説明

研磨方法

【課題】スクラッチの発生を抑制可能な研磨方法を提供する。
【解決手段】研磨方法は、回転テーブル上に貼付された研磨パッドに、半導体基板に形成されたメタル膜を接触させる工程と、前記研磨パッド上に研磨用スラリーを供給しつつ前記回転テーブルを回転させて、前記研磨パッドに接触するメタル膜を研磨する工程と、前記メタル膜を研磨する工程で使用されたメタル成分を含む使用済みの研磨用スラリーを回収する工程と、前記回収された使用済みの研磨用スラリーのゼータ電位を測定する工程と、前記ゼータ電位を測定する工程で得られた測定値が所定の範囲となるように、前記研磨パッド上に供給する研磨用スラリーの供給量を制御する工程とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造プロセスにおいてCMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いた研磨方法に係り、特にスクラッチの発生を抑制可能な研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体集積回路(IC)の高集積化にともない、配線パターンの微細化とともに多層積層構造の採用が不可欠になっている。多層積層構造を採用するには、半導体基板(シリコンウェハ)そのものや多層積層構造の各層の凹凸をこれまで以上に小さくして、膜形成時の段差部での被覆性(ステップカバレッジ)の悪化やリソグラフィ工程におけるフォトレジストの塗布膜厚変動などの不具合を避ける必要がある。
【0003】
このような多層積層構造の各層の凹凸をなくすために、シリコンウェハやこのシリコンウェハ上に形成される各層表面を研磨用スラリーで研磨するCMP技術を用いた研磨方法が知られている。また、この研磨方法は、例えばタングステン(W)を用いてコンタクトプラグやビアプラグを形成する際や、ダマシン構造にメッキ法によりCuを埋め込む際に、表面に形成されるW膜やCu膜を、ホール部分やダマシン構造部分のみ残して表面に形成されたW膜やCu膜を周りの絶縁膜と同一平面となるまで研磨する場合にも用いられる。
【0004】
一般に、CMPを用いた研磨方法は、研磨ヘッドに取り付けたシリコンウェハの被研磨面を、回転テーブル上の研磨パッドに接触させ、接触部に研磨用スラリーを供給しながら回転テーブルを回転させることによって行なわれる。研磨用スラリーとしては、シリカ、アルミナ、セリア等の研磨材を超純水に分散させ、目的に応じて、過酸化水素等の酸化剤、鉄塩、有機酸等の成分を溶解させたものが用いられる。
【0005】
例えば、被研磨面がW膜の場合には、W膜を研磨用スラリー中の酸化剤で酸化させて脆弱なW酸化物膜とし、研磨用スラリー中のシリカ粒子等の研磨材により、このW酸化物膜を機械的に除去する。研磨材の粒子径が数nm程度に揃い、その粒子が均一に分散した状態で、常時、被研磨面に供給され研磨除去が行われるのが理想的であるが、シリカ粒子等の研磨材は研磨工程中に凝集、粗大化しやすく、その結果、スクラッチが発生し、断線ショート等を引き起こし製品歩留まりの低下、信頼性の低下を招く。
【0006】
そこで、スクラッチの発生を抑制するために、シリカ粒子等の研磨材を含まない研磨用スラリーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、このような研磨用スラリーを用いた場合には、被研磨面への研磨が、研粒を埋め込んだ研磨パッドにより行われるため、硬い研磨パッドを使用すると、これによるスクラッチが生じやすくなる。また、柔らかい研磨パッドでは十分な平坦化が行われず、ディッシングやエロージョンが生じやすくなる。
【特許文献1】特開2002−222782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、スクラッチの発生を抑制可能な研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の研磨方法は、回転テーブル上に貼付された研磨パッドに、半導体基板に形成されたメタル膜を接触させる工程と、前記研磨パッド上に研磨用スラリーを供給しつつ前記回転テーブルを回転させて、前記研磨パッドに接触するメタル膜を研磨する工程と、前記メタル膜を研磨する工程で使用されたメタル成分を含む使用済みの研磨用スラリーを回収する工程と、前記回収された使用済みの研磨用スラリーのゼータ電位を測定する工程と、前記ゼータ電位を測定する工程で得られた測定値が所定の範囲となるように、前記研磨パッド上に供給する研磨用スラリーの供給量を制御する工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、スクラッチの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
