説明

研磨液組成物

【課題】生産性を損なうことなく、研磨後の基板表面のスクラッチやうねりを低減できる研磨液組成物、並びにこれを用いた基板の製造及び研磨方法の提供。
【解決手段】研磨材、水溶性重合体、及び水を含有する研磨液組成物であって、前記水溶性重合体が、スルホン酸基を有し、主鎖及び側鎖のそれぞれに芳香族環を有する研磨液組成物。前記研磨液組成物を被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び/又は前記被研磨基板を動かして研磨する工程を含む、基板の製造方法及び研磨方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨液組成物、及びこれを用いた基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスクドライブは小型化・大容量化が進み、高記録密度化が求められている。高記録密度化するために、単位記録面積を縮小し、弱くなった磁気信号の検出感度を向上するため、磁気ヘッドの浮上高さをより低くするための技術開発が進められている。磁気ディスク基板には、磁気ヘッドの低浮上化と記録面積の確保に対応するため、表面粗さ、うねり、端面ダレの低減に代表される平滑性・平坦性の向上とスクラッチ、突起、ピット等の低減に代表される欠陥低減に対する要求が厳しくなっている。このような要求に対して、カルボキシル基やスルホン酸基などの官能基を有する共重合体を含有する研磨液組成物が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1は、分子中に繰り返し単位と、スルホン酸(塩)基とを有し、さらに繰り返し単位の主鎖中に芳香族基を有する陰イオン性界面活性剤を用いることにより、スクラッチ等の欠陥を低減することができ、研磨工程において発泡が少なく、効率よく研磨することができる研磨剤組成物を開示する。
【0004】
特許文献2は、アニオン性基を有する水溶性高分子を含有することにより生産性を損なうことなく研磨後の基板のスクラッチ及び表面粗さを低減できる磁気ディスク基板用研磨液組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−135052号公報
【特許文献2】特開2010−170650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の研磨液組成物では、研磨液の泡立ち性やスクラッチが改善されている。しかしながら、磁気ディスクドライブの大容量化に伴い、基板の表面品質に対する要求特性はさらに厳しくなっており、生産性を損なうことなく、さらに基板表面のスクラッチ及びうねりを低減できる研磨液組成物の開発が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、生産性を損なうことなく、研磨後の基板表面のスクラッチやうねりを低減できる研磨液組成物、及びこれを用いた磁気ディスク基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は一態様において、研磨材、水溶性重合体、及び水を含有する研磨液組成物であって、前記水溶性重合体が、スルホン酸基を有し、かつ、主鎖及び側鎖のそれぞれに芳香族環を有する研磨液組成物に関する。
【0009】
本発明はその他の態様において、本発明の研磨液組成物を被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び/又は前記被研磨基板を動かして研磨する工程を含む、基板の製造方法に関する。
【0010】
本発明はその他の態様において、本発明の研磨液組成物を被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び/又は前記被研磨基板を動かして研磨することを含む、基板の研磨方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の研磨液組成物によれば、生産性を損なうことなく、研磨後の基板表面のスクラッチに加えて、研磨後の基板表面のうねりが低減された基板、好ましくは磁気ディスク基板、さらに好ましくは垂直磁気記録方式の磁気ディスク基板を製造できるという効果が奏されうる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、スルホン酸基を有し、かつ、主鎖及び側鎖のそれぞれに芳香族環を有する水溶性重合体を含有する研磨液組成物を使用すれば、研磨液の泡立ち性が低く、高い研磨速度を維持したまま、研磨後の基板表面のスクラッチ及びうねりを低減できるという知見に基づく。
【0013】
すなわち、本発明は、研磨材、水溶性重合体、及び水を含有する研磨液組成物であって、前記水溶性重合体が、スルホン酸基を有し、かつ、主鎖及び側鎖のそれぞれに芳香族環を有する水溶性重合体(以下、単に「水溶性重合体」ともいう)である研磨液組成物(以下、「本発明の研磨液組成物」ともいう)に関する。
【0014】
本発明の研磨液組成物において、泡立ちが少なく、研磨速度を高く維持したまま、スクラッチのみならず研磨後の基板表面うねりを低減するメカニズムの詳細は明らかでないが、水溶性重合体の主鎖及び側鎖の芳香族環が研磨パッドに適度な吸着力で吸着し、水溶性重合体のスルホン酸基が研磨パッド表面に水和層を形成する結果、研磨パッド―被研磨基板間の摩擦振動を抑制し、スクラッチ及び基板表面うねりを低減していると推定される。但し、本発明はこのメカニズムに限定されなくてもよい。
【0015】
[水溶性重合体]
本発明の研磨液組成物に用いられる水溶性重合体はスルホン酸基を有し、かつ、該水溶性重合体の主鎖及び側鎖のそれぞれに芳香族環を有する。ここで「水溶性」とは、20℃の水100gに対する溶解度が2g以上であることをいう。また、「主鎖」とは、前記水溶性重合体において、モノマー単位が結合して形成される直鎖構造のうち最も長い部分をいい、「側鎖」とは、前記直鎖から枝分かれしている部分をいう。また、「スルホン酸基」とは、塩の形態も含むものとする。
【0016】
前記水溶性重合体は、例えば、後述するスルホン酸基を有する化合物と、重合体の主鎖及び側鎖の双方に芳香族環を導入しうる化合物とを、ホルムアルデヒド存在下で付加縮合法等の公知の手段により重合することにより製造することができる。耐加水分解性の向上及び酸性研磨液中での保存安定性の向上の観点から、付加縮合法により製造されることが好ましい。したがって、前記水溶性重合体の好ましい実施形態として、繰り返し単位の主鎖及び側鎖のそれぞれに芳香族環を持つ構成単位とスルホン酸基を持つ構成単位とを有する水溶性共重合体(以下、単に「水溶性共重合体」ともいう)が挙げられる。前記水溶性共重合体の一実施形態として、水溶性共重合体の主鎖及び側鎖の双方に芳香族環を導入しうる化合物とスルホン酸基を有する化合物とをホルムアルデヒド存在下で付加縮合することにより製造された水溶性共重合体が挙げられる。
【0017】
