硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末、及びその製造方法
【課題】特定元素の硫化物又は複合硫化物の微粉末を含む微粒子コンポジットを得ることを目的とする。
【解決手段】モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される元素を含む化合物の1種以上と、硫黄(S)を含む化合物とから、混合液を作製する工程と、該混合液を水熱反応又はソルボサーマル反応させる工程とを含む、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の微粉末を含む微粒子コンポジットの製造方法、及び得られた、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の微粉末を含む微粒子コンポジット。
【解決手段】モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される元素を含む化合物の1種以上と、硫黄(S)を含む化合物とから、混合液を作製する工程と、該混合液を水熱反応又はソルボサーマル反応させる工程とを含む、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の微粉末を含む微粒子コンポジットの製造方法、及び得られた、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の微粉末を含む微粒子コンポジット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水熱反応又はソルボサーマル反応は、化合物合成の手段として注目されている。例えば、下記特許文献1には、水を反応溶媒として、粒子成長における温度150〜370℃で、硫黄イオンと亜鉛イオンとを水熱反応させて、多重双晶構造を有する、5nm〜20μmの平均粒径をもつ硫化亜鉛粒子を得る製造方法が開示されている。
【0003】
ところで各種カルコゲナイド系化合物は、従来の高価な白金系触媒の代替物などとして注目されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−36214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特定元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、水熱反応又はソルボサーマル反応を用いることによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、第1に、本発明は、特定元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末の発明であり、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末である。
【0008】
本発明の単結晶微粉末は、各種形状をとりうるが、その中で略球状であるものを得ることができる。
【0009】
本発明の単結晶微粉末となる硫化物としては、硫化モリブデン(Mo2S2、MoS2、Mo2S3、MoS3、MoS4)、硫化ロジウム(Rh17S15、Rh9S8、Rh3S4、Rh2S3、Rh2S5)、硫化ルテニウム(RuS2)、又は硫化レニウム(ReS2、Re2S7)から選択される2元系化合物が挙げられ、又複合硫化物としては、Rh−X−S又はRu−X−Sで表される3元系化合物が好ましく例示される。ここで、Xはモリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、テルル(Te)、トリウム(Th)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)から選択される1種以上の元素であることが好ましい。これらの中で、Rh−Mo−S、又はRu−Mo−Sの3元系化合物が最も好ましく例示される。
【0010】
本発明の単結晶微粉末の平均粒径は必ずしも限定されないが、数nm以上100nm以下であるものが好ましく得られる。
【0011】
第2に、本発明は、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末の製造方法の発明であり、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される元素を含む化合物の1種以上と、硫黄(S)を含む化合物とから、混合溶媒液を作製する工程と、該混合溶媒液を水又は溶媒の超臨界状態または亜臨界状態とする圧力および温度で水熱反応(ハイドロサーマル反応)又は溶媒熱反応(ソルボサーマル反応)する工程とを含む。ソルボサーマル反応に用いる溶媒は限定されないが、キシレン、アセトン、クロロホルムなどが例示される。
【0012】
本発明において、水熱反応又はソルボサーマル反応は、200℃〜600℃で反応させることが好ましい。
【0013】
又、水熱反応又はソルボサーマル反応する工程の後に、不活性ガス雰囲気下で300℃〜800℃で熱処理させることによって、結晶性が向上し、カルボニル基などの原料化合物の残渣を飛散させることが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末を得ることが出来る。特に、微細な球状単結晶を得ることができる。これらの、特定元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末は公知の用途に用いられるほか、その特性を生かして種々の用途への開発が期待できる。例えば、従来の白金触媒の代替として低コスト化が可能な燃料電池用触媒としてや、潤滑剤として知られたMoS2は微細な球状単結晶であることから更に優れた潤滑剤として利用できる。更に、ドープするドーパント元素を選択することにより各種物性を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の目的は、水熱反応あるいはソルボサーマル反応によりMoS2、RuS2、Rh2S3、ReS2の合成の可能性を探るとともに、2あるは3成分系の硫化物固溶体の合成を目指すものである。
【0016】
図1に、本発明の水熱反応あるいはソルボサーマル反応による合成方法をフロチャートに示す。低温での反応にはテフロン内張オートクレーブ、高温での反応ではハステロイC内張オートクレーブを使用した。いずれもin−situに反応させた。特定の合成条件に関しては、下述する。
【0017】
図1に、示すように、
(1)原料(Mo、Ru、Rh、Re及びS)のオートクレーブヘの挿入を行う。原料の種類と量比を決める。
(2)溶媒のオートクレーブヘの挿入を行う。ここで、溶媒の種類と量を決める。
(3)水熱反応又はソルボサーマル反応を行う。
(4)固体生成物の洗浄、遠心分離器での回収、真空乾燥を行う。
(5)Arなどの不活性ガス雰囲気下での仮焼を行う。ここで、温度及び時間を決める。
(6)特性評価を、SEM、HRTEM、EDX、FTIR、XRDなどで行う。
【0018】
[実施例1:MoS2の合成]
Mo原料として、Mo(CO)6、MoCl5、(NH4)6Mo7O24・4H2O、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oを、S原料として、S(硫黄固体)、thiourea((NH2)2CS)を、溶媒としてキシレンあるいは蒸留水を用い、ソルボサーマル反応あるいは水熱反応を、反応条件:220℃あるいは350℃、10時間行った。その後、Ar雰囲気下、350℃から750℃、5時間の仮焼を行った。
【0019】
1.1 ソルボサーマル反応によるMoS2の合成
