説明

石油精製時に副生する硫酸ピッチスラヂと再処理した硫酸ピッチの再処理。

【課題】焼却すると大気汚染の要因となり、これを脱硫するのに石灰等入れて素練りし、ブリケットを固形燃料とした無公害を特徴とする、石油精製中に副生する硫酸ピッチスラヂの処理有効利用法を提供する。
【解決手段】これを火力発電等の固形燃料として使用することで、硫化物は石灰等と反応して石膏硅酸塩炭化水素の形に変化し、これを焼却する時はSoxの発生は無く、石膏硅酸灰は建材用等の原料として有効利用され、生ゴミとブリケットを混合すると燃料として利用される。生ゴミからパルプ繊維を回収し、繊維素エーテル化すると硫酸ピッチスラヂの固形剤ともなり、ブリケットを焼却する時は、Soxの大気汚染は無い。またこのブリケットを焼却下灰は石膏として硫酸ピッチスラヂの吸着に利用しコストを低下させる事が可能となった。また他の産業廃棄物との燃料として利用されるので、公害性を低下させるのに役立つものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
石油精製に於て必ず行う硫酸処理は中和すると硫酸ピッチスラヂが発生して、これが海洋汚染の要因となりこれを燃料として使用する製鉄所や発電所、セメント工場は大気汚染の大きな要因ともなり、さらに硫酸ピッチスラヂを原料として購入した産業廃棄物業者は再々処理した硫酸ピッチスラヂ粕を無断で埋め立てる為に土壌汚染となり、特に後者の再々処理には手をやいていた。
【0002】
そこで、この硫酸ピッチスラヂ即ち石油原油を硫酸で処理し、脱硫と不飽和炭化水素とを凝集させてこれをアルカリ液で中和したものを濾別したペースト状の硫酸ピツチスラヂを処理するのに、炭酸石灰と石灰硅酸塩を混合したペースト状から固形物化する為に接合剤として、硅酸ソーダーとアルミン酸ソーダー混合して圧縮し金型成型してブリケットを作る。
これは硫酸ピッチスラヂのペースト化による取扱上の不便性を改善して搬送と濾水の公害を改善するのである。
然るに、後々このブリケットを密封した乾溜釜に入れて300℃前後で乾溜すると炭化水素とクマロンの一部が分溜する。またこれを480℃前後の加熱炉で焼成すると水素ガスが脱炭して出来るから燃料電池の水素源として再利用出来。またこれを更に高温で焼成すると石膏硅酸カルシウムが焼成灰として残る。また硫酸ピッチスラヂが脱炭化水素にした硫酸ピッチスラヂも同様に炭酸石灰と石灰と硅酸塩とを混合して接合剤を混合して成型したブリケットは前記の加熱処理を行うと同様の炭化水素の回収や石膏硅酸石灰の形で残渣物が出来、これを建材に利用すれば付加価値を高め、公害性を防止する事ができる。
本発明は、この開発を行おうとするものである。
【背景技術】
【0003】
硫酸ピッチスラヂを分析すると、硫酸ピッチスラヂ中には炭化水素が50%そんざいし、硫酸化炭化水素18〜25%含有し、その他に、クマロンが2〜3%含有している。これを焼却炉に直ちに入れて、燃料として使用するときに排気ガスの中には多量にSoxが混入して気散するので大気汚染の重大な結果として残る。
然るにこれを炭酸石灰、石灰、硅酸塩と接合剤で加圧成型してブリケットをつくる。
固形燃料として作ったブリケットを焼却する時は、Soxガスの排気ガスの汚染はほとんど無いからこの方法で処理を進めた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硫酸ピッチスラヂは通常石油原油を最初に硫酸で処理し、苛性アルカリで中和したものを濾別したペースト液状のものでネバネバして取扱が悪い。
