説明

研磨パッドの製造方法

【課題】発泡の均一化を図った研磨パッドの製造を可能にする。
【解決手段】イソシアネート基含有化合物としてのイソシアネート末端プレポリマーと、炭素数5の炭化水素および炭素数6の炭化水素の少なくともいずれか一方の炭化水素、例えば、シクロペンタンを主成分とする発泡剤とを予め混合してプレミックス液とし、このプレミックス液に活性水素含有化合物としての3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA )を混合して硬化させて発泡ウレタン成型体を得、この発泡ウレタン成型体から研磨パッドを製造している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドの製造方法に関し、更に詳しくは、シリコンウェハなどの半導体ウェハの研磨に好適な研磨パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハなどの平坦化処理には、化学機械研磨(CMP)技術が用いられており、従来からCMP技術を用いた種々のCMP装置が提案されている。図2は、従来のCMP装置の概略構成図である。定盤1の表面に取付けられた研磨パッド2には、研磨用のスラリー3がスラリー供給装置4から連続的に供給される。被研磨物としての例えば、半導体ウェハ5は、研磨ヘッド6に、バッキングフィルム7を介して保持される。研磨ヘッド6に荷重が加えられることによって、半導体ウェハ5は、研磨パッド2に押し付けられる。
【0003】
研磨パッド2上に供給されるスラリー3は、研磨パッド2上を広がって半導体ウェハ5に到達する。定盤1と研磨ヘッド6とは、矢符Aで示すように同方向に回転して相対的に移動し、研磨パッド2と半導体ウェハ5との間にスラリー3が侵入して研磨が行われる。なお、8は研磨パッド2の表面を目立てするためのドレッサーである。
【0004】
かかる研磨パッド2として、耐摩耗性等に優れた発泡ポリウレタンを使用したものが知られており、かかる研磨パッドでは、微細な気泡を生成する必要があり、その製造方法が、各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
例えば、イソシアネート基含有化合物を含む主剤と、活性水素基含有化合物を含む硬化剤とを、混合、攪拌して硬化させる、いわゆる2液硬化型ポリウレタンを用いた製造方法では、例えば、主剤に発泡剤として水を混入してイソシアネート基と水との反応によってCOを生成して発泡させる方法、あるいは、未発泡の加熱膨張性の微小中空球体を、混入して攪拌することにより、2液硬化の際の反応熱によって発泡させる方法などがある。
【0006】
しかしながら、水を発泡剤として用いる方法では、水とイソシアネート基との反応性が非常に高いために、また、微小中空球体を用いる方法では、密度の差などに起因して均一に分散させるのが容易でないために、いずれの方法も均一に発泡させるのが困難である。
【0007】
かかる発泡によって生成される気泡は、研磨の際に、研磨パッドの表面に開口する微小なポア(孔)となって、研磨砥粒を保持するという重要な機能を発揮するものであり、このため、発泡の不均一は研磨パッドの性能に大きな影響を与えることになる。
【特許文献1】特開2002−194104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明により解決すべき課題は、発泡の均一化を図った研磨パッドの製造を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、発泡ポリウレタンの研磨パッドを製造する方法であって、イソシアネート基含有化合物と、活性水素含有化合物と、炭素数5の炭化水素および炭素数6の炭化水素の少なくともいずれか一方の炭化水素を主成分とする発泡剤とを混合硬化させることを特徴としている。
【0010】
ここで、炭化水素は、脂環式炭化水素であることが好ましく、シクロペンタンやシクロヘキサンであるのが好ましい。
【0011】
また、前記イソシアネート基含有化合物と前記発泡剤とを予め混合しておくのが好ましい。
【0012】
本発明によると、シクロペンタンやシクロヘキサンなどの炭素数が5または6の炭化水素を発泡剤としているので、炭素数が少ない低分子量の炭化水素のように常温で気化することがないので、常温での取り扱いが容易である一方、炭素数が多く高分子量の炭化水素のように、イソシアネート基含有化合物と活性水素含有化合物との反応熱によって気化しないといったこともなく、イソシアネート基含有化合物に、均一に混ぜ込んで分散させることができるとともに、イソシアネート基含有化合物と活性水素含有化合物との反応熱によって気化して均一な発泡が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炭素数が5または6の炭化水素の少なくともいずれか一方の炭化水素を発泡剤の主成分としているので、イソシアネート基含有化合物に、均一に混ぜ込んで分散させることができるとともに、イソシアネート基含有化合物と活性水素含有化合物との反応熱によって気化させて均一な発泡のポリウレタン研磨パッドを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
この実施の形態の研磨パッドは、図1に示すように、イソシアネート基含有化合物としてのイソシアネート末端プレポリマーと、発泡剤とを混合攪拌し、発泡剤をイソシアネート末端プレポリマーに均一に分散させてプレミックス液とする(S1)。次に、プレミックス液に、活性水素含有化合物を含む硬化剤を添加して混合撹拌して発泡反応液とし(S2)、所定の型に注型し(S3)、加熱硬化させて発泡ポリウレタンの成型体を得る(S4)。
【0016】
次に、得られた発泡ポリウレタンの成型体を、所定の厚さのシート状に裁断し(S5)、打ち抜いて研磨パッドを得る。なお、必要に応じて、柔軟性多孔質シート等を貼り付けて2層構造の研磨パッドとしてもよい。
【0017】
本発明に従う研磨パッドの製造方法では、イソシアネート末端プレポリマーおよび硬化剤は、それぞれ従来と同様のものを用いることができる。
【0018】
イソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールとを、通常用いられる条件で反応させて得られるものである。このイソシアネート末端プレポリマーは、市販されているものを用いてもよいし、ポリオールとポリイソシアネートとから合成して用いてもよい。
【0019】
ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
ポリオールとしては、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールやポリ(オキシプロピレン)グリコール等のポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエステル系ポリオール等が挙げられる。
【0021】
活性水素含有化合物を含む硬化剤としては、例えば、ジアミン系化合物として、3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタン(MOCA )、クロロアニリン変性ジクロロジアミノジフェニルメタン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン等が挙げられる。
【0022】
本発明では、均一で微細な気泡を有する発泡ポリウレタンの研磨パッドを得ることができるように、発泡剤として、炭素数5の炭化水素および炭素数6の炭化水素の少なくともいずれか一方の炭化水素を主成分とする発泡剤を使用する。
【0023】
炭素数が、4以下の炭化水素は、常温では気体であるために、イソシアネート末端プレポリマーに混ぜ込むことは非常に困難であり、逆に炭素数が、7以上の炭化水素は、分子構造が大きくなるために、発泡の際に、イソシアネート末端プレポリマーから抜け出すことができず、均一な気泡が形成できない。
【0024】
本発明に従う研磨パッドの製造方法で用いる炭素数が5または6の炭化水素は、飽和炭化水素であるのが好ましく、例えば、n−ペンタンやn−ヘキサンのような鎖状の炭化水素であってもよいが、シクロペンタンやシクロヘキサンのような脂環式の炭化水素が、鎖状の炭化水素に比べて、構造も小さく、安定しているので好ましい。
【0025】
このように、シクロペンタンやシクロヘキサンのような炭素数が5または6の炭化水素を発泡剤とすることにより、常温で、イソシアネート末端プレポリマーに、発泡剤を、容易に混ぜ込んで均一に分散させることができ、イソシアネート基と活性水素との反応熱によって、均一で微細な気泡のポリウレタン成型体を得ることができる。
【0026】
以下、本発明を、実施例および比較例に基づいて、更に詳細に説明する。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
イソシアネート末端プレポリマーとして、ハイプレンL−213(三井武田ケミカル株式会社製)200gに、発泡剤としてシクロペンタン7.5mlを常温で攪拌混合し、シクロペンタンがプレポリマー中に十分に混合された後、活性水素含有化合物として、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA )を50g投入し、真空脱泡攪拌混合した。これをオーブンで4時間キュアして発泡ポリウレタン成型物を得、これを試料1とした。
【0028】
シクロペンタンの添加量を、15ml,30mlに変えた以外は、上述と同様にして試料2,3を製作した。
【0029】
(実施例2)
イソシアネート末端プレポリマーとして、ハイプレンL−213(三井武田ケミカル株式会社製)200gに、発泡剤としてシクロヘキサン7.5mlを常温で攪拌混合し、シクロヘキサンがプレポリマー中に十分に混合された後、活性水素含有化合物として、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA )を50g投入し、真空脱泡攪拌混合した。これをオーブンで4時間キュアして発泡ポリウレタン成型物を得、これを試料4とした。
【0030】
シクロヘキサンの添加量を、15ml,30mlに変えた以外は、上述と同様にして試料5,6を製作した。
【0031】
(比較例)
イソシアネート末端プレポリマーとして、ハイプレンL−213(三井武田ケミカル株式会社製)200gに、発泡剤としてアセトン7.5mlを常温で攪拌混合し、アセトンがプレポリマー中に十分に混合された後、活性水素含有化合物として、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA )を50g投入し、真空脱泡攪拌混合した。これをオーブンで4時間キュアして発泡ポリウレタン成型物を得、これを試料7とした。
【0032】
アセトンの添加量を、15ml,30mlに変えた以外は、上述と同様にして試料8,9を製作した。
【0033】
下記の表1に、これら試料1〜9の配合組成と比重とを示す。
【0034】
【表1】

