説明

着用型薬剤拡散装置

【課題】モータ、電池を用いずに多くの薬剤を確実に揮散できると共に、薬剤の揮散や揮散した薬剤の拡散に風の影響を受け難い着用型の薬剤拡散装置とする。
【解決手段】装置本体1に着用具3を取付けて身体に着用できるようにし、前記装置本体1の空洞部1aに薬剤保持手段2を回転自在に設け、この薬剤保持手段2と装置本体1に第1・第2の磁石4,5を設けて薬剤保持手段2の回転を助長し、前記装置本体1の裏面1bに空気流通口6を設けて薬剤を身体に向けて拡散すると共に、空洞部1aの内に風が多量に入り込むことがないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間、家畜やペット等の動物などの身体に着用して、殺虫剤、忌避剤、芳香剤、消臭剤、除菌剤などの揮散性の薬剤を身体の周囲に拡散し、人間などの身体の周りに寄る害虫を避けたり、香りでリラックスしたりする着用型薬剤拡散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に着用型の薬剤拡散装置が開示されている。
この装置は、本体内にモータでファンを回転する送風機と薬剤保持体と電池を設けて送風機を駆動することで吸込口から放出口に空気が流通し、その放出口から放出される空気とともに薬剤保持体の薬剤が大気に拡散される装置本体と、この装置本体に取付けた着用バンドを備え、その着用バンドによって装置本体を人体、動物の体などの身体に着用できる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−24161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の装置は、モータでファンを回転する送風機と、そのモータ用の電源となる電池を備えているので、そのモータ、電池のために重量が重く、装置本体が大きいから、身体に着用して使用する装置としては好ましくはない。
【0005】
また、電源として電池が使用され、電池は寿命がくると交換しなければならず、その交換作業の面倒さ、また費用もかかり経済的でない。また、寿命がきた電池はゴミとして廃棄処理問題がある。さらに電池は有害ゴミとなり環境問題を発生させる。
【0006】
前述のことを解決するには、送風機を使用せずに薬剤保持体から薬剤を自然揮散させ、モータ、電池を必要としないようにすれば良い。
しかし、前述のように薬剤保持体から薬剤を自然揮散するだけでは、その薬剤の揮散量が少なく、実用的ではない。
【0007】
そこで、前述の従来の装置において、モータ、電池を使用せずに、ファンを回転自在とし、身体の動きで装置本体を動作、例えば振るなどしてファンを回転させることが考えられるが、このようにしてファンを回転させるのでは、振る方向やタイミング等によって回転が弱いか、回転しないことがあり、ファンの回転の確実性に欠けるので、揮散する薬剤の量が少ないことがある。
【0008】
また、前述したようにモータ、電池を使用しない装置は、薬剤保持体からの薬剤の揮散が風の影響を受け易いし、揮散した薬剤の大気への拡散のいきおいが弱いので薬剤の拡散範囲が狭く、薬剤の揮散に風の影響を受け易い。
要するに、身体に着用して使用する着用型薬剤拡散装置で重要なことは、基本的には屋外で使用するものであること、またその効能範囲は、主として着用部位の周りや身体の周りであることである。
すなわち、屋外の使用環境は、通常、風(空気の流れ)があり、風の強弱によって薬剤の拡散範囲が大きく作用される。また、効能範囲外に飛散する。そのために無駄になる薬剤が多い。
【0009】
本発明の目的は、モータ、電池を使用せずに多くの薬剤を確実に揮散することができると共に、薬剤の揮散や揮散した薬剤の拡散に風の影響を受け難く、屋外での使用の際に、いつも揮散する薬剤量が変わらず、一定量の薬剤を効能範囲に拡散できるようにした着用型薬剤拡散装置とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、空洞部1aと、この空洞部1aを外部に開口する空気流通口6を有した装置本体1と、
前記装置本体1に設けられ、当該装置本体1を身体に装着するための着用具3を備え、
前記装置本体1の空洞部1a内に、薬剤含浸体2aを有した薬剤保持手段2を、その装置本体1が動作することで回転するように取付け、
前記薬剤保持手段2は、回転することで空洞部1a内の空気を撹拌して薬剤含浸体2aから薬剤を揮散し、その揮散した薬剤が前記空気流通口6から大気に拡散するようにし、
