説明

着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機EL表示装置

【課題】耐光性に優れたカラーフィルタの青色画素を提供することができ、かつ前述したカラーディスプレイ製造工程で要求される耐熱性をも満たす着色樹脂組成物、また、このような着色樹脂組成物を用いる、カラーフィルタ、及び青色純度のよい有機EL表示装置並びに液晶表示装置を提供する。
【解決手段】(A)色材、(B)溶剤及び(C)バインダー樹脂を含有する着色樹脂組成物であって、該(A)色材が、下記式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする、着色樹脂組成物。


(上記式(I)中、Zm−はアントラキノン骨格を有するm価のアニオン、mは1〜4の整数を表す。Ar1及びAr2は、各々独立に、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。nは、1〜5の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物、カラーフィルタ液晶表示装置及び有機EL表示装置に存する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットディスプレイとして、カラーの液晶表示装置や有機EL表示装置が注目されており、これらのディスプレイにはカラーフィルタが用いられている。
例えば、カラー液晶表示装置には、一例として、ブラックマトリックス、複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色)からなる着色層、透明電極及び配向層を備えたカラーフィルタ基板と、薄膜トランジスタ(TFT素子)、画素電極及び配向層を備えた対向電極基板と、これら両基板を所定の間隙をもたせて対向させ、シール部材で密封して、上記間隙に液晶材料を注入して形成された液晶層とから概略構成された透過型の液晶表示装置がある。また、上記のカラーフィルタの基板と着色層との間に反射層を設けた反射型の液晶表示装置もある。
【0003】
有機EL表示装置は、原理的には、陽極と陰極との間に有機EL発光層をはさんだ構造の有機EL素子を有するものであるが、実際に、有機EL素子を用いてカラー表示の可能な有機EL表示装置とするには、(1)三原色の各色をそれぞれ発光する有機EL素子どうしを配列する方式、(2)白色光に発光する有機EL素子を三原色のカラーフィルタ層と組み合わせる方式、並びに(3)青色発光する有機EL素子と、青→緑、及び青→赤にそれぞれ色変換する色変換層(CCM層)とを組み合わせるCCM方式等がある。
【0004】
(1)の方式は言うまでもなく、各色の有機EL素子を使用するため、高い色再現性を発現し得るのが特徴である。従って、各色の有機EL素子に対応してカラーフィルタを載置することにより、色再現性の向上や、反射光を吸収することによるコントラスト向上が期待できるため、有望な方式の一つとされている。
また、(2)の白色有機ELとカラーフィルタとの組み合わせ方式及び(3)のCCM方式は、同じ色に発光する有機EL素子を一種類使用すればよいので、上記(1)の方式の有機EL表示装置におけるように、各色の有機EL素子の特性を揃える必要が無く、工程数及び材料の削減等が可能となり、製造コスト面でも注目を集めているフルカラー化方式である。
【0005】
カラーフィルタ及び色変換フィルターと有機発光体を構成要素とする色変換方式を用いた有機EL素子において、カラーディスプレイの製造工程で要求される耐熱性や、ディスプレイとして使用される際の耐候性、並びに高精細度の画像が要求されるものについては、顔料分散法で作成されたカラーフィルタを用いるのが主流となっており、感光性樹脂溶液中に赤色、青色又は緑色の顔料を粒径1μm以下に微分散したものをガラス基板上に塗布した後、フォトリソグラフィー法により所望のパターンで画素を形成している。
【0006】
カラーフィルタに関しては、色純度、彩度、光透過量の向上が求められており、従来は、光透過量の向上を目的として、画像形成用材料中の感光性樹脂に対する着色顔料の含有量を減らすか、もしくは画像形成用材料により形成される画素の形成膜厚を薄くするというような方法が採られてきた。しかしながら、これらの方法ではカラーフィルタ自体の彩度が低下し、ディスプレイ全体が白っぽくなって表示に必要な色の鮮やかさが犠牲となってしまい、逆に彩度を優先して着色顔料含有量を増加させるとディスプレイ全体が暗くなり、この場合には、明るさを確保するためにバックライトの光量を大きくしなければならず、ディスプレイの消費電力増大を招いてしまうという問題がある。
【0007】
これに対して、光透過量の向上を目的として、顔料粒子の粒径をその呈色波長の1/2以下にまで微分散する方法が知られているが(非特許文献1)、青色顔料は他の赤色、緑色顔料に比較して呈色波長が短いため、この場合にはさらなる微分散を必要とし、コストアップ並びに分散後の安定性が問題となる。
一方で、着色剤として染料を使用したカラーフィルタも依然開発が進められている。例えば特許文献1には、シー・アイ・アシッド・ブルー83(トリアリルアミン系色素)と、シー・アイ・ソルベント・ブルー67(銅フタロシアニン系色素)を含む青色フィルター層を設けたカラーフィルタが記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、下記式で表される重合性トリフェニルメタン染料を含むポリマーを用いたカラーフィルタが記載されている。
【0009】
【化1】

【0010】
(上記式におけるR1のうち、少なくとも一つは炭素−炭素二重結合を含む特定の重合性
基)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−14222号公報
【特許文献2】特開2000−162429号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】橋爪清「色材協会誌」(1967年12月、p608)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、前記特許文献1及び2に記載の染料を使用したカラーフィルタは、分光特性、耐熱性及び耐光性ともに不十分であった。
本発明は、耐光性に優れたカラーフィルタの青色画素を提供することができ、かつ前述したカラーディスプレイ製造工程で要求される耐熱性をも満たす着色樹脂組成物を提供することを目的とする。また、このような着色樹脂組成物を用いることにより、青色画素の色純度及び透過率に優れたカラーフィルタ、及び青色純度のよい有機EL表示装置並びに液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、カラーフィルタの青色画素形成用の色材として、特定の化合物からなる塩を使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明の要旨は、(A)色材、(B)溶剤及び(C)バインダー樹脂を含有する着色樹脂組成物であって、(A)色材が、下記式(I)で表される化合物を含有するこ
とを特徴とする、着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機EL表示装置に存する。
【0015】
【化2】

