説明

着弾位置検証方法及びインクジェット装置

【課題】インクの着弾位置の検証が容易となる着弾位置検証方法を提供する。
【解決手段】インクジェット装置のノズル6aからは、実基板W0に形成されているBM格子11により区画された多数の画素部12に、インク9を着弾させることができる。インク9に対して撥液性を有している検証用基板W1に対して、ノズル6aからインク9を着弾させる。検証用基板W1上に着弾させたインク9の画像を基準座標と対応つけて取得すると共に、取得した当該画像に、前記BM格子11と同じ形状を有するように作成され前記基準座標と対応付けられている格子形状情報を、前記基準座標を一致させてモニタ27にオーバーレイ表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置が有するノズルから滴下させるインクの着弾位置を検証する着弾位置検証方法、及び、インクの着弾位置の検証が可能となるインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、色形成の中核を成す部材としてカラーフィルタが用いられている。カラーフィルタは、ガラス基板上に微細なR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色が多数並べられて形成されている。
近年、このカラーフィルタを効率よく製造する装置として、ガラス基板上に形成された多数の微細な画素部に、R、G、Bの各インクをインクジェットヘッドから供給して、R、G、Bの色画素を形成するインクジェット装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記画素部は、画素形成用格子(ブラックマトリックス格子)により区画されることでガラス基板上に多数形成されていて、一つの画素部には例えば6〜8滴のインクが供給され、各画素部は色付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−242058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記インクジェット装置では、R,G,Bの各インクを、ガラス基板上の微細な画素部毎に精度良く着弾させる必要がある。そこで、インクを実際にガラス基板上に塗布する作業の準備として、各画素部に対して設計上の位置(例えば各画素部の中央)にインクが着弾するか否かの検証を行う必要がある。
このために、製品とするためのガラス基板の各画素部に対してインクを着弾させ、これをカメラで撮像して検証する方法が考えられる。しかし、この場合、製品とするためのガラス基板の画素部の表面はインクに対して親液性を有しているので、当該画素部にインクを着弾させると当該インクは表面で広がった状態となる。このため、カメラで撮像しても、画素部の領域の内のどの位置にインクが着弾したかを正確に検証することができない。
【0005】
また、仮に、画素部におけるインクの着弾位置をカメラによって撮像して当該位置の座標を取得することができた場合、取得した画像を画像解析して着弾位置及び画素部の形状を数値化し、各画素部におけるインクの着弾位置をコンピュータによって数値的に比較することで検証する方法が考えられる。しかし、この場合、画素部及びインクの着弾位置は多数あることから、数値演算に時間を要し、検証時間が多く発生することが考えられる。
そこで、本発明は、インクの着弾位置の検証が容易となる着弾位置検証方法、及び、インクの着弾位置の検証が可能となるインクジェット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、実基板に形成されている画素形成用格子により区画された多数の画素部にインクを着弾させるノズルを有するインクジェット装置の、当該ノズルからのインクの着弾位置を検証する着弾位置検証方法であって、前記インクに対して撥液性を有している検証用基板に対して、前記ノズルから前記インクを着弾させ、前記検証用基板上に着弾させた前記インクの画像を基準座標と対応つけて取得すると共に、取得した当該画像に、前記画素形成用格子と同じ形状を有するように作成され前記基準座標と対応付けられている格子形状情報を、前記基準座標を一致させてオーバーレイ表示することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、検証用基板はインクに対して撥液性を有しているので、ノズルから検証用基板に着弾させたインクは当該検証用基板上で点状となる。この検証用基板上のインクの画像を基準座標と対応付けて取得すると共に、この画像に前記格子形状情報を基準座標を一致させてオーバーレイ表示するので、格子形状情報に基づく格子形状に対するインクの着弾位置を視覚化させることが可能となる。このため、インクの着弾位置の検証が容易となる。
