説明

破砕機

【課題】アンビル及び破砕ビット間に異物が噛み込んだ際の破砕装置の主要構造物の損傷を抑制することができる破砕機を提供する。
【解決手段】破砕装置フレーム20と、破砕装置フレーム20に対して回転自在に設けたドラム部35及びドラム部35の外周部に設けた破砕ビット36を有する破砕ロータ15と、破砕ロータ15を収容する破砕室27と、破砕ロータ15の回転軌跡に間隙を介して対向するように破砕室27内に設けたアンビル34とを備えた破砕機において、アンビル34を保持し破砕装置フレーム20に対して回動自在に設けたアンビルフレーム40と、アンビル34に許容値を超える衝撃力が作用した場合にアンビルフレーム40の回動動作を許容し、破砕室27を開放するシアピン43とを有し、アンビル34は、シアピン43の許容値と同程度の衝撃力で折れるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の再利用や減容化を主な目的として、間伐材、廃木材、建設廃材等の種々の被破砕物を破砕する破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
破砕機の一種に、外周面に複数の破砕ビットを設けた破砕ロータを破砕室内で高速回転させ、破砕ビットによる打撃や破砕室内に設けたアンビル(固定刃)との衝突等によって被破砕物を破砕するものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−192377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が適用対象とする破砕機の破砕ロータは、動力源から与えられる回転動力に加え、破砕ロータ自体が持つ慣性モーメントを利用して被破砕物を打撃し破砕する。破砕対象として主に想定される木材系の被破砕物の場合、被破砕物に破砕ロータのエネルギが適度に吸収されつつ破砕作業が進捗するため、通常、アンビルと破砕ビットの間に加わる力が急激に増大することはない。しかし、被破砕物に混入した鉄塊等の破砕困難な異物がアンビルと破砕ビットの間に噛み込んだ場合、破砕ロータの慣性力が瞬間的にアンビルに作用し、アンビルに過大な衝撃力がかかってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1の破砕機では、アンビルを保持する回動可能なアンビルフレームをシアピン(剪断ピン)で保持する構成としている。このように構成することで、被破砕物に混入した異物等がアンビルと破砕ビットの間に噛み込む等して瞬間的にアンビルに過大な衝撃力が加わった場合、シアピンが切断されてアンビルフレームが回動し、破砕室が開け放たれて異物排出が図られる。
【0006】
しかしながら、破砕作業中の破砕ロータの周速度は非常に大きく(例えば50m/s程度)、またアンビルハウジングにも相応の慣性モーメントが潜在する。そのため、破砕ビットとアンビルとの間に異物が噛み込んだ瞬間の衝撃力だけでも、破砕装置の主要構造物、例えば破砕ロータやアンビルハウジング等の損傷を招く恐れがある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、アンビル及び破砕ビット間に異物が噛み込んだ際の破砕装置の主要構造物の損傷を抑制することができる破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、破砕装置フレームと、前記破砕装置フレームに対して回転自在に設けたドラム部及び前記ドラム部の外周部に設けた破砕ビットを有する破砕ロータと、前記破砕ロータを収容する破砕室と、前記破砕ロータの回転軌跡に間隙を介して対向するように前記破砕室内に設けたアンビルとを備えた破砕機において、前記アンビルを保持し、前記破砕装置フレームに対して回動自在に設けたアンビルフレームと、前記アンビルに許容値を超える衝撃力が作用した場合に、前記アンビルを前記破砕ロータから退避させるように前記アンビルフレームの回動動作を許容し、前記破砕室を開放するアンビルフレーム回動許容手段とを有し、前記アンビルは、前記アンビルフレーム回動許容手段の許容値と同程度かそれよりも小さい衝撃力で折れるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記アンビルは、前記破砕ロータとの対向部に、前記破砕ロータの回転軸の延伸方向に所定の間隔で複数のスリットを備えていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、前記アンビルは、前記破砕ロータの回転軸の延