説明

石鹸

【課題】商品訴求力を有する石鹸を提供する。
【解決手段】希少性および由来の正統性を兼ね備えた高級食材であるスイゼンジノリを石鹸に含有させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整肌に用いる石鹸に関する。
【背景技術】
【0002】
石鹸は、本来的には人体に付着した油や塵埃を洗浄することを目的とした界面活性剤であるが、近年では、肌を整えることを目的とした化粧石鹸や、殺菌消毒を目的とした薬用石鹸などの機能性を謳った商品が供給されるようになってきている。このような機能性石鹸として、例えば特許文献1には、コラーゲンやミネラルを含有する石鹸が開示されている。また特許文献2には、漢方の有効成分を含有する石鹸が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−321346号公報
【特許文献2】特開2005−263923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの機能性石鹸は通常の石鹸よりも高額であるにもかかわらず多くの消費者に受け入れられたため、多数の事業者が競うように新商品を市場に投入するようになった。その結果、市場は多種多様な機能性石鹸で溢れるかえることになり、もはや単に高級感や機能性を謳うだけでは他社商品との差別化ができない状況になっている。一般に高額商品の市場においては、高級で高品質であることは当然の前提であって、これらに加えて、商品もしくは商品に含まれる成分の希少性、さらには由来の正統性が商品購入の決め手となることが多い。従って、機能性石鹸の市場においても、希少性および由来の正統性を備えた成分を含有する石鹸は商品訴求力を発揮すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するため、スイゼンジノリを含有することを特徴とする石鹸を提供する。
【0006】
スイゼンジノリは、熊本市にある水前寺成趣園に自生していたことから命名された淡水藍藻類である。現在では福岡県朝倉市の黄金川のみで自生が確認されており、環境省が定める絶滅危惧種に指定されている。黄金川で採取されるスイゼンジノリは、「川茸(登録商標)」や「川苔」と呼ばれ、高級食材として全国の料亭などで使用されている。商品としてのスイゼンジノリは、乾燥させ、板状に加工された状態で流通しており、本発明においても板状のスイゼンジノリを細かく粉砕したものを使用している。
【0007】
スイゼンジノリに含まれる多糖類「サクラン」は高い吸水性に特長がある。従って、スイゼンジノリを含有する石鹸で身体を洗ったときには、一般の石鹸を使用したときに起こりがちな肌のツッパリ感やカサカサ感がなく、しっとりとした保湿感を体感することができる。またスイゼンジノリには鉄分やカルシウム、マグネシウムなどのミネラルやビタミンが他の藻類に比べて豊富に含まれており、優れた整肌効果を体感することができる。
【0008】
石鹸は、原液を流し込んだ型から取り出した後に少なくとも2週間、常温にて熟成させることにより、スイゼンジノリを素地に溶け込ませたものが好ましい。これにより、製造直後は切片状に分散していたスイゼンジノリが石鹸全体に行き渡るようになり、石鹸のどの部分を使用しても整肌効果を体感することができるようになる。
【発明の効果】
【0009】
希少性および由来の正統性を兼ね備えた高級食材であるスイゼンジノリを含有させることにより、商品訴求力のある石鹸を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態の石鹸は、基本的には石鹸の素地にスイゼンジノリを溶け込ませたものである。石鹸の素地は、一般的に知られた石鹸の製法、例えば、釜炊き法、釜炊き塩析法、中和法、冷間法(コールド製法)などにより製造することができる。このうち釜炊き法と冷間法は、製造の過程で生成されるグリセリンを排除しないため、保湿効果の高い素地を製造することに適しており、スイゼンジノリの持つ保湿効果と相まって整肌効果の高い石鹸を製造することができる。特に冷間法は、熱を加えずに常温で熟成させるため、高温加熱を行う他の製法に比べて原材料となる油脂の劣化が少ないという利点がある。
【0011】
ここでは冷間法による石鹸の製造方法について詳細に説明する。石鹸の原材料には、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、油脂、水、スイゼンジノリを使用する。石鹸600gに対し、苛性ソーダ61g、油脂500g、水190g、スイゼンジノリ2gを使用した。
【0012】
最初に、苛性ソーダを水に溶かし、苛性ソーダ水溶液を製造する。次に、油脂および苛性ソーダ水溶液をそれぞれ40度前後になるまで加熱し、油脂を泡立て器で攪拌しながら苛性ソーダ水溶液を少量ずつ加える。苛性ソーダ水溶液の全量を加えたら、苛性ソーダ水溶液と油脂の混合液の温度を保ちながら1時間程度、泡立て器で攪拌する。
【0013】
次に、細かく粉砕したスイゼンジノリを混合液に加え、約10分間、泡立て器で攪拌する。以上の過程により、石鹸の原液が完成する。完成した石鹸の原液は、型に流し込み、保温箱に丸一日格納する。その後、保温箱から取り出し、型入れしたまま一日、さらに型から取り出して一日熟成させる。
【0014】
最後に、使いやすい大きさや形に裁断し、さらに4週間乃至6週間熟成させる。この間、約2週間程度でスイゼンジノリが溶解し、素地に溶け込む。完成した石鹸は、グリセリンとスイゼンジノリの相乗効果により、高い保湿効果を持つ化粧石鹸として使用することができる。
【0015】
以上の製法により製造された石鹸を50代乃至70代の男女数名に実際に使用してもらったところ、次のような効果が確認できた。
【0016】
肌に対しては、シミ、くすみ、しわ、たるみが減少もしくは抑制された。また肌を白くする美白効果が確認された。さらにアトピーなどのアレルギー体質の方にも使用感が好評であった。
【0017】
男性の場合、髭剃りに使用すれば、剃刀の滑りがよく、爽快な剃り味を体感できた。また剃刀負けにも効果的であった。さらには髭の伸びが遅くなったとの報告もあった。
【0018】
洗髪に使用したところ、髪の毛のからみやごわつきがなく、リンスを使用する必要がなくなった。またふけやかゆみも軽減された。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の実施の形態の石鹸は、その高い保湿効果により、入浴、洗顔、洗髪などに好適に使用することができるという優れた機能性に加え、希少性と由来の正統性を兼ね備えた高級化粧石鹸として、スイゼンジノリの新たな需要を生み出し、新たな産業となり得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイゼンジノリを含有することを特徴とする石鹸。
【請求項2】
型から取り出した後に少なくとも2週間、常温にて熟成させることにより、前記スイゼンジノリを素地に溶け込ませたことを特徴とする請求項1に記載の石鹸。

【公開番号】特開2012−246443(P2012−246443A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121060(P2011−121060)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(511039647)
【出願人】(511039658)
【出願人】(511039669)
【出願人】(511039393)
【Fターム(参考)】