説明

研磨パッドおよび研磨パッドの製造方法

【課題】開孔が略均一かつ略均等に形成され被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッド1は、研磨加工時に被研磨物の加工面に研磨液を介して当接する研磨面Pを有している。研磨パッド1は、イソシアネート基含有化合物と、鎖伸長剤と、水を200〜3000g/m含む水蒸気混合気体と、を混合した混合液を型枠に注型し硬化させた発泡体をスライスすることで形成されている。研磨パッド1の内部には、水蒸気混合気体中の水とイソシアネート基含有化合物との反応により、略均一な大きさの発泡3が略均等に分散して形成されている。研磨面Pでは発泡3の一部が開孔しており、開孔4が形成されている。水蒸気混合気体が混合されるときに生じた微細な気泡が混合液中に略均等に分散され、水蒸気混合気体中の水が混合液中で略均等に分散される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドおよび研磨パッドの製造方法に係り、特に、イソシアネート基含有化合物を主成分とした研磨パッドおよび該研磨パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハや液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料(被研磨物)では、表面の平坦性が求められるため、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。半導体ウェハでは、半導体回路の集積度が急激に増大するにつれて高密度化を目的とした微細化や多層配線化が進み、表面を一層高度に平坦化する技術が重要となっている。一方、液晶ディスプレイ用ガラス基板では、液晶ディスプレイの大型化に伴い、表面のより高度な平坦性が要求されている。
【0003】
半導体ウェハやガラス基板の表面を平坦化する方法としては、一般的に化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Planarization、以下、CMPと略記する。)法が用いられている。CMP法では、被研磨物の表面(加工面)が研磨パッドに押し付けられた状態で、研磨粒子をアルカリ溶液に分散させた研磨液(スラリ)が供給され加工面が研磨される。スラリ中の研磨粒子による機械的作用と、アルカリ溶液による化学的作用とで研磨される。加工面に要求される平坦性の高度化に伴い、CMP法に求められる研磨精度、換言すれば、研磨パッドに要求される性能も高まっている。
【0004】
CMP法では、研磨パッドとして硬質発泡ポリウレタンが広く使用されている。このような研磨パッドの製造では、通常、イソシアネート基含有化合物を含むプレポリマと、活性水素化合物を含む鎖伸長剤とが反応により硬化されて発泡体が成型される。得られた発泡体がシート状にスライスされ研磨パッドが形成される。発泡体内部に発泡が形成されるため、スライスにより形成される研磨パッドの表面には、研磨加工時にスラリを保持することができる開孔が形成される。
【0005】
硬質発泡ポリウレタンの発泡体を成型するときに内部に発泡を形成するために種々の技術が開示されている。例えば、成型時に中空微粒子を内添する技術が挙げられる(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。また、成型時に水を添加することで発泡を形成する技術として、イソシアネート基含有化合物や活性水素化合物の組成を定めて直径50〜150μmの発泡を形成した研磨パッドの技術(特許文献4参照)が開示されている。さらに、成型時に不活性気体を封入することで発泡を形成する技術として、シリコン系活性剤を添加して独立発泡の数を200〜600個/mm、平均発泡径を30〜60μmとした研磨パッドの技術(特許文献5参照)が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特許3013105号公報
【特許文献2】特開平11−322877号公報
【特許文献3】特開平11−322878号公報
【特許文献4】特開2005−68168号公報
【特許文献5】特許3455208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3の技術では、研磨加工時に中空微粒子の成分が加工面と研磨パッドとの間に夾雑物(コンタミ)として介在するため、用いるスラリとの関係で予期せぬ悪影響を招くことがある。この点、特許文献4、特許文献5の技術では、中空微粒子を使用しないため、夾雑物の影響を防止することができる。ところが、特許文献4の技術では、水の添加により発泡が形成されるものの、水の分散状態を均等化することが難しいため、成型された発泡体では発泡に偏りが生じ平均孔径にも差が生じやすい、という問題がある。このため、1つの発泡体から得られる複数の研磨パッドで研磨性能にバラツキが生じることとなる。また、特許文献5の技術では、平均孔径が数μm程度の発泡であれば水による発泡の形成より制御しやすいが、平均孔径が数十μm代の若干大きな発泡の形成や均等化が難しい、という問題がある。不活性気体を封入することで極端に大きな発泡が形成されるおそれがあるため、孔径の均一化が難しくなり、研磨加工時に被研磨物にスクラッチ(キズ)を生じて平坦性の低下を招くこととなる。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、開孔が略均一かつ略均等に形成され被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨パッドおよび該研磨パッドの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、イソシアネート基含有化合物と、鎖伸長剤と、水を200g/m〜3000g/m含む水蒸気または前記イソシアネート基含有化合物および前記鎖伸長剤に対して非反応性の気体と前記水蒸気との混合気体と、を混合した混合液から形成された発泡体をスライスして得られたことを特徴とする。
