説明

着火不良検出装置

【課題】 ガス燃焼機器での点火装置が劣化したときに発生する着火不良を、速やかに検出して的確に対処することができ、安全性を向上させることができるようにする。
【解決手段】 この発明の着火不良検出装置100は、ガス燃焼機器3の着火不良を検出する装置であり、ガス燃焼機器3のガス流量を検出するガス流量検出手段11と、ガス流量検出手段11が検出したガス流量の履歴から、着火不良であるか否かを判別する着火不良判別手段12と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃焼機器の着火不良を検出する着火不良検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼機器には、点火装置が備えてあり、ユーザが操作用ツマミを回すと、ガスが流れ出すとともに火花が発生してガスに着火するようになっている。そして、点火装置が劣化してくると、操作用ツマミを回しても火花が発生し難くなり、点火させるために何回も操作用ツマミを回すようになる。その後さらに時間が経過し劣化が進むと、ついに自動的に着火できなくなった時点で、ユーザは故障だとして修理依頼を行うのが通常のパターンとなる。
【0003】
しかし、上記のように、自動着火が困難になりながらも使用を継続していると、ガス漏れの原因にもなりやすく、安全上好ましいとは言えなかった。そこで、点火装置の劣化や故障をより速やかに検出して的確に対処できるようにしたいという要望が高まっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上記に鑑み提案されたもので、ガス燃焼機器での点火装置が劣化したときに発生する着火不良を、速やかに検出して的確に対処することができ、安全性を向上させることができる着火不良検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ガス燃焼機器の着火不良を検出する着火不良検出装置において、上記ガス燃焼機器のガス流量を検出するガス流量検出手段と、上記ガス流量検出手段が検出したガス流量の履歴から、着火不良であるか否かを判別する着火不良判別手段と、を備えることを特徴としている。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の構成に加えて、上記着火不良判別手段は、予め登録されている着火正常時ガス流量パターンと、最初のガス流量の立ち上がり時点から所定時間にわたって検出されたガス流量の履歴とを比較して、着火不良であるか否かを判別する、ことを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1または2に記載の発明の構成に加えて、上記ガス流量検出手段は、ガス流量を一定の時間間隔毎に検出する電子式ガスメータである、ことを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1から3の何れかに記載の発明の構成に加えて、上記着火不良判別手段は、ガス流量の履歴から着火動作を認識し、最初の着火動作から一定の時間内に着火動作が繰り返し発生したとき、着火不良であると判別する、ことを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1から4の何れかに記載の発明の構成に加えて、上記着火不良判別手段が着火不良であると判別した回数が所定回数以上のとき、ガス燃焼機器の点火装置が異常である旨の報知を行う報知手段を備える、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の着火不良検出装置では、ガス燃焼機器のガス流量の履歴から、着火不良であるか否かを判別するようにしたので、ガス燃焼機器での点火装置が劣化したときに発生する着火不良を、速やかに検出して的確に対処することができ、安全性を向上させることができる。
【0011】
また、予め登録されている着火正常時ガス流量パターンと、最初のガス流量の立ち上がり時点から所定時間にわたって検出されたガス流量の履歴とを比較して、着火不良であるか否かを判別するようにしたので、判別を確実にかつ的確に行うことができる。
【0012】
また、ガス流量を、一定の時間間隔毎に検出する電子式ガスメータを用いて検出するようにしたので、着火時のガス流量の瞬間的な立ち上がりも確実に認識することができ、それに基づいて着火不良の検出を精度良く行うことができる。
【0013】
さらに、ガス流量の履歴から着火動作を認識し、最初の着火動作から一定の時間内に着火動作が繰り返し発生したとき、着火不良であると判別するようにしたので、着火不良を的確に検出することができる。
【0014】
また、着火不良であると判別した回数が所定回数以上のとき、ガス燃焼機器の点火装置が異常である旨の報知を行うようにしたので、着火不良への対処を適切なタイミングで行うことができ、安全性も十分に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下にこの発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1はこの発明の着火不良検出装置の説明図である。この発明の着火不良検出装置100は、ガス燃焼機器3の着火不良を検出する装置であり、例えば高圧ガス容器1と家屋2内のガス燃焼機器3との間のガス配管4に配置された電子式ガスメータ5に構築される。ガス燃焼機器3としては、ガスコンロ、瞬間ガス湯沸かし器、ガス給湯器等が挙げられる。
【0017】
この着火不良検出装置100は、ガス燃焼機器3のガス流量を検出するガス流量検出手段11と、ガス流量検出手段11が検出したガス流量の履歴から、着火不良であるか否かを判別する着火不良判別手段12と、着火不良判別手段12が着火不良であると判別した回数が所定回数以上のとき、ガス燃焼機器3の点火装置が異常である旨の報知を行う報知手段13と、を備えている。
【0018】
このガス流量検出手段11、着火不良判別手段12および報知手段13は、電子式ガスメータ5の内部に設けられるマイコン、または電子式ガスメータ5に外付けされたマイコンに設けられ、メモリに格納された本発明に係るソフトウェアに従ってCPUが動作する機能を含めて構成されている。
【0019】
家屋2内のガス燃焼機器3の操作用ツマミ3aを使用者が回すと、その着火動作に応じて、ガス燃焼機器3では高圧ガス容器1から供給されるLPガスが流出するとともに、ガス燃焼機器3に設けられている点火装置(図示省略)によって火花が発生し、その火花でLPガスに着火し燃焼が開始する。電子式ガスメータ5はそのときのガス流量を検出する。
【0020】
図2はガス流量検出手段として活用する電子式ガスメータによる計測原理の説明図である。電子式ガスメータ5は次のようにしてガス流量を求めている。すなわち、図2に示すように、電子式ガスメータ5の内部に形成されるガス流路50中に対向超音波センサー51,52を斜めに対向するように設け、ガスの流れの上流から下流への超音波の到達時間T1と、下流から上流への到達時間T2を測定する。
【0021】
一方、この到達時間T1,T2は、音速C、ガスの流速U、超音波センサー51,52間の距離(伝搬距離)L、超音波センサー51,52同士を結ぶ直線とガスが流れる方向とのなす角度θを用いて下記の式(1)(2)で表される。
【数1】