ソルボサーマル反応で、原料としてMo(CO)6とSを用いた場合、よく分散したMoS2粉末が得られた。低温(220℃、10h)で合成したMoS2、粉末は低結晶性であったが、Ar雰囲気下、350℃で仮焼することにより結晶性は向上した。また高温(350℃、10h)で合成することにより、低温で合成したものよりも結晶性は向上した。
【0020】
1.1.1 Mo原料による影響
Moの出発原料をMo(CO)6あるいはMoCl5とし、反応温度220℃、反応時間10時間として合成実験を実施した。原料としてMoCl5を用いた方がやや結晶性の高いMoS2粉末が得られたが、原料としてMo(CO)6を用いた場合よりも、強く凝集した粒子が生成した。Mo原料としては、Mo(CO)6を用いることとした。
図2に、ソルボサーマル反応により合成したMoS2のXRDパターンを示す。
ここで、溶媒:キシレン、温度:220℃、時間:10hで、図中、aはMoCl5+S、bはMo(CO)6+Sである。
図3に、MoCl5から合成したMoS2粉末のSEM写真(仮焼400℃、5h)を示す。
【0021】
1.1.2 S原料の影響
イオウの出発原料をSあるいはthioureaとし、反応温度220℃、反応時間10時間として合成実験を実施した。Sから合成した方がやや結晶性の高いMoS2粉末が得られ、thioureaを原料とすると生成物が強く凝集した。イオウ源としてSを使用することにした。
図4に、ソルボサーマル反応のより合成したMoS2のXRDパターンを示す。
ここで、溶媒:キシレン、温度:220℃、時間:10hで、図中、aはMo(CO)6+thiourea、bはMo(CO)6+Sである。
図5に、thioureaから合成したMoS2粉末のSEM写真(仮焼400℃、5h)を示す。
【0022】
1.1.3 仮焼の効果
Mo(CO)6とSから、反応温度220℃、反応時間10時間のソルボサーマル反応で合成したMoS2をAr気流中で仮焼した。図6に、ソルボサーマル反応のより合成したMoS2(a)とその仮焼物(b、c)のXRDパターンを示す。図中、bは350℃、2時間、cは600℃、2時間である。
図6に示すように、350℃で仮焼することにより結晶性が増加し、600℃で仮焼してもその結晶性は350℃の場合とあまり変化しなかった。そこで、今後の実験では仮焼条件を400℃以上、5時間とする。
【0023】
1.1.4 S/Mo比の影響
Mo(CO)6とSから、反応温度220℃、反応時間10時間のソルボサーマル反応でMoS2を合成する際に、原料のS/Mo比を変化させた。図7に、S/Mo比を変化させた、Mo(CO)6とSから220℃、10時間のソルボサーマル反応により合成したMoS2生成物のXRDパターンを示す。又、図8に、S/Mo比を変化させた、Mo(CO)6とSから220℃、10時間のソルボサーマル反応により合成したMoS2の400℃、5時間の仮焼物のXRDパターンを示す。各図中、aはS/Mo比1.6、bは2.0、cは2.4、dは3.0である。
図7と図8の結果、S/Mo比を1.6から3.0まで変化させても、生成物はMoS2単相であった。S/Mo比が2.0以上になると、いくぶん生成物のMoS2の結晶性が増加した。しかし、400℃、5時間、アルゴン気流中で仮焼した生成物の結晶性には、違いが見られなかった。
【0024】
1.1.5 MoS2の顕微鏡観察
S/Mo比を2.4とし、Mo(CO)6とSから220℃、10時間のソルボサーマル反応により合成したMoS2、と400℃、5時間の仮焼物を電子顕微鏡により観察した。図9Aに、ソルボサーマル反応による生成物MoS2の、図9Bにその400℃、5時間の仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。また、図10に、ソルボサーマル反応による生成物MoS2の400℃、5時間の仮焼物の透過型電子顕微鏡写真を示す。得られたMoS2は100nm程度の微細な粒子よりなっていることが観察でき、分散性が高く、図3A,B、図5A,Bに示した、異なるMo原料から合成されMoS2とは性状が大きく異なっていた。仮焼することによっても、特に凝集が強くなった様子は観察されなかった。
透過型電子顕微鏡観察からは、生成物が繊維状の層が重なり合った微細構造が観察された。XRDパターンがJCPDSカードに記載されているものと、回折強度が異なる原因は、このような構造に由来するものと考えられる。
【0025】
1.1.6 高温での合成
S/Mo比を変化させ、Mo(CO)6とSから、より高温の350℃、10時間のソルボサーマル反応によりMoS2の合成を試みた。図11に、ソルボサーマル反応による生成物MoS2のXRDパターンを示す。又、図12A,Bにソルボサーマル反応による生成物MoS2の電子顕微鏡写真を示す。
反応温度を高めることにより、生成したMoS2の結晶性は、仮焼した場合と同程度に上昇した。特にS/Mo比が高い場合には、(002)の回折線強度が増加した。
【0026】
走査型電子顕微鏡観察によると、生成物の形状は低温の場合と同じであり、微細な粒子からなることがわかった。また透過型電子顕微鏡観察からは、コントラストは強い繊維状の層と比較的結晶性が高い格子像が観察される二つの部分が認められた。それぞれの格子の間隔は、6.2Åと2.7Åであり、MoS2の〈002〉と〈100〉に対応するものと考えられる。
このように、Mo(CO)6とSを原料とし、S/Mo比を3として、350℃、10時間のソルボサーマル反応により、結晶性が高く分散性に優れるMoS2が合成できることが判明した。
【0027】
1.2 水熱反応によるMoS2の合成
Mo原料として、MoCl5、(NH4)6Mo7O24・4H2O、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oを、S原料として、thiourea((NH2)2CS)を用い、水熱反応によるMoS2の合成を試み、ソルボサーマル反応よりも結晶性の高いMoS2が得られた。MoCl5に水酸化ナトリウムを添加した場合、(NH4)6Mo7O24・4H2Oや、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oを原料に使用した場合には、比較的分散性の高い微細粒子からなるMoS2が生成した。
【0028】
1.2.1 アンモニアを添加してのMoCl5とthioureaの反応
原料をMoCl5とthioureaとし、その量比を変化させると同時に添加するアンモニアの量も変化させ220℃、10時間の条件でMoS2の合成を試みた。図13に、アンモニアを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2のXRDパターンを示す。又、図14に、アンモニアを添加して水熱合成したMoS2をアルゴン気流中で仮焼(400℃、5時間)したMoS2のXRDパターンを示す。各図中で、aはS/Mo=2.2でアンモニア無添加、bはS/Mo=2.2でアンモニア50vol%、cはS/Mo=3.0でアンモニア50vol%、dはS/Mo=4.0でアンモニア50vol%である。更に、図15A,Bに、アンモニアを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2(S/Mo=2.2)の走査型電子顕微鏡写真を示す。
S/Moが30の時、アンモニアの添加の有無にかかわらず(002)回折線の位置がずれた生成物が得られた。この生成物を400℃で仮焼すると、従来得られてきたMoS2と同じ回折パターンとなった。S/Moが30の時、層間に何らかの物質が挿入された可能性がある。仮焼により、結晶性は向上した。一般に生成物は強く凝集していた。
【0029】
1.2.2 水酸化ナトリウムを添加してのMoCl5とthioureaの反応