【0010】
第1の態様では、混合液に混合された水蒸気または混合気体により混合液中に微小な気泡が生じることから、水蒸気または混合気体に含まれた水が混合液中で略均等に分散してイソシアネート基含有化合物と反応することで発泡体の内部に略均一な大きさの発泡が略均等に分散して形成される。このため、スライスして得られた研磨パッドの表面に略均一な開孔が略均等に形成される。従って、研磨加工時に研磨液を保持しつつ被研磨物および研磨パッド間に略均等に供給することができ、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
【0011】
第1の態様において、イソシアネート基含有化合物の温度50℃〜80℃における粘度を500mPa・s〜4000mPa・sの範囲とすれば、混合液中で発泡の移動が抑制されるため、発泡の偏りを抑制することができる。発泡体のスライスで表面に開孔が形成されており、開孔の平均開孔径を10μm〜100μmの範囲とすれば、研磨加工時に研磨液の保持性を向上させることができる。温度20℃の水に一定時間浸漬したときの硬度に対する、温度70℃の水に同じ一定時間浸漬したときの硬度の割合を80%以上とすれば、研磨液を使用した研磨加工時に摩擦等で発熱しても湿潤状態での硬度が変化しにくいため、研磨性能の低下を抑制することができる。発泡体のスライスで複数枚の研磨パッドが形成されたときに、それぞれの表面に形成された開孔の平均開孔径の差、および、密度の差をいずれも平均値に対し±3%の範囲内とすれば、複数の研磨パッドで平均開孔径が同等となり、発泡の占める空間の割合が同等となるので、研磨性能のバラツキを抑制することができる。
【0012】
また、本発明の第2の態様は、イソシアネート基含有化合物と、鎖伸長剤とを混合すると共に、水を200g/m〜3000g/m含む水蒸気または前記イソシアネート基含有化合物および前記鎖伸長剤に対して非反応性の気体と前記水蒸気との混合気体を吹き込みながら混合液を調製し、前記混合液から発泡体を形成する発泡体形成ステップと、前記発泡体形成ステップで形成された発泡体をスライスして研磨パッドを形成するスライスステップと、を含むことを特徴とする研磨パッドの製造方法である。
【0013】
第2の態様において、発泡体形成ステップで混合液を調製した後、連続して発泡体を形成するようにしてもよい。発泡体形成ステップで吹き込まれる水蒸気または混合気体の量を、イソシアネート基含有化合物および鎖伸長剤の合計重量1kgに対して0.5〜3.4リットルの割合とすれば、混合液中の水蒸気または混合気体の量が制限されるため、極端に大きな発泡の形成を抑制することができる。また、発泡体形成ステップにおいて、剪断速度9,000〜41,000/秒、剪断回数300〜10,000回の条件で混合液を調製することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、混合液に混合された水蒸気または混合気体により混合液中に微小な気泡が生じることから、水蒸気または混合気体に含まれた水が混合液中で略均等に分散してイソシアネート基含有化合物と反応することで発泡体の内部に略均一な大きさの発泡が略均等に分散して形成されるため、スライスして得られた研磨パッドの表面に略均一な開孔が略均等に形成されるので、研磨加工時に研磨液を保持しつつ被研磨物および研磨パッド間に略均等に供給することができ、被研磨物の平坦性を向上させることができる、という効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を適用した研磨パッドの実施の形態について説明する。
【0016】
(研磨パッド)
図1に示すように、研磨パッド1は、硬質発泡タイプのポリウレタンシートであり、イソシアネート基含有化合物を主成分としている。研磨パッド1は、研磨加工時に被研磨物の加工面にスラリを介して当接する研磨面Pを有している。研磨パッド1は、イソシアネート基含有化合物と、鎖伸長剤と、水を200〜3000g/m含む水蒸気とイソシアネート基含有化合物および鎖伸長剤に対して非反応性の気体(以下、非反応性気体という。)との混合気体(以下、水蒸気混合気体と略記する。)と、を混合した混合液を型枠に注型し硬化させた発泡体をスライスすることで形成されている。すなわち、研磨パッド1は乾式成型で形成されている。
【0017】
研磨パッド1の内部には、乾式成型時に混合された水蒸気混合気体中の水とイソシアネート基含有化合物との反応により、断面略円形状の発泡3が略均等に分散して形成されている。研磨パッド1が発泡体をスライスすることで形成されているため、研磨面Pでは発泡3の一部が開孔しており、開孔4が形成されている。研磨面Pに形成された開孔4は、平均開孔径が10〜100μmの範囲に調整されている。研磨パッド1の厚さは、1.3〜2.5mmの範囲に設定されている。この研磨パッド1は、温度20℃の水に一定時間浸漬したときの硬度に対する、温度70℃の水(熱湯)に同じ一定時間浸漬したときの硬度の割合で定義される湿潤硬度保持率が80%以上に設定されている。
