砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法
【課題】 コンクリート用骨材として用いられる砕砂の製造工程から排出される泥水と、河川の保全作業で生じるゴミとを、廃棄することなく有効に再利用する手段を提供する。
【解決手段】 本発明に係る砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法は、原砂を破砕または磨砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分2を分離する泥水分離工程S1と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥3を生成する堆肥化工程S2と、泥水分離工程S1で分離された泥分2と堆肥化工程S2で生成された堆肥3とを混合する混合工程S4と、泥分2と前記堆肥3の混合物8を粒状に成型する粒状化工程S5と、粒状に成型した混合物8に植物25の種子23と水とを混入してなる植物生育基材22を法面または崩落斜面等の斜面21に吹き付ける斜面吹付工程S6と、を含むものである。
【解決手段】 本発明に係る砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法は、原砂を破砕または磨砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分2を分離する泥水分離工程S1と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥3を生成する堆肥化工程S2と、泥水分離工程S1で分離された泥分2と堆肥化工程S2で生成された堆肥3とを混合する混合工程S4と、泥分2と前記堆肥3の混合物8を粒状に成型する粒状化工程S5と、粒状に成型した混合物8に植物25の種子23と水とを混入してなる植物生育基材22を法面または崩落斜面等の斜面21に吹き付ける斜面吹付工程S6と、を含むものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用骨材として用いられる砕砂の製造工程から排出される泥水の再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート用骨材として砕砂が多く用いられている。この砕砂は、例えば、内部に媒体石を収容し回転駆動される攪拌ドラム内へ、岩山を切り砕いて採取して砕いた岩石や砂利等からなる原砂を水と混合させた状態で供給し、攪拌ドラムを回転させて原砂をこの原砂を摩耗させるための所定の大きさに形成されている触媒石と所定時間をかけて磨砕させることにより製造される。このようにして製造された砕砂は、攪拌ドラムの排出口に設けられた網状体により選別されて所定粒度以下のものだけが水と共に外部へ排出され、攪拌ドラムの下方に設置された排出シュートによって回収される。この排出シュート内に貯溜し沈殿している砕砂の中から所定粒度以上、例えば0.074mm以上の砕砂を取り出して、コンクリート用骨材として使用する。ここで、砕砂を取り出した後の排出シュート内には、所定粒度以下の微小な砕砂が溶け込んだ泥水が大量に残留する。このような泥水は、産業廃棄物として然るべき場所に廃棄しなければならないため、泥水中から泥分を分離して運搬しやすくした上で、土等を混ぜて粘度を調製してから岩山を切り砕いてできた穴部などの元の場所へ埋め戻すなど所定の廃棄場所に埋め立て処分している。
【0003】
一方、従来、国等によって管理される大規模な河川では、所定期間ごとにその保全作業が行われる。この保全作業に際しては、土手の除草作業により生じる刈草や、繁殖する小木の剪定作業により生じる剪定材や、河原の清掃作業により収集される流木等のゴミが大量に発生するため、これらのゴミを焼却したり埋め立てる等して処分している。
【0004】
また、近年、景観調和及び安全性確保の観点から、造成地の法面や崩落斜面(以下、単に「斜面」という)の保護・管理が求められている。すなわち、このような斜面は、その地表面が露出して景観が損なわれるとともに、むき出しとなった石や土が崩落する恐れがある。従って、このような斜面に対し、土や肥料に植物の種子を混入してなる植物生育基材を吹き付けることにより斜面の緑化を図る斜面緑化工法が従来用いられている。この斜面緑化工法によれば、斜面を緑化して周囲の景観に調和させることができるとともに、植物の根の力を利用して斜面の安定化を図ることができる(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−221758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の砕砂の製造工程から排出される泥水の処分方法では、泥水中から泥分のみを分離する分、廃棄場所までの運搬コストが低減するとはいえ、依然として泥分の運搬や埋め立てには多大なコストを要する。従って、泥水を産業廃棄物として廃棄することなく有効に再利用する新たな途が求められている。
【0007】
また、従来の河川の保全作業から生じるゴミの処分方法では、焼却や埋め立てに多大なコストを要する。従って、これらのゴミについても有効な再利用方法が求められている。
【0008】
また、従来の斜面緑化工法では、植物の育成により適した植物生育基材を作製すべく、市販の有機質土壌や肥料を使用すると、植物生育基材の作製コストが増加するという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、砕砂製造工程から排出された泥水と、河川の保全作業で生じるゴミとを、斜面緑化工法における植物生育基材の原料として使用する等して、廃棄することなく有効に再利用する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1の発明は、原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物に植物の種子と水とを混入してなる植物生育基材を法面または崩落斜面に吹き付ける斜面吹付工程と、を含むものである。尚、本発明において磨砕とは、砂や石相互間の摩擦力を利用して細粒化する処理をいう。
