説明

眼鏡レンズの供給システム

【課題】発注者側においてヤゲン加工が可能になるとともに、加工に伴う加工くずを極力少なくすることが可能なメガネレンズの供給システムの提供。
【解決手段】発注者側においてフレームリーダー2で眼鏡フレームの玉型形状を計測し、その眼鏡フレームの玉型形状データを発注用端末装置1によって受注者側にVAN4のような通信ネットワークを介して送信する。受注者側では受注用端末装置6によって受信したそのデータについて所定の数値的重みを与えることで実際に計測された玉型形状よりも所定サイズ大きな形状のレンズを形成させる玉型加工データを作成する。そして、その受注者側で作成された玉型形状データに基づいて加工される玉型形状よりも所定サイズ大きな玉型形状のレンズをウォータージェット切断加工機8によって加工して得るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発注者側から連絡されたレンズの加工データに基づいて受注者側でレンズを加工し、発注者側に供給する眼鏡レンズの供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から発注者側としての眼鏡店と受注者側としてのレンズメーカーとの間には眼鏡店から連絡されたレンズ加工用のデータに基づいてレンズメーカーが所定の光学特性を備えたレンズを製造し、眼鏡店に供給するというシステムが確立されている。更にこのシステムを発展させてレンズメーカー側でフレームの玉型に合わせたレンズの外形の加工を行い(いわゆる玉型加工)、更に玉型加工したレンズの縁(コバ)にヤゲンを設けるヤゲン加工まで行うことが可能となっている。このようなヤゲンがすでに設けられた玉型レンズを供給された眼鏡店ではそのレンズをフレームに装着するだけでよいため、レンズ加工がまったく不用となることからレンズ加工に関する機器や技術に関するコストを削減できるため眼鏡店のメリットは大きい。
このようなレンズメーカー側でヤゲン加工までを行って眼鏡店に供給するシステムの一例として技術文献1を挙げる。技術文献1ではレンズメーカーに玉型レンズの加工データを送った後に実際に加工を行う前にヤゲン加工も含めて最適な加工状況で加工がされるかどうかを加工前に眼鏡店側でチェックするというものである。
【0003】
ところで、レンズメーカー側でヤゲン加工まで行うことが常に眼鏡店側のメリットになるというわけではない。本来ヤゲンの加工はフレームとヤゲンの位置、形状等とを照合しながら加工していく職人的作業であって加工する者の技量に左右されることが多い。技術文献1の「発明が解決しようとする課題」にもあるようにヤゲン加工は非常にデリケートに行われるべきものであるため自動化には障害もあるのが現実である。実際、技量の優れたものの手によるヤゲンは加工機によって加工されたヤゲンよりも品質は良い。そのため眼鏡店ではこの手作業による加工技術をいわゆる「売り物」にしている場合もあり、必ずしもヤゲン加工を施した玉型レンズの供給を望まない場合もあった。そのような場合には、一般にレンズメーカー側でいわゆる丸レンズと呼ばれる定形の未加工レンズに対して装用者の注文に対応した光学特性のみ加工を施し、フレーム形状に対応した玉型加工はせずに丸レンズの外形形状のまま眼鏡店に供給されることとなる。
【特許文献1】特開平6−34923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、丸レンズの状態で眼鏡店がレンズメーカーからレンズ供給を受けた場合には自ら玉型加工を行う必要がある。もちろん、手作業による加工技術を売り物としているような眼鏡店では研削加工機が準備されているため玉型加工は可能である。
しかしながら、眼鏡店が自ら玉型加工を行う場合には次のような課題が生じる。
1)実際のヤゲン加工に至るまでの前段階の丸レンズを玉型まで加工する作業に非常に時間がかかってしまう。更に、小さ目のフレームが選択された場合には大きく削る必要があるため、更に加工時間が長くなってしまう。