【0016】
(上記式(I)中、Zm−はアントラキノン骨格を有するm価のアニオンを表す。
mは1〜4の整数を表す。
Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。
nは、1〜5の整数を表す。
尚、1分子中に複数の
【0017】
【化3】

【0018】
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カラーフィルタの長期信頼性のうち極めて重要な項目である耐光性を満たし、かつカラーディスプレイ製造工程で要求される耐熱性を有し、青色画素の色純度及び透過率に優れたカラーフィルタを得ることができる。このようなカラーフィルタを使用することにより、有機EL表示装置の発光や、カラーフィルタのバックライトの発光を効率よく取り出すことができ、高色再現性及び高輝度を両立した液晶表示装置や有機EL表示装置を提供することができる。また、液晶表示装置のコントラストを向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の青色カラーフィルタを備えた有機EL素子の一例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
尚、本発明において「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味するものとする。
【0022】
また「全固形分」とは、後記する溶剤成分以外の本発明の着色樹脂組成物の全成分を意味するものとする。
本発明は、(A)色材、(B)溶剤及び(C)バインダー樹脂を含有する着色樹脂組成物であって、該(A)色材が、下記式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする、着色樹脂組成物である。
【0023】
【化4】

【0024】
(上記式(I)中、Zm−はアントラキノン骨格を有するm価のアニオンを表す。
mは1〜4の整数を表す。
Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。
nは、1〜5の整数を表す。
尚、1分子中に複数の
【0025】
【化5】

【0026】
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
本発明の着色樹脂組成物は、(A)色材、(B)溶剤及び(C)バインダー樹脂、を含有し、好ましくは更に(D)重合性モノマー、(E)光重合開始系及び/又は熱重合開始系、(F)顔料を含み、更に必要に応じて配合されるその他の成分を含む。
先ず、本発明の着色樹脂組成物に含有される、(A)色材について詳説する。
【0027】
[(A)色材]
本発明における(A)色材は、下記式(I)で表される化合物を含有する。
【0028】
【化6】

【0029】
(上記式(I)中、Zm−はアントラキノン骨格を有するm価のアニオンを表す。
mは1〜4の整数を表す。
Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。
nは、1〜5の整数を表す。
尚、1分子中に複数の
【0030】
【化7】

【0031】
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
(nについて)
nは、1〜5の整数を表す。
nは、耐熱性が優れる点で、1〜3が特に好ましい。
(Ar及びArについて)
Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。
【0032】
含窒素複素環基としては、例えば、インドール環、ベンゾインドール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環やキノリン環が挙げられる。中でも、高輝度という点で、インドール環、ベンゾインドール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環が好ましく、インドール環、ベンゾインドレニン環がより好ましく、特にインドール環が好ましい。
【0033】
また、Ar及びArにおける含窒素複素環が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を損わない限り特に制限はないが、下記<置換基群Z>の項に記載のものが挙げられる。
<置換基群Z>
メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基などの脂肪族炭化水素基;
フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基などの芳香族炭化水素基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基などのアルコキシ基;
フェノキシ基などのアリールオキシ基;
ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル結合を有する基;
メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、n−プロピルスルファモイル基、ジ−n−プロピルスルファモイル基、イソプロピルスルファモイル基、ジイソプロピルスルファモイル基、n−ブチルスルファモイル基、ジ−n−ブチルスルファモイル基などのアルキルスルファモイル基;
メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基などのアルキルスルホニル基;
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;
ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0034】
尚、上記置換基が水素原子を有する場合、該水素原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基
、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基などの芳香族炭化水素基;カルボキシ基;シアノ基;ニトロ基;等によって置換されていてもよい。
【0035】
尚、上記式(I)で表される化合物は、カチオン部位(括弧内で表される部分構造)において、シス−トランス異性体が存在するが、いずれの異性体であってもよい。
[式(II)について]
前記式(I)で表される化合物は、耐熱性、耐光性及び透過率に優れる点で、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【0036】
【化8】

【0037】
(上記式(II)中、Ar、Ar及びnは、前記式(I)におけると同義である。
31は、水素原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
32〜R34は、各々独立に、水素原子、水酸基、−NHR41(R41は、R31と同義である。)、−SO、ハロゲン原子、−CO42(R42は、炭素数1〜3のアルキル基を表す。)を表す。
【0038】
但し、R32〜R34のうち、少なくとも一つは−NHR41である。
35〜R38は、各々独立に、水素原子、−SO、ハロゲン原子、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、炭素数1〜12のアルコキシル基、−CO43、フェニル基、−SO44、又は−SONHR45(但し、R43〜R45は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を表す。
【0039】
但し、R32〜R38のうちm個は、−SO基である。
尚、1分子中に複数の
【0040】
【化9】