【0018】
また、研磨パッド1は、研磨面Pと反対の面側に、研磨機に研磨パッド1を装着するための両面テープが貼り合わされている。両面テープは、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルム等の基材7の両面に粘着剤層が形成されている。粘着剤層の粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤等を挙げることができる。両面テープは、一面側の粘着剤層で研磨パッド1に貼り合わされており、他面側の粘着剤層の表面(図1の最下面側)が図示しない剥離紙で覆われている。
【0019】
(研磨パッドの製造)
研磨パッド1は、図2に示す各工程を経て製造される。すなわち、イソシアネート基含有化合物と、鎖伸長剤と、水蒸気混合気体とをそれぞれ準備する準備工程、イソシアネート基含有化合物、鎖伸長剤および水蒸気混合気体を混合して混合液を調製する混合工程(発泡体形成ステップの一部)、混合液を型枠に注型する注型工程(発泡体形成ステップの一部)、型枠内で発泡、硬化させて発泡体を形成する硬化成型工程(発泡体形成ステップの一部)、発泡体をシート状にスライスして研磨パッド1を形成するスライス工程(スライスステップ)、研磨パッド1と両面テープとを貼り合わせるラミネート工程を経て製造される。以下、工程順に説明する。
【0020】
(準備工程)
準備工程では、イソシアネート基含有化合物と、鎖伸長剤と、水蒸気混合気体とをそれぞれ準備する。
【0021】
イソシアネート基含有化合物としては、分子内に2つ以上の水酸基を有するポリオール化合物と、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物とを反応させることで生成したイソシアネート末端ウレタンプレポリマ(以下、単に、プレポリマと略記する。)が用いられている。ポリオール化合物と、ジイソシアネート化合物とを反応させるときに、イソシアネート基のモル量を水酸基のモル量より大きくすることで、プレポリマを得ることができる。また、使用するプレポリマは、粘度が高すぎると、流動性が悪くなり次工程の混合工程で略均一に混合することが難しくなる。温度を上昇させて粘度を低くするとポットライフが短くなり、却って混合斑が生じて発泡体中に形成される発泡3の大きさにバラツキが生じる。反対に粘度が低すぎると混合液中で水蒸気混合気体により生じた気泡が移動してしまい、発泡体中に略均等に分散した発泡3を形成することが難しくなる。このため、プレポリマは、温度50〜80℃における粘度を500〜4000mPa・sの範囲に設定することが好ましい。このことは、例えば、プレポリマの分子量(重合度)を変えることで粘度を設定することができる。プレポリマは、50〜80℃程度に加熱され流動可能な状態とされる。
【0022】
プレポリマの生成に用いられるジイソシアネート化合物としては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。また、これらのジイソシアネート化合物の二種以上を併用してもよい。
【0023】
一方、プレポリマの生成に用いられるポリオール化合物としては、ジオール化合物、トリオール化合物等であればよく、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール等の低分子量のポリオール化合物、および、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール化合物、エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物、ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等の高分子量のポリオール化合物のいずれも使用することができる。また、これらのポリオール化合物の二種以上を併用してもよい。
【0024】
鎖伸長剤としては、ハードセグメント(高融点で剛直性を付与するウレタン結合部)を構成するため、プレポリマのイソシアネート基と反応する活性水素基を2個以上有する化合物であればよい。例えば、ポリアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下、MOCAと略記する。)およびMOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物等を挙げることができる。また、ポリオール化合物としては、ジオール化合物、トリオール化合物等であればよく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の低分子量のポリオール化合物、ポリテトラメチレングリコール(以下、PTMGと略記する。)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記する。)等の高分子量のポリオール化合物のいずれも使用することができる。更に、水酸基を有するアミン系化合物、例えば、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を使用してもよい。
【0025】