【0011】
請求項2の発明は、前記法面または崩落斜面に、前記吹き付けた植物生育基材の崩落を防止する崩落防止ネットをあらかじめ敷設しておくものである。
【0012】
請求項3の発明は、原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物を乾燥させた状態で水田、畑、または果樹園に散布する散布工程と、を含むものである。
【0013】
請求項4の発明は、前記堆肥化工程で生成された堆肥をふるいにかけて、8mm以下好ましくは5mm以下の堆肥を選別する堆肥選別工程を更に含むものである。
【0014】
請求項5の発明は、前記原砂が、安山岩または結晶片岩を含んでなるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明によれば、原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物に植物の種子と水とを混入してなる植物生育基材を法面または崩落斜面に吹き付ける斜面吹付工程とを含むので、砕砂製造工程から排出される泥水を産業廃棄物として廃棄することなく有効に再利用し、泥水の運搬及び埋め立てに要するコストを削減することができる。また、植物生育基材を粒状に成型したことにより、その容量が成型前と比較して圧縮されて小さくなるので、運搬性及び保管性を向上させるとともに機械散布適正を向上させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、産業廃棄物である砕砂製造工程で生じた粒度の小さい泥と河川の保全作業等によって生じた刈草等の粗大ゴミを原料とする堆肥とを1箇所例えば砕砂製造工場に集めて泥分と堆肥の混合物を製造できるので、従来それらの処理に多大の経費や手数を要していたものを植物生育基材として有効に活用できることとなり、資源の有効活用を図ることができる効果がある。
【0017】
また、本発明の請求項2に係る発明によれば、前記法面または崩落斜面に、前記吹き付けた植物生育基材の崩落を防止する崩落防止ネットをあらかじめ敷設しておくので、斜面の傾斜が急な場合でも、植物生育基材を斜面に確実に付着させその崩落を防止することができる。
【0018】
また、本発明の請求項3に係る発明によれば、原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物を乾燥させた状態で水田、畑、または果樹園に散布する散布工程とを含むので、粒状の混合物中に含まれる堆肥によって農作物の育成が促進される。また、化学肥料の使い過ぎによって酸性化した田畑等の土壌を、有機栽培に適した土壌へと改良することができる。更に、乾燥した状態の混合物は、土壌中で比較的長期間その形状が維持され、その分解は緩やかに進行する。従って、原料とした堆肥が未熟であって、易分解性有機物が未分解のまま残留している場合であっても、土壌中で易分解性有機物が急激に分解されて酸素が消費されることにより作物の育成が阻害される問題を抑制することができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に係る発明によれば、前記堆肥化工程で生成された堆肥をふるいにかけて、8mm以下好ましくは5mm以下の堆肥を選別する堆肥選別工程を更に含むので、堆肥中の異物を除去するとともに、堆肥の粒度を揃えることができる。
【0020】
また、本発明の請求項5に係る発明によれば、前記原砂が、安山岩または結晶片岩を含んでなるので、前記堆肥の養分に加えて、安山岩や結晶片岩中に含有されるミネラル分によって、植物や農作物の育成を更に促進することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の第1実施例に係る砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法について、図面に基づいて説明する。本実施例に係る砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法は、図1に示すように、砕砂の製造工程から排出された泥水から泥分を分離する泥水分離工程S1と、刈草、剪定材、流木等の産業廃棄物を野積み等して堆肥化する堆肥化工程S2と、完熟若しくは半熟させて生成した堆肥をふるいにかけて8mm以下、好ましくは5mm以下のものを選別する堆肥選別工程S3と、泥水分離工程S1で分離された泥分と堆肥選別工程S3で選別された堆肥とを混合する混合工程S4と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程S5と、前記粒状に成型した混合物に植物の種子を混入してなる植物生育基材を斜面に吹き付ける斜面吹付工程S6とを含んでなるものである。以下、各工程について更に詳細に説明する。
【0022】