図16に、S/Mo比を2.2とし水酸化ナトリウムを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2とそれをアルゴン気流中で仮焼(400℃、5時間)したMoS2のXRDパターンを示す。ここで、aはNaOH水溶液濃度0.6M、bはNaOH水溶液濃度0.9M、cはNaOH水溶液濃度1.2M、dはNaOH水溶液濃度1.8Mである。又、図17に、0.6MNaOH水溶液中で水熱合成(220℃、10時間)したMoS2の走査型電子顕微鏡写真(S/Mo比=2.2)を示す。
水酸化ナトリウム添加して合成したMoS2は、比較的結晶性が高く、分散性の高い微細な球状粒子からなっていた。
【0030】
1.2.3 (NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaの反応
図18に、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のXRDパターンを示す。又、図19A,Bに、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物の走査電子顕微鏡写真を示す。さらに、図20に、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のFTIRスペクトルを示す。各図中、aは水熱合成物(220℃、10時間)、bは焼成物(400℃、5時間)である。
得られた生成物は結晶性が高く、仮焼しても結晶性の向上は見られなかった。試料は比較的分散性の高い微細な粒子からなっていた。FTIRスペクトルには、有機物に起因した吸収はなかった。
【0031】
1.2.4 (NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaの反応
図21に、(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のXRDパターンを示す。又、図22A,Bに、(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物の走査電子顕微鏡写真を示す。図22Aは、水熱合成物(220℃、10時間)であり、図22Bは焼成物(アルゴン中、400℃、5時間)である。更に、図23に、(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のFTIRスペクトルを示す。各図中、aは水熱合成物(220℃、10時間)、bは焼成物(アルゴン中、400℃、5時間)である。
(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oを原料とした場合と同様の結果が、(NH4)6Mo7O24・4H2Oを原料とした場合にも得られた。生成物は結晶性が高く、仮焼しても結晶性の向上ば見られなかった。試料は比較的分散性の高い微細な粒子からなっていた。FTIRスペクトルには、有機物に起因した吸収はなかった。
【0032】
[実施例2:RuS2の合成]
Ru原料として、Ru(CO)12を、S原料として、S(硫黄固体)を、溶媒としてキシレンあるいは蒸留水を用い、ソルボサーマル反応あるいは水熱反応を、反応条件:220℃、10時間行った。その後、Ar雰囲気下、400℃、5時間の仮焼を行った。
【0033】
2.1 ソルボサーマル反応によるRuS2の合成
図24に、S/Ru比を変化させ、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2のXRDパターンを示す。図中、aはS/Ru=6、bはS/Ru=4である。生成物はS/Ru比によらず、低結晶性であった。図24に示した、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2とその仮焼物のFTIRスペクトルから、ソルボサーマル反応により得られた生成物は有機物を含有していることが分かった。図中、aは生成したRuS2であり、bはその仮焼物である。
【0034】
図25に、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。図中、aはS/Ru=6、bはS/Ru=4、cはS/Ru=4.8、dはS/Ru=4.3、eはS/Ru=4である。仮焼により、生成物中の有機物は消失した。試料を仮焼した場合、S/Ru比により挙動が大きく異なり、仮焼により結晶化がおこるためには、S/Ru比4.8以下が必要であった。S/Ru比が減少して4となると、結晶化は著しく進行するが、同時に金属Ruの生成が認められるようになった。
【0035】
図26A,B,Cに、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)の走査型電子顕微鏡写真を示す。図中、aはS/Ru=4、bはS/Ru=4.3、cはS/Ru=6である。1μm程度の球状粒子が凝集しており、S/Ru比は粉末粒子形状には大きな影響を有していなかった。図27A,B,C,Dに示す、RuS2の仮焼物の透過型電子顕微鏡写真から、仮焼した後の球状粒子は微細な粒子からなっており、個々の粒子は格子像が観察でき、良く結晶化していることがわかった。
図28に、ソルボサーマル反応合成物RuS2(S/Ru比=4)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。図中、aは水熱合成物、bは仮焼物である。
【0036】
2.2 水熱反応によるRuS2の合成
図29に、水熱反応による生成物RuS2(220℃、10時間)のXRDパターンを示す。又、図30に、水熱反応による生成物RuS2(220℃、10時間)の仮焼物(400℃、5時間)のXRDパターンを示す。各図中、aはS/Ru=2、bはS/Ru:2.8、cはS/Ru=3.6、dはS/Ru=4.4である。更に、図31A,Bに、RuS2とその仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。図31AはS/Ru=4.4の生成物RuS2であり、図31Bはその仮焼物(400℃、5時間)である。
S/Ru比が3.6以下では、生成物中に結晶相が生成するようになったが、同定することはできていない。この相は有機物を含有しているものと考えられる。S/Ru比が4.4で得られた非晶質相も、仮焼することによりRuS2へと結晶化した。S/Ru比が2.8以下では仮焼物中に未同定相が混在した。S/Ru比が2.0ではRu金属の生成も確認された。
【0037】
[実施例3:Rh2S3の合成]
Rh原料として、Rh6(CO)16を、S原料として、S(硫黄固体)を、溶媒としてキシレンあるいは蒸留水を用い、ソルボサーマル反応あるいは水熱反応を、反応条件:220℃、10時間行った。その後、Ar雰囲気下、400℃、5時間(一部は750℃)の仮焼を行った。
【0038】
3.1 ソルボサーマル反応によるRh2S3の合成
図32に、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3のXRDパターンを示す。又、図33に、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。各図中、aはS/Rh=1.5、bはS/Rh=3.6、cはS/Rh=5.0である。図34に、S/Rh=5.0でソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3とその仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間、及び750℃、5時間)のXRDパターンを示す。図中、aはソルボサーマル反応による生成物Rh2S3、bはその仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)、cはその仮焼物(Ar気流中、750℃、5時間)である。
ソルボサーマル反応による生成物Rh2S3は低結晶性であったが、それを仮焼すると結晶化が著しく進行した。仮焼による結晶化はS/Rh比に依存しており、S/Rh比が3.6以下では結晶化したが、5.0では結晶化が起こらなかった。しかし、仮焼温度を750℃まで上昇させることにより、S/Rh比が5の試料でも結晶化した。
