、共通の祖先遺伝子から進化してきたものである。通常は、オルソルグは、同一又は類似の機能を持つペプチドをコード化する。特に、本発明のオルソルグは、如何なる知られたPRG4タンパク質(例えば、SEQ ID NO:1参照)、そのイソ型、又は、その類似体のアミノ酸配列の全て又は一部について、少なくとも80−85%、より好ましくは85−90%又は90−95%、そして、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、又は、99%の相同性、又は、100%の配列相同性を一般に示し、そして、それはこれらのペプチドと類似の機能を示すであろう。ここでまた使用されるように、用語「パラログ(paralogs)」は、ゲノム内での複製により関連付けられる2つの核酸を意味する。パラログは通常、異なる機能を有するが、これらの機能は関連するかもしれない。
【0063】
2つのアミノ酸配列表の百分率での配列同一性を決定するために、配列は最適な比較目的のために整列される(例えば、最適な配列のための1つのポリペプチドの配列においてギャップが、他方のポリペプチド又は核酸との関係で、導入され得る)。対応するアミノ酸位置におけるアミノ酸残基が、そこで、比較される。1つの配列における1つの位置が、他方の配列における対応する位置にあるのと同じアミノ酸残基によって占められるとき、その位置において分子は同一である。同じタイプの比較が、2つの核酸配列間で行われ得る。この2つの配列間の百分率配列同一性は、配列により共有される同一の位置の数の関数となる(即ち、百分率配列同一性=同一の位置の数/位置の総数x100)。好ましくは、本発明に含まれる単離されたアミノ酸ホモログは、如何なる知られるPRG4タンパク質の全アミノ酸配列に対して、少なくとも約50−60%であり、好ましくは少なくとも約60−70%であり、より好ましくは、少なくとも約70−75%、75−80%、80−85%、85−90%、又は、90−95%であり、最も好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、99%、又は、それ以上同一である(例えば、SEQ ID NO:1参照)。
【0064】
ある実施例において、PRG4タンパク質をコード化する単離された核酸ホモログは、そのようなPRG4タンパク質のアミノ酸配列をコード化する少なくともヌクレオチド配列に対して、少なくとも約40−60%であり、好ましくは少なくとも約60−70%であり、より好ましくは少なくとも約70−75%、75−80%、80−85%、85−90%、又は、90−95%であり、更により好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、又は、より以上に同一である
【0065】
2つの核酸またはヌクレオチド間のパーセント配列同一性の決定は本技術分野でよく知られている。2つの核酸又はペプチド配列の間の百分率配列同一性を決定するために、例えば、Vector NTI 6.0(PC)ソフトウェア・パッケージ(InforMax,Bethesda,MD)を用いることができる。この方法において、ギャップを空けるペナルティの15及びギャップを延ばすペナルティの6.66は、2つの核酸の百分率同一性を決定するために用いられる。ギャップを空けるペナルティの10及びギャップを延ばすペナルティの0.1は、2つのポリペプチドの百分率同一性の決定に用いられる。全ての他のパラメータは、デフォルトセッティングで設定されている。多重アライメント(Clustal W algorithm)の目的のために、blosum62 matrixでは、ギャップを空けるペナルティは10であり、ギャップを延ばすペナルティは0.05である。RNA配列に対してDNA配列を比較するとき、配列の同一性を決定する目的のために、チミジン・ヌクレオチドがウラシル・ヌクレオチドに相当することを理解すべきである。
【0066】
更に、ここに用いられるPRG4タンパク質は、厳格な条件下で、PRG4タンパク質をコード化するポリヌクレオチドに対してハイブリダイゼーションするポリヌクレオチドによりコード化されたPRG4タンパク質を含む。ここに用いられるように、「ハイブリダイゼーション(hybridization)」は、核酸残基の塩基間の水素結合を介して安定化される複合体を形成するように1又はそれ以上のポリヌクレオチドが反応する反応を含む。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対(Watson−Crick base pairing)、フーグスティーン結合(oogstein binding)、又は、他の如何なる配列−特定方式によって起きるかもしれない。複合体は、二重鎖構造を形成する2つのストランド、多−ストランド複合体を形成する3又はそれ以上のストランド、1つの自己ハイブリダイズ・ストランド、又は、これらの如何なる組合せを含む。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、又は、リボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断のようなより広範囲なプロセスにおける工程を構成するかもしれない。
【0067】