2)プラスチックレンズの研削によって生じる多量の粉状の加工くずは近年ではリサイクル燃料として使用されるようになってきているが、研削作業においては放熱のために研削部分に水をかけて作業を行うため、加工くずは水混じりとなってしまう。そのため、リサイクル燃料とするために加工くずを乾燥させる必要があるが、水混じりの粉体は乾燥しにくく、乾燥のために加熱することから加熱費用がかかってしまうので実際には必ずしも効率的なリサイクル燃料とはいえなかった。
3)高屈折のプラスチックレンズではイオウ分が多く、研削に伴う熱によってイオウ分とレンズ基材のモノマーが反応してメルカプタンのような異臭成分が生成され不快な臭気を伴うこととなっていた。
本発明はこのような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、発注者側においてヤゲン加工が可能となるとともに発注者側での加工に伴う加工くずを極力少なくすることが可能な眼鏡レンズの供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、発注者側で把握している眼鏡フレームの玉型形状データを受注者側へ伝達する玉型形状データ伝達手段と、受注者側に設置され、前記玉型形状データ伝達手段によって伝達された前記眼鏡フレームの玉型形状データについて所定の数値的重みを与えることで実際に発注された玉型形状よりも所定サイズ大きな形状のレンズを形成させる玉型加工データを作成する玉型加工データ作成手段と、前記玉型加工データ作成手段によって作成された玉型加工データに基づいて未加工レンズを加工するレンズ加工手段とを備え、発注された玉型形状よりも所定サイズ大きな玉型形状のレンズを得るようにしたことをその要旨とする。
【0006】
上記請求項1のような構成の眼鏡レンズの供給システムでは、受注者側は発注者側から伝達された玉型形状データについて、玉型加工データ作成手段によって所定の数値的重みを与えることで実際に計測された玉型形状よりも大きなサイズのレンズを形成させる玉型加工データを作成する。つまり、ベースとなる発注者側から伝達された玉型形状データに対して所定の数値的重みをしなければそのようなデータに基づいて未加工レンズを加工すれば発注者の注文通りの玉型形状の外形のレンズが加工されることとなる。しかし、請求項1の発明のように玉型形状データに所定の数値的重みを与えることで発注されたサイズよりも大きな玉型形状のレンズが形成されることとなる。この段階ではレンズにはヤゲンは形成されない。
これによって注文よりも大きな玉型形状のレンズを供給された発注者側ではヤゲンを研削しながらコバもフレームの玉型に併せて研削できることとなり、レンズ外形形状をフレームの玉型に正確に沿わせることが可能となるとともに最適なヤゲンを形成させることが可能となる。また、ほぼ玉型形状に加工されたレンズを入手できるため発注者側での研削作業は極めて少なくてすむため、加工くずや異臭の問題は生じない。
【0007】
ここに、玉型形状データ伝達手段とは玉型形状データが受注者側に正確に伝達されれば足る。従って、この玉型形状データ伝達手段は端末コンピュータを使った通信ネットワーク(VAN(付加価値通信網)、インターネット、WAN(Wide Area Network)等)でのデータ送信や、玉型形状を描画したシートをファクシミリで送信するような場合も広く含む概念である。また、発注側と受注側でフレームの玉型データを共有しているのであれば、例えば発注側は受注側にフレーム番号等を伝達するだけでもよい。
また、発注者側に対して供給した玉型レンズが注文データからどの程度大きくなっているかを供給に際して報告するようにしてもよい。
報告手段としてはレンズに添付する書類やカードに記入したり、レンズを包んだ容器等に記入することが考えられる。また、レンズ自体(レンズのコバ、表面のコバ寄り位置等目立たずレンズ機能に影響のない部分が好ましい)に小さな文字でプリントしたり刻印したりすることが考えられる。
ここに、通常の丸レンズの径や一般的な玉型形状から想定するならば注文した玉型レンズの外形よりも所定サイズ大きくする場合には注文された玉型外形から0.5mm〜5mm以内、好ましくは3mm以内に収めることが望ましい。
【0008】