シリコンウェハに生じるスクラッチ形成のメカニズムは、図1〜図7によると、以下のように考えられる。
【0013】
図1は、ゼータ電位の変化による、研磨用スラリー中のシリカ粒子の分散、凝集の状態を模式的に示す図である。ここで言うゼータ電位とは、研磨用スラリーの構成成分であるシリカ粒子(固体)とその溶媒(液体)の界面に生じる電位差を意味し、シリカ粒子の分散安定性の指標として用いる。図1に示すように、ゼータ電位の絶対値が上昇すると、同符号の電荷をもったシリカ粒子は互いに反発して分散する。一方、ゼータ電位が0(等電点:Isoelectric point)に近づくにつれて、シリカ粒子は電荷をもたないため、凝集しやすく分散安定性が低くなる。
【0014】
図2は、未使用の研磨用スラリーのゼータ電位と使用済みの研磨用スラリーA,Bのゼータ電位を示す図である。ゼータ電位はpH依存性が高いため、いずれの研磨用スラリーもpHを同じ値にしている。未使用の研磨用スラリーは、市販の研磨用スラリー(Cabot Microelectronics社製、W2000)に過酸化水素を添加して2wt%に濃度調整したものである。使用済み研磨用スラリーA,Bは、後述する研磨装置(図3参照)を用いて回収されたものである。使用済みの研磨用スラリーAは、8インチのシリコンウェハ上に、100nmの熱酸化膜、30nmのTiN膜、700nmのW膜を順に成膜したシリコンウェハを研磨した後、回収されたスラリーである。一方、使用済みの研磨用スラリーBは、8インチのタングステン(W)ディスク(W純度99.95%以上)を研磨した後、回収されたスラリーである。
【0015】
ここで、使用済みの研磨用スラリーA,Bを回収する研磨装置について図3を用いて説明する。研磨工程が開始されると、研磨パッド2上に、スラリー供給タンク10からスラリー供給ノズル8へ未使用の研磨用スラリーが供給され、研磨ヘッド7に取り付けられた所定のシリコンウェハ3もしくはWディスクの被研磨面を研磨する。このとき、被研磨面のW膜、もしくはW面は、研磨用スラリーの構成成分である過酸化水素によって酸化され脆弱なW酸化物となり、研磨用スラリーによって機械的に容易に除去される。また、回転テーブル4と研磨パッド2を回転させながら行うため、使用済みの研磨用スラリーは主に回転テーブル4の遠心力によりその外側に飛散する。この回転テーブル4の周囲には、使用済みの研磨用スラリーを受ける回収タンク5が配置されており、飛散した使用済みの研磨用スラリーはこの回収タンク5に回収される。この回収タンク5に一旦回収された使用済み研磨用スラリーは、回収タンク5の底部から配管を通り、ゼータ電位測定器6(Matec Applied Science社製、ESA9800)でゼータ電位が測定される。
【0016】
図2に示すように、未使用の研磨用スラリーのゼータ電位が+1.3mVであるのに対して、使用済みの研磨用スラリーAは+0.1mVであり、使用済みの研磨用スラリーBは−2.9mVである。使用前後の研磨用スラリーのゼータ電位の変化から明らかなように、回収された使用済みスラリーに、研磨工程で酸化され研磨除去されたW酸化物が含まれることにより、ゼータ電位をプラス側から0(等電点)付近もしくはマイナス側に変化させたと考えられる。
【0017】
図4は、W濃度とゼータ電位との関係を示す図である。ここで用いた溶液は、未使用の研磨用スラリーにW粉末(純度99.95%、粒径1μm)を添加して溶解させたものである。この溶液のゼータ電位を測定した。ゼータ電位はpH依存性が高いため、溶液のpHの値を一定にしている。図4に示すように、W濃度が高くなるにつれて、ゼータ電位が著しくプラス側からマイナス側に変化しており、Wの含有量によってゼータ電位が変化することは明らかである。また、pH変化がない状態でゼータ電位がこのように変化しており、溶液中でWは、W12396−やW124110−等のWz−のようなイオンの形態で多く存在することから、これらのイオンがゼータ電位をマイナス側に変化させていると推測される。
