説明

研削盤

【課題】 機械設置のための平面視広さが比較的小さく押さえられて工場内の省スペース化を図る研削盤を提供する。
【解決手段】 ベッド100から上方へ突出されたコラム101と、コラムの上側軸支持部101bとこれの直下の下側軸支持部12との間に配置され上下一対の上下向き支軸11、12を介し該支軸回りの旋回可能に形成されたテーブル102と、該テーブル上に設けられワークを主軸23を介し該主軸と同心の回転可能に支持するワーク保持手段103と、該ワーク保持手段に保持されたワークを研削するための砥石43を回転可能に支持した砥石機構部104とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外径研削に使用される研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
研削盤は、長さ方向を水平に配置されたワークの両端面を主軸センタと心押センタとで挟み付けて支持した状態のワークを、水平の回転軸を持つ研削砥石により研削する。このような研削盤を床面に設置する場合、加工径が10mm以下、加工長が100mm以下の加工能力のものであっても、床面上の広さは、現状では、間口及び奥行きの何れも1m以上であることが必要とされており、工場内の省スペース化を阻むものとなっている。
【0003】
砥石軸の軸方向や、両端面を主軸センタと心押センタ配置方向を水平面内としないで、一部に垂直軸を取り入れた従来の研削盤として、例えば特許文献1、2及び3などに開示されたようなものが存在している。
【0004】
特許文献1及び2に開示された研削盤は、ベッドから上方へ突出されたコラムと、このコラム上に上下移動可能に設けられた砥石台と、砥石台上に上下向きの砥石軸を介して回転可能に設けられた砥石と、ベッド上で前後方向へ移動されるテーブルと、テーブル上に形成されワークを上下向きの主軸を介し回転可能に支持するワーク保持手段とを備えている。
【0005】
また、特許文献3に開示された研削盤は、主軸センタと心押センタを上下向きに配置し、水平向きの砥石軸を砥石送りテーブルにより前後(x方向)、上下(Y方向)に移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−16950号公報
【特許文献2】特開平5−212658号公報
【特許文献3】特開2004−249438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工場内の作業現場の可視化を促進して工程管理などの容易化を図る上での「見える化」、及び安全性などの見地から機械高さは1.5m以下であることが望ましいとされている。
【0008】
上記各特許文献の研削盤は、一部の軸に垂直の軸を取り入れてはいるが、特許文献1、2の研削盤では、コラム上に砥石台を設けるために高さが高くなる。また、特許文献3の研削盤では、砥石送りテーブルが前後(x方向)が長くなり、小型化は困難である。
【0009】
このような状況下、本発明は、機械設置のための平面視広さが比較的小さく押さえられて工場内の省スペース化が図ることができる研削盤を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る研削盤は、ベッドに形成され、上下向き支軸を支持する下側軸支持部と、前記上下向き支軸回りの旋回可能に形成されたテーブルと、前記テーブル上で前記上下向き支軸から横方へ離間した位置に設けられた立向きの主軸と、前記主軸にワークを支持するワーク保持手段と、前記ベッド上の前記支軸とは水平方向に離間した位置に配設され、立向きの砥石軸により砥石を回転可能に保持する砥石機構部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワークが上下向きの主軸と同体状に回転されつつ研削されるようになる立型としたこと、テーブルが上下向き支軸回りへ旋回されることで砥石とワークが近接離反される構成としたことにより、機械設置のための平面視広さを従来の研削盤よりも小さく抑えることが可能となり、工場内の省スペース化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る研削盤を正面から見た説明図である。
【図2】上記研削盤を上方から見た説明図である。
【図3】上記研削盤を左方から見た説明図である。
【図4】上記研削盤を右方から見た説明図である。