伸方向に複数に分割されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1−第3の発明のいずれかにおいて、前記破砕ビットは、前記アンビルフレーム回動許容手段の許容値と同程度かそれよりも小さい衝撃力で折れるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第1−第4の発明のいずれかにおいて、前記アンビルフレーム回動許容手段は、前記アンビルフレームを前記破砕装置フレームに対して連結するシアピンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アンビル及び破砕ビット間に異物が噛み込んだ際の破砕装置の主要構造物の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る破砕機の全体構造を示す側面図である。
【図2】本発明に係る破砕機の全体構造を示す平面図である。
【図3】本発明に係る破砕機に備えられた破砕装置の近傍の詳細構造を示す透視側面図である。
【図4】本発明に係る破砕機に備えられた破砕ロータを抜き出して表した斜視図である。
【図5】本発明に係る破砕機に備えられた破砕ビットを抜き出して表した斜視図である。
【図6】本発明に係る破砕機に備えられた破砕ビットが異物の噛み込みによって変形する様子を表した図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る破砕機に備えられたアンビルフレームを抜き出して表した斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る破砕機に備えられたアンビルを抜き出して表した斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る破砕機に備えられたアンビルの衝突面に直交する断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る破砕機に備えられたアンビルを抜き出して表した斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る破砕機に備えられたアンビルの衝突面に直交する断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る破砕機に備えられたアンビルの一つのパーツを抜き出して表した斜視図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る破砕機に備えられたアンビルを装着したアンビルフレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る破砕機の全体構造を示す側面図、図2はその平面図、図3は図1に示した破砕機に備えられた破砕装置の近傍の詳細構造を示す透視側面図である。なお、以下において、図1中の右・左に対応する方向を破砕機の前・後とする。
【0017】
図1−図3に例示した破砕機は、自力走行のための走行体1、走行体1上に設けられ受け入れた被破砕物を破砕する破砕機能構成部2、破砕機能構成部2で破砕された破砕物を搬送し機外に排出する排出コンベヤ3、及び搭載した各機器の動力源であるエンジン等を備えた動力装置(パワーユニット)4等を備えている。なお、本実施の形態の破砕機が対象とする被破砕物には、例えば森林で発生する剪定枝材や間伐材、建築物の解体に伴って発生する廃木材等の木材の他、廃プラスチック材、廃タタミ、竹材等も含まれる。木材については、比較的乾燥した硬質のものに限らず、剪定後間もない街路樹の枝葉や沿道の雑草などの水分量の多い軟質のものも含まれる。本実施の形態では、これらの破砕対象物を総称して被破砕物と記載する。
【0018】
走行体1は、トラックフレーム5、トラックフレーム5の前後両端部に設けた駆動輪6及び従動輪7、駆動輪6の軸に出力軸を連結した駆動装置(走行用油圧モータ)8、並びに駆動輪6及び従動輪7に掛け回した履帯(無限軌道履帯)9を有している。トラックフレーム5上には本体フレーム10が設けられており、この本体フレーム10によって、上記破砕機能構成部2や排出コンベヤ3、動力装置4等が支持されている。
【0019】
破砕機能構成部2は、投入される被破砕物を受け入れるホッパ11、このホッパ11内に収容配置された被破砕物の搬送手段としての送りコンベヤ12(図2参照)、送りコンベヤ12によって導入された被破砕物を破砕する破砕装置13(図3参照)、及び破砕装置13の手前で被破砕物を押圧し破砕装置13に導入される被破砕物を送りコンベヤ12と協働して破砕装置13に送り込む押圧フィーダ装置14(図3参照)を備えている。
