説明

石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法

【課題】火力発電所の石炭ボイラの灰中未燃分の増加は、定期点検後に火炉での熱吸収が増大し燃焼温度が下がることにより発生しやすく、従来、ユニット運転策として操作手順や判断基準がないまま、燃焼性を良くするため酸素濃度の設定を増やしたり、ミルの運転台数を増やして対応していた。そのため、ボイラ効率の低下や発電所内動力の増加や灰の有効利用ができない等の課題があった。
【解決手段】対象ユニットの灰中未燃分の分析結果1を基準値と比較する手段2と、基準値を超えた場合にユニットを構成するボイラの未燃分平均値を基準値と比較する手段4と、平均値が基準値を超えた場合に酸素供給を最大設定値に増大操作する手段8と、酸素供給を増大操作しても基準値を上回る場合にミル運転台数を増加する手段11とからなる石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所の石炭ボイラの灰中未燃分の増加は、定期点検後にボイラチューブ内及び炉内がきれいであるため火炉での熱吸収が良くなり、燃焼温度が下がることにより発生しやすく、従来、定期点検後に灰中未燃分が増大した場合、ユニット運転策として、これといった操作手順や判断基準がないまま、燃焼性を良くするためO2設定を増やしたり、ミルの運転台数を増やして粉砕性を増大して運転して未燃分を実測して低減を確認しながら、対応していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、未燃分低減の操作手順が確立していなかったため、ボイラ効率の低下や発電所内動力の増加や灰の有効利用ができない等の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は、請求項1に記載のように、対象ユニットの灰中未燃分の分析結果を基準値と比較する手段と、基準値を超えた場合にユニットを構成するボイラの未燃分平均値を基準値と比較する手段と、平均値が基準値を超えた場合に酸素供給設定値を最適設定値から最大設定値に増大操作する手段と、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作しても灰中未燃分が基準値を上回る場合にミル運転台数を増加する手段とからなる石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法を提供するものである。
【0005】
また、本発明は、請求項2に記載のように、対象ユニットの灰中未燃分の分析結果を基準値と比較する手段と、基準値を超えた場合にユニットを構成するボイラの未燃分平均値を基準値と比較する手段と、平均値が基準値を超えた場合に酸素供給設定値を最適設定値から最大設定値に増大操作する手段と、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作して灰中未燃分が基準値を下回る場合に酸素供給設定値を最適設定値に段階的に漸減操作する手段とからなる石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、請求項3に記載のように、対象ユニットの灰中未燃分の分析結果を基準値と比較する手段と、基準値を超えた場合にユニットを構成するボイラの未燃分平均値を基準値と比較する手段と、平均値が基準値を超えた場合に酸素供給設定値を最適設定値から最大設定値に増大操作する手段と、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作しても灰中未燃分が基準値を上回る場合にミル運転台数を増加する手段と、ミル運転台数増加操作して灰中未燃分が基準値を下回る場合にミル運転台数を減少する手段とからなる石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、請求項4に記載のように、請求項3に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、ミル運転台数を減少する手段により灰中未燃分が基準値を下回る場合に酸素供給設定値を最大設定値から漸減操作する手段を有する石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、請求項5に記載のように、請求項1乃至4に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、灰中未燃分の基準値がほぼ5%である石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、請求項6に記載のように、請求項1乃至5に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、最適酸素供給設定値が3.3乃至3.4%である石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、請求項7に記載のように、請求項1乃至6に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、最大酸素供給設定値がほぼ3.6%である石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、請求項8に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、酸素供給設定値を最大酸素供給設定値の3.6%から0.1%ずつ最適酸素供給設定値に向かって下げていくことからなる石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、請求項9に記載のように、請求項1乃至8に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、最適ミル運転台数が5台で、増加ミル運転台数が6台である石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法によれば、対象ユニットの灰中未燃分の分析結果を基準値と比較する手段と、基準値を超えた場合にユニットを構成するボイラの未燃分平均値を基準値と比較