説明

眼球デバイスに有用な新規の反応性イエロー色素

新規アゾ系反応性イエロー色素並びに青光吸収特性を有する眼球デバイスを製造及び使用する方法。本発明により製造された眼内レンズは、IOLが移植された目の網膜に青光が到達しないように青光を遮蔽する。青光を網膜に到達しないように遮蔽することにより、IOLは網膜に対する潜在的な損傷を予防する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青光吸収特性を有する眼球デバイスの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、青光を遮蔽することができる眼内レンズその他の光学デバイスの製造に有用な共重合体を製造するためモノマー及び/又はオリゴマーと共重合し得るビニル系重合性基を有する新規イエロー色素に関する。
【背景技術】
【0002】
1940年代から、病気の又は傷ついた天然接眼レンズの代替品として眼内レンズ(IOL)移植物の形の光学デバイスが利用されている。多くの場合、例えば白内障のような病気の又は傷ついた天然レンズを外科的に取り除くときに、目の内部に眼内レンズが移植される。数十年間、このような眼内レンズ移植物を製造するのに好ましい材料は、硬質でガラス状高分子であるポリ(メチルメタクリレート)であった。
【0003】
最近では、圧縮、折り曲げ、ロール化その他の変形が可能であることから、軟質でより柔軟なIOL移植物が普及している。このような軟質IOL移植物は、これを変形させてから目の角膜の切開部を通して挿入することができる。IOLが目に挿入された後、その軟質材料の記憶特性によりIOLはその元の変形前の形状に戻る。上述したような軟質でより柔軟なIOL移植物は、より硬質のIOL移植物の場合に必要な切開部(すなわち、5.5〜7.0mm)よりもはるかに小さな切開部(すなわち、4.0mm未満)を通して目の中に移植することができる。より硬質のIOL移植物では、堅いIOL光学部の直径より若干大きな角膜内の切開部を通してレンズを挿入しなければならないため、切開部を大きくする必要がある。したがって、市場ではより硬質のIOL移植物の人気が低下している。なぜなら、切開部が大きくなると、乱視が誘発されるなど術後に合併症が発生する率が高くなることとの関連性が知られているためである。
【0004】
切開部の小さな白内障外科手術の最近の進歩に伴い、人工IOL移植物用に適した軟質で折り曲げ可能な材料の開発に重点が置かれている。Mazzoccoの米国特許第4573998号明細書に、比較的小さな切開部を通して適合するように丸め、折り曲げ又は延伸することができる変形可能な眼内レンズが開示されている。変形可能なレンズは、その歪んだ形状が保たれたまま挿入された後、目の室内で開放され、その際レンズの弾性によってその成形形状が回復する。変形可能なレンズに適した材料として、Mazzoccoは、ポリウレタンエラストマー、シリコーンエラストマー、ハイドロゲルポリマー化合物、有機又は合成ゲル化合物及びそれらの組合せを開示している。
【0005】
最近、青光(400〜500nm)が網膜にとって有害である可能性が認識されている。したがって、折り曲げ可能なレンズには、青光を遮断するイエロー色素が紫外光吸収剤と共に使用され、潜在的な損傷作用を予防している。Freemanらの米国特許第6353069号明細書に、芳香族基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートモノマーを2種以上含む高屈折率共重合体が開示されている。該共重合体で製造された眼科デバイスは、米国特許第5470932号明細書に開示されているイエロー色素のような着色色素を含むこともできる。このような材料は、それらで製造されたデバイス、例えば眼内レンズを、破損することなく折り曲げ又は操作することができるに十分な強度を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
青光暴露に関連する目の危険性のため、このような危険性を最小限に抑え又は排除する一助とすべく、新規材料及び眼科デバイスの製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、青光吸収特性を有する新規の反応性イエロー色素の1種以上を使用することによって、青光を吸収することができる軟質で、折り曲げ可能な、高屈折率の眼内レンズ(IOL)のような眼球デバイスが製造される。本発明によると、ビニル系重合性基を有する1種以上の新規イエロー色素と、1種以上のアクリル系モノマー及び/又は1種以上のシロキサン系オリゴマーとの共重合によって、青光吸収性のIOLのような眼球デバイスが製造される。このように製造された眼球デバイスは、目の網膜を、これに損傷を与える可能性のある青光から保護することにより、黄斑変性症から保護することができる。
