説明

睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法

【課題】睡眠の質が良く目覚が快適な睡眠をユーザに提供する。
【解決手段】収集手段11がユーザの非就寝時の第1活動情報を収集する。取得手段19、20が睡眠質に関する情報を含むユーザの就寝中の睡眠パターンを取得する。判定手段12が睡眠パターンと第1活動情報に基づいて第1活動情報に対応して睡眠に影響を及ぼす条件を算出し第1活動情報が条件に基づいて睡眠に影響を与えるかを判定する。記憶手段18の判定結果と睡眠パターンを関連付けて記憶する。第2収集手段11がユーザに就寝時間及び起床時間を推奨する日の寝る前の活動情報である第2活動情報を収集する。取得手段13が第2活動情報に基づいて記憶手段を参照して第2活動情報に対応する睡眠パターンのうちユーザにより睡眠の質が良いと判定された睡眠パターンを記憶手段から取得する。推定手段13が睡眠パターンからユーザに推奨する就寝時間及び起床時間を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの睡眠状態を管理し、ユーザに良い睡眠を提供する睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から快適な睡眠をユーザに提供するために様々な機器が開発されている。
例えば、ユーザが就眠時刻と起床時刻と睡眠周期を入力し、これらの情報に基づいて、就眠時刻から睡眠を周期的に変える一般的な睡眠リズムにしたがってユーザに音声刺激を与える機器がある(例えば、特許文献1参照)。この機器は、睡眠リズムを調整し、快適に目覚めることを目標とするものである。
【0003】
他に、就寝者の睡眠中の心拍、脈などの生体情報を検出して、就寝者の睡眠感を学習する機器もある(例えば、特許文献2参照)。この機器は、ニューラルネットワークを用いて、就寝者から入力した睡眠感と合わせて教師信号としている。応用段階では、この機器は、実際に検出した生体情報により睡眠感を推定し、この推定された睡眠感の眠気を感じない時にアラームを動作させることにより、就寝者が快適な起床を実現できるとされている。
【特許文献1】特開2001−174578公報
【特許文献2】特開平5−245148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の例では、睡眠の個人差があることまで考慮しておらず、就寝者個別対応をしていないため、人によっては快適な目覚めを得ることができない。また、就寝者の日常活動による睡眠質、寝付きなどへの影響を考慮せずに、一般的な睡眠リズムに基つきコントロールしているため、睡眠リズムの正しさには問題がある。
【0005】
また、特許文献2の例でのユーザの睡眠感は、就寝者の眠気だけであって、寝つきの良さ、熟睡度などの睡眠質を全く考慮していない。したがって、この機器では睡眠質の改善は全くできない。また、ユーザが自分で起床時刻を設定できない問題もある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑み、睡眠の質が良く、目覚めが快適な睡眠をユーザに提供することが可能になる睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の睡眠状態管理装置によれば、ユーザの睡眠状態を管理し、ユーザに適した睡眠を提供する睡眠状態管理装置において、前記ユーザの非就寝時の第1の活動情報を収集する第1の収集手段と、少なくとも、入眠時刻、起床時刻、寝付きの良さ、熟睡度、目覚めの良さを示す睡眠の質に関する情報を含む、前記ユーザの睡眠パターンを取得する取得手段と、前記睡眠パターンと前記第1の活動情報に基づいて、該第1の活動情報に対応して睡眠に影響を及ぼす条件を算出し、前記第1の活動情報が前記条件に基づいて睡眠に影響を与えるか否かを判定する判定手段と、前記判定した結果と前記睡眠パターンとを関連付けて記憶する記憶手段と、前記ユーザに就寝時間及び起床時間を推奨する日の寝る前の活動情報である第2の活動情報を収集する第2の収集手段と、前記第2の活動情報に基づいて、前記記憶手段を参照して、前記第2の活動情報に対応する睡眠パターンのうち前記ユーザにより睡眠の質が良いと判定された睡眠パターンを取得する取得手段と、前記睡眠パターンからユーザに推奨する就寝時間及び起床時間を推定する推定手段を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明の睡眠状態管理方法によれば、ユーザの睡眠状態を管理し、ユーザに適した睡眠を提供する睡眠状態管理方法において、前記ユーザの非就寝時の第1の活動情報を収集し、少なくとも、入眠時刻、起床時刻、寝付きの良さ、熟睡度、目覚めの良さを示す睡眠の質に関する情報を含む、前記ユーザの睡眠パターンを取得し、前記睡眠パターンと前記第1の活動情報に基づいて、該第1の活動情報に対応して睡眠に影響を及ぼす条件を算出し、前記第1の活動情報が前記条件に基づいて睡眠に影響を与えるか否かを判定し、前記判定した結果と前記睡眠パターンとを関連付けて記憶し、前記ユーザに就寝時間及び起床時間を推奨する日の寝る前の活動情報である第2の活動情報を収集し、前記第2の活動情報に基づいて、前記記憶された前記判定した結果と前記睡眠パターンを参照して、前記第2の活動情報に対応する睡眠パターンのうち前記ユーザにより睡眠の質が良いと判定された睡眠パターンを取得し、前記睡眠パターンからユーザに推奨する就寝時間及び起床時間を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法によれば、睡眠の質が良く、目覚めが快適な睡眠をユーザに提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法について詳細に説明する。まず、はじめに本実施形態の睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法の概要を簡単に説明する。
本実施形態の睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法は、就寝者の日々の活動情報により、その日の睡眠パターンを推定し、より実際に近い睡眠状況を把握することができる。また、睡眠パターンは、年齢、性別などに影響され個人差があるので、同じ日常活動に対しても、ユーザそれぞれの睡眠状況が違っている。本実施形態の睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法では、ユーザごとに対応する睡眠管理を行い各ユーザに最適な睡眠管理を行うことができる。さらに、本実施形態の睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法は学習過程を設定し、この学習過程で実際に得た個人の睡眠状況と日常活動情報を対応づけ、教師情報として学習して記録する。この結果、本実施形態の睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法によれば、個人の日常活動情報から推定した睡眠状況は実際の睡眠状況に極めて近づけることができる。
【0011】
また、本実施形態の睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法は、ユーザの主観情報の収集によって良い睡眠パターンか否かを判定し記録する。この記録された良い睡眠パターンへ誘導するため、本実施形態の睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法は、日常活動情報から推定した睡眠パターンに基づいて就寝者へ適切な刺激を与える。例えば、本実施形態の睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法は、推定した睡眠パターンにより深睡眠であると推定される時刻に深睡眠体温刺激を行い、推定した睡眠パターンにより起床時刻であると推定される時刻に近づくと、体温を徐々に高くする起床体温刺激を行い、推定した睡眠パターンにより覚醒時刻であると推定される時刻に合わせて、良い目覚めができるようにするために睡眠リズムを変更するための刺激をユーザに与える制御を行う。この結果、本実施形態の睡眠状態管理装置及び睡眠状態管理方法は、就寝者の日常活動情報により、睡眠質が良く、快適に目覚めることができる睡眠をユーザに提供することができる。
【0012】
(第1の実施形態)