【0020】
送りコンベヤ12は、破砕ロータ15(後述)に向かって被破砕物を搬送し供給するフィーダであり、ホッパ11内に収容されていて、破砕ロータ15(後述)近傍から後方にほぼ水平に延在している。この送りコンベヤ12は、破砕ロータ15の後方側に対向して配置されたスプロケット状の駆動輪16(図3参照)、その反対側(機体後端近傍)に設けた従動輪(図示せず)、これら駆動輪16及び従動輪の間に巻回され幅方向に複数列(この例では4列)列設された搬送ベルト(チェーンベルト)17を備えている。上記従動輪は、ホッパ11の側壁体18(図1参照)後部に設けた軸受19(図1参照)によって支持され、駆動輪16は、ホッパ11の前側にある破砕装置13の左右の側壁である破砕装置フレーム20に設けた軸受(図示せず)によって支持されている。送りコンベヤ12の駆動輪16の回転軸21は、軸受よりも機体幅方向外側に設けた駆動装置(図示せず)の出力軸にカップリング等を介して連結している。したがって、図示しない駆動装置を回転駆動させることにより、駆動輪16及び従動輪の間で搬送ベルト17が循環駆動し、送りコンベヤ12上の被破砕物が破砕装置13に供給される。
【0021】
押圧フィーダ装置14は、破砕ロータ15の上方にて機体幅方向に延在する回動軸22、回動軸22を支点に上下方向に揺動自在に支持された支持部材23、支持部材23に回転自在に支持されて破砕ロータ15の後方側で送りコンベヤ12の搬送面に対向する押えローラ24を備えている。
【0022】
回動軸22は破砕装置フレーム20に設けた軸受(図示せず)に回転自在に支持されている。
【0023】
支持部材23は、回動軸22を支点に回動するアーム部25、及びアーム部25の先端側に連結された押えローラ取り付け用のブラケット部26を備えている。アーム部25の下面は円弧状に湾曲しており、この湾曲部には、破砕ロータ15を収容する破砕室27(後述)の上部を画定する湾曲板28が取付けられている。
【0024】
押えローラ24は、幅方向(図3中の紙面直交方向)の寸法が送りコンベヤ12の搬送面の幅と同等かそれよりも大きく設定されており、その胴部内に駆動装置(図示せず)を内蔵している。押えローラ24は、この図示しない駆動装置によって送りコンベヤ12による被破砕物の搬送速度と同程度の周速度で回転し、押え込んだ被破砕物を送りコンベヤ12と協働して破砕室27(後述)に導入する。
【0025】
また、押圧フィーダ装置14はメンテナンス等の際に油圧シリンダ29によって強制的に上下動させることができるようになっている。油圧シリンダ29は、破砕装置フレーム20に対して固定されたブラケット30にボトム側端部が、アーム部25の上面後端部に設けたブラケット32にロッド側端部がそれぞれ回動可能に連結されている。
【0026】
破砕装置13は、本体フレーム10(図1参照)の長手方向のほぼ中央部上に位置し、図3に示すように、破砕室27内で高速回転する破砕ロータ15、及び破砕ロータ15の径方向外側に設けたアンビル(固定刃)34を備えている。破砕ロータ15の周囲には、送りコンベヤ12の臨む部分から破砕ロータ15の正転方向(図3中の時計回り方向)に、湾曲板28、アンビル34、湾曲板41、スクリーン(篩部材)38が破砕ロータ15を包囲するように設けられており、これら湾曲板28、アンビル34、スクリーン38等によって、破砕ロータ15周りに円筒状に上記破砕室27が画定されている。
【0027】
ここで、図4は破砕ロータ15を抜き出して表した斜視図である。
【0028】
図4に示したように、破砕ロータ15は、破砕装置フレーム20に対して回転自在に設けた円筒状のドラム部35、及びドラム部35の外周部に設けた複数の破砕ビット(回転刃)36を有している。ドラム部35の回転軸(図示せず)は、左右の破砕装置フレーム20に対して固定された軸受37に回転自在に支持されており、破砕装置用の駆動装置(図示せず)とベルト33を介して連結されていて、破砕装置用の駆動装置によって回転駆動する。破砕ビット36は、ドラム部35の軸方向の中央が回転方向(矢印で示した正転方向)後側に後退したV字状に配列されていて、ドラム部35に外周面に設けた台座35aにボルト35bで取り付けられている。
【0029】
図5は破砕ビット36を抜き出して表した斜視図である。
【0030】