また請求項2の発明では、発注者側に設置されており、眼鏡フレームの玉型形状を計測するフレームリーダーと、発注者側に設置され、前記フレームリーダーによって計測された眼鏡フレームの玉型形状データを送信する発注用端末装置と、受注者側に設置されるとともに、前記発注用端末装置とは通信ネットワークを介して接続され、前記玉型形状データを受信する受注用端末装置と、受注者側に設置され、同受注用端末装置が受信した前記眼鏡フレームの玉型形状データについて所定の数値的重みを与えることで実際に計測された玉型形状よりも所定サイズ大きな形状のレンズを形成させる玉型加工データを作成する玉型加工データ作成手段と、前記玉型加工データ作成手段によって作成された玉型加工データに基づいて未加工レンズを加工するレンズ加工手段とを備え、玉型形状データに基づいて加工される玉型形状よりも所定サイズ大きな玉型形状のレンズを得るようにしたことをその要旨とする。
【0009】
上記請求項2のような構成の眼鏡レンズの供給システムでは、発注用端末装置から通信ネットワークを介して受注用端末装置に送信されたフレームリーダーで計測した玉型形状データについて、玉型加工データ作成手段によって所定の数値的重みを与えることで実際に計測された玉型形状よりも大きな玉型形状のレンズを形成させる玉型加工データを作成する。玉型加工データについては請求項1と同様である。この段階ではレンズにはヤゲンは形成されない。
これによって注文よりも大きな玉型形状のレンズを供給された発注者側ではヤゲンを研削しながらコバもフレームの玉型に併せて研削できることとなり、レンズ外形形状をフレームの玉型に正確に沿わせることが可能となるとともに最適なヤゲンを形成させることが可能となる。また、ほぼ玉型形状に加工されたレンズを入手できるため発注者側での研削作業は極めて少なくてすむため、加工くずや異臭の問題は生じない。
更に、通信ネットワークを介して迅速かつ正確にデータの授受が行われるため、レンズ加工の作業性の向上に寄与する。
【0010】
ここに、フレームリーダーと発注用端末装置とはフレームリーダーの計測データをそのまま発注用端末装置に取り込めるようにデータ送信可能に接続されていることが好ましい。あるいはフレームリーダーと発注用端末装置が一体化されていてもよい。
また、受注用端末装置と玉型加工データ作成手段は作成したデータをそのまま受注用端末装置から送信できるようにデータ送信可能に接続されていることが好ましい。あるいは受注用端末装置と玉型加工データ作成手段が一体化されていてもよく、受注用端末装置と玉型加工データ作成手段が同一の装置(同一コンピュータ)で構成されていてもよい。
更に、レンズ加工手段と受注用端末装置と玉型加工データ作成手段とがデータ送信可能に接続されていることが好ましい。あるいはこれら受注者側の機器がすべて一体化されていてもよい。
また、通信ネットワークとしてはVAN(付加価値通信網)、インターネット、WAN(Wide Area Network)等)が一例として挙げられる。
また、請求項1と同様、発注者側に対して供給した玉型レンズが注文データからどの程度大きくなっているかを報告するようにしてもよい。
【0011】
また請求項3の発明では、請求項1又は2の発明の構成に加え、前記玉型加工データに基づいて加工されるレンズの玉型形状は玉型形状データに基づいて加工されたと仮定したレンズの相似形状となるようにしたことをその要旨とする。
相似形状であれば注文データに基づくレンズの表裏方向から見た外形形状と大きさだけ異なるだけで形状は同じであるため間違えにくくなる。また、受け取ったレンズと同じ形状を保ちながら周囲を研削していくことが可能であるため、目標とする形状との照合が容易で研削量も全周囲で均一化しているので作業性が向上する。
【0012】
また請求項4の発明では請求項1〜3のいずれかの発明の構成に加え、前記玉型加工データに基づくレンズ加工手段の加工とはウォータージェット切断加工機による切断加工であることをその要旨とする。
ウォータージェット切断加工機による切断加工によれば従来の研削加工に比べて玉型に加工する時間が大幅に縮減される。また、本加工機によって切断される加工くずは研削加工により発生する粉状の加工くずに比べて塊状に切り出されるため、乾燥しやすくリサイクル燃料とする際の乾燥に伴うコストの削減となって利用価値が向上する。また、高屈折のプラスチックレンズを加工する場合でも研削加工のように高熱とはならないので不快な臭気がなくなる。