【図5】図1中の主軸台周辺を拡大した説明図である。
【図6】図3中の心押台周辺を拡大した説明図である。
【図7】上記研削盤に両センタ方式でワークを保持させた状態を示す説明図である。
【図8】上記研削盤の砥石機構部などの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る研削盤の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1〜図8は本発明に係る研削盤の実施例を示すものである。
図1及び図2において、100はベッド、101はコラム、102はテーブル、103はワーク保持手段、104は砥石機構部、そして105は制御盤である。
【0015】
以下、各部について詳述する。
ベッド100は床面a1に定置されるもので全体を略方形箱体とされており、底面部1、前面部2、左側面部3、右側面部4及び後面部5を備えている。前面部2の下部の左右箇所には図3などにも示すように凹み部b1、b2が形成されている。各凹み部b1、b2の下側ベッド部位にはジャッキボルト6が螺合され、ジャッキボルト6の下端には床面a1に支持される座金7が係着され、ジャッキボルト6の長さ途中にロックナットが螺合されている。図3及び図4に示すように、後面板5の下部の左右箇所には付加片8が突設され、この付加片8にジャッキボルト6が螺合され、ジャッキボルト6の下端には床面a1に支持される座金7が係着され、ここでもジャッキボルト6の長さ途中にロックナットが螺合されている。ベッド100の上面板9の略中央位置でテーブル102の直下位置となる範囲にテーブル102に対応する大きさの透孔b3が形成されている。この透孔b3の直下である底面板1部分の上面に下側軸支持部c1を構成した軸受筒10がボルトを介して垂直に固定されている。この軸受筒10の高さ途中の左右箇所に図3に示すような突部10aが形成されている。
【0016】
コラム101はベッド100の上面板9の後部上面から垂直上方へ突出され全体を逆L字形とされており、垂直な柱部101aと水平な張り出し部101bとを備えている。張り出し部101bの前端部は上側軸支持部c2とされていて、底面板1上の下側軸支持部c1の真上箇所に、図3に示すように上下向き直支軸11を下側へ張り出した状態に固設されている。
【0017】
図3などにも示すように、テーブル102は、下側軸支持部c2と上側軸支持部c1との間に配置されており、上側水平部102aと下側水平部102bとこれら水平部102a、102bを結合した連結部102cとを備えている。下側水平部102bの下面で前後長さ途中箇所には上下向き支軸12が旋回軸として下方へ張り出した状態に固設されている。また上側水平部102aの前端寄り箇所には上下向きの軸挿入孔d1が形成されており、この軸挿入孔d1内に上側の上下向き支軸11が上方から挿入されている。そして上下向き支軸11と軸挿入孔d1との間に上下向き支軸11に作用するラジアル力を支持する転がり軸受13が装設されている。一方、下側の旋回軸12と軸受筒10との間の上部には上下向きのスラスト力を支持する転がり軸受14が装設され、下部には旋回軸12に作用するラジアル力を支持する転がり軸受15が設けられている。これら転がり軸受13、14、15はテーブル102が旋回軸12及び上下向き支軸11回りの方向Xへ旋回するのを円滑化させる上で寄与するものである。また、上下向き支軸11を上下に離間した一対の上下側軸支持部c1、c2に両支持しているので、テーブル102を支える構造的な剛性が高められており研削精度を向上させている。
【0018】
テーブル102の下側水平部102bと旋回軸12との間にはテーブル102をX方向へ旋回させるためのテーブル駆動部16が形成されている(尚、ここでX方向とは、砥石とワークとの間の距離を遠近させる方向である。)。テーブル駆動部16はサーボモータ17とウオーム歯車18を備えている。サーボモータ17は軸受筒10と同体状に固定された箱状ケース19に固定され出力軸を左右向きとされている。ウオーム歯車18はウオーム18aとこれに噛み合わされた円環状のウオームホイール18bとからなっている。ウオーム18aはサーボモータ17の出力軸と結合され箱状ケース19に回転自在に支持された回転軸20の長さ途中にこの回転軸20と同体に形成されている。テーブル102の下側水平部102bの下面と旋回軸12の上端部の鍔部との間には環状支持部材21が配置されている。この環状支持部材21は旋回軸12にボルトで固定されており、この環状支持部材21の下面にウオームホイール18bがボルトで固定されている。