【0018】
よって、研磨工程において、被研磨面のW膜を酸化してなるW酸化物が研磨除去されて研磨用スラリーに溶解し、Wの含有量の上昇がゼータ電位をプラス側から等電点付近までシフトさせる。ゼータ電位が等電点付近になると、研磨用スラリーの構成成分であるシリカ粒子が凝集して分散安定性が低くなることから(図1参照)、この凝集塊によって絶縁膜にスクラッチが発生する。
【0019】
図5は、ゼータ電位と被研磨面に発生したスクラッチ数との関係を示す図である。ここで使用したシリコンウェハは、500nmの熱酸化膜を有する8インチサイズのシリコンウェハである。この被研磨面の熱酸化膜に使用済みの研磨用スラリーを供給して過剰研磨を3分間行い、この後、レーザー顕微鏡(レーザーテック社製、1LM21P)により被研磨面を観察してスクラッチ数を測定した。使用済みの研磨用スラリーは、図3に示した研磨装置を用いて回収したスラリーから、ろ過膜を使用して研磨クズ等の0.5μm以上の粗大粒子を除去し、W濃度を調整したものである。図5に示すゼータ電位は、このW濃度を調整した使用済みの研磨用スラリーのゼータ電位である。図5に示すように、ゼータ電位が+0.5mV付近では、スクラッチ数は1400mmあたり5個程度であるが、ゼータ電位が0(等電点)付近になると、スクラッチ数が急激に増加する。そして、ゼータ電位がマイナス側にシフトしてもスクラッチ数が緩やかに増加し続けている。なお、ゼータ電位がマイナス側にシフトしてその絶対値が上昇してもスクラッチ数が緩やかに増加し続ける理由としては、使用済みの研磨用スラリー中に含有するWによって負電荷に帯電したシリカ粒子と正電荷に帯電した被研磨面(熱酸化膜)との相互引力の影響や、研磨用スラリーに含有するW酸化物(Wz−)の影響等が考えられる。
【0020】
図6は、W濃度と被研磨面に発生したスクラッチ数との関係を示す図である。500nmの熱酸化膜を有する8インチサイズのシリコンウェハに使用済みの研磨用スラリーを供給して過剰研磨を2分間行い、この後、レーザー顕微鏡により被研磨面(熱酸化膜)を観察してスクラッチ数を測定した。使用済みの研磨用スラリーは、図3に示した研磨装置を用いて回収されたスラリーであり、ろ過膜による0.5μm以上の粗大粒子の除去をしない状態で、W濃度のみを調整したものである。図6に示すW濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Inductively Coupled Plasma- Atomic Emission Spectrometer:ICP-AES)を用いて測定した結果である。図6に示すように、使用済みの研磨用スラリーのW濃度の上昇にともない、被研磨面のスクラッチ数も増加している。
【0021】
図7は、研磨時間と使用済みの研磨用スラリーのゼータ電位との関係を示す図である。使用済みの研磨用スラリーは、100nmの熱酸化膜、30nmのTiN膜、700nmのW膜を順に成膜した8インチのシリコンウェハを研磨装置(図3参照)を用いて研磨した後、回収されたスラリーである。図7に示すように、研磨時間が経過するにつれて、ゼータ電位がプラス側から、等電点、マイナス側に順に変化しており、上述したとおり、使用済み研磨用スラリー中のW含有量の上昇がゼータ電位をプラス側からシフトさせる(図4参照)。さらに、研磨時間が所定時間Aを経過すると、ゼータ電位は、マイナス側から等電点、プラス側に順に変化している。研磨時間が所定時間Aを経過する時には、シリコンウェハのW膜の研磨が終了してTiN膜が研磨されており、使用済みの研磨用スラリー中に含まれるWの量は最も多い。また、図1で説明したように、ゼータ電位が等電点付近になると、研磨用スラリー中のシリカ粒子が凝集し易くなる。
【0022】
したがって、図1〜図7より、スクラッチ形成のメカニズムは以下のように考えられる。すなわち、研磨工程において、被研磨面のW膜が研磨用スラリーの酸化剤によって脆弱なW酸化物となり、機械的研磨によって容易に除去され、W酸化物が研磨パッドに残った研磨用スラリーに溶解する。この状態で研磨し続けると、研磨用スラリーに含まれるWの量が上昇し、ゼータ電位をプラス側から等電点付近までシフトさせる。ゼータ電位が等電点付近になると、研磨用スラリー中のシリカ粒子が凝集しやすくなり、この凝集塊がスクラッチ発生を引き起こす。