【0041】
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
前記式(II)において、アントラキノン骨格が有する置換基のうち、R31は水素原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
31におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、前記<置換基群Z>の
項に記載のものが挙げられる。
【0042】
また、R32〜R34は、各々独立に、水素原子、水酸基、−NHR41(R41はR31と同義である。)、−SO、ハロゲン原子、−CO42(R42は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)のいずれかであり、R32〜R34のうち、少なくとも一つは−NHR41基を表すが、カチオン色素の色相を補助する役割も担っていることから、好ましくは水素原子、水酸基又は−NHR41である。
【0043】
また、R35〜R38は、各々独立に、水素原子、−SO、ハロゲン原子、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、炭素数1〜12のアルコキシル基、−CO43、フェニル基、−SO44、又はSONHR45(但し、R43〜R45は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を表すが、カチオン色素の色相を補助する役割も担っていることから、好ましくは水素原子又はSOである。
【0044】
[式(III)について]
前記式(II)で表される化合物は、耐熱性及び耐光性が優れる点で、更に下記式(III)で表される化合物であることが好ましい。
【0045】
【化10】

【0046】
(上記式(III)中、R31〜R38、m及びnは、前記式(II)におけると同義である。
501及びR502は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を表す。
51及びR52は、各々独立に、−O−、−S−、−NH−、−Se−又は−CR503504−を表す。
【0047】
503及びR504は、各々独立に,水素原子、又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
但し、R51又はR52が、−CR503504−である場合、R503及びR504が、互いに結合して、環を形成していてもよい。該環は、置換基を有していてもよい。
環Y及びYは、各々独立に、置換基を有してもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよいナフタレン環を表す。
【0048】
尚、1分子中に複数の
【0049】
【化11】

【0050】
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
501及びR502は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を表す。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、エチニル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。
【0051】
また、前記脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基などの芳香族炭化水素基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアルコキシ基;
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基;
さらには、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0052】
501及びR502は、それぞれ、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましい。
51及びR52は、各々独立に、−O−、−S−、−NH−、−Se−又は−CR503504−を表す。
503及びR504は、各々独立に,水素原子、又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
【0053】
但し、R51又はR52が、−CR503504−である場合、R503及びR504が、互いに結合して、環を形成していてもよい。
環Y及びYは、各々独立に、置換基を有してもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよいナフタレン環を表す。
503及びR504における脂肪族炭化水素基、R31及びR32が互いに結合して形成していてもよい環、並びに環Y及びYにおけるベンゼン環及びナフタレン環が有していてもよい置換基としては、前記R501及びR502における脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基が挙げられる。
【0054】
[式(IV)について]
前記式(III)で表される化合物は、耐熱性及び耐光性が優れる点で、更に下記式(IV)で表される化合物であることが好ましい。
【0055】
【化12】

【0056】
(上記式(IV)中、R33〜R38、R51、R52、R501、R502、環Y、Y及びnは、前記式(III)におけると同義である。
及びRは、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を表す。
pは、0〜4の整数を表す。
pが2以上の場合、複数のR及びRは、同一であっても異なっていてもよい。また、一分子中の二つのpは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0057】
尚、1分子中に複数の
【0058】
【化13】

【0059】
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
pは、0〜4の整数を表す。一分子中に含まれる複数のpは、同じでもよく、また異なっていてもよい。
前記式(IV)で表される化合物の耐熱性が良好となる点で、pは、特に好ましくは3である。
【0060】
及びRは、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を表す。
及びRにおけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、前記<置換基群Z>の項で記載したものが挙げられる。
以下に、式(I)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
(具体例)
【0062】
【化14】