前記水溶性共重合体の主鎖及び側鎖の双方に芳香族環を導入しうる化合物としては、例えば、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン (ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン (ビスフェノールC)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン (ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン (ビスフェノールS)、2,3―ジヒドロキシナフタレン、9,10−アントラセンジオール、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。これらの中でも、水への溶解性向上の観点、研磨速度の低下抑制の観点、基板表面のスクラッチ及びうねりを低減する観点から、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン (ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン (ビスフェノールC)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン (ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン (ビスフェノールS)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンが好ましく、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン (ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン (ビスフェノールC)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン (ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン (ビスフェノールS)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンがより好ましく、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン (ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン (ビスフェノールC)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン (ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン (ビスフェノールS)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンがさらに好ましく、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン (ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン (ビスフェノールS)がさらにより好ましい。
【0018】
前記スルホン酸基を有する化合物としては、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸、5−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸、8−ヒドロキシ−5−キノリンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、アントラセンスルホン酸等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物; メラミンスルホン酸等のメラミン樹脂スルホン酸系化合物; リグニンスルホン酸、変性リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物; アミノアリールスルホン酸などの芳香族アミノスルホン酸系化合物及びそれらの塩が挙げられる。これらの中でも、酸性研磨液中での溶解性の向上、共重合体の保存安定性の向上、基板表面のスクラッチ及びうねりの低減の観点から、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸、5−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸、8−ヒドロキシ−5−キノリンスルホン酸及びそれらの塩が好ましく、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸、5−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸及びそれらの塩がより好ましく、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸及びその塩がさらに好ましい。
【0019】
[構成単位A]
前記水溶性共重合体は、研磨パッドへの効率的な吸着を促進し、研磨パッド―被研磨基板間の摩擦振動を低減し、基板表面のうねりを抑制する観点から、主鎖及び側鎖のそれぞれに芳香族環を持つ構成単位として、下記一般式(I)で表される構成単位A(以下、単に「構成単位A」ともいう)を有することが好ましい。前記構成単位Aは、前述の主鎖及び側鎖の双方に芳香族環を導入しうる化合物を用いることにより、水溶性共重合体中に導入することができる。
【0020】
【化1】

【0021】
式(I)中、Xは、結合手、−CH2−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、又は、
【化2】

であり、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、又は−OMであり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、有機カチオン及び水素原子からなる群から選択される。
【0022】
式(I)中、Xは、研磨液組成物の泡立ち抑制の観点から、−CH2−、−S−、−SO2−、又は−C(CH32−が好ましく、研磨パッドの水切れ抑制の観点及び基板表面うねり低減の観点から、−CH2−又は−SO2−がより好ましく、スクラッチ低減の観点から、−SO2−がさらに好ましい。
【0023】
式(I)中、R1及びR2は、同一又は異なって、工業的生産の容易さの観点から、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は−OMが好ましく、研磨液の泡立ち抑制の観点から、水素原子、−OM又はアルコキシ基がより好ましく、スクラッチ低減の観点から、アルコキシ基又は−OMがさらに好ましく、−OMがさらにより好ましい。また、R1及びR2の置換位置は、特に限定されないが、工業的生産性の観点から、4,4’−位に置換基を有することが好ましい。また、Mは上述のとおり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機カチオン又は水素原子である。有機カチオンとしては、アンモニウムや、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムが挙げられる。これらの中でも、スクラッチ及びうねり低減の観点からアルカリ金属、アンモニウム又は水素原子が好ましく、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又は水素原子がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。すなわち、R1及びR2は、−OHが最も好ましい。
【0024】
前記水溶性共重合体を構成する全構成単位中に占める構成単位Aの含有量は、研磨液組成物の泡立ち抑制、並びに基板表面のスクラッチ及びうねりの低減の観点から、5〜70モル%が好ましく、より好ましくは5〜60モル%、さらに好ましくは5〜50モル%、さらにより好ましくは10〜45モル%、さらにより好ましくは10〜40モル%、さらにより好ましくは20〜40モル%である。
【0025】
なお、本明細書において、前記水溶性共重合体を構成する全構成単位中に占めるある構成単位の含有量(モル%)として、合成条件によっては、前記水溶性共重合体の合成の全工程で反応槽に仕込まれた全構成単位を導入するための化合物中に占める前記反応槽に仕込まれた該構成単位を導入するための化合物量(モル%)を使用してもよい。また、本明細書において、前記水溶性共重合体を構成するある2つの構成単位の構成比(モル比)として、合成条件によっては、前記水溶性共重合体の合成の全工程で反応槽に仕込まれた該2つの構成単位を導入するための化合物量比(モル比)を使用してもよい。