【0008】
本発明の青光遮蔽性眼球デバイスは、ビニル系重合性基を有する1種以上の新規イエロー色素と1種以上のアクリル系モノマーとをラジカル共重合させることにより製造される。別法として、本発明の眼球デバイスは、ビニル系重合性基を有する1種以上の新規イエロー色素とヒドロシラン基を有する1種以上のシロキサン系オリゴマーとをヒドロシリル化反応により共重合させることによって製造することもできる。このような製造方法によって青光吸収特性を有する眼球デバイスが得られる。青光を吸収することによって、眼球デバイスは、該デバイスを移植した目の網膜に青光が到達しないようにこれを遮蔽し、網膜が損傷を受けるおそれを予防するのに役に立つ。このように製造されたIOLのような眼球デバイスは透明で、比較的伸び率が高く、かつ、比較的屈折率が高い。
【0009】
したがって、本発明の目的は、青光を吸収することができる眼球デバイスの製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、比較的高い屈折率及び良好な清澄性を有する眼球デバイスの製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、柔軟な眼球デバイスの製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、青光を吸収することができる生体適合性眼球デバイスを提供することである。
【0013】
本発明のこれら及びその他の目的及び利点は、その一部は具体的に説明されその他は説明されないが、後述する詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、例えばIOLのような高屈折率眼球デバイスの製造に有用な新規アゾ系反応性イエロー色素系列に関する。本発明のアゾ系反応性イエロー色素を用いて製造された眼球デバイスは、該眼球デバイスが移植された目の網膜に青光が到達しない又はその到達量が減る青光吸収特性を有する。本発明のアゾ系反応性イエロー色素は、ビニル系重合性基、例えばイタコン酸、フマテート、マレイン酸、ビニルアセチル、クロトン酸もしくはその誘導体、スチレン、ノルボルネニル、ビニル、アリル又は同様のアルケニル基を有する。アゾ系反応性イエロー色素のビニル系重合性基によって、ラジカル共重合によるアクリル系モノマーとの共重合、又はヒドロシリル化反応によるヒドロシラン基含有シロキサン系オリゴマーとの共重合が可能となる。
【0015】
本発明のアゾ系イエロー色素は下記の式1に示した一般構造式を有する。
【0016】
【化1】

【0017】
上式中、Ar1基は、同一であっても異なってもよい置換型又は無置換型のC6-36芳香族基、例えばフェニル又はナフチルであって、当該イエロー色素への青光吸収特性の付与を担うものを表し、R1は、存在しないか、又はC、H、N、O、S、P、Si、ClもしくはBr原子の任意の組合せによる1種以上からなる直鎖もしくは分枝鎖C1-10アルキレン系スペーサを表し、R2は、mが1である場合には水素又はC1-10アルキル、例えばメチル、ブチルもしくはヘキシルを表すが、mが2である場合には存在せず、R3は、存在しないか、又はC、H、N、O、S、P、Si、ClもしくはBr原子の任意の組合せによる1種以上からなる直鎖もしくは分枝鎖C1-10アルキレン系スペーサを表すか、もしくはR4がCH2COOR2であるかもしくはR5がCOOR2である場合には、カルボニル基を表し、R4は、水素、エチル、プロピルもしくはペンチルのようなC1-10アルキル又はCH2COOR2表し、R5は、水素、メチル、プロピルもしくはブチルのようなC1-10アルキル又はCOOR2を表し、そしてmは1又は2である。
【0018】
合成すべき新規アゾ系イエロー色素に依存して、イエロー色素は二通りの合成経路によって調製することができる。どちらの合成経路も、芳香族アミンのジアゾ化と、それに続く、合成されるイエロー色素の所望の構造に依存する重要な異なる基とのカップリングとを含む。合成経路の一例として、N‐フェニルジエタノールアミンとアニリンのジアゾニウム塩との反応により開始させた後、ビニル含有酸塩化物又はイソシアネートとの反応により反応性イエロー色素を生成することができる。この例を下記の反応経路1に示す。
