説明

睡眠評価方法、睡眠評価システム及びその動作プログラム、パルスオキシメータ並びに睡眠支援システム

【課題】 SASのスクリーニングにおいて、被験者の体位と無呼吸状態との因果関係をデータとして正確に求めることができるようにする。
【解決手段】 睡眠評価システムSは、パルスオキシメータ2とPC3とから構成される。パルスオキシメータ2には、被験者の測定指Fから血中酸素飽和度に関する計測データを取得するプローブ21と、被験者の体の傾き角に関する計測データを取得する3軸加速度センサ22と、前記プローブ21及び3軸加速度センサ22により計測される計測データを格納する記憶部とが備えられている。またPC3には、前記記憶部に格納されている計測データを取得して、前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析する処理機能が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時無呼吸症候群(SAS;Sleep Apnea Syndrome)等の評価のために睡眠評価を行う方法及びシステム等に関し、特に無呼吸状態と身体の傾き角との因果関係を正確に把握することができる睡眠評価方法及び睡眠評価システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
睡眠中の無呼吸や低呼吸から様々な症状を引き起こす睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、高血圧、脳血管障害や虚血性心疾患の誘因となるばかりではなく、眠気に伴う生産性の低下や重大な労働災害を引き起こすと考えられ、近年社会問題化している。SASのスクリーニング方法の一つとして、被験者の睡眠中における動脈血の酸素飽和度(本明細書において「SpO2」又は「血中酸素飽和度」という)の変動を測定する方法がある。これは、無呼吸状態が生じると酸素供給が行われず血中酸素飽和度が低下するという関係があるからである。
【0003】
従来、血中酸素飽和度を測定する装置としてパルスオキシメータが知られている。このパルスオキシメータは、例えば発光部と受光部とを備えるプローブを患者の指に装着する等して、光を生体(指)に向けて投光し、生体を経由した光の光量変化をパルス信号として測定し、毎秒ごとの測定値を移動平均することによって血中酸素飽和度の時間変化を求めるものである。そして、無呼吸に伴う血中酸素飽和度の低下ピーク回数を積算することで、SASの重症度が判定される。かかる重症度の判定指標として、ODI(Oxygen desaturation index;1時間当たりの血中酸素飽和度の低下ピーク発生回数)がある。このODIは、上記パルスオキシメータを用いれば計測でき、またパルスオキシメータの適用は実質的に前記プローブを指に装着するだけであって、SAS患者が自宅で日常睡眠に近い状態で簡便に計測できる有用な指標であるということができる。なお、専ら医療機関において用いられる判定指標として、上記血中酸素飽和度のほか、脳波、口・鼻の気流、いびき、胸・腹の動き、体位などの評価パラメータを検出するポリソムノグラフィ(PSG;polysomnography)を用いて導出されるAHI(Apnea Hipopnea Index;1時間当たりの無呼吸及び低呼吸回数)がある。
【0004】
ところで、SAS患者の無呼吸症状と睡眠体位との間には、一定の因果関係があることが知られている。すなわち、仰臥位では軟口蓋や舌根部が咽頭腔を塞ぎ易くなるため、気道の閉塞による無呼吸が惹起され易くなる傾向がある。一方、側臥位及び腹臥位では気道の閉塞が起こりにくいことから、無呼吸症状が比較的生起されにくいという関係がある。このように、無呼吸症状と体位との間には看過できない関係があることから、上記PSGにおいても体位が評価パラメータの一つとしてラインナップされている。
【特許文献1】特開平5−200031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のPSGで評価パラメータとされている体位は、大まかな体方位であって、仰臥位、右側臥位、左側臥位及び腹臥位の4方位の別、乃至はこれら4方位の中間を含めた8方位と座位との別が体位パラメータとされているに過ぎない。このため、従来のPSGでは被験者の細かな体の動きに関する情報が不十分であり、無呼吸症状と体位との因果関係を正確に把握することが出来なかった。また、無呼吸症状と体位との因果関係には個人差があるにもかかわらず、そのような個人差を把握できないことから、個々の被験者に応じた治療方法の判定(例えば、睡眠時にどの程度の傾斜を持たせて体位を固定すれば良いかの判定)が正確に行えないという不都合があった。
【0006】
図29は、SpO2の時間変化と、実際の体位変化との関係を示すグラフ図である。この図例では、SpO2の低下が期間tq1と期間tq2との2回発生している場合を示している。この場合、従来のPSGによれば、大まかな体方位単位でしか体位パラメータが取得されないことから、SpO2が低下した期間tq1及び期間tq2と、両期間の間の正常期間とのいずれにおいても体位は「仰臥位」と判定されるのみであり、無呼吸状態と体位との因果関係が評価できないことになる。つまり、実際には体位が期間tq31及びtq33の角度にあるときにSpO2の低下が発生し、期間tq32の角度にあるときにはSpO2の低下が発生しないという体位依存性があるにもかかわらず、その依存性評価が出来ないという不都合があった。
【0007】
また、例えば図30に示すように、体位を8方位で評価可能なPSGを用いれば、幾分体位と無呼吸状態との関係を細かに評価することが可能となるが、体位の判別スレッショルド位置に体位があるとき、図中の丸印を付した期間tdの部分においてデータに振れが生じてしまうという問題がある。
【0008】
従って本発明は、被験者の体位と無呼吸状態との因果関係をデータとして正確に求めることができる睡眠評価方法、睡眠評価システム及びその動作プログラム、パルスオキシメータ並びに睡眠支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1にかかる睡眠評価方法は、睡眠状態にある被験者について体の傾き角と血中酸素飽和度とを所定のサンプリング周期で並行的に計測し、取得された計測データを時間軸に展開して、前記血中酸素飽和度の低下に基づく無呼吸状態と、被験者の体の傾き角との因果関係を評価することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、被験者の睡眠時における状態を、仰臥位や側臥位というような大まかな体位単位ではなく、さらに細やかな体の傾き角という角度の単位で計測しつつ、血中酸素飽和度を同時に計測する構成であるので、被験者の睡眠時の体位状態と無呼吸状態との関係を正確に把握することが可能となる。
【0011】
本発明の請求項2にかかる睡眠評価システムは、睡眠状態にある人体が無呼吸状態に陥ることで変動する所定の評価パラメータを被験者について計測する評価パラメータ検出手段と、被験者の体の傾き状態を角度情報として検出可能な体傾斜検出手段と、前記評価パラメータ検出手段及び体傾斜検出手段により計測される計測データを格納する記憶手段と、前記評価パラメータ検出手段及び体傾斜検出手段により、所定のサンプリング周期で被験者について前記所定の評価パラメータと体の傾き角とを計測させ、その計測データを前記記憶手段に格納させる制御手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、被験者の睡眠時における体の傾き状態を体傾斜検出手段により角度情報として計測しつつ、睡眠状態にある人体が無呼吸状態に陥ることで変動する所定の評価パラメータを評価パラメータ検出手段により計測でき、両者による計測データを記憶手段に格納させることができる。従って、前記記憶手段に格納された計測データに基づいて、被験者の睡眠時の体位状態と所定の評価パラメータとの関係を正確に把握することが可能となる。
【0013】
上記構成において、前記評価パラメータ検出手段が、被験者の血中酸素飽和度を検出する血中酸素飽和度測定手段であることが望ましい(請求項3)。この構成によれば、被験者の睡眠時の体位状態と、例えば動脈血酸素飽和度等の血中酸素飽和度の変位に基づき抽出される無呼吸状態との関係を正確に把握することが可能となる。
【0014】
上記請求項2又は3の構成において、前記記憶手段に格納された計測データに基づき、前記所定の評価パラメータ又は前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析して、被験者の無呼吸状態と身体の傾き角との関係を求める解析手段をさらに備えることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、解析手段により、被験者の睡眠中における体の傾き角と無呼吸状態との因果関係が求められる。
【0015】
上記構成において、前記解析手段が、血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係に加え、少なくとも呼吸器系の気流、胴体部分の動きに関する計測データとの関係を解析して、被験者の無呼吸状態及び低呼吸状態と身体の傾き角との関係を求める構成とすることができる(請求項5)。この構成によれば、解析手段により、被験者の睡眠中における体の傾き角と無呼吸状態と及び低呼吸状態の因果関係が求められる。
【0016】
上記請求項2〜5のいずれかの構成において、前記体傾斜検出手段が、被験者の体位状態につき少なくとも座位状態又は臥位状態の別を判別可能とされており、前記体位状態の別に関する情報も、前記記憶手段に格納される構成とすることが望ましい(請求項6)。この構成によれば、睡眠評価中に被験者が中途覚醒して歩行したような状態(通常、少なくとも座位状態を経由する)にあった期間が識別でき、座位状態において取得された計測データと、臥位状態において取得された計測データとを識別することが可能となる。
【0017】
この構成において、前記体傾斜検出手段が、3軸加速度センサを備えて構成され、前記3軸加速度センサの第1軸の出力が被験者の体の傾き角計測用に、第2軸の出力が座位状態と臥位状態との判別用に、第3軸の出力が臥位における仰臥位と腹臥位との判別用に用いられる構成とすることが望ましい(請求項7)。この構成によれば、一つのセンシング要素により、仰臥位及び腹臥位の各々の体位において体の傾き角を計測できると共に、座位状態の判別も行えるようになる。
【0018】
また、前記解析手段は、前記体位状態が臥位状態であるときの計測データを用いて、前記所定の評価パラメータ又は前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析する構成とすることが望ましい(請求項8)。この構成によれば、解析手段により、被験者が座位状態の期間において取得された無効データを除外して睡眠評価を行うことが可能となる。
【0019】
本発明の請求項9にかかる睡眠評価システムは、被験者の血中酸素飽和度に関する計測データを取得する血中酸素飽和度計測部と、被験者の体の傾き角に関する計測データを取得する体傾斜検出部と、血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により計測される計測データを格納する記憶部と、前記血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により、所定のサンプリング周期で被験者について前記血中酸素飽和度と体の傾き角とに関する計測データを取得させ、その計測データを前記記憶部に格納させる制御部とを有するパルスオキシメータと、前記パルスオキシメータの体傾斜検出部を被験者の体幹部に装着する装着手段と、前記パルスオキシメータの記憶部に格納されている計測データを取得して、前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析して表示する処理手段とを具備することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、被験者の睡眠中に、血中酸素飽和度に関する計測データを取得する血中酸素飽和度計測部と、体の傾き角に関する計測データを取得する体傾斜検出部とを備えたパルスオキシメータを、被験者の体幹部に装着させた状態で計測データを取得してパルスオキシメータの記憶部に格納させ、覚醒後に前記記憶部に格納された前記計測データを取り出してパーソナルコンピュータ等の処理手段により解析することで、被験者の睡眠中における体の傾き角と無呼吸状態との因果関係を求めることができる。