【0026】
[構成単位B]
前記水溶性共重合体は、酸性研磨液中での溶解性向上、基板表面のスクラッチ及びうねり低減の観点から、下記一般式(II)で表される構成単位B(以下、単に「構成単位B」ともいう)を有することが好ましい。前記構成単位Bは、前述のスルホン酸基を有する化合物を用いることにより、水溶性共重合体中に導入することができる。
【0027】
【化3】

【0028】
式(II)中、R3は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、又は−OM2であり、M1及びM2は、同一又は異なって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機カチオン及び水素原子からなる群から選択される。
【0029】
式(II)中、R3は、酸性研磨液中での保存安定性を向上させる観点、研磨液の泡立ち抑制の観点、並びに基板表面のスクラッチ及びうねりを低減する観点から、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又は−OM2が好ましく、水素原子、アルコキシ基、又は−OM2がより好ましく、アルコキシ基又は−OM2がさらに好ましく、−OM2がさらにより好ましい。R3の置換位置は、特に限定されないが、共重合体製造時の反応性を向上させる観点から、スルホン基に対してパラ位にあることが好ましい。M1及びM2はそれぞれ独立して、アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機カチオン及び水素原子からなる群から選択される。有機カチオンとしては、アンモニウムや、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムが挙げられる。これらの中でも、酸性研磨液中での溶解性向上、表面粗さ及びスクラッチ低減の観点から、アルカリ金属、アンモニウム又は水素原子が好ましく、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又は水素原子がより好ましい。
【0030】
前記水溶性共重合体を構成する全構成単位中に占める構成単位Bの含有量は、酸性研磨液への溶解性向上の観点、基板表面のスクラッチ及びうねりを低減する観点、及び研磨速度を向上させる観点から、好ましくは30〜95モル%、より好ましくは40〜95モル%、さらに好ましくは50〜95モル%、さらにより好ましくは55〜90モル%、さらにより好ましくは60〜90モル%、さらにより好ましくは60〜80モル%である。
【0031】
[その他の構成単位]
前記水溶性共重合体は、前記構成単位A及びB以外のその他の構成単位を有していてもよい。前記水溶性共重合体を構成する全構成単位中に占めるその他の構成単位の含有率は、研磨後のスクラッチ、ナノ突起欠陥、及び基板表面うねりの低減の観点から、0〜30モル%が好ましく、より好ましくは0〜20モル%、さらに好ましくは0〜10モル%、さらにより好ましくは0〜5モル%、さらにより好ましくは実質的に0モル%である。
【0032】
前記水溶性共重合体を構成する全構成単位中における構成単位Aと構成単位Bのモル比率(構成単位A/構成単位B)は、研磨速度の低下抑制、研磨液の泡立ち抑制、並びに基板表面のスクラッチ及びうねり低減の観点から、70/30〜5/95であることが好ましく、より好ましくは60/40〜5/95、さらに好ましくは50/50〜5/95、さらにより好ましくは45/55〜10/90、さらにより好ましくは40/60〜10/90、さらにより好ましくは35/65〜15/85、さらにより好ましくは35/65〜20/80、さらにより好ましくは35/65〜25/75である。なお、構成単位Aと構成単位Bの配列は、ランダム、ブロック、又はグラフトのいずれでもよいが、ランダムが摩擦振動発生抑制の観点から好ましい。
【0033】
[水溶性重合体の表面張力]
前記水溶性重合体の表面張力は、研磨パッドの水切れによる摩擦振動の発生抑制、及び基板表面のうねり低減の観点から、45〜100mN/mであることが好ましく、より好ましくは50〜90mN/m、さらに好ましくは55〜80mN/m、さらにより好ましくは65〜75mN/m、さらにより好ましくは68〜72mN/mである。なお、該表面張力は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0034】
[水溶性重合体の重量平均分子量]
前記水溶性重合体の重量平均分子量は、生産性を損なうことなく研磨後の基板表面のスクラッチ及びうねりを低減する観点から、500〜120000が好ましく、より好ましくは1000〜100000、さらに好ましくは1000〜50000、さらにより好ましくは1500〜40000、さらにより好ましくは3000〜40000、さらにより好ましくは4500〜40000、さらにより好ましくは5000〜40000、さらにより好ましくは8000〜30000、さらにより好ましくは10000〜25000、さらにより好ましくは10000〜20000である。該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて実施例に記載の条件で測定した値とする。
【0035】
[水溶性重合体の含有量]
本発明の研磨液組成物における前記水溶性重合体の含有量は、生産性を損なうことなく研磨後の基板表面のスクラッチ及びうねりを低減する観点から、0.001〜1重量%が好ましく、より好ましくは0.003〜0.5重量%、さらに好ましくは0.005〜0.2重量%、さらにより好ましくは0.007〜0.15重量%、さらにより好ましくは0.01〜0.1重量%、さらにより好ましくは0.01〜0.07重量%、さらにより好ましくは0.01〜0.05重量%である。なお、本明細書において「研磨液組成物中における含有成分の含有量」とは、研磨液組成物を研磨に使用する時点での前記成分の含有量をいう。したがって、本発明の研磨液組成物が濃縮物として作製された場合には、前記成分の含有量はその濃縮分だけ高くなりうる。
【0036】
[水溶性重合体における残存モノマー含有量]
前記水溶性重合体の残存モノマーであるホルムアルデヒド含有量は、研磨後の基板表面のスクラッチを低減する観点から、0ppm又は0ppmを超え10000ppm以下が好ましく、より好ましくは0ppm又は0ppmを超え6000ppm以下、さらに好ましくは0ppm又は0ppmを超え5000ppm以下、さらにより好ましくは0ppm又は0ppmを超え3000ppm以下、さらにより好ましくは0ppm又は0ppmを超え2000ppm以下、さらにより好ましくは0ppm又は0ppmを超え1000ppm以下である。該残存ホルムアルデヒド含有量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて実施例に記載の条件で測定した値とする。また、残存ホルムアルデヒドを亜硫酸塩、シアン化水素またはその塩、水酸化アンモニウム、アルコール等と公知の手法により反応させることにより低減してもよい。
【0037】
[研磨液組成物中のホルムアルデヒド含有量]
