説明

石炭ガス化炉運転制御方法、石炭ガス化炉運転制御装置および石炭ガス化炉運転制御プログラム

【課題】石炭ガス化炉運転の高効率化を図る。
【解決手段】運転中のガス化炉で各測定機器により計測されるオンラインデータを取得し、予めガス化炉毎に求めておいた最小時間間隔でオンラインデータを平均化し、平均化されたオンラインデータから性能評価関数を推定することで、高い相関性を有するガス化炉2の性能評価関数を推定し、当該性能評価関数と予め設定した危険率に基づきガス化炉運転の高効率化を目的とする最適化計算をおこなうことで、運転中に取得されるオンラインデータに基づいた精度の高い運転制御パラメータを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス化炉運転制御方法、石炭ガス化炉運転制御装置および石炭ガス化炉運転制御プログラムに関する。さらに詳述すると本発明は、石炭ガス化炉の運転の高効率化および安全性の確保に好適な石炭ガス化炉運転制御方法、石炭ガス化炉運転制御装置および石炭ガス化炉運転制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の発電方式の一つとして蒸気タービンとガスタービンの組合せにより高効率発電を行う石炭ガス化複合発電(IGCC)の実用化・商用化に向けての研究が進められている。
【0003】
非特許文献1には、ガス化炉負担、空気比および給炭量比を操作パラメータとするコンバスタ温度、生成ガス発熱量およびリサイクルチャー量に関するガス化炉の性能評価関数に基づいて最適化計算を行い運転制御パラメータを設定する機能を有する石炭ガス化炉最適運転支援システムが提案されている。
【0004】
【非特許文献1】渡邊裕章、所健一 他「石炭ガス化炉最適運転支援システムの開発−ガス化炉運転に対する最適化手法の検討−」電力中央研究所報告 研究報告:M04001,2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載の技術におけるガス化炉の性能評価関数は、ガス化炉の1つの運転条件下での運転後に1回計測されたコンバスタ温度等のデータに基づき構築されるものであり、運転中に性能評価関数を構築および修正することはできなかった。また、当該運転後に計測されたデータには、ガス化炉の運転制約条件を満たさない条件下で取得されたデータを含んでいるので、当該データに基づいた最適化計算により求められる運転制御パラメータの精度は低く、ガス化炉を効率よく運転することはできなかった。
【0006】
そこで本発明は、精度の高い運転制御パラメータを決定して石炭ガス化炉運転の高効率化を図る石炭ガス化炉運転制御方法、石炭ガス化炉運転制御装置および石炭ガス化炉運転制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の石炭ガス化炉運転制御方法は、運転中の石炭ガス化炉から少なくともコンバスタ温度、生成ガス発熱量およびリサイクルチャー量をオンラインデータとして取得するオンラインデータ取得処理と、石炭ガス化炉について、予めオンラインデータと運転制御パラメータとの相関を見出せる時間間隔を求めておき、オンラインデータを時間間隔で平均化する統計的処理と、該平均化されたオンラインデータに基づいて性能評価関数を推定する性能評価関数推定処理と、性能評価関数とオンラインデータとの誤差が正規分布に従うと仮定し、また予め設定された運転中に運転制約条件を違反する確率を危険率とし、正規分布および危険率に基づいてオンラインデータの設定値を決定する危険率設定処理と、生成ガス発熱量の最大化を目的とし、かつ設定値に基づいた制約式を運転制約条件とする最適化問題を解き運転制御パラメータを設定する運転制御パラメータ決定処理とを行うようにしている。
【0008】
また、請求項4に記載の石炭ガス化炉運転制御装置は、運転中の石炭ガス化炉に設置された各測定機器から少なくともコンバスタ温度、生成ガス発熱量およびリサイクルチャー量をオンラインデータとして取得し記憶装置に記憶するオンラインデータ取得手段と、石炭ガス化炉毎に予めオンラインデータが運転制御パラメータに対して相関性を有するようになる時間間隔を記憶装置に記憶しておき、オンラインデータを時間間隔で平均化し記憶装置に記憶する統計的手段と、該平均化されたオンラインデータを読み出して回帰分析により性能評価関数を求めて記憶装置に記憶する性能評価関数推定手段と、性能評価関数の値とオンラインデータとの誤差のヒストグラムを求め、該ヒストグラムが正規分布に従うと仮定し、また予め設定された運転中に運転制約条件を違反する確率を危険率とし、正規分布および危険率に基づいてオンラインデータの設定値を決定し記憶装置に記憶する危険率設定手段と、生成ガス発熱量の最大化を目的とし、かつ設定値に基づいた制約式を運転制約条件とする最適化問題を解き運転制御パラメータを求める運転制御パラメータ決定手段とを備えるものである。
【0009】
また、請求項6に記載の石炭ガス化炉運転制御プログラムは、運転中の石炭ガス化炉に設置された各測定機器から少なくともコンバスタ温度、生成ガス発熱量およびリサイクルチャー量をオンラインデータとして取得し記憶装置に記憶させるオンラインデータ取得処理と、石炭ガス化炉毎に予めオンラインデータが運転制御パラメータに対して相関性を有するようになる時間間隔を記憶装置に記憶しておき、オンラインデータを時間間隔で平均化し記憶装置に記憶させる統計的処理と、該平均化されたオンラインデータを読み出して回帰分析により性能評価関数を求めて記憶装置に記憶させる性能評価関数推定処理と、性能評価関数の値とオンラインデータとの誤差のヒストグラムを求め、該ヒストグラムが正規分布に従うと仮定し、また予め設定された運転中に運転制約条件を違反する確率を危険率とし、正規分布および危険率に基づいてオンラインデータの設定値を決定し記憶装置に記憶させる危険率設定処理と、生成ガス発熱量の最大化を目的とし、かつ設定値に基づいた制約式を運転制約条件とする最適化問題を解き運転制御パラメータを出力する運転制御パラメータ決定処理とをコンピュータに実行させるものである。
【0010】
したがって、運転中のガス化炉で各測定機器により計測されるコンバスタ温度等のデータをオンラインデータとして取得し、予めガス化炉毎に求めておいたオンラインデータが空気比、給炭量比等の運転制御パラメータに対して相関性を有する程度の時間間隔(以下、最小時間間隔ともいう)でオンラインデータを平均化する。また、最小時間間隔で平均化されたオンラインデータから性能評価関数を推定することで、高い相関性を有する性能評価関数の推定が可能となる。更に、この高い相関性を有する性能評価関数と実測値であるオンラインデータの誤差の分布は正規分布に近似するという知見に基づき、危険率を予め設定しておくことで正規分布上の点として設定値を数学的に求めることが可能となる。更に、求めたオンラインデータに対しこの設定値を限界値とする制約式を運転制約条件とし、ガス化炉運転の高効率化を目的とする非線形の最適化計算をおこなうことで、運転中に取得されるオンラインデータに基づいて、運転を継続しながら精度の高い運転制御パラメータを決定している。
【0011】