ハイブリダイゼーション反応は、異なる厳格な条件で行うことができる。本発明は、ここに記述されるPRG4タンパク質をコード化するポリペプチドに対して、緩和した厳格な条件下でハイブリダイゼーションをすることができる、より好ましくは、厳格な条件下でハイブリダイゼーションをすることができる、最も好ましくは、非常に厳格な条件下でハイブリダイゼーションをすることができる、ポリヌクレオチドを含む。ここに使用されるように、用語「厳格な条件(stringent conditions)」は、一晩、60℃で、10x Denhart’s solution,6xSSC,0.5%SDS、及び100mg/mlの変性サケ精子DNAの中でのハイブリダイゼーションを意味する。ブロット(Blots)は、30分毎に62℃で連続して、3xSSC/0.1%SDSで洗浄し、次に、1xSSC/0.1%SDSで洗浄し、最後に、0.1xSSC/0.1%SDSで洗浄した。ここでまた使用するように、ある実施例において、フレーズ「厳格な条件」は、65℃での6xSSC溶液中のハイブリダイゼーションを意味する。別の実施例において、「非常に厳格な条件」は、一晩、65℃で、10x Denhart’s solution,6xSSC,0.5%SDS、及び100mg/mlの変性サケ精子DNAの中でのハイブリダイゼーションを意味する。ブロット(Blots)は、30分毎に65℃で連続して、3xSSC/0.1%SDSで洗浄し、次に、1xSSC/0.1%SDSで洗浄し、最後に、0.1xSSC/0.1%SDSで洗浄した。当技術分野において、核酸ハイブリダイゼーションはよく知られている。従って、ここに用いられる核酸によってコード化されたPRG4タンパク質は、ヒトPRG4タンパク質(例えば、SEQ ID NO:1参照)又はその特定のアイソフォーム又はそのホモログをコード化するポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%の相同性(homology)を持ち、好ましくは75%の相同性を持ち、より好ましくは85%の相同性を持ち、更に好ましくは90%の相同性を持ち、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%の相同性を持つ核酸を含む。
【0068】
更に、ここに用いられるPRG4タンパク質はまた、キメラタンパク質又は融合タンパク質であり得る。ここに用いられるように、”キメラタンパク質(chimeric protein)”又は”融合タンパク質(fusion protein)”は、第2ポリペピチドに機能的に連結される第1ポリペプチドを含む。キメラタンパク質は、第1又は第2ポリペプチドに機能的に連結される第3、第4、又は第5、又は他のポリペプチドをオプションとして含んでもよい。キメラタンパク質は、2又はそれ以上の異なるポリペプチドを含んでよい。キメラタンパク質は、同じポリペプチドの複数のコピーを含んでよい。キメラタンパク質はまた、1又はそれ以上のポリペプチドにおいて、1又はそれ以上の変異を含んでよい。本発明のある実施例において、キメラタンパク質は、他のPRG4タンパク質のアイソフォームとPRG4タンパク質とのキメラである。
【0069】
ここに用いられるように、単離された(isolated)又は精製された(purified)タンパク質、ポリヌクレオチド、又は、分子が、それらが自然に生じる環境から取り除かれたことを意味し、又、タンパク質ポリヌクレオチド又は分子が誘導される細胞や組織からの他のコンタミとなるタンパク質のような細胞物質を実質的に含まないことを意味し、又、化学的に合成されるときは化学的な前駆体又は化学薬品を実質的に含まないことを意味する。言語「細胞物質を実質的に含まない(substantially free of cellular material)」は、対象物がその細胞から単離され、又は、その細胞から離れて組換え的に生産され、又は、その細胞から離れて合成される、その細胞の細胞構成要素から分離されて、その対象物が調製されることを含む。ある実施例において、言語「細胞物質を実質的に含まない」は、約30%(乾燥重量で)未満の他のタンパク質(ここで、「コンタミタンパク質」という)を含み、より好ましくは約20%未満の他のタンパク質を含み、更に好ましくは約10%未満の他のタンパク質を含み、そして、最も好ましくは約5%未満の他のタンパク質を含むことを意味する。タンパク質又はポリヌクレオチドが組換え的に生産されたとき、好ましくは実質的に培地を含まないことであり、即ち、その培地が、関心のあるタンパク質の調製された体積の約20%未満であり、より好ましくは約10%未満であり、最も好ましくは約5%未満である。
【0070】
ある実施例において、本発明は、1又はそれ以上の眼科治療に許容される薬剤と組合せて、眼科治療に許容される平衡溶液中にけん濁されるPRG4タンパク質の製薬学的に有効濃度ものを、必要とする個人の眼の表面に局所的に投与するための適切な薬学的組成物を提供する。眼科治療に許容される薬剤は、眼科治療に許容される粘滑薬、賦形剤、収斂剤、血管収縮剤、及び、軟化剤から選択され得る。ここで用いられるように、用語「効果的な濃度又は量(effective concentration or amount)」又は、「製薬学的に有効濃度又は量(therapeutically effective concentration or amount)」は、所望の治療効果を提供するために、毒性がないが十分な濃度又は量のPRG4タンパク質、又は、他の治療薬を意味する。有効な濃度又は量は、対象毎に変化し、年齢や個人の一般的な状態に依存し、特定の薬剤等による。従って、正確に効果的な濃度や量を特定することはいつもできるわけではない。しかしながら、如何なる個人のケースにおいて、適切な効果的な濃度や量は、ルーティンの実験を用いて当業者ならば決定することができる。更に、本発明の組成物又は投与形態に組み込まれる、PRG4タンパク質及び他の治療薬の正確な有効濃度や量は、治療的に有効な範囲にある量のPRG4タンパク質及び他の活性薬剤を送達できるように、濃度が溶液又は製剤を直ちに投与できるような十分な範囲内にある限り、重要ではない。
【0071】
ここに使用されるように、眼科治療に許容される粘滑剤、賦形剤、収斂剤、血管収縮剤、及び、軟化剤を含む眼科治療に許容される薬剤は、十分に連邦規則21CFR349において定義される。
【0072】
ここで使用されるように、用語「局所的な投与(topical administration)」は、PRG4タンパク質及び1又はそれ以上の眼科治療に許容される薬剤を含む組成物を眼に送達することを意味するという従来からの感覚において使用される。一般に、局所的な投与は、点眼剤又は目の洗浄のために液状の剤形により達成され、局所効果を提供する。