鎖伸長剤の粘度をプレポリマと同程度にすることで混合工程において均一に混合させやすくなることから、鎖伸長剤がMOCAおよびMOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物のような室温で固体の場合は、加熱し適度な粘度になるよう溶融させた状態で供給する。また、鎖伸長剤がポリオール化合物の場合、数平均分子量500〜3000のポリオール化合物を用いることが粘度的に好ましく、特に、数平均分子量800〜3000のPTMGまたはPPGが分散性や得られる研磨パッドの耐熱性の面からより好ましい。本例では、鎖伸長剤として、ポリアミン化合物としてMOCAと、ポリオール化合物として数平均分子量約2000のPPGとを併用し個別に供給して使用するが、ポリアミン化合物を溶解可能なポリオール化合物との組み合わせであれば、予めポリアミン化合物とポリオール化合物とを混合、溶解して用いることで、ポリアミン化合物を加熱溶融する温度より低温でプレポリマに近い粘度とすることができる。このような鎖伸長剤の調製では、一般的な攪拌装置を使用して攪拌混合すればよく、ポリアミン化合物およびポリオール化合物が略均一に混合されていればよい。
【0026】
準備工程で準備する水蒸気混合気体としては、水を200〜3000g/m含むように調整する。水蒸気混合気体に含まれる水の量が少なすぎると、発泡3ひいては開孔4が小さくなりすぎて研磨加工時に研磨液等により目詰まりを起こすため、好ましくない。反対に水の量が多すぎると、水とプレポリマのイソシアネート基との反応により極端に大きな発泡が形成されることとなる。このため、水の量は、上述した範囲に調製することが好ましく、研磨液保持性の確保や目詰まりの防止を考慮すれば、500〜1500g/mの範囲となるように調整することがより好ましい。また、混合工程で水蒸気混合気体を加温(加熱)して供給することで水が水蒸気となり、湿度が50〜100%となる。水蒸気と混合する非反応性気体としては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等を挙げることができる。
【0027】
(混合工程、注型工程、硬化成型工程)
図2に示すように、混合工程では、準備工程で準備したプレポリマ、鎖伸長剤および水蒸気混合気体を混合した混合液を調製する。注型工程では混合工程で調製された混合液を型枠に注型し、硬化成型工程では型枠内で発泡、硬化させて発泡体を成型する。本例では、混合工程、注型工程、硬化成型工程を連続して行う。
【0028】
図3に示すように、混合工程では混合機20で混合液を調製し、注型工程では調製された混合液を混合機20から連続して型枠25に注型し、硬化成型工程で硬化させることにより発泡体を成型する。混合機20は、攪拌翼14が内蔵された混合槽12を備えている。混合槽12の上流側には、第1成分としてプレポリマ、第2成分、第3成分として鎖伸長剤をそれぞれ収容した供給槽、および、混合槽12内に水蒸気混合気体を供給する供給装置16が配置されている。各供給槽からの供給口は混合槽12の上流端部に接続されており、供給装置16からの供給口は混合槽12の全体の長さに対して上流端部からおよそ1/3の位置に接続されている。攪拌翼14は混合槽12内の略中央部で上流側から下流側までにわたって配置された回転軸に固定されている。回転軸の回転に伴い攪拌翼14が回転し、第1成分、第2成分および水蒸気混合気体を剪断するようにして混合する。得られた混合液は混合槽12の下流端部に形成された排出口から型枠25に注型される。型枠25は、上部が開放されており、大きさが、本例では、1050mm(長さ)×1050mm(幅)×50mm(厚さ)に設定されている。
【0029】
第1成分のプレポリマ、第2成分、第3成分の鎖伸長剤の多くがいずれも常温で固体または流動しにくい状態のため、それぞれの供給槽は各成分が流動可能となるように加温されている。また、水を水蒸気混合気体として混合槽12内に供給するため、供給装置16は温度80〜160℃に加温(加熱)されている。供給された水蒸気混合気体が混合槽12内で攪拌翼14の回転により微細な気泡となり、この気泡が混合液中に略均等に分散する。水蒸気混合気体の供給量が少なすぎると気泡の分散状態に偏りが生じやすくなり、反対に多すぎると極端に大きな気泡が生じてしまう。このため、水蒸気混合気体の供給量は、プレポリマ、鎖伸長剤の合計重量1kgに対して0.5〜3.4Lの割合となるように調整することが好ましい。なお、混合槽12は、特に加温されておらず、常温環境下にさらされている。
【0030】
第1成分、第2成分、第3成分を混合槽12に供給し、攪拌翼14によりある程度混合した段階で水蒸気混合気体を供給する。混合機20での混合条件、すなわち、攪拌翼14の剪断速度、剪断回数を調整することで、各成分および水蒸気混合気体が略均等に混合され混合液が調製される。攪拌翼14の剪断速度が小さすぎると、発泡体中に形成される発泡3の大きさが大きくなりすぎる。反対に剪断速度が大きすぎると、攪拌翼14および混合液間の摩擦による発熱で温度が上昇し粘度が低下するため、混合液中の気泡が(成型中に)移動してしまい、得られる発泡体に形成される発泡3の分散状態にバラツキが生じやすくなる。一方、剪断回数が少なすぎると生じる気泡の大きさにムラ(バラツキ)が生じやすく、反対に多すぎると温度上昇で粘度が低下し、発泡3が略均等に形成されなくなる。このため、混合工程では、剪断速度を9,000〜41,000/秒の範囲、剪断回数を300〜10,000回の範囲に設定し、混合する。混合機20での混合時間(滞留時間)は、混合液の流量(最大1リットル/sec)にもよるが、およそ1秒程度である。すなわち、例えば、注型工程で100kg程度の型枠25に混合液を注型するのに要する時間はおよそ1〜2分程度となる。なお、剪断速度、剪断回数は次式により求めることができる。すなわち、剪断速度(/秒)=攪拌翼14の翼先端の直径(mm)×円周率×攪拌翼14の回転数(rpm)÷60÷攪拌翼14の翼先端と混合槽12の内壁とのクリアランス(mm)、剪断回数(回)=攪拌翼14の回転数(rpm)÷60×混合槽12中での混合液の滞留時間(秒)×攪拌翼14の翼の数、により求めることができる。