【数2】

【0022】
上記の式(1)(2)から、ガスの流速Uは、次式(3)で求めることができる。
【数3】

【0023】
上記の式(3)からも分かるように、ガスの流速Uは、音速や温度に影響されず、超音波センサー51,52の設置条件であるL,θを用いて求めることができる。
【0024】
ガス流量Qは、このガスの流速Uとガス流路50の断面積Sを用いて次式(4)で求めることができる。このガス流量Qは、積算値でなくその計測時点での瞬間的な流量である。
【数4】

【0025】
ガス流量検出手段11は、このガス流量Qを一定の時間間隔毎に入手し、そのデータを時系列的にメモリに記憶し蓄積する。
【0026】
図3はガス流量の検出履歴を示す図であり、(a)は着火が正常な場合、(b)は着火不良の場合をそれぞれ示している。図3(a)(b)の横軸は時間t、縦軸はガス流量Qである。図中のプロットは一定の時間間隔毎の計測データであり、破線はプロット同士を結ぶ想定線である。使用者がガス燃焼機器3の操作用ツマミ3aを回して着火動作を行うと、それに応じて電子式ガスメータ5がガス流量Qを検出する。
【0027】
ガス流量検出手段11は、上記のように、電子式ガスメータ5が一定の時間間隔毎に計測したガス流量Qを入手し、そのデータを時系列的に記憶し蓄積する。このガス流量Qの検出履歴には、着火が正常に行われている場合は、図3(a)に示すように、着火動作時に立ち上がるガス流量Qaと、その後操作用ツマミ3aの開度に応じて安定して流れるガス流量Qbとが現れる。一方、着火不良の場合は、図3(b)に示すように、着火動作時に立ち上がるガス流量Qcと、操作用ツマミ3aの開度に応じて流れるガス流量Qdと、使用者が着火不良に気づいて操作用ツマミ3aを閉じたことにより立ち下がるガス流量Qeとが現れる。使用者は着火動作を何回か行うので、その着火動作の各々に応じてガス流量Qc,Qd,Qeが繰り返し現れる。
【0028】
図3(a)に示すような、着火正常時の安定したガス流量Qbは、操作用ツマミ3aの開度に応じて値に幅を有しているが、その幅を含めてパターン化され、着火正常時ガス流量パターンとして予めメモリに登録されている。
【0029】
着火不良判別手段12は、ガス流量検出手段11が検出したガス流量の履歴から、着火不良であるか否かを判別する。すなわち、予め登録されている着火正常時ガス流量パターンと、最初のガス流量の立ち上がり時点から所定時間(例えば15秒)にわたって検出されたガス流量Qの履歴とを比較して、着火不良であるか否かを判別する。
【0030】
また、着火不良判別手段12による他の判別方法として、ガス流量Qの履歴を用い、その履歴からガス流量Qの立ち上がりQcを捉えて着火動作として認識し、最初の着火動作から一定の時間内に着火動作が繰り返し発生したとき、着火不良であると判別するようにしてもよい。例えば、最初の着火動作から5秒以内に着火動作が3回発生したとき、着火不良であると判別する。
【0031】
上記の報知手段13は、着火不良判別手段12が着火不良であると判別した回数が所定回数、例えば3回以上のとき、ランプ13aを点滅する等によりガス燃焼機器3の点火装置が異常である旨の報知を行う。このランプ13aをガス燃焼機器3に配置すると、使用者が異常を知り、ガス管理センターに速やかに連絡できるようになる。また、報知手段13が、通信回線を経由してガス管理センターに直接、着火不良の報知を行うようにすると、ガス管理センターによる一層速やかな対応が可能となる。
【0032】
以上述べたように、この発明の着火不良検出装置100では、ガス燃焼機器3のガス流量Qを、電子式ガスメータ5を用いて一定の時間間隔毎に検出するようにしたので、その時点での瞬間的なガス流量を入手でき、着火時のガス流量Qの瞬間的な立ち上がりQcも確実に認識することができる。したがって、それに基づいて着火不良の検出を精度良く行うことができる。なお、ダイヤフラムを用いる従来のガスメータでは、ガス流量は積算値となるため、ガス流量Qの立ち上がりQcを捉えることはできず、着火不良の検出を行うことができなかった。