本実施形態の睡眠状態管理装置は、図1に示すように、通信部30、ユーザ管理部10、ユーザデータベース(以後、ユーザDBと記す)40、日常活動情報収集部11、睡眠情報収集部19、睡眠情報処理部20、睡眠推定学習部12、睡眠推定部13、睡眠時刻推奨部16、及び、ユーザ睡眠情報DB18を備えている。なお、図1では、太線の矢印と細線の矢印で情報の流れを示している。太線の矢印は日常活動情報に含まれる情報ごとに睡眠質に影響を及ぼすか否かを示す情報と、睡眠パターンの睡眠特徴量とを関連付けてユーザ睡眠情報DB18に格納するための情報の流れを示す。細線の矢印はユーザ睡眠情報DB18に蓄積された、日常活動情報に含まれる情報ごとに睡眠質に影響を及ぼすか否かを示す情報と、睡眠パターンの睡眠特徴量に基づいて推奨する就寝時刻及び起床時刻をユーザに提示するための情報の流れを示す。以後、前者の太線の流れに対応する動作過程を学習過程、後者の細線の流れに対応する動作過程を非学習過程と称する。
【0013】
通信部30は、外部の通信機器との間で情報のやり取りを行う。外部の通信機器は、図1に示したように、例えば、携帯電話等の移動電話、PDA(Personal Digital Assistant)、PC(Personal Computer)がある。ユーザはこの外部の通信機器を利用して、本実施形態の睡眠状態管理装置との間で情報をやり取りする。ユーザから通信部30へ送信される情報は、学習過程で使用される情報と、非学習過程で使用される情報とがある。
【0014】
学習過程で使用される情報は、ユーザ情報、ユーザが就寝前に入力する本日1日の日常活動情報、ユーザが起床後に入力するある日の睡眠に関するアンケートに対する回答がある。なお、このアンケートは行わない場合もある。日常活動情報は、人間の睡眠への影響が大きいと見なされているサーカディアンリズム(circadian rhythm)とホメオスタシス(homeostasis)に影響があると想定される情報である。日常活動情報は、例えば、ユーザが就寝直前の日中(就寝直前に起きていた起床時間帯)に外出していた時間帯、外出時間、スポーツをしたか、就寝する2時間以内にアルコールを飲んだか、などがある。この日常活動情報に関しては後に図3及び図5を参照して詳細に説明する。アンケートに関しては後に図6を参照して詳細に説明する。また、通信部30からユーザへ送信される情報は、ユーザに問うアンケートの質問がある。
【0015】
一方、非学習過程に使用される情報は、上述したユーザ情報、ユーザが就寝前に入力する本日1日の日常活動情報がある。ユーザに携帯電話、PDA、PCなどの端末(以下、単に端末と記す)から情報を入力してもらう以外に、ネットワークを介して日常活動情報に関連する情報である天候、光の強度などの情報を自動収集することが可能なように設定されていてもよい。
通信部30は外部の通信機器から受信するデータの種類によって、本実施形態の睡眠状態管理装置が学習過程の動作をすべきか非学習過程の動作をすべきかを判定する。しかし、この判定は通信部30に限らず本実施形態の睡眠状態管理装置内の他の部によって行われてもよい。例えば、ユーザ管理部10が通信部30からの情報に基づいて本実施形態の睡眠状態管理装置が学習過程の動作をすべきか又は非学習過程の動作をすべきかを判定してもよい。
【0016】
ユーザ管理部10は、ユーザごとに情報を管理する。通信部30から受けた情報がどのユーザに関係するものかをユーザDB40を参照して判定し、対応するユーザの情報として出力する。ユーザDB40はユーザ情報を記憶しており、例えば、予め登録されているユーザのID、性別、年齢を記憶している。ユーザ管理部10が入出力する情報は、学習過程で使用される情報と、非学習過程で使用される情報とがある。学習過程で使用される情報としては、上述したユーザ情報、日常活動情報及びアンケートの答えがある。非学習過程で使用される情報としては、上述したユーザ情報及び日常活動情報がある。
ユーザ管理部10は、通信部30から受け取った全ての情報を日常活動情報収集部11に出力する。ユーザ管理部10から睡眠情報収集部19に出力される情報はユーザ情報のみである。また、ユーザ管理部10は、アンケートの質問を通信部30を介してユーザに提示するように制御する。アンケートは、例えば、起床後の睡眠質に関する質問が含まれている。
【0017】
日常活動情報収集部11は、日常活動情報を収集する。日常活動情報収集部11が入出力する情報は学習過程で使用される情報と非学習過程で使用される情報がある。学習過程で使用される情報としては、上述した、ユーザ管理部10が日常活動情報収集部11に出力する、ユーザが就寝前に入力する本日1日の日常活動情報、ユーザ管理部10が日常活動情報収集部11に出力する、ユーザが起床後に入力するある日の睡眠に関するアンケートに対する回答、及び生体センサ111によって取得される身体運動情報がある。身体運動情報は、例えば、ユーザの歩数、脈拍履歴、活動している時刻を記録した身体の運動に関する活動履歴の情報である。以後、単に日常活動情報と記載した場合は身体運動情報を含むものとする。非学習過程で使用される情報としては、ユーザ管理部10及び生体センサ111から収集する、ユーザのその日1日に行った活動に関する日常活動情報がある。この日常活動情報は睡眠推定部13に出力される。本実施形態の睡眠状態管理装置は、この日常活動情報に基づき、推奨する就寝時刻及び推奨する起床時刻を計算しユーザに提示する。
日常活動情報は、端末を使用し通信部30を介してユーザから入力されたり、生体センサ111によって取得される。通常は端末及び生体センサ111の両方から情報を取得するが、どちらか一方からだけ情報を取得するようにしても良い。また、生体センサ111はこのセンサを装着しているユーザの身体運動情報を測定する。この生体センサ111は、例えば特開2002−219116又は特開2001−61820に詳細が記載されている。また、日常活動情報の具体例は後に図3及び図5を参照して説明する。
睡眠情報収集部19は、ユーザ管理部10からのユーザ情報を受けて、このユーザ情報に示されるユーザの実際の睡眠情報を収集する。この睡眠情報は睡眠パターンとも称し、時間に関する睡眠段階の程度を示す情報である。睡眠情報収集部19は、学習過程で使用される情報のみ扱う。睡眠パターンは、例えば、図7に示したようなグラフで示される。睡眠パターンの収集は、例えば、ユーザが生体センサ191を就寝中に装着し、睡眠情報収集部19が生体センサ191から実際の睡眠パターンを収集する。生体センサ191は生体センサ111と同様なセンサであるので、生体センサ111と異なる生体センサ191をユーザに装着せず、生体センサ111と191とを兼用してもよい。もちろん、生体センサ191の代わりに、睡眠パターンを収集することのできる機器であれば何を使用しても構わない。
【0018】
睡眠情報処理部20は、睡眠情報収集部19で得られた睡眠パターンから睡眠に関する情報を処理して、処理後の情報を睡眠推定学習部12に出力する。すなわち、睡眠情報収集部19で得られた睡眠パターンを解析し少なくとも1つの睡眠特徴量を抽出して、この抽出した睡眠特徴量を睡眠推定学習部12に出力する。睡眠情報処理部20は睡眠パターンを解析し、睡眠特徴量として例えば、就寝時刻、起床時刻、REM睡眠に入る時刻、深睡眠に入る時刻、入眠までの時間、睡眠質を抽出する。睡眠質は、例えば、寝付きの良さ、熟睡度などを反映する。睡眠情報処理部20が抽出する睡眠特徴量の具体例は後に図14を参照して説明する。睡眠情報処理部20も学習過程で使用される情報のみを扱う。
【0019】
睡眠推定学習部12は、日常活動情報収集部11から日常活動情報及び睡眠情報処理部20から睡眠特徴量を入力し、日常活動情報収集部11からの日常活動情報と睡眠情報処理部20からの睡眠特徴量とを対応付ける。すなわち、睡眠情報処理部20がある睡眠パターンを得た場合、この睡眠パターンと当該睡眠パターンを示した日(睡眠前の1日)のユーザの日常活動を対応付ける。さらに、睡眠推定学習部12は、睡眠情報処理部20から得られる睡眠特徴量中の睡眠質と日常活動情報とを参照して、睡眠特徴量中の睡眠質に影響を及ぼす条件である影響発生条件を算出する。この影響発生条件は、一般に、日常活動情報に含まれる情報ごとに対応して算出される。すなわち、日常活動情報に含まれる情報ごとに影響発生条件が少なくとも1つ設定される。影響発生条件は、睡眠パターンから得られる睡眠特徴量中の睡眠質に関する情報を日常活動情報に結びつけることによって得られる。
【0020】
一般的に、この影響発生条件を精度よく算出するためには同一のユーザ(就寝者)について、日常活動情報と対応する睡眠パターンを多くの日数分取得し、これら複数の日数分の情報に基づいて統計的に影響発生条件を算出することが望ましい。この影響発生条件は学習により変更される。ユーザごとに影響発生する条件は異なると考えられる。この影響発生条件の算出に関しては後に図8を参照して詳細に説明する。
以後、単に睡眠特徴量と記載した場合は、睡眠特徴量には睡眠質を含んでいるものとする。