泥水分離工程S1は、例えば、本出願人が特許第3433250号で既に開示している泥水分離装置を用いて行う。この泥水分離装置は、円筒形状であって周方向に回転自在に支持された装置本体を備えるものであり、この装置本体に対し、本出願人が特許第2964133号で既に公開しているコンクリート用砕砂製造装置から排出された泥水が凝集剤と混合された状態で供給される。この状態から、装置本体が回転して泥水を攪拌することにより、泥水は泥分と水分とに分離され、泥分が装置本体内部に沈殿する。また、装置本体の内部には、ふるい網が所定形状に保持されてなる分離スクリーンが複数配置されており、該分離スクリーンが装置本体と一体的に回転することにより、装置本体内部に沈殿した泥分をすくい上げる。このようにして、泥水から泥分のみを分離することが可能となっている。本実施例では、安山岩や結晶片岩から砕砂を製造する場合に排出される泥水を前記泥水分離装置で分離することにより、安山岩や結晶片岩の0.074mm以下の微小な砕砂からなり、含水率が30〜35%程度の泥分を採集している。このような泥分を原料として植物生育基材を作製することにより、安山岩や結晶片岩中に多く含まれるカリウム・マグネシウム・カルシウム・ナトリウム・鉄等のミネラル分によって、植物の育成が促進されるという利点がある。表1は、本発明で植物生育基材の原料とした泥分について、その組成をけい光X線分析装置によって分析した結果を示している。
【0023】
【表1】
1)測定機器:けい光X線分析装置
2)測定条件
X線管球:ロジウム管球 エンドウインドウ型
印加電圧―電流:50kV−50mA
測定方法:FPオーダー分析
測定元素範囲:原子番号9(F)〜92(U)
【0024】
堆肥化工程S2は、本実施例では、河川や土手の保全作業によって生じた産業廃棄物を堆肥化することにより行っている。すなわち、河川や土手の保全作業においては、除草作業により生じる刈草や、繁殖する小木の剪定作業により生じる剪定材や、河原の清掃作業により収集された流木等を産業廃棄物として処分する必要がある。本発明では、これら産業廃棄物を1箇所に集め、堆肥の発酵を促進する発酵菌や家畜の糞尿等を混入した上で、約6ヶ月間に渡って野積みすることにより堆肥化している。堆肥化に際しては、野積みした上から重しを掛ける等して空気を大まかに遮断することが好適である。これにより、微生物による分解に伴う発酵熱が備蓄され、病原菌や寄生虫の卵や雑草の種子等を死滅させることができる。また、5〜7日に一度掻き回して、酸素の供給と水分の調節を行うことにより、発酵分解を促進させることができる。尚、刈草や剪定材等は、河川や土手で収集したものに限られず、例えば、公園の除草作業や植木の剪定作業によって生じたものでもよい。このように植物生育基材を構成する肥料として堆肥を用いることにより、植物生育基材を田畑等に散布することで農作物の育成を促進することができ、且つ、化学肥料の使用により酸性化した土壌を有機栽培に適した土壌へと改良することができる。
【0025】
堆肥選別工程S3は、完熟若しくは半熟させて生成した堆肥をふるいに掛けることにより、堆肥中の異物を除去するとともに、堆肥の粒度を揃える工程である。本実施例では、完成した堆肥を図示しないふるい式選別機に掛けることにより、8mm以下好ましくは5mm以下のものを選別している。
【0026】
混合工程S4は、前記泥水分離工程S1によって分離された泥分と、前記堆肥選別工程S3によって選別された堆肥とを混合する工程であり、本実施例では、図4に示す混練り機1を使用している。該混練り機1は、泥分2及び堆肥3が投入される攪拌槽4と、該攪拌槽4の内部に設けられモータ5によって回転駆動される一対の攪拌羽根6と、モータ5を操作するための操作部7と、を具備するものである。この混練り機1の内部に泥分2と堆肥3を所定量ずつ投入し、攪拌羽根6を回転させることにより、泥分2と堆肥3とが均一に混合されるものとなっている。ここで、泥分2と堆肥3の混合比率は植物の育成にとって最適な組成となるよう考慮して、比重約1.3の泥分2と約0.7の堆肥3とを、重量比で4:6程度となるように混合している。尚、本実施例の混練り機1に替えて、従来公知の他の混練り機を使用することも可能である。
【0027】
粒状化工程S5は、前記混合工程S4によって得られた泥分2と堆肥3の混合物8を粒状に成型する工程である。本実施例では、図5に示す粒状成型機9を用い、斜面吹き付け用に粒度の粗いものと、田畑等への散布用に粒度の細かいものの2種類を作製している。この粒状成型機9は、混合物8を圧縮する圧縮機10と、該圧縮機10の先端から押し出された混合物8をカットする切断機11と、を備えてなるものである。ここで、圧縮機10は、混合物8を投入するための投入口12と、一対のスクリューを互いに噛み合わせるように並設したスクリューコンベア13と、圧縮機10の先端部に形成された略円形の押出し孔14と、を具備している。一方、切断機11は、モータ15と、円盤部材16の一方の面から複数本のアーム部材17が突設されてなり前記モータ15によって回転駆動される回転体18と、アーム部材17の先端に張り渡されたピアノ線19と、を具備している。このように構成される粒状成型機9においては、圧縮機10の投入口12から混合物8が投入されると、スクリューコンベア13が混合物8を圧縮しながら搬送し、押出し孔14から押し出された混合物8がピアノ線19によって所定長さ毎に切断される。これにより、混合物8が粒状に成型されるものとなっている。このように、混合物8を粒状に成型することにより、その容量が成型前と比較して圧縮されて小さくなるので、運搬性及び保管性が向上するという利点がある。また、粒度が一定に揃うことにより機械散布適正が向上するという利点もある。このように作製した粒状物いわゆるペレット20は、成型後に乾燥させることにより、強度を高めるとともにカビ等の発生による品質劣化を防止している。尚、本実施例の粒状成型機9に替えて、従来公知の他の粒状成型機を用いることももちろん可能である。
【0028】