従ってこれを工場から搬送すると共に再加工するには固形化する必要がある。また再々加工した硫酸ピッチスラヂ粕も同様に炭酸石灰、石灰、硅酸塩と接合剤の混合したものを加圧下で金型成型加工するが、天日乾燥したものを使用すると乾燥途中で含有炭化水素が揮散しロスとなるので乾燥状態をどの程度にするかが問題となる。
そしてこの成型ブリケットを加熱焼成する温度が重要であるが、これをセメントや製鉄所や発電所その他の工場で燃料として利用する時の含油燃料の量が問題となる。
また天然の貢母油岩粉(3〜5%の含有油)混合による生産性の拡大が問題となる。
【課題を解決しょうとする手段】
【0005】
硫酸ピッチスラヂは含有油量が50%以上である時、炭酸石灰の量や石灰の量の添加量が問題となる。その一つは混合灰を混合すると充分な脱硫が迅速に行われるかが問題となる。
油が多いと接合剤の接合能力が低下するので粘度の調整も必要であるが、炭酸石灰や石灰や石灰硅酸塩を混合する時に硫酸炭化石灰との反応が充分に行われるには熟成時間が必要で通常12時間を必要とする。
更に時間を短縮するには油以外の添加物を幾%にするかが問題となる。
また出来た成型ブリケットを放置すると炭化水素の一部は気散するのでこれを防ぐにはどうすればよいかである。
また天然産の貢母油岩粉を入れると含油率をどこまで高める事が出来るかが問題である。
【本発明の効果】
【0006】
硫酸ピッチスラヂを石油精製工場から搬送する時、ペースト状となるので運び難く悪臭性である。
そこでこれを炭酸石灰で吸着し、石灰で硫酸根を反応せしめると次第に固化し更に接着剤を入れると急速に固形化するから搬送が容易になると共に、悪臭ガスの発生が抑制される。
次にこの固形ブリケットは炭化水素でも水素ガス化するか燃料とするかによって処理の方法が異なるので石炭同様の取扱が可能となる。また従来の様に硫酸ピッチスラヂ処理の様に含炭化水素だけを分離回収しても硫酸化炭化水素や硫化炭化水素はいつまでも残留するので二次汚染となっていた。
本発明では焼却すれば石膏化するので二次汚染は無く、また建材にも利用される。天然産の貢母油岩粉を吸着剤に利用すると含油量を増大する。
また従来の硫酸ピッチスラヂの様に流動性であるから海洋汚染の要因となるが、本発明の方法ではその公害性は無い。
また産業廃棄物同志を混合して接合剤で接合した固形燃料には大気汚染を作らず、また海洋投棄も行われないから二次公害とはならない。
また繊維素エーテルの産業廃棄物の紙繊維を回収してこれを苛性アルカリでアルカリパルプとし、これにハロゲン化メチルやハロゲン化エチルを加熱反応させて、繊維素エーテルを作る時は繊維素エーテルの価格を下げ、この繊維素エーテルを固化剤として硫酸ピツチスラヂと混合する時は搬送の手間が少なく、固形燃料として有効である。
またオイルシェール粉と硫酸ピッチスラヂを混合すると含油率を高め、オイルセールの負荷燃料価格を高める特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
硫酸ピッチスラヂはペースト液であり悪臭性である。これを搬送するには容器が必要で、その容器を使用するとペースト液は容器面に密着して洗浄すると水貭汚染となり悪臭を放つから、これを固体化し容器の汚れを防ぐのである。
そのためには固形化乾燥綿を作るのに、炭酸石灰と石灰と硅酸塩ペースト液を固化させる接合剤を、混合して成型したものを静置して表面の乾燥を保つブリケット状ペースト成型加工した。
【実施例】
【0008】
硫酸ピッチスラヂ及び硫酸ピッチスラヂの再生粕の固形化する配合例を示すと次の如くである。
例1 硫酸ピッチスラヂ 100
炭酸石灰粉 500
