説明

破骨細胞分化抑制剤

【課題】骨粗鬆症等の骨吸収性疾患の予防もしくは改善に有用な医薬品、または骨粗鬆症等の骨吸収性疾患の予防もしくは改善に有用な食品の提供。
【解決手段】カプサンチン、ベニコウジもしくはその抽出物、またはトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物もしくはそれらの抽出物を有効成分とする破骨細胞分化抑制剤、骨吸収抑制剤、骨吸収性疾患の予防または改善剤、および骨吸収性疾患の予防または改善用食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症等の骨吸収性疾患を予防または改善するための破骨細胞分化抑制剤、骨吸収抑制剤、あるいはそれらを含む医薬品または食品に関する。
【背景技術】
【0002】
骨組織は、破壊(骨吸収)と形成(骨形成)との動的なサイクルによって維持される。上記骨吸収および骨形成は、それぞれ破骨細胞および骨芽細胞が担っている。骨吸収に関与する破骨細胞は、巨大な多核細胞であり、骨芽細胞によって生成される可溶性RANKL(soluble receptor activator of NF−κB ligand;sRANKL)およびM−CSF(macrophage colony stimulating factor)によって刺激されて単核の破骨細胞前駆細胞から分化し、その後成熟することが知られている。通常の状態では、破骨細胞と骨芽細胞との間に活性のバランスが保たれており(カップリング)、したがって骨の形と量は維持される。このバランスが負の方向(骨吸収)に傾く場合、骨量は低下し、最終的に骨粗鬆症を引き起こす。
【0003】
骨粗鬆症は、骨量の低下に伴う骨強度の低下を特徴とする骨格疾患である。骨粗鬆症は、閉経期以降の女性や高年齢の男性で多く見られ、女性においては60歳代で約30%、70歳代で約40%以上が、男性においては60歳代で約10%、70歳代で約20%が骨粗鬆症であるとの報告がされている。このような加齢に伴って起こる骨粗鬆症は、退行期骨粗鬆症(involutional osteoporosis)と称され、閉経後に発症する閉経後骨粗鬆症(postmenopausale osteoporosis)と老年期に発症する老人性骨粗鬆症(senile osteoporosis)とに大別される。退行期骨粗鬆症は罹患者のQOL(quality of life;生活の質)を著しく低下させる疾病として広く知られている。
【0004】
骨粗鬆症の予防および治療のためにはカルシウムの積極的な摂取が重要である。カルシウムの摂取を促進するために、従来、DFAIII(ツイントース)、FOS(フラクトオリゴ糖)、CPP(カゼインホスホペプチド)、クエン酸リンゴ酸カルシウム等を含む食品が使用されてきた(特許文献1〜4)。しかしながら、こうした食品からのカルシウム摂取のみでは、骨量の減少を防止するには不十分である。
【0005】
骨量の減少を効果的に防止するためには、積極的に骨吸収を抑えることが望ましい。骨吸収を抑制する薬剤としては、ビスホスフォネート製剤や選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、カルシトニン製剤等が従来一般的に使用されてきた(非特許文献1〜3)。一方で、骨吸収抑制能を有する食品成分として、玉ねぎ等に含まれるケルセチンやウコンに含まれるクルクミン、温州ミカンに含まれるβ−クリプトキサンチンが報告されている(非特許文献4〜6)。しかし従来知られているこれらの骨吸収抑制剤は、その服用方法や副作用、効果の点において十分ではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−43438号公報
【特許文献2】特開平7−252156号公報
【特許文献3】特開平7−308172号公報
【特許文献4】特開平1−156985号公報
【非特許文献1】Kushida K.ら:J.Bone Miner.Metab.(2004)22,462−468
【非特許文献2】Ohta H.:Clin.Calcium(2004)14,73−80
【非特許文献3】Hosoi T.:CLINICAL CALCIUM(2004)14(11),83−86
【非特許文献4】Wattel A.ら:J.Cell.Biochem.(2004)92,285−295
【非特許文献5】Bharti AC.ら:J.Immunol.(2004)172,5940−5947
【非特許文献6】Uchiyama S.およびYamaguchi M.:Biochem.Pharmacol.(2004)67,1297−1305