【0063】
(含有量)
本発明の着色樹脂組成物は、前記式(I)で表される化合物を、全固形分中、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%溶解させてなる組成物である。
上記範囲内であると、塗膜の硬化性が低下し難く、膜強度が十分であり、また、着色力
が低下し難く、色度が十分な濃度で得られ、更に、膜厚が厚くなり難いため好ましい。
【0064】
尚、前記式(I)で表される化合物の、着色樹脂組成物(特に該組成物中に含まれる溶剤)への溶解性が低い場合には、後述する任意成分である顔料と同様に、分散剤などを使用して組成物中へ分散させて使用してもよい。しかし、液晶表示装置に適用した場合のコントラストの高さ等の点からは、前記式(I)で表される化合物は、着色樹脂組成物中に溶解した状態で存在することが好ましい。
【0065】
尚、本発明の着色樹脂組成物中には、(A)色材として、式(I)で表される化合物の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよく、更に他の色材の1種又は2種以上が含まれていてもよい。
尚、本発明の着色樹脂組成物中の、下記その他の染料及び後述する(F)顔料を含めた全(A)色材の含有割合は、全固形分に対し、通常、1〜50重量%であるが、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
【0066】
上記範囲内であると、色濃度に対して膜厚が適度であり、液晶セル化の際のギャップ制御が容易である。更に、分散安定性が高く、再凝集や増粘などが置き難いため好ましい。
本発明の着色樹脂組成物において、前記一般式(I)で表される化合物の含有量が、通常、(A)色材全量に対し、5重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上である。
【0067】
上記範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる点で好ましい。
[その他の色材]
本発明において、色材として使用できる(A)色材は、前記式(I)で表される化合物を含むが、本発明の効果を損わない限り、その他の染料を含んでいてもよい。
その他の染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料、シアニン系染料、トリアリールメタン系染料等が好ましく挙げられる。
【0068】
アゾ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11,C.I.アシッドオレンジ7,C.I.アシッドレッド37,C.I.アシッドレッド180,C.I.アシッドブルー29,C.I.ダイレクトレッド28,C.I.ダイレクトレッド83,C.I.ダイレクトイエロー12,C.I.ダイレクトオレンジ26,C.I.ダイレクトグリーン28,C.I.ダイレクトグリーン59,C.I.リアクティブイエロー2,C.I.リアクティブレッド17,C.I.リアクティブレッド120,C.I.リアクティブブラック5,C.I.ディスパースオレンジ5,C.I.ディスパースレッド58,C.I.ディスパースブルー165,C.I.ベーシックブルー41,C.I.ベーシックレッド18,C.I.モルダントレッド7,C.I.モルダントイエロー5,C.I.モルダントブラック7等が挙げられる。
【0069】
アントラキノン系染料としては、例えば、C.I.バットブルー4,C.I.アシッドブルー40,C.I.アシッドグリーン25,C.I.リアクティブブルー19,C.I.リアクティブブルー49,C.I.ディスパースレッド60,C.I.ディスパースブルー56,C.I.ディスパースブルー60等が挙げられる。
この他、フタロシアニン系染料として、例えば、C.I.パッドブルー5等が、キノンイミン系染料として、例えば、C.I.ベーシックブルー3,C.I.ベーシックブルー9等が、キノリン系染料として、例えば、C.I.ソルベントイエロー33,C.I.アシッドイエロー3,C.I.ディスパースイエロー64等が、ニトロ系染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー1,C.I.アシッドオレンジ3,C.I.ディスパースイエロー42等が挙げられる。
【0070】
また、トリアリールメタン系染料としては、例えば、国際公開第2009/107734号パンフレットなどに記載のものが挙げられる。
更に、シアニン系染料としては、例えば、特願2010−142748に記載のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
本発明における(A)色材は、前記式(I)で表される化合物のみから構成されていてもよいが、該化合物に加え、その他の色材を併用することが出来る。その他の色材としては、染顔料が使用できるが、耐熱性、耐光性等の点から(F)顔料が好ましい。
【0071】
本発明における(F)顔料としては、青色顔料、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等各種の色の顔料を使用することができる。また、その構造としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料の他に種々の無機顔料等も利用可能である。
【0072】
これら使用できる(F)顔料としては、例えば、特開2009−025813号公報に記載の顔料を用いることができる。
[(B)溶剤]
(B)溶剤は、本発明において、上記成分のほか、場合により配合したこれら以外の成分等を溶解又は分散させ、粘度を調節する機能を有する。
【0073】
(B)溶剤としては、特に制限がなく、各成分を溶解又は分散させることができるものであればよい。このような溶剤としては、例えば国際公開第2009/107734号パンフレット等に記載の溶剤等が挙げられる。本発明における(B)溶剤に該当する市販のものも同様である。
上記文献に記載の溶剤中でも、前述の本発明に係る(A)色材の溶解性の点から、グリコールモノアルキルエーテル類が好ましい。更に、着色樹脂組成物中の各種構成成分の溶解性の点からプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
【0074】
尚、本発明の着色樹脂組成物全体に占める溶剤の含有割合は、特に制限されないが、その上限は通常99重量%以下とし、塗布に適した粘性等をも考慮すれば、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。
[(C)バインダー樹脂]
(C)バインダー樹脂は、硬化手段により好ましい樹脂は異なる。
【0075】
本発明の着色樹脂組成物が光重合性樹脂組成物である場合、(C)バインダー樹脂としては、例えば特開平7−207211号、特開平8−259876号、特開平10−300922号、特開平11−140144号、特開平11−174224号、特開2000−56118号、特開2003−233179号などの各公報等に記載される高分子化合物を使用することができるが、中でも好ましくは下記(C−1)〜(C−5)の樹脂などが挙げられる。
【0076】
(C−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、又は該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる、アルカリ可溶性樹脂(以下、「樹脂(C−1)」と称す場合がある。)
(C−2):カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂(C−2)(以下、「樹脂(C−2)」と称す場合がある。)
(C−3):前記樹脂(C−2)のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合
物を付加させた樹脂(以下「樹脂(C−3)」と称す場合がある。)
(C−4):(メタ)アクリル系樹脂(以下、「樹脂(C−4)」と称す場合がある。)
(C−5):カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂(以下「樹脂(C−5)と称す場合がある。)
このうち特に好ましくは樹脂(C−1)が挙げられ、以下該樹脂について説明する。
【0077】
尚、樹脂(C−2)〜(C−5)は、アルカリ性の現像液によって溶解され、目的とする現像処理が遂行される程度に溶解性を有するものであれば何でもよく、各々、特開2009−025813号公報の同項目として記載のものと同様である。好ましい態様も同様である。
(C−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂
樹脂(C−1)の特に好ましい樹脂の一つとして、エポキシ基含有(メタ)アクリレート5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体10〜95モル%との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の10〜100モル%に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
【0078】
そのエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性単量体としては、本発明の効果を損わない限り特に制限はなく、例えば、ビニル芳香族類、ジエン類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、ビニル化合物類、不飽和ジカルボン酸ジエステル類、モノマレイミド類などが挙げられるが、特に下記式(7)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0080】
下記式(7)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位は、「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、5〜90モル%含有するものが好ましく、10〜70モル%含有するものが更に好ましく、15〜50モル%含有するものが特に好ましい。
【0081】
【化15】

【0082】
上記式(7)中、R89は水素原子又はメチル基を示し、R90は下記式(8)で表される構造を示す。
【0083】
【化16】

【0084】
上記式(8)中、R91〜R98は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。尚、R96とR98とが、互いに連結して環を形成していてもよい。
96とR98が連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和又は不飽和のいずれでもよく、更に炭素数は5〜6であることが好ましい。
中でも、式(8)で表される構造中、特に下記構造式(8a)、(8b)、又は(8c)で表されるものが好ましい。
【0085】
【化17】