【0008】
また、前記着弾位置検証方法では、前記検証用基板の全面の内の、少なくとも相互が離れた複数の代表部分に対して、前記ノズルから前記インクを着弾させ、前記代表部分における前記インクの画像を取得するのが好ましい。
この場合、インクの着弾を、前記複数の代表部分のみ又は当該代表部分を含む広い部分(例えば全面や一列すべて)に対して行ってもよいが、インクの画像の取得は、検証用基板の全面ではなく代表部分でよいので、検証作業時間が短くて済む。
【0009】
また、本発明は、画素形成用格子により区画された多数の画素部が形成されている実基板に、インクを塗布して着色基板を装置本体上で作製するインクジェット装置であって、前記インクを滴下させるノズルを有していると共に前記装置本体に規定されている基準座標で座標管理されて移動可能であるインクジェットヘッドと、前記ノズルから滴下させた前記インクの画像を取得する撮像装置と、前記画素形成用格子と同じ形状を有している格子形状情報を前記基準座標と対応付けて記憶している記憶部と、前記撮像装置が取得した前記画像を前記基準座標と対応つけて取得すると共に、当該画像に前記格子形状情報を前記基準座標を一致させて表示部にオーバーレイ表示させる制御部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、撮像装置は、ノズルから滴下させたインクの画像を取得し、記憶部には、画素形成用格子と同じ形状を有している格子形状情報が基準座標と対応付けて記憶されている。そして、制御部は、撮像装置が取得した画像を基準座標と対応つけて取得すると共に、当該画像に前記格子形状情報を基準座標を一致させて表示部にオーバーレイ表示させるので、格子形状情報に基づく格子形状に対するインクの着弾位置を視覚化させることが可能となる。このためインクの着弾位置の検証を容易に行うことができる。
【0011】
また、前記記憶部は、前記格子形状情報として、前記画素形成用格子の設計値に基づいて作成された第一情報、製造後の実基板の前記画素形成用格子を前記装置本体外で計測した計測値に基づいて作成された第二情報、及び、前記装置本体上に載置した実基板の前記画素形成用格子を計測した計測値に基づいて作成された第三情報の内の、少なくとも二つを記憶し、前記制御部は、前記第一情報、前記第二情報及び前記第三情報の内の、前記少なくとも二つを切り替えて、前記撮像装置が取得した前記画像にオーバーレイ表示させる機能を有しているのが好ましい。
この場合、着弾させたインクの位置と比較する格子形状情報を、制御部によって切り替えることができる。例えば、撮像装置が取得した画像に、第一情報をオーバーレイ表示させれば、設計上の画素形成用格子に対するインクの着弾位置を確認することができ、第二情報をオーバーレイ表示させれば、製造後の実基板の画素形成用格子に対するインクの着弾位置を確認することができ、また、第三情報をオーバーレイ表示させれば、装置本体上に載置した実基板の画素形成用格子に対するインクの着弾位置を確認することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクの着弾位置の検証が容易となるので、検証時間の短縮化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクジェット装置の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】(a)は実基板及びヘッドを拡大して示している説明図であり、(b)は検証用基板及びヘッドを拡大して示している説明図である。
【図3】検証用基板上に滴下させたインク及びカメラの説明図である。
【図4】着弾位置検証方法を説明しているフロー図である。
【図5】インクを着弾させた検証用基板の説明図であり、(a)は全体平面図、(b)は一部分をモニタに表示させた様子を示し、(c)は他部分をモニタに表示させた様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はインクジェット装置の実施の一形態を示す斜視図である。このインクジェット装置は、装置本体8と、この装置本体8における各種動作を制御する制御装置20とを備えている。装置本体8は、機台1、当該機台1上に設けられた吸着テーブル2、塗布ガントリ3及びカメラガントリ4を備えている。装置本体8には、XYZの直交座標である基準座標が規定されている。なお、以下では、前記基準座標をXYZ座標と呼ぶ。Z方向は鉛直方向であり、X方向及びY方向は水平面上の方向であり、X方向、Y方向及びZ方向は相互に直交する。