この薬剤保持手段2と前記装置本体1に、第1の磁石4と第2の磁石5を、当該薬剤保持手段2の回転によって反発力が生じ、その薬剤保持手段2が反対方向に回転して回転を助長するように取付け、
前記装置本体1と着用具3は、その装置本体1の裏面1bが身体に向かうように着用される構成とし、
前記空気流通口6は装置本体1の裏面1bに形成されて身体に向けて空気が流れるようにしたことを特徴とする着用型薬剤拡散装置である。
【0011】
第2の発明は、空洞部1aと、この空洞部1aを外部に開口する空気流通口6を有した装置本体1と、
前記装置本体1に設けられ、当該装置本体1を身体に装着するための着用具3と、
前記装置本体1の空洞部1a内に設けられ薬剤含浸体2aを有した薬剤保持体30と、 前記装置本体1の空洞部1a内に、その装置本体1が動作することで回転するように取付けた回転体20を備え、
前記回転体20は、回転することで空洞部1a内の空気を撹拌して薬剤含浸体2aから薬剤を揮散し、その揮散した薬剤が前記空気流通口6から大気に拡散するようにし、
この回転体20と前記装置本体1に、第1の磁石4と第2の磁石5を、当該回転体20の回転によって反発力が生じ、その回転体20が反対方向に回転して回転を助長するように取付け、
前記装置本体1と着用具3は、その装置本体1の裏面1bが身体に向かうように着用される構成とし、
前記空気流通口6は装置本体1の裏面1bに形成されて身体に向けて空気が流れるようにしたことを特徴とする着用型薬剤拡散装置である。
【0012】
第3の発明は、取付本体10とカバー体11を備え、空洞部1aと、この空洞部1aを外部に開口する空気流通口6を有した装置本体1と、
前記装置本体1の取付本体10に設けられ、当該装置本体1を身体に装着するための着用具3と、
前記装置本体1の取付本体10に取付けられ、その空洞部1a内に臨む薬剤含浸体2aを有した薬剤保持体30を備え、前記カバー体11は、その装置本体1が動作することで取付本体10に対して回転し、かつ回転することで空洞部1a内の空気を撹拌して薬剤含浸体2aから薬剤を揮散し、その揮散した薬剤が前記空気流通口6から大気に拡散するようにし、
このカバー体11と前記装置本体1の取付本体10に、第1の磁石4と第2の磁石5を、当該カバー体11の回転によって反発力が生じ、そのカバー体11が反対方向に回転して回転を助長するように取付け、
前記装置本体1の取付本体10と着用具3は、その取付本体10の裏面が身体に向かうように着用される構成とし、
前記空気流通口6は取付本体10の裏面1bに形成されて身体に向けて空気が流れるようにしたことを特徴とする着用型薬剤拡散装置である。
【0013】
第4の発明は、第1・第2の発明において、装置本体1の裏面1bを凹凸形状とし、その凹部に空気流通口6が開口している着用型薬剤拡散装置である。
【0014】
第5の発明は、第3の発明において取付本体10の裏面1bを凹凸形状とし、その凹部に空気流通口6が開口している着用型薬剤拡散装置である。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、身体を動かすことで装置本体1が動作し、それによって薬剤保持手段2が一方向に回転する。
その薬剤保持手段2が一方向に回転すると第1の磁石4が第2の磁石5に接近して反発力が生じ、その反発力によって薬剤保持手段2が他方向に回転し、再び第1の磁石4が第2の磁石5に接して反発力が生じて薬剤保持手段2が一方向に回転する。
この動作を複数回繰り返すことで、薬剤保持手段2は複数回往復回転する。
【0016】
このように装置本体1の動作による薬剤保持手段2の回転を、第1の磁石4と第2の磁石5とで複数回の往復回転に助長すると共に、その薬剤保持手段2が回転することで空洞部1a内の空気が撹拌され、その空気が薬剤含浸体2aに十分に触れるので、多くの薬剤が揮散する。
したがって、モータ、電池を使用せずに多くの薬剤を空気流通口6から大気に拡散することができる。
【0017】
また、空気流通口6から空洞部1a内に空気が入り込むことがほとんどないし、その空気流通口6から薬剤が身体に向けて拡散するので、薬剤の揮散が揮散した薬剤の拡散に風の影響を受け難く、屋外での使用の際に、いつも揮散する薬剤量が変わらず、一定量の薬剤を効能範囲に拡散できる。
【0018】
第2の発明によれば、身体を動かすことで装置本体1が動作し、それによって回転体20が一方向に回転する。
その回転体20が一方向に回転すると第1の磁石4が第2の磁石5に接近して反発力が生じ、その反発力によって回転体20が他方向に回転し、再び第1の磁石4が第2の磁石5に接して反発力が生じて回転体20が一方向に回転する。