する手段と、平均値が基準値を超えた場合に酸素供給設定値を最適設定値から最大設定値に増大操作する手段と、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作しても灰中未燃分が基準値を上回る場合にミル運転台数を増加する手段とからなる構成を有することにより、随時に行われる対象ユニットの灰中未燃分の分析結果を基準値と比較し、基準値を超えた場合に、ユニットを構成する個々のボイラの一定測定期間の未燃分平均値を基準値と比較し、越えてない場合は測定を継続して様子を見るだけでよいが、平均値が基準値を超えた場合には酸素供給設定値を最適設定値から最大設定値に増大操作することによって燃焼性を良くして未燃分の減少を図り、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作しても灰中未燃分が基準値を上回る場合には、ミル運転台数を増加することによって、石炭のミル粉砕性を良くして、未燃分の減少を図ることができるから、石炭ボイラの灰中未燃分増加時に、早期の未燃分低減を達成することができる効果がある。
【0014】
また、本発明は、請求項2に記載のように、対象ユニットの灰中未燃分の分析結果を基準値と比較する手段と、基準値を超えた場合にユニットを構成するボイラの未燃分平均値を基準値と比較する手段と、平均値が基準値を超えた場合に酸素供給設定値を最適設定値から最大設定値に増大操作する手段と、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作して灰中未燃分が基準値を下回る場合に酸素供給設定値を最適設定値に段階的に漸減操作する手段とからなる構成を有することにより、灰中未燃分が基準値を超えないように酸素供給設定値を最適設定値に段階的に漸減操作することができる効果がある。
【0015】
また、本発明は、請求項3に記載のように、対象ユニットの灰中未燃分の分析結果を基準値と比較する手段と、基準値を超えた場合にユニットを構成するボイラの未燃分平均値を基準値と比較する手段と、平均値が基準値を超えた場合に酸素供給設定値を最適設定値から最大設定値に増大操作する手段と、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作しても灰中未燃分が基準値を上回る場合にミル運転台数を増加する手段と、ミル運転台数増加操作して灰中未燃分が基準値を下回る場合にミル運転台数を減少する手段とからなる構成を有することにより、灰中未燃分が基準値を超えないようにミル運転台数を最適台数に減少操作することができる効果がある。
【0016】
また、本発明は、請求項4に記載のように、請求項3に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、ミル運転台数を最適台数に減少しても灰中未燃分が基準値を下回る場合に、酸素供給設定値を最大設定値から最適設定値に段階的に漸減操作する手段を有することにより、石炭ボイラの灰中未燃分増加時に、早期に未燃分を適正な運転状態で適正な基準値に低減することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図示する実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1において、ステップ1は、対象ユニットの電気集塵装置の灰中の未燃分の分析結果を、ステップ2の基準値比較手段に入力する分析値入力手段である。
実施例の場合、基準値はほぼ5%であり、ステップ2の基準値比較手段において、分析値が5%未満であれば、ステップ2の判定はNOとなり、ステップ3の最適酸素濃度による最適ミル運転台数によるボイラの運転が継続することとなる。実施例の場合、火炉内の最適酸素濃度は3.3〜3.4%であり、最適ミル運転台数は5台である。
【0019】
ステップ2の基準値比較手段において、分析値が5%以上であれば、ステップ2の判定はYESとなり、ステップ4の平均値比較手段により個々のボイラの灰中未燃分の平均値を基準値と比較することとなる。
ステップ4の平均値比較手段において、平均値が5%未満であれば、ステップ4の判定はNOとなり、ステップ5の様子見手段により最適酸素濃度による最適ミル運転台数によるボイラの運転を継続し、燃料の石炭の状態による影響を考慮して1週間程度様子を見ることとなる。
【0020】
その後、ステップ6の対象ユニットの未燃分の分析値を基準値と比較する基準値比較手段により、分析値が5%未満であれば、ステップ2の判定はNOとなり、ステップ7の最適酸素濃度による最適ミル運転台数によるボイラの運転が継続することとなる。
また、先のステップ4の平均値比較手段において、平均値が5%以上であれば、ステップ4の判定はYESとなり、ステップ8の酸素濃度最大操作手段により、酸素濃度を3.6%に設定し、燃焼性を良好にする。
【0021】
ステップ8において、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作して後、ステップ9の対象ユニットの未燃分の分析値を基準値と比較する基準値比較手段により、分析値が5%未満であれば、ステップ9の判定はNOとなり、ステップ10の酸素供給設定値を最適設定値に段階的に漸減操作する手段により、1週間程度のサイクルでO2を最適酸素濃度に向けて0.1%ずつ漸減して最適ミル運転台数によるボイラの運転を継続する。
また、ステップ9の基準値比較手段により、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作しても灰中未燃分が基準値5%を上回る場合には、ステップ9の判定はYESになり、ステップ11のミル運転台数増大手段により、この実施例の場合、ミル運転台数を最適の5台から6台に増大して、ボイラに供給する石炭のミル粉砕性を良好にする。
【0022】
その後、ステップ12の対象ユニットの未燃分の分析値を基準値と比較する基準値比較手段により、分析値が5%未満であれば、ステップ12の判定はNOとなり、ステップ13のミル運転台数を減少する手段により、ミル運転台数を最適台数の5台に減少操作し、ステップ14の対象ユニットの未燃分の分析値を基準値と比較する基準値比較手段により、分析値が5%未満であれば、ステップ14の判定はNOとなり、ステップ10の酸素供給設定値を最適設定値に段階的に漸減操作する手段により、1週間程度のサイクルでO2を最適酸素濃度に向けて0.1%ずつ漸減して最終的には、最適酸素濃度3.3〜3.4%で最適ミル運転台数5台によるボイラの運転を継続することができる。