【0015】
吸着テーブル2は、平板状のガラス等からなる透明の実基板W0又は後述する検証用基板W1を吸着保持することができ、さらに、実基板W0又は検証用基板W1をXYZ座標で位置決めするために、Z方向の軸心周りに回転駆動される。
塗布ガントリ3は、複数個のインクジェットヘッド6(以下、ヘッド6という)を一組として有しているヘッド体(ヘッド群)7を、複数整列させて搭載したヘッド搭載部(ヘッド搭載フレーム)5を備えている。塗布ガントリ3は吸着テーブル2上の実基板W0又は検証用基板W1を跨ぐ形状であり、複数のヘッド体7は実基板W0又は検証用基板W1の上方に位置する。
【0016】
ヘッド6から吐出させたインクを実基板W0又は検証用基板W1に塗布するために、塗布ガントリ3が図示しない駆動機構及びガイド機構によってX方向に移動することで、ヘッド6は同方向に移動し、また、このヘッド6は、塗布ガントリ3上を図示しない駆動機構及びガイド機構によってY方向に移動する。この移動の際、ヘッド6は制御装置20によって前記XYZ座標で座標管理される。つまり、装置本体8に設けられているリニアスケール(図示せず)によってヘッド6の位置(座標)が検知され、当該位置の情報は、リニアスケールから制御装置20へ送信される。
【0017】
カメラガントリ4は、吸着テーブル2上の実基板W0又は検証用基板W1を跨ぐ形状であり、図示しない駆動機構及びガイド機構によってX方向に移動する。カメラガントリ4には、カメラ10aを有している撮像装置10が搭載されている。カメラ10aは、カメラガントリ4上を、図示しない駆動機構及びガイド機構によってY方向に移動可能であり、また、カメラガントリ4がX方向に移動することで、カメラ10aは同方向に移動する。この移動の際、カメラ10aは制御装置20によって前記XYZ座標で座標管理される。つまり、装置本体8に設けられているリニアスケール(図示せず)によってカメラ10aの位置(座標)が検知され、当該位置の情報は、リニアスケールから制御装置20へ送信される。
【0018】
この構成によるインクジェット装置は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の各インクを、ヘッド6から実基板W0に対して吐出することで、例えばカラー液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられるカラーフィルタ(着色基板)を作製することができる。
【0019】
図2(a)は実基板W0及びヘッド6を拡大して示している説明図である。実基板W0には、画素形成用格子11(ブラックマトリックス格子:以下、BM格子11という)により区画された多数の画素部12が形成されている。ヘッド6は、インク9を滴下させる複数のノズル6aを有していて、このノズル6aから画素部12に複数滴のインク9を滴下させることで、カラーフィルタを装置本体8上で作製する。
このようにしてカラーフィルタを作製するが、インク9を実基板W0に塗布する塗布作業の準備として、後にも説明するが、実基板W0の各画素部12の設計上の位置(例えば各画素部12の中央)に正しくインク9の着弾位置が存在するか否かの検証を行う必要がある。そこで、本発明では、この検証のために、図2(b)に示しているように、実基板W0での代わりとして、検証用基板W1に対してヘッド6からインク9を滴下させる。検証用基板W1については後に説明する。
【0020】
図3は、検証用基板W1上に滴下させたインク9及びカメラ10aの説明図である。カメラ10aは、ノズル6aから検証用基板W1に滴下させたインク9の画像を取得する。カメラ10aによって取得された画像は制御装置20に送信される。また、当該画像を撮像している際(撮像した際)のカメラ10aの位置情報が、図示していないリニアスケールから制御装置20へ送信される。
前記検証用基板W1は、着弾位置を検証するための専用基板であり、表面(上面)の全面において、インク9に対して撥液性を有している。この撥液性は、例えばインク9の接触角θが40°以上となる性質である(例えば、インクの表面張力が25mN/mであれば、接触角θは40°以上となる物理性質を有するものである)。また、検証用基板W1は、実基板W0のようにBM格子11が形成されておらず表面が平坦である板であり、その表面全体において撥液性を有している。図1の検証用基板W1は、1枚であり、吸着テーブル2に載せられた状態にある実基板W0の外周輪郭形状と同等以上の大きさを有している。なお、吸着テーブル2上に載せられる実基板W1の大きさが複数種類である場合は、これに合わせて検証用基板W1を複数枚で一組のものとしてもよい。