【0073】
ある実施例において、ここに記述される製薬学的組成物は、以下のものを含む、又は、上述した眼科治療に許容される薬剤は、以下のものである、又は、1又はそれ以上の以下のものを組み合わせて用いることができる。以下のものは次の通りである。カルボキシメチルセルロースナトリウム(carboxymethylcellulose sodium)(例えば、約0.2から2.5%w/v)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose)(例えば、約0.2から2.5%w/v)、ヒプロメルロース(hypromellose)(例えば、約0.2から2.5%w/v)、メチルセルロース(methylcellulose)(例えば、約0.2から2.5%w/v)、デキストラン70(dextran 70)(例えば約0.1%w/v)、ゼラチン(gelatin)(例えば約0.01%w/v)、グリセリン(glycerin)(例えば約0.2から1%w/v)、ポリエチレングリコール300(polyethylene glycol 300)(例えば、約0.2から1%w/v)、ポリエチレングリコール400(polyethylene glycol 400)(例えば、約0.2から1%w/v)、ポリソルベート80(polysorbate 80)(例えば、約0.2から1%w/v)、プロピレングリコール(propylene glycol)(例えば、約0.2から1%w/v)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)(例えば約0.1から4%w/v)、ポビドン(povidone)(例えば、約0.1から2%w/v)、硫酸亜鉛(zinc sulfate)(例えば、約0.25%w/v)、脱水ラノリン(anhydrous lanolin)(例えば、約1から約10%w/v)、ラノリン(lanolin)(例えば、約1から約10%w/v)、軽油(light mineral oil)(例えば、≦約50%w/v)、鉱油(mineral oil)(例えば、≦約50%w/v)、パラフィン(paraffin)(例えば、≦約5%w/v)、ペトロラクタム(petrolatum)(例えば、≦約100%w/v)、白色軟膏(white ointment)(例えば、≦約100%w/v)、白色ペトロラクタム(white petrolatum)(例えば、≦約100%w/v)、白色ワックス(white wax)(例えば、≦約5%w/v)、黄色ワックス(yellow wax)(例えば、≦約5%w/v)、塩酸エフェドリン(ephedrine hydrochloride)(例えば約0.123%w/v)、塩酸ナファゾリン(naphazoline hydrochloride)(例えば約0.01から約0.03%w/v)、塩酸フェニレフリン(phenylephrine hydrochloride)(例えば、約0.08から約0.2%w/v)、塩酸テトラヒドロゾリン(tetrahydrozoline hydrochloride)(例えば約0.01から約0.05%w/v)である。ある例において、ここで使用される百分率量は重量による百分率量である。
【0074】
更なる実施例において、1又はそれ以上の眼科治療に許容される上述した薬剤と組合せて、PRG4タンパク質を含む本発明の製薬学的組成物は、更に、治療有効濃度のヒアルロン酸(hyaluronic acid)又はヒアルロン酸ナトリウム(sodium hyaluronate)を、10−100,000μg/mLの範囲で、好ましくは、500−5,000mg/mLの範囲で含む。更に、本発明の製薬学的組成物は、1又はそれ以上の表面活性リン脂質を約10−10,000μg/mLの範囲で含む。そのような表面活性リン脂質は、限ることなく、L−α−ジパルミトイルホスファチジルコリン(L−α−dipalmitoylphosphatidylcholine)(DPPC)、ホスファチジコリン(phosphatidylcholine)(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)(PE)、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)(Sp)、又は、他の中性または極性脂質を含んでいる。
【0075】
本発明の製薬学的組成物は、如何なる許容可能な物質及び/又は当該技術分野において知られる如何なる1又はそれ以上の添加剤を含む、1又はそれ以上の製薬学的に許容できるキャリヤ又はビヒクルを更に含んでもよい。ここで使われるように、用語「キャリヤ」又は「ビヒクル」は、局所的な薬剤の投与に適切なキャリヤ材料を意味する。ここに有用なキャリヤ及びビヒクルは、毒性がなく、有害な態様でその組成物の他の成分と相互作用しない、当該技術分野において知られる物質の如何なるものも含む。本技術分野の当業者に知られる、種々の添加剤は、その組成物に含まれてよい。例えば、比較的に少ない量のアルコールを含む溶媒は、ある薬剤物質を可溶化するために使用されてよい。他のオプションとなる添加剤は、乳白剤、酸化防止剤、香料、着色剤、ゲル化剤、増粘剤、安定剤、界面活性剤等を含む。貯蔵により劣化することを防止するように、即ち、イーストやカビのような微生物の成長を阻止するために、抗菌剤のような他の薬剤がまた、添加されてよい。好適な抗菌剤は、典型的に、p−ヒドロキシ安息香酸(p−hydroxybenzoic acid)のメチル及びプロピルエステル(即ち、メチル及びプロピル・パラベン(methyl and propyl paraben))、安息香酸ナトリウム(sodium benzoate)、ソルビン酸(sorbic acid)、イミド尿素(imidurea)、及び、これらの組み合わせからなる群より選択される。浸透強化剤(permeation enhancers)、及び/又は、炎症軽減添加剤(irritation−mitigating additives)は、本発明の製薬額的組成物においても含まれてよい。