請求項2に記載の発明は請求項1に記載のガス化炉運転制御方法において、性能評価関数を第一の性能評価関数、第一の性能評価関数に基づく正規分布を第一の正規分布とし、第一の正規分布と次回の性能評価関数推定処理で推定された第二の性能評価関数に基づく第二の正規分布とが有意に異なると判断された場合に、第一の性能評価関数を第二の性能評価関数に変更する性能評価関数の再構築処理を行うようにしている。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は請求項4に記載のガス化炉運転制御装置において、更に、性能評価関数を第一の性能評価関数、第一の性能評価関数に基づく正規分布を第一の正規分布とし、第一の正規分布と次回の性能評価関数推定処理で推定された第二の性能評価関数に基づく第二の正規分布とが有意に異なると判断された場合に、第一の性能評価関数を第二の性能評価関数に変更する性能評価関数の再構築手段を備えるものである。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は請求項6に記載の石炭ガス化炉運転制御プログラムにおいて、更に、性能評価関数を第一の性能評価関数、第一の性能評価関数に基づく正規分布を第一の正規分布とし、第一の正規分布と次回の性能評価関数推定処理で推定された第二の性能評価関数に基づく第二の正規分布とが有意に異なると判断された場合に、第一の性能評価関数を第二の性能評価関数に変更させる性能評価関数の再構築処理をコンピュータに実行させるものである。
【0014】
したがって、2つの正規分布を比較して2つの正規分布が有意に異なる場合、即ち第一の性能評価関数では継続して取得され続けるオンラインデータに適合しなくなった場合には、第一の性能評価関数を新たに第二の性能評価関数に置き換えて以降の処理をおこなって運転制御パラメータを変更している。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれかに記載のガス化炉運転制御方法において、溶融スラグ流の流下状態を監視する溶融スラグ流監視処理を行い、スラグ詰まりの予兆を検出した場合には、運転制約条件を変更するようにしている。
【0016】
したがって、スラグ詰まりの予兆を検出した場合には、運転制約条件に問題があると判断し、運転制約条件の変更を行うようにしている。例えば、コンバスタ温度が低すぎることが原因であるのでコンバスタ温度についての運転制約条件の変更、具体的にはコンバスタ温度の下限設定値を高く設定しなおして、最適化計算を実行し運転制御パラメータを変更するようにしている。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明にかかる石炭ガス化炉運転制御方法、石炭ガス化炉運転制御装置および石炭ガス化炉運転制御プログラムによれば、ガス化炉の運転中に各測定機器からオンラインデータを取得しながら性能評価関数を推定することが可能となる。また、最小時間間隔で平均化されたオンラインデータから性能評価関数を推定し、当該性能評価関数に基づいて最適化計算の制約条件を求めることで、ガス化炉の運転中に精度の高い運転制御パラメータを決定し、当該パラメータに基づいて効率よくガス化炉を運転できるようになる。
【0018】
また、誤差の分布を正規分布と仮定することで危険率を運転制約条件に反映させることが可能となる。よって、運転中に一時的に運転制約条件を満たさなくなる場合であっても全体として危険率を上回らなければ運転を継続するように運転制御パラメータを設定することができることにより運転範囲の制約がなくなり、実測値のばらつきを考慮した安全な運転条件の最適化を図ることが可能となる。
【0019】
請求項2に記載の石炭ガス化炉運転制御方法、請求項5に記載の石炭ガス化炉運転制御装置および請求項7に記載の石炭ガス化炉運転制御プログラムによれば、2つの正規分布の誤差が大きくなった場合には自律的に運転制御パラメータを変更することが可能となる。また、運転を継続すればするほど相関性の高い性能評価関数を推定することが可能となり、運転時間が長くなればそれだけ精度の高い運転制御パラメータに基づいて効率よくガス化炉を運転できるようになる。
【0020】
請求項3に記載の石炭ガス化炉運転制御方法によれば、スラグ詰まり、失火等を自律的に防ぐことが可能な運転制御パラメータを設定することができ、ガス化炉の安全運転をおこなうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の構成を図1〜図23に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
本実施形態の石炭ガス化炉運転制御装置1は、運転中の石炭ガス化炉に設置された各測定機器から少なくともコンバスタ温度、生成ガス発熱量およびリサイクルチャー量をオンラインデータとして取得し記憶装置に記憶するオンラインデータ取得手段と、石炭ガス化炉毎に予めオンラインデータが運転制御パラメータに対して相関性を有するようになる最小時間間隔を求めておき、オンラインデータを最小時間間隔で平均化し記憶装置に記憶する統計的手段と、平均化されたオンラインデータを読み出して回帰分析により性能評価関数を求めて記憶装置に記憶する性能評価関数推定手段と、性能評価関数の値とオンラインデータとの誤差のヒストグラムを求め、このヒストグラムが正規分布に従うと仮定し、当該正規分布と予め初期パラメータとして記憶装置に記憶された運転中に運転制約条件を違反する確率である危険率とに基づいて、オンラインデータの設定値を決定し記憶装置に記憶する危険率設定手段と、生成ガス発熱量の最大化を目的とし、かつ設定値に基づいた制約式を運転制約条件とする最適化問題を解き運転制御パラメータを求める運転制御パラメータ決定手段とを備えるものである。
【0023】
図1に示すように本実施形態のガス化炉2は、下部のコンバスタ3と上部のリダクタ4の2室から構成される加圧2段噴流床方式の石炭ガス化炉である。
【0024】
また、ガス化炉2の排出口5から流下する溶融スラグ6を異なる方向から同時に撮影するための撮影手段7を備えている。本実施形態では撮影手段7は、例えば3台のCCDカメラ7a,7b,7cである。
【0025】
また、コンバスタ3には、石炭を供給するコンバスタ微粉炭バーナ8および炉出口で捕集されるリサイクルチャーを供給するコンバスタチャーバーナ9が設置され、リダクタ4には、石炭を供給するリダクタ微粉炭バーナ10が設置される。
【0026】
更に、これら3台のCCDカメラ7から同時に画像を得るために3台のCCDカメラ7を同期させる同期制御装置11と、3次元形状を求める3次元形状測定手段15と3次元の表面温度分布を求める温度測定手段16として機能する画像処理装置12と、石炭ガス化炉内に設置されたの各測定機器からオンラインデータを取得するオンラインデータ取得手段17、オンラインデータを最小時間間隔で平均化する統計的手段18、平均化されたオンラインデータから性能評価関数を推定する性能評価関数推定手段19、性能評価関数とオンラインデータとの誤差の分布(正規分布)と予め設定された危険率に基づいて、オンラインデータの設定値を求める危険率設定手段20、最適化計算をおこなって運転制御パラメータを求める運転制御パラメータ決定手段21、性能評価関数に基づく正規分布が有意に異なる場合に性能評価関数の再構築をおこなう性能評価関数の再構築手段22、スラグ詰まりの予兆を検知して運転制御パラメータの変更を行う溶融スラグ流監視手段23として機能する最適化演算装置13とを備えている。
【0027】
更に、図示はしないが、コンバスタ3の出口部にはコンバスタ3内の温度(以下、コンバスタ温度)を測定する熱電対等の測定機器、リダクタ4内のガス化炉の出口部には生成される石炭ガス化ガス(以下、生成ガス)の発熱量(以下、生成ガス発熱量)を測定するガスクロマトグラフィー(GC)や質量分析計等の測定機器、チャー供給設備にはリサイクルチャー(微粉炭の燃え残り)量を測定するリサイクルチャー用のホッパ重量変化率やインパクト流量計等が設置されている。