前記研磨液組成物中のホルムアルデヒド含有量は、研磨後の基板表面のスクラッチを低減する観点から、0.00ppm又は0.00ppmを超え10.0ppm以下が好ましく、より好ましくは0.00ppm又は0.00ppmを超え5.0ppm以下、さらに好ましくは0.00ppm又は0.00ppmを超え4.0ppm以下、さらにより好ましくは0.00ppm又は0.00ppmを超え3.0ppm以下、さらにより好ましくは0.00ppm又は0.00ppmを超え1.0ppm以下、さらにより好ましくは0.00ppm又は0.00ppmを超え0.55ppm以下、さらにより好ましくは0.00ppm又は0.00ppmを超え0.5ppm以下、さらにより好ましくは0.00ppm又は0.00ppmを超え0.4ppm以下、さらにより好ましくは0.00ppm又は0.00ppmを超え0.1ppm以下である。研磨液組成物中のホルムアルデヒド含有量は前述と同様に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定できる。
【0038】
[研磨材]
本発明の研磨液組成物に使用される研磨材としては、研磨用に一般的に使用されている研磨材を使用することができ、金属、金属若しくは半金属の炭化物、窒化物、酸化物、又はホウ化物、ダイヤモンド等が挙げられる。金属又は半金属元素は、周期律表(長周期型)の2A、2B、3A、3B、4A、4B、5A、6A、7A又は8族由来のものである。研磨材の具体例としては、酸化珪素(以下、シリカという)、酸化アルミニウム(以下、アルミナという)、炭化珪素、ダイヤモンド、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム(以下、セリアという)、酸化ジルコニウム等が挙げられ、これらの1種以上を使用することは研磨速度を向上させる観点から好ましい。中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン、セリア、酸化ジルコニウム等が、半導体素子用基板や磁気ディスク基板等の精密部品用基板の研磨に適している。表面粗さを低減する観点、スクラッチを低減する観点から、さらに、コロイダルシリカ、コロイダルセリア、コロイダルアルミナが好ましく、コロイダルシリカがより好ましい。
【0039】
〔研磨材の平均粒径〕
本明細書における「研磨材の平均粒径」とは、特に言及しない限り、動的光散乱法において検出角90°で測定される散乱強度分布に基づく平均粒径をいう(以下、「散乱強度分布に基く平均粒径」ともいう)。研磨材の平均粒径は、研磨後の基板表面のスクラッチを低減する観点から、1〜40nmが好ましく、より好ましくは5〜37nm、さらに好ましくは10〜35nmである。なお、研磨材の平均粒径は、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0040】
前記研磨材のΔCV値は、研磨後の基板表面のスクラッチ及びうねりを低減する観点及び研磨液組成物の生産性を向上する観点から、0.001〜10%が好ましく、より好ましくは0.01〜9%、さらに好ましくは0.01〜7%、さらにより好ましくは0.01〜5%である。
【0041】
〔ΔCV値〕
本明細書において研磨材のΔCV値は、動的光散乱法により検出角30°(前方散乱)の散乱強度分布に基づき測定される粒径の標準偏差を、動的光散乱法により検出角30°の散乱強度分布に基づき測定される平均粒径で除して100を掛けた変動係数(CV)の値(CV30)と、動的光散乱法により検出角90°(側方散乱)の散乱強度分布に基づき測定される粒径の標準偏差を、動的光散乱法により検出角90°の散乱強度分布に基づき測定される平均粒径で除して100を掛けた変動係数の値(CV90)との差(ΔCV=CV30−CV90)をいい、動的光散乱法により測定される散乱強度分布の角度依存性を示す値をいう。ΔCV値は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0042】
研磨材のΔCV値とスクラッチ数との間には相関関係があり、及び研磨材のΔCV値と非球状シリカの含有量との間に相関関係がある。ΔCV値の設定によるスクラッチ低減のメカニズムは明らかではないが、研磨材の一次粒子が凝集して生じた50〜200nmの凝集体(非球状粒子)がスクラッチ発生の原因物質であり、かかる凝集体が少ないためスクラッチが低減されると推定される。
【0043】
〔散乱強度分布〕
本明細書において「散乱強度分布」とは、動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)又は準弾性光散乱(QLS:Quasielastic Light Scattering)により求められるサブミクロン以下の粒子の3つの粒径分布(散乱強度、体積換算、個数換算)のうち散乱強度の粒径分布のことをいう。通常、サブミクロン以下の粒子は溶媒中でブラウン運動をしており、レーザー光を照射すると散乱光強度が時間的に変化する(ゆらぐ)。この散乱光強度のゆらぎを、例えば、光子相関法(JIS Z 8826)を用いて自己相関関数を求め、キュムラント(Cumulant)法解析により、ブラウン運動速度を示す拡散係数(D)を算出して、さらにアインシュタイン・ストークスの式を用い、平均粒径(d:流体力学的径)を求めることができる。また、粒径分布解析は、キュムラント法による多分散性指数(Polydispersity Index, PI)のほかに、ヒストグラム法(Marquardt法)、ラプラス逆変換法(CONTIN法)、非負最小2乗法(NNLS法)等がある。
【0044】
動的光散乱法の粒径分布解析では、通常、キュムラント法による多分散性指数(Polydispersity Index, PI)が広く用いられている。しかしながら、粒子分散液中にわずかに存在する非球状粒子の検出を可能とする検出方法においては、ヒストグラム法(Marquardt法)やラプラス逆変換法(CONTIN法)による粒径分布解析から平均粒径(d50)と標準偏差を求め、CV値(Coefficient of variation:標準偏差を平均粒径で割って100をかけた数値)を算出し、その角度依存性(ΔCV値)を用いることが好ましい。
【0045】
〔散乱強度分布の角度依存性〕
本明細書において「粒子分散液の散乱強度分布の角度依存性」とは、動的光散乱法により異なる検出角で前記粒子分散液の散乱強度分布を測定した場合の、散乱角度に応じた散乱強度分布の変動の大きさをいう。例えば、検出角30°と検出角90°とでの散乱強度分布の差が大きければ、その粒子分散液の散乱強度分布の角度依存性は大きいといえる。よって、本明細書において、散乱強度分布の角度依存性の測定は、異なる2つの検出角で測定した散乱強度分布に基づく測定値の差(ΔCV値)を求めることを含む。
【0046】
研磨材の粒径分布を調整する方法は、特に限定されないが、その製造段階における粒子の成長過程で新たな核となる粒子を加えることにより所望の粒径分布を持たせる方法や、異なる粒径分布を有する2種以上の研磨材を混合して所望の粒径分布を持たせる方法等が挙げられる。
【0047】
本発明の研磨液組成物中における研磨材の含有量は、研磨速度を向上させる観点から、0.5重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上、さらにより好ましくは4重量%以上である。また、研磨後の基板表面のスクラッチ低減の観点からは、20重量%以下が好ましく、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは13重量%以下、さらにより好ましくは10重量%以下である。すなわち、研磨材の含有量は、0.5〜20重量%が好ましく、より好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは3〜13重量%、さらにより好ましくは4〜10重量%である。
【0048】
[水]
本発明の研磨液組成物中の水は、媒体として使用されるものであり、蒸留水、イオン交換水、超純水等が挙げられる。被研磨基板の表面清浄性の観点からイオン交換水及び超純水が好ましく、超純水がより好ましい。研磨液組成物中の水の含有量は、60〜99.4重量%が好ましく、より好ましくは70〜98.9重量%である。また、本発明の効果を阻害しない範囲内でアルコール等の有機溶剤を適宜配合してもよい。
【0049】
[酸]