【0019】
【化2】

【化3】

Ar1=上記式1について定義したとおり
5=上記式1について定義したとおり
【0020】
別の反応経路として、芳香族アルキルアミンをビニル含有酸塩化物、無水物又はイソシアネートと反応させてエチレン性不飽和重合性アミド又はカルバメートを得る経路もある。次いで、下記の反応経路2に示したように、それを芳香族アミンのジアゾニウム塩とカップリングさせてイエロー色素を得る。
【0021】
【化4】

Ar1=上記式1について定義したとおり
1=上記式1について定義したとおり
2=上記式1について定義したとおり
5=上記式1について定義したとおり
【0022】
青光吸収特性を有する眼球デバイスの製造に有用な本発明の好適な反応性イエロー色素の具体例として、式2に示したN‐2−[3’−(2”−メチルフェニルアゾ)−4’−ヒドロキシフェニル]エチルビニルアセトアミド、式3に示したN‐2−[3’−(2”−メチルフェニルアゾ)−4’−ヒドロキシフェニル]エチルマレイミド、式4に示したN,N−ビス−(2−ビニルアセトキシエチル)−(4’−フェニルアゾ)アニリン及び式5に示したN,N−ビス−(2−アリルカルバマトエチル)−(4’−フェニルアゾ)アニリンが挙げられる。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
上述のように合成された本発明の反応性イエロー色素は、重合性基を有する1種以上の該反応性イエロー色素と1種以上のアクリル系モノマーとをラジカル共重合させることによって青光遮蔽性眼球デバイスを製造するのに使用することができる。別法として、本発明の眼球デバイスは、重合性基を有する1種以上の該反応性イエロー色素とヒドロシラン基を有する1種以上のシロキサン系オリゴマーとを、白金‐シリコーン錯体を触媒として用いるヒドロシリル化反応により共重合させることによって製造することもできる。このような製造方法によって、青光吸収特性を有する眼球デバイスが得られる。本発明の反応性イエロー色素を用いて、例えばIOLのようなシリコーン系眼球デバイス半製品に青光吸収特性を付与することもできる。本発明の目的について「半製品」シリコーン系IOLは、遊離のヒドロシリル基を有するシリコーン系IOLである。
【0028】
本発明の1種以上の反応性イエロー色素との共重合に好適なアクリル系モノマーの具体例として、2−エチルフェノキシメタクリレート、2−エチルフェノキシアクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−エチルチオフェニルアクリレート、2−エチルアミノフェニルメタクリレート、2−エチルアミノフェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレート、メタクリレート、4−メチルフェニルメタクリレート、4−メチルベンジルメタクリレート、2,2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2,3−メチルフェニルエチルメタクリレート、及びポリジメチル‐コ‐ジフェニル‐コ‐メチルフェニルシロキサンブロックがウレタン結合で多数結合されたメタクリレート封鎖形プレポリマーが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0029】
本発明の1種以上の反応性イエロー色素との共重合に好適なシロキサン系オリゴマーの具体例として、高屈折率ポリシロキサンのビニル封鎖形プレポリマー、例えばα,ω‐ジビニルポリジメチル‐コ‐ジフェニルシロキサン、複数のビニル基を有するシリコーン樹脂及びトリメチルシロキシ基を末端基とするポリジメチル‐コ‐メチルヒドロシロキサンが挙げられるが、これらに限定はされない。
【実施例】
【0030】
青光吸収特性を有する柔軟な高屈折率眼球デバイスを製造するための本発明の方法について、後述の実施例によりさらに詳細に説明する。
例1:N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−(4−フェニルアゾ)アニリン(ソルベントイエロー58)の合成
アニリンのジアゾニウム塩とN−フェニルジエタノールアミンとをカップリングさせることによりN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−(4−フェニルアゾ)アニリンを合成した。手順の詳細は、D.L. Jinkersonの米国特許第5470932号明細書(参照することにより本明細書の一部とする)に記載されている。