その後、睡眠推定学習部12は、日常活動情報収集部11から取得した日常活動情報に含まれる各情報が、睡眠推定学習部12内で算出した各影響発生条件に基づいて、睡眠特徴量中の睡眠質に影響を及ぼすと見なせるか否かを、日常活動情報に含まれる情報ごとに判定する。そして、睡眠推定学習部12は、(a)日常活動情報と、(b)睡眠パターンの睡眠特徴量との2つの情報を関連付けた状態でユーザ睡眠情報DB18に格納する。これにより、内容の異なる複数の日常活動情報のそれぞれに対応して複数の睡眠パターンの睡眠特徴量を得ることができる。したがって、本実施形態の睡眠状態管理装置がある日常活動情報を取得すればこの日常活動情報に対応する睡眠パターンの睡眠特徴量を得ることができる。睡眠推定学習部12も学習過程で使用される情報のみを扱う。
【0021】
睡眠推定部13は、非学習過程で使用される情報のみを扱う。睡眠推定部13は、日常活動情報収集部11が得た日常活動情報を入力し、この日常活動情報の各項目に関し影響発生条件を適用し、項目ごとに睡眠への影響があるか否かを判定する。睡眠推定部13は、この判定結果とユーザ睡眠情報DB18に格納されている日常活動情報の各項目に対する判定結果とを比較し、全ての項目に渡り同一な数値が多い判定結果をユーザ睡眠情報DB18から探し出し、この探し出した判定結果に対応して格納されている睡眠特徴量を抽出する。睡眠推定部13は、この抽出された睡眠特徴量に基づいてユーザに推奨する就寝時刻と起床時刻を決定する。具体的には、睡眠推定部13は、この抽出した睡眠特徴量が良い睡眠であることを示していれば、この睡眠特徴量が示す就寝時刻と起床時刻がユーザにとって最も望ましい睡眠時刻であると決定する。そして、睡眠時刻推奨部16は、睡眠推定部13が決定した睡眠時刻を表示手段等の提示手段を介してユーザに提示する。
【0022】
次に、本実施形態の睡眠状態管理装置の動作を図2のフローチャートを参照して説明する。
日常活動情報収集部11が、通信部30及びユーザ管理部10を介して、ユーザが入力した日常活動情報と、生体センサ111が取得した日常活動情報とを収集する(ステップS1)。次に、例えばユーザ管理部10は、本実施形態の睡眠状態管理装置が学習過程であるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2で学習過程であると判定された場合はステップS3からの情報と共にステップS4に進み、学習過程でないと判定された場合はステップS7に進む。
【0023】
ステップS3では、睡眠情報収集部19が睡眠情報である睡眠パターンを収集し、さらに睡眠情報処理部20がこの収集した睡眠パターンから睡眠特徴量を抽出する。睡眠推定学習部12が、(a)ステップS1で収集された日常活動情報と、(b)睡眠パターンの睡眠特徴量との2つの情報を関連付けた状態でユーザ睡眠情報DB18に格納する(ステップS4)。
【0024】
非学習過程で睡眠推定部13は、本実施形態の睡眠状態管理装置がステップS1で取得した日常活動情報に対応する睡眠パターンの睡眠特徴量を、ユーザ睡眠情報DB18を検索することで見つけ出すことができる。ユーザ睡眠情報DB18は、この睡眠特徴量を参照して睡眠特徴量中の睡眠質が良好な睡眠パターンを格納する(ステップS5)。
【0025】
しかし、ユーザ睡眠情報DB18は、ステップS3で収集された睡眠特徴量中の睡眠質が良好な睡眠パターンのみ格納するわけではない。また、ステップS4によって、内容の異なる複数の日常活動情報のそれぞれに対応して複数の睡眠パターンを得ることができ、日常活動情報の睡眠への具体的な影響、例えば、睡眠特徴量中の睡眠質への影響を学習することができる(ステップS6)。睡眠推定学習部12は、日常活動情報に含まれる項目ごとに睡眠特徴量中の睡眠質に影響を及ぼすか否かを、記録した情報と睡眠パターンの睡眠特徴量中の睡眠質(例えば、寝付きが良かったか否か、熟睡することができたか否か)とを関連付けた状態でユーザ睡眠情報DB18に格納(図8の符号181を参照)しているので、内容の異なる複数の日常活動情報のそれぞれに対応して複数の睡眠パターンの睡眠特徴量を得ることができる。
【0026】
一方、ステップS7では、睡眠推定部13がステップS1で得られた日常活動情報の各項目に関し影響発生条件を適用し、項目ごとに睡眠への影響があるか否かを判定する。この得られた日常活動情報の各項目に対する判定結果とユーザ睡眠情報DB18に格納されている日常活動情報の各項目に対する判定結果と比較し、最もマッチングする日常活動情報をユーザ睡眠情報DB18から見つけ出す(ステップS7)。さらに、睡眠推定部13がこの日常活動情報に対応して格納されている睡眠特徴量を抽出して、睡眠パターンを得る。この睡眠パターンが良い睡眠質を示していれば(ステップS8)、睡眠推定部13は、この睡眠パターンから推奨就寝時刻及び推奨起床時刻を推定して提示する(ステップS9)。一方、睡眠パターンが良い睡眠質を示していない場合は、例えば、睡眠推定部13が2番目にマッチングする日常活動情報から睡眠パターンを推定してこの睡眠パターンの睡眠質を参照する。この手順を繰り返して良い睡眠質を示している睡眠パターンを得ることができる。他に、良い睡眠質を示している睡眠パターンのうち、REM時刻及び深睡眠時刻を比較し、これらの時刻が最も近い睡眠パターンを取得してこの睡眠パターンから推奨就寝時刻及び推奨起床時刻を推定しても良い。
【0027】
次に、通信部30及びユーザ管理部10を介して、日常活動情報収集部11が収集する日常活動情報を図3及び図4を参照して説明する。
人間の睡眠は、上述したように、主にサーカディアンリズムとホメオスタシスの二種類のリズムに影響される。したがって、日常活動情報の収集は上記リズムに影響がある情報を収集する必要がある。
【0028】
図4に示すように、サーカディアンリズムは人間のほぼ1日周期の“活動―休息”リズムである。このサーカディアンリズムによれば、時刻によって人間は眠気に襲われることがわかる。また、人間は起きている時間が長くなると眠気を感じる程度がだんだん高まる。しかし、睡眠を取ればサーカディアンリズムはリセットすることが知られている。
また、サーカディアンリズムは正確に24時間周期ではなく、人によって24時間周期から25時間周期までのばらつきがある。したがって、1日が24時間周期である、外界の昼夜リズムとサーカディアンリズムとの間にずれが生じる。このずれは人間が外で活動することにより解消される。すなわち、人間が外で活動することによって、サーカディアンリズムを24時間周期のリズムであるかのように修正することができる。24時間に調整できなかった場合は、人間は段々入眠時刻が遅くなってしまい早い時刻に入眠しにくくなるとともに、体温変化と睡眠のリズムが合わなくなり疲労感と寝不足感が現れて熟睡感がなくなる。
一方、ホメオスタシスは脳が前の睡眠状況により、後の睡眠状況をコントロールするリズムを示す。例えば、人間は断醒した後、深い睡眠の時間をより長く取ることができ、睡眠質で睡眠時間の不足を補充する。人間の睡眠は主に上記2種類のリズムによって共同で調整される。
【0029】
サーカディアンリズムに影響がある人間の活動は、基本的に、人間が浴びた光量と人間の体温が関係する。したがって、人間が浴びた光量と体温に関する情報を収集する必要がある。人間が浴びた光量は光の強度及び光を浴びた時間で決定される。光の強度は、ルクス(lux)の単位である照度を参照して計測する。この場合25,000lux以上であれば、強い光と判断される。例えば、晴れた日の日中の屋外では50,000−100,000luxであり、曇りの日の日中の屋外では1,000−10,000luxである。明るいオフィスでは400−600luxである。普通の家屋の屋内では100−300luxである。これ以外の場所での光は弱いので、サーカディアンリズムへの影響を考慮しなくてもよいとされる。
【0030】
一般的な人間では、およそ2,500lux以上の光を2時間以上浴びれば、サーカディアンリズムはおよそ1時間前に戻る。すなわち、サーカディアンリズムを24時間周期へリセットすることができる。これらの条件を基準にすると、晴れている日の日中の屋外に10分位いれば、サーカディアンリズムを24時間周期にリセットすることができる。明るい曇りの日の日中の屋外(10,000luxと考えられる)では、30分以上いないと、サーカディアンリズムを24時間周期にリセットすることができない。しかしながら、これらのサーカディアンリズムを24時間周期にリセットするための条件は個人差があるので、学習過程において睡眠情報処理部20から得た睡眠パターンによって各ユーザごとにこの条件は調整される。
一方、夜に明るい光を浴びると(本実施形態では例えば20:00以降、1000ルクス以上とする)、サーカディアンリズムは遅くなり入眠しにくくなり、睡眠時間が長くなる。したがって、夜に明るい光を浴びることは、睡眠にとってマイナスの影響要因と考えられる。
【0031】