図5に示したように、破砕ビット36は、台座35aに対する取付部36aと、被破砕物を打撃する本体部36bとを備えている。取付部36aは切り欠き部36cを有しており、ドラム部35の径方向外側から台座35bに挿入した後、台座35aにボルト35bを通した際に当該ボルト35bが切り欠き部36cに係合することによって台座35aに固定される。本体部36bは、ドラム部35の正転方向の前方側を向く打撃面36dを有する打撃部36eと、打撃部36e及び取付部36aの間に介在し台座35aに着座する基部36fとでL字型に形成されている。このとき、打撃面36dに衝撃荷重がかかった場合、取付部36aにおける本体部36bとの境界部分の断面S1に剪断力が作用する。本実施形態では、打撃部36eの先端側(ドラム部35の径方向外側)部分の打撃面36dと交わる断面S2が断面S1よりも小さく、取付部36aに優先して打撃部36eが折れ曲がるようにしてある。破砕ビット36の材質にもよるが、断面S2は、後述するシアピン(アンビルフレーム回動許容手段)43の許容値と同程度かそれよりも僅かに小さい程度の衝撃力で図6に示したように打撃部36eが折れ曲がるように設計されている。
【0031】
図3に戻り、アンビル34は、破砕ロータ15の回転軌跡に間隙を介して対向するように破砕室27内に設けられていて、破砕室27内に導入された被破砕物が衝突する衝突面39を有し、破砕ロータ15の回転に伴って破砕室27内を周回する破砕片が衝突面39に衝突するように、アンビルフレーム40における上記湾曲板41の取付部よりも破砕ロータ15の正転方向上流側に取り付けられている。前出の押圧フィーダ装置14の回動軸22の上方には、破砕装置フレーム20に支持された回動軸31が機体の左右方向に延在している。アンビル34を保持するアンビルフレーム40は、この回動軸31を支点に破砕装置フレーム20に対して前後方向に回動可能に支持され、さらに左右の破砕装置フレーム20に渡したビーム42及びシアピン43を介して破砕装置フレーム20に連結されていて(図7で後述)、通常時は、アンビル34を破砕室27が臨む姿勢で回動動作が拘束されている。すなわち、運転中にシアピン43の許容剪断応力を超える衝撃荷重がアンビル34に作用した場合、アンビルフレーム回動許容手段としてのシアピン43が破断してアンビルフレーム40の拘束が解かれ、アンビルフレーム40が回動軸31を中心に回動運動して破砕ロータ15から遠ざかり(破砕ロータから退避し)、破砕室27が開放される構成である。
【0032】
スクリーン38は、多数の排出孔(図示せず)を有し円弧状に曲成された板状の篩部材であり、アンビル34に対して破砕ロータ15の正転方向前方側において、スクリーンホルダ44に保持されて破砕ロータ15の下半側に対向している。スクリーン38は、破砕ロータ15の回転方向に複数枚(本実施の形態では4枚)並べて設けられている。破砕室27内で破砕されつつある破砕片のうち排出孔を通過する粒度のものはスクリーン38を通過して破砕装置13から排出され、スクリーン38を通過せず破砕室27を周回する破砕片は、スクリーン38と破砕ロータ15との間で衝突や剪断、すり潰し等の作用、また破砕ビット36やアンビル34との衝突の作用によって細かくされ、いずれスクリーン38を介して排出される。したがって、スクリーン38の排出孔の大きさによって破砕装置13から排出される破砕物の粒度が調整される。
【0033】
スクリーン38を支持するスクリーンホルダ44は、機体幅方向に延びる軸45を支点にしてシリンダ47(ロッドのみ図示)の伸縮動作に伴って上下方向に回動する構成であり、図3の状態(作業時の姿勢)から下降した場合には破砕装置フレーム20より低位置にスクリーン38が降下し、機体の側方からスクリーン38を抜き差しすることができる。
【0034】
シリンダ47は、例えば油圧シリンダ(電動シリンダでも良い)であり、左右の本体フレーム10(図3では図示省略している)上にそれぞれ1本ずつ設置されている。各シリンダ47は、破砕装置13の前方側に位置し、ボトム側が本体フレーム10上に固設したブラケット(図示せず)に連結されており、ブラケット49との連結部を基端として後方に延在している。シリンダ47のロッド先端部は本体フレーム10に沿って前後にスライドするスライダ48に接続されている。スライダ48は、アーム46を介してスクリーンホルダ44の前端部近傍に連結されている。アーム46の両端は、スライダ48とスクリーンホルダ44に対して回動可能に連結されている。図3から判るように、スライダ48及びアーム46はリンク機構を構成しており、スライダ48とアーム46によって、シリンダ47の伸縮動作がスクリーンホルダ44の上下方向への動きに変換される。なお、スクリーンホルダ44やアーム46の長さ、シリンダ47の前後位置等は、スクリーンホルダ44を上昇させた状態(図3の状態)のときに、アーム46が破砕室27の概ね接線方向に沿って本体フレーム10に対して直角近くまで立ち上がる角度となるように設定されており、リンク機構によるスクリーンホルダ44の押し上げ力や姿勢保持力が効果的に得られるように配慮されている。