【0039】
図35A,B,C,Dにソルボサーマル反応による生成物Rh2S3とその仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。図中、aはS/Rh比=3.6のソルボサーマル反応生成物、bはS/Rh比=3.6のソルボサーマル反応生成物の400℃焼成物、cはS/Rh比=5.0のソルボサーマル反応生成物、dはS/Rh比=5.0のソルボサーマル反応生成物の400℃焼成物である。生成物はS/Rh比に依存せず非常に細かな粒子よりなっており、仮焼によっても変化は観察されなかった。
【0040】
3.2 水熱反応によるRh2S3の合成
図36に、水熱反応による生成物Rh2S3とその仮焼物のXRDパターンを示す。図中、aはS/Rh比=1.5の水熱反応生成物、bはS/Rh比=1.5の水熱反応生成物の400℃焼成物、cはS/Rh比=3.0の水熱反応生成物、dはS/Rh比=3.0の水熱反応生成物の400℃焼成物である。
水熱反応の生成物Rh2S3はS/Rh比によらず低結晶性であったが、仮焼することにより結晶化が著しく進行した。S/Rh比が1.5の場合、仮焼物中に不純物が存在し、S/Rh比が3.0の方が目的相が得られた。
【0041】
図37A,B、に、水熱反応の生成物Rh2S3とその仮焼物の電子顕微鏡写真を示す。図中、aはS/Rh比=1.5の水熱反応生成物の400℃焼成物、bはS/Rh比=3.0の水熱反応生成物の400℃焼成物である。水熱合成物は一部自形を有し大きな結晶へと成長していた。XRDパターンが非晶質的な性質を有しているのに対し、結晶が確実に成長していることは、不思議な現象である。
【0042】
図38A,Bに、S/Rh=3.0の水熱反応の生成物Rh2S3の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。図39A,Bに、S/Rh=3.0の水熱反応の生成物Rh2S3の400℃焼成物の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。上記の結晶成長は、図38A,B、図39A,Bに示した透過型電子顕微鏡写真や電子線回折図形からも確認できた。
【0043】
図40に、水熱合成物Rh2S3(S/Rh比=3)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。図中、aは水熱合成物、bは仮焼物である。図40のIRスペクトルから、水熱反応生成物中には有機物は取り込まれていないことがわかった。
【0044】
[実施例4:ReS2の合成]
Re原料として、Re2(CO)10を、S原料として、S(硫黄固体)を、溶媒としてキシレンあるいは蒸留水を用い、ソルボサーマル反応あるいは水熱反応を、反応条件:220℃、10時間行った。その後、Ar雰囲気下、400℃又は750℃、5時間の仮焼を行った。
【0045】
4.1 ソルボサーマル反応によるReS2の合成
図41に、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したReS2のXRDパターンを示す。又、図42に、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したReS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。各図中、aはS/Re=1.32、bはS/Re=2、cはS/Re=4、dはS/Re=9である。
【0046】
S/Re比が2より低い場合には、低結晶性物質からのブロードな回折線の他に、非常に鋭い回折線が観察された。しかし、同定することはできなかった。また、この回折線は仮焼することにより消失することから、有機物に起因しているものと考えられる。400℃で仮焼した場合にも、S/Re比が2より低い時には40℃付近の回折線が全く分離せず、S/Re比が高い試料とは異なる挙動を示した。
【0047】
図43に、S/Re比が4で得られた生成物ReS2及び仮焼物のXRDパターンを示す。図中、aはソルボサーマル反応生成物ReS2、bはその400℃仮焼物、cはその750℃仮焼物である。又、図44に、S/Re比が9で得られた生成物ReS2及び仮焼物のXRDパターンを示す。図中、aはソルボサーマル反応生成物ReS2、bはその400℃仮焼物、cはその750℃仮焼物である。750℃の焼成により結晶性の増加は認められるものの、それでも回折線はブロードで試料は完全には結晶化していないものと考えられる。
【0048】
図45A,B,C,Dに、ソルボサーマル反応生成物ReS2及び仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。図中、aはS/Re=4のソルボサーマル反応生成物、bはS/Re=4のソルボサーマル反応生成物の400℃仮焼物、cはS/Re=2のソルボサーマル反応生成物、dはS/Re=2のソルボサーマル反応生成物の400℃仮焼物である。生成物は球状粒子よりなっており、特にS/Re比が2の場合には、大きさが均一であった。S/Re比が4の場合には、粒径分布は広くなった。
図46A,Bに、S/Rh=9.0のソルボサーマル反応の生成物ReS2の750℃焼成物の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。
図47に、ソルボサーマル生成物(S/Rh比=4)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。図中、aは水熱合成物、bは仮焼物である。
【0049】
下記表1に、750℃仮焼物のEDX分析結果を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
EDXの組成分析の結果、平均値としてS/Re比1.98が得られたが、同一球状粒子内においても組成のばらつきが見られ、必ずしも正確な組成比が与えられていないものと考えられる。
【0052】
4.2 水熱反応によるReS2の合成
図48に、水熱反応(220℃、10時間)により合成したReS2のXRDパターン、及び水熱反応(220℃、10時間)により合成したReS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。各図中、aはS/Re=2、bはS/Re=2の仮焼物、cはS/Re=4、dはS/Re=4の仮焼物である。
S/Re比を2あるいは4と変化させても、また400℃で仮焼してもやや結晶性は向上するものの、生成物は低結晶性のままであった。
【0053】
図49A,B,C,Dに、水熱反応生成物ReS2及び仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。図中、aはS/Re=4の水熱反応生成物、bはS/Re=4の水熱反応生成物の400℃仮焼物、cはS/Re=2の水熱反応生成物、dはS/Re=2の水熱反応生成物の400℃仮焼物である。生成物は強く凝集していた。
【0054】
[性能評価]
図50に、本発明の幾つかの硫化物又は複合硫化物の酸素還元触媒性能の結果を示す。図50の結果より、本発明の硫化物又は複合硫化物は優れた酸素還元触媒性能を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末を得ることが出来る。特に、微細な球状単結晶を得ることができる。これらの、特定元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末は公知の用途に用いられるほか、その特性を生かして種々の用途への開発が期待できる。例えば、低コスト化が可能な燃料電池用触媒として利用できる。更に、ドープするドーパント元素を選択することにより各種物性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の水熱反応あるいはソルボサーマル反応による合成方法をフロチャートに示す。