また、スポーツ等による運動活動は、人間のホメオスタシスに起因した眠気、及び人間の睡眠中の体温に影響を与える。さらに言えば、スポーツ等による運動活動はホメオスタシスに起因した眠気を抑える作用がある。図4によれば、起床してから7〜8時間経過した頃、一時的にホメオスタシスにより眠気に襲われる。20分位のスポーツ等の運動活動は、ホメオスタシスに起因した眠気を抑えると同時に深睡眠中の体温を低くする効果があり、結果として熟睡度が高まるという効果を奏する。熟睡度を高めるためには、就寝前3〜4時間以前にスポーツ等の運動活動を行うことが望ましい。したがって、人間の日常のスポーツ等による運動活動情報も収集する必要がある。
また、就寝前にアルコールを摂取すると、人間は入眠しやすくなるが、睡眠の後半の時間帯に睡眠が浅くなり覚醒し易くなる。就寝前のアルコールは全体的に睡眠が浅くなり、睡眠質が悪くなる。
さらに、カフェインの摂取がある。カフェインを摂取すると、人間を覚醒させホメオスタシスに起因する眠気を抑える効果がある。しかし、寝る前の夕方以降にカフェインを摂取すると、入眠しにくくなることが知られている。
また、ストレスを感じていたり体が疲れていると感じるときは、入眠しにくくなることが知られている。さらに、ストレスを感じていたり体が疲れていると感じるときは、睡眠中に覚醒しやすいので、睡眠質が悪くなると予想される。その他、サーカディアンリズム、ホメオスタシス、又は睡眠へ影響がある活動情報があれば、これらも収集することが望ましい。
【0032】
以上の根拠を基にして決定された、日常活動情報収集部11が収集するユーザの日常活動情報の項目の一例を図3を参照して説明する。日常活動情報収集部11が収集する日常活動情報の各項目は、これから述べるように睡眠質に関わる質問であり、項目ごとに何を調べるための質問であるかについて説明する。これらの質問に対する答えに基づいて、睡眠推定学習部12は、取得した日常活動情報に含まれる各情報が、睡眠推定学習部12で算出した各影響発生条件に基づいて、睡眠質に影響を及ぼすと見なせるか否かを日常活動情報に含まれる情報ごとに判定する。そして、睡眠推定学習部12は、(a)収集された日常活動情報と、(b)睡眠パターンの睡眠特徴量、これら2つの情報を関連付けた状態でユーザ睡眠情報DB18に格納する。
項目1とそのサブ項目は、ユーザが日中に浴びた光の量を得るためのものである。この項目の内容は、ユーザのサーカディアンリズムが24時間周期へリセットされたか否かに依存する。
項目2は、ユーザが夜に浴びた光の量を得るためのものである。この項目の内容は、ユーザの入眠(寝付き)がよいか否かに依存する。
項目3とそのサブ項目は、スポーツ等による運動活動をどの程度行ったかを得るためのものである。この項目の内容は、ユーザが熟睡する度合いに依存する。
項目4は、就寝前にアルコールを摂取したか否かの情報を得るためのものである。この項目の内容は、睡眠質が良いか否かに依存する。
項目5は、夕方以降にコーヒーなどカフェインを含むものを摂取したか否かの情報を得るためのものである。この項目の内容は、入眠しやすいか否かに依存する。
項目6はストレスを感じているか否かの情報を得るためのものであり、入眠しやすいか否かに依存する。
項目7は疲れを感じているか否かの情報を得るためのものであり、睡眠質が良くなるかに依存する。
【0033】
図5は通信部30及びユーザ管理部10を介して日常活動情報収集部11が収集した日常活動情報の一例である。図5は、あるユーザの回答を複数日分表示したものである。すなわち、A1’とA2は異なる日の日常活動情報である。
【0034】
次に、生体センサ191の代わりに日常活動情報収集部11が就寝者にアンケートを取って就寝者の睡眠パターンを推定して睡眠状況を取得する場合のアンケートの具体例を図6を参照して説明する。
生体センサ191はリアルタイムに就寝者の睡眠状況を取得し、睡眠推定部13は睡眠パターンを推定する。しかし、この代わりに、又は生体センサ191と併用して、図6に示すようなアンケートを起床後にユーザに入力してもらっても良い。図6の例では、入眠にかかった時間、夜目覚めしたか否か、朝の目覚めはどうか、良く寝られたか否か、が問われている。入眠にかかった時間は寝付きの状態を反映し、夜目覚めしたか否かはユーザがどの程度熟睡したのかを示す熟睡度を反映し、朝の目覚めはどうかは起床直前時がREM睡眠であるか否かを反映し、よく寝られたか否かは睡眠質の全体を反映している。これらのアンケート結果に基づいて睡眠情報処理部20が睡眠特徴量を推定する。このアンケートはユーザである就寝者の主観情報を含んでしまうので、生体センサ191との併用又は生体センサ191のみの使用が好ましい。
【0035】
次に、睡眠情報収集部19が収集する睡眠パターンの一例を図7を参照して説明する。人間の睡眠はレム(REM:rapid eye movement)睡眠とノーレム(NREM:no rapid eye movement)睡眠の2種類ある。図7に示すように、人間は入眠後、NREM睡眠の第1段階から順に第4段階まで段階を進み、続いてNREM睡眠の第4段階から第1段階に戻り、そしてREM睡眠に進む。この入眠後の第1段階から次の第1段階を経てREM睡眠までが睡眠の1サイクルである。睡眠の1サイクルはおおよそ90分〜120分である。人間の睡眠はこのサイクルを一晩に4〜5回繰り返す。また、一般的に、人間は、最も浅い睡眠であるREM睡眠から目覚めると、快適に目覚めることができる。したがって、起床時刻にREM睡眠であることが快適に目覚めるための必要条件になる。
【0036】
次に、睡眠推定学習部12が、睡眠情報処理部20から得られる睡眠特徴量中の睡眠質と日常活動情報とを参照して影響発生条件を算出する様子を図8を参照して説明する。ここでは、睡眠質を決定する要因として寝付きへの影響及び熟睡度への影響を挙げる。
睡眠推定学習部12は、日常活動情報収集部11から日常活動情報を取得し、睡眠情報処理部20からこの日常活動情報に対応する実際の睡眠パターンを取得する。そして、睡眠推定学習部12は実際の睡眠パターンから睡眠質を推定する。そして、睡眠推定学習部12は、日常活動情報に含まれる情報ごとに睡眠質への影響が発生する影響発生条件を算出する。
【0037】
図8に示した例では、日常活動情報の項目C1及びC3についてのみ影響発生条件が算出される。図8の日常活動情報の項目C1(1〜1.3)において、寝付きがよくなり熟睡度が高くなるための影響発生条件は、2500luxかつ2時間以上と算出され、日常活動情報の項目C3(3〜3.3)において、寝付きへは特に影響を与えず、熟睡度が高くなるための影響発生条件は、普通強度のスポーツ20分と算出される。
【0038】
項目C1(1〜1.3)は、図3に示した1,1.1,1.2,1.3に示した質問に対する回答を示し、項目C3(3〜3.3)は、図3に示した3,3.1,3.2,3.3に示した質問に対する回答を示す。この例では、図3に示した1〜1.3までの回答及び3〜3.3までの回答と、この日常活動情報に対応する睡眠パターンに基づいて、睡眠推定学習部12が影響発生条件を算出する。
【0039】
なお、この図8のC2及びC4〜C7の例では、科学的事実に基づいて予め寝つきや熟睡度に対する影響発生条件が決まっているため、睡眠推定学習部12は影響発生条件を算出しない。ただし、アンケートの取り方によって時間等のパラメータが加わる場合には、このパラメータについて睡眠推定学習部12は影響発生条件を算出する。 より高精度な影響発生条件を算出するためには、同一のユーザについて、日常活動情報と対応する睡眠パターンを多くの日数分取得し、これら複数の日数分の情報に基づいて統計的に影響発生条件を算出することが望ましい。この場合、当然、睡眠推定学習部12は、取得する日数が多ければ多いほどより正確な影響発生条件を算出するこができると期待される。
【0040】
図8では、図3に示した日常活動情報の7つの項目についての影響発生条件しか示されていないが、睡眠推定学習部12は、他に、生体センサ111で取得される身体運動情報による影響発生条件も算出してもよい。この場合の影響発生条件は、例えば、ユーザの歩数が所定数以上である、就寝直前の脈拍数が日中の平常時に比較して所定数以下である等が想定される。
【0041】
次に、睡眠推定学習部12で判定された日常活動情報と対応する睡眠パターンがユーザ睡眠情報DB18に格納される形式を図9を参照して説明する。
ユーザ睡眠情報DB18は、睡眠推定学習部12が算出した影響発生条件を使用して、睡眠への影響があるか否かを日常活動情報の項目ごとに判定した情報を格納する。この際、この日常活動情報に対応して実際の睡眠パターンも格納する。図9の例では、図8に示した影響発生条件に適合しているか否かが数字0又は1によって示され、いずれかの数字が睡眠パターンと共に格納される。ある日常活動情報に対応する、図9の日常活動情報A1では、項目2及び項目6のみが睡眠に影響があり、その他の項目は睡眠に影響がなく、対応する睡眠パターンがP1であることがわかる。