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、副作用が少なく十分な効果を有する、骨粗鬆症等の骨吸収性疾患の予防または改善のための医薬品または食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々の物質の骨吸収抑制作用や骨粗鬆症に対する効果について研究した結果、カプサンチン、ベニコウジおよびその抽出物、ならびにトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物およびそれらの抽出物が、破骨細胞分化抑制作用を有し、骨吸収抑制または骨粗鬆症等の骨吸収性疾患の予防もしくは改善のために有用であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、カプサンチン、ベニコウジもしくはその抽出物、またはトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物もしくはそれらの抽出物を有効成分とする破骨細胞分化抑制剤に関する。
【0010】
また本発明は、カプサンチン、ベニコウジもしくはその抽出物、またはトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物もしくはそれらの抽出物を有効成分とする骨吸収抑制剤に関する。
【0011】
また本発明は、カプサンチン、ベニコウジもしくはその抽出物、またはトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物もしくはそれらの抽出物を有効成分とする骨吸収性疾患の予防または改善剤に関する。
【0012】
さらに本発明は、カプサンチン、ベニコウジもしくはその抽出物、またはトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物もしくはそれらの抽出物を含有する骨吸収性疾患の予防または改善用食品に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、骨粗鬆症等の骨吸収性疾患を予防または改善するための医薬または食品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
カプサンチンとは、パプリカやトウガラシに含まれるカロチノイド系色素である。このカプサンチン色素は、抗酸化作用を有することが知られている一方で、その骨形成、特に破骨細胞分化に対する効果については、これまで報告されていない。本発明で使用されるカプサンチンは、それを含有する植物から定法に従って抽出して得てもよく、市販品(例えば、フナコシ株式会社)を購入してもよい。
【0015】
本明細書で使用される「ベニコウジ」とは、ベニコウジ菌(Monascus sp.)又はその培養物を指す。ベニコウジ菌又はその培養物は、通常の方法で培養することによって得ることもできるが、市販品を購入してもよい。菌の培養には、任意の原料又は培地を用いればよく、特定の原料の利用に限定されない。例えば、菌の培養には、大豆等の豆類またはその加工品を用いなくともよい。ベニコウジ菌又はその培養物は、予めろ過、精製、濃縮、乾燥等の処理を施してから使用してもよい。
【0016】
本明細書で使用される植物のうち、「トンキンニッケイ」(別名桂皮(ケイヒ)、肉桂樹、桂樹、桂丹、牡桂)および「シナモン」は、いずれもクスノキ科Cinnamomum属の植物であって、各々Cinnamomum cassia、およびCinnamomum verumを指し;「キンゴウカン」とは、マメ科の樹木、Acacia farnesianaを指し;「ユカン」は別名、余甘子(ヨカンシ)、庵摩勒(アンマロク)とも称され、トウダイグサ科のPhyllanthus emblicaを指し;「カショウ」は、ミカン科の、Zanthoxylum bungeanumを指し;「スターアニス」は、別名、八角(ハッカク)、大茴香(ダイウイキョウ)、八角茴香(ハッカクウイキョウ)、トウシキミとも称され、モクレン科のIllicium verumを指し、;そして、「ルイボス」および「ルイボスティー」とは、マメ科に属するAspalathus linearisおよびそれを原料とするお茶を指す。
【0017】
上記植物を本発明で使用する場合、その植物の任意の部分を使用し得る。例えば、上記植物の全木、全草、根、根茎、幹、枝、茎、葉、樹皮、樹液、樹脂、花、果実、種子等の任意の部分、およびそれらの組み合わせのいずれか1つまたは複数が、使用され得る。特に、トンキンニッケイ、シナモンについては、樹皮を使用するのが好ましく、キンゴウカンについては、樹脂を使用するのが好ましく、ユカンについては、果実を使用するのが好ましく、カショウについては、果実を使用するのが好ましく、スターアニスについては、果実を使用するのが好ましく、そしてルイボスについては、葉を使用するのが好ましい
【0018】
上記植物は、そのまま、または乾燥もしくは凍結乾燥して用いることができる。また上記植物は、細断または粉砕されていても、ペースト状にされていてもよい。
【0019】