ここで、ステップ12又は14において、分析値が5%以上で有れば、ステップ11に戻してミル台数を増大した6台での運転を繰り返し、ステップ12、13、14を経てステップ10の最適酸素濃度3.3〜3.4%で最適ミル運転台数5台によるボイラの運転を継続することを目指すこととなる。
【0023】
また、先のステップ6の平均値比較手段において、平均値が5%以上であれば、ステップ6の判定はYESとなり、ステップ15の酸素濃度最大操作手段により、酸素濃度を3.6%に設定し、燃焼性を良好にする。
ステップ15において、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作して後、先のステップ8より2ヶ月から4ヶ月余計にかかる場合があるが、ステップ16の対象ユニットの未燃分の分析値を基準値と比較する基準値比較手段により、分析値が5%未満であれば、ステップ16の判定はNOとなり、ステップ17の酸素供給設定値を最適設定値に段階的に漸減操作する手段により、1週間程度のサイクルでO2を最適酸素濃度の3.3%に向けて0.1%ずつ漸減して最適ミル運転台数によるボイラの運転を継続する。
【0024】
ステップ16の基準値比較手段において、分析値が5%以上であれば、ステップ16の判定はYESとなり、ステップ18の平均値比較手段により個々のボイラの灰中未燃分の平均値を基準値と比較することとなり、平均値が基準値の5%未満であれば、ステップ15の酸素供給設定値を最大設定値に増大する操作手段に戻る。
【0025】
ステップ18の平均値比較手段により、平均値が5%を越える場合には、ステップ18の判定はYESとなり、先のステップ11のミル運転台数増大手段により、この実施例の場合、ミル運転台数を6台に増大して、ボイラに供給する石炭のミル粉砕性を良好にすることとなる。その後、ステップ12、13、14を経てステップ10の最適酸素濃度3.3〜3.4%で最適ミル運転台数5台によるボイラの運転を継続することを目指すこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明方法における一実施例のフロー図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象ユニットの灰中未燃分の分析結果を基準値と比較する手段と、基準値を超えた場合にユニットを構成するボイラの未燃分平均値を基準値と比較する手段と、平均値が基準値を超えた場合に酸素供給設定値を最適設定値から最大設定値に増大操作する手段と、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作しても灰中未燃分が基準値を上回る場合にミル運転台数を最適運転台数から増加する手段とからなる石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法。
【請求項2】
対象ユニットの灰中未燃分の分析結果を基準値と比較する手段と、基準値を超えた場合にユニットを構成するボイラの未燃分平均値を基準値と比較する手段と、平均値が基準値を超えた場合に酸素供給設定値を最適設定値から最大設定値に増大操作する手段と、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作して灰中未燃分が基準値を下回る場合に酸素供給設定値を最適設定値に段階的に漸減操作する手段とからなる石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法。
【請求項3】
対象ユニットの灰中未燃分の分析結果を基準値と比較する手段と、基準値を超えた場合にユニットを構成するボイラの未燃分平均値を基準値と比較する手段と、平均値が基準値を超えた場合に酸素供給設定値を最適設定値から最大設定値に増大操作する手段と、酸素供給設定値を最大設定値に増大操作しても灰中未燃分が基準値を上回る場合にミル運転台数を増加する手段と、ミル運転台数増加操作して灰中未燃分が基準値を下回る場合にミル運転台数を最適運転台数に減少する手段とからなる石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法。
【請求項4】
請求項3に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、ミル運転台数を減少する手段により灰中未燃分が基準値を下回る場合に酸素供給設定値を最大設定値から最適設定値に段階的に漸減操作する手段を有する石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、灰中未燃分の基準値がほぼ5%である石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、最適酸素供給設定値が3.3乃至3.4%である石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、最大酸素供給設定値がほぼ3.6%である石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、酸素供給設定値を最大酸素供給設定値の3.6%から0.1%ずつ最適酸素供給設定値に向かって下げていくことからなる石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法において、最適ミル運転台数が5台で、増加ミル運転台数が6台である石炭ボイラの灰中未燃分増加時におけるユニット対応操作方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−175483(P2008−175483A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10249(P2007−10249)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】