【0023】
このため、スクラッチ発生を防ぐには、研磨工程において、研磨パッド上に残った使用済み研磨用スラリーに含まれるWの量を低くすることが効果的である。すなわち、使用済みの研磨用スラリーを回収してゼータ電位を測定し、この測定値が所定の範囲、具体的にはプラス側となるように、研磨パッド上に供給する未使用の研磨用スラリーの供給量を制御する。この場合、未使用の研磨用スラリーの供給量は、通常より多めの量となる。例えば、8インチのシリコンウェハを研磨する場合には、未使用の研磨用スラリーの供給量は0.3〜0.6L/minの範囲である。なお、熱酸化膜、TiN膜、W膜が順に成膜されたシリコンウェハを研磨する場合には、図7で説明したように、研磨時間が所定時間Aを経過する時、すなわちW膜からTiN膜の研磨にさしかかる時が使用済みの研磨用スラリー中にWを最も多く含むため、未使用の研磨用スラリーの供給量を多めにすることが好ましい。また、図7中、研磨時間が所定時間Aをさらに過ぎて、ゼータ電位がマイナス側から等電点付近になると、研磨用スラリー中のシリカ粒子が凝集し易くなるため、ここでも未使用の研磨用スラリーの供給量を多めにする。
【0024】
これによれば、図8に示すように、研磨用スラリーの供給量を通常の量よりも多くすることで、使用済みの研磨用スラリーのW濃度を低下させることができ、スクラッチの発生を抑制することができる。図8は、研磨パッドへの研磨用スラリーの供給量とW濃度との関係を示す図である。W濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)で測定した結果である。使用済みの研磨用スラリーは、図3に示した研磨装置を用いて回収されたスラリーである。
【0025】
本発明の好適な実施の形態では、未使用の研磨用スラリーを供給しながら、回転テーブルを回転させて被研磨面を研磨し、研磨パッドから飛散した使用済みの研磨用スラリーを回収して、ゼータ電位を常時測定する。このとき、ゼータ電位の測定値がプラス側になるように、研磨パッドに供給する研磨用スラリーの供給量を制御する。これによれば、ゼータ電位の測定値から、この研磨用スラリーの状態の変化をみることができ、このゼータ電位の測定値がプラス側になるように研磨用スラリーの供給量を制御して、通常よりやや多めの供給量とすることで、研磨パッド上に残った使用済みの研磨用スラリーに含まれるWの量を低減することができ、シリコンウェハに発生するスクラッチを著しく低減することができる。
【0026】
[第1の実施形態]
図9は、第1の実施形態に係る研磨装置を模式的に示す断面図である。なお、図3に示した研磨装置と同一の構成部分には、同一の符号を付してその説明を簡略または省略する。
【0027】
研磨装置100は、回転テーブル4と、回転テーブル4上に貼付された研磨パッド2と、研磨パッド2にスラリー供給タンク10から未使用の研磨用スラリーを供給するスラリー供給ノズル8と、シリコンウェハ3を取り付ける研磨ヘッド7と、使用済みの研磨用スラリーを最初に受ける回収タンク5と、回収タンク5から送られる使用済み研磨用スラリーのゼータ電位を測定するゼータ電位測定器6と、ゼータ電位測定器6で得られた測定値に基づいて研磨用スラリーの供給量を制御するスラリー量制御手段9と、から構成される。
【0028】
以下、この研磨装置100を用いた研磨方法を説明する。
【0029】
まず、研磨ヘッド7に、タングステン(W)膜を有する8インチのシリコンウェハ3を取り付け、被研磨面としてのW膜を研磨パッド2に接触させる。
【0030】
次に、研磨パッド2上に未使用の研磨用スラリーを通常より多めの量、具体的には0.3〜0.6L/min、好ましくは0.3〜0.4L/min供給して、被研磨面のW膜を研磨する。未使用の研磨用スラリーの供給量を上記範囲にすることで、研磨パッド2に残った使用済みの研磨用スラリーにW酸化物が溶解しても、そのW濃度を所定値以下、具体的には1500ppm以下(図8参照)にすることができるため、研磨材のシリカ粒子が凝集し難くなり、絶縁膜のスクラッチの発生を抑制できる。