この動作を複数回繰り返すことで、回転体20は複数回往復回転する。
【0019】
このように装置本体1の動作による回転体20の回転を、第1の磁石4と第2の磁石5とで複数回の往復回転に助長すると共に、その回転体20が回転することで空洞部1a内の空気が撹拌され、その空気が薬剤含浸体2aに十分に触れるので、多くの薬剤が揮散する。
したがって、モータ、電池を使用せずに多くの薬剤を空気流通口6から大気に拡散することができる。
【0020】
また、空気流通口6から空洞部1a内に空気が入り込むことがほとんどないし、その空気流通口6から薬剤が身体に向けて拡散するので、薬剤の揮散が揮散した薬剤の拡散に風の影響を受け難く、屋外での使用の際に、いつも揮散する薬剤量が変わらず、一定量の薬剤を効能範囲に拡散できる。
【0021】
第3の発明によれば、身体を動かすことで装置本体1が動作し、それによってカバー体11が一方向に回転する。
そのカバー体11が一方向に回転すると第1の磁石4が第2の磁石5に接近して反発力が生じ、その反発力によってカバー体11が他方向に回転し、再び第1の磁石4が第2の磁石5に接して反発力が生じてカバー体11が一方向に回転する。
この動作を複数回繰り返すことで、カバー体11は複数回往復回転する。
【0022】
このように装置本体1の動作によるカバー体11の回転を、第1の磁石4と第2の磁石5とで複数回の往復回転に助長すると共に、そのカバー体11が回転することで空洞部1a内の空気が撹拌され、その空気が薬剤含浸体2aに十分に触れるので、多くの薬剤が揮散する。
したがって、モータ、電池を使用せずに多くの薬剤を空気流通口6から大気に拡散することができる。
【0023】
また、空気流通口6から空洞部1a内に空気が入り込むことがほとんどないし、その空気流通口6から薬剤が身体に向けて拡散するので、薬剤の揮散が揮散した薬剤の拡散に風の影響を受け難く、屋外での使用の際に、いつも揮散する薬剤量が変わらず、一定量の薬剤を効能範囲に拡散できる。
【0024】
第4・第5の発明によれば、身体に着用して使用する際に、空気流通口6が身体で閉塞されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第1の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
装置本体1と、この装置本体1の空洞部1aに回転可能に設けた薬剤保持手段2と、前記装置本体1に取付けた着用具3と、前記装置本体1と前記薬剤保持手段2とに設けられて当該薬剤保持手段2の回転を助長する第1の磁石4、第2の磁石5で着用型薬剤拡散装置としてある。
【0026】
前記装置本体1は着用具3で人間、動物などの身体に着用される。例えば、人間の腰に吊り下げて着用される。
前記薬剤保持手段2は、薬剤有効成分を主成分とする薬剤(薬剤組成物)を含浸した薬剤含浸体2aを有し、その薬剤含浸体2aに空気が触れることで前記薬剤が揮散する。
前記薬剤保持手段2は、回転することで空洞部1a内の空気を撹拌し、その薬剤含浸体2aに空気が触れると共に、揮散した薬剤が空気流通口6から大気に拡散し、かつ装置本体1を動作することで回転するように設けてある。
【0027】
前記第1の磁石4は薬剤保持手段2に取付けてある。前記第2の磁石5は装置本体1に取付けてあり、その薬剤保持手段2が一方向に回転すると第1の磁石4が第2の磁石5に接近して反発力が生じるようにしてある。つまり、第1の磁石4と第2の磁石5の同極が対向することで反発力が生じる。
この反発力によって薬剤保持手段2が他方向に回転し、再び第1の磁石4が第2の磁石5に接して反発力が生じて薬剤保持手段2が一方向に回転する。
この動作を複数回繰り返しすることで、薬剤保持手段2は複数回往復回転する。
【0028】
このように、薬剤保持手段2が回転することで、空洞部1a内の空気が撹拌され、その薬剤含浸体2aに対して空気が相対的に流動することになるので、多くの薬剤が揮散する。
しかも、第1の磁石4と第2の磁石5とで薬剤保持手段2の回転が助長されて複数回往復回転するので、装置本体1を僅かに動作することで薬剤保持手段2が確実に回転する。
したがって、モータ、電池を用いずに薬剤保持手段2の薬剤含浸体2aから多くの薬剤を確実に揮散することができる。
【0029】
前記装置本体1と着用具3は、その装置本体1の裏面1bが身体に向かうように着用される構成としてある。
前記空気流通口6は装置本体1の裏面1bに形成されて身体に向けて空気が流れるようにしてある。