【0021】
上記構成において、前記処理手段は、前記計測データを時間軸に展開して、前記血中酸素飽和度の低下ピークと被験者の体の傾き角との関係を表示させる表示制御部を有する構成とすることができる(請求項10)。この構成によれば、血中酸素飽和度の低下ピークと被験者の体の傾き角との関係から、当該被験者において無呼吸状態が如何なる体の傾き角において発生しているかを明確に把握できるようになる。
【0022】
また、上記構成において、前記処理手段は、前記血中酸素飽和度の低下ピークの発生頻度と、被験者の体の傾き角との関係をヒストグラム化するためのヒストグラム演算部を有する構成とすることが望ましい(請求項11)。この構成によれば、当該被験者において無呼吸状態が如何なる体の傾き角において、どのような頻度で発生しているかを明確に把握できるようになる。
【0023】
この場合、前記処理手段は、前記血中酸素飽和度の低下ピークが発生しない被験者の体の傾き角を、無呼吸状態が発生しない適正傾き角として求める演算部を有する構成とすることが望ましい(請求項12)。この構成によれば、当該被験者において無呼吸状態の発生を予防できる体の傾き角を直ちに把握できるようになる。
【0024】
上記構成において、前記パルスオキシメータの体傾斜検出部が、被験者の体位状態につき少なくとも座位状態又は臥位状態の別を判別可能とされると共に、この体位状態の別に関する情報も前記記憶部に格納される構成とされ、前記処理手段は、前記体位状態が臥位状態であるときの計測データを選別するデータ選別部を有する構成とすることが望ましい(請求項13)。この構成によれば、処理手段は、データ選別部により被験者が座位状態の期間において取得された無効データを選別・除外して、睡眠評価を行うことが可能となる。
【0025】
本発明の請求項14にかかるパルスオキシメータは、被験者の血中酸素飽和度に関する計測データを取得する血中酸素飽和度計測部と、被験者の体の傾き角に関する計測データを取得する体傾斜検出部と、血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により計測される計測データを格納する記憶部と、前記血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により、所定のサンプリング周期で被験者について前記血中酸素飽和度と体の傾き角とに関する計測データを取得させ、その計測データを前記記憶部に格納させる制御部とを有することを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、被験者の睡眠中に当該パルスオキシメータにより、血酸中素飽和度に関する計測データと体の傾き角に関する計測データとを取得して記憶部に格納しておくことができる。従って、被験者の覚醒後に、前記記憶部に格納された前記計測データを取り出してパーソナルコンピュータ等の処理手段により解析することで、被験者の睡眠中における体の傾き角と無呼吸状態との因果関係を求めるという睡眠評価システムを構築できるようになる。
【0027】
上記構成において、前記パルスオキシメータには所定の表示部と処理部とが備えられており、前記処理部は、前記記憶部に格納されている計測データを取得して、前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析して前記表示部に表示させる機能を具備する構成とすることができる(請求項15)。この構成によれば、外部的な処理手段を要することなく、当該パルスオキシメータのみで被験者の睡眠中における体の傾き角と無呼吸状態との因果関係を求めることが可能となる。
【0028】
さらに、上記構成において、前記パルスオキシメータの外装面に、当該パルスオキシメータの被験者への標準装着方向を表示する方向表示部が備えられている構成とすることができる(請求項16)。この構成によれば、被験者は前記方向表示部の表示に従って、パルスオキシメータを正しく装着することができる。
【0029】
本発明の請求項17にかかる睡眠評価システムの動作プログラムは、睡眠状態にある人体が無呼吸状態に陥ることで変動する所定の評価パラメータを被験者について計測する評価パラメータ検出手段と、被験者の体の傾き状態を角度情報として検出可能な体傾斜検出手段と、前記評価パラメータ検出手段及び体傾斜検出手段により計測される計測データを格納する記憶手段と、所定の解析手段とから構成される睡眠評価システムの動作プログラムであって、前記評価パラメータ検出手段及び体傾斜検出手段により、所定のサンプリング周期で被験者について前記所定の評価パラメータと体の傾き角とを計測させて計測データを取得させるステップと、前記計測データを前記記憶手段に格納させるステップと、前記解析手段に、前記記憶手段に格納された計測データに基づき、前記所定の評価パラメータの変動と被験者の体の傾き角との関係を解析させるステップとを少なくとも実行させることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項18にかかる睡眠評価システムの動作プログラムは、被験者の血中酸素飽和度に関する計測データを取得する血中酸素飽和度計測部と、被験者の体の傾き角に関する計測データを取得する体傾斜検出部と、血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により計測される計測データを格納する記憶部とを備えるパルスオキシメータと、所定処理手段とから構成される睡眠評価システムの動作プログラムであって、前記血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により、所定のサンプリング周期で被験者について前記血中酸素飽和度と体の傾き角とに関する計測データを取得させるステップと、前記計測データを前記記憶部に格納させるステップと、前記処理手段に、パルスオキシメータの記憶部に格納されている計測データを取得して、前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析して表示する処理ステップとを少なくとも実行させることを特徴とする。
【0031】
本発明の請求項19にかかる睡眠支援システムは、被験者を臥位状態で支持可能な寝台と、前記寝台の傾斜角度を調整する寝台駆動手段と、前記寝台駆動手段により調整される寝台角度を設定する制御手段とを備え、前記制御手段は、所定の計測手段により前記寝台において睡眠状態にある被験者について体の傾き角と血中酸素飽和度とを所定のサンプリング周期で同時計測させ、取得された計測データを時間軸に展開して、前記血中酸素飽和度の低下に基づく無呼吸状態と、被験者の体の傾き角との因果関係を評価して、当該被験者において無呼吸状態が発生しない体の傾き角を求め、前記無呼吸状態が発生しない体の傾き角を、前記寝台駆動手段に対する設定寝台角度として出力可能とされていることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、当該被験者において、無呼吸状態が発生する体の傾き角を求めると同時に、被験者がそのような体の傾き角とならないように寝台角度が調整されるので、被験者に無呼吸状態が発生しない適正な睡眠環境を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
請求項1にかかる睡眠評価方法によれば、被験者の体位と無呼吸状態との相関について、従来のように大まかな「体方位」と無呼吸状態との関係ではなく、被験者の体が実際にどのような角度で傾いているかを示す「体の傾き角」と無呼吸状態との関係の関係を計測するので、無呼吸症状と体位との因果関係を正確に把握できる。従って、SAS患者(被験者)の治療に際し、個々の患者における体位依存性に応じた的確な治療が行えるようになる。
【0034】
請求項2にかかる睡眠評価システムによれば、記憶手段に格納された、無呼吸状態と相関性のある計測データに基づいて、被験者の睡眠時の体位状態と所定の評価パラメータとの関係を正確に把握できる。従って、SAS患者の治療に際し、個々の患者における体位依存性に応じた的確な治療が行えるようになる。
【0035】
請求項3にかかる睡眠評価システムによれば、無呼吸状態と相関性のある評価パラメータとして血中酸素飽和度を用いるので、評価パラメータを、市販のパルスオキシメータ等で非侵襲に且つ患者への負担を少なく取得できる。
【0036】
請求項4にかかる睡眠評価システムによれば、解析手段により、SASの重症度を判定する指標であるODI等を、被験者ごとに、その体の傾き角別に求めることができるようになる。
【0037】
請求項5にかかる睡眠評価システムによれば、解析手段により、専ら医療機関でPSGを用いて導出されるAHI等を、被験者ごとに、その体の傾き角別に求めることができるようになる。
【0038】
請求項6にかかる睡眠評価システムによれば、有効な計測データとして扱えない座位状態の期間において取得された計測データと、臥位状態において取得された計測データとを識別できるので、計測データの信頼性を向上させることができる。
【0039】
請求項7にかかる睡眠評価システムによれば、被験者に3軸加速度センサという一つのセンシング要素を取り付けるだけで、仰臥位及び腹臥位の各々の体位において体の傾き角を計測できると共に、座位状態の判別も行えるので、被験者の負担が軽減される。また、パルスオキシメータ等に3軸加速度センサを内蔵させることで、システムの簡素化を図ることができる。
【0040】
請求項8にかかる睡眠評価システムによれば、解析手段により、被験者が座位状態の期間において取得された無効データを除外して睡眠評価が為されるので、より正確に無呼吸症状と体の傾き角との関係を判定できるようになる。
【0041】
請求項9にかかる睡眠評価システムによれば、パルスオキシメータとパーソナルコンピュータ等とでシステムを構築でき、パルスオキシメータ単体で被験者の体の傾き角並びに血中酸素飽和度についての計測データが取得され、且つ記憶部に格納される。従って、システムを簡素化できると共に、被験者の負担を軽減することができる。
【0042】
請求項10にかかる睡眠評価システムによれば、表示制御部により生成される所定の画像等を確認するだけで、当該被験者において無呼吸状態が如何なる体の傾き角において発生しているかを明確に把握できるようになる。
【0043】
請求項11にかかる睡眠評価システムによれば、当該被験者において無呼吸状態が如何なる体の傾き角において、どのような頻度で発生しているかを明確に把握できるので、ODI等を、被験者ごとに、その体の傾き角別に求めて自動的に表示させることが可能となる。
【0044】
請求項12にかかる睡眠評価システムによれば、当該被験者において無呼吸状態の発生を予防できる体の傾き角を直ちに把握できるので、個々の患者に対するSASの治療方法を速やかに取得できる。
【0045】
請求項13にかかる睡眠評価システムによれば、データ選別部より、被験者が座位状態の期間において取得された無効データを除外し、その上で処理手段によって睡眠評価を行うことが可能となることから、より正確に無呼吸症状と体の傾き角との関係を判定できるようになる。
【0046】
請求項14にかかるパルスオキシメータによれば、当該パルスオキシメータ単体で被験者の体の傾き角並びに血中酸素飽和度についての計測データを取得し、且つ記憶部に格納することが可能となる。そして、事後的に記憶部に格納された計測データを取り出して解析することで、体の傾き角と無呼吸状態との因果関係を求めることができるので、SASの体位依存性を計測するシステムを、当該パルスオキシメータを用いるだけで構築できるようになる。
【0047】
請求項15にかかるパルスオキシメータによれば、当該パルスオキシメータのみで被験者の睡眠中における体の傾き角と無呼吸状態との因果関係を求めることが可能となるので、SASの体位依存性を計測するシステムを一層簡素化できるようになる。
【0048】
請求項16にかかるパルスオキシメータによれば、被験者がパルスオキシメータの装着方向を誤らずに済み、例えば体傾斜検出部として3軸加速度センサを用いたような場合に、各軸の出力を設定通りの検知出力として用いることができる。すなわち、装着方向を誤ってしまうと、例えば右方向への寝返りを左方向への寝返りと誤認してしまうようなケースが想定されるが、方向表示部を設けることで、そのような不具合の発生を未然に防止できるようになる。