この表1に示されるように、実施例1,2に対応する試料1〜6と、比較例に対応する試料7〜9とを、同一の添加量について比べると、シクロペンタン、シクロヘキサンを発泡剤とした試料1〜6では、アセトンを発泡剤とした試料7〜9に比べて、比重が小さく、発泡倍率が高いことが分かる。
【0035】
特に、シクロペンタンを発泡剤とした試料1〜3では、アセトンを発泡剤とした試料7〜9に比べて、比重が小さく、発泡剤の添加量が、15mlでは、約1/4であり、発泡剤の添加量が、30mlでは、約1/6であり、発泡倍率が極めて高いことが分かる。
【0036】
また、シクロペンタンを発泡剤とした試料と、従来の水を発泡剤とした試料とを、倍率100のSEM写真で確認した結果、シクロペンタンを発泡剤とした試料の方が、水を発泡剤として試料に比べて、均一な発泡であることが確認できた。
【0037】
なお、発泡剤として、炭素数5または炭素数5の飽和炭化水素と同程度の分子量を有するエーテル化合物を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、シリコンウェハなどの半導体ウェハの研磨パッドの製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る製造工程を示す図である。
【図2】CMP装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0040】
2 研磨パッド 3 スラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリウレタンの研磨パッドを製造する方法であって、
イソシアネート基含有化合物と、活性水素含有化合物と、炭素数5の炭化水素および炭素数6の炭化水素の少なくともいずれか一方の炭化水素を主成分とする発泡剤とを混合硬化させることを特徴とする研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記炭化水素が、脂環式炭化水素であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
炭素数5の前記炭化水素が、シクロペンタンであり、炭素数6の前記炭化水素が、シクロヘキサンであることを特徴とする請求項2に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項4】
前記イソシアネート基含有化合物と前記発泡剤とを予め混合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−77044(P2006−77044A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259578(P2004−259578)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000116127)ニッタ・ハース株式会社 (150)
【Fターム(参考)】