【0028】
上記コンバスタ温度、生成ガス発熱量、リサイクルチャー量等のオンラインデータおよび石炭ガス化炉2の生成物であるガスのガス化性能データは測定装置14を介して、最適化演算装置13に入力される(図1中の符号aで示す矢印参照)。また、最適化演算装置13は、リダクタ微粉炭バーナ8、コンバスタ微粉炭バーナ10、コンバスタチャーバーナ9等のガス化炉2の各運転操作対象機器に対して求められた運転制御パラメータに基づいた制御信号を送り、これらの運転操作対象機器を制御する(図1中の符号bで示す矢印参照)。
【0029】
上記の同期制御装置11、画像処理装置12および最適化演算装置13は、既存の計算機資源(コンピュータシステム)を用いて実現することができる。図2に一例として最適化演算装置13の構成の一例を示す。最適化演算装置13は、ディスプレイ等の出力装置24と、キーボード、マウス等の入力装置25と、演算処理を行う中央処理演算装置(CPU)26と、演算中のデータ、パラメータ等が記憶される主記憶装置(メモリ、RAM)27と、計算結果等の各種データが記録される補助記憶装置28としてのハードディスク、外部とのデータの入出力を行う入出力インターフェース29等を備えている。以下、主記憶装置26及び補助記憶装置27を総称して、単に記憶装置ともいう。上記のハードウェア資源は例えばバス30を通じて電気的に接続されている。
【0030】
また、本実施形態の石炭ガス化炉運転制御プログラムは、例えば補助記憶装置28に記録されており、当該プログラムがCPU26に読み込まれ実行されることによって、コンピュータが最適化演算装置13として機能する。尚、上記オンラインデータ取得手段17、統計的手段18、性能評価関数推定手段19、危険率設定手段20、運転制御パラメータ決定手段21、性能評価関数の再構築手段22および溶融スラグ流監視手段23は、CPU26で実行されるソフトウェアをコンピュータで実行させることで構成できる。その実行の際に必要なデータは、RAM27にロードされる。
【0031】
また、補助記憶装置28は、必ずしもコンピュータ内部の装置であることに限らず、外付けのハードディスク、ネットワーク経由でアクセス可能な外部記憶装置を用いても良いのは勿論である。本実施形態では、運転実績データベース31が補助記憶装置28内に構成される。以上述べた最適化演算13の構成は一例であってこれに限られるものではない。また、同期制御装置11および画像処理装置12のハードウェア構成についても処理を実行する手段を除き同様に構成される。また、上記の同期制御装置11および画像処理装置12および最適化演算装置13は必ずしも別々のハードウェアで構成される必要はなく、複数の装置を1つのハードウェアで実現することも可能である。
【0032】
また、図3に本実施形態で用いた石炭ガス化炉2全体の概要を示す。この石炭ガス化炉2によれば、原炭は粉砕機32により200メッシュ(74[mm])パス90[%]以上に微粉砕・乾燥され、ストレージビン33、加圧ロックホッパ34、計量ホッパ35を経て、空気搬送により設定流量分だけコンバスタ3およびリダクタ4へ供給される。
【0033】
また、2次空気(図3中の符号dで示す矢印参照)は所定温度まで昇温され、コンバスタ3のみへ供給される。コンバスタ3は、微粉炭とチャーを高温で燃焼させ、石炭灰を溶融スラグ6として排出する機能と、リダクタ4におけるガス化反応に必要な熱量を供給する機能を有する。
【0034】
リダクタ4では、コンバスタ3から上昇してくる高温ガスとリダクタ微粉炭バーナ8から吹き込まれる微粉炭とを混合させ、石炭の熱分解を促進させる。リダクタでは、吸熱反応であるチャーのガス化反応が起こる。生成ガスは熱交換器36で冷却され、生成ガス中のチャーはサイクロン37で捕集される。捕集チャーは、微粉炭と同様に気流搬送されコンバスタ3へ供給される。尚、符号38は原炭バンカ、39は空気圧縮機、40は空気加熱器、41は微粉炭分配機、42はアッシュホッパ、43はアッシュロックホッパ、44は冷却水、45は起動用重油コンバスタ、46はレベル計、47は水タンク、48はチャー分配機、49は水洗浄塔、50は減圧弁、51は冷却水ポンプ、52は冷却水ポンド、53はクーリングタワー、54は生成ガス焼却炉、55はバグフィルタ、56は脱硫装置、57は煙突をそれぞれ示している。
【0035】
本実施形態では、以下に述べるように種々のデータの計測を行っているが、表1に各データとその計測方法、サンプリング周期、サンプリング位置を示す。以下、特に記載がなければ表1に基づいて計測を行うこととする。尚、図3中の○で囲まれた数字は、各データのサンプリング位置を示している(表1のサンプリング位置欄参照)。
【表1】

【0036】
次に、本実施形態の石炭ガス化炉運転制御方法について説明する。本実施形態の石炭ガス化炉運転制御方法は、運転中の石炭ガス化炉から少なくともコンバスタ温度、生成ガス発熱量およびリサイクルチャー量をオンラインデータとして取得するオンラインデータ取得処理と、石炭ガス化炉について、予めオンラインデータと運転制御パラメータとの相関を見出せる最小時間間隔を求めておき、オンラインデータを最小時間間隔で平均化する統計的処理と、該平均化されたオンラインデータに基づいて性能評価関数を推定する性能評価関数推定処理と、性能評価関数とオンラインデータとの誤差が正規分布に従うと仮定し、当該正規分布と予め初期パラメータとして設定された運転中に運転制約条件を違反する確率である危険率に基づいて、オンラインデータの設定値を決定する危険率設定処理と、生成ガス発熱量の最大化を目的とし、かつ設定値に基づいた制約式を運転制約条件とする最適化問題を解き運転制御パラメータを設定する運転制御パラメータ決定処理とを行うものである。
【0037】
最適化計算に用いる石炭ガス化炉の性能評価関数は、石炭ガス化炉の性能評価指標に対する運転制御パラメータの関数で表される。性能評価指標は、上述のようにオンラインデータとしてガス化炉2から計測可能である。本実施形態では、性能評価指標として「コンバスタ温度」、「生成ガス発熱量(石炭ガス化ガス発熱量)」、「リサイクルチャー量」の3つを用いている。尚、コンバスタ温度は石炭に含まれる灰を完全に溶融し溶融スラグとして排出するために評価するため、生成ガス発熱量はガスタービン燃焼器用の燃料ガスとしてその質を評価するため、リサイクルチャー量は石炭のガス化炉内の反応性を評価するための指標となる。ここで、性能評価指標はこれらに限られず、上記の性能評価指標に加えて例えば「炉内炭素転換率」および「冷ガス効率」等を用いても良い。尚、「炉内炭素転換率」および「冷ガス効率」は、ガス化炉2へ投入する全石炭流量に比例する値であり、「炉内炭素転換率」は「リサイクルチャー量」と反比例の関係となる。また、「冷ガス効率」は石炭の化学熱がどれだけ生成ガスに移行したかを示すものである。「炉内炭素転換率」および「冷ガス効率」は、それぞれ数式1、数式2で示される。
【数1】

【数2】

【0038】
本実施形態では、上記3つの性能評価指標に対して、運転制御パラメータの関数を構築する。石炭ガス化炉の運転制御パラメータとしては、コンバスタ石炭流量、リダクタ石炭流量、給炭量比、コンバスタ微粉炭バーナ2次空気流量、コンバスタチャーバーナ2次空気流量等を用いることができるが、本実施形態では、運転制御パラメータとして「空気比」、「給炭量比」、を用いることとしている。以下各運転制御パラメータについて説明する。