斜面吹付工程S6は、図2に示すように、造成地の法面や崩落斜面等の斜面21に植物生育基材22を吹き付ける工程である。本発明において植物生育基材22とは、前記粒状化工程S5により作製されたペレット20に植物の種子23と水とを混入したものをいう。本工程では、まず、前記ペレット20のうち粒度を粗く作製したものに対し植物の種子23を混入する。この混入は、例えば、吹き付けに使用する吹付け機のタンクの中にペレット20と植物の種子23を入れて攪拌することにより行う。植物の種子23を混入するタイミングとしては、前記混合工程S4において、泥分2と堆肥3に加えて植物の種子23を併せて混合することも可能である。しかし、この場合、その後の粒状化工程S5において粒状成型機9を通す際に植物の種子23が死滅する可能性があるため、種子23混入のタイミングは吹付け作業の直前としている。
【0029】
次に、コンプレッサー等を用いた従来公知の吹付け機を使用して、斜面21の上部から開始して下部方向へ向かって、植物生育基材22を5cm〜7cm程度の厚みとなるように吹き付けていく。この際、吹付け機のノズル噴射時に水と混合しながら吹き付けることにより、植物生育基材22の斜面21への付着性を高めることができ、且つ、種子23の発芽に必要な水分を植物生育基材22に保持させることができる。尚、植物生育基材22の厚みは、斜面状況等に応じて適宜変更することが可能である。また、図3に示すように、斜面21の傾斜角が45°以上であって植物生育基材22が斜面21に付着しにくい場合には、植物生育基材22を吹き付ける前に、予め斜面21を覆うようにしてステンレス等からなる崩落防止ネット24を敷設し、その上から植物生育基材22を吹き付けることにより、植物生育基材22を確実に斜面21に付着させその崩落を防止することができる。
【0030】
斜面吹付工程S6から暫くすると、図2及び図3に示すように、植物生育基材22中の種子23が発芽して斜面21が植物25で覆われる。これにより、斜面21を周囲の景観に調和させることができるとともに、植物25の根の力を利用して斜面21を安定化させることができる。
【0031】
以下、本発明の第2実施例に係る砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法について図面に基づいて説明する。本実施例に係る砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法は、図1に示すように、砕砂の製造工程から排出された泥水から泥分を分離する泥水分離工程S1と、刈草、剪定材、流木等の産業廃棄物を野積みして堆肥化する堆肥化工程S2と、作製された堆肥から粒度が所定の大きさ以下のものを選別する堆肥選別工程S3と、泥水分離工程S1で分離された泥分と堆肥選別工程S3で選別された堆肥とを混合する混合工程S4と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程S5と、前記粒状の混合物を田畑等に散布する散布工程S7と、を含んでなるものである。ここで、泥水分離工程S1、堆肥化工程S2、堆肥選別工程S3、混合工程S4、及び粒状化工程S5については第1実施例と同様の手順であるため、ここでは説明を省略する。
【0032】
散布工程S7は、図6に示すように、水田、畑、または果樹園等の田畑26に前記ペレット20を有機肥料として散布する工程である。本実施例では、従来公知の肥料散布機を用い、ペレット20のうち粒度を細かく作製したものを乾燥した状態のまま田畑26に散布している。このように、ペレット20に水分を含ませず乾いた状態のまま散布することにより、土壌中で比較的長期間ペレット20の形状が維持されるので、ペレット20の分解は緩やかに進行する。従って、ペレット20の原料とした堆肥3が未熟であって、易分解性有機物が未分解のまま残留している場合であっても、土壌中で易分解性有機物が急激に分解されて酸素が消費されることにより作物の育成が阻害される問題を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係る各工程の流れを示すフローチャート。
【図2】本発明の第1実施例に係る斜面吹付工程S6を示す概略縦断面図。
【図3】本発明の第1実施例に係る斜面吹付工程S6を示す概略縦断面図。
【図4】本発明の実施例に係る混練り機1を示す概略斜視図。
【図5】本発明の実施例に係る粒状成型機9を示す概略斜視図。
【図6】本発明の第2実施例に係る散布工程S7を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0034】
2 泥分
3 堆肥
8 混合物
21 斜面
22 植物生育基材
23 種子
24 崩落防止ネット
25 植物
26 田畑
S1 泥水分離工程
S2 堆肥化工程
S3 堆肥選別工程
S4 混合工程
S5 粒状化工程
S6 斜面吹付工程
S7 散布工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用骨材として用いられる砕砂の製造工程から排出される泥水の再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート用骨材として砕砂が多く用いられている。この砕砂は、例えば、内部に媒体石を収容し回転駆動される攪拌ドラム内へ、岩山を切り砕いて採取して砕いた岩石や砂利等からなる原砂を水と混合させた状態で供給し、攪拌ドラムを回転させて原砂をこの原砂を摩耗させるための所定の大きさに形成されている触媒石と所定時間をかけて磨砕させることにより製造される。このようにして製造された砕砂は、攪拌ドラムの排出口に設けられた網状体により選別されて所定粒度以下のものだけが水と共に外部へ排出され、攪拌ドラムの下方に設置された排出シュートによって回収される。この排出シュート内に貯溜し沈殿している砕砂の中から所定粒度以上、例えば0.074mm以上の砕砂を取り出して、コンクリート用骨材として使用する。ここで、砕砂を取り出した後の排出シュート内には、所定粒度以下の微小な砕砂が溶け込んだ泥水が大量に残留する。このような泥水は、産業廃棄物として然るべき場所に廃棄しなければならないため、泥水中から泥分を分離して運搬しやすくした上で、土等を混ぜて粘度を調製してから岩山を切り砕いてできた穴部などの元の場所へ埋め戻すなど所定の廃棄場所に埋め立て処分している。