【0035】
図1及び図2に戻り、排出コンベヤ3は、破砕装置13から排出された破砕物を機外に排出するもので、前後両端に図示しない駆動輪及び従動輪を設けたコンベヤフレーム50、駆動輪と従動輪との間に巻回したコンベヤベルト(図示せず)の搬送面の上方を覆うようにコンベヤフレーム50に取り付けたコンベヤカバー51、駆動輪を回転駆動させる駆動装置(排出コンベヤ用油圧モータ)52等を有している。排出コンベヤ3の排出側(前方側)の部分は動力装置4の支持部から突出して設けた支持部材53によって吊り下げ支持されており、反対側(後方側)の端部は支持部材54を介して本体フレーム10から吊り下げ支持されている。排出コンベヤ3は、破砕装置13の下方から前方に延在し、動力装置4の下方辺りから、前方に向かって上方に傾斜している。但し、このように屈曲したコンベヤを用いずに、本体フレーム10の下部領域において破砕装置13の下方から前方に延在するストレートな第1のコンベヤと、第1のコンベヤの放出端の下方から前方に向かって上り傾斜のストレートな第2のコンベヤとで排出コンベヤを構成する場合もある。
【0036】
動力装置4は、本体フレーム10の長手方向他方側の端部上に、支持部材55を介して搭載されている。この動力装置4の後方側でかつ機体幅方向一方側(図2中下側)の区画には運転席56が設けられている。運転席56には破砕機を走行操作用するための操作レバー57が設けられており、運転席56の下方にはその他の操作や設定、モニタリング等を行うための操作盤58が設けられている。操作盤58は、本例では地上から作業者が操作し易いよう機体の側部に設けられているが、運転席56に設けても構わない。
【0037】
図7は前述したアンビルフレーム40を抜き出して表した斜視図である。
【0038】
前述したように、アンビルフレーム40は、回転軸31を支点に回動可能である。回動軸31の両端は軸受60によって左右の破砕装置フレーム20に支持されている。機体の左右方向から見ると、シアピン43に拘束されたアンビルフレーム40は、回動軸31から破砕ロータ15に向かって延びるアンビル保持部61と、前方に延びる回動拘束部62とで、「へ」の字型に形成されている。回動拘束部62は、回動軸31の軸方向の中央部にブラケット63を備えている。ブラケット63は回動拘束部62に対して着脱可能にボルト締結されている。図3や図6に示したビーム42には、ブラケット63に対向するようにボルトによってブラケット64が着脱可能に締結されている。ブラケット63,64には前後方向にシアピン43の通し孔が貫通しており、これらブラケット63,64にシアピン43が通されて適宜抜け止めされることによって、アンビルフレーム40がシアピン43を介して破砕装置フレーム20に連結される。
【0039】
アンビル保持部61の先端部には、破砕ロータ15の正転方向の後向きの位置にアンビル34の取付座65が設けられている。取付座65は破砕ロータ15の回転軸方向に延在し、破砕ロータ15のドラム部35やアンビル34と同程度の長さがある。この取付部65には、破砕ロータ15の回転軸方向に延在する凸部66が設けられている。
【0040】
図8はアンビル34を抜き出して表した斜視図、図9はアンビル34の衝突面に直交する断面図である。
【0041】
アンビル34は、破砕ロータ15の回転軸の延伸方向に延在し、図8及び図9に示したように、取付座65に対する取付面67側に、破砕ロータ15の回転軸方向に延在する凹部68が設けられている。この凹部68は、取付座65の凸部66に断面形状が対応しており、取付座65の凸部66に嵌合してアンビル34が取付座65に係合する。
【0042】
アンビル34には、破砕ロータ15の回転軸方向に所定間隔で複数の座ぐり付き貫通孔69が設けられており、これら座ぐり付き貫通孔69を介して、例えば六角孔付きボルト73(図7参照)等を取付座65に取り付けることによってアンビル34が取付座65に固定されている。先に説明した凸部66と凹部68の嵌め合い構造によって、これらボルト73にかかる剪断力が抑制される構成である。
【0043】
アンビル34の破砕ロータ15の正転方向の後側を向いた面、すなわち取付面67の反対側の面は、破砕室27内の破砕片が衝突する衝突面39である。先に説明したように、座ぐり付き貫通孔69に六角孔付きボルト73を通すことで、ボルト73の頭が衝突面39から突き出ないようにしてある。