本発明の研磨液組成物は、研磨速度向上の観点から、酸を含有することが好ましい。本発明において、酸の使用は、酸及び又はその塩の使用を含む。本発明の研磨液組成物に使用される酸としては、硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、塩酸、過塩素酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、アミド硫酸等の無機酸、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1,−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等の有機ホスホン酸、グルタミン酸、ピコリン酸、アスパラギン酸等のアミノカルボン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、ニトロ酢酸、マレイン酸、オキサロ酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。中でも、基板表面のスクラッチ及びうねり低減の観点、酸化剤の安定性向上及び廃液処理性向上の観点から、無機酸、有機ホスホン酸が好ましい。無機酸の中では、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、リン酸が好ましく、リン酸、硫酸がより好ましい。有機ホスホン酸の中では、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びそれらの塩が好ましく、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)がより好ましい。
【0050】
前記酸は単独で又は2種以上を混合して用いてもよいが、研磨速度の向上及び基板の洗浄性向上の観点から、2種以上を混合して用いることが好ましく、スクラッチ低減、酸化剤の安定性向上及び廃液処理性向上の観点から、リン酸、硫酸、及び1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸からなる群から選択される2種以上の酸を混合して用いることがさらに好ましい。
【0051】
前記酸の塩を用いる場合の塩としては、特に限定はなく、具体的には、金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム等が挙げられる。上記金属の具体例としては、周期律表(長周期型)1A、1B、2A、2B、3A、3B、4A、6A、7A又は8族に属する金属が挙げられる。これらの中でも、研磨後の基板表面のスクラッチ低減の観点から1A族に属する金属又はアンモニウムとの塩が好ましい。
【0052】
研磨液組成物中における前記酸及びその塩の含有量は、研磨速度向上、並びに研磨後の基板表面のスクラッチ低減の観点から、0.001〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.01〜4.0重量%であり、さらに好ましくは0.05〜3.0重量%、さらにより好ましくは0.1〜2.0重量%、さらにより好ましくは0.4〜1.0重量%である。
【0053】
[酸化剤]
本発明の研磨液組成物は、研磨速度の向上、基板表面のスクラッチ及びうねり低減の観点から、酸化剤を含有することが好ましい。本発明の研磨液組成物に使用できる酸化剤としては、過酸化物、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、ペルオキソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩、金属塩類、硝酸類、硫酸類等が挙げられる。
【0054】
前記過酸化物としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム等が挙げられ、過マンガン酸又はその塩としては、過マンガン酸カリウム等が挙げられ、クロム酸又はその塩としては、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩等が挙げられ、ペルオキソ酸又はその塩としては、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸等が挙げられ、酸素酸又はその塩としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等が挙げられ、金属塩類としては、塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、クエン酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(III)等が挙げられる。
【0055】
研磨後の基板表面のスクラッチ及び基板表面うねりの低減の観点から好ましい酸化剤としては、過酸化水素、硝酸鉄(III)、過酢酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、硫酸鉄(III)及び硫酸アンモニウム鉄(III)等が挙げられる。より好ましい酸化剤としては、表面に金属イオンが付着せず汎用に使用され安価であるという観点から過酸化水素が挙げられる。これらの酸化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】
研磨液組成物中における前記酸化剤の含有量は、研磨速度向上の観点から、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上であり、研磨後の基板表面のスクラッチ及び基板表面うねりの低減の観点から、好ましくは4重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。従って、表面品質を保ちつつ研磨速度を向上させるためには、上記含有量は、好ましくは0.01〜4重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。
【0057】
[その他の成分]
本発明の研磨液組成物には、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、界面活性剤等が挙げられる。研磨液組成物中のこれら他の任意成分の含有量は、0〜10重量%が好ましく、より好ましくは0〜5重量%である。但し、本発明の研磨液組成物は、他の成分、とりわけ界面活性剤を含むことなく、基板表面のスクラッチ及びうねりの低減効果を発揮し得る。さらに、本発明の研磨液組成物は、アルミナ砥粒を含ませることができ、最終研磨工程より前の粗研磨工程に使用することもできる。
【0058】
[研磨液組成物のpH]
本発明の研磨液組成物のpHは、研磨速度向上の観点から、4.0以下が好ましく、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下、さらにより好ましくは2.5以下である。また、表面粗さ低減の観点から、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1.0以上、さらにより好ましくは1.2以上である。したがって、研磨液組成物のpHは、好ましくは0.5〜4.0、より好ましくは0.8〜3.5、さらに好ましくは1.0〜3.0、さらにより好ましくは1.2〜2.5である。
【0059】
[研磨液組成物の調製方法]
本発明の研磨液組成物は、例えば、水と、研磨材と、水溶性重合体と、さらに所望により、酸及び/又はその塩と、酸化剤と、他の成分とを公知の方法で混合することにより調製できる。この際、研磨材は、濃縮されたスラリーの状態で混合されてもよいし、水等で希釈してから混合されてもよい。本発明の研磨液組成物中における各成分の含有量や濃度は、上述した範囲であるが、その他の態様として、本発明の研磨液組成物を濃縮物として調製してもよい。