【0003】
一方、従来、国等によって管理される大規模な河川では、所定期間ごとにその保全作業が行われる。この保全作業に際しては、土手の除草作業により生じる刈草や、繁殖する小木の剪定作業により生じる剪定材や、河原の清掃作業により収集される流木等のゴミが大量に発生するため、これらのゴミを焼却したり埋め立てる等して処分している。
【0004】
また、近年、景観調和及び安全性確保の観点から、造成地の法面や崩落斜面(以下、単に「斜面」という)の保護・管理が求められている。すなわち、このような斜面は、その地表面が露出して景観が損なわれるとともに、むき出しとなった石や土が崩落する恐れがある。従って、このような斜面に対し、土や肥料に植物の種子を混入してなる植物生育基材を吹き付けることにより斜面の緑化を図る斜面緑化工法が従来用いられている。この斜面緑化工法によれば、斜面を緑化して周囲の景観に調和させることができるとともに、植物の根の力を利用して斜面の安定化を図ることができる(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−221758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の砕砂の製造工程から排出される泥水の処分方法では、泥水中から泥分のみを分離する分、廃棄場所までの運搬コストが低減するとはいえ、依然として泥分の運搬や埋め立てには多大なコストを要する。従って、泥水を産業廃棄物として廃棄することなく有効に再利用する新たな途が求められている。
【0007】
また、従来の河川の保全作業から生じるゴミの処分方法では、焼却や埋め立てに多大なコストを要する。従って、これらのゴミについても有効な再利用方法が求められている。
【0008】
また、従来の斜面緑化工法では、植物の育成により適した植物生育基材を作製すべく、市販の有機質土壌や肥料を使用すると、植物生育基材の作製コストが増加するという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、砕砂製造工程から排出された泥水と、河川の保全作業で生じるゴミとを、斜面緑化工法における植物生育基材の原料として使用する等して、廃棄することなく有効に再利用する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1の発明は、原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物に植物の種子と水とを混入してなる植物生育基材を法面または崩落斜面に吹き付ける斜面吹付工程と、を含むものである。尚、本発明において磨砕とは、砂や石相互間の摩擦力を利用して細粒化する処理をいう。
【0011】
請求項2の発明は、前記法面または崩落斜面に、前記吹き付けた植物生育基材の崩落を防止する崩落防止ネットをあらかじめ敷設しておくものである。
【0012】
請求項3の発明は、原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物を乾燥させた状態で水田、畑、または果樹園に散布する散布工程と、を含むものである。
【0013】
請求項4の発明は、前記堆肥化工程で生成された堆肥をふるいにかけて、8mm以下好ましくは5mm以下の堆肥を選別する堆肥選別工程を更に含むものである。
【0014】
請求項5の発明は、前記原砂が、安山岩または結晶片岩を含んでなるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明によれば、原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物に植物の種子と水とを混入してなる植物生育基材を法面または崩落斜面に吹き付ける斜面吹付工程とを含むので、砕砂製造工程から排出される泥水を産業廃棄物として廃棄することなく有効に再利用し、泥水の運搬及び埋め立てに要するコストを削減することができる。また、植物生育基材を粒状に成型したことにより、その容量が成型前と比較して圧縮されて小さくなるので、運搬性及び保管性を向上させるとともに機械散布適正を向上させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、産業廃棄物である砕砂製造工程で生じた粒度の小さい泥と河川の保全作業等によって生じた刈草等の粗大ゴミを原料とする堆肥とを1箇所例えば砕砂製造工場に集めて泥分と堆肥の混合物を製造できるので、従来それらの処理に多大の経費や手数を要していたものを植物生育基材として有効に活用できることとなり、資源の有効活用を図ることができる効果がある。
【0017】
また、本発明の請求項2に係る発明によれば、前記法面または崩落斜面に、前記吹き付けた植物生育基材の崩落を防止する崩落防止ネットをあらかじめ敷設しておくので、斜面の傾斜が急な場合でも、植物生育基材を斜面に確実に付着させその崩落を防止することができる。
【0018】