【0044】
図8及び図9を見て分る通り、アンビル34は、取付面67側に対して、衝突面39側が破砕ロータ15側に長く形成されている(この部分をダンパ部71と称することとする)。つまり、ダンパ部71は、衝突面39の破砕ロータ15側の先端部付近の部位であり、アンビル34の取付座65から破砕ロータ15側に突出し、かつアンビル34の他の部分に比べて薄く形成されている。本実施形態では、ダンパ部71は、衝突面39と反対側の面が破砕ロータ15に向かって衝突面39側に傾斜していて、破砕ロータ15に向かって薄くなるように形成してある。
【0045】
また、アンビル34のダンパ部71には、自己の延在方向(破砕ロータ15の回転軸方向)に所定の間隔で設置された複数のスリット72が、破砕ロータ15に対向部して設けられている。各スリット72は破砕ロータ15の径方向に延び、破砕ロータ15の回転軸方向にダンパ部71を複数に分断している。このダンパ部71は、これらスリット72で分断することで意図的に強度を低下させてあり、アンビル34に過大な衝撃力が加わってシアピン43が折損するような場面で、折れ曲がるようにしてある。ダンパ部71の強度は、シアピン43の剪断許容値と同程度又はそれよりも若干小さい程度の衝撃力で折れ曲がるように設計してある。なお、本実施形態では、スリット72は、座ぐり付き貫通孔69の間に設けられているが、この限りではない。
【0046】
次に上記構成の本実施の形態の破砕機の動作を説明する。
【0047】
グラップル等の適宜の作業具を備えた重機(油圧ショベル等)等によってホッパ11内に被破砕物を投入すると、被破砕物が送りコンベヤ12の搬送ベルト17上に載置され、循環駆動する搬送ベルト17によって破砕装置13に向かって搬送される。被破砕物が押圧フィーダ装置14付近まで搬送されると、押えローラ24が被破砕物上に乗り上げ、押えローラ24の自重により被破砕物が送りコンベヤ12の搬送面に押し付けられる格好となる。このようにして押えローラ24は、送りコンベヤ12との間に被破砕物を挟持した状態で、送りコンベヤ12と協働して破砕室27へ被破砕物を導入する。その際、被破砕物は押圧ローラ24と送りコンベヤ12とに挟持された部分を支点に片持ち梁状に破砕室27内に向かって突出する。
【0048】
破砕室27内に突出した被破砕物には高速回転する破砕ロータ15の破砕ビット36が下方から衝突し、これにより被破砕物が粗破砕される。このように粗破砕されて破砕室27内に跳ね上げられた被破片はアンビル34に衝突し、その衝撃力によりさらに細かく破砕される。破砕片はその後も破砕ロータ15の回転に伴って破砕室27内を周回し、破砕ビット36、アンビル34、またスクリーン38等の破砕室27の内壁面等との衝突作用や剪断作用、すり潰し作用等を受けて破砕される。そして、周回する破砕片のうちスクリーン38の排出孔を通過する大きさに細粒化されたものが順次スクリーン38を通過して破砕室27から排出される。破砕室27から排出された破砕物は、排出コンベヤ3上に落下して排出コンベヤ3によって搬送され機外に排出される。
【0049】
ここで、先の図6の右図に示したように、被破砕物に混入して金属塊等の異物Aがビット36とアンビル34の間に噛み込んだ場合、破砕ロータ15の回転モーメントが瞬間的にアンビル34に伝達される結果、通常の被破砕物を破砕しているときに比べてアンビル34に大きな衝撃力が作用する。
【0050】
破砕運転中、アンビル34に作用する衝撃力はアンビルフレーム40を介してシアピン43に伝達されており、異物Aの噛み込みによる過大な衝撃力がシアピン43の許容剪断応力を超えた場合、シアピン43は破断し、アンビルフレーム43の拘束が解かれる。
【0051】
このとき、本実施形態では、想定を超える過大な衝撃力が生じた場合に優先的に折れ曲がるダンパ部71がアンビル34に設けてある。また、破砕ビット36側も、打撃部36eが他の部分に優先して折れ曲がり易くなっている。したがって、シアピン43が折損するような過大な衝撃力が破砕ビット36とアンビル34との間に発生した場合、破砕ビット36の打撃部36e及びアンビル34のダンパ部71が折れ曲がる。こうした破砕ビット36とアンビル34の変形によって、異物Aが噛み込んだ際に破砕ロータ15からアンビル34に衝撃力が伝達する時間を長く確保してエネルギーを散逸させ、時間当たりの衝撃力を抑えることができる。これにより、破砕ロータ15やアンビルフレーム40等といった破砕装置13の主要構造物に作用する衝撃力が軽減することができ、それら主要構造物の損傷を抑制することができる。
【0052】