【0086】
尚、前記式(8)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記式(8)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート以外の、「他のラジカル重合性単量体」としては、着色樹脂組成物に優れた耐熱性及び強度を向上しうる点で、スチレン、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、が挙げられる。
【0087】
上記モノマー群から選択された少なくとも1種に由来する繰返し単位の含有割合が、1〜70モル%であるものが好ましく、3〜50モル%であるものが更に好ましい。
尚、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、前記他のラジカル重合性単量体との共重合反応には、公知の溶液重合法が適用される。
本発明において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位10〜95モル%と、からなるものが好ましく、前者20〜80モル%と、後者80〜20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30〜70モル%と、後者70〜30モル%とからなるものが特に好ましい。
【0088】
上記範囲内であると、後述の重合性成分及びアルカリ可溶性成分の付加量が十分であり、また、耐熱性や強度が十分であるため好ましい。
上記の様に合成された、エポキシ基含有共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、更に多塩基酸無水物(アルカリ可溶性成分)とを反応させる。
ここで、エポキシ基に付加させる不飽和一塩基酸としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0089】
具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、α−位がハロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基などで置換された(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂に重合性を付与することができる。
これらの不飽和一塩基酸は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%に付加させる。前記範囲内であると、着色樹脂組成物の経時安定性に優れるため好ましい。尚、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0091】
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる多塩基酸無水物としては、公知のものが使用できる。
例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、無水コハク酸及びテトラヒドロ無水フタル酸が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは20〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%に付加させる。
【0093】
上記範囲内であると、現像時の残膜率及び溶解性が十分であるため好ましい。
尚、当該水酸基に多塩基酸無水物を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
更に、光感度を向上させるために、前述の多塩基酸無水物を付加させた後、生成したカルボキシル基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートや重合性不飽和基を有するグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。このような樹脂の構造に関しては、例えば特開平8−297366号公報や特開2001−89533号公報に記載されている。
【0094】
上述のバインダー樹脂(C−1)の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。上記範囲内であると、耐熱性や膜強度、更に現像液に対する溶解性が量である点で好ましい。
また、分子量分布の目安として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は、2.0〜5.0が好ましい。
【0095】
なお、バインダー樹脂(C−1)の酸価は、通常10〜200mg−KOH/g、好ましくは15〜150mg−KOH/g、更に好ましくは25〜100mg−KOH/gである。酸価が低くなりすぎると、現像液に対する溶解性が低下する場合がある。逆に、高すぎると、膜荒れが生じることがある。
(C)バインダー樹脂の含有割合は、全固形分中、通常0.1〜80重量%、好ましくは1〜60重量%である。
【0096】
上記範囲内であると、基板への密着性が良好であり、また露光部への現像液の浸透性が適度で、画素の表面平滑性や感度が良好である点で好ましい。
[(D)重合性モノマー]
本発明の着色樹脂組成物は、(D)重合性モノマーを含有することが好ましい。(D)重合性モノマーは、重合可能な低分子化合物であれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と言う場合がある。)が好ましい。
【0097】
エチレン性化合物は、本発明の着色樹脂組成物が活性光線の照射を受けた場合、後述する光重合開始系の作用により付加重合し、硬化するようなエチレン性二重結合を有する化合物である。尚、本発明における(D)重合性モノマーは、いわゆる高分子物質に相対する概念を意味し、狭義の単量体以外に二量体、三量体、オリゴマーも包含する。
(D)重合性モノマーにおけるエチレン性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;モノヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル;ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物;等が挙げられる。
【0098】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリ
レート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、これら(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル酸部分を、イタコン酸部分に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸部分に代えたクロトン酸エステル、或いは、マレイン酸部分に代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
【0099】
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルは、必ずしも単一物ではなく、混合物であってもよい。代表例としては、(メタ)アクリル酸、フタル酸、及びエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及びジエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、テレフタル酸、及びペンタエリスリトールの縮合物;(メタ)アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール、及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0100】
ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ〔1,1,1−トリ(メタ)アクリロイルオキシメチル〕プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
【0101】
その他、本発明に用いられるエチレン性化合物の例としては、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が挙げられる。
これらの中では脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0102】
また、エチレン性化合物は酸価を有するモノマーであってもよい。酸価を有するモノマーとしては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能単量体が好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。
【0103】
これらの単量体は1種を単独で用いてもよいが、製造上、単一の化合物を得ることは難しいことから、2種以上の混合物を使用してもよい。
また、必要に応じて(D)重合性モノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用してもよい。
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1〜40mg−KOH/gであり、特に好ましくは5〜30mg−KOH/gである。
【0104】
上記範囲内であると、現像溶解特性が低下しにくく、また製造や取り扱いが容易である。更に、光重合性能が落ち難く、画素の表面平滑性等の硬化性が良好であるため好ましい。
本発明において、より好ましい酸基を有する多官能モノマーは、例えば、ジペンタエリ
スリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物である。この多官能モノマーと他の多官能モノマーを組み合わせて使用することもできる。
【0105】
本発明の着色樹脂組成物において、これらの(D)重合性モノマーの含有割合は、全固形分中、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、また、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。
また、(D)重合性モノマーの前記(A)色材に対する比率は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、また、通常200重量%以下、好ましくは100重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。
【0106】
上記範囲内であると、光硬化が適度であり、現像時の密着不良が置き難く、また現像後の断面が逆テーパー形状になり難く、更に溶解性低下による剥離現象・抜け不良が置き難いため好ましい。
[(E)光重合開始系及び/又は熱重合開始系]
本発明の着色樹脂組成物は、塗膜を硬化させる目的で、(E)光重合開始系及び/又は熱重合開始系を含むことが好ましい。ただし、硬化の方法はこれらの開始剤によるもの以外でもよい。
【0107】
特に、本発明の着色樹脂組成物が、(C)成分としてエチレン性二重結合を有する樹脂を含む場合や、(G)成分としてエチレン性化合物を含む場合には、光を直接吸収し、又は光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する光重合開始系及び/又は熱によって重合活性ラジカルを発生する熱重合開始系を含有することが好ましい。なお、本発明において光重合開始系としての(E)成分とは、光重合開始剤(以下、任意に(E1)成分と称する)に重合加速剤(以下、任意に(E2)成分と称する)、増感色素(以下、任意に(E3)成分と称する)などの付加剤が併用されている混合物を意味する。
【0108】
(光重合開始系)
本発明の着色樹脂組成物に含有されていてもよい。光重合開始系は、通常、(E)光重合開始剤、及び必要に応じて添加される(E3)増感色素、(E2)重合加速剤等の付加剤との混合物として用いられ、光を直接吸収し、或いは光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。
【0109】
光重合開始系を構成する(E1)光重合開始剤としては、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報等に記載のチタノセン誘導体類;特開平10−300922号、特開平11−174224号、特開2000−56118号各公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール誘導体類;特開平10−39503号公報等に記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体類、ハロメチル−s−トリアジン誘導体類、N−フェニルグリシン等のN−アリール−α−アミノ酸類、N−アリール−α−アミノ酸塩類、N−アリール−α−アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α−アミノアルキルフェノン誘導体類;特開2000−80068号公報等に記載のオキシムエステル系誘導体類等が挙げられる。