【0039】
「空気比」とは、ガス化炉2に投入される空気流量とガス化炉に投入される全石炭流量に対する理論空気流量との比であり、数式3で示される。尚、空気流量は各バーナに設置されたガス流量計、石炭流量は石炭供給用ホッパの重量変化率やインパクト流量計の変動値から測定することができる。
【数3】

【0040】
「給炭量比」とは、コンバスタ3とリダクタ4への石炭供給量の比をいい、数式4で示される。ガス化炉2にバーナが複数設置されている場合は各バーナへの石炭投入量の比を運転制御パラメータとしても良い。これによりコンバスタ温度をコントロールする。
【数4】

【0041】
また、本実施形態では、初期パラメータとして「ガス化炉負荷」を設定する。「ガス化炉負荷」とは、ガス化炉2の定格条件と実際に投入される全石炭流量との比をいい、例えば定格条件の石炭流量が投入されれば、ガス化炉負荷は100%であり、定格条件の80%の石炭流量が投入されればガス化炉負荷は80%となる。
【0042】
次いで、図4〜図20を用いて本実施形態における統計的処理について説明する。処理の説明のために一例として運転条件を、目標空気比=0.525,目標給炭量比=0.55とした場合のガス化炉2への石炭流量とガス流量の1秒に1回のオンラインデータの計測値(以下、瞬時データという)を図4〜図6に示す。尚、オンラインデータの取得は、精度向上のため各機器で計測可能な最小のサンプリング周期で取得することが好ましい。
【0043】
図4に示すように石炭流量は計量ホッパ35への受け入れ時に擾乱を受けるだけでなく、定常的に変動していることがわかる。また、図5に示すようにガス流量は100秒程度の周期で周期的に変動していることがわかる。
【0044】
また、図6に示すようにガス化炉2内の各部の温度についても時間の経過とともに変動していることがわかる。これは、石炭とガスの各流量が変動しているため、空気比も時間とともに変化することによる。特にコンバスタ温度とコンバスタ出口温度は大きく変動する傾向を示し、リダクタ上部に行くほどこの傾向は小さくなることがわかる。これはよりバーナに近い領域の方が空気比の変動による微粉炭の燃焼状態の変化の影響を受けやすいことを示している。
【0045】
また、図7にコンバスタ温度の瞬時データと、これに対応する空気比の瞬時データとの関係をプロットしたグラフを示す。図7に示すように、コンバスタ温度と空気比には、全く相関性を見出すことができないため性能評価関数を構築できない。
【0046】
本来空気比と強い相関があるべきコンバスタ温度がこのような傾向を示す理由は、石炭流量を測定する箇所、ガス流量を測定する箇所、およびガス温度を測定する箇所が一つのガス化炉2内であっても、それぞれ異なっているため、異なる現象を捉えていることが原因と考えられる。しかしながら、ガス化炉2の設計上各測定値を同一の測定地点で測定することは不可能である。即ち、ガス化炉2には時定数が存在し、運転制御パラメータを変更してもその影響がガス化炉の性能上現れるには時間がかかるといえる。
【0047】
本願発明者等は、図7に示すような全く相関性を見いだせない瞬時データであっても、統計的処理を行うことにより運転制御パラメータとの高い相関性を見いだせることを新たに知見し、例えば空気比をパラメータとするコンバスタ温度の性能評価関数を1次関数で表すことが可能となることを新たに知見した。ここで、統計的処理とは、瞬時データを積分しながら当該積分時間での時間平均値を求めていき、時間平均値に高い相関係数を見いだせる程度の最小の時間間隔(以下、最小時間間隔)を求め、当該最小時間間隔で瞬時データを平均化することをいう。
【0048】
本実施形態では、上記知見に基づき最小時間間隔を求めている。この統計的処理を行うアルゴリズムは特に限られるものではないが、例えば、時間平均値を瞬時データでの空気比に対する相関係数、次に2秒間の平均データでの空気比に対する相関係数、...と順に計算していき当該相関係数がピーク値となる時間間隔を最小時間間隔とすることができる。この場合、計算量を減らすために、例えば始めに100秒単位の平均データを用いて相関係数を比較し、ピーク値が存在すると考えられる100秒単位において相関係数を1秒単位で求めるようにしても良い。
【0049】
ここで、ガス化炉2により相関性が見出せる最小時間間隔は異なる。これは、ガス化の大きさ、形状が異なれば、たとえ決まった場所(コンバスタ出口等)であってもその地点間の距離等は異なるため当然である。よって、本実施形態の石炭ガス化炉運転制御方法では対象となるガス化炉2毎に予め統計的処理を行うための最小時間間隔を決定し、当該最小時間間隔毎に統計的処理を行うことが好ましい。尚、最小時間間隔はガス化炉毎に予め求めておいても、実際の運転開始後に上述の手法により求め、これを用いて統計的処理を行うようにしても良い。
【0050】
例えば、本実施形態におけるガス化炉2の場合、最小時間間隔として少なくとも600秒程度必要であることがわかった。ここで、装置上の制限によりデータ取得可能な最小限時間間隔は左右されるが、その場合でも、最小時間間隔を求めることが可能である。例えば、コンバスタ温度の場合は、1秒毎にデータを取得することが可能であったが、生成ガス発熱量の場合、本実施形態のガス化炉2では、5分(300秒)に1回しかデータが取れないという装置上の制限が存在した。この場合、300秒では相関が見いだせず、600秒で相関を見いだすことができた。また、900秒でも、相関を見いだすことができた。以上から、生成ガス発熱量の場合は少なくとも300秒〜600秒の間に相関が求められる最小時間間隔が存在すると考えられる。以下、本実施形態ではコンバスタ温度の最小時間間隔が少なくとも600秒程度必要であることを考慮し、コンバスタ温度および生成ガス発熱量の双方について相関を見出すことができる最小時間間隔を900秒とした場合について説明する。
【0051】
同様に、図8に給炭量比の時間変化を示す。最小時間間隔を900秒とすると給炭量比は、コンバスタ3とリダクタ4それぞれへ供給される微粉炭の流量変動にともない変動する。図9に生成ガス発熱量の時間変化(最小時間間隔=900秒)を、図10にリサイクルチャー量の時間変化(最小時間間隔=900秒)をそれぞれ示す。給炭量比同様、生成ガス発熱量も時間的に変動した。一方、リサイクルチャー量は、階段状に変化することがわかる。これは、チャーの供給が容積型フィーダの回転数によって制御されているためである。
【0052】
本実施形態では、以下に述べる性能評価関数は、統計的処理により求めた最小時間間隔でのオンラインデータの平均値(以下、運転実績データともいう)からの回帰分析(線形回帰)により求めることができる。即ち、以下に述べる性能評価関数は、実験装置、オンラインデータ等各種の運転条件により変動するものであり固定的なものではない。回帰分析には、本実施形態では最小二乗法を用いているがこれには限られず、例えば最尤推定法等を用いることも可能である。また、推定する性能評価関数は線形に限らず非線形の関数として推定しても良い。
【0053】
まず、コンバスタ温度の性能評価関数について説明する。図11に示すように、コンバスタ温度(TCOM)は空気比(λ)に比例して増加するため、コンバスタ温度の性能評価関数を空気比をパラメータとする1次式と定義可能である(数式5)。
<数5>
COM=549.8・λ+1350.85
【0054】