また、本発明の請求項3に係る発明によれば、原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物を乾燥させた状態で水田、畑、または果樹園に散布する散布工程とを含むので、粒状の混合物中に含まれる堆肥によって農作物の育成が促進される。また、化学肥料の使い過ぎによって酸性化した田畑等の土壌を、有機栽培に適した土壌へと改良することができる。更に、乾燥した状態の混合物は、土壌中で比較的長期間その形状が維持され、その分解は緩やかに進行する。従って、原料とした堆肥が未熟であって、易分解性有機物が未分解のまま残留している場合であっても、土壌中で易分解性有機物が急激に分解されて酸素が消費されることにより作物の育成が阻害される問題を抑制することができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に係る発明によれば、前記堆肥化工程で生成された堆肥をふるいにかけて、8mm以下好ましくは5mm以下の堆肥を選別する堆肥選別工程を更に含むので、堆肥中の異物を除去するとともに、堆肥の粒度を揃えることができる。
【0020】
また、本発明の請求項5に係る発明によれば、前記原砂が、安山岩または結晶片岩を含んでなるので、前記堆肥の養分に加えて、安山岩や結晶片岩中に含有されるミネラル分によって、植物や農作物の育成を更に促進することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の第1実施例に係る砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法について、図面に基づいて説明する。本実施例に係る砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法は、図1に示すように、砕砂の製造工程から排出された泥水から泥分を分離する泥水分離工程S1と、刈草、剪定材、流木等の産業廃棄物を野積み等して堆肥化する堆肥化工程S2と、完熟若しくは半熟させて生成した堆肥をふるいにかけて8mm以下、好ましくは5mm以下のものを選別する堆肥選別工程S3と、泥水分離工程S1で分離された泥分と堆肥選別工程S3で選別された堆肥とを混合する混合工程S4と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程S5と、前記粒状に成型した混合物に植物の種子を混入してなる植物生育基材を斜面に吹き付ける斜面吹付工程S6とを含んでなるものである。以下、各工程について更に詳細に説明する。
【0022】
泥水分離工程S1は、例えば、本出願人が特許第3433250号で既に開示している泥水分離装置を用いて行う。この泥水分離装置は、円筒形状であって周方向に回転自在に支持された装置本体を備えるものであり、この装置本体に対し、本出願人が特許第2964133号で既に公開しているコンクリート用砕砂製造装置から排出された泥水が凝集剤と混合された状態で供給される。この状態から、装置本体が回転して泥水を攪拌することにより、泥水は泥分と水分とに分離され、泥分が装置本体内部に沈殿する。また、装置本体の内部には、ふるい網が所定形状に保持されてなる分離スクリーンが複数配置されており、該分離スクリーンが装置本体と一体的に回転することにより、装置本体内部に沈殿した泥分をすくい上げる。このようにして、泥水から泥分のみを分離することが可能となっている。本実施例では、安山岩や結晶片岩から砕砂を製造する場合に排出される泥水を前記泥水分離装置で分離することにより、安山岩や結晶片岩の0.074mm以下の微小な砕砂からなり、含水率が30〜35%程度の泥分を採集している。このような泥分を原料として植物生育基材を作製することにより、安山岩や結晶片岩中に多く含まれるカリウム・マグネシウム・カルシウム・ナトリウム・鉄等のミネラル分によって、植物の育成が促進されるという利点がある。表1は、本発明で植物生育基材の原料とした泥分について、その組成をけい光X線分析装置によって分析した結果を示している。
【0023】
【表1】
1)測定機器:けい光X線分析装置
2)測定条件
X線管球:ロジウム管球 エンドウインドウ型
印加電圧―電流:50kV−50mA
測定方法:FPオーダー分析
測定元素範囲:原子番号9(F)〜92(U)
【0024】
堆肥化工程S2は、本実施例では、河川や土手の保全作業によって生じた産業廃棄物を堆肥化することにより行っている。すなわち、河川や土手の保全作業においては、除草作業により生じる刈草や、繁殖する小木の剪定作業により生じる剪定材や、河原の清掃作業により収集された流木等を産業廃棄物として処分する必要がある。本発明では、これら産業廃棄物を1箇所に集め、堆肥の発酵を促進する発酵菌や家畜の糞尿等を混入した上で、約6ヶ月間に渡って野積みすることにより堆肥化している。堆肥化に際しては、野積みした上から重しを掛ける等して空気を大まかに遮断することが好適である。これにより、微生物による分解に伴う発酵熱が備蓄され、病原菌や寄生虫の卵や雑草の種子等を死滅させることができる。また、5〜7日に一度掻き回して、酸素の供給と水分の調節を行うことにより、発酵分解を促進させることができる。尚、刈草や剪定材等は、河川や土手で収集したものに限られず、例えば、公園の除草作業や植木の剪定作業によって生じたものでもよい。このように植物生育基材を構成する肥料として堆肥を用いることにより、植物生育基材を田畑等に散布することで農作物の育成を促進することができ、且つ、化学肥料の使用により酸性化した土壌を有機栽培に適した土壌へと改良することができる。
【0025】
堆肥選別工程S3は、完熟若しくは半熟させて生成した堆肥をふるいに掛けることにより、堆肥中の異物を除去するとともに、堆肥の粒度を揃える工程である。本実施例では、完成した堆肥を図示しないふるい式選別機に掛けることにより、8mm以下好ましくは5mm以下のものを選別している。
【0026】