【0110】
具体的には、例えば国際公開第2009/107734号パンフレット等に記載の光重合開始剤等が挙げられる。
これら光重合開始剤の中では、α−アミノアルキルフェノン誘導体類、オキシムエステル系誘導体類、ビイミダゾール誘導体類、アセトフェノン誘導体類、及びチオキサントン
誘導体類がより好ましい。
【0111】
また、オキシムエステル系誘導体類としては、1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−,2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕,1−(o−アセチルオキシム)、等が挙げられる。
その他に、ベンゾインアルキルエーテル類、アントラキノン誘導体類;2−メチル−(4’−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン等のアセトフェノン誘導体類、2−エチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体類、安息香酸エステル誘導体類、アクリジン誘導体類、フェナジン誘導体類、アンスロン誘導体類等も挙げられる。
【0112】
これら光重合開始剤の中では、α−アミノアルキルフェノン誘導体類、チオキサントン誘導体類、オキシムエステル系誘導体類がより好ましい。特に、オキシムエステル系誘導体類が好ましい。
必要に応じて用いられる(E2)重合加速剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等のN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル類;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の複素環を有するメルカプト化合物;脂肪族多官能メルカプト化合物等のメルカプト化合物類等が挙げられる。
【0113】
これらの(E1)光重合開始剤及び(E2)重合加速剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じて感応感度を高める目的で、(E3)増感色素が用いられる。増感色素は、画像露光光源の波長に応じて、適切なものが用いられるが、例えば特開平4−221958号、特開平4−219756号各公報等に記載のキサンテン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の複素環を有するクマリン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の3−ケトクマリン系色素;特開平6−19240号公報等に記載のピロメテン系色素;特開昭47−2528号、特開昭54−155292号、特公昭45−37377号、特開昭48−84183号、特開昭52−112681号、特開昭58−15503号、特開昭60−88005号、特開昭59−56403号、特開平2−69号、特開昭57−168088号、特開平5−107761号、特開平5−210240号、特開平4−288818号各公報等に記載のジアルキルアミノベンゼン骨格を有する色素等が挙げられる。
【0114】
(E3)増感色素もまた1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の着色樹脂組成物において、これらの(E)光重合開始系の含有割合は、全固形分中、通常0.1〜40重量%、好ましくは0.2〜30重量%、更に好ましくは0.5〜20重量%である。
上記範囲内であると、露光光線に対する感度が良好であり、また未露光部分の現像に対する溶解性が良好である点で好ましい。
【0115】
(熱重合開始系)
本発明の着色樹脂組成物に含有されていてもよい熱重合開始系(熱重合開始剤)の具体例としては、アゾ系化合物、有機過酸化物及び過酸化水素等が挙げられる。これらのうち、アゾ系化合物が好適に用いられる。より具体的には、例えば国際公開第2009/107734号パンフレット等に記載の熱重合開始剤を用いることができる。
【0116】
これらの熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[任意成分]
本発明の着色樹脂組成物は、前記各成分の外に、界面活性剤、有機カルボン酸及び/又は有機カルボン酸無水物、熱硬化性化合物、可塑剤、熱重合防止剤、保存安定剤、表面保護剤、密着向上剤、現像改良剤等を含有していてもよい。また、色素として顔料を含有する場合には、分散剤や分散助剤を含有してもよい。これら任意成分としては、例えば特開2007−113000号公報記載の各種化合物を使用することができる。
【0117】
[着色樹脂組成物の調製方法]
本発明において、着色樹脂組成物は、適宜の方法により調製することができるが、例えば、前記(A)色材、及び(C)バインダー樹脂を、(B)溶剤及びその他の添加剤と共に混合することで調製できる。
また、(A)色材として(F)顔料を含む場合の調製方法としては、(F)顔料を含む(A)色材を溶剤中、分散剤及び必要に応じて添加する分散助剤の存在下で、場合により(C)バインダー樹脂の一部と共に、例えば、ペイントシェイカー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を用いて、粉砕しつつ混合・分散して着色分散液を調製する。該着色分散液に、(C)バインダー樹脂、(A)色材、必要に応じて、(D)重合性モノマー、(E)光重合開始剤及び/又は熱重合開始剤、などの添加剤を添加し、混合することにより調製する方法を挙げることができる。
【0118】
[着色樹脂組成物の応用]
本発明の着色樹脂組成物は、通常、すべての構成成分が溶剤中に溶解又は分散された状態である。この着色樹脂組成物が基板上へ供給され、カラーフィルタや液晶表示装置、有機EL表示装置などの構成部材が形成される。
以下、本発明の着色樹脂組成物の応用例として、カラーフィルタとしての応用、及びそれらを用いた液晶表示装置(パネル)及び有機EL表示装置について、説明する。
【0119】
<カラーフィルタ>
本発明のカラーフィルタは、本発明の着色樹脂組成物から形成された画素を備えるものである。
以下に、本発明のカラーフィルタを形成する方法について説明する。
カラーフィルタの画素は、様々な方法で形成することができる。ここでは光重合性の着色樹脂組成物を使用してフォトリソグラフィー法にて形成する場合を例に説明するが、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0120】
まず、基板の表面上に、必要に応じて、画素を形成する部分を区画するようにブラックマトリックスを形成し、この基板上に、本発明の着色樹脂組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶剤を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去し、その後ポストベークすることにより、赤色、緑色、青色の各画素パターンを形成して、カラーフィルタを作製することができる。
【0121】
画素を形成する際に使用される基板としては、透明で適度な強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂 ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性樹脂製シート、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂、各種ガラスなどが挙げられる。
また、これらの基板には、所望により、シランカップリング剤
やウレタン系樹脂などによる薄膜形成処理、コロナ放電処理やオゾン処理などの表面処理等、適宜前処理を施してもよい。
【0122】
着色樹脂組成物を基板に塗布する際には、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート
法、スリット・アンド・スピン法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法等が挙げられる。中でも、スリット・アンド・スピン法、及びダイコート法が好ましい。
塗布膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、0.2〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは0.8〜5.0μmである。
【0123】
上記範囲内であると、パターン現像や液晶セル化工程でのギャップ調整が容易であり、また所望の色発現がし易い点で好ましい。
画素を形成する際に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、波長が190〜450nmの範囲にある放射線が好ましい。
【0124】
画像露光に使用される、波長190〜450nmの放射線を用いるための光源は、特に限定されるものではないが、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源;アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルターを利用することもできる。
【0125】
放射線の露光量は、10〜10,000J/mが好ましい。
また、前記アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、水酸化アンモニウム等の無機アルカリ性化合物;モノ−・ジ−・又はトリ−エタノールアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−メチルアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−エチルアミン、モノ−・又はジ−イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−イソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等の有機アルカリ性化合物等の水溶液が好ましい。
【0126】
前記アルカリ現像液には、例えばイソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。
現像処理法としては、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法等の
何れかの方法によることができる。現像条件は、室温(23℃)で5〜300秒が好ましい。
【0127】
現像処理の条件には特に制限はないが、現像温度は通常10℃以上、中でも15℃以上、更には20℃以上、また、通常50℃以下、中でも45℃以下、更には40℃以下の範囲が好ましい。
現像方法は、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法等の何れかの方法によることができる。
【0128】
このようにして作製されたカラーフィルタを液晶表示装置に使用する場合には、このままの状態で画像上にITO等の透明電極を形成して、カラーディスプレー、液晶表示装置等の部品の一部として使用されるが、表面平滑性や耐久性を高めるため、必要に応じ、画像上にポリアミド、ポリイミド等のトップコート層を設けることもできる。また、一部、平面配向型駆動方式(IPSモード)等の用途においては、透明電極を形成しないことも
ある。また、垂直配向型駆動方式(MVAモード)では、リブを形成することもある。また、ビーズ散布型スペーサに代わり、フォトリソグラフィー法による柱構造(フォトスペーサー)を形成することもある。
【0129】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、上述の本発明のカラーフィルタを用いたものである。本発明の液晶表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明のカラーフィルタを用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989年9月29日発行、日本学術振興会第142委員会著)に記載の方法で、本発明の液晶表示装置を形成することができる。
【0130】
<有機EL表示装置>
本発明のカラーフィルタを含む有機EL表示装置を作成する場合、例えば図1に示すように、透明支持基板10上に、本発明の着色樹脂組成物により画素20が形成された青色カラーフィルタ上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって多色の有機EL素子を作製する。
【0131】
有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルタ上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100は、パッシブ駆動方式の有機EL表示装置にもアクティブ駆動方式の有機EL表示装置にも適用可能である。
【実施例】
【0132】
次に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[1]染料の合成
(合成例1:染料D1の合成)
【0133】
【化18】