併せて、アンビル34が変形することにより、アンビル34及びアンビルフレーム40からなる回転体の慣性モーメントが減少する。その結果、シアピン43の折損時のアンビルフレーム40の回動速度の向上、破砕室27の開放に要する時間の短縮、ひいては破砕室27からの異物Aの排出性の向上を期待することができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、アンビル34とともに破砕ビット36もシアピン43が破断する程度の衝撃力で変形する構成としているが、シアピン43が破断する程度の衝撃力で変形するのはアンビル34のみとしても良い。また、アンビル34のダンパ部71にスリット72を設けたが、材質や厚みでダンパ部71の降伏条件が調整できる場合は、スリット72を省略しても良い。アンビル34の構成は適宜設計変更可能である。
【0054】
図10は本発明の第2実施形態に係る破砕機に備えられたアンビル34Aを抜き出して表した斜視図、図11はアンビル34Aの衝突面に直交する断面図である。これらの図において第1実施形態と同様の部分には図1−図9と同符号を付して説明を省略する。
【0055】
図10及び図11に示したように、本実施の形態が第1実施形態と相違する点はアンビル34Aの断面形状にある。図11に示した通り、アンビル34Aの断面形状は、衝突面39及び取付面67を長辺とする矩形状を基礎とし、取付面67側に凹部68,75を設けた形状である。凹部68は第1実施形態と同じくアンビルフレーム40側の取付座65との嵌合部である。凹部75は、凹部68及び取付座35aよりも破砕ロータ15側にあり、この凹部75から破砕ロータ15側の部分が本実施形態におけるダンパ部71Aを構成している。本実施形態において、凹部75は角のない断面形状をしているが、角が付いていても機能的には問題なく、その形状は特に限定されない。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0056】
本実施形態においても、アンビル34Aと破砕ビット36の間に異物Aが噛み込む等した場合にはダンパ部71Aが折れ曲がるので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0057】
図12は本発明の第3実施形態に係る破砕機に備えられたアンビル34Bの一つのパーツ43bを抜き出して表した斜視図、図13はアンビル34Bを装着したアンビルフレーム40の斜視図である。これらの図において第1実施形態と同様の部分には図1−図9と同符号を付して説明を省略する。
【0058】
図12及び図13に示したように、本実施の形態が第1実施形態と相違する点はアンビル34Bの構成にある。図12及び図13に示した通り、アンビル34Bは、破砕ロータ15の回転軸の延伸方向に複数に分割されている(分割されたアンビル34Bの個々の構成要素をパーツ34bとする)。言い換えれば、パーツ34bを破砕ロータ15の回転軸の延伸方向に複数並べて取付座35aに取り付けることで、全体としてアンビル34Bが構成されている。本実施形態では、隣り合う2つの座ぐり付き貫通孔69の間の丁度中間でアンビル34Bを分割しており、各パーツ34bは互いに同一形状をしている。したがって、個々のパーツ34bは、それぞれ1本の六角穴付きボルト73で取付座35aに固定されている。
【0059】
なお、パーツ34bの衝突面39に直交する断面形状は第1実施形態と同様であるが、他の部分に優先して折れ曲がるダンパ部があれば良く、例えば第2実施形態と同様の断面形状としても良い。また、アンビル34Bの分割数に特別な限定はなく、また1つのパーツ34bに複数の座ぐり付き貫通孔69を設けて複数のボルトで固定する構成としても良い。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0060】
第1及び第2実施形態では、ダンパ部71,71Aをスリット72で分断する構成を採ったが、本実施形態ではアンビル34B自体を分割することでダンパ部71を分断している。この場合でも第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態の場合、異物Aが噛み込んだ場合に、変形して交換が必要になったパーツ34bのみを交換することができるので、アンビル交換が容易でアンビル交換に要するコストも低減することができる。
【0061】