【0049】
請求項17にかかる睡眠評価システムの動作プログラムによれば、記憶手段に格納された、無呼吸状態と相関性のある計測データに基づいて、解析手段により被験者の睡眠時の体位状態と所定の評価パラメータとの関係を評価させることができる。従って、SAS患者の治療に際し、個々の患者における体位依存性に応じた的確な治療が行える。
【0050】
請求項18にかかる睡眠評価システムの動作プログラムによれば、パルスオキシメータとパーソナルコンピュータ等の処理手段とからなるシステムを用い、パルスオキシメータの記憶部に格納された、血中酸素飽和度及び体の傾き角の計測データに基づいて、処理手段により被験者の睡眠時の体位状態と無呼吸状態との関係を評価させることができる。従って、SAS患者の治療に際し、個々の患者における体位依存性に応じた的確な治療が行えるようになる。
【0051】
請求項19にかかる睡眠支援システムによれば、無呼吸状態を検出しつつ、被験者が無呼吸状態に陥らないような体の傾き角に寝台角度が調整されるので、被験者に対し適正な睡眠環境を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき説明する。
(ハード構成の説明)
図1は、本発明の実施形態にかかる睡眠評価システム1の全体構成を概略的に示すブロック図である。当該睡眠評価システム1は、睡眠状態にある被験者について体の傾き角と無呼吸状態と相関性のある評価パラメータとを所定のサンプリング周期で並行的に計測し、取得された計測データを時間軸に展開して、前記評価パラメータの変動に基づく無呼吸状態と、被験者の体の傾き角との因果関係を評価するためのシステムである。この睡眠評価システム1は、評価パラメータ検出手段11、体傾斜検出手段12、記憶手段13、制御手段14及び解析手段(処理手段)15から構成されている。
【0053】
評価パラメータ検出手段11は、睡眠状態にある人体が無呼吸状態に陥ることで変動する所定の評価パラメータを被験者について計測する。ここで計測される評価パラメータとしては、無呼吸状態と関連して人体に内部的、外部的に表出する各種のパラメータが採用可能であり、一般的なPSGにおいて評価パラメータで評価対象とされている血中酸素飽和度、脳波、口・鼻の気流、いびき、胸・腹の動き等を採用可能である。この中でも、血中酸素飽和度は、市販のパルスオキシメータ等で簡便に計測できることから、血中酸素飽和度を評価パラメータとすることが望ましい。
【0054】
体傾斜検出手段12は、被験者の体の傾き状態を角度情報として検出する。この体傾斜検出手段12としては、被験者の体幹部若しくは適宜な部位に装着されてその傾き角を検出可能な各種の角度センサを用いることができ、体の傾き角を5゜単位程度以下の分解能で検出できる角度センサ、特に1°単位程度以下の分解能で検出できる角度センサを用いることが好ましい。このような体傾斜検出手段12としては、3軸加速度センサを好適に用いることができる。この点については後記で詳述する。
【0055】
記憶手段13は、前記評価パラメータ検出手段11及び体傾斜検出手段12により計測される計測データを格納する。この記憶手段13としては、RAM(Random Access Memory)やEPROM(Erasable and Programmable ROM)などを用いることができる。
【0056】
制御手段14は、マイクロプロセッサ等からなり、前記評価パラメータ検出手段11及び体傾斜検出手段12により、所定のサンプリング周期で被験者について前記所定の評価パラメータと体の傾き角とを計測させ、その計測データを前記記憶手段13に格納させる。
【0057】
解析手段15は、前記記憶手段13に格納された計測データに基づき、所定の評価パラメータ(例えば血中酸素飽和度)の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析して、被験者の無呼吸状態と身体の傾き角との関係を求める。例えば、SASの重症度を判定する指標であるODIを、被験者ごとに、その体の傾き角別に求める解析などを行う。なお、評価パラメータとして、血中酸素飽和度だけでなく呼吸器系の気流(口・鼻の気流、いびき)、胴体部分の動き(胸・腹の動き)に関する計測データが取得可能とされている場合は、被験者の無呼吸状態及び低呼吸状態と身体の傾き角との関係を求める解析を行うようにすることもできる。この場合、SASの重症度を判定する他の指標であるAHIを、被験者ごとに、その体の傾き角別に求める解析などを行うことが望ましい。
【0058】
この睡眠評価システム1のハード構成は適宜設定することができる。例えば、
(a)評価パラメータ検出手段11及び体傾斜検出手段12のセンシング要素のみを被験者に取り付けるようにし、記憶手段13、制御手段14及び解析手段15をパーソナルコンピュータ(以下、PCという)等で構成し、このPCと前記センシング要素とを通信線で接続するハード構成、
(b)評価パラメータ検出手段11として機能する、血中酸素飽和度を計測するパルスオキシメータに、体傾斜検出手段12、記憶手段13及び制御手段14を具備させ、このようなパルスオキシメータと解析手段(処理手段)15としてのPCとをUSBケーブル等で接続するハード構成、及び
(c)上記(b)の構成において、パルスオキシメータに解析手段15(処理部)の機能を搭載して一体型化したハード構成、
などを例示することができる。
【0059】
図2は、上記(b)のハード構成を備えた睡眠評価システムSの一例を示す構成図である。この睡眠評価システムSは、被験者の血中酸素飽和度と体の傾き角とを並行的(同時)に計測し、その計測データを記憶することができるパルスオキシメータ2と、該パルスオキシメータ2に記憶された血中酸素飽和度及び体の傾き角に関するデータを読み出して、被験者の無呼吸状態と体の傾き角との関係を解析するPC3と、パルスオキシメータ2とPC3とを必要時に通信可能に接続するUSBケーブル207とで構成されている。
【0060】
パルスオキシメータ2は、本体部200とプローブ21とを備え、両者の間は、コネクタ204付きのプローブケーブル205にて電気的に接続される構成である。前記パルスオキシメータ本体部200には、外観的に電源スイッチ201、液晶表示装置等からなる表示部202、前記プローブケーブル205を接続するためのコネクタ部203、前記USBケーブル207を接続するためのコネクタ部206などが備えられている。また、本体部200の内部には、前記記憶手段13として機能するメモリ部、制御手段14として機能するマイクロプロセッサ(CPU)、電源電池(いずれも図示省略)や、前記体傾斜検出手段12として機能する3軸加速度センサ22などが内蔵されている。
【0061】
プローブ21は、血中酸素飽和度を実際に測定する測定指Fを挟み込むように取り付けることが可能なクリップ状を呈している。すなわち、一対のクリップ片が開閉自在に結合され、測定指Fをバネ等の付勢力をもって挟持可能な構成とされている。そして、後述するように、前記一対のクリップ片の一方には発光部211が、クリップ片の他方には受光部212が備えられている(図4参照)。
【0062】
前記本体部200及びプローブ21は、計測時において、例えば図3に示すような態様で、被験者Hに取り付けられる。すなわち、被験者Hの胴部に体着ベルト208(装着手段)が巻かれ、該体着ベルト208を利用して本体部200が被験者Hの体幹部に取り付けられる。一方、プローブ21は、被験者Hの測定指Fにクリッピングして取り付けられる。そして、本体部200とプローブ21とは、プローブケーブル205にて接続される。なお、計測時(被験者Hの睡眠時)にはUSBケーブル207は接続されず、計測が終了して計測データをパルスオキシメータ2から取り出す時に接続される。
【0063】
なお、パルスオキシメータ2には3軸加速度センサ22が内蔵されている関係上、この3軸加速度センサ22の各軸出力が設定通りの正しい体方位関係のものとして得られるよう、図31に示すように、当該パルスオキシメータ2の被験者への標準装着方向を表示する方向表示部209を外装面(本体部200の筐体表面)に設けることが望ましい。すなわち、パルスオキシメータ2が3軸加速度センサ22の軸出力設定とは異なる方向で誤装着されてしまった場合、例えば上下方向を逆にして装着されてしまった場合、3軸加速度センサ22のX軸、Y軸出力が被験者の体位状態に対して符号が逆転してしまい、例えば右方向への寝返りを左方向への寝返りと誤認してしまうことになる。そこで、図31に示すように、「頭方向」、「足方向」などと矢印指示するような方向表示部209を本体部200の筐体表面に設け、被験者H若しくは医療従事者等に標準装着方向を明示することで、上記のような誤測定を防止することができる。
【0064】
PC3は、上記解析手段15として機能するPC本体部30(ハードディスク装置)と、キーボード等からなる操作部36と、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ等からなる表示部37とを備えて構成されている。
【0065】
図4は、プローブ21及びこれに関連する本体部200の回路構成を概略的に示す回路図である。プローブ21は、発光部211及び受光部212を備える。発光部211は、異なる2つの波長λ1、λ2を発生する半導体発光素子から構成され、例えば赤色領域の波長λ1の赤色光を発生する赤色LED211Rと、赤外線領域の波長λ2の赤外光を発生する赤外LED211IRとが用いられる。一方、受光部212は、(発光部211にて発せられた光を)受光した光強度に応じた電流を生成する光電変換素子からなる。該光電変換素子としては、少なくとも前記波長λ1および波長λ2に対して光感応性を有するシリコンフォトダイオード(Silicon Photo Diode)等が用いられる。
【0066】
発光部211及び受光部212は、図4に示すように、血中酸素飽和度を測定する測定指F(生体組織)を挟むように対向配置される。例えば、動脈血の脈動を光学的に捉えやすい測定指Fの指先において、爪部側に発光部211が配置され、指腹部側に受光部212が配置される。実際には、プローブ21を測定指Fにクリッピングすれば、発光部211及び受光部212が前述のような配置関係になる構成とされている。なお、サージカルテープや救急絆創膏などの医療用テープを用いて、発光部211及び受光部212を測定指Fに対して装着するようにしても良い。これにより、測定指Fを透過した発光部211の両波長λ1、λ2の光が、受光部212にて受光されるようになる。
【0067】
前記発光部211及び受光部212には、それぞれ発光回路211C及び受光回路212Cが接続されている。発光回路211C及び受光回路212Cは本体部200に備えられており、発光部211及び受光部212との電気的接続は、プローブケーブル205により行われている。
【0068】
前記発光回路211Cは、マイクロプロセッサ20Cで動作制御され、所定の発光制御信号を発光部211の赤色LED211R及び赤外LED211IRに与える。これにより、例えば赤色LED211Rと赤外LED211IRとが交互に駆動され、赤色光と赤外光とが交互に射出される。また前記受光回路212Cは、マイクロプロセッサ20Cにより発光部211の発光に同期して制御され、受光した光を光強度に従い光電変換した電流信号(パルス信号)を生成する。
【0069】
酸素は、血液中のヘモグロビンの酸化・還元によって運搬されている。このヘモグロビンは、酸化されると赤色光の吸収が減少して赤外光の吸収が増加し、逆に還元されると赤色光の吸収が増加して赤外光の吸収が減少するという光学的特性を有している。この特性を利用して、受光回路212Cで検出された赤色光及び赤外光の透過光量の変動を計測することで、血中酸素飽和度(動脈血酸素飽和度)を求めることが可能となる。
【0070】
(体の傾き角検出用の3軸加速度センサについての説明)
次に、パルスオキシメータ本体部200に内蔵される3軸加速度センサ22について説明する。図5は、3軸加速度センサ22の一例であるピエゾ抵抗型3軸加速度センサを示す図であって、図5(a)は当該3軸加速度センサ22の斜視図、(b)は上面図、(c)は(b)のa−a線断面図である。この3軸加速度センサ22は、結晶に機械的な外力が与えられると結晶格子に歪みが生じ半導体中のキャリア数やキャリア移動度が変化して抵抗値が変化するというピエゾ抵抗効果を利用したものである。
【0071】