【図2】ソルボサーマル反応により合成したMoS2のXRDパターンを示す。
【図3】MoCl5から合成したMoS2粉末のSEM写真(仮焼400℃、5h)を示す。
【図4】ソルボサーマル反応のより合成したMoS2のXRDパターンを示す。
【図5】thioureaから合成したMoS2粉末のSEM写真(仮焼400℃、5h)を示す。
【図6】ソルボサーマル反応のより合成したMoS2(a)とその仮焼物(b、c)のXRDパターンを示す。
【図7】S/Mo比を変化させた、Mo(CO)6とSから220℃、10時間のソルボサーマル反応により合成したMoS2生成物のXRDパターンを示す。
【図8】S/Mo比を変化させた、Mo(CO)6とSから220℃、10時間のソルボサーマル反応により合成したMoS2の400℃、5時間の仮焼物のXRDパターンを示す。
【図9】図9Aは、ソルボサーマル反応による生成物MoS2の、図9Bは、その400℃、5時間の仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図10】ソルボサーマル反応による生成物MoS2の400℃、5時間の仮焼物の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図11】ソルボサーマル反応による生成物MoS2のXRDパターンを示す。
【図12】図12A,Bは、ソルボサーマル反応による生成物MoS2の電子顕微鏡写真を示す。
【図13】アンモニアを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2のXRDパターンを示す。
【図14】アンモニアを添加して水熱合成したMoS2をアルゴン気流中で仮焼(400℃、5時間)したMoS2のXRDパターンを示す。
【図15】図15A,Bは、アンモニアを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2(S/Mo=2.2)の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図16】S/Mo比を2.2とし水酸化ナトリウムを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2とそれをアルゴン気流中で仮焼(400℃、5時間)したMoS2のXRDパターンを示す。
【図17】0.6MNaOH水溶液中で水熱合成(220℃、10時間)したMoS2の走査型電子顕微鏡写真(S/Mo比=2.2)を示す。
【図18】(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のXRDパターンを示す
【図19】図19A,Bは、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図20】(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のFTIRスペクトルを示す。
【図21】(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のXRDパターンを示す。
【図22】図22A,Bは、(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図23】(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のFTIRスペクトルを示す。
【図24】S/Ru比を変化させ、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2のXRDパターンを示す。
【図25】ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図26】図26A,B,Cは、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図27】図27A,B,C,Dは、RuS2の仮焼物の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図28】ソルボサーマル反応合成物RuS2(S/Ru比=4)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。
【図29】水熱反応による生成物RuS2(220℃、10時間)のXRDパターンを示す。
【図30】水熱反応による生成物RuS2(220℃、10時間)の仮焼物(400℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図31】図31A,Bは、RuS2とその仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図32】ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3のXRDパターンを示す。
【図33】ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図34】S/Rh=5.0でソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3とその仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間、及び750℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図35】図35A,B,C,Dは、ソルボサーマル反応による生成物Rh2S3とその仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図36】水熱反応による生成物Rh2S3とその仮焼物のXRDパターンを示す。
【図37】図37A,Bは、水熱反応の生成物Rh2S3とその仮焼物の電子顕微鏡写真を示す。
【図38】図38A,Bは、S/Rh=3.0の水熱反応の生成物Rh2S3の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。
【図39】図39A,Bは、S/Rh=3.0の水熱反応の生成物Rh2S3の400℃焼成物の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。
【図40】水熱合成物Rh2S3(S/Rh比=3)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。
【図41】ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したReS2のXRDパターンを示す。
【図42】ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したReS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図43】S/Re比が4で得られた生成物ReS2及び仮焼物のXRDパターンを示す。
【図44】S/Re比が9で得られた生成物ReS2及び仮焼物のXRDパターンを示す。
【図45】図45A,B,C,Dは、ソルボサーマル反応生成物ReS2及び仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図46】図46A,Bは、S/Rh=9.0のソルボサーマル反応の生成物ReS2の750℃焼成物の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。