【0031】
続いて、回収タンク5に回収された使用済みの研磨用スラリーをゼータ電位測定器6に送り、ゼータ電位を測定する。ゼータ電位は、電気音響効果法(Electrokinetic sonic amplitude:ESA)によるESA信号を測定、解析することにより容易に測定可能であり、このようなゼータ電位測定器6としては、例えばMatec Applied Sciences社製のESA9800等が挙げられる。ゼータ電位を測定した使用済みの研磨用スラリーは、廃棄される。
【0032】
この後、ゼータ電位測定器6により得られた測定値をスラリー量制御手段9に送り、ゼータ電位がプラス側、好ましくは+0.5mV以上の範囲になるように、スラリー供給タンク10から送られる未使用の研磨用スラリーの供給量を制御して、スラリー供給ノズル8から未使用の研磨用スラリーを供給する。この場合に、供給されるスラリー量としては、通常より多めの量、具体的には0.3〜0.6L/min、好ましくは0.3〜0.4L/minである。
【0033】
以上説明したように、使用済みの研磨用スラリーを回収してゼータ電位を測定し、この測定値が所定の範囲、具体的にはプラス側となるように、研磨パッド2上に供給する未使用の研磨用スラリーの量を制御することで、研磨パッド2上に残った研磨用スラリーに含まれるWの量を低減することができ、シリコンウェハ3の被研磨面に発生するスクラッチを著しく低減することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、研磨装置100の構成部材のひとつとして研磨ヘッド7について説明したが、研磨ヘッド7は、図10、図11に示すような構成を備えたものでもよい。図10は、研磨ヘッド7の一変形例を模式的に示す図である。図11は、図10に示す研磨ヘッド7を、シリコンウェハ3を装着する面と直交する方向から見た図である。すなわち、Wを含んだ使用済みの研磨用スラリーを研磨パッド2から速やかに除去するために、研磨ヘッド7の外周縁部全体に、使用済み研磨用スラリーを吸引除去するための吸引口21を設ける。これによれば、スクラッチ抑制の効果をより一層高めることができる。
【0035】
また、研磨ヘッド7の他の変形例として、図12に示すような構成を備えたものでもよい。図12は、研磨ヘッド7の他の変形例であり、シリコンウェハ3を装着する面と直交する側から見た図を示している。すなわち、研磨ヘッド7のシリコンウェハ3を装着する面に、吸引口21と、スラリー供給タンク10から送られた未使用の研磨用スラリーを供給するための供給口22を設ける。これによれば、図10〜11に示した研磨パッド7と同様に、Wを含んだ使用済みの研磨用スラリーを研磨パッド2から速やかに除去できるため、スクラッチ抑制の効果を高めることができる。
【0036】
さらに、研磨ヘッド7の他の変形例として、図13に示すような構成を備えたものでもよい。図13は、研磨ヘッド7の他の変形例であり、シリコンウェハ3を装着する面と直交する側から見た図を示している。すなわち、研磨ヘッド7のシリコンウェハ3を装着する面に、吸引口21と供給口22を複数設ける。吸引口21と供給口22を設ける位置や数は特に限定されるものではなく、使用済みの研磨用スラリーを速やかに除去できればよい。
【0037】
また、本実施形態では、研磨パッド2に未使用の研磨用スラリーを供給するためのスラリー供給部材としてスラリー供給ノズル8を用いて説明したが、図14に示すような構成を備えたものでもよい。図14は、スラリー供給部材の一変形例を模式的に示す図であり、研磨パッド2と直交する方向から見た図である。すなわち、スラリー供給部材31は、スラリー供給タンク10から送られた未使用の研磨用スラリーを研磨パッド2に供給するための供給口22を管体に複数備えており、この複数の供給口22の口径が、研磨パッド2の中心から外周縁に向けて、順に小さくなるようにしてある。また、このスラリー供給部材31の裏面には、使用済みの研磨用スラリーを吸引除去するための吸引口21を管体に複数備えたスラリー吸引部材32が設けられている。これによれば、研磨パッド2に十分に未使用の研磨用スラリーを行き渡らせることができ、なおかつ、Wを含んだ使用済みの研磨用スラリーを研磨パッド2から速やかに除去できるため、スクラッチ抑制の効果を高めることができる。