上記3軸加速度センサ22は、センサ構造体220と12個のピエゾ抵抗素子224とから構成されている。前記センサ構造体220は、シリコン等の母材をドライエッチングすることで形成された方形枠状の支持部221と、前記方形枠状の支持部221の内部に配置される錘部222と、前記支持部221と錘部222とを連結する薄肉の梁部223とからなる。前記ピエゾ抵抗素子224は、梁部223の上に設置されており、錘部222が加速度に応じて可動することで梁部223が変形し、これによりピエゾ抵抗素子224に応力が与えられる構造とされている。
【0072】
すなわち、当該3軸加速度センサ22に外力が与えられると、具体的にはパルスオキシメータ本体部200に傾き力が与えられると、その傾き方向に応じて錘部222がX軸回り、Y軸回り又はZ軸方向(図5(a)参照)に変位して梁部223が変形する。そして、その変形度合いに応じた応力が、ピエゾ抵抗素子224に与えられるようになる。このような応力付加により、前記ピエゾ抵抗素子224の抵抗値が変化することから、その抵抗値変化(加速度に比例した信号)を検出することで、本体部200の傾き角、つまり被験者の体の傾き角を求めることができる。
【0073】
ピエゾ抵抗素子224の加速度に比例した信号は、前記X軸、Y軸、Z軸とも、12個のピエゾ抵抗素子224のうち、各軸あたり4つのピエゾ抵抗素子224を用いてホイートストンブリッジ回路を構成し、応力付加による前記抵抗値変化を電圧変化として検出する方法で取り出すことができる。
【0074】
図6(a)は、X軸及びY軸方向における梁部223の変形(X軸及びY軸回りの回転)状態を模式的に示す図であり、図6(b)は、その電圧変化を検出するためのブリッジ回路を概略的に示す回路図である。なお、図6及び後述の図7において、R1〜R4の記号は、各軸において選択される4つのピエゾ抵抗素子224を示している。
【0075】
図6(a)の梁部変形モデルに示すように、X軸及びY軸方向の加速度に対して、梁部223a上の外側のピエゾ抵抗素子R1には引っ張り応力が働きその抵抗値が増加するが、内側のピエゾ抵抗素子R2には圧縮応力が働きその抵抗値は減少することになる。一方、梁部223b上の内側のピエゾ抵抗素子R3には引っ張り応力が働きその抵抗値が増加するが、外側のピエゾ抵抗素子R4には圧縮応力が働きその抵抗値は減少する。つまり、ピエゾ抵抗素子R1及びR3と、ピエゾ抵抗素子R2及びR4とについて、相反する抵抗変化が生じるようになる。従って、X軸若しくはY軸の場合、図6(b)に示すようなブリッジ回路を組み、定電圧Vinを印加した場合、出力電圧Voutは次の(1)式で求めることができる。
Vout={R4/(R1+R4)−R3/(R2+R3)}Vin (1)
【0076】
次に図7(a)は、Z軸方向における梁部223の変形(Z軸に沿った上下動)状態を模式的に示す図であり、図7(b)は、その電圧変化を検出するためのブリッジ回路を概略的に示す回路図である。Z軸方向の加速度に対しては、錘部222は上下方向の変位となる。例えば図7(a)の梁部変形モデルに示すように錘部222が上方向へ変位した場合、梁部223c上の外側のピエゾ抵抗素子R1には圧縮応力が働きその抵抗値が減少するが、内側のピエゾ抵抗素子R2には引っ張り応力が働きその抵抗値は増加することになる。同様に、梁部223d上の内側のピエゾ抵抗素子R3には引っ張り応力が働きその抵抗値が増加するが、外側のピエゾ抵抗素子R4には圧縮応力が働きその抵抗値は減少する。つまり、ピエゾ抵抗素子R1及びR4と、ピエゾ抵抗素子R2及びR3とについて、相反する抵抗変化が生じるようになる。従って、Z軸の場合、図7(b)に示すようなブリッジ回路を組み、定電圧Vinを印加した場合、出力電圧Voutは次の(2)式で求めることができる。
Vout={R3/(R1+R3)−R4/(R2+R4)}Vin (2)
【0077】
以上が3軸加速度センサ22による加速度検出の基本的な動作原理であるが、次に当該3軸加速度センサ22を用いて傾き角を検出する原理について説明する。加速度センサとは、入力軸(感応軸;図5(a)に示したX軸、Y軸、Z軸)方向に関して、運動加速度成分mから重力加速度成分gを差し引いた成分を測定する慣性センサである。すなわち、この加速度センサの表示加速度Aは、
A=m−g ・・・(3)
にて表される。ここで、重力加速度成分gは、鉛直軸に沿っている場合を1gとすると、地球上で固定された加速度センサ(m=0)にあっては、感応軸が上向きの鉛直軸に沿っている場合には+1gが表示され、感応軸が鉛直軸から角度θだけ傾いている場合は、+1gのcosθ倍が表示されることとなる。
【0078】
このことを利用すると、加速度センサの3軸(X軸、Y軸、Z軸)それぞれの重力加速度検出値に基づいて、各々の軸が鉛直軸から傾いている角度(傾き角)を求めることができる。図8は、加速度センサの姿勢を表現するにあたり、X軸、Y軸、Z軸の傾き角を定義するための説明図である。一般的には、いずれの軸についても鉛直軸を基準とした傾き角で姿勢を表現することが適している。しかし、Z軸が鉛直軸に一致しているときが標準姿勢であるような場合、当該標準姿勢からの傾斜を表現するには、図8に示すように、X軸及びY軸については、鉛直軸225zからの傾き角θx及びθyを用いるよりも、水平面225上の基準線225x及び225yからの角度α及びβ(符号は、水平面225より上向きを正とする)を用いた方が実際的である。従って、ここでは加速度センサの姿勢を表現するにあたり、X軸及びY軸については水平面225からの角度α及びβを用い、Z軸については鉛直軸225zからの傾き角θzを用いるものとする。この定義においては、当該加速度センサが傾斜していないとき(Z軸と鉛直軸とが一致しているとき)、α、β、θzの全てがゼロ(0g出力)となる。
【0079】
この場合、上記α、β、θzを用いると、X軸、Y軸、Z軸の出力値Vx、Vy、Vzは、次の(4)〜(6)式により表される。
Vx=X0+Xs・sinα ・・・(4)
Vy=Y0+Ys・sinβ ・・・(5)
Vz=Z0+Zs・cosθz ・・・(6)
但し、上記(4)〜(6)式において、X0、Y0、Z0は鉛直軸に対する初期的なずれに対する補正量であり、これは3軸加速度センサ22をパルスオキシメータ2へ取り付けたときの、パルスオキシメータ本体部200の鉛直軸と3軸加速度センサ22のZ軸のずれに起因する誤差を補正するためのものである。また、XS、YS、ZSは、それぞれX軸、Y軸、Z軸の感度(センサ出力の1gあたりのカウント値;定数)を示している。
【0080】
なお、3軸の傾き角の間には次の(7)式の関係があり、2つの傾き角が求められると、残る1つの傾き角も求めることができる。
sin2α+sin2β+cos2θz=1 ・・・(7)
【0081】
3軸加速度センサ22のパルスオキシメータ本体部200への組み込みは、被験者Hの臥位姿勢に関連づけて、例えば図9に示すような軸方向となるように内蔵させることができる。すなわち、図3に示すような態様でパルスオキシメータ本体部200を仰臥状態の被験者Hの体幹部に装着した場合において、3軸加速度センサ22のX軸(第2軸)が体幹軸に沿い、Y軸(第1軸)が体の横幅方向に沿い、そしてZ軸(第3軸)が体の前後方向となるようにパルスオキシメータ本体部200へ3軸加速度センサ22を内蔵させる。
【0082】
この場合、被験者HがY軸回りの回転をしたとき、X軸の傾き角(X軸センサの出力値)から、被験者Hが座位であるか否か(立位姿勢か臥位姿勢かの判別)が検出される。また、被験者HがX軸回りの回転をしたとき、Y軸の傾き角(Y軸センサの出力値)から、被験者Hの体の傾き角(体位角度)が検出される。さらにZ軸の傾き角(Z軸センサの出力値)の正負の別から、被験者Hが仰臥位か腹臥位かが検出されることとなる。
【0083】
図10は、3軸加速度センサ22のパルスオキシメータ本体部200への組み込み状態を模式的に示す図である。ここで、パルスオキシメータ本体部200の鉛直軸(被験者Hにパルスオキシメータ本体部200を所定の方法で装着した場合の、図9におけるZ軸の方向)と、3軸加速度センサ22のZ軸とが完全に一致していれば問題は無いのであるが、通常は前記鉛直軸とZ軸とは一致せず、Z軸には取り付け誤差による傾きが生じる。これにより、X軸、Y軸にも水平面に対して傾きが生じている。すなわち、図10に示すように、取り付け誤差により、Z軸は鉛直軸225zに対してθz0だけ傾き、X軸及びY軸は水平面上の基準線225x及び225yからの角度α0及びβ0だけ傾いている。従って、このような初期的な傾き誤差を補正する必要がある。
【0084】
この傾き誤差の補正量は、パルスオキシメータ本体部200を水平面に静置したときに、3軸加速度センサ22のX軸、Y軸、Z軸の出力値が0g出力となるような出力値の補正量として求められる。すなわち、パルスオキシメータ本体部200を水平面に静置したときのX軸、Y軸、Z軸の初期出力値Vx0、Vy0、Vz0は、上記(4)〜(6)式より、次の(8)〜(10)式で表される。
Vx0=X0+Xs・sinα0 ・・・(8)
Vy0=Y0+Ys・sinβ0 ・・・(9)
Vz0=Z0+Zs・cosθz0 ・・・(10)
【0085】
ここで0g出力とは、鉛直軸に対して3軸加速度センサ22のZ軸が傾きを持たない状態である。つまり、α0=0、β0=0、θz0=0の場合である。これを上記(8)〜(10)に代入して変形すると、必要な補正量X0、Y0、Z0は、次の(11)〜(13)式により求められる。
0=Vx0 ・・・(11)
0=Vy0 ・・・(12)
0=Vz0−Zs ・・・(13)
この補正量X0、Y0、Z0は、予めA/D変換され、補正量カウント値としてパルスオキシメータ2に備えられているメモリ部に格納される。
【0086】
次に、3軸加速度センサ22のX軸、Y軸、Z軸の各センサ出力値による体位状態の検出について説明する。まず、座位の検出には、X軸センサ出力値が用いられる。上記(4)式より、X軸センサ出力値のA/D変換後のカウント値をPxとすると、このカウント値Pxは次の(14)式にて求められる。
Px=Px0+Pxs・sinα ・・・(14)
Px0:X軸補正量X0のA/D変換後のカウント値
Pxs:X軸センサ出力値の1gあたりのA/D変換後のカウント値(定数)
【0087】
従って、X軸の傾き角αは、次の(15)式により求めることができる。この(15)式において、α≧45°のとき、被験者Hが座位であると判定され、それ以外は臥位であると判定される。
【0088】
【数1】

【0089】
続いて、体の傾き角の検出には、Y軸センサ出力値が用いられる。上記(5)式より、Y軸センサ出力値のA/D変換後のカウント値をPyとすると、このカウント値Pyは次の(16)式にて求められる。
Py=Py0+Pys・sinβ ・・・(16)
Py0:Y軸補正量Y0のA/D変換後のカウント値
Pys:Y軸センサ出力値の1gあたりのA/D変換後のカウント値(定数)
【0090】
従って、Y軸の傾き角βは、次の(17)式により求めることができる。なお(17)式において、βの値は180°以下である。
【0091】
【数2】

【0092】
但し、上記(17)式において、Py−Py0=0となるのは、β=0°の仰臥位の場合と、β=180°の腹臥位の場合との二箇所存在する。この仰臥位と腹臥位との判別のため、Z軸センサ出力値のカウント値が用いられる。すなわち、β=0°のとき、θz=0°であることから、Z軸センサ出力値のカウント値は正のカウント値(1gあたりのカウント値)となり、β=180°のとき、θz=180°であることから、Z軸センサ出力値のカウント値は負のカウント値(−1gあたりのカウント値)となる。これにより、仰臥位と腹臥位との判別が可能となる。
【0093】
なお、Z軸の傾き角も次のようにして求めることができる。上記(6)式より、Z軸センサ出力値のA/D変換後のカウント値をPzとすると、このカウント値Pzは次の(18)式にて求められる。
Pz=Pz0+Pzs・cosθz ・・・(18)
Pz0:Z軸補正量Z0のA/D変換後のカウント値
Pzs:Z軸センサ出力値の1gあたりのA/D変換後のカウント値(定数)
【0094】
従って、Y軸の傾き角βは、次の(19)式により求めることができる。
【0095】
【数3】

【0096】
(電気的構成の説明)
図11は、パルスオキシメータ2の電気的な機能構成を示すブロック図である。このパルスオキシメータ2は、上述した表示部202、プローブ21(血中酸素飽和度計測部)及び3軸加速度センサ22(体傾斜検出部)に加え、第1A/D変換部231、第2A/D変換部232、演算部24、メモリ部25(記憶部)、制御部26及びI/F部27を備えて構成されている。