【0134】
化合物1(5g、 9.25 mmol、 林原生物化学研究所製)、化合物2 (3.14
g、4.63mmol、Sigma-Aldrich社製)、メタノール(40ml) の混合物を50℃
で1.5時間撹拌した後、減圧濃縮し、水を加えた後、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、得られた固体をヘキサンで洗浄して、染料D1(5.98g, 収率88.5%)を得た。
【0135】
(合成例2:染料D2の合成)
【0136】
【化19】

【0137】
化合物1(5g、9.25mmol、 林原生物化学研究所製)、化合物3(2.13g、9.25mmol、東京化成社製)、メタノール(40ml) の混合物を50℃で1.5時間撹拌した後、減圧濃縮し、得られた固体をメタノール/水 = 1/3で洗浄し、染料D2
(4.98g, 収率86.7%) を得た。
[2]バインダー樹脂の合成
(参考合成例1)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。ここにスチレン20重量部、グリシジルメタクリレート57部及びトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレートFA−513M(日立化成社製)82重量部を滴下し、更に120℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸27重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部及びハイドロキノン0.12重量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)52重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、120℃3.5時間反応させた。こうして得られたバインダー樹脂aのGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約15000であった。バインダー樹脂aの構造は以下に示す通り(以下の4種の繰り返し単位を含む高分子化合物)であった。
【0138】
【化20】