石灰粉再生石膏混合物 500
硅酸ソーダー又は
アルミン酸ソーダー 30
例2 硫酸ピッチスラヂ 100
炭酸石灰粉 500
天然貢母油岩粉3〜5%含油 500
ベントナイト酸性白土粉 300
再生石膏粉 100
硅酸ソーダー 30
例3 硫酸ピッチスラヂ再処理粕 100
炭酸石灰 300
石灰 300
硅酸塩粉 10
再生石膏粉 100
接合剤硅酸ソーダー 100
これら配合例のものを混合機の中に投入して混合し、最後に接合剤を添加して素練りしたものを成型機にかけて固化してブリケットを作る。
例4 硫酸ピッチスラヂ液 100
繊維素エーテル 10
石灰炭酸石灰 500
硅酸塩 100
再生石膏粉 50
例5 硫酸ピッチスラヂ液 100
米糠・フスマ・オカラ粕・
モミガラ粕 300
石灰炭酸石灰 100
硅酸ソーダー水 300
例6 硫酸ピッチスラヂ液 100
繊維素エーテル 50
米糠粉・オカラ粉ん 100
石灰炭酸石灰 100
硅酸塩水 50
廃木材粉 100
例4〜例5も同様に混合して固化し、成型してブリケットを作る。
例6は硫酸ピッチスラヂを80℃に加温し繊維素エーテルを添加して溶解し、これを米糠粉、オカラ粉を混合して加熱しながら金型成型してブリケットを作る。繊維素エーテルは生ゴミ中の紙パルプを回収してこれを苛性アルカリの水で浸積し、アルカリ繊維素を作り脱液したものを乾燥し、これを反応管に入れ180℃で臭化エチル又は臭化ブチルを吹き込みエーテル度2とした繊維素エーテルを乾燥して使用した。米糠、オカラ粉は殆どを海洋投棄しているのでこれを使用した。
また硫酸ピッチスラヂの吸着剤として生ゴミを使用して混合する時、石灰、炭酸石灰、硅酸塩の混合によって硫酸根を石膏化して大気汚染を防ぐ。
【0009】
図1は硫酸ピッチスラヂ液をタンクローリーで搬送したものを混合機(1)に投入する前に炭酸石灰、石灰、硅酸塩、生ゴミ、乾燥生ゴミ、米糠、モミガラ粉、フスマ粉、(2)を混合機にコンベアー(3)で搬送してホッパー(1’)に投入し混合(5)したものをホッパー(4)に入っている硫酸ピッチスラヂ(4a)を投入して攪拌機(1c)で攪拌し、出口(1d)から台車中に導入して静置し、接合剤(P)を混合機(1a)に入れて、前記混合物をホッパー(6)より投入して素練りしてコンベアー(7)により成型機(8)で加圧加熱成型する。そうして金型(7’)toブリケット固形燃料としてとりだしたものを台車(10)とコンアー(9)で搬送し乾燥して袋詰め(11)して固形燃料を作る。この固形燃料をロータリーキルン(11’)ホッパー(12)から館内に導入して加熱器(12’)(12”)280℃で加熱して乾留する。そして、揮発したガスをポンプ(13)で吸引して冷却し、タンク(15)乾溜液を貯油する。
乾溜粕はロータリーキルン出口(16)からコンベアー(17)で積載搬送し、冷却室(18)で冷却したものをコンベアー(19)で搬送し、粉砕機(20)で粉砕したものを再生使用する。この乾溜装置では硫酸ピッチスラヂ液の50%が炭化水素として回収されるが、硫化炭化水素の多く含有したものでは過酸化石灰が過炭酸ソーダーを使用して酸化して硫酸化したものを石灰と反応させて脱硫酸化を行う。この脱硫化温度は加熱温度を300℃以上とする。
【産業上の利用可能性】
【0010】
産業廃棄物の多くは燃焼するか海洋投棄によって処理してきたが、先年以後国際条約に基づいて禁止され、また硫酸ピツチスラヂ液を海洋投棄する事も禁止となり本格的に硫酸ピッチスラヂ液の処理が大問題となり、既に硫酸ピッチスラヂ液を加工して取り出した炭化水素以外の粕は多量に埋立地に埋め込まれ、これが二次公害となり、これを取り出して公害をなくすには焼却だけでは大気汚染となり、埋め立て廃油は水貭汚染を引き起こしその量は膨大である。