【0021】
前記制御装置20は、CPU及びRAMやROMを有しているコンピュータからなる。制御装置20には所定の各機能を実行するためのプログラムが記憶されていて、制御装置20は、前記プログラムによって実行される機能部として、装置本体8からの各種情報及び画像を取得する取得処理部と、取得した情報及び画像をモニタ(表示部)27に表示させる表示処理部と有している。
【0022】
また、インクジェット装置は各種情報を記憶している記憶装置(記憶部)25を更に備えている。記憶装置25は、ハードディスクや、RAM又はROM等のメモリであり、図1では制御装置20と共に設けられている。記憶装置25には、実基板W1が有している前記BM格子11と同じ形状(模様)を有している格子形状情報(仮想の格子形状の情報)が、制御装置20が処理することのできる情報として、装置本体8に設定されている前記XYZ座標の内のXY座標と対応付けて記憶されている。前記格子形状情報は、BM格子11の形状を再現させることができる形状に関する情報であり、BM格子11の形状がXY座標に座標変換されて当該XY座標上の座標情報となって記憶装置25に記憶されている。
【0023】
以上の構成を備えたインクジェット装置の装置本体8上において行われる着弾位置検証方法について説明する。この着弾位置検証方法は、画素部の設計上の位置にインク9の着弾位置が存在するか否かを検証する方法である。図4は、この検証方法を説明しているフロー図である。
図1に示しているように、検証用基板W1を装置本体8の吸着テーブル2に設置し(図4のステップS1)、塗布ガントリ3を待機位置(図1の状態)よりX方向に移動させながら、図2(b)に示しているように、検証用基板W1に対して所定のノズル6aからインク9を着弾させる(ステップS2)。この着弾は、検証用基板W1を実基板W0としたならば一つの画素部12に対して、1滴のインク9を着弾させるようにして行う。
【0024】
そして、塗布ガントリ3がX方向の終端まで移動して検証用基板W1にインク9を着弾させると、塗布ガントリ3は待機位置に戻り、カメラガントリ4及び撮像装置10を作動させる。すなわち、検証用基板W1上に滴下させた各インク9の上方位置にカメラ10aを位置させ(図3参照)、当該インク9の画像を撮像し、その画像を制御装置20へ送信する(ステップS3)。また、各インク9の画像を撮像している際のカメラ10aのXY座標における位置情報は、図示していない装置本体8のリニアスケールから制御装置20へ送信されている。
図5はインク9を着弾させた検証用基板W1の説明図であり、図5(a)は全体平面図である。図5(a)の着弾させた複数のインクのうちの、インク9−1をX方向の第一の基準とし、インク9−2をX方向の第二の基準とする。これら第一の基準及び第二の基準の座標を、制御装置20は知ることができる。なお、基準とする着弾インクは、インク9−1、インク9−2以外であってもよく、インク9−1、インク9−3をY方向の基準としてもよい。
【0025】
記憶装置25には、前記格子形状情報がXY座標で対応つけられて記憶されている。そこで、制御装置20は、カメラ10aが取得したインク9の画像をXY座標と対応つけて取得する(ステップS3)と共に、取得した画像に前記格子形状情報を、XY座標を一致させてモニタ27にオーバーレイ表示させる(ステップS4)。
図5(b)は、図5(a)の検証用基板W1の一部分A1をモニタ27に表示(オーバレイ表示)させた様子を示し、図5(c)は図5(a)の検証用基板W1の他部分A2をモニタ27に表示(オーバーレイ表示)させた様子を示している。
図5(b)に示しているように、オーバーレイ表示をする際、前記第一の基準(インク9−1)と、格子形状情報が有する基準となる格子の中心とを、一致させる。
【0026】
ステップS4のオーバーレイ表示についてさらに説明すると、カメラ10aがXY座標上の一部に位置し検証用基板W1のある部分を撮像すると、制御装置20は、この部分の映像をモニタ27に表示させる。さらに、制御装置20は、カメラ10aのXY座標における位置を把握でき当該カメラ10aのXY座標における撮像位置(例えば画像中心となる座標)を特定することができるので、記憶装置25が記憶している前記格子形状情報から、当該撮像位置に相当する部分的な格子形状についての情報を取得し、当該格子の部分的な形状もモニタ27にオーバーレイ表示させる。
【0027】