混合工程S4は、前記泥水分離工程S1によって分離された泥分と、前記堆肥選別工程S3によって選別された堆肥とを混合する工程であり、本実施例では、図4に示す混練り機1を使用している。該混練り機1は、泥分2及び堆肥3が投入される攪拌槽4と、該攪拌槽4の内部に設けられモータ5によって回転駆動される一対の攪拌羽根6と、モータ5を操作するための操作部7と、を具備するものである。この混練り機1の内部に泥分2と堆肥3を所定量ずつ投入し、攪拌羽根6を回転させることにより、泥分2と堆肥3とが均一に混合されるものとなっている。ここで、泥分2と堆肥3の混合比率は植物の育成にとって最適な組成となるよう考慮して、比重約1.3の泥分2と約0.7の堆肥3とを、重量比で4:6程度となるように混合している。尚、本実施例の混練り機1に替えて、従来公知の他の混練り機を使用することも可能である。
【0027】
粒状化工程S5は、前記混合工程S4によって得られた泥分2と堆肥3の混合物8を粒状に成型する工程である。本実施例では、図5に示す粒状成型機9を用い、斜面吹き付け用に粒度の粗いものと、田畑等への散布用に粒度の細かいものの2種類を作製している。この粒状成型機9は、混合物8を圧縮する圧縮機10と、該圧縮機10の先端から押し出された混合物8をカットする切断機11と、を備えてなるものである。ここで、圧縮機10は、混合物8を投入するための投入口12と、一対のスクリューを互いに噛み合わせるように並設したスクリューコンベア13と、圧縮機10の先端部に形成された略円形の押出し孔14と、を具備している。一方、切断機11は、モータ15と、円盤部材16の一方の面から複数本のアーム部材17が突設されてなり前記モータ15によって回転駆動される回転体18と、アーム部材17の先端に張り渡されたピアノ線19と、を具備している。このように構成される粒状成型機9においては、圧縮機10の投入口12から混合物8が投入されると、スクリューコンベア13が混合物8を圧縮しながら搬送し、押出し孔14から押し出された混合物8がピアノ線19によって所定長さ毎に切断される。これにより、混合物8が粒状に成型されるものとなっている。このように、混合物8を粒状に成型することにより、その容量が成型前と比較して圧縮されて小さくなるので、運搬性及び保管性が向上するという利点がある。また、粒度が一定に揃うことにより機械散布適正が向上するという利点もある。このように作製した粒状物いわゆるペレット20は、成型後に乾燥させることにより、強度を高めるとともにカビ等の発生による品質劣化を防止している。尚、本実施例の粒状成型機9に替えて、従来公知の他の粒状成型機を用いることももちろん可能である。
【0028】
斜面吹付工程S6は、図2に示すように、造成地の法面や崩落斜面等の斜面21に植物生育基材22を吹き付ける工程である。本発明において植物生育基材22とは、前記粒状化工程S5により作製されたペレット20に植物の種子23と水とを混入したものをいう。本工程では、まず、前記ペレット20のうち粒度を粗く作製したものに対し植物の種子23を混入する。この混入は、例えば、吹き付けに使用する吹付け機のタンクの中にペレット20と植物の種子23を入れて攪拌することにより行う。植物の種子23を混入するタイミングとしては、前記混合工程S4において、泥分2と堆肥3に加えて植物の種子23を併せて混合することも可能である。しかし、この場合、その後の粒状化工程S5において粒状成型機9を通す際に植物の種子23が死滅する可能性があるため、種子23混入のタイミングは吹付け作業の直前としている。
【0029】
次に、コンプレッサー等を用いた従来公知の吹付け機を使用して、斜面21の上部から開始して下部方向へ向かって、植物生育基材22を5cm〜7cm程度の厚みとなるように吹き付けていく。この際、吹付け機のノズル噴射時に水と混合しながら吹き付けることにより、植物生育基材22の斜面21への付着性を高めることができ、且つ、種子23の発芽に必要な水分を植物生育基材22に保持させることができる。尚、植物生育基材22の厚みは、斜面状況等に応じて適宜変更することが可能である。また、図3に示すように、斜面21の傾斜角が45°以上であって植物生育基材22が斜面21に付着しにくい場合には、植物生育基材22を吹き付ける前に、予め斜面21を覆うようにしてステンレス等からなる崩落防止ネット24を敷設し、その上から植物生育基材22を吹き付けることにより、植物生育基材22を確実に斜面21に付着させその崩落を防止することができる。
【0030】
斜面吹付工程S6から暫くすると、図2及び図3に示すように、植物生育基材22中の種子23が発芽して斜面21が植物25で覆われる。これにより、斜面21を周囲の景観に調和させることができるとともに、植物25の根の力を利用して斜面21を安定化させることができる。
【0031】
以下、本発明の第2実施例に係る砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法について図面に基づいて説明する。本実施例に係る砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法は、図1に示すように、砕砂の製造工程から排出された泥水から泥分を分離する泥水分離工程S1と、刈草、剪定材、流木等の産業廃棄物を野積みして堆肥化する堆肥化工程S2と、作製された堆肥から粒度が所定の大きさ以下のものを選別する堆肥選別工程S3と、泥水分離工程S1で分離された泥分と堆肥選別工程S3で選別された堆肥とを混合する混合工程S4と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程S5と、前記粒状の混合物を田畑等に散布する散布工程S7と、を含んでなるものである。ここで、泥水分離工程S1、堆肥化工程S2、堆肥選別工程S3、混合工程S4、及び粒状化工程S5については第1実施例と同様の手順であるため、ここでは説明を省略する。
【0032】