【0033】
また、この発明ではガス流量Qの履歴から、着火不良であるか否かを判別するので、ガス燃焼機器3での点火装置が劣化したときに発生する着火不良を、速やかに検出して的確に対処することができ、安全性を向上させることができる。
【0034】
また、予め登録されている着火正常時ガス流量パターンと、最初のガス流量の立ち上がり時点から所定時間にわたって検出されたガス流量Qの履歴とを比較して、着火不良であるか否かを判別するようにしたので、判別を確実にかつ的確に行うことができる。
【0035】
さらに、ガス流量Qの履歴から着火動作を認識し、最初の着火動作から一定の時間内に着火動作が繰り返し発生したとき、着火不良であると判別するようにしたので、着火不良を的確に検出することができる。
【0036】
また、着火不良であると判別した回数が所定回数以上のとき、ガス燃焼機器3の点火装置が異常である旨の報知を行うようにしたので、着火不良への対処を適切なタイミングで行うことができ、安全性も十分に向上させることができる。
【0037】
上記の説明では、ガス燃焼機器3にLPガスが流れるようにしたが、LPガス以外の他のガス、例えば都市ガスが流れるようにしても、同様に本発明を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の着火不良検出装置の説明図である。
【図2】ガス流量検出手段として活用する電子式ガスメータによる計測原理の説明図である。
【図3】ガス流量の検出履歴を示す図であり、(a)は着火が正常な場合、(b)は着火不良の場合をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0039】
1 高圧ガス容器
2 家屋
3 ガス燃焼機器
3a 操作用ツマミ
4 ガス配管
5 電子式ガスメータ
11 ガス流量検出手段
12 着火不良判別手段
13 報知手段
13a ランプ
50 ガス流路
51 超音波センサー
52 超音波センサー
100 着火不良検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス燃焼機器の着火不良を検出する着火不良検出装置において、
上記ガス燃焼機器のガス流量を検出するガス流量検出手段と、
上記ガス流量検出手段が検出したガス流量の履歴から、着火不良であるか否かを判別する着火不良判別手段と、
を備えることを特徴とする着火不良検出装置。
【請求項2】
上記着火不良判別手段は、予め登録されている着火正常時ガス流量パターンと、最初のガス流量の立ち上がり時点から所定時間にわたって検出されたガス流量の履歴とを比較して、着火不良であるか否かを判別する、請求項1に記載の着火不良検出装置。
【請求項3】
上記ガス流量検出手段は、ガス流量を一定の時間間隔毎に検出する電子式ガスメータである、請求項1または2に記載の着火不良検出装置。
【請求項4】
上記着火不良判別手段は、ガス流量の履歴から着火動作を認識し、最初の着火動作から一定の時間内に着火動作が繰り返し発生したとき、着火不良であると判別する、請求項1から3の何れか1項に記載の着火不良検出装置。
【請求項5】
上記着火不良判別手段が着火不良であると判別した回数が所定回数以上のとき、ガス燃焼機器の点火装置が異常である旨の報知を行う報知手段を備える、請求項1から4の何れか1項に記載の着火不良検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−313036(P2006−313036A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135566(P2005−135566)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000168643)高圧ガス保安協会 (92)
【Fターム(参考)】