なお、以上の各実施形態では、アンビルフレーム40が一体の場合を例に挙げて説明したが、例えばアンビルフレーム40を回動軸31の軸方向に2つ以上に分割し、分割されたアンビルフレームが個々に回動可能な構成とすることもできる。この場合、第1−第3実施形態のいずれの形態を採用するにしてもアンビルはアンビルフレーム40の分割数又はそれ以上に分割され、また各アンビルフレームがシアピン43で破砕装置フレーム20に連結される。この構成でも異物Aの噛み込み時にアンビルのダンパ部が変形するので第1−第3実施形態と同様の効果が得られ、加えて分割されたアンビルフレーム1つ当たりの回転モーメントが大きく減少するので、異物Aの噛み込んだアンビルフレームの回動速度を向上させることができる。
【0062】
また、アンビルに許容値を超える衝撃力が作用した場合にアンビルフレーム40の回動動作を許容して破砕室27を開放するアンビルフレーム回動許容手段としてシアピン43を用いた場合を例に挙げて説明したが、破砕装置フレーム20を含む静止体に対してアンビルフレーム40を弾性的に係合させ、アンビルに過大な衝撃力が作用して静止体との係合が外れた場合に、アンビルフレーム40の拘束が解かれる構成とすることもできる。この構成は、例えば国際出願番号:PCT/JP2009/55862等に詳しい。
【0063】
また、以上の各実施の形態においては、本発明を自力走行可能な破砕機に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、牽引して走行可能な移動式破砕機、若しくは例えばクレーン等により吊り上げて運搬可能な可搬式破砕機、さらにはプラント等において固定機械として配置される定置式破砕機にも本発明は適用可能である。また、軸を水平にして回転する破砕ロータに対して水平方向から被破砕物を供給する破砕機に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、破砕装置上にホッパを設けて破砕ロータに対して上から被破砕物を供給するタイプの破砕機にも本発明は適用可能である。これらの場合も同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
15 破砕ロータ
20 破砕装置フレーム
27 破砕室
34,34A,B アンビル
34b パーツ
35 ドラム部
36 破砕ビット
36e 打撃部
40 アンビルフレーム
43 シアピン(アンビルフレーム回動許容手段)
72 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕装置フレームと、前記破砕装置フレームに対して回転自在に設けたドラム部及び前記ドラム部の外周部に設けた破砕ビットを有する破砕ロータと、前記破砕ロータを収容する破砕室と、前記破砕ロータの回転軌跡に間隙を介して対向するように前記破砕室内に設けたアンビルとを備えた破砕機において、
前記アンビルを保持し、前記破砕装置フレームに対して回動自在に設けたアンビルフレームと、
前記アンビルに許容値を超える衝撃力が作用した場合に、前記アンビルを前記破砕ロータから退避させるように前記アンビルフレームの回動動作を許容し、前記破砕室を開放するアンビルフレーム回動許容手段とを有し、
前記アンビルは、前記アンビルフレーム回動許容手段の許容値と同程度かそれよりも小さい衝撃力で折れるように構成されている
ことを特徴とする破砕機。
【請求項2】
前記アンビルは、前記破砕ロータとの対向部に、前記破砕ロータの回転軸の延伸方向に所定の間隔で複数のスリットを備えていることを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項3】
前記アンビルは、前記破砕ロータの回転軸の延伸方向に複数に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項4】
前記破砕ビットは、前記アンビルフレーム回動許容手段の許容値と同程度かそれよりも小さい衝撃力で折れるように構成されていることを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の破砕機。
【請求項5】
前記アンビルフレーム回動許容手段は、前記アンビルフレームを前記破砕装置フレームに対して連結するシアピンであることを特徴とする請求項1−4のいずれか1項に記載の破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−50879(P2011−50879A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202830(P2009−202830)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】