【0042】
次に、睡眠推定部13の動作を図10を参照して説明する。睡眠推定部13は非学習過程でのみ動作する。
まず、睡眠推定部13は、日常活動情報収集部11が収集した日常活動情報を取得する(ステップS11)。睡眠推定部13は、この取得された日常活動情報の各項目に関し図8に示したような影響発生条件を適用し、図9に示したように項目ごとに睡眠への影響があるか否かを判定する。この結果、ステップS11で取得した日常活動情報の項目ごとに1又は0の数字が付与される。次に、睡眠推定部13は、ステップS11で取得した日常活動情報の各項目に対する判定結果と、ユーザ睡眠情報DB18に格納されている日常活動情報の各項目に対する判定結果とを比較し、全ての項目に渡り同一な数値である日常活動情報を検索する。ユーザ睡眠情報DB18に全ての項目に渡り同一な数値である日常活動情報が記録されている場合はステップS14に進み、一方、ユーザ睡眠情報DB18に全ての項目に渡り同一な数値である日常活動情報が記録されていない場合はステップS13に進む。
【0043】
ステップS14では、ステップS11から得た日常活動情報と、ステップS12で検出された全ての項目に渡り同一な数値である活動情報とから、これらに対応して格納されている睡眠パターンをユーザ睡眠情報DB18から取得する。この日常活動情報は当然ステップS11で取得された日常活動情報と同一なものである。一方、ステップS13では、ステップS11で取得した日常活動情報の各項目に対する判定結果に最も近いと思われる、日常活動情報の各項目に対する判定結果をユーザ睡眠情報DB18から探し出し、この判定結果に対応して格納されている睡眠パターンをユーザ睡眠情報DB18から取得する。次に、ステップS13、S14で取得した睡眠パターンから就寝推奨時刻、起床推奨時刻を算出する(ステップS15)。
【0044】
次に、図10のステップS13で実行される動作の詳細を図11を参照して説明する。ステップS11で入力された日常活動情報Axの各項目に対する判定結果を取得し(ステップS1301)、この動作を実行するためのプログラムの所定の値を初期化し(ステップS1302)、学習過程でユーザ睡眠情報DB18に格納した複数の日常活動情報Ai(i=1,2・・・,N)のA1から順に、日常活動情報Axと日常活動情報の各項目に対する判定結果を比較する(ステップS1303)。
【0045】
日常活動情報Aiに含まれる最初の項目の判定値と日常活動情報Axに含まれる対応する項目の判定値とを比較する(ステップS1304、ステップS1305)。日常活動情報Aiに含まれる最初の項目の判定値と、日常活動情報Axに含まれる対応する項目の判定値(0又は1)とが一致した場合はステップS1306に進み、一致しなかった場合はステップS1307に進む。ステップS1306では、一致(マッチング)した項目数としてカウンタ(図示せず)を1だけ上げる。このカウンタはユーザ睡眠情報DB18に格納されている日常活動情報の各項目に対する判定結果と、日常活動情報Axの各項目に対する判定結果を比較し始めるときにリセット(すなわち、カウンタ値を0)にする。すなわち、例えば、ステップS1304でカウンタ値は0にリセットされる。一方、ステップS1307では、日常活動情報に含まれる全ての項目を比較したか否かが判定される。全ての項目を比較したと判定された場合はステップS1308に進み、全ての項目を比較していないと判定された場合は次の項目に移りステップS1305に戻る。
【0046】
全ての項目を比較した後、この日常活動情報Aiと日常活動情報Axとのマッチングした項目数が、これまでに比較した他の各Aiと日常活動情報Axとのマッチングした項目数のうちの最大数よりも大きいか否かが判定される(ステップS1308)。最大数よりも大きいと判定された場合はステップS1309に進み、最大数よりも大きくないと判定された場合はステップS1310に進む。
【0047】
ステップS1309では、ここまでの比較で日常活動情報Axと最もマッチングしている日常活動情報Aiは、ステップS1308からこのステップS1309に進んできたときの日常活動情報Aiであると判定し、この日常活動情報Aiと日常活動情報Axのマッチングしている項目数をマッチングした最大の項目数に設定する。ステップS1310では、ユーザ睡眠情報DB18に格納されている全ての日常活動情報Ai(i=1,2,3・・・,N)の各項目に対する判定結果と、日常活動情報Axの各項目に対する判定結果とを比較したか否かが判定される。全ての日常活動情報の各項目に対する判定結果と日常活動情報Aiとを比較したと判定された場合はステップS1311に進み、一方、全ての日常活動情報の各項目に対する判定結果と日常活動情報Aiとを比較していないと判定された場合はiを1つ進めて次の日常活動情報に移りステップS1303に戻る。
【0048】
ステップS1311では、ユーザ睡眠情報DB18に格納されている日常活動情報の各項目に対する判定結果の中で、日常活動情報Axと最もマッチングしている日常活動情報は直前にステップS1309で判定された日常活動情報Aiであると決定する。そして、このAiに対応してユーザ睡眠情報DB18に格納してある睡眠パターンを取得する。
【0049】
図12は、図11で示した動作を実行させるためのJAVA(登録商標)プログラムの一例である。
図12に示したプログラムを使用すると、例えば、非学習過程において図9に示した日常活動情報A1’を取得した場合に、ユーザ睡眠情報DB18には各項目が完全にマッチングする日常活動情報の各項目に対する判定結果はなく、A1’に最もマッチングする日常活動情報の各項目に対する判定結果が探し出され図9の例ではA3がそれに当る。そして、日常活動情報A1’に対応する睡眠パターンはP3と予想される。
【0050】
さらに、A1’とA3とを比較してみると、日常活動情報の項目C3とC7の2つが異なる。A1’の項目C3は“0”であり、C7の項目C3は“1”である。すなわち、A1’の睡眠パターンはP3に比較して、日常活動C7からは影響を受けるが、C3からは影響を受けない。図8を参照して説明したように睡眠推定学習部12が影響発生条件を算出した際に、各日常活動項目が睡眠へどのような影響を与えるかは図8に示す通り既知である。この例では、図8に示す通りC3は睡眠の熟睡度が大きくなるように影響し、C7は寝付きと熟睡度が悪くなるように影響する。したがってトータルとしてはC7が影響し、A1’の睡眠パターンは睡眠パターンP3より、寝付きが悪く、熟睡度も落ちると推定することができる。このA1’の睡眠パターンの一例として図13に示した睡眠パターンP1’がある。
【0051】
例えば、上記推定した睡眠パターンP1’に対して、睡眠推定部13により推定された睡眠パターンP3は良い睡眠パターンである。よって、推定された睡眠パターンP3は、睡眠パターンP1’に対する良い睡眠パターンであるとする。一方、推定された睡眠パターンが良い睡眠パターンではない場合、例えば、良いと推定された睡眠パターンの集合にある睡眠パターンとのREM時刻、深睡眠時刻を比較して、最も良い睡眠パターンを得ることができる。したがって、ユーザへ推奨する就寝、起床時刻は推定された良い睡眠パターンの就寝時刻と起床時刻である。P1’の場合、良い睡眠パターンP3であり、図14を参照すると就寝時刻24:00と起床時刻7:50が推奨する時刻になることがわかる。
【0052】
図14は、睡眠推定学習部12が日常活動情報収集部11から取得した日常活動情報と対応付けた、睡眠情報処理部20から取得した実際の睡眠パターンの睡眠特徴量を示している。
睡眠推定学習部12は、日常活動情報と実際の睡眠パターンの睡眠特徴量を対応付ける。図14に示した例では、日常活動情報A1と実際の睡眠パターンP1、日常活動情報A2と実際の睡眠パターンP2等が対応付けられている。実際の睡眠パターンを示す情報は、図14に示すように、就寝時刻、起床時刻、REM睡眠であった時刻、深睡眠時刻(NREM睡眠の第4段階である時刻)、入眠するまでにかかった時間、及び、睡眠質を含んでいる。
【0053】
以上に示した第1の実施形態によれば、ある就寝者の日常活動情報とこれに対応する睡眠特徴量を取得して、データベースにこれらの情報を蓄積しておき、このデータベースにこれらの情報を蓄積してあるユーザが就寝前にその日の日常活動情報を入力することにより、本実施形態の睡眠状態管理装置がデータベースを参照してユーザが良い眠りを得るための推奨就寝時刻及び推奨起床時刻をユーザに提示することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