【0139】
[3]カラーフィルタ画素形成用組成物の調製
上記各色素及びその他の成分を表1に記載の比率で混合して、着色組成物を調製した。混合に際しては、色素が十分に溶解するまで1時間以上攪拌し、最後に5μmの駒型フィルターによって濾過し、異物を取り除いた。
【0140】
【表1】

【0141】
[4]着色樹脂膜の製造及び耐熱性の評価
5cm角に切断したガラス基板上に、上記各着色樹脂組成物をスピンコート法により乾燥後の塗膜のsyが0.168となるように塗布し、減圧乾燥させた後、ホットプレート上にて80℃3分間プリベークした。その後、60mJ/cmの露光量にて全面露光した後、日立製作所製分光光度計U−3310にて、分光透過率を測定し、XYZ表色系における色度(C光源)を算出した。
【0142】
続いて、上記基板について、クリーンオーブンにて230℃30分焼成した後、上記同様、分光透過率を測定し、焼成前の色度との色差(ΔE*ab)、即ち耐熱性を測定した結果をまとめて表2に示す。
【0143】
【表2】

【0144】
表2に示すが如く、本発明の着色樹脂組成物を用いて形成された画素は、輝度が高く、
特に耐熱性に著しく優れることが分かる。
【符号の説明】
【0145】
100 有機EL素子
20 画素
30 有機保護層
40 無機酸化膜
500 有機発光体
51 正孔注入層
54 電子注入層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)色材、(B)溶剤及び(C)バインダー樹脂を含有する着色樹脂組成物であって、
該(A)色材が、下記式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする、着色樹脂組成物。
【化1】

(上記式(I)中、Zm−はアントラキノン骨格を有するm価のアニオンを表す。
mは1〜4の整数を表す。
Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい含窒素複素環基を表す。
nは、1〜5の整数を表す。
尚、1分子中に複数の
【化2】

が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
【請求項2】
前記式(I)で表される化合物が、下記式(II)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の着色樹脂組成物。
【化3】

(上記式(II)中、Ar、Ar及びnは、前記式(I)におけると同義である。
31は、水素原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
32〜R34は、各々独立に、水素原子、水酸基、−NHR41(R41は、R31と同義である。)、−SO、ハロゲン原子、−CO42(R42は、炭素数1〜3のアルキル基を表す。)を表す。
但し、R32〜R34のうち、少なくとも一つは−NHR41基である。
35〜R38は、各々独立に、水素原子、−SO、ハロゲン原子、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、炭素数1〜12のアルコキシル基、−CO43、フェニル基、−SO44、又はSONHR45(但し、R43〜R45は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を表す。
但し、R32〜R38のうちm個は、−SO基である。
尚、1分子中に複数の
【化4】

が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
【請求項3】
前記式(II)で表される化合物が、下記式(III)で表される化合物であることを特徴とする、請求項2に記載の着色樹脂組成物。
【化5】

(上記式(III)中、R31〜R38、m及びnは、前記式(II)におけると同義である。
501及びR502は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を表す。
51及びR52は、各々独立に、−O−、−S−、−NH−、−Se−又は−CR503504−を表す。
503及びR504は、各々独立に,水素原子、又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
但し、R51又はR52が、−CR503504−である場合、R503及びR504が、互いに結合して、環を形成していてもよい。該環は、置換基を有していてもよい。環Y及びYは、各々独立に、置換基を有してもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよいナフタレン環を表す。
尚、1分子中に複数の
【化6】

が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
【請求項4】
前記式(III)で表される化合物が、下記式(IV)で表される化合物であることを特徴とする、請求項3に記載の着色樹脂組成物。
【化7】

(上記式(IV)中、R31〜R38、R51、R52、R501、R502、環Y、Y及びnは、前記式(III)におけると同義である。
及びRは、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を表す。
pは、0〜4の整数を表す。
pが2以上の場合、複数のR及びRは、同一であっても異なっていてもよい。また、一分子中の二つのpは、同じでもよく、異なっていてもよい。
尚、1分子中に複数の
【化8】

が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
【請求項5】
前記式(I)で表される化合物を、全固形分中1〜50重量%含有することを特徴とする、請求項1〜4に記載の着色樹脂組成物。
【請求項6】
更に、(D)重合性モノマーを含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項7】
更に、(E)光重合開始系及び熱重合開始系のうち少なくとも1つを含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項8】
更に、前記(A)色材として、(F)顔料を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の着色樹脂組成物を用いて形成された画素を含むことを特徴とする、カラーフィルタ。
【請求項10】
請求項9に記載のカラーフィルタを具備することを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項11】
請求項9に記載のカラーフィルタを具備することを特徴とする、有機EL表示装置。


【図1】
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【公開番号】特開2012−67169(P2012−67169A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212231(P2010−212231)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】