【0019】
上記ワーク保持手段103は、テーブル102の下側水平部102bの前部からなる主軸台22を基礎としており、これの上部に主軸23、主軸センタ24、主軸駆動部25、心押台26及び心押センタ27を備えている。図5に示すように、主軸台22の上面には主軸23を回転可能に配置するために上面の開放された凹み部e1が形成されており、この凹み部e1の左側には主軸回転駆動部25を配置するための切欠部e2が形成されている。そして主軸台22の右側面にはドレッサ22aが右方への突出状に設けられており、その先端が研削要部である。
【0020】
主軸23は環状体であって、上面の半径途中位置に上方へ張り出した状態のピン部材23aが半径方向の位置調整可能且つ脱着可能に固設されている。この主軸23は主軸台22の凹み部e1内に固定状に嵌着された軸受筒28の内周面の上下に配設された転がり軸受29a、29bを介して一定高さ位置での回転自在に装設された回転支持軸23bに支持され、転がり軸受29cを介して、この回転支持軸23bと同心状且つ回転自在に装着されている。一方、主軸回転駆動部25は上下向きとされたサーボモータ30を切欠部e2に固定し、このサーボモータ30の出力軸に固定された原動プーリ31と、主軸23の下部に固定された従動プーリ32との間に無端状の伝動ベルト33を掛け回した構成とされている。30aはサーボモータ30の保護カバーである。
【0021】
回転支持軸23bの中心には主軸23と同心の透孔が形成されており、この透孔の上部は上拡がりの雌テーパ状となっている。この透孔の上部に主軸センタ24の雄テーパ状のシャンク部が密接状に嵌着され且つ円錐状先部を上側とされて抜き外し可能な固定状態となっている。この固定状態では主軸センタ24は主軸23と同心配置となっている。主軸23の上端面上にはワークを主軸23と同体状に固定させるための種々のワーク固定具34が主軸センタ24を取り囲むように装着される。
【0022】
心押台26は図6にも示すように、テーブル102の上側水平部102aの前端面に上下位置調整機構35を介して一定範囲内の上下位置変更調整可能に装設されている。心押台26上には油圧シリンダなどのセンタ移動手段36を介して上下移動される出力軸37が設けられ、該出力軸37に心押センタ27が同心状に装着されている。心押台26の上部にはセンタ移動手段36を作動させるための操作ハンドル38が設けられている。心押センタ27は、操作ハンドル38を横向き軸回りへ旋回させることにより出力軸37と共に上下方向へ移動されるものとなっている。なお、39は心押センタ27を包囲するために出力軸37の先部と心押台26の固定部前面との間に装着された伸縮変形可能な筒状のゴムカバーである。
【0023】
砥石機構部104はベッド100上の右側に形成されており、図4にも示すようにガイド手段40、砥石台41、砥石軸42、砥石43、砥石回転駆動手段44及び砥石上下駆動手段45を備えている。ガイド手段40は、ベッド100から上方へ平行に突出された2本の円柱状体46a、46bを具備したものとなっており、2本の円柱状体46a、46bは剛性を増大させるため上端間を連結部材47で結合されている。砥石台41は円柱状体46a、46bのそれぞれに摺動可能且つ密接状に外嵌された上下向きの2つの円筒孔f1、f2を具備しており、砥石軸42は砥石台41の左寄り箇所に形成された上下向きの軸孔f3内に挿通され、軸孔f3内の上下箇所に設けられた転がり軸受48a、48bを介して砥石台41の一定高さ位置で回転可能に支持されており、上端には砥石43を固定する機構が形成される。砥石43はプレーン形式或いはアンギュラ形式など適宜なものが使用される。そして砥石台41の上部には砥石43の左端側を除く外周囲を包囲した砥石カバー49が固定されている。
【0024】
砥石回転駆動手段44は砥石台41の後面に電動モータ50がこれの出力軸50aが上下向きとなるように固定され、この出力軸50aの下端に固定された原動プーリ51と砥石軸42の下端に固定された従動プーリ52との間に無端状の伝動ベルト53を掛け回した構成とされている。なお、54はベルトカバーである。
【0025】