【0060】
本発明の研磨液組成物は、精密部品用基板の製造に好適に使用できる。例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の磁気ディスク基板、フォトマスク基板、光学レンズ、光学ミラー、光学プリズム、半導体基板などの精密部品用基板の研磨に適しており、とりわけ、磁気ディスク基板の研磨に適している。半導体基板の製造においては、シリコンウエハ(ベアウエハ)のポリッシング工程、埋め込み素子分離膜の形成工程、層間絶縁膜の平坦化工程、埋め込み金属配線の形成工程、埋め込みキャパシタ形成工程等において本発明の研磨液組成物を用いることができる。
【0061】
本発明の研磨液組成物が好適な被研磨物の材質としては、例えばシリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン等の金属若しくは半金属、又はこれらの合金、ガラス、ガラス状カーボン、アモルファスカーボン等のガラス状物質、アルミナ、二酸化珪素、窒化珪素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料、ポリイミド樹脂等の樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅等の金属及びこれらの金属を主成分とする合金を含有する被研磨物に好適である。例えば、Ni−Pメッキされたアルミニウム合金基板や結晶化ガラス、強化ガラス等のガラス基板により適しており、Ni−Pメッキされたアルミニウム合金基板がさらに適している。
【0062】
[基板の製造方法]
本発明は、その他の態様として、基板の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)に関する。本発明の製造方法は、上述した研磨液組成物を研磨パッドに接触させながら被研磨基板を研磨する工程(以下、「本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程」ともいう。)を含む基板の製造方法である。これにより、研磨後の基板表面のスクラッチに加えて、研磨後の基板表面うねりが低減された基板を提供できる。本発明の製造方法は、磁気ディスク基板の製造方法に適しており、とりわけ、垂直磁気記録方式用磁気ディスク基板の製造方法に適している。よって、本発明の製造方法は、その他の態様として、本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程を含む基板の製造方法であり、好ましくは磁気ディスク基板の製造方法であり、より好ましくは垂直磁気記録方式用磁気ディスク基板の製造方法である。
【0063】
本発明の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する方法の具体例としては、不織布状の有機高分子系研磨布等の研磨パッドを貼り付けた定盤で被研磨基板を挟み込み、本発明の研磨液組成物を研磨機に供給しながら、定盤や被研磨基板を動かして被研磨基板を研磨する方法が挙げられる。
【0064】
被研磨基板の研磨工程が多段階で行われる場合は、本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程は2段階目以降に行われるのが好ましく、最終研磨工程で行われるのがより好ましい。その際、前工程の研磨材や研磨液組成物の混入を避けるために、それぞれ別の研磨機を使用してもよく、またそれぞれ別の研磨機を使用した場合では、研磨工程毎に被研磨基板を洗浄することが好ましい。また使用した研磨液を再利用する循環研磨においても、本発明の研磨液組成物は使用できる。なお、研磨機としては、特に限定されず、基板研磨用の公知の研磨機が使用できる。
【0065】
[研磨パッド]
本発明で使用される研磨パッドとしては、特に制限はなく、スエードタイプ、不織布タイプ、ポリウレタン独立発泡タイプ、又はこれらを積層した二層タイプ等の研磨パッドを使用することができるが、研磨速度の観点から、スエードタイプの研磨パッドが好ましい。
【0066】
研磨パッドの表面部材の平均開孔径は、スクラッチ低減及びパッド寿命の観点から、50μm以下が好ましく、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下、さらにより好ましくは35μm以下である。パッドの研磨液保持性の観点から、開孔で研磨液を保持し液切れを起こさないようにするために、平均開孔径は0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは1μm以上、さらにより好ましくは10μm以上である。また、研磨パッドの開孔径の最大値は、研磨速度維持の観点から、100μm以下が好ましく、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは60μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
【0067】
[研磨荷重]
本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程における研磨荷重は、好ましくは5.9kPa以上、より好ましくは6.9kPa以上、さらに好ましくは7.5kPa以上である。これにより、研磨速度の低下を抑制できるため、生産性の向上が可能となる。なお、本発明の製造方法において研磨荷重とは、研磨時に被研磨基板の研磨面に加えられる定盤の圧力をいう。また、本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程は、研磨荷重は20kPa以下が好ましく、より好ましくは18kPa以下、さらに好ましくは16kPa以下である。これにより、スクラッチの発生を抑制することができる。したがって、本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程において研磨圧力は5.9〜20kPaが好ましく、6.9〜18kPaがより好ましく、7.5〜16kPaがさらに好ましい。研磨荷重の調整は、定盤及び被研磨基板のうち少なくとも一方に空気圧や重りを負荷することにより行うことができる。
【0068】
[研磨液組成物の供給]
本発明の研磨液組成物を用いた研磨工程における本発明の研磨液組成物の供給速度は、スクラッチ低減の観点から、被研磨基板1cm2当たり、好ましくは0.05〜15mL/分であり、より好ましくは0.06〜10mL/分、さらに好ましくは0.07〜1mL/分、さらにより好ましくは0.07〜0.5mL/分である。
【0069】
本発明の研磨液組成物を研磨機へ供給する方法としては、例えばポンプ等を用いて連続的に供給を行う方法が挙げられる。研磨液組成物を研磨機へ供給する際は、全ての成分を含んだ1液で供給する方法の他、研磨液組成物の安定性等を考慮して、複数の配合用成分液に分け、2液以上で供給することもできる。後者の場合、例えば供給配管中又は被研磨基板上で、上記複数の配合用成分液が混合され、本発明の研磨液組成物となる。
【0070】
[被研磨基板]
本発明において好適に使用される被研磨基板の材質としては、例えばシリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン等の金属若しくは半金属、又はこれらの合金や、ガラス、ガラス状カーボン、アモルファスカーボン等のガラス状物質や、アルミナ、二酸化珪素、窒化珪素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料や、ポリイミド樹脂等の樹脂等が挙げられる。中でも、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅等の金属や、これらの金属を主成分とする合金を含有する被研磨基板、ガラス基板が好適である。中でも、Ni−Pメッキされたアルミニウム合金基板や、アルミノシリケートガラス基板に適しており、Ni−Pメッキされたアルミニウム合金基板がさらに適している。アルミノシリケートガラス基板には、結晶構造を有しているもの、化学強化処理を施したものが含まれる。化学強化処理は研磨後に行ってもよい。