【0031】
例2:N,N−ビス−(2−アリルカルバマトエチル)−(4’−フェニルアゾ)アニリンの合成
還流凝縮器と乾燥管を連結した1000mL容の3口丸底フラスコに、250mLの塩化メチレンと、5.7グラム(0.02モル)のN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−(4−フェニルアゾ)アニリンと、3.28gのアリルイソシアネート(0.04モル)(Aldrich Chemical社、Milwaukee、Wisconsin)と、0.014gのジブチル錫ジラウレート(Aldrich Chemical)とを装填した。混合物を加熱して激しく撹拌しながら一晩還流した。次いで、混合物を赤外分光光度計でチェックし、残留イソシアネートピークが無いことにより反応の完了が示された。混合物をロータリーエバポレータで濃縮した。高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)分析によると、主生成物が一つだけ示された。次いで、その生成物をシリカゲルクロマトグラフィにかけ、精製された最終生成物を80%以上の収率で得た。生成物は核磁気共鳴(NMR)及び質量分析計によって同定した。
【0032】
例3:N,N‐ビス‐(2‐ビニルアセトキシエチル)‐(4’‐フェニルアゾ)アニリンの合成
還流凝縮器と乾燥管を連結した1000mL容の3口丸底フラスコに、250mLの塩化メチレンと、5.7グラム(0.02モル)のN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−(4−フェニルアゾ)アニリンと、4.04グラム(0.04モル)のトリエチルアミンとを装填した。内容物を氷浴で冷却した。そのフラスコ内に、滴下漏斗によって、4.18g(0.04モル)の塩化ビニルアセチルを30分かけて添加した。次いで、氷浴を取り外して、内容物を一晩中撹拌し続けた。その後混合物を濾過し、さらにロータリーエバポレータで凝縮した。高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)分析によると、主生成物が一つだけ示された。次いで、その生成物をシリカゲルクロマトグラフィにかけ、精製された最終生成物を80%以上の収率で得た。生成物は核磁気共鳴(NMR)及び質量分析計によって同定した。
【0033】
例4:N‐2‐[3’‐(2”‐メチルフェニルアゾ)‐4’‐ヒドロキシフェニル]エチルビニルアセトアミドの合成
N‐2‐[3’‐(2”‐メチルフェニルアゾ)‐4’‐ヒドロキシフェニル]エチルビニルアセトアミドは2段階で合成することができる。第1段階は4‐ビニルアセトアミドエチルフェノールの生成である。第2段階はトルイジンのアゾニウム塩を該フェノールとカップリングさせて該生成物を得る工程である。
【0034】
第1段階:4‐ビニルアセトアミドエチルフェノールの合成
還流凝縮器と乾燥管を連結した1000mL容の3口丸底フラスコに、250mLの塩化メチレンと、5.48グラム(0.04モル)の4‐アミノエチルフェノールと、4.04グラム(0.04モル)のトリエチルアミンとを装填した。内容物を氷浴で冷却した。そのフラスコ内に、滴下漏斗によって、4.18g(0.04モル)の塩化ビニルアセチルを30分かけて添加した。次いで、氷浴を取り外して、内容物を一晩中撹拌し続けた。その後混合物を濾過し、さらにロータリーエバポレータで凝縮した。高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)分析によると、主生成物が一つだけ示された。次いで、その生成物をシリカゲルクロマトグラフィにかけ、精製された最終生成物を80%以上の収率で得た。生成物は核磁気共鳴(NMR)及び質量分析計によって同定した。
【0035】
第2段階:第1段階の生成物とトルイジンジアゾニウム塩とのカップリング
この手順は、アクリルアミドエチルフェノールを4‐ビニルアセトアミドフェノールに代えたことを除いて米国特許第5470932号明細書の例1の後半部に記載された手順と同じとした。生成物はNMR及び質量分析計によって同定した。
【0036】
例5:IOLをコーティングするためのイエロー色素溶液の調製
例4のイエロー色素を塩化メチレン中に1質量%、2質量%、5質量%及び10質量%含有する溶液を調製した。これらの溶液に、当該イエロー色素の1質量%に当たる量の白金‐シクロビニルメチルシロキサン錯体(Gelest社、Tullytown、Pennsylvania)を追加した。