本実施形態の睡眠状態管理装置は、第1の実施形態の睡眠状態管理装置に制御パターン計算部14、制御実施部15、制御パターン学習部17を加えたものである。これらの装置部分が付加されたことにより、これらの装置部分と情報の入力又は出力をする日常活動情報収集部11、睡眠推定部13、及びユーザ睡眠情報DB18は、第1の実施形態での動作に加え第2の実施形態特有の動作が加わる。その他の装置部分は第1の実施形態と同様であり、動作も同様である。同一な装置部分は同一符号を付してその説明を省略する。本実施形態でも学習過程と非学習過程があるが、本実施形態では第1の実施形態とは異なる学習過程であり、制御パターンの学習である。
本実施形態での太線の矢印は、ある制御パターンを実施した場合にユーザに睡眠に関するアンケートを実施し、このアンケートの回答によって制御パターンをユーザに適切なものに調整するための情報の流れを示す。これらの太線の矢印は、図15を参照すると、ユーザ管理部10と通信部30との双方向の矢印、ユーザ管理部10から日常活動情報収集部11への矢印、ユーザ管理部10とユーザDB40との双方の矢印、日常活動情報収集部11からユーザ睡眠情報DB18への矢印、ユーザ睡眠情報DB18から制御パターン学習部17への矢印、制御パターン学習部17から制御パターン計算部14への矢印、制御パターン計算部14からユーザ睡眠情報DB18への矢印がある。
本実施形態での細線の矢印は、ユーザ睡眠情報DB18から日常活動情報に対応する制御パターンを抽出し、ユーザ睡眠情報DB18に対応する制御パターンがない場合は制御パターン計算部14が標準的な睡眠パターンに基づいて制御パターンを生成し、エアコンや音声刺激装置にそれぞれ温度環境、音環境を変更させるための情報の流れを示す。これらの細線の矢印は、図15を参照すると、通信部30と外部の通信機器及び音声刺激装置及びエアコンとの双方向の矢印、ユーザ管理部10と通信部30との双方向の矢印、ユーザ管理部10から日常活動情報収集部11への矢印、日常活動情報収集部11から睡眠推定部13への矢印、睡眠推定部13とユーザ睡眠情報DB18との双方向の矢印、睡眠推定部13から制御パターン計算部14への矢印、ユーザ睡眠情報DB18から制御パターン計算部14への矢印、制御パターン計算部14から15への矢印、制御実施部15から通信部30への矢印がある。
【0055】
制御パターン計算部14は、その日の日常活動情報に基づいて睡眠推定部13がユーザ睡眠情報DB18を参照して見つけたユーザの睡眠パターンの睡眠特徴量を入力して、この睡眠パターンの睡眠特徴量に応じて制御パターンを計算する。また、日常活動情報収集部11から入力した日常活動情報に対応する睡眠パターンの睡眠特徴量がユーザ睡眠情報DB18に格納されている場合は、制御パターン計算部14はユーザ睡眠情報DB18から睡眠パターンの睡眠特徴量を取得することが望ましい。睡眠推定部13がユーザ睡眠情報DB18から日常活動情報に対応する睡眠パターンの睡眠特徴量を見つけられなかった場合は、予定の起床時刻に合わせて睡眠周期を90分とする標準的な睡眠パターンの睡眠特徴量を制御パターン計算部14に出力する。標準的な睡眠パターンでは、起床時刻をT1とすれば、時刻T1−N×90分(N=1、2、3、…)がREM睡眠となる時刻に対応し、T1−N×45分(N=1、2、3・・・)が深睡眠となる時刻に対応すると予想される。制御パターンは、睡眠中のユーザの体温を制御する体温制御パターン、ユーザの睡眠を浅くさせるために音声を出力する音声制御パターンがある。
体温制御パターンは、少なくとも2種類あり、深睡眠の時に体温を下げる制御と、起床時刻の約30分前から体温を徐々に上昇させ、設定された起床体温まで起床体温刺激を行う制御がある。深睡眠の時に体温を下げる制御は、深睡眠時に体温を低くすると良い睡眠を取れるという科学的事実に基づいている。一般的には、深睡眠時の温度(環境温度)は約24℃に設定する。しかし、この環境温度はユーザによって異なる場合もあるので、後述するアンケートによって温度を24℃とは異なる温度に設定する場合もある。起床体温刺激を行う制御は、良い目覚めができる起床体温があり、この起床体温で起床するとユーザは爽快な目覚めを体感するという科学的事実に基づいている。起床体温はユーザによって異なることが多く、はじめはある適切な温度を設定し、この後アンケートによって各ユーザごとに起床体温を設定する。本実施形態では、起床体温はエアコンによる環境温度調整で調整するが、起床体温を調整することができれば他の装置によって調整しても良い。
音声制御パターンは、ユーザの睡眠パターンを調整し、目覚めを浅い睡眠段階にするために設定される。音声制御パターンは、ユーザの推定された良い睡眠パターンのREM睡眠中の時刻に、設定されたある強度で音声を出力するように設定される。この音声を出力する時刻及び音声の強度は後述するユーザへのアンケートによって調整される。
【0056】
また、制御パターン計算部14は、制御パターンの学習過程では制御パターン学習部17からアンケート結果に対応する制御パターンの修正点を指示した情報を入力し、この情報にしたがってアンケート結果を反映した制御パターンを計算し、日常活動情報、睡眠パターンの睡眠特徴量に対応して制御パターンをユーザ睡眠情報DB18に格納する。
【0057】
制御実施部15は、制御パターン計算部14で計算された体温制御パターン及び音声制御パターンを入力し、通信部30を介して体温調整装置及び音声刺激装置を動作及び停止させる指示をする。体温調整装置は、エアーコンディショナー等の温度を上げ下げ自在な装置であれば何でもよい。音声刺激装置は再生装置、アンプ及びスピーカ等の音声を調整された強度で出力することができる装置であれば何でもよい。
【0058】
制御パターン学習部17は学習過程で使用される情報のみを扱う。しかし、本実施形態での学習過程は、第1の実施形態での学習過程とは異なり、外部環境を変化させることによりユーザの睡眠パターンを制御してユーザにとって望ましい睡眠パターンを実現するための学習過程である。
制御パターン学習部17は、ユーザが過去の睡眠での制御パターンの可否についてのアンケートの質問を受けて、制御パターンを変更するための指示を生成し、この指示を制御パターン計算部14に出力する。制御パターン学習部17はユーザ睡眠情報DB18からアンケート結果と対応する制御パターンを入力する。アンケートは、例えば、ユーザ管理部10が通信部30を介してユーザに提示する。アンケートの内容は、後に図22を参照して説明する。アンケート結果は通信部30、ユーザ管理部10、日常活動情報収集部11を介してユーザ睡眠情報DB18に出力され、アンケート結果は対応する日常活動情報、睡眠パターンの睡眠特徴量、及び制御パターンとともに格納される。
【0059】
次に、本実施形態の睡眠状態管理装置の動作を図16を参照して説明する。図2に示した第1の実施形態のフローチャートと同様なステップは同一の番号を付してその説明を省略する。
ステップS7で得られた日常活動情報に対応する睡眠パターンをユーザ睡眠情報DB18から見つけ出し、この睡眠パターンが良い睡眠パターンである場合はこの睡眠パターンを制御目標睡眠パターンとする(ステップS21)。一方、睡眠パターンが良い睡眠質を示していない場合は、例えば、睡眠推定部13が2番目にマッチングする日常活動情報から睡眠パターンを推定してこの睡眠パターンの睡眠質を参照する。この手順を繰り返して良い睡眠質を示している睡眠パターンを制御目標睡眠パターンとして得ることができる(ステップS21)。他に、良い睡眠質を示している睡眠パターンのうち、REM時刻及び深睡眠時刻を比較し、これらの時刻が最も近い睡眠パターンを取得してこの睡眠パターンを制御目標睡眠パターンとしても良い。また、ユーザ睡眠情報DB18から見つけ出した睡眠パターンの睡眠特徴量の就寝時刻と時間がずれた場合は、睡眠パターンをこの時間だけ全てずらしてこの睡眠パターンに応じて制御目標睡眠パターンを計算しても良い。
【0060】
制御パターン計算部14が制御目標睡眠パターンを参照して制御パターンを計算する(ステップS22)。制御パターンは上述したように睡眠パターンに応じてエアコンや音声刺激装置にそれぞれ温度環境、音環境を変更させるための情報を含んでいる。また、ステップS21で最もマッチングする日常活動情報に対応する睡眠パターンが良い睡眠パターンでない場合やマッチングする日常活動情報がない場合は、睡眠パターンとして上述した標準的な睡眠パターンを想定して、この標準的な睡眠パターンに応じて制御パターンを計算しても良い(ステップS22)。この場合、予定就寝時刻及び予定起床時刻を設定して睡眠パターンを決定する。
【0061】
制御パターン計算部14で計算された制御パターンはユーザ睡眠情報DB18に格納される(ステップS23)。この制御パターンに基づいて制御が実施されない場合は終了し、制御が実施される場合はステップS24に進み制御実施部15が制御パターンを実行する。すなわち、上述したように制御実施部15が通信部30を介して、エアコン、音声刺激装置等に指示を送り、ユーザの体温、ユーザの睡眠段階を調整してユーザによりよい睡眠を提供する。