すなわち、図5(b)に示しているように、カメラ10aが検証用基板W1の一部分A1を撮像した場合、制御装置20は、当該カメラ10aの画像に、当該一部分A1に対応した格子形状情報に基づく格子形状V1をモニタ27にオーバーレイ表示させる。カメラ10aを移動させ、図5(c)に示しているように、カメラ10aが検証用基板W1の他部分A2を撮像した場合、制御装置20は、当該カメラ10aの画像に、当該他部分A2に対応した格子形状情報に基づく格子形状V2をモニタ27にオーバーレイ表示させる。図5(b)(c)では、格子形状情報に基づく格子形状V1,V2を二点鎖線で示しているが、実際のモニタ27では実線で表示することができる。
【0028】
仮に、BM格子11を有している実基板W0に対してインク9を滴下させていたとすれば、このカメラ10aには当該BM格子11がインク9と共に撮像されているはずであるが、本発明では、実際のBM格子11に代わって、カメラ10aの画像に格子形状情報に基づく格子形状Vをオーバーレイ表示させている。
以上より、検証作業者は、モニタ27を見ることで、格子形状情報に基づく格子形状Vに対してインク9がはみ出していないことを視覚的に確認することができる。つまり、実基板W0にインクを塗布した場合のシミュレーションを行うことができる。
【0029】
例えば、画素部12の中央にインク9を滴下させるようにしてヘッド6が設定されている場合、図5(b)によれば、部分A1では、格子形状情報に基づく格子形状Vで区画された仮想上の画素部Gの中央にインク9が存在しているので、設計上の位置にインク9が着弾することが視覚的に確認される。つまり、この場合、実基板W0であるならば、実際の画素部12の中央にインク9が着弾することとなる。
しかし、図5(c)に示している部分A2では、仮想上の画素部G内にインク9が存在しているが、中央よりもY方向に少しずれていることが視覚的に確認される。この場合、実基板W0であるならば、実際の画素部12の中央からY方向に少しずれた位置にインク9が着弾することとなる。
【0030】
この検証により、実基板W0に対して実際の塗布作業を行う前に、着弾位置を微調整することができる。例えば図5(c)の場合、実基板W0の内の前記部分A2に相当する領域にインク9を滴下させる際に、検証でわかったずれ方向と反対の方向にインク9を滴下させるように着弾位置を微調整すればよい。この微調整の手段としては、例えば、ヘッド6を進行させる制御のための動作制御プログラムに、ある関数を含め、前記部分A2に相当する領域で、ヘッド6の進行具合を変更させたり、ヘッド6の位置を管理するためのリニアスケールの格子ピッチの誤差を補正するなどして、調整することができる。
【0031】
また、図5(a)に示しているように、実施形態では、検証用基板W1の全面の内の相互が離れた複数の代表部分のみに対して、ノズル6aからインク9を着弾させ、当該代表部分におけるインク9の画像を取得している。図5(a)の場合では、検証用基板W1は四角形であり、代表部分は、四隅の内の対角線上で離れた部分(A1、A2、A3、A4)である。また、必要に応じて中央の部分A5を含めることができる。
この場合、インク9の着弾及びカメラ10aによる画像の取得は、検証用基板W1の全面ではなく代表部分のみでよいため、検証作業時間が短くて済む。なお、離れた二つの代表部分間におけるインク9の着弾位置は、当該代表部分の双方をモニタ27によって検証作業者が確認することで、推定することができる。つまり図5(b)(c)に示しているように、代表部分A1と代表部分A2との間では、インク9の着弾位置がY方向へ徐々に位置ずれしていると推定することができる。この場合には、代表部分A1及び代表部分A2の両隅部の検証を行う本実施形態では、検証用基板W1の全範囲で検証を行ったことと等価とすることが可能となる。すなわち、両隅部は、塗布範囲の内の最大距離が隔てられた部分であるため、座標誤差も最大となることが予想されるので、検証用基板W1の全範囲で検証を行ったことと等価とすることが可能となる。
【0032】
前記格子形状情報についてさらに説明する。格子形状情報は、実基板W0のBM格子11に基づいて作製されるが、この基準となるBM格子11の形状(測定値)が複数種類あり得ることから、格子形状情報も複数種類存在する。
つまり、一つ目の格子形状情報として、実基板W0を作製するためのBM格子11の設計値に基づいて作成された第一情報がある。これは、設計上のBM格子11の形状についての情報を、制御装置20によって、前記XY座標に座標変換し、記憶装置25に記憶させたものである。