そして、砥石上下駆動手段45は砥石43を上下方向Zへ駆動するためのものであって、砥石台41の2つの円筒孔f1、f2の間に形成された上下向きの透孔f4の下部にナット体55を固定し、一方ではベッド100の右側面部4の外面に形成された凹み部b4内にサーボモータ56を固設してあり、またベッド100の上面部9上でサーボモータ56の真上となる箇所には軸受57が固定され、この軸受57に転がり軸受58を介してネジ軸59が回転可能に支持されている。そしてネジ軸59はナット体55内のボールネジに螺合されており、ネジ軸59の下端とサーボモータ56の出力軸とがカップリング60により結合されている。
【0026】
制御盤105はコラム101の背面に固設される共に内方にコンピュータを設けられ各部を数値制御により制御する。
【0027】
上記のほか、ワーク保持手段103で保持されたワークと砥石43との接触領域に研削液としての水を注ぐための研削液供給ノズル61が位置調整可能に設けられる。
【0028】
ベッド100上にはコラム101、テーブル102、ワーク保持手段103、及び砥石機構部104などを包囲し内方が液密空間とされる箱状のケーシング62が形成される。このケーシング62の前面には、研削のためのケーシング62内作業をベッド100の前側の床面a1上に起立した操作者が行うための開閉カバー62aが設けられている。そして開閉カバー62aの右上部には、操作盤63が設けられている。操作盤63には、テーブル102の移動、ワーク保持手段103によるワークの保持や、砥石機構部104の制御をする操作スイッチや、研削を自動的に開始させるスイッチが設けられている。
【0029】
この実施例の研削盤は、加工径が10mm以下で、加工長が100mm以下の加工能力を備えており、操作盤63を除いた本体部の大きさは左右幅Laが800mmで、前後長さLbが1000mmで、高さLhが1500mmである。
【0030】
上記のように形成された研削盤は、例えば内燃機関の燃料噴射ノズルの外径研削などに使用されるのであり、以下その使用例及び作用などについて説明する。
【0031】
図3中に示すように操作者mはベッド100の前側の床面a1上に起立する。そして開閉カバー62aを開閉し、ワーク保持手段103の主軸23に図5中に示すようにワーク固定具34を介してワークを固定させる。
【0032】
このようなワークの固定にはワークチャック方式と両センタ方式とがある。
ワークチャック方式には、心押センタ27を使用する場合と、それを使用しない場合とがある。
【0033】
ワークチャック方式には、心押センタ27を使用する場合と、それを使用しない場合とがある。ワークチャック方式は、等角度間隔に円周状に配置された3つ以上の爪部g1(図5)を有するチャックをワーク固定具34として主軸23の上端に固定しておく。心押センタ27を使用する場合、操作者はワークWkの一端を爪部g1で囲まれた中心に挿入し、ワークWkに形成されているセンタ穴h1を主軸センタ24の先端に嵌合させ、心押台26(図6)上の操作レバー38を旋回操作して心押センタ27を下方移動する。その後、チャックの爪部g1相互の間隔を狭めてワークWkの下部外周を強く把持する。
【0034】
一方、心押センタ27を使用しない場合は、爪部g1で囲まれた中心にワークWkの一端を挿入し、この一端に形成されているセンタ穴h1を主軸センタ24の先端に嵌合させた後、爪部g1相互の間隔を狭めてワークWkの下部外周を強く把持する。
【0035】
他方、両センタ方式は、次のように行われる。
即ち、ワーク固定具34を設けない状態の下で、操作者はワークWkの一端に形成されているセンタ穴h1を主軸センタ24の先端に嵌合させ、心押台26上の操作レバー38を旋回操作することにより、心押センタ27の下端をワークWkの他端に形成されたセンタ穴h1に嵌合させ、ワークWkが主軸センタ24と心押センタ27で挟まれ一定高さに位置決めされた状態とする。このように位置決めされたワークWkと主軸23との間に、ワークWkの振れ回りを許容する状態で主軸23の回転をワークWkに伝達する図7に示すような回転伝達具34bを設ける。回転伝達具34bとしては、ケレドライブ方式などがある。このケレドライブ方式は、ワークWkの下端部外周面に半径方向へ延びるケレj1をネジによる抱持力で固定し、一方では主軸23上端面の偏心位置にケレj1と当接される真っ直ぐな付加部材j2を設ける。そして、付加部材j2が主軸23の回転により主軸23の中心線回りへ周回変位されるとき、付加部材j2がケレj1に圧接してこのケレj1を押し移動させるものとする。この押し移動中、ワークWkはケレj1の振れ回りを許容された状態で主軸23の回転を伝達される。
【0036】