【0031】
注型工程で、型枠25に混合液を注型するときは、混合機20からの混合液を混合槽12の排出口から排出し、例えばフレキシブルパイプを通じて、型枠25の対向する2辺間(例えば、図3の左右間)を往復移動する断面三角状の図示しない注液口に導液する。注液口を往復移動させながら、排出口の端部(フレキシブルパイプの端部)を注液口の移動方向と交差する方向に往復移動させる。混合液は、型枠25に略均等に注型される。
【0032】
硬化成型工程では、注型された混合液を型枠25内で反応させ発泡体を形成させる。このとき、プレポリマと鎖伸長剤との反応によりプレポリマが架橋硬化する。型枠25の上部が開放されているため、大気圧下で架橋硬化が進行し発泡体が形成される。この架橋硬化の進行と同時に、水蒸気混合気体に含まれて供給された水がプレポリマのイソシアネート基と反応することで、二酸化炭素が発生する。架橋硬化が進行しているため、発生した二酸化炭素が外部に抜け出すことなく発泡3を形成する。なお、発泡3は、断面形状が、円形状、楕円形状等の種々の形状で形成される。
【0033】
(スライス工程)
図2に示すように、スライス工程では、硬化成型工程で得られた発泡体をシート状にスライスして研磨パッド1を形成する。スライスには、一般的なスライス機を使用することができる。スライス時には発泡体の下層部分を保持し、上層部から順に所定厚さにスライスする。スライスする厚さは、本例では、1.3〜2.5mmの範囲に設定されている。また、本例で用いた厚さが50mmの型枠25で成型した発泡体では、例えば、発泡体の上層部および下層部の約10mm分をキズ等の関係から使用せず、中層部の約30mm分から10〜25枚の研磨パッド1を形成することができる。硬化成型工程で内部に発泡3が略均等に形成された発泡体が得られるため、スライス工程で複数枚の研磨パッド1を形成したときは、表面に形成された開孔4の孔径の平均値がいずれも10〜100μmの範囲となる。また、各研磨パッド1では、開孔4の平均開孔径の差が平均値に対し±3%の範囲内、密度の差が平均値に対し±3%の範囲内となる。開孔4の平均開孔径が10μmを下回ると、研磨加工時に研磨液中の研磨粒子で目詰まりを起こしやすくなるため、研磨パッドの寿命低下を招きやすく、反対に100μmを上回ると、略均一な孔径の制御が難しくなり、被研磨物の平坦性向上が不十分となる。なお、混合液に混合する水蒸気混合気体の量や混合条件を調整することで発泡3の大きさ、ひいては、開孔4の孔径を制御することができる。
【0034】
(ラミネート工程)
ラミネート工程では、スライス工程で形成された研磨パッド1と両面テープとが貼り合わせる。円形等の所望の形状、サイズに裁断した後、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い研磨パッド1を完成させる。
【0035】
被研磨物の研磨加工を行うときは、研磨機の研磨定盤に研磨パッド1を装着する。研磨定盤に研磨パッド1を装着するときは、剥離紙8を取り除き、露出した接着剤層で研磨定盤に接着固定する。被研磨物を加圧し、研磨粒子を含む研磨液(スラリ)を供給しながら研磨定盤を回転させることで、被研磨物の加工面が研磨加工される。
【0036】
(作用等)
次に、本実施形態の研磨パッド1および研磨パッド1の製造方法の作用等について説明する。
【0037】
本実施形態では、混合工程で調製する混合液に水蒸気混合気体が混合されている。この水蒸気混合気体が混合されるときに生じた微細な気泡が混合液中に略均等に分散されるため、バブリング効果が生じると共に、微細な発泡には水蒸気混合気体中の水が略均等に含まれる。このため、水蒸気混合気体中の水が混合液中で略均等に分散されることとなる。略均等に分散された水がプレポリマのイソシアネート基と反応することで二酸化炭素が生じて発泡が形成されるため、硬化成型工程で得られる発泡体の内部に略均一な大きさの発泡3が略均等に分散して形成される。これにより、スライス工程でスライスして得られた研磨パッド1の表面(研磨面P)には、開孔4が略均一かつ略均等に形成されるので、安定した研磨性能を確保することができる。また、水蒸気混合気体中の水蒸気は、バブリング効果を発揮した後には気体でなくなるので、余計な巨大気泡の発生を抑えることができる。更に、水蒸気混合気体として混合液に混合することで、混合機20による水の分散斑が起きにくくなるので、発泡を均一化することができる。また、混合される水蒸気混合気体の量がプレポリマおよび鎖伸長剤の合計重量1kgに対して0.5〜3.4リットルの割合に調整されている。このため、混合液中の水蒸気混合気体の量が制限されるので、得られる発泡体の内部に極端に大きな発泡が形成されることを抑制することができる。これにより、発泡体の内部に形成される発泡3の大きさを均一化することができる。従って、研磨パッド1を用いた研磨加工では、開孔4に研磨液を保持しつつ、被研磨物および研磨パッド1間に研磨液を略均等に供給することができ、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、混合液に混合される水の量が200〜3000g/mに設定されている。このため、過剰な水による極端に大きな発泡の形成や偏りを抑制することができる。更に、本実施形態では、水が水蒸気混合気体として混合液に混合される。従来CMP用の軟質研磨パッドでは、ウレア結合を減少させる(なくす)ことでウレタン結合主体(ウレタン結合のみ)にするため、プレポリマの粘度上昇や発泡体成型時の固化時間の長期化により孔径の制御が難しかった。これに対して、本実施形態では、水蒸気混合気体を混合することで発泡反応も早まるため、固化時間を短縮することができ、発泡体をスライスして得られる複数の研磨パッド間で平均開孔径の差を小さくすることができる。従って、発泡体の大きさを大きくする(型枠25を大きくする)ことで、大型化(面積、厚さ)の要求に対して容易に対応することができる。