二つ目の格子形状情報として、実基板W0を製造した後のBM格子11を、装置本体8外で計測した計測値に基づいて作成された第二情報がある。これは、実基板W0の製造メーカにおいて、完成した実基板W0のBM格子11の形状を計測した計測値を利用するものであり、この計測値についての情報を、制御装置20によって、前記XY座標に座標変換し、記憶装置25に記憶させたものである。
また、三つ目の格子形状情報として、装置本体8上に載置した実基板W0のBM格子11を、当該装置本体8で座標管理されている前記カメラ10aで撮像して計測した計測値に基づいて得られた第三情報がある。これは、BM格子11が形成されている実基板W0を装置本体8の吸着テーブル2上に設置した状態で、制御装置20によって、当該実基板W0のBM格子11を前記カメラ10aを用いて実測し、この際に得られた計測値についての情報を、前記XY座標に座標変換し、記憶装置25に記憶させたものである。
【0033】
そして、記憶装置25は、格子形状情報として、前記第一情報、第二情報及び第三情報の内の少なくとも一つを記憶していて、この格子形状情報を制御装置20が利用すればよい。なお、実際にカラーフィルタを作製するためには、第三情報が好ましく、実基板W0の画素部12における着弾位置を正確に検証することが可能となる。第一情報とした場合、着弾位置の検証結果には、実基板W0の製造誤差、及び、装置本体8における誤差(ゆがみ)も含まれるので、実基板W0の製造精度の向上、及び、装置本体8の調整に役立てることができる。そして、第二情報とした場合、装置本体8における誤差も含まれるので、装置本体8の調整に役立てることができる。
【0034】
さらに好ましい実施形態としては、記憶装置25は、格子形状情報として、第一情報、第二情報及び第三情報の内の少なくとも二つを記憶していて、制御装置20は、これら第一情報、第二情報及び第三情報の内の、前記少なくとも二つを切り替えて、カメラ10aが取得した画像にオーバーレイ表示させる機能を有している。
この場合、検証作業者が、着弾させたインク9の位置と比較する格子を切り替えることができ、例えば、実際に使用する実基板W0の画素部12におけるインク9の着弾位置のずれや(第三情報の場合)、インク9の着弾位置と設計上の画素部との位置とのずれ(第一情報の場合)等を、検証することが可能となる。
【0035】
以上本発明のインクジェット装置及びこのインクジェット装置において行うことができる着弾位置検証方法によれば、全面撥液性を有する検証用基板W1を採用しているので、ノズル6aから着弾させたインク9は検証用基板W1上で点状となる。そして、この検証用基板W1上のインク9の画像をXY座標と対応付けて取得し、この画像に、格子形状情報をXY座標を一致させてオーバーレイ表示するので、格子形状情報に基づく格子形状に対するインク9の着弾位置を照合して視覚的に確認することが可能となる。このように制御装置20によって、インク9の着弾位置と、理論上のBM格子となる格子形状情報とを同時に視覚化させることができるため、設計上の位置にインク9が着弾しているか否かの検証が容易となる。
この結果、従来のように、画素部とこの画素部内に着弾しているインクを撮像し画像処理することで数値化して比較演算する必要がなく、検証時間の短縮化が可能となり、迅速に塗布作業に進むことができ、カラーフィルタの製造効率を向上させることができる。
【0036】
またこの検証を行うことで、例えば、着弾位置が、格子形状情報に基づく格子形状からはみ出している場合、このまま塗布作業を行うと、インクが画素部以外の部分に滴下され、周囲の画素部において混色が生じてしまい、カラーフィルタの品質を低下させてしまう。この場合、塗布作業の前にインクジェット装置の微調整を行う。また、インクを着弾させたはずが、インクが撮像されていない場合、ノズルからインクが吐出されていない不吐出の不具合を見つけることも可能となる。
【0037】
なお、前記のような検証用基板W1ではなく、実基板W0の内の、画素部12が存在していない縁部は撥液性を有しているので、このような縁部にインクを滴下させ、カメラで撮像してもよいが、この場合、縁部のみの検証となる。このため、インクを滴下させた方向(例えばX方向)についての着弾位置の検証は可能となるが、これ以外の方向(Y方向)についての着弾位置の検証は行えない。しかし、本発明では、いずれの方向(X方向及びY方向の双方)についても検証を行うことができる。
また、塗布作業のために、実基板W0を吸着テーブル2上に載置するとき、前記着弾位置検証でオーバーレイ表示する際に前記基準とした着弾インク9−1(図5参照)の位置(座標)に、実基板W0の基準となるBM格子11の中心位置を一致させればよいが、実基板W0をオフセットして載置させてもよい。この場合、当該塗布作業前に行う前記着弾位置検証(着弾位置検証方法)において、格子形状情報を同じ量だけオフセットさせてオーバーレイ表示させれば、実基板W0をオフセットさせて載置する場合における着弾位置の検証(シミュレーション)が可能となる。