【0037】
例6:シリコーン系眼内レンズのコーティング
熱硬化されたばかりのSoFlex(商品名)型式LI61U(Bausch & Lomb社、Rochester、New York)レンズ10枚を、例3に記載した各コーティング溶液中に30分、60分及び120分間浸漬した。これらのレンズを取り出して風乾した。次いで、これらのレンズを80〜90℃のオーブン内に1時間入れておいた。次いで、これらのレンズに標準処理を施して最終製品を得た。
【0038】
型式LI61Uレンズは、ビニル基を末端基とするポリジメチル‐コ‐ジフェニルシロキサン、ビニル基を有するシリコン系強化樹脂、及び複数のヒドロシラン単位を有するオリゴマーからなる成分から誘導されたシリコーン系IOLである。型式LI61Uシリコーンレンズは硬化後に過剰量の遊離ヒドロシラン基を有する。
【0039】
例7:イエロー色素濃度とコーティング条件の選定
コーティングされたレンズの紫外(UV)及び可視吸収スペクトル測定を処理前後で測定する。400〜500nmの範囲内で処理レンズの可視光吸収に基づき色素溶液中のイエロー色素濃度及びレンズ滞留時間を選定する。さらなるコーティングの検討のため、透過率が50%未満となりレンズの倍率/外観を維持する条件を選定し、条件を最適化する。
【0040】
本発明の方法により、軟質で、折り曲げ可能であり、約1.42以上の比較的高い屈折率を示し、約100%以上の比較的高い伸び率を示し、青光吸収特性を有するIOLが合成される。本発明の方法に用いられる好適な触媒には、ヒドロシリル化反応の場合、白金(3〜3.5%)‐ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体及び白金(3〜3.5%)‐シクロビニルメチルシロキサン錯体が含まれるが、これらに限定はされない。
【0041】
本明細書に記載したように製造されたIOLは、可能な限り小さな外科的切開部、すなわち3.5mm以下を通して目の中に挿入するための折り曲げ又は変形を可能ならしめるに必要な柔軟性を有する。本明細書に記載したIOLが本明細書に開示した理想的な物理特性を有することは意外であった。本発明によるIOLの理想的な物理特性は、弾性率、伸び率及び引張強さのような機械特性は反応性色素官能基の付加により変化し得るため、まったく意外なものである。
【0042】
本発明の方法で製造されたIOLは、比較的小さな外科的切開部、すなわち3.5mm以下を通して移植するためロールにし、又は折り曲げることができるものであればどのような設計であってもよい。このようなIOLは、同一材料又は別材料でできた視覚部分と触覚部分を有するように製造することもできる。材料が選ばれると、それを所望の形状の型でキャストし、硬化し、そして型から取り出すことができる。このような成形後、IOLを本発明の方法により処理し、その後当業者に知られている慣例の方法により洗浄し、仕上げをし、包装し、そして滅菌される。
【0043】
IOL以外にも、本発明の方法は、コンタクトレンズ、人工角膜移植、内包性袋伸展輪、角膜インレー、角膜輪等のデバイスのような他の医療デバイス又は眼科デバイスの製造に用いるのにも適している。
【0044】
本発明の方法を用いて製造されたIOLは、眼科学の分野において慣例として使用される。例えば、白内障の外科手術では、目の角膜に切開が施される。角膜切開部を通して目の白内障にかかった天然レンズを取り出し(無水晶体アプリケーション)、そして目の前眼房、後眼房又は水晶体被膜にIOLを挿入してから切開部を閉じる。しかしながら、本発明の眼科デバイスは、眼科学の分野の当業者に知られている他の外科手術に従い同様に使用することができる。
【0045】
本明細書では、青光吸収特性を有する眼球デバイスを製造する方法について示し説明してきたが、当業者にとっては、本発明の基本概念の精神及び範囲から逸脱することなく各種改変が可能であること、そして本発明が、特許請求の範囲に記載された範囲を限度とする限り、本明細書に示し説明した特定の方法及び構造物に限定されないことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式を含む組成物:
【化1】