前記装置本体1の空気流通口6以外の部分は閉塞されて、空洞部1aは空気流通口6のみで外部に開口している。
例えば、装置本体1の表面1c、周面1dは閉塞されている。
【0030】
このようであるから、身体に着用して使用する時に、揮散した薬剤は空気流通口6から身体に向けて拡散されるので、効率良く薬剤を身体の回り(効能範囲)に拡散できる。
【0031】
また、大気中の風(空気の流れ)は装置本体1の表面1c、周面1dに主として当たり、裏面1bにはほとんど当たることがないので、その風によって空気流通口6から空洞部1a内に空気が入り込むことがほとんどなく、風の影響によって薬剤含浸体2aから薬剤が揮散することがほとんどない。
また、装置本体1の空洞部1a内は、風の影響をほとんど受けないことから余分な空気の流れが起こらず、薬剤保持手段2の回転だけで薬剤が揮散するので薬剤の揮散がたえず安定かつ均一であり、使用する日時毎で揮散する薬剤量が大きく変わらない。また、風による飛散がないので無駄になる薬剤ロスも少ない。
したがって、屋外で使用する時でも風の影響を受け難く、薬剤含浸体2aからの薬剤の揮散量も大きく変わらず、いつも一定量の薬剤を大気に拡散することができる。また、飛散による無駄になる薬剤も少ない。
【0032】
要するに、身体に着用して使用する着用型薬剤拡散装置で重要なことは、基本的には屋外で使用するものであること、またその効能範囲は、主として着用部位の周りや身体の周りであることである。
すなわち屋外の使用環境は、通常、風(空気の流れ)があり、風の強弱によって薬剤の拡散範囲が大きく作用される。また、効能範囲外に飛散する。そのために無駄になる薬剤が多い。
また、モータ、電池を用いない本発明の装置で重要なことは、モータ、電池を用いる装置に比較して薬剤保持手段の回転力が弱いこと、また回転が不規則であることである。
すなわち薬剤の拡散範囲が狭く、薬剤の揮散に風の影響を受け易い。そのために薬剤の揮散(量)が不安定である。
【0033】
そこで、前述のように風に当たりやすい装置本体1の表側である表面1c、周面1dを閉塞することで、風を入り難くしかつ表側に飛散する無駄な薬剤をなくすと共に、空気流通口6を身体の着用側である装置本体1の裏側の裏面1bに形成することで、揮散した薬剤の全てを身体の周りに拡散できるようにした。さらに、前述のように空気流通口6を装置本体1の裏側の裏面1bに形成することで空洞部1a内に空気が入り難くなり、いつも揮散する薬剤量が変わらず、一定量の薬剤を大気に拡散するように、薬剤の揮散に風の影響を受け難くした。
【0034】
次に、各部の好ましい形態を説明する。
前記装置本体1は、取付本体10とカバー体11で薬剤収納室12を有し、その取付本体10に着用具3が取付けてあると共に、取付本体10に空気流通口6が形成してある。
この空気流通口6によって薬剤収納室12が外部に連通し、その薬剤収納室12に空気が流通する。つまり、この薬剤収納室12が前述の空洞部1aである。
前記カバー体11は取付本体10に着脱自在に取付けてある。
例えば、前記取付本体10は、プレート10aにリング状の突部10bを設けた形状とし、前記カバー体11を表面板11aと筒体11bを有し、その筒体11bが突部10bに嵌合して取付けられる。
【0035】
この実施の形態では、取付本体10のプレート10aの背面(装置本体1の裏面1b)は凹凸形状で、その凹部に空気流通口6が開口している。
例えば、プレート10aの背面に、リブ13を複数設けて凸部とし、そのプレート10aの背面を凹部とすると共に、空気流通口6を開口してある。
このようにすることで、身体に着用したときに空気流通口6が身体によって閉じられることがない。
【0036】
前記薬剤保持手段2は、回転体20と薬剤保持体30を備えている。
前記回転体20は装置本体1の薬剤収納室12内に回転可能に取付けてある。
前記薬剤保持体30は、前述の薬剤含浸体2aを備えていると共に、この薬剤保持体30が回転体20に着脱自在に取付けられ、回転体20とともに薬剤保持体30が装置本体1の薬剤収納室12で回転する。
【0037】
このようであるから、カバー体11を外して薬剤収納室12を開放することで、使用済みの薬剤保持体30を回転体20から取り外し、新しい薬剤保持体30を回転体20に取付けることで、薬剤含浸体2aを交換でき、その交換作業が簡単である。なお、薬剤保持体30から薬剤含浸体2aを取り外し、新しい薬剤含浸体2aを取付けることもできる。
【0038】
前記回転体20には撹拌手段、例えば撹拌用の羽根片21が設けてある。