【0038】
また、本発明は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。図5(a)では、五カ所の代表部分に対してインク9を着弾させ、カメラ10aで撮像した場合を説明したが、これ以外に、検証用基板W1の全面の内の、少なくとも相互が離れた複数の代表部分に対して、すなわち、(例えば)代表部分A1と代表部分A4とを含む全面に対して、又は、(例えば)代表部分A1と代表部分A4とを含むX方向の一列に対して、インクを着弾させればよい。そして、この場合であっても、前記代表部分のみにおけるインクの画像を取得して検証に用いればよい。
また、インクの画像を撮像して検証する代表部分は五カ所以外であってもよく、少なくとも二カ所であればよく、例えば、部分A1と部分A2との二カ所のみであってもよい。
また、前記実施形態では、カラーフィルタの製造に用いられる塗布装置について説明したが、有機ELを含むフラットパネルディスプレイや太陽電池等の製造に用いられる塗布装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
6:ヘッド(インクジェットヘッド)、 6a:ノズル、 8:装置本体、 9:インク、 10:撮像装置、 11:BM格子(画素形成用格子)、 12:画素部、 20:制御装置(制御部)、 25:記憶装置(記憶部)、 27:モニタ(表示部)、 A1〜A5:代表部分、 W0:実基板、 W1:検証用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実基板に形成されている画素形成用格子により区画された多数の画素部にインクを着弾させるノズルを有するインクジェット装置の、当該ノズルからのインクの着弾位置を検証する着弾位置検証方法であって、
前記インクに対して撥液性を有している検証用基板に対して、前記ノズルから前記インクを着弾させ、
前記検証用基板上に着弾させた前記インクの画像を基準座標と対応つけて取得すると共に、取得した当該画像に、前記画素形成用格子と同じ形状を有するように作成され前記基準座標と対応付けられている格子形状情報を、前記基準座標を一致させてオーバーレイ表示することを特徴とする着弾位置検証方法。
【請求項2】
前記検証用基板の全面の内の、少なくとも相互が離れた複数の代表部分に対して、前記ノズルから前記インクを着弾させ、
前記代表部分における前記インクの画像を取得する請求項1に記載の着弾位置検証方法。
【請求項3】
画素形成用格子により区画された多数の画素部が形成されている実基板に、インクを塗布して着色基板を装置本体上で作製するインクジェット装置であって、
前記インクを滴下させるノズルを有していると共に前記装置本体に規定されている基準座標で座標管理されて移動可能であるインクジェットヘッドと、
前記ノズルから滴下させた前記インクの画像を取得する撮像装置と、
前記画素形成用格子と同じ形状を有している格子形状情報を前記基準座標と対応付けて記憶している記憶部と、
前記撮像装置が取得した前記画像を前記基準座標と対応つけて取得すると共に、当該画像に前記格子形状情報を前記基準座標を一致させて表示部にオーバーレイ表示させる制御部と、
を備えていることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記格子形状情報として、前記画素形成用格子の設計値に基づいて作成された第一情報、製造後の実基板の前記画素形成用格子を前記装置本体外で計測した計測値に基づいて作成された第二情報、及び、前記装置本体上に載置した実基板の前記画素形成用格子を計測した計測値に基づいて作成された第三情報の内の、少なくとも二つを記憶し、
前記制御部は、前記第一情報、前記第二情報及び前記第三情報の内の、前記少なくとも二つを切り替えて、前記撮像装置が取得した前記画像にオーバーレイ表示させる機能を有している請求項3に記載のインクジェット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−227789(P2010−227789A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76810(P2009−76810)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】