【0039】
更に、鎖伸長剤に配合されたポリオール化合物が混合液中に存在しているため、ポリオール化合物の水酸基がプレポリマのイソシアネート基と反応してウレタン結合を形成することで、湿潤状態における発泡体の硬度変化を生じにくくする役割を果たす。このため、発泡体をスライスして得られる複数枚の研磨パッド1では、いずれも湿潤硬度保持率、すなわち、温度20℃の水に一定時間浸漬したときの硬度に対する、温度70℃の水に同じ一定時間浸漬したときの硬度の割合を80%以上とすることができる。特に、ポリオール化合物としてPPGを用いることで、湿潤硬度保持率を向上させることができる。従って、湿潤状態での熱安定性が向上した研磨パッド1では、スラリを使用した研磨加工時に摩擦等で発熱しても硬度変化が抑制され、研磨性能の安定化を図ることができる。
【0040】
また更に、本実施形態では、内部に略均一な発泡3が略均等に形成された発泡体のスライスで研磨パッド1が得られるため、研磨面Pに形成される開孔4の孔径の平均値が10〜100μmの範囲に調整される。このため、研磨加工時にスラリが開孔4に保持され、被研磨物の加工面(被研磨面)に安定的に供給されるので、研磨効率の向上を図ることができる。更に、発泡体から複数枚の研磨パッド1を形成したときは、それぞれの表面に形成された開孔4の平均開孔径の差、および、(見掛け)密度の差をいずれも±3%の範囲内とすることができる。開孔径のバラツキが大きくなると、研磨加工時にスラリ中の研磨粒子(砥粒)や研磨屑等により開孔4が局所的に目詰まりを起こしやすくなり、被研磨物の平坦性を低下させる。また、密度が小さくなると硬度が小さく(柔らかく)なりすぎるため、被研磨物の平坦性を向上させることが難しくなる。反対に密度が大きくなると硬度が大きくなりすぎるため、研磨効率が低下し、被研磨物にキズが発生しやすくなる。本実施形態では、複数の研磨パッド1で開孔4の平均開孔径が同等となるので、局所的な目詰まりを抑制することができる。また、各研磨パッド1で発泡3の占める空間の割合が同等となり硬度も同等となるので、研磨パッド1を交換しても、研磨性能にバラツキが生じることを抑制することができる。
【0041】
更にまた、本実施形態では、プレポリマの温度50〜80℃における粘度が500〜4000mPa・sの範囲に設定されている。このため、混合液中で発泡の移動が抑制されるので、発泡の偏りを抑制し略均等に分散させることができる。また、混合工程で剪断速度9,000〜41,000/秒、剪断回数300〜10,000回の条件に設定され混合液が調製される。このため、水蒸気混合気体中の水が略均等に分散されることから、発泡3の分散状態を均等化することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、水を含む水蒸気混合気体を混合液に混合する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。水蒸気混合気体に代えて、水蒸気そのものを混合するようにしてもよい。この場合も、水蒸気中に含まれる水の量が200〜3000g/mとなるように調整する。また、水蒸気に含まれる水の量が水蒸気混合気体の場合と同じため、混合槽12への供給量も同じに調整する。
【0043】
また、本実施形態では、プレポリマとして、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させたイソシアネート末端ウレタンプレポリマを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリオール化合物に代えて水酸基やアミノ基等を有する活性水素化合物を用い、ジイソシアネート化合物に代えてポリイソシアネート化合物やその誘導体を用い、これらを反応させることで得るようにしてもよい。また、多種のイソシアネート末端プレポリマが市販されていることから、市販のものを使用することも可能である。
【0044】
更に、本実施形態では、鎖伸長剤として、ポリアミン化合物のMOCAとポリオール化合物のPPGとを混合して用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。プレポリマの末端イソシアネート基と反応することができ、分子中に活性水素を有する化合物であればよく、分子量についても特に制限されるものではない。プレポリマと混合することを考慮すれば、鎖伸長剤の粘度をプレポリマと同程度に調整することが好ましく、鎖伸長剤が高分子量のポリオール化合物を含むことが好ましい。
【0045】
また更に、本実施形態では、混合工程、注型工程、硬化成型工程を連続して行う例を示したが、本発明はこれに制限されるものではなく、各工程を独立して行うようにしてもよい。また、本実施形態では、混合機20から型枠25に注型し大気圧下で成型する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、容器中で混合液を調製し、その容器内で硬化成型させるようにしてもよく、容器を密閉して加圧下で硬化成型してもよい。更に、本実施形態では、イソシアネート基含有化合物、水蒸気混合気体、鎖伸長剤を混合した混合液を用いているが、必要に応じ、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等のフィラー、顔料、界面活性剤、触媒等の添加剤を適宜加えてもよい。