数式5で示される性能評価関数で説明可能なコンバスタ温度の変動の割合を表す決定係数は0.4692であり、推定式とオンラインデータの差(誤差)の分散は180.04であった。以上から、コンバスタ温度は、空気比と大きな相関があることがわかる。
【0055】
また、図12に示すようにコンバスタ温度(TCOM)は給炭量比(rt)に対しても相関が見られる。同様に空気比と給炭量比をパラメータとしたコンバスタ温度の分布を示す図12を見ると、同一空気比であっても給炭量比が低くなるほどコンバスタ温度が高くなる傾向が読み取れる。そこで、コンバスタ温度を、空気比と給炭量比の2元関数として定義できる(数式6)。
<数6>
COM=383.2・λ−297.9・rt+1612.45
【0056】
数式6で示される性能評価関数での決定係数は0.5788、誤差の分散は146.25となり、空気比のみをパラメータとした場合よりも高い相関が得られる。そこで、本実施形態では、コンバスタ温度の評価関数として空気比と給炭量比をパラメータとする関数としている。
【0057】
更に、得られた性能評価関数の誤差の傾向を見るため、図13に、瞬時データと性能評価関数との誤差の出現頻度をまとめたヒストグラムを示す。ここで、誤差がどのような分布となっているかは、統計的検定手法により推定することが可能である。検定手法としては、公知または新規の検定手段を用いることとすればよく特に限られるものではないが、本実施形態では、リリフォース検定(Lilliefors Test)やシャピロ・ウィルク検定(Shapiro-Wilk Test)等を用いることとしている。
【0058】
本願発明者等は、このヒストグラムで示される誤差の分布が正規分布に近似し、正規分と仮定することが可能であることを知見した。この誤差を正規確率グラフにプロットすると図14のようになり、誤差の分布が極めて正規分布に近いことがわかる。なお、誤差の分布を正規分布として仮定した場合の平均は0、標準偏差は11.82Kとなる。尚、本実施形態では例えば有意水準95%で正規分布と仮定することが可能であった。
【0059】
次いで、生成ガス発熱量の性能評価関数について述べる。図15に示すように生成ガス発熱量Hgasは空気比に比例して減少する傾向が見られる。そのため、生成ガス発熱量の性能評価関数を空気比をパラメータとする1次式として定義できる(数式7)。
<数7>
gas=−3.707・λ+4.780
【0060】
このとき決定係数は0.3751、誤差の分散は2.88であり、高い相関を得た。また、図16に生成ガス発熱量の誤差の出現頻度に対するヒストグラム、図17に示す誤差の正規確率グラフを示す。同様に生成ガス発熱量の誤差の分布は、極めて正規分布に近いことがわかる。誤差の分布を正規分布として仮定した場合の平均は0、標準偏差は0.11MJ/mNとなる。
【0061】
次いで、リサイクルチャー量の性能評価関数について述べる。図18に示すようにリサイクルチャー量Qcharは空気比に比例して減少する傾向が見られる。そのため、リサイクルチャー量の性能評価関数を空気比をパラメータとする1次式として定義できる(数式8)。
<数式8>
char=−117.3377・λ+80.5804
【0062】
このとき決定係数は0.3930、誤差の分散は11.19であり、高い相関を得た。また、図19にリサイクルチャー量の誤差の出現頻度に対するヒストグラム、図20に誤差の正規確率グラフを示す。同様にリサイクルチャー量の誤差の分布は、正規分布に極めて近いことがわかる。誤差の分布を正規分布として仮定した場合の平均は0、標準偏差は3.31kg/hとなる。
【0063】
このように本実施形態の石炭ガス化炉運転制御方法によれば、各性能評価指標について性能評価関数を推定することが可能となる。しかしながら、上述のように性能評価関数による推定値とオンラインデータの実測値の間には誤差が生ずるため、上記の各性能評価関数で各性能評価指標を100%の精度で推定することはできない。
【0064】
このため、運転条件の最適化に際しては、運転制約条件の限界値を超えることがないように推定式の誤差を考慮した運転制約条件の設定をしなければならない。しかしながら、運転中のすべての時間を通してに運転制約条件を満たすように運転する条件では、運転制約条件の限界値よりもかなり安全をとった点に条件を設定せざるを得なくなるため、ガス化炉の運転効率が悪くなってしまう。ここで、ごく制約違反の状態でもごく短時間であれば、すぐにスラグ詰まり、失火等に結びつくわけではない。
【0065】
そこで、本実施形態のガス化炉運転制御方法では、運転中に制約条件を違反する確率を危険率とし、当該危険率を運転制御パラメータに反映させることにより、安全性確保しつつガス化炉の運転の高効率化を図ることができる(危険率設定処理)。
【0066】
本実施形態では、危険率は正規分布のパーセント値として定義できる。上述のように性能評価関数による推定値とオンラインデータの実測値との差のヒストグラムは、正規分布と仮定できるため、例えば図21に示すように危険率を10%とした場合、即ち、1時間のうちの最大6分間は制約条件を違反した状態での運転を行う場合、その制限下限値は正規分布全体の積分値(=1.0)の10%(=0.1)の点として数学的に近似することが可能である。近似手法は公知または新規の近似手法を用いれば良く、特に限られるものではないが、例えば戸田の近似式等を用いることができる。
【0067】
このように、危険率を低くとれば、制約条件を満たした安全な運転が可能であるが、その性能は相対的に低くなる。一方、危険率を高くとれば、ガス化性能が向上し、ガス化炉を効率よく運転することが可能となる。しかしながら、危険率を高くとりすぎると、運転制約条件が破綻している運転時間が長くなり、スラグ詰まりや失火等が発生するおそれがある。危険率の設定は、運転者のプラント運用の考え方にもよるところがあるが、最低限の危険率の上限、下限を設定しておくことにより、運転の規制範囲を設定することができる。尚、本願発明者等の知見では、危険率は例えば10%程度以下にすることが好ましい。この場合、900秒間隔の運転点で2点連続で運転制約条件を違反する確率は1%以下に抑えることができるからである。
【0068】
本実施形態では以上説明した性能評価関数および危険率を用いて最適化問題の定式化を行い、当該最適化問題を解くことにより最適な運転制御パラメータを求めることとしている。
【0069】
本実施形態では、石炭ガス化炉の運転制約条件として、例えば次の3つの制約条件を用いることとしている。
【0070】
(1)コンバスタ温度下限値
コンバスタ3底部のスラグホールから石炭に含まれる灰分を溶融スラグ6として排出するため、コンバスタ3内の温度を灰の融点以上に維持する必要があるからである。尚、コンバスタ温度下限値は、例えば石炭灰の組成に基づいて決定される。
(2)生成ガス発熱量下限値
生成ガスはガスタービン燃焼器用の燃料として、要求仕様以上の発熱量をもつ必要があり、ガスタービン燃焼器での安定的な燃焼を維持する必要があるからである。尚、生成ガス発熱量下限値は、例えばガスタービン燃焼器の仕様に基づいて決定される。
(3)リサイクルチャー量上限値
石炭ガス化炉出口で捕集されるチャーは、全量がコンバスタ3へ再投入されるため、リサイクル系容量を超えるチャーを発生させないよう、石炭ガス化炉内で一定以上の反応率を維持する必要があるからである。尚、リサイクルチャー量上限値は、例えばリサイクル系容量に基づいて決定される。
【0071】