【図47】ソルボサーマル生成物(S/Rh比=4)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。
【図48】水熱反応(220℃、10時間)により合成したReS2のXRDパターン、及び水熱反応(220℃、10時間)により合成したReS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図49】図49A,B,C,Dは、水熱反応生成物ReS2及び仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図50】本発明の幾つかの硫化物又は複合硫化物の酸素還元触媒性能の結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水熱反応又はソルボサーマル反応は、化合物合成の手段として注目されている。例えば、下記特許文献1には、水を反応溶媒として、粒子成長における温度150〜370℃で、硫黄イオンと亜鉛イオンとを水熱反応させて、多重双晶構造を有する、5nm〜20μmの平均粒径をもつ硫化亜鉛粒子を得る製造方法が開示されている。
【0003】
ところで各種カルコゲナイド系化合物は、従来の高価な白金系触媒の代替物などとして注目されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−36214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特定元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、水熱反応又はソルボサーマル反応を用いることによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、第1に、本発明は、特定元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末の発明であり、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末である。
【0008】
本発明の単結晶微粉末は、各種形状をとりうるが、その中で略球状であるものを得ることができる。
【0009】
本発明の単結晶微粉末となる硫化物としては、硫化モリブデン(Mo2S2、MoS2、Mo2S3、MoS3、MoS4)、硫化ロジウム(Rh17S15、Rh9S8、Rh3S4、Rh2S3、Rh2S5)、硫化ルテニウム(RuS2)、又は硫化レニウム(ReS2、Re2S7)から選択される2元系化合物が挙げられ、又複合硫化物としては、Rh−X−S又はRu−X−Sで表される3元系化合物が好ましく例示される。ここで、Xはモリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、テルル(Te)、トリウム(Th)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)から選択される1種以上の元素であることが好ましい。これらの中で、Rh−Mo−S、又はRu−Mo−Sの3元系化合物が最も好ましく例示される。
【0010】
本発明の単結晶微粉末の平均粒径は必ずしも限定されないが、数nm以上100nm以下であるものが好ましく得られる。
【0011】
第2に、本発明は、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末の製造方法の発明であり、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される元素を含む化合物の1種以上と、硫黄(S)を含む化合物とから、混合溶媒液を作製する工程と、該混合溶媒液を水又は溶媒の超臨界状態または亜臨界状態とする圧力および温度で水熱反応(ハイドロサーマル反応)又は溶媒熱反応(ソルボサーマル反応)する工程とを含む。ソルボサーマル反応に用いる溶媒は限定されないが、キシレン、アセトン、クロロホルムなどが例示される。
【0012】
本発明において、水熱反応又はソルボサーマル反応は、200℃〜600℃で反応させることが好ましい。
【0013】
又、水熱反応又はソルボサーマル反応する工程の後に、不活性ガス雰囲気下で300℃〜800℃で熱処理させることによって、結晶性が向上し、カルボニル基などの原料化合物の残渣を飛散させることが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末を得ることが出来る。特に、微細な球状単結晶を得ることができる。これらの、特定元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末は公知の用途に用いられるほか、その特性を生かして種々の用途への開発が期待できる。例えば、従来の白金触媒の代替として低コスト化が可能な燃料電池用触媒としてや、潤滑剤として知られたMoS2は微細な球状単結晶であることから更に優れた潤滑剤として利用できる。更に、ドープするドーパント元素を選択することにより各種物性を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の目的は、水熱反応あるいはソルボサーマル反応によりMoS2、RuS2、Rh2S3、ReS2の合成の可能性を探るとともに、2あるは3成分系の硫化物固溶体の合成を目指すものである。
【0016】
図1に、本発明の水熱反応あるいはソルボサーマル反応による合成方法をフロチャートに示す。低温での反応にはテフロン内張オートクレーブ、高温での反応ではハステロイC内張オートクレーブを使用した。いずれもin−situに反応させた。特定の合成条件に関しては、下述する。
【0017】
図1に、示すように、
(1)原料(Mo、Ru、Rh、Re及びS)のオートクレーブヘの挿入を行う。原料の種類と量比を決める。
(2)溶媒のオートクレーブヘの挿入を行う。ここで、溶媒の種類と量を決める。
(3)水熱反応又はソルボサーマル反応を行う。
(4)固体生成物の洗浄、遠心分離器での回収、真空乾燥を行う。
(5)Arなどの不活性ガス雰囲気下での仮焼を行う。ここで、温度及び時間を決める。
(6)特性評価を、SEM、HRTEM、EDX、FTIR、XRDなどで行う。
【0018】
[実施例1:MoS2の合成]
Mo原料として、Mo(CO)6、MoCl5、(NH4)6Mo7O24・4H2O、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oを、S原料として、S(硫黄固体)、thiourea((NH2)2CS)を、溶媒としてキシレンあるいは蒸留水を用い、ソルボサーマル反応あるいは水熱反応を、反応条件:220℃あるいは350℃、10時間行った。その後、Ar雰囲気下、350℃から750℃、5時間の仮焼を行った。
【0019】
1.1 ソルボサーマル反応によるMoS2の合成
ソルボサーマル反応で、原料としてMo(CO)6とSを用いた場合、よく分散したMoS2粉末が得られた。低温(220℃、10h)で合成したMoS2、粉末は低結晶性であったが、Ar雰囲気下、350℃で仮焼することにより結晶性は向上した。また高温(350℃、10h)で合成することにより、低温で合成したものよりも結晶性は向上した。
【0020】
1.1.1 Mo原料による影響
Moの出発原料をMo(CO)6あるいはMoCl5とし、反応温度220℃、反応時間10時間として合成実験を実施した。原料としてMoCl5を用いた方がやや結晶性の高いMoS2粉末が得られたが、原料としてMo(CO)6を用いた場合よりも、強く凝集した粒子が生成した。Mo原料としては、Mo(CO)6を用いることとした。
図2に、ソルボサーマル反応により合成したMoS2のXRDパターンを示す。
ここで、溶媒:キシレン、温度:220℃、時間:10hで、図中、aはMoCl5+S、bはMo(CO)6+Sである。
図3に、MoCl5から合成したMoS2粉末のSEM写真(仮焼400℃、5h)を示す。