【0062】
制御パターンを学習する学習過程であるか否かが判定される(ステップS25)。この判定は、例えば、ユーザ管理部10又は通信部30が行う。ユーザ管理部10又は通信部30は、例えば、ユーザから実際の睡眠状況についてのアンケートを受け付けた場合は学習過程であると判定する。学習過程であると判定された場合はユーザに提示したアンケートの回答を日常活動情報収集部11及びユーザ睡眠情報DB18経由で制御パターン学習部17が取得する。この際、ユーザ睡眠情報DB18で対応する制御パターンに関連付けてアンケートの回答も格納される。そして、制御パターン学習部17はこの制御パターンとアンケートの回答を取得して、必要がある場合は制御パターンを変更する。一方、学習過程でないと判定された場合は終了する。
【0063】
ここで、ステップS22で行う制御パターンに組み込む体温を調整する具体的な一例を図14、図17を参照して説明する。図17の推定された睡眠パターン132は日常活動情報から推定されたパターンであり、図17の良い睡眠パターン131は睡眠パターン132に最もマッチングする良い睡眠パターンである。図17において、制御目標睡眠パターンである図14のP3は、良い睡眠パターン131に対応する。
ユーザが設定した睡眠時刻が推奨された就寝時刻、起床時刻と同じ場合に(P3の就寝時刻と起床時刻はそれぞれ24:00と7:50である)、推定した睡眠パターン132を良い睡眠パターン202へ誘導するため、就寝者へ深睡眠体温コントロール実施する。この場合に、就寝者へ刺激与えるタイミングは、良い睡眠パターンP3の深睡眠に入る時刻である。取得した日常活動情報から得られる制御目標睡眠パターンがP3である場合、図14に示すようにP3の記録された深睡眠時刻は、1:00、2:30、4:00、及び5:30の時刻である。したがって、図17に示すように、制御パターン計算部14は、ユーザが十分な深睡眠を得られるように、これらの時刻前後にユーザの体温を低くするための深睡眠体温コントロール151を行うよう制御パターンを設定する。深睡眠は10分〜15分であるので、深睡眠体温コントロール時間は最大の15分とする。そして、ユーザは深睡眠の際に、体温がある程度低い方が良い睡眠を取ることができると科学的に判明しているので、最適と思われる深睡眠体温に設定する。また、学習過程を経てユーザから、夜寝ている間に寒く感じた、暑く感じた等の回答をユーザから得た場合には深睡眠温度を調整して制御パターンを設定する。
【0064】
また、図14によればP3の起床時刻は7:50であるので、図17に示すように、制御パターン計算部14は、ユーザが心地よく目覚めるように、この時刻のしばらく前(例えば、30分前)からユーザの体温を徐々に上昇させるための起床体温コントロール152の設定を行う。また、学習過程を経てユーザが朝の目覚め時に、寒く感じた、暑く感じた等の回答を得た場合には最適な起床温度を調整して制御パターンを設定する。何度か学習過程を経るとユーザごとの最適な起床温度を得ることができる。
【0065】
次に、ステップS22で行う制御パターンに組み込む睡眠パターンを調整する刺激(音声)を調整する具体的な一例を図14、図18を参照して説明する。図18は、日常活動情報から推定された睡眠パターン134とこの睡眠パターンの良い睡眠パターン133がかなりずれている場合の一例である。
推定した睡眠パターンは設定された時刻により決められた良い睡眠パターンへ誘導するため、ユーザへ刺激を与える。図18に示すように、推定した睡眠パターン134とすると、推奨された就寝時刻と起床時刻は0:00と7:50である。一方、ユーザが設定した就寝、起床時刻が0:00と7:00であるとすると、良い睡眠パターン集合の中、良い睡眠パターンと推定した睡眠パターン134とをマッチング順にマッチングしていき、起床時刻が7:00になるのはP1である。したがって、P1はこの状況での良い睡眠パターン133であるとして選択される。推定した睡眠パターン134は、起床時刻と合わせて、よい睡眠133へ誘導するため、就寝者へ刺激を与える。
【0066】
深睡眠の体温刺激を行う時刻は、睡眠パターンを変更させる刺激155の時刻よりも早い段階では、推定した睡眠パターン134の深睡眠時刻で行う。睡眠パターンを変更させる刺激155の時刻よりも後の段階では、良い睡眠パターンの深睡眠時刻で行う。この例では、深睡眠の体温刺激は、推定した睡眠パターンP1’に記録されている1:00、2:30と、良い睡眠パターンP1に記録されている4:45になる。深睡眠の体温刺激の温度は上述のように学習により得た最適深睡眠温度のTdeepである。
【0067】
さらに、設定した起床時刻7:00に合わせて、体温を徐々に上昇し、起床体温までにコントロールする起床体温コントロール154を6:30から行う。起床体温は上述したように学習により、ユーザが一番良い目覚めできる体温wake_tempratureに設定される。
【0068】
睡眠リズムを変えるための刺激は、記録された良い睡眠パターンのREM時刻中に、就寝から3時間以上と一番近い時刻とする。ここでは、良い睡眠パターンP1のREM時刻は、図14に示すように、1:00、2:30、4:00と5:30である。これらのREM時刻の中で、就寝時刻0:00から3時間以上の最初時刻は4:00であるので、4:00に、就寝者へ音声、又は振動刺激を与えて、就寝者の実際の睡眠はREM睡眠へ誘導する。この刺激は、就寝者が不快のない、覚醒もさせない適切な音声、又は振動刺激にする。
【0069】
上述したように制御パターン計算部14が制御パターンを計算し、ユーザ睡眠情報DB18がこの計算された制御パターンを含む幾つかの情報を格納する。この格納する情報の具体的な一例を図19、図20、図21を参照して説明する。
ユーザ睡眠情報DB18は、例えば、図19示すように、日常活動情報と、就寝時刻と、起床時刻と、推定した睡眠パターンと、学習前の制御パターンと、学習された制御パターン(最適化された制御パターン)と合わせて格納する。制御パターンは図20に示すように、刺激を行う時刻、刺激の種類、刺激強度、実施する時間などの項目が各制御パターンに対応してユーザ睡眠情報DB18に記録されている。最適化された制御パターンも図21に示すように、図20に示した項目と同様である。
【0070】
図19の301に示すように、推定した睡眠パターンP1’に対して、設定した就寝時間と起床時間が推奨された時刻と同じであれば、対応する制御パターンはControl11であり、Control11は、図20の183に示すように、刺激実施する開始時刻、刺激の種類(音声、温度、振動など)、刺激実施時間、刺激強度を含んでいる。後述するユーザからの主観情報(アンケートの回答)により学習した制御パターンを得る。図19の最適化された制御パターンが学習した睡眠制御パターンに対応し、例えば、睡眠制御パターンID:exe11のその詳細は図21の185に示してある。学習した睡眠制御パターンは、刺激の種類、強度、開始時刻、刺激実施する時間帯などを学習により、調整される。学習後は、温度刺激の強度はそのユーザに最適に調整されたTdeepに設定される。したがって、ユーザに最適化された刺激により、快適な睡眠を取れ、快適に目覚めることが可能になる。
【0071】
さらに、刺激を受けた就寝者から睡眠に関してユーザが感じた睡眠情報を収集する。したがって、就寝者へ与える制御パターン(刺激の強度、時刻、時間などの情報を含む)は就寝者の主観フィードバックにより学習され、調整される。学習された制御パターンは、日常活動情報と、推定した睡眠パターンと対応付けられ記録される。
【0072】
睡眠後に通信部30がユーザへアンケートを提示して日常活動情報収集部11が取得するアンケートの内容の具体的な一例及びこのアンケートに対する回答の一例をそれぞれ図22及び図23を参照して説明する。このアンケートの回答は、いわば、ユーザからの主観フィードバック情報になり、この情報に基づいて制御パターン学習部17が刺激に対する学習を行い、刺激を調整する。
図22に示したアンケート内容の一例はユーザのフィードバック情報を収集する例である。項目1は、夜の目覚め及び目覚めした時間を得るためのものである。例えば、目覚めた時刻に行う刺激があった場合に、この刺激の強度を弱くする。項目2は正しく起床温度を設定するためのものである。ユーザの回答に応じて起床温度を調整する。項目3は深睡眠時に行う体温刺激の温度を正しく設定するためのものである。ユーザの回答に応じて深睡眠体温を調整する。
【0073】