尚、運転制約条件は上述の例には限られず、例えば炉内炭素転換率下限値や冷ガス効率下限値等を運転制約条件とすることも可能である。例えば、上述のように炉内炭素転換率はリサイクルチャー量とは反比例の関係にあるのでリサイクルチャー量上限値にかえて炉内炭素転換率下限値を運転制約条件としても良い。また、冷ガス効率を運転制約条件に加えることにより、より厳しい制約条件下で最適化計算をおこなうことができ、更なる運転制御パラメータの高精度化を図ることができる。
【0072】
本実施形態では、最適化問題を信頼領域法(trust region method)を用いて解くこととしているが、最適化問題の解法は特に限られるものではなく、例えば遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)などの進化的計算手法や、ロバスト最適化(Robust optimization)法など他の解法を用いても良い。
【0073】
この最適化問題を解き最適な運転制御パラメータが決定すると、その計算結果は運転員に報告されるとともに、制御信号としてバーナ等プラント入力機器にフィードバックされ、最適な運転制御パラメータに基づいて運転が継続される。尚、求めた運転制御パラメータへは運転員が当該パラメータを入力して変更するようにしても、自動で変更されるようにしても良い。
【0074】
しかしながら、ガス化炉の運転状況の変化に追随することが必要であるため、本実施形態では最適化後であってもオンラインデータの瞬時データは継続して取得され、瞬時データに基づいて統計的処理も継続的に行われる。よって、初めに推定した性能評価関数に基づいた運転制御パラメータの設定では、危険率の制約を満たさなくなる可能性がある。そこで、本実施形態の石炭ガス化炉運転制御方法では、統計的処理を実行する毎に性能評価関数を推定し、例えば前回の処理(例えば900秒前)での性能評価関数との比較を行う性能評価関数の再構築処理を行うこととしている。
【0075】
性能評価関数の再構築処理は、前回の性能評価関数と今回の性能評価関数との数学的検定を行うことによる。本実施形態では、2つの母集団(2つの性能評価関数の値)がいずれも正規分布に従うと仮定し、その平均が等しいかどうかの検定であり、また異分散であるので、ウェルチ(Welch)のt検定を検定手法として用いている。尚、検定手法はこれには限られず、公知または新規の検定手法であっても良い。また、性能評価関数の再構築処理は必ずしも最小時間間隔毎に行う必要はなく、統計的処理を複数回実行する毎に、複数回前の性能評価関数との比較を行うようにしても良い。
【0076】
本実施形態では、ウェルチのt検定により2つの正規分布の平均が有意に異なると判断された場合、2つの正規分布は異なると判断している。2つの正規分布が異なる場合は、新たな性能評価関数に基づいて、上述のように危険率および最適化計算がなされる。これにより、パラメータを自律的に変更しながら効率の良い運転条件で運転を継続することが可能となる。また、運転を継続すればするほど精度の高い運転制御パラメータを求めることが可能となる。
【0077】
また、本実施形態の石炭ガス化炉運転制御方法では、上述の処理に併せて炉の排出口から硫化する溶融スラグ流を複数のCCDカメラにより異なる方向から撮影し、スラグの流動映像から運転状態を診断する処理を並列的に行うことが好ましい。この溶融スラグ流の監視処理は、特に限られるものではないが、例えば特開2006−118744号公報に記載の「溶融スラグ流の監視装置」を用いることができる。この溶融スラグ流の監視装置によれば、溶融スラグ流の3次元形状と表面温度分布を得ることができる。
【0078】
ここで、コンバスタ温度下限値の制約条件は上述のように使用する石炭に含まれる灰分の組成から融点を見積り設定される。しかしながら、例えば同じブランド名の石炭を使用していても実際の灰分組成は、ロットによって多少のズレがある場合がある。このような場合等において、最適化計算によってガス化炉の運転制御パラメータが最適値に設定されている場合であっても、スラグ流動の悪化が生じる場合がある。スラグ流動の悪化はスラグホールの閉塞に繋がるため、早急に処理を施さなければならない。ここで、スラグ流動が悪化するのはコンバスタ温度が低い、即ちコンバスタ温度下限値の設定が高すぎることを意味している。
【0079】
本実施形態では、このようにスラグ流動の悪化を検出した場合に、コンバスタ温度下限値を修正している。具体的には、設置されたCCDカメラから取得されるスラグ流動映像において流動状態の悪化パターンを検出した際には、スラグホールの固化閉塞を防止するため、自動でスラグ溶融バーナの点火を行うと共に、コンバスタ温度下限値の修正と最適化計算を行うものである。尚、溶融スラグ流の監視処理は、その他の処理とは独立に行い、図22で示すフローチャートで実行される処理への割り込み動作として行うものである。
【0080】
次に、本実施形態の石炭ガス化炉運転制御プログラムが実行する処理の詳細を図22のフローチャートを用いて説明する。
【0081】
本実施形態では、石炭ガス化炉の運転前の初期パラメータとして「ガス化炉負荷」、「コンバスタ温度下限値」、「生成ガス発熱量下限値」、「リサイクルチャー量上限値」、「危険率」を設定し、処理回数カウンタkの初期化(S1)を行う。
【0082】
次に、オンラインデータ取得処理(S2)を行う。具体的には、コンバスタ温度、生成ガス発熱量、リサイクルチャー量等のオンラインデータおよび空気比、給炭量比のデータを最適化演算装置13の補助記憶装置28等に記憶させる。
【0083】
本実施形態では、取得したオンラインデータを上述の知見に基づいて900秒に1回の割合で統計処理を行うようにしている。したがって、オンラインデータ取得処理は1秒に1回の瞬時データ(生成ガス発熱量は5分に1回のデータ)を取得し記憶装置に記憶し、900秒分のデータが記憶された時点でS3へ移り統計的処理を行うものである。
【0084】
統計的処理(S3)では、上記オンラインデータに基づいて900秒の平均値(運転実績データ)が算出され、当該データは補助記憶装置28内の運転実績データベース31に記憶される。
【0085】
次に、処理回数カウンタk=0であるかを判断する(S4)。即ち、初回の処理である場合(S4;Yes)は、性能評価関数の推定(S5)を行い、2回目以降の処理である場合(S4;No)は、性能評価関数の再構築(S11)を行う。
【0086】
性能評価予測関数の推定(S5)では、運転実績データベース31に記録された運転実績データを読み込んで、当該運転実績データから運転制御パラメータを説明変数とする性能評価関数を最小二乗法により推定する。
【0087】
次に、推定された性能評価関数の誤差計算(S6)を行う。具体的には、推定された性能評価関数のうちコンバスタ温度と生成チャー量の性能評価関数について過去の運転実績データに対する誤差を計算する。ここで、過去の運転実績データとは、例えば前回のループ処理での運転実績データを指す。
【0088】
性能評価関数の誤差計算は、過去の時刻tにおいてのコンバスタ温度をT、生成チャー量をQ、空気比をλ、給炭量比をrt、推定したコンバスタ温度の予測式をTcom(λ,rt)、生成チャー量の予測式をQchar(λ)とすると、時刻tでのコンバスタ温度の誤差EComは例えば数式9、チャー量の誤差ECharは例えば数式10で計算される。
<数9>
ECOM=Tcom(λ,rt)−T
<数10>
EChar=Qchar(λ)−Q
【0089】