これによって、回転体20が回転することで薬剤収納室12内の空気が撹拌されるので、薬剤含浸体2aに対する空気の流動が著しくなって、より多量の薬剤が揮散すると共に、薬剤収納室12に流入、流出する空気の量が多くなり、薬剤が大気に多く拡散される。
【0039】
前記回転体20の具体形状を説明する。
前記回転体20は、円板状の中央プレート22とリング状の外周プレート23を放射状の複数のリブ24で一体的に連結した複数の通気用開口部25を有した円板形状で、その中央プレート22に回転軸26が取付けてあると共に、外周プレート23に複数のピン27が設けてある。前記各リブ24に前述の羽根片21が設けてある。
前記装置本体1の取付本体10の中央部には孔14が形成してあり、この孔14に前記回転軸26を回転自在に挿入して支持することで回転体20を取付本体10に回転可能に取付けてある。
【0040】
前記第1の磁石4は回転体20の外周プレート23の裏面(回転体20の裏面)に、前記取付本体10と対向して固着してある。
前記第2の磁石5は取付本体10に、前記回転体20の外周プレート23と対向して固着してある。
この第1の磁石4と第2の磁石5は前記回転体20の回転中心(回転軸26)を中心とする同一の円形軌跡上に位置し、回転体20が図4で一方向(矢印a)に回転すると第1の磁石4が第2の磁石5に接近して反発力が生じ、その反発力で回転体20が他方向(矢印b)に回転する。
【0041】
前記薬剤含浸体2aは、薬剤有効成分を主成分とする薬剤(薬剤組成物)を含浸した不織布などの通気性のシートとしてある。
前記薬剤保持体30は、通気用開口31を有した容器32に薬剤含浸体2aを入れ、通気用開口33を有した押えプレート34を容器32に嵌合してある。
前記容器32には複数の穴35が形成され、この穴35を前記回転体20のピン27に嵌合することで、薬剤保持体30が回転体20に着脱自在に取付けてある。
【0042】
そして、前記回転体20の通気用開口部25と薬剤保持体30の通気用開口31,33が相対向し、これらの通気用開口部25、通気用開口31,33を通して空気が薬剤含浸体2aに触れるようにしてある。
【0043】
前記着用具3は、フック3aである。
そして、人間の腰に装着したベルトや、衣服のポケットにフック3aを引っ掛けて装置本体1を腰に吊り下げて使用する。
この実施の形態では、フック3aに装置本体1(取付本体10)を薬剤保持手段2の回転方向に沿って揺動自在に吊り下げ連結する。例えば、前記回転体20の回転軸26と平行なピン7で揺動自在(首振り自在)に連結する。
【0044】
このようにすることで、着用具3を人間の腰のベルトに引っ掛けて吊り下げるようにして着用することで、人間が歩行などすることによって着用具3に対して装置本体1が揺動するので、回転体20が回転する。
したがって、薬剤保持手段2が確実に連続して回転するので、より多くの薬剤を揮散することができる。
【0045】
前記着用具3は、バンド、紐や鎖などでも良く、ベルト等に吊り下げたり腰や首など身体の一部に巻く付け吊り下げて使用することができる。
【0046】
前記薬剤保持手段2は装置本体1の取付本体10に回転可能に取付けてあるが、その薬剤保持手段2は装置本体1のカバー体11に回転可能に取付けても良い。
例えば、図2に示す薬剤保持手段2を表裏反転して回転体20がカバー体11側で、薬剤保持体30が取付本体10側となるようにし、カバー体11の中央部に孔を形成し、前記回転軸26をカバー体11の孔に回転可能に挿入して支持する。
【0047】
前記回転体20は、その裏面に中央から四方に向けて複数の羽根片21(8枚)を有する形状であるが、この羽根片21は回転体20の裏面、外周面、又は裏面と表面などに取付けても良いし、この羽根片21の枚数は限定されない。また、羽根片21の形状は自由であり、垂直形状、斜めに傾いた形状や湾曲した形状、更には通常のファン形状とすることもできる。
【0048】
前記羽根片21は薬剤保持体30、例えば容器32の表面、裏面、外周面のいずれか1ヶ所又は複数ヶ所に取付けても良い。
すなわち、薬剤保持手段2に空気撹拌用の羽根片21を取付ければ良い。
また、回転体20と薬剤保持体30を一体として、その回転体20を取付本体10(装置本体1)に回転自在で、かつ着脱自在に取付けても良いし、薬剤保持体30のみで薬剤保持手段2としても良い。
前記薬剤保持体30は、容器32の代わりに、不織布よりなる薬剤含浸体2aの外周を2枚の枠で挟み固定したものでも良い。
【0049】
また、薬剤は有効成分の他に、溶剤、揮散調整剤、分解防止剤などからなる液製剤である。