上記植物の抽出物は、上記植物を、公知の方法に従って、常温または加温下で、適切な溶剤を用いて、必要に応じてソックスレー抽出機等の器具を使用して抽出することによって得ることができる。得られた抽出物は、濃縮、希釈、または乾燥され得、必要に応じてさらに粉末またはペースト状にされ得る。上記抽出物はまた、公知の方法に従って夾雑物を除去することにより、精製され得る。上記抽出物はまた、必要に応じて、公知の方法に従って脱臭、脱色等の処理を施され得る。
【0020】
本発明の抽出物の調製に使用される溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤、またはこれらの組み合わせが挙げられる。具体的には、例えば、水;アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール);ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン);エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル);鎖状および環状エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル);ポリエーテル類(例えばポリエチレングリコール);ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素);炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル);芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン);ピリジン類;超臨界二酸化炭素;ならびに油脂、ワックス、およびその他オイル等が挙げられる。これらのうち、水,アルコールまたはこれらの混液が好ましい。水,エチルアルコール,1,3−ブチレングリコールあるいはこれらの混液が特に好ましい。
【0021】
例示的抽出手順において、抽出物は、植物10gに対し溶剤100mlを加え、加温下で数時間振盪するかまたは室温下で数日間静置し、その後ろ過することによって得ることができる。必要に応じて、抽出液はエバポレーターで濃縮した後、別の溶剤に溶解される。
【0022】
後述の実施例に示すとおり、カプサンチン、ベニコウジおよびその抽出物、ならびにトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物およびそれらの抽出物は、RAW264.7細胞の破骨細胞への分化を抑制する。RAW264.7は、マウスマクロファージ由来の細胞株であり、骨芽細胞との共培養に依存することなく可溶性RANKLおよびM−CSF存在下で破骨細胞に分化・成熟することが知られており、従来から種々の機能解析に用いられている(Hsu H.ら:Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1999)96,3540−3545;Nirupama K.ら:Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97,7829−7834;Hotokezaka H.ら:J.Biol.Chem.(2002)277,47366−47372;Garcia V.ら:J.Biol.Chem.(2005)280,13720−13727)。したがって、本発明のカプサンチン、ベニコウジおよびその抽出物、ならびにトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物およびそれらの抽出物は、破骨細胞分化抑制剤または骨吸収抑制剤として作用し得る。これらの物質はまた、破骨細胞分化を抑制するため、骨吸収を抑制するためまたは骨粗鬆症等の骨吸収性疾患を予防もしくは改善するための、研究試薬、またはヒトもしくは動物用の食品、医薬品もしくは医薬部外品として、あるいはそれらを製造するために、使用され得る。食品、医薬品、医薬部外品等に使用される場合、これらの物質は、単独または2種以上の組み合わせで使用され得る。
【0023】
ここで、用語「骨吸収の抑制」とは、骨吸収速度を減少または停止させることをいう。
【0024】
用語「骨吸収性疾患」とは、骨吸収が骨形成を上回ることに起因する疾患または状態を意味する。このような疾患または状態の例としては、骨量減少または骨粗鬆症、およびそれらに伴う腰痛や背部痛等の痛み、骨変形、骨強度低下、骨折等が挙げられる。
【0025】
本発明の破骨細胞分化抑制剤または骨吸収抑制剤を食品として使用する場合、一般食品の他、骨吸収性疾患の予防または改善を目的とした、美容食品、病者用食品、栄養機能食品または特定保健用食品等の機能性食品とすることができる。食品は、固形、半固形または液状であり得る。食品の例としては、パン類、麺類、菓子類、ゼリー類、乳製品、加工食品、冷凍食品、インスタント食品、その他加工食品、飲料、スープ類、調味料、栄養補助食品等、およびそれらの原料が挙げられる。食品は、錠剤形態、丸剤形態、カプセル形態、液剤形態、シロップ形態、粉末形態、顆粒形態等であってもよい。