上記のようにワーク保持手段103にワークWkを保持させた後、操作者は、操作盤63上のスイッチ操作により砥石43の上下方向の位置(高さ)の基準点とワークWkの長手方向の位置(高さ)の基準点を整合させる座標合わせを行う。ワークWkの加工長さ範囲が砥石43の上下方向幅以上であるときは、砥石43を上下へ往復移動させるトラバース加工を行う必要があり、この場合、砥石台41を上下移動させるため、その上下移動の範囲を座標値で設定する。
【0037】
次に操作者mは操作盤63上のスイッチ操作により、制御盤105に研削開始指令を入力する。この入力により、制御盤105から信号が発出され、この信号に基づいて、サーボモータ17が回転作動し、この回転がウオーム18a及びウオームホイール18bを介してテーブル102に伝達される。これにより、テーブル102は旋回軸12回りへ旋回され、ワークWkは初期位置から砥石43へ向けて移動される。
【0038】
一方では、先の研削開始指令に基づいて、発出される信号に基づいて、サーボモータ30が回転作動し、この回転が主軸23に伝達されてワークWkが主軸23と共に回転され、また図示しない送液手段に信号が付与されて、研削液供給ノズル61から研削液である水が砥石43上のワーク研削領域に向け注がれる。
【0039】
砥石43がワークWk近傍にアプローチした後は、制御盤105による自動的な制御により、サーボモータ17が比較的低速で回転作動し、ワークWkはテーブル102と共に旋回し砥石43中心へ向け予め定められた速度で移動する。この移動により、砥石43はワークWkの外周面に接触し、ワークWkの切込が開始され、研削加工が実施される。加工中には、制御盤105が予め入力された情報に基づいてサーボモータ17、30、56を制御する。したがって砥石43は必要に応じて主軸23の回転と関連しつつ砥石台41と共に上下移動され、ワークWkは必要な加工を実施される。
【0040】
ワークWkの研削が進行し、ワークWkの径が予定値に到達し研削が完了したとき、制御盤105はその完了時点を検出して、テーブル102を初期位置に戻して停止させ、主軸23の回転や、研削液供給ノズル61からの水供給を停止させ、砥石台41を初期高さ位置へ移動させるように制御し、各部を次のワークWkの研削に備えた待機状態とする。
【0041】
加工中において研削の完了時点を検出するには例えば次の2つの方法があり、1つは、研削中のワークWkの仕上がり径を定寸装置で直接に測定し、その測定結果値が研削完了の予定径に到達したときに定寸装置から発出される信号(定寸信号)に基づいて行う方法であり、他の1つは、テーブル102の旋回角度を表す座標上でワークWk研削完了の予定径に対応する座標値(テーブル102の旋回角度値)を演算装置の演算処理で予測し、研削中のテーブル102の旋回角度値がこの予測した座標値に到達したときに演算装置から発出される信号(間接定寸信号)に基づいて行う方法である。
【0042】
加工中のワークの加工が終了した後、操作者はベッド100の前側の床面a1に立って開閉カバー62aを開閉操作することにより、主軸23にワークWkを固定させたときの逆順で主軸23からワークWkを分離させケーシング62の外方へ取り出した後、次に研削すべきワークWkを既述したと同様に主軸23に固定させる。以後、先の研削済みのワークWkの場合と同様に、操作者mや制御盤105の制御による研削処理が実行されるのであり、全てのワークWkの研削が終了したとき、操作盤63のスイッチ操作により各部が初期位置に戻され各部の作動が停止される。
【0043】
砥石の回転方向は、操作盤63に対して前側から奥側へ移動する過程でワークを研削することから、砥石43に注がれる研削液が砥石の回転による遠心力でベッド100の前側の作業者へ飛散されるような現象は生じない。操作者はベッド100の前側に位置した状態の下で研削中の加工状況の目視や必要な処置を研削液の飛散を受けることなく行え、研削作業を円滑且つ的確に遂行することができる。
【0044】
上記研削処理において、砥石43の使用時間が一定時間以上になると、砥石43は偏摩耗により形状が不斉一になったり径が減少して、精度のよい加工が行われなくなる。これを防止するため、研削精度が低下しないうちに、制御盤105は自動制御によりドレッサ22aで砥石43を研削し成形し、このときのテーブル102の旋回角度で砥石43径を正確に認識し、この砥石43径情報をその後の制御に反映させ、研削中の加工精度を維持する。
【0045】