【0097】
上述の通り、プローブ21は、発光部211及び受光部212を備え、被験者の血中酸素飽和度に関する計測データを取得する。また、3軸加速度センサ22は、被験者の体の傾き角に関する計測データを取得する。
【0098】
第1A/D変換部231は、所定のサンプリング周期で受光部212から出力される赤色光及び赤外光の透過光量に応じたアナログ電流信号を電圧信号に変換する電流/電圧変換回路(図示省略)から与えられる前記電圧信号を、デジタル信号に変換する。また、第2A/D変換部232は、3軸加速度センサ22が備えるX軸、Y軸、Z軸の各センサ出力値(アナログ電流信号)を、同様に電流/電圧変換した後の電圧信号(上述したVx、Vy、Vzが相当)に変換した上でデジタル信号に変換する。
【0099】
演算部24は、第1A/D変換部231及び第2A/D変換部232からそれぞれ与えられるデジタル計測信号から、血中酸素飽和度(SpO2)及び体の傾き角に関するカウント値をそれぞれ求める機能部であって、SpO2カウント値検出部241、体傾斜カウント値検出部243及びデータ補正部243を備えている。
【0100】
SpO2カウント値検出部241は、前記第1A/D変換部231から定期的にデジタル計測信号の入力を受けて、所定の周期毎(例えば1秒毎)のSpO2に相当するカウント値を求める。体傾斜カウント値検出部243は、前記第2A/D変換部232から定期的にデジタル計測信号の入力を受けて、所定の周期毎に、X軸、Y軸、Z軸における各々の傾きに相当するカウント値(上述したPx、Py、Pzが相当)を求める。
【0101】
データ補正部243は、前記体傾斜カウント値検出部243で求められたX軸、Y軸、Z軸における各々の傾きに相当するカウント値を、3軸加速度センサ22のパルスオキシメータ2への取り付け誤差に起因する軸ずれに相当する値だけ補正する機能部である。すなわち、前記(11)〜(13)式に基づいて予め求められているX軸、Y軸、Z軸の補正量X0、Y0、Z0(補正量カウント値)を用いて、前記体傾斜カウント値検出部243で求められたX軸、Y軸、Z軸の傾きについてのカウント値を補正する。
【0102】
メモリ部25は、RAM等からなり、計測データ格納部251と補正量記憶部252とを備えている。計測データ格納部251には、プローブ21及び3軸加速度センサ22で計測された計測データ(上記各々のカウント値)が、それぞれのデータ取得時間に関連付けられて一時的に格納される。補正量記憶部252には、前記データ補正部243においてX軸、Y軸、Z軸の傾きについてのカウント値を補正するに際して用いられる、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれのアナログ補正量(X0、Y0、Z0)を、予めA/D変換して求めた補正量カウント値が格納される。
【0103】
制御部26は、プローブ21(発光部211及び受光部212)及び3軸加速度センサ22のセンシング動作、演算部24によるカウント値を求める演算動作及びメモリ部25へのカウント値書き込み動作等を制御する。すなわち制御部26は、プローブ21及び3軸加速度センサ22に所定のサンプリング周期で被験者についてSpO2と体の傾き角とに関する計測データを取得させ、その計測データについてのそれぞれのカウント値を求める演算を演算部24に行わせ、さらに記憶部25に前記カウント値を格納させる制御を行うものである。
【0104】
I/F部27は、前記PC3と当該パルスオキシメータ2とのデータ通信を可能とするためのインターフェイスである。具体的には、パルスオキシメータ2のメモリ部25に格納されているカウント値(計測データ)をPC3にダウンロードさせる際のインターフェイスとして機能する。
【0105】
図12は、PC3の主にPC本体部30(解析手段:処理手段)の電気的な機能構成を示すブロック図である。このPC本体部30は、SpO2値算出部31、傾き角算出部32、演算部33、表示制御部34、I/F部351、RAM352及びROM353を備えて構成されている。
【0106】
SpO2値算出部31は、被験者の無呼吸状態に起因するSpO2値の低下回数を求める演算処理を行う機能部であって、時系列データ生成部311と、Dip検出部312と、Dip閾値設定部313とを備えて構成されている。
【0107】
時系列データ生成部311は、パルスオキシメータ2のメモリ部25(計測データ格納部251)から取得される、データ取得時間に関連付けられたSpO2に相当するカウント値を時間軸に展開して、SpO2曲線についてのデータを作成する。図13は、このようなSpO2曲線の一例を示すグラフ図である。このように、所定のサンプリング周期で取得されているSpO2カウント値を時間軸に展開すると、当該被験者について1つのSpO2曲線が求められるが、被験者が睡眠中に無呼吸状態に陥った場合、SpO2値が低下することから、当該SpO2曲線にはSpO2値が一時的に落ち込んだ部分(以下、このようなSpO2値の低下ピークを「Dip」という)が複数確認されるようになる(例えば、時刻t1、t2、t3がDip部に相当する)。
【0108】
Dip検出部312は、前記時系列データ生成部311で求められたSpO2曲線についてのデータに基づいて、被験者の無呼吸状態と連関性のあるDipを検出する。Dip閾値設定部313は、前記Dip検出部312において「有意なDip」を検出するに際してのDip検出閾値を設定する。
【0109】
Dipを検出することは、当該被験者について取得された計測情報について、無呼吸乃至は低呼吸のイベントを検出することに相当する。図14は、Dipの検出指標を模式的に示す図である。前記Dip検出指標としては、例えばSpO2曲線の低下勾配、低下度、低下状態持続時間、回復時間(上昇度)などが用いられる。この場合、図14に示すように、検出されたSpO2曲線のDipが、例えば次の要件を満たす場合に有意性のあるDipと判定するよう、前記Dip検出部312及びDip閾値設定部313によるDip検出動作を設定することができる。
持続時間;8〜120sec
低下勾配;≧1%/10sec
低下度 ;≧2%〜≧5%
回復時間;<20sec
【0110】
ここで求められるDipは、一定の基準値からの低下度等ではなく、逐次変動するSpO2曲線の任意の点(被験者の睡眠期間中における任意の時点)からの低下度等に基づくものである。例えば、Dipの低下度について図13に示すように3つの閾値Dip1、Dip2、Dip3(例えば低下度がそれぞれ2%、3%、4%の閾値)が定められているような場合、各々のDipが計測開始当初のSpO2値に比較してこれら閾値分だけ低下したものであるかを見るのではなく、各々のDipの開始点からの低下度が前記閾値分だけ低下したものであるかを検出指標とする。これによりSpO2値の低下を的確に検出することができるようになる。
【0111】
図13に例示したSpO2曲線において、Dip閾値設定部313により低下度2%がDip検出閾値として設定されている場合、Dip検出部312は低下度が前記閾値を超過すると共に他の指標が満足されている状態のときに「Dip有」と判定し、1つのDipとしてカウントする。図13の「Dip1カウント」欄の二値信号は、このようにしてカウントされた低下度2%を基準とするDip数を示している。同様に、「Dip2カウント」欄の二値信号は低下度3%基準のDip数、「Dip3カウント」欄の二値信号は低下度4%基準のDip数をそれぞれ示している。以上説明した、SpO2値算出部31にて求められるSpO2曲線についてのデータ及びDip数についてのデータは、演算部33へ送られる。
【0112】
傾き角算出部32は、被験者の睡眠期間中における体の傾き角の時間変化に関するデータを算出する機能部であって、X軸傾き角検出部321、Y軸傾き角検出部322、Z軸傾き角検出部323及び傾き角データ生成部324が備えられている。
【0113】
X軸傾き角検出部321は、パルスオキシメータ2のメモリ部25(計測データ格納部251)から取得される、3軸加速度センサ22のX軸の傾きに相当するカウント値Pxを用い、上記(15)式に基づいてX軸の傾き角αの時間変化に関するデータを求める。同様に、Y軸傾き角検出部322は、Y軸の傾きに相当するカウント値Pyを用い、上記(17)式に基づいてY軸の傾き角βの時間変化に関するデータを求める。またZ軸傾き角検出部323は、Z軸の傾きに相当するカウント値Pzを用い、上記(19)式に基づいてZ軸の傾き角θzの時間変化に関するデータを求める。
【0114】
傾き角データ生成部324は、前記X軸傾き角検出部321で求められるX軸の傾き角αの時間変化に基づいて、被験者が座位にある期間を求める(例えばα≧45°の期間を座位と判定する)。また、前記Y軸傾き角検出部322で求められるY軸の傾き角βの時間変化(体の傾き角の変移)と、Z軸傾き角検出部323で求められるZ軸の傾き角θzの時間変化(仰臥位と腹臥位との別)とに基づいて、当該被験者について体の傾き角の時間変化に関するデータを求める。
【0115】
図15は、前記傾き角データ生成部324で求められる体の傾き角の時間変化に関するデータの一例を簡略的に示したタイムチャートである。図15に示すように、傾き角データ生成部324は、被験者の体位状態を従来のように大まかな「体方位」としてではなく、被験者の「体の傾き角」という角度情報として求める。そして、X軸の傾き角αから座位期間を割り出せるので、当該タイムチャートにおける座位期間tzを識別化したデータとすることができる。なお、座位期間中(例えば歩行中)は、睡眠期間中とは異なりY軸の傾き角βが連続的に変化することが多い(図15の図例において、座位期間tzでは体の傾き角が連続的に変化している)。以上説明した、傾き角算出部32にて求められる体の傾き角の時間変化に関するデータは、演算部33へ送られる。
【0116】
演算部33は、被験者の無呼吸状態(低呼吸状態)と体の傾き角との関係を求める演算を行う機能部であって、データ合成部331、データ選別部332、角度別ODI算出部333、角度別AHI算出部334、適正傾き角演算部335及びヒストグラム算出部336を備えて構成されている。
【0117】
データ合成部331は、SpO2値算出部31から与えられるSpO2曲線についてのデータ及びDip数についてのデータと、傾き角算出部32から与えられる体の傾き角の時間変化に関するデータとを同一時間軸上に展開し、これらの合成データを生成する。これにより、無呼吸状態と体の傾き角との相関性を求めるための基礎データが得られることになる。
【0118】
図16は、前記データ合成部331で求められる合成データの一例をグラフ化したタイムチャートである。このタイムチャートによれば、測定対象とされた被験者には、側臥位に近い傾き角である時刻t11までと、時刻t14以降は、顕著なSpO2値の低下(Dip)は認められないが、仰臥位近い傾き角である時刻t11〜t14までの期間に複数のDipが認められる。さらに時刻t11〜t14の期間における体の傾き角の推移と、SpO2値のDip発生状況との関係を見ると、時刻t11〜t12の傾き角のときはDipが発生し、その後時刻t12において僅かに傾き角が変化したことに伴いDipが発生しなくなっていることがわかる。そして、再び時刻t13において僅かに傾き角が変化(時刻t11〜t12の傾き角に近い傾き角に復帰)したことを契機として、Dipが多発する状態となっている。このように、被験者の体位状態を体の傾き角という角度情報として求めることにより、時刻t11〜t14の期間(従来方式であれば、単に「仰臥位」と判定されていた期間)における体の傾き角と無呼吸状態との因果関係を把握できるデータが取得できるものである。
【0119】
データ選別部332は、前記データ合成部331で求められた全合成データのうち、ODIやAHI等の解析を実行する期間のデータを選択して抽出する。このデータ選別は、操作部36から与えられる指令信号に基づくようにすることができる。なお、前記全合成データのうち、前記傾き角データ生成部324において座位期間tz(図15参照)であることを示す識別符号が付されているデータを、該データ選別部332において自動的に無効化処理するようにしても良い。
【0120】
角度別ODI算出部333は、データ合成部331で作成された例えば図16に示すような合成データを体の傾き角の角度別にスクリーニングして、各々の角度において発生しているDipの数をカウントする演算を行う。この角度別ODIとは、従来のODIにおいては専ら時間をインデックスとして求められていたDip数を、体の傾き角をインデックスとして求めるものである。