【0076】
ある実施例において、本発明の製薬学的組成物は、リン酸緩衝生理食塩水、又は、浸透的に平衡された塩溶液の涙液電解質のような、製薬学的に許容できるキャリヤ中において調製される。ここで、キャリヤは、1又はそれ以上の塩化ナトリウム(sodium chloride)(例えば、約44%から約54%のモル分率)、塩化カリウム(potassium chloride)(例えば、約8%から約14%のモル分率)、炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)(例えば、約8%から約18%のモル分率)、炭酸水素カリウム(potassium bicarbonate)(例えば、約0%から約4%のモル分率)、塩化カルシウム(calcium chloride)(例えば、約0%から約4%のモル分率)、塩化マグネシウム(magnesium chloride)(例えば、約0%から約4%のモル分率)、クエン酸三ナトリウム(trisodium citrate)(例えば、約0%から約4%のモル分率)、塩酸(hydrochloric acid)(例えば、約0%から約20%のモル分率)、又は、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)(例えば、約0%から約20%のモル分率)を含む。ある実施例において、製薬学的なキャリヤは、約150−200mMの範囲で、水溶性電解質溶液を生成するように調製され得る。軟膏、クリーム、ジェル、ペースト等のような、局所投与に適する、他の適切な製剤は、本発明においても熟慮される。ある実施例において、溶液を眼科治療に許容されるようにするために、PRG4と組合せたとき、電解質は適切な浸透圧の平衡を提供する。
【0077】
本発明は更に、必要とする個人において、減少した若しくは望ましくない眼の境界潤滑、それに関連する症状、又は、眼の潤滑における欠乏を生じさせる又は関連する状態を治療する方法を提供するが、その方法には、治療有効量のPRG4タンパク質を含む製薬学的組成物を必要とする個人の眼の表面に局所的に投与する工程が含まれる。一つの実施例において、本発明の方法は、1又はそれ以上の電解質を含む眼科治療に許容される緩衝塩溶液に、又は、リン酸緩衝生理食塩水にけん濁されたPRG4タンパク質の治療有効量を含む製薬学的組成物を局所的に投与する工程を含む。更に、別の実施例において、上記において論じたように、1又はそれ以上の追加の眼科治療に許容される薬剤を含む、眼科治療に許容される製剤において製剤されるPRG4タンパク質を含む製薬学的組成物を局所的に投与する工程を、本発明の方法は含む。
【0078】
ここに用いられるように、用語「対処する又は対処(treating or treatment)」は、症状の過酷さ及び/又は頻度における減少や、症状及び/又は根底にある原因の除去、症状及び/又は根底にある原因の発生の阻止、及び、ダメージからの回復又は改善を意味する。用語「対処する又は対処」はまた、感染し易い個人における疾患の阻止及び臨床的に症状を示す個人における疾患の治療の両方を包含する。
【0079】
ある実施例において、減少した眼の境界潤滑は、眼の境界ループにおける不安定な涙膜、又は、増加した蒸発による涙の喪失によって引き起こされる。そのような減少した又は望ましくなくなった眼の境界潤滑は、涙液欠乏性若しくは蒸発性ドライアイ症状、シェーグレン症候群、乾性結膜炎(KCS)、アンドロゲンの欠乏、マイボーム腺の疾患、エストロゲン補充療法、コンタクトレンズ装着、屈折矯正手術、アレルギー、短縮化した涙膜破壊時間、損傷した涙膜、アレルギー、眼表面の損傷、眼の表面および涙膜のプロテアーゼ・レベルの増加、慢性的炎症、高浸透度、及び、加齢に関連する。上記において論じたように、増加するせん断応力は、涙膜の不安定化を、蒸発による涙喪失を、高浸透度を、膨潤圧における変化を、そして、せん断応力におけるフィードバック・エレベーションを導く。増加するせん断応力はまた、炎症を、アンドロゲン欠乏症を、そして、プロテオグリカンの発現の減少を促進する。時間と共に、増加するせん断応力及びその後遺症は、眼の表面での境界潤滑の喪失を導く。従って、本発明は、眼の境界潤滑を防止又は増加するように、眼の表面のPRG4タンパク質のように、プロテオグリカンの発現の補充及び強化によりせん断応力を減少させる方法を提供する。
【0080】
本願を通して、種々の刊行物が参照された。これらの刊行物の全ての開示及びそれらの参照文献としてそれらの刊行物内で引用されたもの、それら全体を一体として、参照され、この願書に組み込まれるが、これにより、この発明が関連する分野の従来技術を記述するようにされる。
【0081】
上述したことは、本発明の好ましい実施例に関する、そして、多くの変化が本発明の範囲から離れることなくそこに成されてもよいことは理解されるべきである。本発明は、以下のサンプルによって更に解説されるが、それは、その範囲における限定を押付けるような意味に解釈されるべきではない。それどころか、種々の他の実施例、変更、及び、その均等の範囲は、記述を読んだ後で、添付されるクレームの範囲及び/又は本発明の精神から離れることなく、当業者に対して、それらを暗示するであろう。
【0082】
発明の他の特徴や有利な点は、以下の好ましい実施例の記述及びクレームから明らかとなるであろう。これら、及び、本発明の多くの他の変更や実施例は、添付の記述や例を見ることで当業者にとって明らかになるであろう。
【実施例】
【0083】
[実施例1]
ヒト角膜および結膜上皮細胞におけるPRG4 mRNA発現
【0084】