ドレス処理において、制御盤105はテーブル102を旋回させ砥石台41を上下移動させて砥石43の周面をドレッサ22aに当接させ、予定した切込量となるまで適当速度でドレッサ22aによる切込を行わせる。
【0046】
研削作業中には、上記したようにテーブル102が上下向き支軸11及び旋回軸12の回りへ旋回されて砥石43によるワークWkの切込やドレッサ22aによる砥石43の切込が行われるようになるが、このさい上側の上下向き支軸11と旋回軸12が比較的大きく離反して位置された状態でテーブル102を支持するため、テーブル102の旋回中における上下向き支軸11及び旋回軸12の回りのラジアル方向の隙間に起因した、テーブル102の遊動は比較的小さく押さえられる。またテーブル駆動部16がベッド100内に形成されているため機械のコンパクト化が図られると共に重心が低位化されて機械の起立安定性が増すほかテーブル駆動部16に他物が衝突する事態が防止されると共に機械の作動音の静粛化が図られる。
【0047】
また砥石機構部104が、ベッド100から上方へ平行に突出された2本の円柱状体46a、46bを具備したガイド手段40と、円柱状体46a、46bのそれぞれに各別に摺動可能に外嵌された複数の円筒孔f1、f2を具備すると共に砥石43を上下向きの砥石軸42を介し回転可能に支持した構成の砥石台41と、該砥石台41上に設けられ砥石43を砥石軸42回りへ回転作動させる砥石回転駆動手段44と、砥石台41とベッド100との間に形成され砥石台41を上下方向Zへ移動させる砥石上下駆動手段45とを備えた構成であることから、砥石機構部104をコラム101上に形成する場合に較べて、コラム101の小形軽量化が図られると共にガイド手段40や砥石台41をベッド100上の比較的低い位置に位置させることができて機械の起立安定性が増すと共に砥石機構部104の剛性を大きくし易いのであり、また2本の円柱状体46a、46bが円筒孔f1、f2を介して砥石台41を水平方向の外力に対して遊動の少ない状態に案内するものとなり、また砥石43の横周囲や真上に他の部品などが存在しない構造となってワークWkの研削状況を目視し易くなるほか、砥石上下駆動手段45のサーボモータ56をベッド100の平面視大きさ及び高さの範囲内に位置させることができて機械のコンバクト化や起立安定性の増大が図られるのである。
【0048】
また砥石43の外周囲のうち前側から後側へ移動する範囲を除いた箇所を包囲してなる砥石カバー49を備え、この砥石カバー49は砥石軸42を回転可能に支持する非回転部材である砥石台41と同体状に設けられ且つ、砥石43が図2中の矢印方向k1へ回転駆動され且つ、砥石43の外面に供給された研削液が砥石43の回転による遠心力でベッド100上の前側へ飛散するのを遮断する構成とされていることから、ワークWkの研削中に、操作者mがベッド100の前側の床面a1上に起立して開閉カバー62aを開放しても研削液が開放箇所から外方へ飛散することが防止され、研削のための作業が行い易くなる。
【0049】
砥石加工及び砥石ドレス加工を実施する場合、操作盤63でのデータ入力作業については、操作者は従来の円筒研削盤のように砥石送り(ワークの加工径設定)などの座標入力を直交座標系で行う。入力された座標値は、制御盤105内で極座標に変換されてテーブルの送り制御として用いられる。
【実施例2】
【0050】
次に上記実施例の変形例について説明する。
図8に示すように変形することができる。即ち、上記実施例における砥石台41が、砥石43側の近傍部41Aとガイド手段40側の近傍部41Bとに二分され、かつこれら近傍部41Aと近傍部41Bとが手動或いは動力駆動部41cによる左右向き軸41d回りの位置調整可能に結合されることにより、砥石軸42をその向きを変更調整可能としている、砥石43はプレーン形式或いはアンギュラ形式の何れが装着される構成であってもよい。このようにすれば、研削加工形態の範囲が増大される。
【0051】
そして、砥石43はプレーン形式或いはアンギュラ形式の何れであっても、制御盤105による自動制御により、ドレッサ22aに当接されてドレスされる構成とする。これにより、一層便利に使用されるものとなる。
【0052】
また上記実施例ではワーク保持手段103の心押センタ27は動力で積極的に回転されるものではないが、主軸23を回転させるサーボモータ30と同期して回転する別のサーボモータを心押台26上に設け、このサーボモータで心押センタ27を回転駆動させるようにすることもできる。この場合、ワークWkは一端のセンタ穴h1に主軸センタ24の先部を嵌合させ、他端のセンタ穴h1に心押センタ27の先部を嵌合させ、これらセンタで挟み付け支持させ、各センタ24、27の回転をワークWkに伝達させるようにする。