【0021】
1.1.2 S原料の影響
イオウの出発原料をSあるいはthioureaとし、反応温度220℃、反応時間10時間として合成実験を実施した。Sから合成した方がやや結晶性の高いMoS2粉末が得られ、thioureaを原料とすると生成物が強く凝集した。イオウ源としてSを使用することにした。
図4に、ソルボサーマル反応のより合成したMoS2のXRDパターンを示す。
ここで、溶媒:キシレン、温度:220℃、時間:10hで、図中、aはMo(CO)6+thiourea、bはMo(CO)6+Sである。
図5に、thioureaから合成したMoS2粉末のSEM写真(仮焼400℃、5h)を示す。
【0022】
1.1.3 仮焼の効果
Mo(CO)6とSから、反応温度220℃、反応時間10時間のソルボサーマル反応で合成したMoS2をAr気流中で仮焼した。図6に、ソルボサーマル反応のより合成したMoS2(a)とその仮焼物(b、c)のXRDパターンを示す。図中、bは350℃、2時間、cは600℃、2時間である。
図6に示すように、350℃で仮焼することにより結晶性が増加し、600℃で仮焼してもその結晶性は350℃の場合とあまり変化しなかった。そこで、今後の実験では仮焼条件を400℃以上、5時間とする。
【0023】
1.1.4 S/Mo比の影響
Mo(CO)6とSから、反応温度220℃、反応時間10時間のソルボサーマル反応でMoS2を合成する際に、原料のS/Mo比を変化させた。図7に、S/Mo比を変化させた、Mo(CO)6とSから220℃、10時間のソルボサーマル反応により合成したMoS2生成物のXRDパターンを示す。又、図8に、S/Mo比を変化させた、Mo(CO)6とSから220℃、10時間のソルボサーマル反応により合成したMoS2の400℃、5時間の仮焼物のXRDパターンを示す。各図中、aはS/Mo比1.6、bは2.0、cは2.4、dは3.0である。
図7と図8の結果、S/Mo比を1.6から3.0まで変化させても、生成物はMoS2単相であった。S/Mo比が2.0以上になると、いくぶん生成物のMoS2の結晶性が増加した。しかし、400℃、5時間、アルゴン気流中で仮焼した生成物の結晶性には、違いが見られなかった。
【0024】
1.1.5 MoS2の顕微鏡観察
S/Mo比を2.4とし、Mo(CO)6とSから220℃、10時間のソルボサーマル反応により合成したMoS2、と400℃、5時間の仮焼物を電子顕微鏡により観察した。図9Aに、ソルボサーマル反応による生成物MoS2の、図9Bにその400℃、5時間の仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。また、図10に、ソルボサーマル反応による生成物MoS2の400℃、5時間の仮焼物の透過型電子顕微鏡写真を示す。得られたMoS2は100nm程度の微細な粒子よりなっていることが観察でき、分散性が高く、図3A,B、図5A,Bに示した、異なるMo原料から合成されMoS2とは性状が大きく異なっていた。仮焼することによっても、特に凝集が強くなった様子は観察されなかった。
透過型電子顕微鏡観察からは、生成物が繊維状の層が重なり合った微細構造が観察された。XRDパターンがJCPDSカードに記載されているものと、回折強度が異なる原因は、このような構造に由来するものと考えられる。
【0025】
1.1.6 高温での合成
S/Mo比を変化させ、Mo(CO)6とSから、より高温の350℃、10時間のソルボサーマル反応によりMoS2の合成を試みた。図11に、ソルボサーマル反応による生成物MoS2のXRDパターンを示す。又、図12A,Bにソルボサーマル反応による生成物MoS2の電子顕微鏡写真を示す。
反応温度を高めることにより、生成したMoS2の結晶性は、仮焼した場合と同程度に上昇した。特にS/Mo比が高い場合には、(002)の回折線強度が増加した。
【0026】
走査型電子顕微鏡観察によると、生成物の形状は低温の場合と同じであり、微細な粒子からなることがわかった。また透過型電子顕微鏡観察からは、コントラストは強い繊維状の層と比較的結晶性が高い格子像が観察される二つの部分が認められた。それぞれの格子の間隔は、6.2Åと2.7Åであり、MoS2の〈002〉と〈100〉に対応するものと考えられる。
このように、Mo(CO)6とSを原料とし、S/Mo比を3として、350℃、10時間のソルボサーマル反応により、結晶性が高く分散性に優れるMoS2が合成できることが判明した。
【0027】
1.2 水熱反応によるMoS2の合成
Mo原料として、MoCl5、(NH4)6Mo7O24・4H2O、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oを、S原料として、thiourea((NH2)2CS)を用い、水熱反応によるMoS2の合成を試み、ソルボサーマル反応よりも結晶性の高いMoS2が得られた。MoCl5に水酸化ナトリウムを添加した場合、(NH4)6Mo7O24・4H2Oや、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oを原料に使用した場合には、比較的分散性の高い微細粒子からなるMoS2が生成した。
【0028】
1.2.1 アンモニアを添加してのMoCl5とthioureaの反応
原料をMoCl5とthioureaとし、その量比を変化させると同時に添加するアンモニアの量も変化させ220℃、10時間の条件でMoS2の合成を試みた。図13に、アンモニアを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2のXRDパターンを示す。又、図14に、アンモニアを添加して水熱合成したMoS2をアルゴン気流中で仮焼(400℃、5時間)したMoS2のXRDパターンを示す。各図中で、aはS/Mo=2.2でアンモニア無添加、bはS/Mo=2.2でアンモニア50vol%、cはS/Mo=3.0でアンモニア50vol%、dはS/Mo=4.0でアンモニア50vol%である。更に、図15A,Bに、アンモニアを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2(S/Mo=2.2)の走査型電子顕微鏡写真を示す。
S/Moが30の時、アンモニアの添加の有無にかかわらず(002)回折線の位置がずれた生成物が得られた。この生成物を400℃で仮焼すると、従来得られてきたMoS2と同じ回折パターンとなった。S/Moが30の時、層間に何らかの物質が挿入された可能性がある。仮焼により、結晶性は向上した。一般に生成物は強く凝集していた。
【0029】
1.2.2 水酸化ナトリウムを添加してのMoCl5とthioureaの反応
図16に、S/Mo比を2.2とし水酸化ナトリウムを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2とそれをアルゴン気流中で仮焼(400℃、5時間)したMoS2のXRDパターンを示す。ここで、aはNaOH水溶液濃度0.6M、bはNaOH水溶液濃度0.9M、cはNaOH水溶液濃度1.2M、dはNaOH水溶液濃度1.8Mである。又、図17に、0.6MNaOH水溶液中で水熱合成(220℃、10時間)したMoS2の走査型電子顕微鏡写真(S/Mo比=2.2)を示す。
水酸化ナトリウム添加して合成したMoS2は、比較的結晶性が高く、分散性の高い微細な球状粒子からなっていた。
【0030】
1.2.3 (NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaの反応
図18に、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のXRDパターンを示す。又、図19A,Bに、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物の走査電子顕微鏡写真を示す。さらに、図20に、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のFTIRスペクトルを示す。各図中、aは水熱合成物(220℃、10時間)、bは焼成物(400℃、5時間)である。