ヒト角膜上皮細胞は、男性及び女性のドナーの角きょう膜の端から分離された。細胞は直接処理するか(n=8)、またはフェノールレッドを含まない血清を含まないケラチン溶媒中であらかじめ培養した(n=2)。球角膜(n=2)、結膜圧痕の細胞学的検体(n=9)、培養後不死化したヒト角膜上皮細胞(n=1)、NODマウス涙腺(n=5成熟マウス/性、10腺/検体)、そしてBALB/cマウスマイボーム腺(n=7成熟マウス/性、28の瞼からの腺/検体)を外科的処置により得た。これらの検体は、あらかじめRT−PCR(n=ヒト18、全てのマウス)およびアフィメトリクス遺伝子チップ(Affymetrix GeneChips)(n=4ヒト角膜)用いてPRG4 mRNAの分析のために処理した。コンタミ(他のものが混在)している染色体DNAの増殖を抑える目的で、PRG4蛋白プライマーはPCR用に1kbp超のイントロン配列に測った(表1)。増殖検体はアガロースゲル電気泳動そしてアジレント2100バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)でPRG産生物の存在をスクリーニングした。単位複製配列の確認のため、角膜検体(n=2)のPRG産生物、角膜上皮細胞(n=1)そしてヒト肝臓スタンダード(n=1)は、マサチューセッツ眼科および耳科病院・視覚研究用DNA配列塩基配列研究センター(ボストン、MA)(the Massachusetts Eye and Ear Infirmary DNA Sequencing Center for Vision Research(Boston,MA))にて3100遺伝子分析器(3100 Genetic Analyzer)を用いて配列を決めた。結果データは、ジェンバンク(genbank)のデータベースBLASTnにて解析した。
【0085】
【表1】

【0086】
PRG4 mRNAは全てのヒト角膜と結膜上皮細胞そして圧痕細胞検体に存在した。PRG4 PCR産生物の同定は、DNA配列分析(表2)により確認した。結果はPRG4がヒト角膜と結膜上皮細胞で転写されていることを示した。
【0087】
【表2】

【0088】
[実施例2]
PRG4(ルブリシン(lubricin))の追加に伴うイン・ビトロでの摩擦の減少
【0089】
臨床的に関連した界面(例えば、眼の表面−まぶたと眼の表面−コンタクトレンズの界面)によるイン・ビトロ(in vitro)摩擦試験を、以下に記述する。人工涙の潤滑能力を量的に評価することができる臨床的に関連した方法は、現在欠いている。人工物による摩擦試験(例えば、ラテックスとガラス)又は眼ではない『生来の』表面(例えば、臍の緒静脈部分)による摩擦試験は、たぶん関節/瞬きの間に、起こる分子相互作用の全てでなく、いくつかを容易化するかもしれない。実際のところ、非組織界面で得られるデータの関連性は不明である。
【0090】
関節軟骨−軟骨界面で境界潤滑を研究することに、アニュラス−オン−ディスクの回転テスト構成は、理想的であることが示された。滑り速度と軸方向荷重を含む流体膜の形成に影響する要因で不変の動摩擦によって、潤滑の境界モードは示される。これは表面対表面接触が起こっているからである、そして、表面に縛られた分子は潤滑(減少性摩擦と磨耗によって)に貢献する。境界潤滑は、関節軟骨面と同様に、眼の表面で重要で操作できるメカニズムであるとわかった。したがって、関節軟骨−軟骨界面で境界潤滑を研究するために開発され特徴づけられたイン・ビトロ(in vitro)摩擦試験は、眼の表面−まぶたと眼の表面−コンタクトレンズの界面の研究のために変更された。
【0091】
境界潤滑が眼の表面−まぶたと眼の表面−コンタクトレンズの界面で支配的である試験条件を決定するために、軸方向荷重とスライドする速さの摩擦特性の依存性が、試験された。健常な新鮮なヒトの眼の表面(強膜の約3mmで切除された角膜)は、リオンズ・アイバンク・オブ・アルバータ(Lions Eye Bank of Alberta)から得られた。切除された角膜が4℃でOptisol−GS溶液に保管されて、2週以内に使われた。まぶた(60−80才の年齢)が、死後1−3日以内にカルガリ大学の臓器提供プログラム(Body Donation Program)から得られて、すぐに使われたか、使用まで長くても2週間食塩水で−20℃で保存された。比較例の潤滑剤は、ネガティブコントロールとしてレンズ・プラス・ステライル・セイリーン・ソルーション(Lens Plus Sterile Saline Solution)(アドバーンス・メディカル・オプティックス(Advance Medical Optics)、Systane(登録商標)潤滑剤点眼薬(Lubricant Eye Drops)(Alcon Laboratories)、リフレッシュ涙潤滑剤点眼薬(Refresh Tears Lubricant Eye Drop)(アラガン(Allergan))、Aquify(登録商標)長継続快適点眼薬(Long Lasting Comfort Drops)(チバビジョン(CIBA Vision))、そして、Blink(登録商標)涙潤滑剤点眼薬(Tears Lubricant Eye Drops)((アドバーンス・メディカル・オプティックス(Advance Medical Optics))から構成された。
【0092】
概略摩擦試験は、図6に示される。角膜眼の表面(605)は、強膜にスーパー接着剤を塗ることによって、不活性な非浸透性半硬式のゴム・プラグ・シリンダー(603)(半径r=6mm)の球状端に固定された。このように底の関節面を作っている機械的試験機(BoseELF 3200)の回転アクチュエータに、このプラグ・シリンダー(603)は、付けられた。アニュラス(601)(外半径=3.2mm、内半径=1.5mm)はまぶた(604)からパンチされて、軸方向荷重(N)とねじれ(fN)ロードセルに接続されたリニア・アクチュエータに付けられ、上の関節面を形成した。プラグ・シリンダー(603)のまわりに不活性なチューブを固定することによって、潤滑剤バス602は形成された。
【0093】