【0121】
角度別ODI算出部333の演算結果によれば、特定の被験者につき、体の傾き角に応じたDip数ヒストグラムを作成することが可能となる。図17は、特定の被験者Aについて求められた前記ヒストグラムの一例を示すものである。この被験者Aの場合、体の傾き角が40°〜−50°の範囲にあるときDipの発生頻度が多く、すなわち前記傾き角にあるときに無呼吸症状が発生すると判定することができる。従って、被験者Aについては、例えば体の傾き角を40°以上に固定できるような枕等を適用することで、無呼吸症状の発生を抑止できる旨の診断(治療)が行えるようになる。
【0122】
また、図18は、他の特定の被験者Bについて求められた前記ヒストグラムの一例を示すものである。この被験者Bの場合、体の傾き角が20°〜−40°の範囲にあるときDipの発生頻度が多く、特に−方向の方が広い傾き角範囲でDipが発生しているという特徴が把握される。従って、被験者Bについては、体の傾き角を20°以上に固定できるような枕等の適用が望ましい旨の診断(治療)を行うことができる。このように角度別ODI算出部333において角度別ODIを求めることで、個々の被験者における体位依存性に応じた的確な診断が行えるようになる。
【0123】
角度別AHI算出部334は、データ合成部331で作成されたSpO2値と体の傾き角との合成データに加え、AHI算出に必要な口・鼻の気流、いびき、胸・腹の動き、足の筋肉の動きに関する時間軸に展開されたAHIデータを参照して、これを体の傾き角の角度別にスクリーニングして、各々の角度において発生しているDip(無呼吸と低呼吸とに由来するDip)の数をカウントする演算を行う。この角度別AHIとは、従来のAHIにおいては専ら時間をインデックスとして求められていたDip数を、体の傾き角をインデックスとして求めるものである。この場合、上記AHIデータは、パルスオキシメータ2と別途の計測装置で測定されたデータを、図12に示すように、外部データ入力部39から演算部33へ取り込む構成とすることができる。
【0124】
或いは、前記パルスオキシメータ2に、SpO2値以外のAHI算出に必要な計測データを一括して取得して格納させる機能(このような機能を有する機器を、この説明において「簡易PSG」という)を加え、これら計測データをSpO2カウント値と共にダウンロードさせるようにしても良い。
【0125】
図19は、簡易PSG2Pと、AHIデータを被験者Hから計測するための各種センサの配置構成を示す図である。これは、従来から知られているポリソムノグラフ(PSG)におけるセンサ配置であって、SpO2値を検出するプローブ21に加え、口・鼻の気流を計測するフローセンサ41、いびき音を検出する音センサ、胸の動きを検出する動作センサ43、腹の動きを検出する動作センサ44、及び足の筋肉の動きを検出する動作センサ45が取り付けられている。そして簡易PSG2Pは、被験者Hの体幹部に取り付けられている。
【0126】
簡易PSG2Pには、各センサによる計測データを格納するメモリ部と、上記3軸加速度センサ22のような体傾斜検出手段が内蔵されている。このような簡易PSG2Pを用いて被験者から所定の計測データを取得し、これをPC本体部30へダウンロード可能な構成としておけば、前記角度別AHI算出部334において、体の傾き角の角度別にスクリーニングして、各々の角度において発生している無呼吸及び低呼吸に由来するDipの数をカウントする演算を行わせることができる。
【0127】
このような角度別AHI算出部333の演算結果を用いれば、特定の被験者につき、体の傾き角に応じたDip数ヒストグラムを作成することが可能となる。図20は、特定の被験者Cについて求められた前記ヒストグラムの一例を示すものである。この被験者Cの場合、体の傾き角が40°〜−50°の範囲にあるときDipの発生頻度が多く、すなわち前記傾き角にあるときに無呼吸症状乃至は低呼吸症状が発生すると判定することができる。従って、被験者Cについては、例えば体の傾き角を40°以上に固定できるような枕等を適用することで、無呼吸症状乃至は低呼吸症状の発生を抑止できる旨の診断(治療)が行えるようになる。
【0128】
適正傾き角演算部335は、前記角度別ODI算出部333若しくは角度別AHI算出部333の演算結果に基づいて、当該被験者においてDipが発生しない(発生頻度が所定回数よりも少ない)体の傾き角を、無呼吸症状が発生しない適正傾き角として求める演算を行う。このような適正傾き角演算部335を設けることで、当該被験者において無呼吸症状の発生を抑止できる体の傾き角を直ちに把握できるデータを提供可能となる。
【0129】
ヒストグラム算出部336は、前記角度別ODI算出部333若しくは角度別AHI算出部333の演算結果に基づいて、先に説明した体の傾き角と発生Dip数との関係を示すヒストグラムを作成する。このようなヒストグラム(図17、図18、図20参照)を求めることで、当該被験者において、体の傾き角と無呼吸症状乃至は低呼吸症状との因果関係が明確に把握できるようになる。
【0130】
表示制御部34は、前記演算部33で求められる各種データを、所定の画像に形成して表示部37に表示させたり、出力部38に出力させたりする機能部であり、例えばデータ合成部331で生成される図16に示したような合成データ画像を形成して表示部37へ表示させる。この他表示制御部34は、ODI表示データ生成部341、AHI表示データ生成部342及び体位関連表示データ生成部343等を備えている。
【0131】
ODI表示データ生成部341は、操作部36からの表示指示に応じて、前記角度別ODI算出部333及びヒストグラム算出部336にて求められるデータを使用して、ODIに関する所定の表示・出力データを作成する。例えば、図17、図18に示すようなヒストグラム画像を形成して表示部37、出力部38へ表示、出力させる。また、AHI表示データ生成部342は、同様に操作部36からの表示指示に応じて、前記角度別AHI算出部334及びヒストグラム算出部336にて求められるデータを使用して、AHIに関する所定の表示・出力データを作成する。例えば、図20に示すようなヒストグラム画像を形成して表示部37、出力部38へ表示、出力させる。この他、ODI表示データ生成部341及びAHI表示データ生成部342は、操作部36から、任意の傾き角度の指定を受けて、その傾き角範囲についてのODIやAHIを表示・出力させるデータを作成可能とすることが望ましい。
【0132】
体位関連表示データ生成部343は、傾き角算出部32で算出されている体の傾き角データを、体方位に変換して表示させる。例えば、図21(a)に示すような体の傾き角の時間変化についてのデータが取得されている場合において、これを表示部37に表示させると共に、カーソルにて任意の点が指定されたときに、これを体方位として表示させることが可能な表示データを生成する。これは、体位状態を数値的に角度情報で表示するよりも、体方位として表示した方が便宜的な場合があるからである。
【0133】
この場合、例えば図21(b)に示すように、体方位を仰臥位、腹臥位、左右側臥位の4つに区画し、各体方位と傾き角との関係を図21(c)に示すように定義することができる。なお、上記4つの区画をさらに2つに細分化して、8つの区画に分けて表示させるようにしても良い。
【0134】
I/F部351は、当該PC本体部30と前記パルスオキシメータ2とのデータ通信を可能とするためのインターフェイスである。RAM352には、パルスオキシメータ2のメモリ部25からダウンロードされた計測データや、PC本体部30の各部で求められるデータ類が一時的に格納される。ROM353には、当該PC本体部30(或いは睡眠評価システムS)を動作させる動作プログラム等が格納される。
【0135】
(動作フローの説明)
以上の通り構成された睡眠評価システムSの動作について、図22〜図26に示すフローチャートに基づき、必要に応じて図11、図12のブロック図等を参照しながら説明する。図22は、当該睡眠評価システムSの全体的な動作フローを示すフローチャートである。ここでは、図3に示すように、特定の被験者Hに対してパルスオキシメータ2を装着し、SpO2値と体の傾き角とを並行的に計測し、当該被験者Hについて角度別ODIを求めるケースについてのフローを説明する。
【0136】
先ず、パルスオキシメータ2を被験者Hの体に装着する(ステップS1)。具体的には、パルスオキシメータ本体部200を体着ベルト208(装着手段)を用いて体幹部に取り付けると共に、プローブ21を測定指にクリッピングする(図2、図3参照)。この後、計測が開始されるが、被験者Hが睡眠に入るまでの時間を考慮して、所定時間経過後に計測が開始されるようタイマーセットを行うようにしても良い。
【0137】
計測が開始されると、所定のサンプリング周期であるかが確認され(ステップS2)、前記サンプリング周期が到来すると(ステップS2でYes)、プローブ21により被験者HのSpO2値に関する計測データが取得され、また3軸加速度センサ22により被験者Hの体の傾き角に関する計測データが取得される(ステップS3)。その後、A/D変換や所定の演算処理が行われた後に、これら計測データがパルスオキシメータ2のメモリ部25(図11参照)へ格納される(ステップS4)。
【0138】
そして、計測を終了するかが確認され(ステップS5)、所定の計測期間中である場合(ステップS5でNo)は、前記ステップS2に戻って処理が繰り返される。なお、被験者Hが用足し等で中途覚醒した場合も、計測が継続される。一方、所定の計測期間が終了した場合や、被験者Hが所定の計測期間中に完全覚醒して計測動作を強制終了させたような場合(ステップS5でYes)は、ここでパルスオキシメータ2を用いた計測動作は終了する。
【0139】
その後、図2に示すように、パルスオキシメータ2とPC3とがUSBケーブル207で接続され、パルスオキシメータ2に格納されている計測データがPC3側へダウンロードされる(ステップS6)。つまり、パルスオキシメータ2のメモリ部25に格納されているSpO2値及び体の傾き角に関する計測データが、I/F部28、351を介して、PC本体部30のRAM352へ一時的に格納される(図12参照)。
【0140】
そして、SpO2値算出部31及び傾き角算出部32により、ダウンロードされた計測データの解析が行われる(ステップS7)。具体的には、SpO2値算出部31は、被験者Hの無呼吸状態に起因するSpO2値の低下回数を求める演算処理を行う。また、傾き角算出部32は、被験者の睡眠期間中における体の傾き角の時間変化に関するデータを算出する。
【0141】
続いて、演算部33のデータ合成部331により、SpO2曲線と体の傾き角の時間変化に関するデータとを同一時間軸上に展開することで、これらの合成データが生成される(ステップS8)。そして、この合成データに基づいて、角度別ODI算出部333により各々の角度において発生しているDipの数をカウントする演算が行われ、角度別ODIが求められる(ステップS9)。
【0142】
しかる後、ヒストグラム算出部336により、当該被験者Hにおいて、いかなる体位状態において無呼吸症状が発生しているかを、体の傾き角という角度情報に関連付けて把握するために、体の傾き角と発生Dip数との関係を示すヒストグラムが作成される(ステップS10)。そして、操作部36からの指令に応じて、表示制御部34により、前記ヒストグラム等が適宜な画像として、表示部37、出力部38に表示、出力され(ステップS11)、処理が完了する。以上が全体的な動作フローであるが、続いて上記ステップS3、ステップS7及びステップS9の詳細フローについて個別に説明する。
【0143】
図23は、図22のフローチャートのステップS3における、SpO2の計測ステップの詳細を示すフローチャートである。所定のサンプリング周期が到来すると、プローブ21に備えられている赤色LED211R若しくは赤外LED211IR(図4参照)が発光され、測定指Fに向けて赤色光若しくは赤外光が射出される(ステップS21)。その発光に同期して、受光部212により、測定指Fを透過した透過光が受光され(ステップS22)、受光した光強度に応じたアナログ電流出力が受光回路212Cに取得される(ステップS23)。
【0144】