【0053】
上記実施例においては、上下向き支軸11を上下に離間した一対の上下側軸支持部c1、c2に両支持したが、下側軸支持部c1のみ上下向き支軸11を支持させても良い。この場合、下側軸支持部c1の構造的な剛性を高める必要があるが、上側軸支持部c2(或いは、これが設けられるコラム101)が無くなるので装置の高さをより小型化できる。
【符号の説明】
【0054】
100 ベッド
101 コラム
102 テーブル
103 ワーク保持手段
104 砥石機構部
11 上側の上下向き支軸
12 下側の上下向き支軸(旋回軸)
17 サーボモータ
18a ウオーム
18b ウオームホイール
22 主軸台
22a ドレッサ
23 主軸
24 主軸センタ
26 心押台
30 サーボモータ
34 ワーク固定具(チャック)
36 センタ移動手段
41 砥石台(非回転部材)
42 砥石軸
43 砥石
44 砥石回転駆動手段
45 砥石上下駆動手段
46 ガイド手段
46a 円柱状体
46b 円柱状体
49 砥石カバー
c1 上側軸支持部
c2 下側軸支持部
f1 円筒孔
f2 円筒孔
g1 爪部
g1 爪部
h1 センタ穴
wk ワーク
Z 上下方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに形成され、上下向き支軸を支持する下側軸支持部と、前記上下向き支軸回りの旋回可能に形成されたテーブルと、前記テーブル上で前記上下向き支軸から横方へ離間した位置に設けられた立向きの主軸と、前記主軸にワークを支持するワーク保持手段と、前記ベッド上の前記支軸とは水平方向に離間した位置に配設され、立向きの砥石軸により砥石を回転可能に保持する砥石機構部とを備えることを特徴とする研削盤。
【請求項2】
前記砥石機構部が、前記ベッドから上方へ突出されたガイド手段と、前記ガイド手段に摺動可能に外嵌された砥石台と、該砥石台上に設けられ前記砥石を前記砥石軸回りへ回転作動させる砥石回転駆動手段と、該砥石台と前記ベッドとの間に形成され該砥石台を上下方向へ移動させる砥石上下駆動手段とを備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の研削盤。
【請求項3】
前記ベッドから上方へ突出されたコラムと、該コラムの上部であって前記下側軸支持部の直上に形成された上側軸支持部とを有し、前記上下向き支軸は前記上側軸支持部と前記下側軸支持部により支持され、かつ前記テーブルは記上側軸支持部と前記下側軸支持部との間に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の研削盤。
【請求項4】
前記砥石軸はその向きを固定又は変更調整可能であり、且つ、プレーン形式或いはアンギュラ形式の前記砥石を装着されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の研削盤。
【請求項5】
前記ワーク保持手段は、前記主軸を回転させる主軸台と、該主軸台に対し上下方向上で離間され正対し、前記主軸と同心状に装着された心押センタを有する心押台とを備えてなり、前記主軸のみでワークを支持するか、或いは前記主軸と前記心押センタとの間にワークを挟んで支持するかの選択ができることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の研削盤。
【請求項6】
前記テーブルと同体状箇所にドレッサが設けられており、前記砥石が前記テーブルの旋回変位により前記ドレッサに当接され修正されることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の研削盤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−98428(P2011−98428A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256286(P2009−256286)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(593127027)株式会社シギヤ精機製作所 (19)
【Fターム(参考)】