次に、コンバスタ温度の誤差ECom、チャー量の誤差ECharに基づいて、コンバスタ温度予測関数とチャー生成量予測関数の誤差分布を推定する(S7)。本実施形態ではリリフォース検定(Lilliefors Test)により推定している。
【0090】
次に、危険率が許容確率以下となる設定値の決定を行う(S8)。具体的には、予測関数が推定された正規分布に従うものとして、コンバスタ温度が予め設定された危険率が許容確率以下となる、設定温度Tを求める。また、同様にチャーの生成量が危険率を超える確率が許容確率以下となるチャー量予測式の設定値Vを求める。尚、本実施形態では、設定温度Tおよび設定値Vは、誤差分布から戸田の近似式により求めることができる。
【0091】
求めたコンバスタ温度の設定値T、チャー量の設定値Vを用いて数式11に示す最適化問題を定式化する(S9)。
<数11>
目的:生成ガス発熱量最大化(maxHgas(λ,rt))
制約:生成チャー量≦V(Qchar(λ)≦V)
コンバスタ温度≧T(Tcom(λ,rt)≧T)
【0092】
上記の最適化問題を解くことで,最適な運転制御パラメータを決定する(S10)。最適な運転制御パラメータが決定すると、計算結果は運転員に報告されるとともに、制御信号としてバーナ等プラント入力機器にフィードバックされる。プログラムでは処理回数カウンタを+1して(S12)、システム終了が指示されていなければ(S13;No)、S2のオンラインデータ取得処理に戻ってループ処理を行うものである。
【0093】
初回を除く処理の場合は(S4;No)、性能評価関数の再構築(S11)を行う。性能評価関数の再構築は、前回のループ処理での性能評価関数と今回のループ処理での性能評価関数の母集団の比較を行うものである。本実施形態では、ウェルチのt検定により2つの正規分布の平均が有意に異なると判断された場合に2つの正規分布は異なると判断するようにしている。
【0094】
2つの正規分布が同じと判断された場合は、誤差が少なく前回までの性能評価関数に基づいた運転制御パラメータで運転を継続しても良いことを意味する。即ち、性能評価関数を再構築する必要がなく(S11;No)、処理回数カウンタを+1して(S12)、システム終了が指示されていなければ(S13;No)、S2のオンラインデータ取得処理に戻ってループ処理を行う。
【0095】
これに対し、2つの正規分布が異なると判断された場合は、前回までの性能評価関数に基づいた運転制御パラメータで運転を継続すると、危険率の制約を満たさなくなる可能性があることを意しているる。即ち、性能評価関数の再構築が必要となる(S11;Yes)ので、S5に移り性能評価関数の推定処理を行うものである。
【0096】
以上述べたループ処理が処理終了が指示される(S13;Yes)まで継続して実行される。以上が本実施形態の石炭ガス化炉運転制御プログラムが実行する処理の説明である。
【0097】
次に、溶融スラグ流の監視処理の一例を図23のフローチャートを用いて説明する。
【0098】
まず、スラグホール直下に設置された同期制御装置11により同期制御される3台のCCDカメラ7a,7b,7cからスラグの画像を取得し(S21)、画像処理により溶融スラグ流状態データ(3次元形状および表面温度分布)を求める(S22)。
【0099】
次に、この溶融スラグ流状態データを画像処理装置12の記憶装置等に予め構築された運転状態データベース(図示せず)とのサポートベクタマシーン等の学習器を用いたパターンマッチングによりスラグの流下状況の適・不適を判断する(S23)。
【0100】
スラグの流下状況が適の場合(S23;適)には、当該溶融スラグ流状態データを適正なデータとして学習アルゴリズムにより学習して運転状態データベースの更新を行い(S7)、スラグ画像取得(S21)へ戻る。
【0101】
一方、スラグの流下状況が不適の場合(S23;不適)には、上述のように運転制約条件のうちコンバスタ温度下限値を修正し(S24)、修正後の運転制約条件により最適化計算(数式11)を行い(S25)、運転制御パラメータを求める(S26)。この計算結果は運転員に報告されるとともに、制御信号としてバーナ等プラント入力機器にフィードバックされる。同様に、当該溶融スラグ流状態データを不適正なデータとして学習アルゴリズムにより学習して運転状態データベースの更新を行い(S27)、スラグ画像取得(S21)へ戻る。
【0102】
以上の溶融スラグ監視処理は図22に示した本実施形態の石炭ガス化炉運転制御プログラムが実行した処理と並列処理がなされる。本実施形態では、例えば1秒に1回のスラグ画像取得処理を実行することとし、スラグの流下状況が不適と判断された場合には、図22に示した処理に割り込み処理がなされるものである。
【0103】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。また、上述の演算式は一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0104】
例えば、石炭ガス化炉は図1、図3等に示した形状や構造に限定されるものではなく、他の形状や構造の炉においても本発明を適用することは可能である。また、石炭ガス化炉に本発明を適用した例について説明したが、本発明を適用可能な炉は、石炭ガス化炉に限定されるものではなく、他のガス化炉や、汚泥焼却灰を溶融してスラグ化する炉などであっても良い。
【0105】
また、石炭ガス化炉運転制御プログラムにおけるパラメータの設定方法も上述の例には限定されない。例えば、運転員が初期パラメータ(例えば、ガス化炉負荷)の設定が不適切であると判断した場合は、当該初期パラメータを変更したうえで以降の処理をおこなうようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】石炭ガス化炉運転制御装置の一例を示す構成図である。
【図2】最適化演算装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】石炭ガス化炉の概要を示す構成図の一例である。
【図4】石炭流量、ホッパ重量と経過時間との関係を示すグラフである。
【図5】ガス流量と経過時間との関係を示すグラフである。
【図6】ガス化炉各部のガス温度データと経過時間との関係を示すグラフである。
【図7】コンバスタ温度の瞬時データとそれに対応する空気比とをプロットしたグラフである。
【図8】給炭量比の900秒平均値の時間変動を示すグラフである。
【図9】生成ガス発熱量の900秒平均値の時間変動を示すグラフである。
【図10】リサイクルチャー量の900秒平均値の時間変動を示すグラフである。
【図11】コンバスタ温度のオンラインデータ(900秒平均値)とそれに対応する空気比をパラメータとするコンバスタ温度の性能評価関数を示すグラフである。
【図12】コンバスタ温度のオンラインデータ(900秒平均値)とそれに対応する空気比と給炭量比をパラメータとするコンバスタ温度の性能評価関数を示すグラフである。
【図13】コンバスタ温度の変動成分のヒストグラムである。
【図14】図13のヒストグラムを正規確率グラフで示したものである。
【図15】生成ガス発熱量のオンラインデータ(900秒平均値)とそれに対応する性能評価関数を示すグラフである。
【図16】生成ガス発熱量の変動成分のヒストグラムである。
【図17】図16のヒストグラムを正規確率グラフで示したものである。
【図18】リサイクルチャー量のオンラインデータ(900秒平均値)とそれに対応する性能評価関数を示すグラフである。
【図19】リサイクルチャー量の変動成分のヒストグラムである。