前記アナログ電流出力は、第1A/D変換部231(図11参照)によりデジタル計測信号に変換される(ステップS24)。そして、SpO2カウント値検出部241により、当該サンプリング周期における前記デジタル計測信号に対応したSpO2のカウント値が求められる(ステップS25)。このSpO2カウント値は、メモリ部25の計測データ格納部251に、当該カウント値取得時刻データに関連付けて格納されることになる。以上のようなルーチンが、所定のサンプリング周期毎に繰り返される。
【0145】
図24は、図22のフローチャートのステップS3における、体の傾き角検出ステップの詳細を示すフローチャートである。所定のサンプリング周期が到来すると、3軸加速度センサ22(図11参照)が備えるX軸、Y軸、Z軸の各センサ出力値(アナログ電流信号)が取り出される。このアナログ電流信号は、電流/電圧変換され、前記X軸、Y軸、Z軸毎のアナログ電圧信号Vx、Vy、Vzとして検出される(ステップS31)。
【0146】
前記アナログ電圧信号Vx、Vy、Vzは、第2A/D変換部232によりデジタル計測信号に変換される(ステップS32)。そして体傾斜カウント値検出部243により、
当該サンプリング周期における前記デジタル計測信号に対応したX軸、Y軸、Z軸の傾き角に相当するカウント値Px、Py、Pzが求められる(ステップS33)。
【0147】
続いて、データ補正部243により、3軸加速度センサ22のパルスオキシメータ2への取り付け誤差に起因する軸ずれを補正するために、予め補正量記憶部252に格納されている補正量カウント値X0、Y0、Z0を用いて、取得されたカウント値Px、Py、Pzのデータ補正が行われる(ステップS34)。このデータ補正後の傾き角カウント値Px、Py、Pzは、メモリ部25の計測データ格納部251に、当該カウント値取得時刻データに関連付けてそれぞれ格納されることになる。以上のようなルーチンが、所定のサンプリング周期毎に繰り返される。
【0148】
次に図25は、図22のフローチャートのステップS7における、SpO2計測データ解析の詳細を示すフローチャートである。先ず、SpO2値算出部31の時系列データ生成部311(図12参照)により、ダウンロードにより取得されたSpO2カウント値を時間軸に展開して、SpO2曲線についてのデータが作成される(ステップS41)。このデータは、図13に示すような、SpO2の時間変化を示すデータとなるが、実際はRAM352等にロードされたデータである。
【0149】
以下、Dip検出部312により上記ステップS41で求められたSpO2曲線を用いて、時間軸上の任意のポイント(例えば上述のサンプリング周期毎のポイント)に順次判定点nを置き、前記n点におけるSpO2カウント値について、次のような処理が実行され、「有意なDip」が検出される。すなわち、最初にn=kとし(ステップS42)、このn点と、該n点に隣接するn+1点とのSpO2カウント値が比較される(ステップS43)。
【0150】
そして、n点に比べてn+1点のSpO2カウント値が低下しているかが判定される(ステップS44)。もし、SpO2カウント値が低下していない場合(ステップS44でNo)、Dipは発生していないことになるので、k=k+1の加算処理が実行され(ステップS45)、ステップS42に戻って、時間軸上の次のポイントを基準とする処理が繰り返される。
【0151】
上記SpO2カウント値が低下している場合(ステップS44でYes)、Dipが発生している可能性があるので、SpO2カウント値の上昇点が見つかるまで、前記n点のポイントを時間軸上において進行させる。具体的には、ステップS44で検出されたDip開始点以降、n点においてSpO2カウント値が上昇しているかが確認され(ステップS46)、上昇していない場合(ステップS46でNo)、k=k+1の加算処理が実行されて前記n点のポイントが進行され(ステップS47)、ステップS46の判定処理が繰り返される。
【0152】
一方、上昇している場合(ステップS46でYes)、1つのDipが終了傾向に入ったことを通常示すので、ここで検出されたDip候補が、所定のDip検出指標に適合するかが判定される(ステップS48)。ここでのDip検出指標としては、前述のようにSpO2曲線の低下勾配、低下度、低下状態持続時間などを用いることができるが、回復時間や上昇度(Dipの開始点の水準にSpO2カウント値が復帰する時間やスピード)なども指標とする場合は、前記ステップS46に続いてSpO2カウント値が元の水準まで復帰したことを判定するステップが介入されることになる。なお、SpO2カウント値の低下又は上昇の判定を行うにあたり、移動平均を取って予めデータを平滑化しておいても良い。
【0153】
上記Dip候補が、所定のDip検出指標に適合している場合(ステップS48でYes)、Dip検出部312はこれを1つの有意なDipと判定し、そのDipを時刻情報に関連付けてRAM352等に登録する(ステップS49)。この場合、前記Dip検出指標への適合性は、Dip閾値設定部313に格納されている閾値情報に基づいて行われる。例えば低下度の場合、図13に示されているDip1〜3のいずれか又は複数の指標を用いて、そのような指標を当該Dip候補が満足しているかがDip検出部312により判定されることになる。
【0154】
なお、所定のDip検出指標に適合していない場合(ステップS48でNo)、k=k+1の加算処理を実行させて前記n点のポイントを進行させ(ステップS45)、ステップS42に戻って次のDipを捜す処理が繰り返される。また、上記ステップS49の登録処理後、次の判定ポイントが残っている場合も(ステップS50でNo)、同様にステップS42に戻って次のDipを捜す処理が繰り返されることとなる。以上が、SpO2計測データ解析ルーチンである。
【0155】
図26は、図22のフローチャートのステップS7における、体の傾き角計測データ解析の詳細を示すフローチャートである。先ず、ダウンロードにより取得されたX軸、Y軸、Z軸の傾き角に相当するカウント値Px、Py、Pzについてのデータが、RAM352等にロードされる(ステップS51)。このデータは、傾き角カウント値の時間変化を示すデータである。
【0156】
次に、傾き角算出部32のX軸傾き角検出部321、Y軸傾き角検出部322及びZ軸傾き角検出部323により、それぞれX軸、Y軸、Z軸の傾き角α、β、θzが算出される(ステップS52)。そして、傾き角データ生成部324により、X軸の傾き角αの時間変化に基づいて被験者が座位にある期間が求められ、またY軸の傾き角βとZ軸の傾き角θzに基づいて、当該被験者Hについて体の傾き角の時間変化に関するデータが求められる(ステップS53)。このデータは、例えば図15に示されているような、データである。以上が、体の傾き角計測データ解析ルーチンである。
【0157】
最後に、図27は、図22のフローチャートの角度別ODI検出ステップ(ステップS9)の詳細を示すフローチャートである。ここでは、先の図25に示したフローで検出され、登録されているDipについて、図26に示したフローで求められた体の傾き角の時間変化データとを対応させて、各々の傾き角において発生しているDipの数をカウントする処理を行う。
【0158】
先ず、例えばRAM352に時系列順に格納されている最初のDipが検出され(ステップS61)、演算部33のデータ選別部332によるデータ選別動作、つまりそのDipが検出された位置におけるX軸の傾き角αが45°以上であるかが判定される(ステップS62)。もし、α≧45°の場合(ステップS62でYes)、それは被験者Hが座位にあるときの無効データであるので、これをDipとしてカウントしない処理(無効化処理)がなされ(ステップS63)、ステップS61に戻って次のDipを検出する処理が行われる。
【0159】
一方、α≧45°の要件を満たさない場合(ステップS62でNo)、角度別ODI算出部333により、Y軸の傾き角βとZ軸の傾き角θzに基づいて、そのDipについて被験者Hの体の傾き角が検出される(ステップS64)。そして、所定の角度別(例えば5°単位)に、前記Dipをカウントする処理が行われる(ステップS65)。そして、登録されたDipが残存しているかが確認され(ステップS66)、残存している場合は(ステップS66でNo)、ステップS61に戻って次のDipを検出する処理が行われる。以上のような処理が、登録された全てのDipについて行われるものである。なお、角度別AHIを検出する場合も、このフローに準じた処理を実行すればよい。
【0160】
(変形実施形態の説明)
以上、本発明の実施形態を、専らSASの診断用途としての、被験者の無呼吸状態と体の傾き角との関係を計測する睡眠評価システムSとして説明したが、これを応用して、SAS患者である被験者に無呼吸状態が発生しない適正な睡眠環境を提供する睡眠支援システムとして実施することができる。
【0161】
図28は、このような睡眠支援システムSTの構成を示す簡易的なブロック図である。この睡眠支援システムSTは、上記実施形態において説明したような、睡眠状態にある被験者Hについて体の傾き角と血中酸素飽和度とを所定のサンプリング周期で同時計測可能なパルスオキシメータ2(所定の計測手段)と、被験者Hを臥位状態で支持し回転軸511回りに回動して傾斜角が調整可能な寝台51と、前記寝台51の傾斜角度を調整する寝台駆動手段52と、該寝台駆動手段52により調整される寝台角度を設定する制御手段53とを備えて構成されている。
【0162】
上記パルスオキシメータ2は、制御手段53によりその測定動作が制御され、所定のサンプリング周期で体の傾き角と血中酸素飽和度に関する計測データとを取得する。またその計測データは、逐次制御手段53へ送られる。このような計測データが、無呼吸症状を判定するのに必要な所定の期間だけ蓄積される。そして制御手段53は、取得された計測データを時間軸に展開して、前記血中酸素飽和度の低下に基づく無呼吸状態と、被験者Hの体の傾き角との因果関係を評価して、当該被験者Hにおいて無呼吸状態が発生しない体の傾き角を求める処理を行う。
【0163】
このような無呼吸状態が発生しない体の傾き角(適正傾き角)が求められたら、制御手段53は、前記寝台駆動手段52に対して、設定寝台角度を前記適正傾き角とするような制御信号を送信する。寝台駆動手段52はこれを受けて、寝台51がそのような適正傾き角になるよう、寝台51の傾斜角を調整する駆動を行うものである。なお、寝台51の傾きが大きくなると、被験者Hが転回してしまう危険性があるので、寝台面の形状は図28に示すようにY方向(図9参照)に凹面状とされている。さらに、寝台駆動手段52は、寝台51を所定の傾き角以上に傾かせないよう、所定の傾き上限値が設定されている。これにより、被験者Hの体位状態が、無呼吸状態が発生しない体の傾き角に調整され、被験者Hに対して適正な睡眠環境が提供されるようになる。
【0164】
また、本発明にかかる実施品の提供形態として、上述の睡眠評価システムSとしてではなく、該睡眠評価システムSが行う処理を実行する動作プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。若しくは、図2に示すPC本体部30に備えられている記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の実施形態にかかる睡眠評価システム1の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】所定のハード構成を備えた睡眠評価システムSの一例を示す構成図である。
【図3】被験者へのパルスオキシメータ(評価パラメータ検出手段)の装着状態を示す説明図である。
【図4】上記パルスオキシメータの回路構成を概略的に示す回路図である。
【図5】3軸加速度センサの一例であるピエゾ抵抗型3軸加速度センサを示す図であって、(a)は当該3軸加速度センサの斜視図、(b)は上面図、(c)は(b)のa−a線断面図である。
【図6】(a)は、X軸及びY軸方向における梁部変形状態を模式的に示す図であり、(b)は、その電圧変化を検出するためのブリッジ回路を概略的に示す回路図である。
【図7】(a)は、Z軸方向における梁部変形状態を模式的に示す図であり、(b)は、その電圧変化を検出するためのブリッジ回路を概略的に示す回路図である。
【図8】加速度センサの姿勢を表現するにあたり、X軸、Y軸、Z軸の傾き角を定義するための説明図である。
【図9】図8に示すX軸、Y軸、Z軸と、被験者の臥位姿勢との関係を示す斜視図である。
【図10】3軸加速度センサのパルスオキシメータ本体部への組み込み状態を模式的に示す図である。