サンプルは食塩水で最初にテストされ、そして、3つのテスト潤滑剤のうちの1つにおいてテストされた。潤滑剤バスは約0.3mlで満たされた、そして、関節面が潤滑剤で平衡が保たれた。球面プラグが平らになるまで、サンプル面はゆっくり接触して、圧縮された(0.05mm/s)、そして、全ての環状まぶた面は角膜(605)と接触していた。結果として生じる垂直応力(軸荷重から計算され、MPa単位で表される。N/(π[router − rinner])は、生理的応力約5kPaを模倣するために、異なる剛性ゴム・プラグを用いることにより変化さっせることができる。テストシークエンスは、+4回転(rev)を回転させることによってサンプルをあらかじめ調整して、そして、生理的に関連した効果的線形滑り速度で、−4の回転でリセットした。veff=30mm/s(veff=ωReff。ωは、角周波数。Reff=2.4mm。環帯接触面積で分布するせん断応力を積分することにより計算される有効半径。)。サンプルは、+4回転だけ回転させることによってテストされ、直ちに、4のリセット回転が、veff=30、10、1、0.3、そして、30mm/sで行われた。12秒の滞留時間が各回転ごとに設けられた。テスト・シーケンスは、、逆方向回転で繰り返された。
【0094】
眼の表面の潤滑特性を評価するために、2つの摩擦係数(μ):μ=τ/(ReffN)。ここで、上述のように、τはトルク、Reffは有効半径、Nは軸荷重。静止摩擦係数μstaticは、移動開始時の抵抗を反映するが、回転開始の直ぐ後(10°以内)に、μのピーク値として計算された。平均動摩擦係数μkineticは、定常状態の移動に対する抵抗を反映するが、3および4回目の完全なテスト回転の間に平均かされたμから計算された。両μstatic及び<μkinetic>は、τ測定に及ぼす潜在的な方向の影響を考慮して、各テストにおいて、+及び−回転に対して平均が取られた。データは、20Hzの頻度で集められた。
【0095】
100−300ug/mLの範囲に濃度で角膜表面に加えられるルブリシン(PRG4)の結果は、図7に示される。ルブリシンは、まぶた界面において、全ての速度、動摩擦および静摩擦の両方によっても、摩擦低下効果があった。生理的ヒアルロン酸の1/10の濃度で、ルブリシンは、ヒアルロン酸を含むBlink(登録商標)涙潤滑剤点眼薬(Tears Lubricant Eye Drops)と同様であった。組合せにおいて、2つの潤滑剤は、何れか一方よりよい。
【0096】
Aquify(登録商標)点眼薬と比較して、ルブリシンの添加の後、最初の1分間に測ったイン・ビトロ(in vitro)での角膜/のふた動摩擦の減少を、図8は示す。潤滑剤は、テスト間で食塩水を使っている眼の表面から、完全に洗われた。シナジー効果(どちらか一方に対して、μkineticが減少)は、Aquify(登録商標)(ヒアルロン酸を含む)がルブリシンと組合せられたときに、明白になった。生理食塩水の繰返しは、最初の生理食塩水コントロールより低かった。これは、生理食塩水で洗った後でもルブリシンの効果の保持を示した。そして、分子が眼の表面と結合していたことを、ヒアルロン酸ナトリウム単独に比べて優れる保持時間をルブリシンは示したことを示唆する。
【0097】
Aquify(登録商標)点眼と比較して、ルブリシンの添加の後、5分間に測ったイン・ビトロ(in vitro)での角膜/のふたの動摩擦の減少を、図9は示す。シナジー効果(どちらか一方に対して、μkineticが減少)は、Aquify(登録商標)(ヒアルロン酸を含む)がルブリシンと組合せられたときに、明白になった。Aquify(登録商標)の摩擦係数は、5分後に、生理食塩水と統計的な等価なものに戻った。一方、ルブリシンは、ルブリシンとヒアルロン酸が組合されたときのように、より低く維持される。
【0098】
図10は、ルブリシンの添加に続いて、時間とともに動摩擦係数の減少を表す。また、継続的な減少は、眼の表面に結合を暗示した。
【0099】
[実施例3]
インビボ(in vivo)での眼の境界潤滑欠乏症の治療
【0100】
眼の表面の刺激を訴える患者は、McMonnies問診表で2つの肯定的な回答より多い症状を数えた場合、眼の表面疾患指標(Ocular Surface Disease Index(OSDI))で5点のスコアを超える、または視覚的アナログ尺度(Visual Analog Scale)におけるいくつかの症状の徴候により、(そして)涙膜破壊時間(10秒未満)、308mOsms/Lを超える下外側の涙液メニスカスのオスモル濃度、シルマー試験紙の結果値(10mmより小さい値)、フルオレセイン・ナトリウムの角膜または結膜染色法(スコアー0を超える。多数の点状染色有り)、結膜捺印細胞診による明らかな細胞残骸、断定できないがマイボーム腺の機能障害、コンタクトレンズが瞬き後に移動する割合の減少、圧力的な衝撃が連続的にかかった時におこるコンタクトレンズの時間的空間的に移動する機能の変化、瞬き後に干渉的におこる涙膜の弛緩率の減少、炎症性サイトカニン濃度の増加、ラクトフェリンまたはリソゾーム濃度の増加、または瞬き後の点広がり関数がお互いに干渉しないデコヒーレンス(decoherence)な状態の割合の増加、といった客観的兆候と組み合わせて、眼の境界潤滑および眼の境界潤滑の欠失に伴う症状を検査する。
【0101】
患者は、眼科治療に許容される平衡塩類溶液にけん濁されたPGR4タンパク質の200μg/mLを含む溶液を各眼の表面に1から2滴投与した。患者は10秒間目を閉じるように指示される。
【0102】
フォロー・アップの来診により、下外側の涙液メニスカスのオスモル濃度の低下(reduction in inferior lateral tear osmolarity)、涙膜破壊時間の増加、又は、他の上記した徴候を追跡できるであろう。特に、もし、オスモル濃度(tear film osmolarity)が異常値(およそ330mOsms/L)からより正常な値(およそ304mOsms/L)に低下した場合は、眼の表面の潤滑の治療的調節および補充は上手くいったとみなされるであろう。