また、従来の研削加工ではレンズを支持する際に表裏面にパッドを貼着し、レンズ面を表裏から押さえながらコバを加工していくという手法で研削作業を行っている。
しかし、撥水加工を施したレンズ面は非常に摩擦力が小さく研削に伴う荷重でパッドがずれてしまう可能性もあった。一方、ウォータージェット切断加工機ではレンズ面に対して交差する方向から加工をすることとなるため、このような従来の研削加工のような不具合が生じることがない。
更に、次のような効果が奏される。
一般に、ウォータージェット切断加工機では低スピードでの切断であれば切り口は非常にきれいに仕上がるものの、切断スピードが上がると切り口は波打ったように粗く仕上がってしまう。本発明では玉型加工データに基づいて加工されるレンズは受注者側でヤゲン加工に伴ってコバも加工するわけだから、ウォータージェット切断加工機による加工で切断スピードを上げることによって若干コバの仕上がりが粗くとも構わないこととなる。これによってウォータージェット切断加工機による玉型加工の加工時間の更なる短縮が可能となっている。
【発明の効果】
【0013】
上記各請求項の発明では、発注者側におけるヤゲン加工を可能とするとともに発注者側における加工くずを大幅に減少させ、玉型加工の手間をなくすことが可能である。その結果、発注者側では自身で玉型加工を行う際の問題が解消されるとともに自身のヤゲン加工の技能を生かすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の眼鏡レンズの供給システムを具体化した実施の形態について図面とともに説明する。
(実施の形態1)
図1に示すように、本実施の形態1の眼鏡レンズの供給システムは、各眼鏡店に設置された発注用端末装置1と、情報処理装置を中継とするVAN(付加価値通信網)4と、レンズメーカー側に設置された受注用端末装置6と、同端末装置6に接続された加工機制御用端末装置7と、同端末装置7に接続されたレンズ加工手段としてのレンズ加工機8とを備えて構成されている。発注用端末装置1及び受注用端末装置6はそれぞれモデム3,5を介してVAN4に接続されている。
【0015】
発注用端末装置1は入力項目を備えた発注画面を表示させるようになっており、キー操作により各入力項目を入力できるようになっている。入力項目としては、発注番号とレンズの商品名,カラー,S度数(球面度数),C度数(乱視度数),乱視軸AX,瞳孔間距離PD,幾何中心間距離FPD及び幾何中心(ボクシングセンター)からの光学中心(アイポイント)の変位距離UP、眼鏡フレームの種別等の項目がある。これらのうちS度数(球面度数),C度数(乱視度数),乱視軸AX,瞳孔間距離PD,幾何中心間距離FPD等は装用者の注文に基づく光学特性を付与するために必要なレンズ特性データに相当する。
【0016】
発注用端末装置1には眼鏡フレームの玉型形状を計測するフレームリーダー2が接続されている。発注用端末装置1はフレームリーダー2によって計測された眼鏡フレームの玉型形状データを取り込むようになっている。図2はフレームリーダー2によって計測された眼鏡フレームの玉型形状データ31の一例を示しており、ボクシングセンター32を中心として所定角度間隔で多数(本実施の形態1では200本)の放射線33が配置されている。ボクシングセンター32の位置に対する放射線33の末端の位置関係によって眼鏡フレームの玉型形状が確定される。
【0017】
発注用端末装置1は取り込んだ玉型形状が製作可能であると判定すると、前記各入力項目データと取り込んだ玉型形状データとをレンズ加工データとしてモデム3を介して送信する。送信データはVAN4及びモデム5を介して受注用端末装置6側で受信され、そのデータに基づいて受注用端末装置6は受注が可能か否かを判断し、その回答をVAN4及びモデム3,5を介して発注用端末装置1へ送り返すようになっている。また、以下のレンズ設計データや玉型加工データもVAN4及びモデム5を介して発注用端末装置1へ送り返すようになっている。
【0018】