【0026】
食品として使用する場合、本発明のカプサンチン、ベニコウジもしくはその抽出物、またはトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスもしくはルイボスティーから選択される植物もしくはそれらの抽出物(以下、本発明成分という)を単独で使用してもよく、他の食品材料と組み合わせて使用してもよい。本発明の食品は、必要に応じて食品添加物を含有してもよい。食品添加物の例としては、溶剤、油、軟化剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、甘味料、香料等が挙げられる。
【0027】
食品中における本発明成分の量は、抽出物の乾燥物換算で、食品の総質量の0.0001質量%〜50質量%であり、好ましくは、0.0003質量%〜10質量%であり、さらに好ましくは、0.0005質量%〜5質量%である。
【0028】
本発明の破骨細胞分化抑制剤または骨吸収抑制剤を医薬品として使用する場合、任意の投与形態で投与され得る。投与形態としては、経口および非経口投与が挙げられる。経口投与のための製剤の剤型としては、錠剤、丸剤、カプセル、粉剤、顆粒、シロップ、エリキシル、液剤等が挙げられる。非経口投与としては、注射、輸液、経皮、経鼻、経粘膜、吸入、坐剤、ボーラス等が挙げられる。
【0029】
斯かる製剤では、本発明成分を単独で使用してもよく、薬学的に許容される担体と組み合わせて使用してもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。
【0030】
上記製剤中における本発明成分の量は、抽出物の乾燥物換算で、製剤の総質量の0.01質量%〜100質量%であり、好ましくは、0.1質量%〜70質量%であり、さらに好ましくは、0.5質量%〜50質量%である。
【0031】
上記製剤の投与量は、患者の状態、体重、性別、年齢、またはその他の要因に従って変動し得る。好ましい成人1人当りの1日投与量は、本発明の抽出物の乾燥物換算で、0.002〜2000mg/体重Kg/日であり、より好ましくは0.02〜200mg/体重Kg/日であり、さらにより好ましくは0.2〜20mg/体重Kg/日である。上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得る。例えば、持続投与、1日に3回、1日に2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、1週間に1回、または任意の期間および間隔で投与され得る。
【0032】
本発明の医薬品または食品は、少なくとも1種のカルシウム摂取もしくは吸収促進剤または骨代謝改善剤と組み合わせて調製されてもよい。カルシウム摂取もしくは吸収促進剤としては、炭酸カルシウム等のカルシウム塩、DFAIII(ツイントース)、FOS(フラクトオリゴ糖)、CPP(カゼインホスホペプチド)、ビタミンD等が挙げられる。骨代謝改善剤としては、炭酸カルシウム等のカルシウム塩、ビタミンD、ビタミンK、大豆イソフラボン、コラーゲン、MBP(乳塩基性タンパク質)等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下の実施例において、本発明をより詳細に説明する。
【0034】
試験物質の調製
1)カプサンチン
カプサンチンは市販品(フナコシ株式会社)をDMSO(ジメチルスルホキシド)に10mMの濃度で溶解し,サンプルとした。
【0035】
1)トンキンニッケイ抽出物
A:50%エタノール抽出物
トンキンニッケイ(Cinnamomum cassia)の樹皮(中国産)を10gとり、100mLの50%エタノールを加え、室温で7日間静置抽出後、ろ過して抽出液85mLを得た。蒸発残分0.8w/v%。
B:95%エタノール抽出物
トンキンニッケイの樹皮を10gとり、100mLの95%エタノールを加え、室温で7日間静置抽出後、ろ過して抽出液91mLを得た。エバポレーターにてこの抽出液を濃縮し、エタノール46mLを加えて溶解させた。蒸発残分0.6w/v%。
【0036】
2)シナモン抽出物
シナモンスティック(栃本天海堂より入手)10gをミルにて粉末化した後、50%エタノール水100mlを加え、室温・静置条件にて7日間抽出した。その後、残渣をろ過にて除去し、抽出液を得た。抽出液の固形残分は1.07%であった。
【0037】
3)キンゴウカン抽出物
キンゴウカン(Acacia farnesiana)の樹脂(ネパール産)を10gとり、100mLの50%エタノールを加え、室温で7日間静置抽出後、ろ過して抽出液93mLを得た。蒸発残分7.2w/v%。
【0038】
4)ユカン抽出物
ユカン(Phyllanthus emblica)の果実(中国産)を10gとり、100mLの50%エタノールを加え、室温で7日間静置抽出後、ろ過して抽出液87mLを得た。蒸発残分3.3w/v%。
【0039】
5)ベニコウジ