【0103】
[参考文献]
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科治療に許容される平衡溶液にけん濁された治療有効濃度のPRG4を含む眼表面への局所投与に適切な製薬学的な組成物。
【請求項2】
請求項1の製薬学的な組成物であって、更に、1又はそれ以上の眼科治療に許容される薬剤を含み、該薬剤が、眼科治療に許容される粘滑剤、眼科治療に許容される賦形剤、眼科治療に許容される収斂剤、眼科治療に許容される血管収縮剤、及び、眼科治療に許容される軟化剤からなる群より選択されることを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項3】
請求項1の製薬学的な組成物であって、該製薬学的な組成物は、10−10,000μg/mLの治療有効濃度のPRG4を含むことを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項4】
請求項1の製薬学的な組成物であって、該製薬学的な組成物は、50−500μg/mLの治療有効濃度のPRG4を含むことを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1の製薬学的な組成物であって、治療有効濃度のヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸を含むことを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項6】
請求項5の製薬学的な組成物であって、該製薬学的な組成物は、ヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸を治療有効濃度の10−100,000μg/mLで含むことを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項7】
請求項5の製薬学的な組成物であって、該製薬学的な組成物は、ヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸を治療有効濃度の500−5,000μg/mLで含むことを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1の製薬学的な組成物であって、治療有効濃度の表面活性リン脂質を含み、該表面活性リン脂質が、L−α−ジパルミトイルフォスファジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及び、スフィンゴミエリンからなる群より選択されることを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項9】
請求項8の製薬学的な組成物であって、該製薬学的な組成物は、10−10,000μg/mLの治療有効濃度の表面活性リン脂質を含むことを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1の製薬学的な組成物であって、前記眼科治療に許容される平衡溶液が少なくとも3つの異なる電解質を含み、該電解質が、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩酸、及び、水酸化ナトリウムからなる群より選択されることを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1の製薬学的な組成物であって、前記PRG4が、50kDa及び400kDaの間の平均モル質量を持つことを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1の製薬学的な組成物であって、前記PRG4が、潤滑フラグメント、それのマルチマー又はホモログを含むことを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1の製薬学的な組成物であって、前記PRG4が、遺伝子組換えのPRG4タンパク質、又は、その機能的なフラグメントであることを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項14】
請求項1の製薬学的な組成物であって、前記PRG4が、精製された天然発生のPRG4タンパク質であることを特徴とする製薬学的組成物。
【請求項15】
眼の潤滑欠乏症、又は、それに関連する症状を治療する方法であって、そのような必要性のある個人において、治療有効濃度のPRG4を含む製薬学的組成物を必要性のある個人の眼の表面に局所的に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、前記PRG4を含む前記製薬学的組成物が、眼科治療に許容される粘滑剤、眼科治療に許容される賦形剤、眼科治療に許容される収斂剤、眼科治療に許容される血管収縮剤、眼科治療に許容される軟化剤、及び、眼科治療に許容される電解質からなる群より選択される1又はそれ以上の薬剤を含む眼科治療に許容される製剤と組合せて投与されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15の方法であって、前記PRG4を含む前記製薬学的組成物が、治療有効濃度のヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸を含む眼科治療に許容される溶液と組合せて投与されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17の方法であって、前記PRG4を含む前記眼科治療に許容される溶液が、10−100,000μg/mLの治療有効濃度のヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17の方法であって、前記PRG4を含