一方、レンズメーカー側の受注用端末装置6はVAN4及びモデム3,5を介して玉型形状データ及びレンズ加工データを受信する。受注用端末装置6は受信したレンズ加工データに基づいてレンズ設計データの算出を行うとともに、受信した玉型形状データに所定の数値的重みを与えることで実際に計測された玉型形状よりも大きな玉型形状のレンズを形成させるような玉型加工データを算出する。これらレンズ設計データ及び玉型加工データの算出は受注用端末装置6内の図示しないMPU(マイクロプロセッサ)内において所定の演算プログラムに基づいて実行される。
そして、レンズ加工データ及び玉型加工データに基づいてフレーム形状を受注確認表として印刷する。また、受注用端末装置6はレンズ手配書を作成する。
尚、以下の工程ではレンズ設計データに基づいて未加工レンズに所定の光学特性を発現させるための加工を施すものであるが、本実施の形態1ではその説明を省略する。
【0019】
図3は受注用端末装置6で印刷された受注確認表の一例を示している。左右の注文玉型形状50a,50b内にはそれぞれアイポイント51a,51bが描かれるとともに、各アイポイント51a,51bを挟むように各一対の印点52が描かれている。印点52はレンズの玉型加工時における吸盤の吸着位置を示している。又、左右の玉型形状50a,50bの下部にはボクシングセンター53間の幾何中心間距離FPD、ブリッジ中心からの右側アイポイント51aまでの距離RPD、ブリッジ中心からの左側アイポイント51bまでの距離LPD、ボクシングセンター53からのアイポイント51a,51bの変位距離UPが描かれている。
また、フレーム形状は実際の玉型形状データに基づく注文玉型形状55と玉型加工データに基づく変更玉型形状56の両方が描かれている。本実施の形態1では注文玉型形状55に対して変更玉型形状56は相似形状で、かつボクシングセンター53位置を原点としてX方向に1.0mm、Y方向にそれぞれ1.0mmのサイズ拡大とされている。
【0020】
そして、受注用端末装置6は受信した玉型加工データとレンズ設計データとを加工機制御用端末装置7に転送する。また、受注用端末装置6は受注確認表をVAN4を介してファクシミリで眼鏡店に送信することもできる。
加工機制御用端末装置7は転送されてきた玉型加工データをウォータージェット切断加工機8に転送するとともに、レンズ加工の進捗管理を行う。
ウォータージェット切断加工機8はセットされた未加工レンズを玉型加工データに基づいて所定の玉型形状にカットして玉型レンズを製作する。
このようにして製造された玉型レンズは図3のように上記2種類の玉型形状55,56の形状の相違がわかるように重ねて描かれたカードとともに眼鏡店に納入される。
【0021】
上記のような実施の形態1の構成によって次のような効果が奏される。
(1)眼鏡店では注文よりもわずかに大きいサイズの玉型レンズの供給を受けることができるので、ヤゲン加工における研削作業で加工くずの発生を抑制することが可能となる。また、供給されたレンズは丸レンズの状態ではなく注文した玉型の相似形状であるため、加工しやすく、加工にかかる時間も短縮化することが可能となる。
(2)従来では玉型レンズは注文した玉型サイズの通りに加工されていた。これはレンズメーカー側ではヤゲン加工まで行って眼鏡店側はレンズに関する加工をまったくしないことを前提としていたからである。しかしながら、実際には加工誤差、測定誤差等によってフレームの玉型よりもわずかに小さく加工されてしまって返品されるケースもしばしば見られた。
本実施の形態1のように注文よりもわずかに大きいサイズの玉型レンズの供給を受けることによって、そのようなフレームの玉型より小さく加工された玉型レンズの供給を受けるという可能性が皆無となる。
(3)眼鏡店では注文よりもわずかに大きいサイズの玉型レンズの供給を受けることによって自らの技量に基づいてフレームの玉型に正確に沿わせることが可能となるとともに最適なヤゲンを形成させることが可能となる。
(4)ウォータージェット切断加工機8によって玉型加工をするため、従来の研削加工に比べて格段に加工時間の短縮化を図ることが可能となり、また、加工くずの利用価値も高まる。
(5)ウォータージェット切断加工機8による切断加工速度を上げることで玉型レンズのコバの仕上がりが若干粗くなっても、眼鏡店側ではヤゲン加工に伴ってコバの研削加工も行うため実際の加工上には支障はなくなり、むしろウォータージェット切断加工機8による加工時間の短縮化のメリットを極力生かすことができる。