これを浄化するには焼却するにも脱硫したものでないと行えないし、埋め立てするにもブロック化して焼却するにも脱硫を行う必要がある。
しかし安価で簡便な設備で硫酸ピッチスラヂ類を処理するには石灰と炭酸石灰、ドロマイド、硅酸塩、過酸化物の混合反応によって揮散を抑える必要がありそのための手段として本発明がより優れていて安価である。
特に他の生ゴミの焼却にあたっても石灰、炭酸石灰、ドロマイド、硅酸塩で予めブリケット化したものを焼却すると硫酸との反応に充分な時間を与えて反応が充分行えるので無害の石膏化が促進される。その石膏はセメントの原料や建材としての利用価値があり、またこの石膏を硫酸ピッチスラヂの吸着に利用すると生産コストを20%以上低下する事が可能である。また貢母油粉を混合すると含油量を増大とオイルシェール岩粉の有効利用を可能にする。
また生ゴミを分別して紙繊維を抄造して、これを繊維素エーテル化すると吸着剤として硫酸ピッチスラヂを吸収固化する利点があり、生ゴミの焼却に於ても硫酸ピッチスラヂ混合物による脱硫ブリケットは共に燃焼してもSoxの発生は少ないので、公害予防となると共に硫酸ピッチスラヂ中の炭化水素を燃料に併用するので高温焼却が可能となり、ブリケット化により火力発電、製鉄、セメントの焼却に於てもSoxの発生はほとんどないので公害予防となる燃料ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 石油精製中に副生する硫酸ピッチスラヂ液とこの液を脱硫して抽出した粕公害物の再処理の工程図。
【図2】 硫酸ピッチスラヂに混合する石灰、炭酸石灰、硅酸塩と時間との特性図。

【特許請求の範囲】
石油精製中に副生する硫酸ピッチスラヂ液や副生硫酸ピッチスラヂ粕を石灰や炭酸石灰、ドロマイド、硅酸塩、オイルシェール粉、繊維素エーテルに生ゴミその他添加物を混合して脱硫反応を行ったものを液状から粉末固形状に変える接合剤を加えて混合素練りし、加圧加熱成型により固形のブリケット燃料を作り、これを火力発電や製鉄やセメント原料の燃料と混合して焼却またはビニールハウスの暖房用に使用して得た石膏硅酸塩焼却灰をリサイクルして硫酸ピッチスラヂの吸着剤として再利用し、一部は建材に利用し硫酸ピッチスラヂ液を石灰、炭酸石灰、ドロマイド、硅酸塩を混合反応して無公害を特徴とする硫酸ピッチスラヂの処理有効利用法。
【請求項1】
脱硫硫酸ピッチスラヂ液に石灰、炭酸石灰、ドロマイド、硅酸塩を混合して反応せしめたものに生ゴミ粉や分別ゴミ粉、米糠、フスマ、オカラ粉、廃木材粉とを混合して接合剤を添加して素練り成型ブリケット燃料。
【請求項2】
硫酸ピッチスラヂ液にオイルシェール岩石粉と石灰、炭酸石灰、ドロマイド、塩基性スラヂ粉、硅酸塩を混合し接合剤の硅酸ソーダー、アルミン酸ソーダーで素練り成型したブリケット燃料。
【請求項3】
生ゴミから分別再生のパルプ繊維を繊維素エーテル化したものを硫酸ピッチスラヂの吸着材として混合した固形燃料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−185644(P2007−185644A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28956(P2006−28956)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(502041613)
【Fターム(参考)】