む前記眼科治療に許容される溶液が、500−5,000μg/mLの治療有効濃度のヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15の方法であって、前記PRG4を含む前記製薬学的組成物が、L−α−ジパルミトイルフォスファジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及び、スフィンゴミエリンからなる群より選択される治療有効濃度の表面活性リン脂質を含む眼科治療に許容される溶液と組合せて投与されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20の方法であって、前記眼科治療に許容される溶液が、10−10,000μg/mLの治療有効濃度の表面活性リン脂質を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項15の方法であって、前記PRG4を含む前記製薬学的組成物が、リン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水溶液と組合せて投与されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項15の方法であって、前記PRG4を含む前記製薬学的組成物が、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸三ナトリウム、塩酸、及び、水酸化ナトリウムからなる群より選択される1又はそれ以上の電解質を含む眼科治療に許容される平衡塩類溶液と組合せて投与されることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項15の方法であって、前記PRG4が、遺伝子組換えのPRG4タンパク質、又は、その機能的なフラグメントであることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項15の方法であって、前記PRG4が、精製された天然発生のPRG4タンパク質であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項15の方法であって、前記PRG4を含む前記製薬学的組成物が、L−α−ジパルミトイルフォスファジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及び、スフィンゴミエリンからなる群より選択される治療有効濃度の表面活性リン脂質及び治療有効濃度のヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸を含む、眼科治療に許容される溶液と、組合せて投与されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項15の方法であって、そのような必要性のある前記個人が、涙液欠乏性若しくは蒸発性ドライアイ症状、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、アンドロゲン欠乏症、マイボーム腺病、エストロゲン補充療法、コンタクトレンズ装着、屈折矯正手術、アレルギー、涙膜層破壊時間の減少、易感染涙膜、アレルギー、眼表面障害、涙膜内及び眼の表面でのプロテアーゼ・レベルの上昇、慢性炎症、高浸透度、加齢、又は、それらの組合せに関連する眼の境界潤滑の欠乏症を有していることを特徴とする方法。
【請求項28】
個人において、眼の潤滑における欠乏症若しくはその症状に関連し、又は、原因となる状態を治療する方法であって、該方法は、治療有効濃度のPRG4を含む製薬学的組成物を、その個人の眼の表面に局所的に投与する工程を含む、方法。
【請求項29】
請求項28の方法であって、そのような必要性のある前記個人が、眼科治療に許容される粘滑剤、眼科治療に許容される賦形剤、眼科治療に許容される収斂剤、眼科治療に許容される血管収縮剤、眼科治療に許容される軟化剤、眼科治療に許容される電解質、眼科治療に許容されるヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸、及び、眼科治療に許容される表面活性リン脂質からなる群より選択される1又はそれ以上の眼科治療に許容される薬剤を含む眼科治療に許容される製剤と組合せて前記PRG4を含む前記製薬学的組成物が投与されることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28の方法であって、その条件が、涙液欠乏性若しくは蒸発性ドライアイ症状、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、アンドロゲン欠乏症、マイボーム腺病、エストロゲン補充療法、コンタクトレンズ装着、屈折矯正手術、アレルギー、涙膜層破壊時間の減少、易感染涙膜、アレルギー、眼表面障害、涙膜内及び眼の表面でのプロテアーゼ・レベルの上昇、慢性炎症、高浸透度、加齢、及び、それらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−519933(P2011−519933A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508534(P2011−508534)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/039887
【国際公開番号】WO2009/137217
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(508255090)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (9)
【出願人】(505323921)ザ スキーペンズ アイ リサーチ インスティチュート (2)
【Fターム(参考)】