【0022】
(実施の形態2)
図4に示すように、実施の形態2の眼鏡レンズの供給システムは、各眼鏡店及びレンズメーカーに設置されたファクシミリ送受信機71、72と、レンズメーカー側に設置された受注用端末装置6と、同受注用端末装置6に接続されたスキャナー74と、同じく受注用端末装置6に接続された加工機制御用端末装置7と、同端末装置7に接続されたレンズ加工手段としてのウォータージェット切断加工機8とを備えて構成されている。以下の説明で実施の形態1と同様の構成については詳しい説明を省略する。
【0023】
各眼鏡店では図5に示すような玉型指定シート75のトレース領域76に注文にかかる玉型形状について1.型板の外周、2.ダミーレンズの外周、3.フレームの内周、のいずれかに基づいてトレースする。トレースに際しては基準点が必要であり、ここではアイポイント位置77を基準とする。そして、発注者側のファクシミリ送受信機71によってこの玉型形状のトレース線78が描かれたシート75をレンズメーカーに側のファクシミリ送受信機72にファクシミリ送信する。
受注用端末装置6には玉型指定シート75の玉型のトレース線78及びアイポイント位置77をスキャンするスキャナー74が接続されている。発注用端末装置1はスキャナー74によってスキャンされた画像データに基づいて眼鏡フレームの玉型形状データを解析するようになっている。ここではアイポイント位置77を基準にトレース線78の位置をまず決定し、それらのデータに基づいて幾何中心等の必要な点を決定する。
玉型形状データの解析は受注用端末装置6内の図示しないMPU(マイクロプロセッサ)内において所定の解析プログラムに基づいて実行される。
更に、受注用端末装置6は玉型形状データに所定の数値的重みを与えることで実際に計測された玉型形状よりも大きなサイズのレンズを形成させるような玉型加工データを算出する。
尚、本実施の形態2ではその他のレンズ設計に必要なデータ、例えば発注番号とレンズの商品名,カラー,S度数(球面度数),C度数(乱視度数),乱視軸AX,瞳孔間距離PD,幾何中心間距離FPD及び幾何中心(ボクシングセンター)からの光学中心(アイポイント)の変位距離UP、眼鏡フレームの種別等についても各眼鏡店からファクシミリ送受信機71を経由してファクシミリ送信される。もちろん、これらデータは上記玉型指定シート75に記入されていてもよい。レンズメーカーではこれらデータをファクシミリ送信された書面を見て受注用端末装置6に手入力する。レンズ設計データの算出は受注用端末装置6内の図示しないMPU(マイクロプロセッサ)内において所定の演算プログラムに基づいて実行される。
【0024】
そして、受注用端末装置6は玉型加工データとレンズ設計データとを加工機制御用端末装置7に転送する。加工機制御用端末装置7は転送されてきた玉型加工データをウォータージェット切断加工機8に転送する。以下の工程は実施の形態1と同様である。
上記のような実施の形態2の構成によって実施の形態1と同様の効果が奏される。
【0025】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施の形態2ではファックスでトレースした玉型のデータをレンズメーカーに送信していたが、実際にこのようにトレースしなくとも眼鏡店側とレンズメーカー側でフレームの玉型データを共有しているのであれば、例えば眼鏡店はレンズメーカーにフレーム番号を伝達するだけでもこの発明は実行可能である。
・上記実施の形態では発注用端末装置1で取り込んだ玉型形状が製作可能であるかどうかを判定するようになっていたが、これは受注側で判断するようにしてもよい。例えば取り込んだ玉型形状データをネットワークを介してデータを受信した受注用端末装置6で判断するようにしてもよい。その場合には判断結果は受注側から発注側に報知する(例えばネットワークを介して)ことが好ましい。
・実施の形態2ではレンズ設計に必要なデータをレンズメーカー側で手入力するようにしたが、実施の形態1のようにレンズ設計に必要なデータをVAN4のような通信ネットワークをい経由してデータ送信することも可能である。