【図20】図19のヒストグラムを正規確率グラフで示したものである。
【図21】生成ガス発熱量の性能評価関数を示すグラフに危険率を説明するための正規分布を記載した図である。
【図22】石炭ガス化炉運転制御プログラムが実行する処理の概要を示すフローチャートである。
【図23】溶融スラグ流監視処理の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0107】
1 石炭ガス化炉運転制御装置
2 石炭ガス化炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中の石炭ガス化炉から少なくともコンバスタ温度、生成ガス発熱量およびリサイクルチャー量をオンラインデータとして取得するオンラインデータ取得処理と、前記石炭ガス化炉について、予め前記オンラインデータと運転制御パラメータとの相関を見出せる時間間隔を求めておき、前記オンラインデータを前記時間間隔で平均化する統計的処理と、該平均化されたオンラインデータに基づいて性能評価関数を推定する性能評価関数推定処理と、前記性能評価関数と前記オンラインデータとの誤差が正規分布に従うと仮定し、また予め設定された運転中に運転制約条件を違反する確率を危険率とし、前記正規分布および前記危険率に基づいて前記オンラインデータの設定値を決定する危険率設定処理と、前記生成ガス発熱量の最大化を目的とし、かつ前記設定値に基づいた制約式を前記運転制約条件とする最適化問題を解き前記運転制御パラメータを設定する運転制御パラメータ決定処理とを行うことを特徴とする石炭ガス化炉運転制御方法。
【請求項2】
前記性能評価関数を第一の性能評価関数、該第一の性能評価関数に基づく前記正規分布を第一の正規分布とし、該第一の正規分布と次回の性能評価関数推定処理で推定された第二の性能評価関数に基づく第二の正規分布とが有意に異なると判断された場合に、前記第一の性能評価関数を前記第二の性能評価関数に変更する性能評価関数の再構築処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の石炭ガス化炉運転制御方法。
【請求項3】
溶融スラグ流の流下状態を監視する溶融スラグ流監視処理を行い、スラグ詰まりの予兆を検出した場合には、前記運転制約条件を変更することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の石炭ガス化炉運転制御方法。
【請求項4】
運転中の石炭ガス化炉に設置された各測定機器から少なくともコンバスタ温度、生成ガス発熱量およびリサイクルチャー量をオンラインデータとして取得し記憶装置に記憶するオンラインデータ取得手段と、前記石炭ガス化炉毎に予め前記オンラインデータが運転制御パラメータに対して相関性を有するようになる時間間隔を記憶装置に記憶しておき、前記オンラインデータを前記時間間隔で平均化し記憶装置に記憶する統計的手段と、該平均化されたオンラインデータを読み出して回帰分析により性能評価関数を求めて記憶装置に記憶する性能評価関数推定手段と、前記性能評価関数の値と前記オンラインデータとの誤差のヒストグラムを求め、該ヒストグラムが正規分布に従うと仮定し、また予め設定された運転中に運転制約条件を違反する確率を危険率とし、前記正規分布および前記危険率に基づいて前記オンラインデータの設定値を決定し記憶装置に記憶する危険率設定手段と、前記生成ガス発熱量の最大化を目的とし、かつ前記設定値に基づいた制約式を前記運転制約条件とする最適化問題を解き前記運転制御パラメータを求める運転制御パラメータ決定手段とを備えることを特徴とする石炭ガス化炉運転制御装置。
【請求項5】
更に、前記性能評価関数を第一の性能評価関数、該第一の性能評価関数に基づく前記正規分布を第一の正規分布とし、該第一の正規分布と次回の性能評価関数推定処理で推定された第二の性能評価関数に基づく第二の正規分布とが有意に異なると判断された場合に、前記第一の性能評価関数を前記第二の性能評価関数に変更する性能評価関数の再構築手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の石炭ガス化炉運転制御装置。
【請求項6】
運転中の石炭ガス化炉に設置された各測定機器から少なくともコンバスタ温度、生成ガス発熱量およびリサイクルチャー量をオンラインデータとして取得し記憶装置に記憶させるオンラインデータ取得処理と、前記石炭ガス化炉毎に予め前記オンラインデータが運転制御パラメータに対して相関性を有するようになる時間間隔を記憶装置に記憶しておき、前記オンラインデータを前記時間間隔で平均化し記憶装置に記憶させる統計的処理と、該平均化されたオンラインデータを読み出して回帰分析により性能評価関数を求めて記憶装置に記憶させる性能評価関数推定処理と、前記性能評価関数の値と前記オンラインデータとの誤差のヒストグラムを求め、該ヒストグラムが正規分布に従うと仮定し、また予め設定された運転中に運転制約条件を違反する確率を危険率とし、前記正規分布および前記危険率に基づいて前記オンラインデータの設定値を決定し記憶装置に記憶させる危険率設定処理と、前記生成ガス発熱量の最大化を目的とし、かつ前記設定値に基づいた制約式を前記運転制約条件とする最適化問題を解き前記運転制御パラメータを出力する運転制御パラメータ決定処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする石炭ガス化炉運転制御プログラム。
【請求項7】
更に、前記性能評価関数を第一の性能評価関数、該第一の性能評価関数に基づく前記正規分布を第一の正規分布とし、該第一の正規分布と次回の性能評価関数推定処理で推定された第二の性能評価関数に基づく第二の正規分布とが有意に異なると判断された場合に、前記第一の性能評価関数を前記第二の性能評価関数に変更させる性能評価関数の再構築処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項6に記載の石炭ガス化炉運転制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図12】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−111077(P2008−111077A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296064(P2006−296064)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年5月30日 財団法人 電力中央研究所発行の「電力中央研究所報告 M05002」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月5日 社団法人 電力学会電子・情報システム部門大会委員会発行の「平成18年電力学会 電子・情報システム部門大会講演論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年9月15日 社団法人 日本機械学会発行の「2006年度年次大会 講演論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月 財団法人 電力中央研究所・エネルギー技術研究所発行の「平成17年度(2005年度)主な研究成果の概要」に発表
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】