本発明の薬剤拡散装置は、薬剤(有効成分)の拡散状況が着用者の動作状態及び使用の環境によって左右され不規則である。このことから、薬剤含浸体2aは有効成分の有無(効力の有無)を目視で確認できる製剤が好ましい。
製剤としては、薬剤として終点表示機能剤を添加した組成物とし、色変化などを目視する。
また、それ自体が表示機能を有する素材を用いることもできる。
製剤種として液剤に限定されず、ゲル化剤によるゲル製剤、昇華剤などからなる固体製剤などとして用いることもできる。製剤自体が減少、又は消滅し、目視で確認できる製剤が好ましい。
また、液剤と含浸物質を組み合わせ、液の減少を目視確認するようにしても良い。
【0050】
前記第2の磁石5はカバー体11に取付けても良い。
また、前記回転体20の第1の磁石4の取付位置としては、その裏面の外周寄り、又は回転体20の外周面、又は回転体20の表面の外周よりが好ましい。一方、取付本体10、又はカバー体11の第2の磁石5は、第1の磁石4に対向する取付本体10の表面の外周寄り、又は取付本体10の外周面内側、カバー体11内の外周面、又はカバー体11内の天面に取付ける。
【0051】
前記第1・第2の磁石4,5の取付け個数は、特に限定されない。
通常、薬剤保持手段2(薬剤含浸体2a)が回転する往復距離(円周の長さ)が長くなるほど多くの薬剤が揮散することから、磁石の取付け個数は各々1つが好ましい。また動作状態によるが、回転する往復距離が長くなると回転途中で反転することもあり、この場合、各々2つ取付ける、又は一方を1つ、他方を2つ取付けるようにしても良い。このことから回転する往復距離(薬剤保持手段2の外径寸法)に応じて取付け個数を決めることが望ましい。
【0052】
前述の装置本体1、薬剤保持体2、着用具3は、前述したものに限ることはなく、任意な形状とすることができる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
この実施の形態は、前述の第1の実施の形態における回転体20と薬剤保持体30を別体とし、その回転体20を装置本体1の空洞部1a内に回転自在に設けると共に、薬剤保持体30を空洞部1a内に回転しないように設け、前記回転体20が回転することで空洞部1a内の空気が撹拌されて薬剤含浸体2aに空気が触れて薬剤が揮散し、各空気流通口6から大気に拡散するようにしたことが第1の実施の形態と異なり、他は同様である。
【0054】
例えば、図6に示すように、装置本体1の空洞部1aに回転体20を、その装置本体1が動作することで回転するように取付けると共に、薬剤保持体30を取付ける。
前記回転体20が回転すると空洞部1a内の空気が撹拌されると共に、空気流通口6を通って空気が空洞部1a内に流入、流出するようにする。
前記薬剤保持体30は薬剤含浸体2aを有し、空洞部1a内の空気が撹拌することで薬剤含浸体2aに空気が触れて箔材を揮散するようにしてある。
空気流通口6は、装置本体1の裏面1bに開口している。
【0055】
前記回転体20に第1の磁石4が取付けてあると共に、装置本体1に第2の磁石5が取付けてあり、回転体20が一方向に回転すると第1の磁石4が第2の磁石6に接近して反発力が生じ、その反発力によって回転体20が他方向に回転し、再び第1の磁石4が第2の磁石5に接して反発力が生じて回転体20が一方向に回転するようにしてある。
この動作を複数回繰り返すことで、回転体20は複数回往復回転する。
【0056】
そして、薬剤含浸体2aから揮散した薬剤は、空気流通口6から身体に向けて拡散する。
【0057】
次に、各部の好ましい形態を説明する。
装置本体1は取付本体10と裏面カバー15を有し、その取付本体10は表面板10cと筒体10dで裏面が開口した箱形状である。
前記裏面カバー15は、取付本体10の開口部に嵌合して着脱自在に取付けて空洞部1aを形成している。
この裏面カバー15が装置本体1の裏面1bで、空気流通口6が形成してあると共に、リブ13が設けてある。
【0058】
前記薬剤保持体30は、容器32に薬剤含浸体2aを設けたものである。
この容器32は、前記装置本体1の取付本体10の筒体10d内に挿入、抜き出し自在な大きさで、前記表面板10cに形成した凹部10eに嵌合して着脱自在に取付けられ、薬剤含浸体2aが空洞部1aに臨むむようにしてある。
【0059】
前記回転体20は、中央の円板27に複数の羽根片28を放射状に設けたもので、その円板27に設けた回転軸26を裏面カバー15の穴15aに回転自在に支承し、装置本体1が動作することで回転するようにしてある。
前記羽根片28に第1の磁石4が取付けてあると共に、裏面カバー15に第2の磁石5が取付けられている。