・受注用端末装置6と加工機制御用端末装置7とを一体化してもよい。
・上記実施の形態では眼鏡店にはボクシングセンター53位置を原点とした相似形状に拡大したものを玉型レンズとして供給した。しかし、拡大する際の原点はボクシングセンター53位置に限定されるものではない。また、必ずしも相似形状に拡大しなくとも構わない。
・上記実施の形態1では実際に発注された玉型よりも大きいサイズの玉型レンズが供給されていることをレンズと一緒にカード化して眼鏡店に伝えていたが、VAN4によって端末装置1,6を利用して伝達するようにしてもよい。
・ガラス製レンズに応用することも自由である。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態1の眼鏡レンズの供給システムを説明する概略図。
【図2】フレームリーダーで計測された眼鏡フレームの玉型形状データの一例を示す説明図。
【図3】受注用端末装置で印刷された受注確認表の一例を説明する説明図。
【図4】実施の形態1の眼鏡レンズの供給システムを説明する概略図。
【図5】ファァクシミリ送受信機によって送信される玉型形状のトレース線が描かれたシートの説明図。
【符号の説明】
【0027】
1…発注用端末装置、2…フレームリーダー、6…玉型加工データ作成手段としての受注用端末装置、8…レンズ加工手段としてのウォータージェット切断加工機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発注者側で把握している眼鏡フレームの玉型形状データを受注者側へ伝達する玉型形状データ伝達手段と、
受注者側に設置され、前記玉型形状データ伝達手段によって伝達された前記眼鏡フレームの玉型形状データについて所定の数値的重みを与えることで実際に発注された玉型形状よりも所定サイズ大きな形状のレンズを形成させる玉型加工データを作成する玉型加工データ作成手段と、
前記玉型加工データ作成手段によって作成された玉型加工データに基づいて未加工レンズを加工するレンズ加工手段とを備え、発注された玉型形状よりも所定サイズ大きな玉型形状のレンズを得るようにしたことを特徴とする眼鏡レンズの供給システム。
【請求項2】
発注者側に設置されており、眼鏡フレームの玉型形状を計測するフレームリーダーと、
発注者側に設置され、前記フレームリーダーによって計測された眼鏡フレームの玉型形状データを送信する発注用端末装置と、
受注者側に設置されるとともに、前記発注用端末装置とは通信ネットワークを介して接続され、前記玉型形状データを受信する受注用端末装置と、
受注者側に設置され、同受注用端末装置が受信した前記眼鏡フレームの玉型形状データについて所定の数値的重みを与えることで実際に計測された玉型形状よりも所定サイズ大きな形状のレンズを形成させる玉型加工データを作成する玉型加工データ作成手段と、
前記玉型加工データ作成手段によって作成された玉型加工データに基づいて未加工レンズを加工するレンズ加工手段とを備え、玉型形状データに基づいて加工される玉型形状よりも所定サイズ大きな玉型形状のレンズを得るようにしたことを特徴とする眼鏡レンズの供給システム。
【請求項3】
前記玉型加工データに基づいて加工されるレンズの玉型形状は玉型形状データに基づいて加工されたと仮定した玉型レンズの相似形状となることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡レンズの供給システム。
【請求項4】
前記玉型加工データに基づくレンズ加工手段の加工とはウォータージェット切断加工機による切断加工であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の眼鏡レンズの供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−156208(P2007−156208A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352917(P2005−352917)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】