紅麹粉末K−F(丸善製薬より入手)を50%エタノール水溶液に1%の濃度で溶解しサンプルとした。
【0040】
6)カショウ抽出物
カショウ(栃本天海堂より入手)10gに50%エタノール水溶液100mlを加え、室温、静置条件下で7日間抽出を行った。その後、ろ過を行うことにより抽出液を得た。抽出液の固形分濃度は2.24%(w/v)であった。
【0041】
7)スターアニス抽出物
スターアニス(栃本天海堂より入手)10gに50%エタノール水溶液100mlを加え、室温、静置条件下で7日間抽出を行った。その後、ろ過を行うことにより抽出液を得た。抽出液の固形分濃度は2.51%(w/v)であった。
【0042】
8)ルイボスティー
ルイボス茶乾燥エキスF(丸善製薬より入手)を20%エタノール水溶液に1%の濃度で溶解しサンプルとした。
【0043】
実施例1:本発明成分の破骨細胞分化抑制効果
1)スクリーニング
RAW264.7(大日本製薬、Cat.No. 06-071)を、10%ウシ胎児血清を含むα−MEMに懸濁し、3.0×103細胞/wellの濃度で48wellプレートに播種し、5%CO2存在下で37℃にて一晩培養した。試験物質をウェルに添加し、試験物質無添加の培地で段階的に希釈した後、一定時間(1〜2日)前培養した。この前培養物にマウスsRANKL 50ng/mlおよびマウスM−CSF 50ng/mlを加えて、破骨細胞を分化誘導した。3日間培養した後、各wellの酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)活性を吸光度法により測定した。各抽出物の破骨細胞分化抑制活性は、同量の溶剤のみを添加したwellのTRAP活性をポジティブコントロール(100%分化)とし、分化誘導させなかったwellのTRAP活性をネガティブコントロール(0%分化)として、百分率で表した。
【0044】
2)結果
カプサンチン、ベニコウジ、ルイボスティー、ならびにトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウおよびスターアニスの抽出物は、RAW264.7細胞の破骨細胞への分化を用量依存的に抑制した。結果を図1に示す。縦軸は、分化誘導された破骨細胞の、コントロールと比較した相対TRAP活性を示し、横軸は、各抽出物の濃度(残分換算)を表す。いずれの抽出物においても、その濃度の増加に従って、TRAP活性が低下するのが観察された。
【0045】
実施例2 骨吸収抑制飲料
下記組成物を混合し、果汁飲料を製造した。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例3 骨吸収抑制食品
下記組成物(1錠=1000mg)を打錠し、チュアブルタイプのタブレット食品を製造した。
【0048】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】カプサンチン、ベニコウジ、ルイボスティー、ならびにトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウおよびスターアニスの抽出物の破骨細胞分化抑制活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプサンチン、ベニコウジもしくはその抽出物、またはトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物もしくはそれらの抽出物を有効成分とする破骨細胞分化抑制剤。
【請求項2】
カプサンチン、ベニコウジもしくはその抽出物、またはトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物もしくはそれらの抽出物を有効成分とする骨吸収抑制剤。
【請求項3】
カプサンチン、ベニコウジもしくはその抽出物、またはトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物もしくはそれらの抽出物を有効成分とする骨吸収性疾患の予防または改善剤。
【請求項4】
骨吸収性疾患が骨粗鬆症、骨量減少または骨折である請求項3記載の予防または改善剤。
【請求項5】
カプサンチン、ベニコウジもしくはその抽出物、またはトンキンニッケイ、シナモン、キンゴウカン、ユカン、カショウ、スターアニスおよびルイボスティーから選択される植物もしくはそれらの抽出物を含有する骨吸収性疾患の予防または改善用食品。
【請求項6】
骨吸収性疾患が骨粗鬆症、骨量減少または骨折である請求項5記載の食品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−96719(P2009−96719A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266618(P2007−266618)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】