【0060】
このようであるから、裏面カバー15を取り外しすることで、薬剤保持体30を装置本体1から取り出して新しい薬剤保持体30と交換できる。
【0061】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
この実施の形態は、回転体20を装置本体1の表面側に回転自在に取付け、薬剤保持体30を裏面側に取付けたことが前述の第2の実施の形態と大きく相違し、他の構成は同様である。
例えば図7に示すように、装置本体1の取付本体10のプレート10aに取付用開口部10fを形成する。
この取付用開口部10fに薬剤保持体30の容器32を嵌合して着脱自在に取付け、薬剤含浸体2aを装置本体1の空洞部1a内に臨ませ、薬剤保持体30を装置本体1の裏面に取付ける。
前記装置本体1のカバー体11の表面板11aに穴11cを形成し、この穴11cに回転体20の回転軸26を回転自在に支承し、回転体20を装置本体1の表面側に回転自在に取付ける。
【0062】
前記容器32の裏面32aを、装置本体1の裏面1bとすると共に、その容器32の裏面32aにリブ13を設ける。
前記取付本体10のプレート10aにおける取付用開口部10fよりも外周寄りに空気流通口6を形成する。
前記回転体20に第1の磁石4を取付けると共に、前記プレート10aに第2の磁石5を取付ける。
この第2の磁石5をカバー体11に取付けるようにしても良い。
【0063】
次に、第4の実施の形態を説明する。
この実施の形態は、回転体をカバー体としたものである。
例えば、図8に示すように、取付本体10にカバー体11を回転自在に取付けて空洞部1aを有した装置本体1とし、その装置本体1が動作することでカバー体11が回転するようにする。
前記取付本体10に薬剤保持体30を、その薬剤含浸体2aが空洞部1aに臨むように取付ける。
前記カバー体11(表面板11a)に撹拌手段、例えば羽根16を設け、カバー体11が回転すると空洞部1a内の空気が撹拌されて薬剤含浸体薬剤含浸体2aに空気が触れて薬剤が揮散し、空気流通口6から大気に揮散するようにする。
【0064】
前記カバー体11に第1の磁石4を取付けると共に、取付本体10に第2の磁石5を取付ける。
そして、カバー体11の回転によって第1の磁石4が第2の磁石5に接して反発力で逆回転するようにする。
【0065】
具体的には、カバー体11の表面板11aに回転軸17を設け、この回転軸17を取付本体10のプレート10aに形成した穴10gに回転自在に支承してカバー体11を回転自在とする。
前記取付本体10のプレート10aに環状の凹陥部10hを設け、この凹陥部10hに薬剤含浸体2aを設ける。
【0066】
前記取付本体10のプレート10aの外周寄りに、リング状のカバー体ガード18を設け、このカバー体ガード18をカバー体11の外周面(筒体11b)よりも外周寄りに位置し、そのカバー体11の外周面における取付本体10寄り部分をガードし、その部分にものが触れないようにしてある。
【0067】
このようであるから、身体に着用して使用する際に、カバー体11の外周面の取付本体10寄り部分が衣服などの物に触れることをカバー体ガード18で防止されるので、カバー体11の回転が阻害されることがない。
【0068】
前述の各実施の形態では装置本体1の裏面1bを凹凸形状としたが、装置本体1の裏面1bを着用具3の身体取付側部よりも表面側に大きくずれた段差を有した形状としても空気流通口6が身体で閉じることがないようにできる。
【0069】
前述の各実施の形態では着用具3をフック3aとしたが、バンドとしても良い。
例えば、図9に示すように装置本体1の裏面1bにバンド3bを取付け、このバンド3bを腕などの身体に巻きつけて着用する。
このようにした場合には、装置本体1の裏面1bを凹凸形状としなくともバンド3bが湾曲して装置本体1の裏面1bの外周寄り部分とバンド3bが離れるので、空気流通口6が身体で閉塞されることがない。
なお、装置本体1の裏面1bを、その外周寄り部分が斜めとなるようにし、その斜めの部分に空気流通口6を形成すれば、身体に着用した時に空気流通口6が身体で閉塞されることをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す着用型薬剤拡散装置の背面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】装置本体と薬剤保持手段の分解断面図である。
【図4】カバー体と薬剤保持体を取り外した状態の正面図である。