【0071】
また、本発明によれば、研磨後の基板表面のスクラッチに加えて、研磨後の基板表面のうねりが低減された基板を提供できるため、高度の表面平滑性が要求される磁気ディスク基板、とりわけ垂直磁気記録方式の磁気ディスク基板の研磨に好適に用いることができる。
【0072】
上記被研磨基板の形状には特に制限はなく、例えば、ディスク状、プレート状、スラブ状、プリズム状等の平面部を有する形状や、レンズ等の曲面部を有する形状であればよい。中でも、ディスク状の被研磨基板が適している。ディスク状の被研磨基板の場合、その外径は例えば2〜95mm程度であり、その厚みは例えば0.5〜2mm程度である。
【0073】
[研磨方法]
本発明は、その他の態様として、上述した研磨液組成物を研磨パッドに接触させながら被研磨基板を研磨することを含む被研磨基板の研磨方法に関する。本発明の研磨方法を使用することにより、研磨後の基板表面のスクラッチに加えて、研磨後の基板表面のうねりが低減された基板が提供される。本発明の研磨方法における前記被研磨基板としては、上述のとおり、磁気ディスク基板の製造に使用されるものが挙げられ、なかでも、垂直磁気記録方式用磁気ディスク基板の製造に用いる基板が好ましい。なお、具体的な研磨の方法及び条件は、上述のとおりとすることができる。
【実施例】
【0074】
[実施例1〜18及び比較例1〜7]
実施例1〜18及び比較例1〜7の研磨液組成物を調製して被研磨基板の研磨を行い、純水で洗浄して評価用基板とした。研磨時の研磨液の泡立ち性、研磨速度、評価用基板表面のスクラッチ及びうねりの評価を行った。使用した水溶性重合体、研磨液組成物の調製方法、各パラメーターの測定方法、研磨条件(研磨方法)及び評価方法は以下のとおりである。
【0075】
1.研磨液組成物の調製
研磨材(コロイダルシリカ)と、下記に示す水溶性重合体又は比較化合物と、硫酸と、HEDP(1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ソルーシア・ジャパン製)と、過酸化水素水(濃度:35重量%)とをイオン交換水に添加し、撹拌することにより、実施例1〜18及び比較例1〜7の研磨液組成物を調製した(pH1.5)。研磨液組成物中における研磨材、硫酸、HEDP、過酸化水素の含有量は、それぞれ、5重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.5重量%であった。また、研磨材の平均粒径、ΔCV値、研磨液組成物中の水溶性重合体及び比較化合物の添加量は下記表2に示す。
【0076】
[水溶性重合体]
水溶性重合体として、下記表1に示す、構成単位A及び構成単位Bを有する水溶性共重合体(小西化学工業社製)を用いた。水溶性共重合体の重合モル比及び重量平均分子量は下記表1のとおりである。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により下記条件で測定した。なお、水溶性共重合体の残存ホルムアルデヒド含有量、表面張力及び溶解度を下記の条件で測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0077】
〔水溶性共重合体の重量平均分子量の測定方法〕
カラム:TSKgel GMPWXL+TSKgel GMPWXL(東ソー社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=7/3(体積比)
温度:40℃
流速:1.0ml/分
試料サイズ:2mg/ml
検出器:RI
標準物質:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(重量平均分子量:1,100、3,610、14,900、152,000、POLMER STANDARDS SERVICE社製)
【0078】
〔水溶性共重合体の残存ホルムアルデヒド、及び、研磨液組成物中のホルムアルデヒドの含有量の測定方法〕
水溶性共重合体中に含まれる残存ホルムアルデヒド、及び、研磨液組成物中のホルムアルデヒドの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたアセチルアセトン誘導体化-ポストカラムHPLC法により下記条件で測定した。水溶性重合体中の残存ホルムアルデヒドの結果を下記表1に示す。
カラム:Hitachi-Inertsil ODS-3 (5 μm)
溶離液:A:60 mmol/L Na2HPO4 (pH2.1 / H3PO4), B:80 %アセトニトリル水溶液
傾斜条件:B:0%(0-10min), 100% (10.1-20min), 0 %(20.1-30min)
反応溶液:C:アセチルアセトン溶液
流速:A,B:1.0ml/分,C:0.5ml/分
カラム温度:25℃
試料サイズ:50μl
反応温度:90℃
検出器:波長414nm 可視光
【0079】
〔表面張力の測定方法〕
純水に対して水溶性共重合体を500ppm溶解し、自動表面張力計「CBVP−Z型」(協和界面科学株式会社製)を用いて、幅19mm、高さ10mm、厚さ0.2mmの白金製プレートを使用したWilhelmy法により、共重合体の表面張力を測定した。
【0080】
〔溶解度の測定方法〕
水100gに対して水溶性共重合体を撹拌しながら一定量添加し、溶解性を確認した。完全に溶解した場合にはさらに水溶性共重合体を撹拌下、一定量添加する作業を繰り返し、最終的に20℃で1時間攪拌したときに水溶性共重合体が溶けなくなる直前の量を溶解度とした。
【0081】
【表1】

【0082】
[比較対象化合物]
上記水溶性重合体の比較対象として以下の化合物を用いた。
・ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド縮合物 (表面張力:66.3 mN/m)
(商品名:バニオールHDP-100、日本製紙ケミカル社製)
・リグニンスルホン酸ナトリウム (表面張力:67.3 mN/m)
(商品名:パールレックスNP、日本製紙ケミカル社製)
・ナフタレンスルホン酸系化合物 (表面張力:66.3 mN/m)
(商品名:フローリックPSR110、フローリック社製)
・芳香族アミノスルホン酸系化合物 (表面張力:71.8 mN/m)
(商品名:フローリックSF200S、フローリック社製)
・アクリル酸/アクリルアミドー2−メチルプロパンスルホン酸共重合体ナトリウム塩(AA−AMPS)(表面張力:63.0 mN/m)(モル比90/10、重量平均分子量2000、東亜合成社製)
・ポリスチレン/ポリスチレンスルホン酸共重合体ナトリウム塩(St−SS)(表面張力:57.3 mN/m)(モル比80/20、重量平均分子量8000、花王社製)
【0083】
[研磨材の平均粒径、ΔCV値の測定方法]
〔平均粒径〕
研磨液組成物の調製に用いたコロイダルシリカと、硫酸と、HEDPと、過酸化水素水とをイオン交換水に添加し、撹拌することにより、標準試料を作製した(pH1.5)。標準試料中におけるコロイダルシリカ、硫酸、HEDP、過酸化水素の含有量は、それぞれ5重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.5重量%とした。この標準試料を動的光散乱装置(大塚電子社製DLS-6500)により、同メーカーが添付した説明書に従って、200回積算した際の検出角90°におけるCumulant法によって得られる散乱強度分布の面積が全体の50%となる粒径を求め、コロイダルシリカの平均粒径とした。
【0084】
〔ΔCV値〕