上式中、Ar1基は、同一であっても異なってもよい置換型又は無置換型のC6-36芳香族基であり、R1は、存在しないか、又は直鎖もしくは分枝鎖C1-10アルキレン系スペーサを表し、R2は、存在しないか、又は水素もしくはC1-10アルキルを表し、R3は、存在しないか、又は直鎖もしくは分枝鎖C1-10アルキレン系スペーサを表すか、もしくはR4がCH2COOR2であるかもしくはR5がCOOR2である場合には、カルボニル基を表し、R4は、水素、C1-10アルキル又はCH2COOR2を表し、R5は、水素、C1-10アルキル又はCOOR2を表し、そしてmは1又は2である。
【請求項2】
イタコン酸、フマテート、マレイン酸、ビニルアセチル、クロトン酸、スチレン、ノルボルネニル、ビニル及びアリル基からなる群より選択された重合性基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記C1-10アルキレン系スペーサが、C、H、N、O、S、P、Si、Cl及びBrからなる群より選ばれた原子の任意の組合せからなる同一又は異なる直鎖又は分枝鎖であることができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物1種以上に1種以上のアクリル系モノマーを共重合させてなる高分子組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物1種以上に1種以上のアクリル系モノマーを共重合させる、高分子組成物の製造方法。
【請求項6】
前記高分子組成物がラジカル共重合によって得られる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物1種以上に1種以上のシロキサン系オリゴマーを共重合させてなる高分子組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物1種以上に1種以上のシロキサン系オリゴマーを共重合させる、高分子組成物の製造方法。
【請求項9】
前記高分子組成物がヒドロシリル化反応によって得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物1種以上を含んでなり、青光吸収特性を有する眼球デバイス。
【請求項11】
前記眼球デバイスが半製品シリコーンから製造されている、請求項10に記載の眼球デバイス。
【請求項12】
前記眼球デバイスが1種以上のアクリル系モノマーから製造されている、請求項10に記載の眼球デバイス。
【請求項13】
前記眼球デバイスが1種以上のシロキサン系オリゴマーから製造されている、請求項10に記載の眼球デバイス。
【請求項14】
請求項4又は7に記載の高分子組成物1種以上を含んでなり、青光吸収特性を有する眼球デバイス。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物1種以上を含んでなり、青光吸収特性を有する眼内レンズ。
【請求項16】
前記レンズが半製品シリコーンから製造されている、請求項15に記載の眼内レンズ。
【請求項17】
前記レンズが1種以上のアクリル系モノマーから製造されている、請求項15に記載の眼内レンズ。
【請求項18】
前記レンズが1種以上のシロキサン系オリゴマーから製造されている、請求項15に記載の眼内レンズ。
【請求項19】
請求項4又は7に記載の高分子組成物1種以上を含んでなり、青光吸収特性を有する眼内レンズ。
【請求項20】
請求項10又は14に記載の眼球デバイスを目に移植することを特徴とする、該眼球デバイスの使用方法。
【請求項21】
請求項15又は19に記載の眼内レンズを目に移植することを特徴とする、該眼内レンズの使用方法。
【請求項22】
請求項4又は7に記載の高分子組成物1種以上を型にキャストしてからそれを硬化することを特徴とする、眼球デバイスの製造方法。
【請求項23】
請求項4又は7に記載の高分子組成物1種以上を型にキャストしてからそれを硬化することを特徴とする、眼内レンズの製造方法。
【請求項24】
前記眼球デバイスが、コンタクトレンズ、人工角膜移植、内包性袋伸展輪、角膜インレー、角膜輪及び眼内レンズからなる群より選択される、請求項10又は14に記載の眼球デバイス。

【公表番号】特表2007−505170(P2007−505170A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525353(P2006−525353)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/027008
【国際公開番号】WO2005/026266
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】