例えば、図19の睡眠状態301に対して、図22のアンケートに対する回答が図23に示すようであれば、睡眠状態301の制御パターンID:Control11は、制御パターンID:exe11へ調整される。制御パターンID:Control11と制御パターンID:exe11とを比較してみると、深睡眠温度は環境温度24℃からこのユーザに最適化されたTdeep(例えば、24℃より高い温度)へ調整される。この最適化は、睡眠推定学習部12が学習することによって、ユーザに対する最適な刺激を行う。
【0074】
このように制御パターン計算部14によって計算された制御パターン、アンケートの回答から得られた情報により最適化された制御パターンに基づいて、制御実施部15が就寝者であるユーザに、例えば、音声刺激、体温刺激を行うように音声刺激装置及びエアコンを制御する。音声刺激装置は、設定された時刻に、設定された強度で音声刺激を発生する。エアコンは、設定された時刻に、設定した温度にコントロールする。制御実施部15がエアコンや音声刺激装置に指示を送る場合に、通信部30を介して指示を送り、エアコン及び音声刺激装置を制御する。
【0075】
以上に示した第2の実施形態によれば、ある就寝者の日常活動情報とこれに対応する睡眠特徴量を取得して、データベースにこれらの情報を蓄積しておき、このデータベースにこれらの情報を蓄積してあるユーザが就寝前にその日の日常活動情報を入力することにより、本実施形態の睡眠状態管理装置がデータベースを参照して睡眠中のユーザに刺激を与える指示を行い、ユーザに良い眠りを提供することができる。
また、本実施形態の睡眠状態管理装置は、起床後にユーザに睡眠に関するアンケートを取ることによって、睡眠中の刺激に対してユーザごとにきめ細かい制御をすることが可能になる。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る睡眠状態管理装置のブロック図。
【図2】図1の睡眠状態管理装置の動作を示すフロー図。
【図3】図1の日常活動情報収集部が収集する日常活動情報のアンケート内容を示す図。
【図4】図3の日常活動情報が影響を受けるサーカディアンリズムとホメオスタシスのグラフを示した図。
【図5】図1の日常活動情報収集部が収集した日常活動情報の一例を示す図。
【図6】図1の日常活動情報収集部が睡眠情報を取得するためのアンケートの内容を示す図。
【図7】図1の睡眠情報収集部が収集する睡眠パターンの一例を示す図。
【図8】図1の睡眠推定学習部が影響発生条件を算出する様子を示す図。
【図9】図1のユーザ睡眠情報DBに格納されている内容を示す図。
【図10】図1の睡眠推定部の動作を示すフロー図。
【図11】図10のステップS13の詳細な動作を示すフロー図。
【図12】図11のフロー図に対応するプログラムの一例を示す図。
【図13】図1の睡眠推定部が推定した睡眠パターンの一例を示す図。
【図14】図1の睡眠推定学習部12が取得した睡眠パターンの睡眠特徴量を示す図。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る睡眠状態管理装置のブロック図。
【図16】図15の睡眠状態管理装置の動作を示すフロー図。
【図17】推定した睡眠パターンと良い睡眠パターンの差がわずかの場合、図15の制御パターン計算部が計算した計算結果を模式的に示す図。
【図18】推定した睡眠パターンと良い睡眠パターンの差が大きい場合、図15の制御パターン計算部が計算した計算結果を模式的に示す図。
【図19】図15のユーザ睡眠情報DBが格納している情報の一例を示す図。
【図20】図19の学習前制御パターンの詳細な一例を示す図。
【図21】図19の最適化された制御パターンの詳細な一例を示す図。
【図22】図15の通信部がユーザに提示するアンケートの内容の一例を示す図。
【図23】図22のアンケートに対する回答の一例を示す図。
【符号の説明】
【0078】
10・・・ユーザ管理部、11・・・日常活動情報収集部、12・・・睡眠推定学習部、13・・・睡眠推定部、14・・・制御パターン計算部、15・・・制御実施部、16・・・睡眠時刻推奨部、17・・・制御パターン学習部、18・・・ユーザ睡眠情報DB、19・・・睡眠情報収集部、20・・・睡眠情報処理部、30・・・通信部、40・・・ユーザDB、111・・・生体センサ、191・・・生体センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの睡眠状態を管理し、ユーザに適した睡眠を提供する睡眠状態管理装置において、
前記ユーザの非就寝時の第1の活動情報を収集する第1の収集手段と、
少なくとも、入眠時刻、起床時刻、寝付きの良さ、熟睡度、目覚めの良さを示す睡眠の質に関する情報を含む、前記ユーザの睡眠パターンを取得する取得手段と、
前記睡眠パターンと前記第1の活動情報に基づいて、該第1の活動情報に対応して睡眠に影響を及ぼす条件を算出し、前記第1の活動情報が前記条件に基づいて睡眠に影響を与えるか否かを判定する判定手段と、
前記判定した結果と前記睡眠パターンとを関連付けて記憶する記憶手段と、
前記ユーザに就寝時間及び起床時間を推奨する日の寝る前の活動情報である第2の活動情報を収集する第2の収集手段と、
前記第2の活動情報に基づいて、前記記憶手段を参照して、前記第2の活動情報に対応する睡眠パターンのうち前記ユーザにより睡眠の質が良いと判定された睡眠パターンを取得する取得手段と、
前記睡眠パターンからユーザに推奨する就寝時間及び起床時間を推定する推定手段を具備することを特徴とする睡眠状態管理装置。
【請求項2】
前記第2の活動情報と前記記憶手段を参照して推定した睡眠パターンを良い睡眠パターンへ誘導する刺激をユーザに与えるための制御パターンを算出する算出手段と、
ユーザへ睡眠の質についての質問を行い該質問に対する回答を受け付ける受付手段と、
該回答に基づいて制御パターンを変更するか否か判定し、変更する場合に制御パターンを前記回答に即して変更する変更手段と、
前記変更手段で制御パターンが変更されていない場合は前記算出された制御パターンに、前記変更手段で制御パターンが変更された場合は前記変更された制御パターンに基づいて、ユーザに刺激を与えるための指示をする指示手段をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の睡眠状態管理装置。
【請求項3】
前記制御パターンは、少なくとも睡眠中の就寝者に与える刺激のタイミング、刺激の種類、及び強度を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の睡眠状態管理装置。
【請求項4】
前記刺激の種類は、少なくともユーザの体温を変化させる温度刺激、及び、ユーザの睡眠段階を変化させる音声刺激を含むことを特徴とする請求項3に記載の睡眠状態管理装置。
【請求項5】
ユーザの睡眠状態を管理し、ユーザに適した睡眠を提供する睡眠状態管理方法において、
前記ユーザの非就寝時の第1の活動情報を収集し、
少なくとも、入眠時刻、起床時刻、寝付きの良さ、熟睡度、目覚めの良さを示す睡眠の質に関する情報を含む、前記ユーザの睡眠パターンを取得し、
前記睡眠パターンと前記第1の活動情報に基づいて、該第1の活動情報に対応して睡眠に影響を及ぼす条件を算出し、前記第1の活動情報が前記条件に基づいて睡眠に影響を与えるか否かを判定し、
前記判定した結果と前記睡眠パターンとを関連付けて記憶し、
前記ユーザに就寝時間及び起床時間を推奨する日の寝る前の活動情報である第2の活動情報を収集し、
前記第2の活動情報に基づいて、前記記憶された前記判定した結果と前記睡眠パターンを参照して、前記第2の活動情報に対応する睡眠パターンのうち前記ユーザにより睡眠の質が良いと判定された睡眠パターンを取得し、
前記睡眠パターンからユーザに推奨する就寝時間及び起床時間を推定することを特徴とする睡眠状態管理方法。
【請求項6】
前記第2の活動情報と前記記憶された前記判定した結果と前記睡眠パターンを参照して推定した睡眠パターンを良い睡眠パターンへ誘導する刺激をユーザに与えるための制御パターンを算出し、
ユーザへ睡眠の質についての質問を行い該質問に対するユーザから回答を受け付け、
該回答に基づいて制御パターンを変更するか否か判定し、変更する場合に制御パターンを前記回答に即して変更し、
前記制御パターンが変更されていない場合は前記算出された制御パターンに、前記制御パターンが変更された場合は前記変更された制御パターンに基づいて、ユーザに刺激を与えるための指示をすることをさらに具備することを特徴とする請求項5に記載の睡眠状態管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−61270(P2006−61270A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245276(P2004−245276)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】