【図5】カバー体を取り外した状態の正面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示す断面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態を示す断面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1…装置本体、1a…空洞部、1b…裏面、2…薬剤保持手段、2a…薬剤含浸体、3…着用具、4…第1の磁石、5…第2の磁石、6…空気流通口、10…取付本体、11…カバー体、20…回転体、30…薬剤保持体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部1aと、この空洞部1aを外部に開口する空気流通口6を有した装置本体1と、
前記装置本体1に設けられ、当該装置本体1を身体に装着するための着用具3を備え、
前記装置本体1の空洞部1a内に、薬剤含浸体2aを有した薬剤保持手段2を、その装置本体1が動作することで回転するように取付け、
前記薬剤保持手段2は、回転することで空洞部1a内の空気を撹拌して薬剤含浸体2aから薬剤を揮散し、その揮散した薬剤が前記空気流通口6から大気に拡散するようにし、
この薬剤保持手段2と前記装置本体1に、第1の磁石4と第2の磁石5を、当該薬剤保持手段2の回転によって反発力が生じ、その薬剤保持手段2が反対方向に回転して回転を助長するように取付け、
前記装置本体1と着用具3は、その装置本体1の裏面1bが身体に向かうように着用される構成とし、
前記空気流通口6は装置本体1の裏面1bに形成されて身体に向けて空気が流れるようにしたことを特徴とする着用型薬剤拡散装置。
【請求項2】
空洞部1aと、この空洞部1aを外部に開口する空気流通口6を有した装置本体1と、
前記装置本体1に設けられ、当該装置本体1を身体に装着するための着用具3と、
前記装置本体1の空洞部1a内に設けられ薬剤含浸体2aを有した薬剤保持体30と、 前記装置本体1の空洞部1a内に、その装置本体1が動作することで回転するように取付けた回転体20を備え、
前記回転体20は、回転することで空洞部1a内の空気を撹拌して薬剤含浸体2aから薬剤を揮散し、その揮散した薬剤が前記空気流通口6から大気に拡散するようにし、
この回転体20と前記装置本体1に、第1の磁石4と第2の磁石5を、当該回転体20の回転によって反発力が生じ、その回転体20が反対方向に回転して回転を助長するように取付け、
前記装置本体1と着用具3は、その装置本体1の裏面1bが身体に向かうように着用される構成とし、
前記空気流通口6は装置本体1の裏面1bに形成されて身体に向けて空気が流れるようにしたことを特徴とする着用型薬剤拡散装置。
【請求項3】
取付本体10とカバー体11を備え、空洞部1aと、この空洞部1aを外部に開口する空気流通口6を有した装置本体1と、
前記装置本体1の取付本体10に設けられ、当該装置本体1を身体に装着するための着用具3と、
前記装置本体1の取付本体10に取付けられ、その空洞部1a内に臨む薬剤含浸体2aを有した薬剤保持体30を備え、
前記カバー体11は、その装置本体1が動作することで取付本体10に対して回転し、かつ回転することで空洞部1a内の空気を撹拌して薬剤含浸体2aから薬剤を揮散し、その揮散した薬剤が前記空気流通口6から大気に拡散するようにし、
このカバー体11と前記装置本体1の取付本体10に、第1の磁石4と第2の磁石5を、当該カバー体11の回転によって反発力が生じ、そのカバー体11が反対方向に回転して回転を助長するように取付け、
前記装置本体1の取付本体10と着用具3は、その取付本体10の裏面が身体に向かうように着用される構成とし、
前記空気流通口6は取付本体10の裏面1bに形成されて身体に向けて空気が流れるようにしたことを特徴とする着用型薬剤拡散装置。
【請求項4】
装置本体1の裏面1bを凹凸形状とし、その凹部に空気流通口6が開口している請求項1又は2記載の着用型薬剤拡散装置。
【請求項5】
取付本体10の裏面1bを凹凸形状とし、その凹部に空気流通口6が開口している請求項3記載の着用型薬剤拡散装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−207429(P2009−207429A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54375(P2008−54375)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】