上記と同様の試料、測定装置を用いて、検出角30°におけるコロイダルシリカ粒子のCV値(CV30)を測定し、これから検出角90°におけるコロイダルシリカ粒子のCV値(CV90)を引いた値を求め、ΔCV値とした。
(DLS−6500の測定条件)
検出角:90°
Sampling time: 4(μm)
Correlation Channel: 256(ch)
Correlation Method: TI
Sampling temperature: 26.0(℃)
検出角:30°
Sampling time: 10(μm)
Correlation Channel: 1024(ch)
Correlation Method: TI
Sampling temperature: 26.0(℃)
【0085】
[研磨液組成物の泡立ち性の評価方法]
2Lのビーカーに調製した実施例1〜18及び比較例1〜7の研磨液組成物をビーカーの上面5cmのところから、ディスポビーカー内へと注ぎ(注入速度:600 ml/min)、注ぎ終了後、30秒後の研磨液組成物の泡立ち性を下記評価基準により評価した。その結果を下記表2に示す。
泡立ち性の評価基準:
A:泡はほとんど立たない、もしくは、発泡してもすぐに消失する。
B:泡が立ち、消泡しない。
【0086】
2.研磨方法
前記のように調製した実施例1〜18及び比較例1〜7の研磨液組成物を用いて、以下に示す研磨条件にて下記被研磨基板を研磨した。次いで、研磨された基板表面のスクラッチ、基板表面うねり、研磨速度を以下に示す条件で測定し、評価を行った。
【0087】
[被研磨基板]
被研磨基板として、Ni−Pメッキされたアルミニウム合金基板を予めアルミナ研磨材を含有する研磨液組成物で粗研磨した基板を用いた。この被研磨基板は、厚さが1.27mm、外径が95mm、内径が25mmであり、AFM(Digital Instrument NanoScope IIIa Multi Mode AFM)により測定した中心線平均粗さRaが1nm、長波長うねり(波長0.4〜2mm)の振幅は2nm、短波長うねり(波長50〜400μm)の振幅は2nmであった。
【0088】
[研磨条件]
研磨試験機:スピードファム社製「両面9B研磨機」
研磨パッド:フジボウ社製スエードタイプ(厚さ0.9mm、平均開孔径30μm)
研磨液組成物供給量:100mL/分(被研磨基板1cm2あたりの供給速度:0.072mL/分)
下定盤回転数:32.5rpm
研磨荷重:7.9kPa
研磨時間:4分間
【0089】
[スクラッチの測定方法]
測定機器:Candela Instruments社製、OSA6100
評価:研磨試験機に投入した基板のうち、無作為に4枚を選択し、各々の基板を10000rpmにてレーザーを照射してスクラッチを測定した。その4枚の基板の各々両面にあるスクラッチ数(本)の合計を8で除して、基板面当たりのスクラッチ数を算出した。その結果を、下記表2に、比較例1を100とした相対値として示す。
【0090】
[うねりの評価方法]
研磨して減少する重量を、17mg以上及び17mg以下になるように研磨時間をそれぞれ設定し、研磨した基板のうねりを下記条件にて測定し、研磨量当りのうねりの値を得た。それらの値から内挿して17mg減少した際のうねりの値を算出した。うねりは各研磨時間につき3枚測定し、平均値を基板のうねりとして算出した。その結果を、下記表2に、比較例1を100とした相対値として示す。
測定機:New View 5032(Zygo社製)
レンズ:2.5倍
ズーム:0.5倍
測定波長:159〜500μm
測定位置:基板中心より半径27mm
解析ソフト:Zygo Metro Pro(Zygo社製)
【0091】
[研磨速度の測定方法]
研磨前後の各基板の重さを重量計(Sartorius社製「BP-210S」)を用いて測定し、各基板の重量変化を求め、10枚の平均値を重量減少量とし、それを研磨時間で割った値を重量減少速度とした。この重量減少速度を下記の式に導入し、研磨速度(μm/min)に変換した。その結果を、下記表2に示す。
研磨速度(μm/min)=重量減少速度(g/min)/基板片面面積(mm2)/Ni−Pメッキ密度(g/cm3)×106
(基板片面面積:6597mm2、Ni−Pメッキ密度:7.99g/cm3として算出)
【0092】
【表2】

【0093】
上記表2に示すとおり、実施例1〜18の研磨液組成物は、比較例1〜7の研磨液組成物に比べて、泡立ちが少なく、高い研磨速度を維持しつつ、基板表面のスクラッチ及びうねりを効果的に低減することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、例えば、高記録密度化に適した磁気ディスク基板を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨材、水溶性重合体、及び水を含有する研磨液組成物であって、前記水溶性重合体が、スルホン酸基を有し、かつ、主鎖及び側鎖のそれぞれに芳香族環を有する、研磨液組成物。
【請求項2】
前記水溶性重合体が、繰り返し単位の主鎖及び側鎖のそれぞれに芳香族環を持つ構成単位とスルホン酸基を持つ構成単位とを有する水溶性共重合体である、請求項1記載の研磨液組成物。
【請求項3】
前記水溶性重合体が、ホルムアルデヒドとの付加縮合により合成される水溶性重合体である、請求項1又は2に記載の研磨液組成物。
【請求項4】
前記水溶性重合体が、繰り返し単位の主鎖及び側鎖のそれぞれに芳香族環を持つ下記一般式(I)で表される構成単位Aを有する、請求項1から3のいずれかに記載の研磨液組成物。
【化1】

[式(I)中、Xは、結合手、−CH2−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、又は、
【化2】

であり、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、又は−OMであり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、有機カチオン及び水素原子からなる群から選択される。]
【請求項5】
前記水溶性重合体が、下記一般式(II)で表されるスルホン酸基を持つ構成単位Bを有する、請求項1から4のいずれかに記載の研磨液組成物。
【化3】

[式(II)中、R3は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、又は−OM2であり、M1及びM2は、同一又は異なって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機カチオン及び水素原子からなる群から選択される。]
【請求項6】
前記水溶性共重合体を構成する全構成単位中における構成単位Aと構成単位Bとのモル比(構成単位A/構成単位B)が、70/30〜5/95である、請求項5記載の研磨液組成物。
【請求項7】
前記研磨液組成物中のホルムアルデヒド含有量が、10ppm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の研磨液組成物を被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び/又は前記被研磨基板を動かして研磨する工程を含む、基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の研磨液組成物を被研磨基板の研磨対象面に供給し、前記研磨対象面に研磨パッドを接触させ、前記研磨パッド及び/又は前記被研磨基板を動かして研磨することを含む、基板の研磨方法。

【公開番号】特開2012−135863(P2012−135863A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204409(P2011−204409)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】