散布工程S7は、図6に示すように、水田、畑、または果樹園等の田畑26に前記ペレット20を有機肥料として散布する工程である。本実施例では、従来公知の肥料散布機を用い、ペレット20のうち粒度を細かく作製したものを乾燥した状態のまま田畑26に散布している。このように、ペレット20に水分を含ませず乾いた状態のまま散布することにより、土壌中で比較的長期間ペレット20の形状が維持されるので、ペレット20の分解は緩やかに進行する。従って、ペレット20の原料とした堆肥3が未熟であって、易分解性有機物が未分解のまま残留している場合であっても、土壌中で易分解性有機物が急激に分解されて酸素が消費されることにより作物の育成が阻害される問題を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係る各工程の流れを示すフローチャート。
【図2】本発明の第1実施例に係る斜面吹付工程S6を示す概略縦断面図。
【図3】本発明の第1実施例に係る斜面吹付工程S6を示す概略縦断面図。
【図4】本発明の実施例に係る混練り機1を示す概略斜視図。
【図5】本発明の実施例に係る粒状成型機9を示す概略斜視図。
【図6】本発明の第2実施例に係る散布工程S7を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0034】
2 泥分
3 堆肥
8 混合物
21 斜面
22 植物生育基材
23 種子
24 崩落防止ネット
25 植物
26 田畑
S1 泥水分離工程
S2 堆肥化工程
S3 堆肥選別工程
S4 混合工程
S5 粒状化工程
S6 斜面吹付工程
S7 散布工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物に植物の種子と水とを混入してなる植物生育基材を法面または崩落斜面に吹き付ける斜面吹付工程と、を含むことを特徴とする砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法。
【請求項2】
前記法面または崩落斜面に、前記吹き付けた植物生育基材の崩落を防止する崩落防止ネットをあらかじめ敷設しておくことを特徴とする請求項1に記載の砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法。
【請求項3】
原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物を乾燥させた状態で水田、畑、または果樹園に散布する散布工程と、を含むことを特徴とする砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法。
【請求項4】
前記堆肥化工程で生成された堆肥をふるいにかけて、8mm以下好ましくは5mm以下の堆肥を選別する堆肥選別工程を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法。
【請求項5】
前記原砂が、安山岩または結晶片岩を含んでなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法。
【請求項1】
原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物に植物の種子と水とを混入してなる植物生育基材を法面または崩落斜面に吹き付ける斜面吹付工程と、を含むことを特徴とする砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法。
【請求項2】
前記法面または崩落斜面に、前記吹き付けた植物生育基材の崩落を防止する崩落防止ネットをあらかじめ敷設しておくことを特徴とする請求項1に記載の砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法。
【請求項3】
原砂を磨砕または破砕して砕砂とする砕砂製造工程から排出される泥水から泥分を分離する泥水分離工程と、河川の保全作業によって生じた刈草、剪定材、または流木を発酵させて堆肥を生成する堆肥化工程と、前記泥水分離工程で分離された泥分と前記堆肥化工程で生成された堆肥とを混合する混合工程と、前記泥分と前記堆肥の混合物を粒状に成型する粒状化工程と、前記粒状に成型した混合物を乾燥させた状態で水田、畑、または果樹園に散布する散布工程と、を含むことを特徴とする砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法。
【請求項4】
前記堆肥化工程で生成された堆肥をふるいにかけて、8mm以下好ましくは5mm以下の堆肥を選別する堆肥選別工程を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法。
【請求項5】
前記原砂が、安山岩または結晶片岩を含んでなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の砕砂製造工程から排出される泥水の再利用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2006−132186(P2006−132186A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322168(P2004−322168)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(391060638)ナカヤ実業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(391060638)ナカヤ実業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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