【図11】パルスオキシメータの電気的な機能構成を示すブロック図である。
【図12】PC本体部(解析手段:処理手段)の電気的な機能構成を示すブロック図である。
【図13】SpO2曲線の一例を示すグラフ図である。
【図14】前記SpO2曲線において、Dipの検出指標を模式的に示す図である。
【図15】体の傾き角の時間変化に関するデータの一例を簡略的に示したタイムチャートである。
【図16】SpO2曲線と体の傾き角の時間変化との合成データの一例をグラフ化したタイムチャートである。
【図17】特定の被験者Aについて求められた無呼吸発生角度のヒストグラム(角度別ODI)を示すグラフ図である。
【図18】特定の被験者Bについて求められた無呼吸発生角度のヒストグラム(角度別ODI)を示すグラフ図である。
【図19】簡易PSGと、AHIデータを被験者Hから計測するための各種センサの配置構成を示す図である。
【図20】特定の被験者Cについて求められた無呼吸乃至は低呼吸発生角度のヒストグラム(角度別ADI)を示すグラフ図である。
【図21】体位関連表示データの表示例を示す図である。
【図22】睡眠評価システムSの全体的な動作フローを示すフローチャートである。
【図23】図22のフローチャートのステップS3における、SpO2の計測ステップの詳細を示すフローチャートである。
【図24】図22のフローチャートのステップS3における、体の傾き角検出ステップの詳細を示すフローチャートである。
【図25】図22のフローチャートのステップS7における、SpO2計測データ解析の詳細を示すフローチャートである。
【図26】図22のフローチャートのステップS7における、体の傾き角計測データ解析の詳細を示すフローチャートである。
【図27】図22のフローチャートの角度別ODI検出ステップ(ステップS9)の詳細を示すフローチャートである。
【図28】本発明の変形実施形態にかかる睡眠支援システムSTの構成を示す簡易的なブロック図である。
【図29】SpO2の時間変化と、実際の体位変化との関係を示すグラフ図である。
【図30】従来技術における体方位検出についての説明図である。
【図31】方向表示部を有するパルスオキシメータを示す平面図である。
【符号の説明】
【0166】
1、S 睡眠評価システム
11 評価パラメータ検出手段
12 体傾斜検出手段
13 記憶手段
14 制御手段
15 解析手段(処理手段)
2 パルスオキシメータ
208 体着ベルト(装着手段)
21 プローブ(評価パラメータ検出手段)
22 3軸加速度センサ(体傾斜検出手段)
25 メモリ部(記憶手段)
26 制御部(制御手段)
3 パーソナルコンピュータ;PC
30 PC本体部(解析手段:処理手段)
31 SpO2値算出部
32 傾き角算出部
33 演算部
331 データ合成部
332 データ選別部
333 角度別ODI算出部
334 角度別AHI算出部
335 適正傾き角演算部
34 表示制御部
ST 睡眠支援システム
H 被験者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠状態にある被験者について体の傾き角と血中酸素飽和度とを所定のサンプリング周期で並行的に計測し、
取得された計測データを時間軸に展開して、前記血中酸素飽和度の低下に基づく無呼吸状態と、被験者の体の傾き角との因果関係を評価することを特徴とする睡眠評価方法。
【請求項2】
睡眠状態にある人体が無呼吸状態に陥ることで変動する所定の評価パラメータを被験者について計測する評価パラメータ検出手段と、
被験者の体の傾き状態を角度情報として検出可能な体傾斜検出手段と、
前記評価パラメータ検出手段及び体傾斜検出手段により計測される計測データを格納する記憶手段と、
前記評価パラメータ検出手段及び体傾斜検出手段により、所定のサンプリング周期で被験者について前記所定の評価パラメータと体の傾き角とを計測させ、その計測データを前記記憶手段に格納させる制御手段と
を具備することを特徴とする睡眠評価システム。
【請求項3】
前記評価パラメータ検出手段が、被験者の血酸中素飽和度を検出する血中酸素飽和度測定手段であることを特徴とする請求項2記載の睡眠評価システム。
【請求項4】
前記記憶手段に格納された計測データに基づき、前記所定の評価パラメータ又は前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析して、被験者の無呼吸状態と身体の傾き角との関係を求める解析手段をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3記載の睡眠評価システム。
【請求項5】
前記解析手段が、血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係に加え、少なくとも呼吸器系の気流、胴体部分の動きに関する計測データとの関係を解析して、被験者の無呼吸状態及び低呼吸状態と身体の傾き角との関係を求めることを特徴とする請求項4記載の睡眠評価システム。
【請求項6】
前記体傾斜検出手段が、被験者の体位状態につき少なくとも座位状態又は臥位状態の別を判別可能とされており、
前記体位状態の別に関する情報も、前記記憶手段に格納されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の睡眠評価システム。
【請求項7】
前記体傾斜検出手段が、3軸加速度センサを備えて構成され、
前記3軸加速度センサの第1軸の出力が被験者の体の傾き角計測用に、第2軸の出力が座位状態と臥位状態との判別用に、第3軸の出力が臥位における仰臥位と腹臥位との判別用に用いられることを特徴とする請求項6記載の睡眠評価システム。
【請求項8】
前記解析手段は、前記体位状態が臥位状態であるときの計測データを用いて、前記所定の評価パラメータ又は前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析することを特徴とする請求項6記載の睡眠評価システム。
【請求項9】
被験者の血中酸素飽和度に関する計測データを取得する血中酸素飽和度計測部と、被験者の体の傾き角に関する計測データを取得する体傾斜検出部と、血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により計測される計測データを格納する記憶部と、前記血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により、所定のサンプリング周期で被験者について前記血中酸素飽和度と体の傾き角とに関する計測データを取得させ、その計測データを前記記憶部に格納させる制御部とを有するパルスオキシメータと、
前記パルスオキシメータの体傾斜検出部を被験者の体幹部に装着する装着手段と、
前記パルスオキシメータの記憶部に格納されている計測データを取得して、前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析して表示する処理手段とを具備することを特徴とする睡眠評価システム。
【請求項10】
前記処理手段は、前記計測データを時間軸に展開して、前記血中酸素飽和度の低下ピークと被験者の体の傾き角との関係を表示させる表示制御部を有することを特徴とする請求項9記載の睡眠評価システム。
【請求項11】
前記処理手段は、前記血中酸素飽和度の低下ピークの発生頻度と、被験者の体の傾き角との関係をヒストグラム化するためのヒストグラム演算部を有することを特徴とする請求項9記載の睡眠評価システム。
【請求項12】
前記処理手段は、前記血中酸素飽和度の低下ピークが発生しない被験者の体の傾き角を、無呼吸状態が発生しない適正傾き角として求める演算部を有することを特徴とする請求項11記載の睡眠評価システム。
【請求項13】
前記パルスオキシメータの体傾斜検出部が、被験者の体位状態につき少なくとも座位状態又は臥位状態の別を判別可能とされると共に、この体位状態の別に関する情報も前記記憶部に格納される構成とされ、
前記処理手段は、前記体位状態が臥位状態であるときの計測データを選別するデータ選別部を有することを特徴とする請求項9記載の睡眠評価システム。
【請求項14】
被験者の血中酸素飽和度に関する計測データを取得する血中酸素飽和度計測部と、
被験者の体の傾き角に関する計測データを取得する体傾斜検出部と、
血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により計測される計測データを格納する記憶部と、
前記血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により、所定のサンプリング周期で被験者について前記血中酸素飽和度と体の傾き角とに関する計測データを取得させ、その計測データを前記記憶部に格納させる制御部と
を有することを特徴とするパルスオキシメータ。
【請求項15】
前記パルスオキシメータには所定の表示部と処理部とが備えられており、
前記処理部は、前記記憶部に格納されている計測データを取得して、前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析して前記表示部に表示させる機能を具備することを特徴とする請求項14記載のパルスオキシメータ。
【請求項16】
前記パルスオキシメータの外装面に、当該パルスオキシメータの被験者への標準装着方向を表示する方向表示部が備えられていることを特徴とする請求項14記載のパルスオキシメータ。
【請求項17】
睡眠状態にある人体が無呼吸状態に陥ることで変動する所定の評価パラメータを被験者について計測する評価パラメータ検出手段と、被験者の体の傾き状態を角度情報として検出可能な体傾斜検出手段と、前記評価パラメータ検出手段及び体傾斜検出手段により計測される計測データを格納する記憶手段と、所定の解析手段とから構成される睡眠評価システムの動作プログラムであって、
前記評価パラメータ検出手段及び体傾斜検出手段により、所定のサンプリング周期で被験者について前記所定の評価パラメータと体の傾き角とを計測させて計測データを取得させるステップと、
前記計測データを前記記憶手段に格納させるステップと、
前記解析手段に、前記記憶手段に格納された計測データに基づき、前記所定の評価パラメータの変動と被験者の体の傾き角との関係を解析させるステップと
を少なくとも実行させることを特徴とする睡眠評価システムの動作プログラム。
【請求項18】
被験者の血中酸素飽和度に関する計測データを取得する血中酸素飽和度計測部と、被験者の体の傾き角に関する計測データを取得する体傾斜検出部と、血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により計測される計測データを格納する記憶部とを備えるパルスオキシメータと、所定処理手段とから構成される睡眠評価システムの動作プログラムであって、
前記血中酸素飽和度計測部及び体傾斜検出部により、所定のサンプリング周期で被験者について前記血中酸素飽和度と体の傾き角とに関する計測データを取得させるステップと、
前記計測データを前記記憶部に格納させるステップと、
前記処理手段に、パルスオキシメータの記憶部に格納されている計測データを取得して、前記血中酸素飽和度の変動と被験者の体の傾き角との関係を解析して表示する処理ステップと
を少なくとも実行させることを特徴とする睡眠評価システムの動作プログラム。
【請求項19】
被験者を臥位状態で支持可能な寝台と、前記寝台の傾斜角度を調整する寝台駆動手段と、前記寝台駆動手段により調整される寝台角度を設定する制御手段とを備え、
前記制御手段は、所定の計測手段により前記寝台において睡眠状態にある被験者について体の傾き角と血中酸素飽和度とを所定のサンプリング周期で同時計測させ、
取得された計測データを時間軸に展開して、前記血中酸素飽和度の低下に基づく無呼吸状態と、被験者の体の傾き角との因果関係を評価して、当該被験者において無呼吸状態が発生しない体の傾き角を求め、
前記無呼吸状態が発生しない体の傾き角を、前記寝台駆動手段に対する設定寝台角度として出力可能とされていることを特徴とする睡眠支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2006−204742(P2006−204742A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23674(P2005−23674)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】