【0038】
また、本実施形態では、使用済みの研磨用スラリーについてそのゼータ電位を測定してスクラッチ発生の度合いを判定したが、これに加えて、導電率、pHも測定することもできる。導電率、pHを測定する場合には、図9に示した本実施形態の研磨装置において、導電率計、pH測定器をさらに設ければよい。導電率計は、貯留している使用済みの研磨用スラリーにセンサーを接触させ導電率を測定する装置である。
【0039】
これによれば、ゼータ電位に加えて、導電率、pHも測定することで、得られたゼータ電位、導電率、pHの値から、使用済みの研磨用スラリーの状態や、被研磨面の研磨状態も容易に判定することができる。被研磨面の研磨状態は、ゼータ電位、導電率、pHの値の変化から、例えば被研磨面がエロージョン、ディッシングの発生しやすい状態にあることなどがわかる。このような状態を把握できるように、図9に示したスラリー量制御手段9にアラーム機能をさらに加えることが好ましい。上述した各種測定器で得られた測定値を、スラリー量制御手段9に送り、これら測定値に基づいて、研磨異常が発生しやすい状態にあることを例えば音や色などのアラームで確認できることで、被研磨面の研磨状態を容易に判定することができ、研磨異常を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ゼータ電位の変化による、研磨用スラリー中のシリカ粒子の分散、凝集の状態を模式的に示す図。
【図2】未使用の研磨用スラリーのゼータ電位と使用済みの研磨用スラリーA,Bのゼータ電位を示す図。
【図3】使用済みの研磨用スラリーを回収する研磨装置の構成を模式的に示す図。
【図4】W濃度とゼータ電位との関係を示す図。
【図5】ゼータ電位と被研磨面に発生したスクラッチ数との関係を示す図。
【図6】W濃度と被研磨面に発生したスクラッチ数との関係を示す図。
【図7】研磨時間と使用済みの研磨用スラリーのゼータ電位との関係を示す図。
【図8】W濃度と研磨用スラリーの供給量との関係を示す図。
【図9】本発明の一実施形態に係る研磨装置の構成を模式的に示す図。
【図10】図9に示した研磨ヘッドの一変形例を模式的に示す図。
【図11】図10に示した研磨ヘッドを、シリコンウェハを装着する面と直交する方向から見た図。
【図12】図9に示した研磨ヘッドの他の変形例を示す図。
【図13】図9に示した研磨ヘッドの他の変形例を示す図。
【図14】図9に示したスラリー供給部材の一変形例を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0041】
1,100…研磨装置、2…研磨パッド、3…シリコンウェハ、4…回転テーブル、5…回収タンク、6…データ電位測定器、7…研磨ヘッド、8…スラリー供給ノズル、9…スラリー量制御手段、10…スラリー供給タンク、21…吸引口、22…供給口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブル上に貼付された研磨パッドに、半導体基板に形成されたメタル膜を接触させる工程と、
前記研磨パッド上に研磨用スラリーを供給しつつ前記回転テーブルを回転させて、前記研磨パッドに接触するメタル膜を研磨する工程と、
前記メタル膜を研磨する工程で使用されたメタル成分を含む使用済みの研磨用スラリーを回収する工程と、
前記回収された使用済みの研磨用スラリーのゼータ電位を測定する工程と、
前記ゼータ電位を測定する工程で得られた測定値が所定の範囲となるように、前記研磨パッド上に供給する研磨用スラリーの供給量を制御する工程と
を具備することを特徴とする研磨方法。
【請求項2】
前記ゼータ電位の所定の範囲が、プラス側であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−98369(P2008−98369A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277909(P2006−277909)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【出願人】(505376525)株式会社D−process (2)
【Fターム(参考)】