【0046】
更にまた、本実施形態では、特に言及していないが、スラリの供給や研磨屑の排出を考慮して研磨パッド1の研磨面Pに溝加工を施すようにしてもよい。溝の形状については、放射状、格子状、螺旋状等のいずれでもよく、断面形状についても矩形状、U字状、V字状、半円状のいずれでもよい。溝のピッチ、幅、深さについては、研磨屑の排出やスラリの移動が可能であればよく、特に制限されるものではない。研磨パッドに溝加工を施した場合、例えば、研磨パッドの表面に孔径の大きな開孔が形成されていると、開孔と溝とが重なり突起状の角が形成されるため、研磨加工時に被研磨物にキズが発生することとなる。本実施形態では、研磨パッド1の開孔4は孔径の平均値が10〜100μmの範囲で略均一なため、溝加工を施しても被研磨物に対するキズの発生を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、混合工程で混合機20、スライス工程でスライス機を使用する例を示したが、混合機やスライス機には特に制限はなく、通常使用される混合機、スライス機を使用することができる。更に、本実施形態では、直方体状の型枠25を例示したが、本発明は型枠の形状や大きさに制限されるものではない。例えば、円柱状等の型枠を使用してもよく、混合液の粘性を考慮すれば、型枠を使用せずに発泡体を形成するようにしてもよい。
【実施例】
【0048】
以下、本実施形態に従い、水蒸気混合気体の供給量、流量を変えて作製した研磨パッド1の実施例について説明する。なお、比較のために作製した比較例についても併記する。
【0049】
(実施例)
実施例では、下表1に示すように、水蒸気混合気体の供給量、流量を変えて、試料1〜試料4の研磨パッド1を作製した。第1成分のプレポリマとしてイソシアネート基含有量が9〜9.3%の末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマ(Adiprene L−325)を用い、これを55℃に加熱し減圧下で脱泡した。第2成分の鎖伸長剤としては、MOCAを120℃で溶解させた。第3成分には鎖伸長剤として、数平均分子量約2000のPPGに、更に触媒(トヨキャットET、東ソー株式会社製)の1部、シリコン系界面活性剤(SH−193、ダウコーニング社製)の5部をそれぞれ添加し攪拌混合した後、減圧下で脱泡した。プレポリマ:MOCA:PPGの重量比が下表1に示す割合になるように混合槽12に供給した。混合工程では、攪拌条件を剪断回数1689回、剪断速度9425/秒に設定した。このとき、混合槽12内に水蒸気混合気体を下表1に示す水の量、温度、流量で供給した。得られた混合液を型枠25に注型し硬化させた後、形成された発泡体を型枠25から抜き出した。この発泡体を、厚さ1.3mmにスライスし研磨パッド1を作製した。
【0050】
(比較例)
比較例では、下表1に示すように、水の供給量、供給方法を変えて、試料5〜試料7の研磨パッドを作製した。すなわち、試料5では、プレポリマの1000部に対して2部の水を直接混合槽12に供給し、水を含まない非反応性気体のみを30℃の温度に調整し0.6リットル/固形分1kgの流量で混合槽12に供給する以外は試料1と同様にした。試料6では、プレポリマの1000部に対して2部の水を、予めPPGと混合して混合槽12に供給する以外は試料5と同様にした。試料7では、水を供給しない以外は試料5と同様にした。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例および比較例の各試料について、密度および開孔径の測定による均質性の評価、湿潤硬度および硬度保持率の測定による耐熱性の評価を行った。各測定項目は、以下の測定方法により測定した。
【0053】
(均質性の評価)
均質性の評価では、硬化成型した発泡体の上層部、中層部、下層部からスライスして得られた研磨パッド1の密度と開孔径をそれぞれ測定し、各層での測定値の差から均質性を評価した。密度は、所定サイズの大きさに切り出した試料の重量を測定し、サイズから求めた体積から算出した。また、開孔径は、マイクロスコープ(KEYENCE製、VH−6300)で約1.3mm四方の範囲を175倍に拡大して観察し、得られた画像を画像処理ソフト(Image Analyzer V20LAB Ver.1.3)により処理し算出した。このとき、極端に大きな開孔(500μm以上の巨大気孔)の有無についても判定した。
【0054】
(耐熱性の評価)
耐熱性の評価では、発泡体の中層部から得られた研磨パッド1について、湿潤(WET)硬度および硬度保持率を測定した。湿潤硬度は、研磨パッド1を温度20℃の水に30分間浸漬した後、硬度として、日本工業規格(JIS K 7311)に準じてショアA硬度を測定した。硬度保持率は、同じ研磨パッド1を温度70℃の熱湯に30分間浸漬した後、ショアA硬度を同様に測定し、20℃のときの硬度に対する70℃のときの硬度の割合を百分率で求めた。密度、平均開孔径、湿潤硬度、硬度保持率および巨大気孔の有無について評価を行った結果を下表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表1、2に示すように、水および非反応性気体を混合した比較例の試料5、試料6では、平均開孔径が大きくなり、密度が小さくなっている。また、上層、中層、下層でバラツキが認められ、巨大気孔も認められた。一方、水を供給せず非反応性気体のみを供給した比較例の試料7では、平均開孔径は試料5、6より小さくなったが、その分、密度が大きくなり、巨大気孔は認められないものの各層でバラツキが認められた。これに対して、水蒸気混合気体を供給した実施例の試料1、試料2では、上層、中層、下層で、密度、平均開孔径共に略均一(平均値に対し±3%の範囲内)である上、湿潤硬度、硬度保持率にも優れていることが判った。水蒸気混合気体の流量を11.0リットル/固形分1kgとした実施例の試料3では、流量が多すぎるため、平均開孔径が大きくなり、密度が小さくなった。反対に、水蒸気の流量を0.3リットル/固形分1kgとした実施例の試料4では、流量が少なすぎるため、平均開孔径、密度共に各層でバラツキが認められた。このことから、水蒸気の流量を0.5〜3.4リットル/固形分1kgに調整することが好ましいことが判明した。
【0057】
以上の結果から、プレポリマ、鎖伸長剤および水を200〜3000g/m含む水蒸気混合気体を混合した混合液から形成された発泡体をスライスして得られた研磨パッド1では、表面に略均一な開孔4が略均等に形成されていることが明らかとなった。このため、研磨加工時に研磨液が開孔4に保持されるので、被研磨物および研磨パッド間に研磨液を略均等に供給することができ、被研磨物の平坦性向上が期待できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は開孔が略均一かつ略均等に形成され被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨パッドおよび該研磨パッドの製造方法を提供するため、研磨パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明を適用した実施形態の研磨パッドを示す断面図である。
【図2】実施形態の研磨パッドの製造方法の要部を示す工程図である。
【図3】実施形態の研磨パッドの製造に用いた混合機および型枠の概略を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
1 研磨パッド
3 発泡
4 開孔
P 研磨面
20 混合機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有化合物と、鎖伸長剤と、水を200g/m〜3000g/m含む水蒸気または前記イソシアネート基含有化合物および前記鎖伸長剤に対して非反応性の気体と前記水蒸気との混合気体と、を混合した混合液から形成された発泡体をスライスして得られたことを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記イソシアネート基含有化合物は、温度50℃〜80℃における粘度が500mPa・s〜4000mPa・sの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記発泡体のスライスで表面に開孔が形成されており、前記開孔の平均開孔径が10μm〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
温度20℃の水に一定時間浸漬したときの硬度に対する、温度70℃の水に前記一定時間浸漬したときの硬度の割合が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記発泡体のスライスで複数枚の研磨パッドが形成されたときに、それぞれの表面に形成された開孔の平均開孔径の差、および、密度の差がいずれも平均値に対し±3%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
イソシアネート基含有化合物と、鎖伸長剤とを混合すると共に、水を200g/m〜3000g/m含む水蒸気または前記イソシアネート基含有化合物および前記鎖伸長剤に対して非反応性の気体と前記水蒸気との混合気体を吹き込みながら混合液を調製し、前記混合液から発泡体を形成する発泡体形成ステップと、
前記発泡体形成ステップで形成された発泡体をスライスして研磨パッドを形成するスライスステップと、
を含むことを特徴とする研磨パッドの製造方法。
【請求項7】
前記発泡体形成ステップでは、前記混合液を調製した後、連続して前記発泡体を形成することを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記発泡体形成ステップで吹き込まれる水蒸気または混合気体の量は、前記イソシアネート基含有化合物および鎖伸長剤の合計重量1kgに対して0.5〜3.4リットルの割合であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記発泡体形成ステップにおいて、剪断速度9,000〜41,000/秒、剪断回数300〜10,000回の条件で前記混合液を調製することを特徴とする請求項6に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−125895(P2009−125895A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305262(P2007−305262)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005359)富士紡ホールディングス株式会社 (180)
【Fターム(参考)】