得られた生成物は結晶性が高く、仮焼しても結晶性の向上は見られなかった。試料は比較的分散性の高い微細な粒子からなっていた。FTIRスペクトルには、有機物に起因した吸収はなかった。
【0031】
1.2.4 (NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaの反応
図21に、(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のXRDパターンを示す。又、図22A,Bに、(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物の走査電子顕微鏡写真を示す。図22Aは、水熱合成物(220℃、10時間)であり、図22Bは焼成物(アルゴン中、400℃、5時間)である。更に、図23に、(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のFTIRスペクトルを示す。各図中、aは水熱合成物(220℃、10時間)、bは焼成物(アルゴン中、400℃、5時間)である。
(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oを原料とした場合と同様の結果が、(NH4)6Mo7O24・4H2Oを原料とした場合にも得られた。生成物は結晶性が高く、仮焼しても結晶性の向上ば見られなかった。試料は比較的分散性の高い微細な粒子からなっていた。FTIRスペクトルには、有機物に起因した吸収はなかった。
【0032】
[実施例2:RuS2の合成]
Ru原料として、Ru(CO)12を、S原料として、S(硫黄固体)を、溶媒としてキシレンあるいは蒸留水を用い、ソルボサーマル反応あるいは水熱反応を、反応条件:220℃、10時間行った。その後、Ar雰囲気下、400℃、5時間の仮焼を行った。
【0033】
2.1 ソルボサーマル反応によるRuS2の合成
図24に、S/Ru比を変化させ、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2のXRDパターンを示す。図中、aはS/Ru=6、bはS/Ru=4である。生成物はS/Ru比によらず、低結晶性であった。図24に示した、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2とその仮焼物のFTIRスペクトルから、ソルボサーマル反応により得られた生成物は有機物を含有していることが分かった。図中、aは生成したRuS2であり、bはその仮焼物である。
【0034】
図25に、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。図中、aはS/Ru=6、bはS/Ru=4、cはS/Ru=4.8、dはS/Ru=4.3、eはS/Ru=4である。仮焼により、生成物中の有機物は消失した。試料を仮焼した場合、S/Ru比により挙動が大きく異なり、仮焼により結晶化がおこるためには、S/Ru比4.8以下が必要であった。S/Ru比が減少して4となると、結晶化は著しく進行するが、同時に金属Ruの生成が認められるようになった。
【0035】
図26A,B,Cに、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)の走査型電子顕微鏡写真を示す。図中、aはS/Ru=4、bはS/Ru=4.3、cはS/Ru=6である。1μm程度の球状粒子が凝集しており、S/Ru比は粉末粒子形状には大きな影響を有していなかった。図27A,B,C,Dに示す、RuS2の仮焼物の透過型電子顕微鏡写真から、仮焼した後の球状粒子は微細な粒子からなっており、個々の粒子は格子像が観察でき、良く結晶化していることがわかった。
図28に、ソルボサーマル反応合成物RuS2(S/Ru比=4)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。図中、aは水熱合成物、bは仮焼物である。
【0036】
2.2 水熱反応によるRuS2の合成
図29に、水熱反応による生成物RuS2(220℃、10時間)のXRDパターンを示す。又、図30に、水熱反応による生成物RuS2(220℃、10時間)の仮焼物(400℃、5時間)のXRDパターンを示す。各図中、aはS/Ru=2、bはS/Ru:2.8、cはS/Ru=3.6、dはS/Ru=4.4である。更に、図31A,Bに、RuS2とその仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。図31AはS/Ru=4.4の生成物RuS2であり、図31Bはその仮焼物(400℃、5時間)である。
S/Ru比が3.6以下では、生成物中に結晶相が生成するようになったが、同定することはできていない。この相は有機物を含有しているものと考えられる。S/Ru比が4.4で得られた非晶質相も、仮焼することによりRuS2へと結晶化した。S/Ru比が2.8以下では仮焼物中に未同定相が混在した。S/Ru比が2.0ではRu金属の生成も確認された。
【0037】
[実施例3:Rh2S3の合成]
Rh原料として、Rh6(CO)16を、S原料として、S(硫黄固体)を、溶媒としてキシレンあるいは蒸留水を用い、ソルボサーマル反応あるいは水熱反応を、反応条件:220℃、10時間行った。その後、Ar雰囲気下、400℃、5時間(一部は750℃)の仮焼を行った。
【0038】
3.1 ソルボサーマル反応によるRh2S3の合成
図32に、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3のXRDパターンを示す。又、図33に、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。各図中、aはS/Rh=1.5、bはS/Rh=3.6、cはS/Rh=5.0である。図34に、S/Rh=5.0でソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3とその仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間、及び750℃、5時間)のXRDパターンを示す。図中、aはソルボサーマル反応による生成物Rh2S3、bはその仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)、cはその仮焼物(Ar気流中、750℃、5時間)である。
ソルボサーマル反応による生成物Rh2S3は低結晶性であったが、それを仮焼すると結晶化が著しく進行した。仮焼による結晶化はS/Rh比に依存しており、S/Rh比が3.6以下では結晶化したが、5.0では結晶化が起こらなかった。しかし、仮焼温度を750℃まで上昇させることにより、S/Rh比が5の試料でも結晶化した。
【0039】
図35A,B,C,Dにソルボサーマル反応による生成物Rh2S3とその仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。図中、aはS/Rh比=3.6のソルボサーマル反応生成物、bはS/Rh比=3.6のソルボサーマル反応生成物の400℃焼成物、cはS/Rh比=5.0のソルボサーマル反応生成物、dはS/Rh比=5.0のソルボサーマル反応生成物の400℃焼成物である。生成物はS/Rh比に依存せず非常に細かな粒子よりなっており、仮焼によっても変化は観察されなかった。
【0040】
3.2 水熱反応によるRh2S3の合成
図36に、水熱反応による生成物Rh2S3とその仮焼物のXRDパターンを示す。図中、aはS/Rh比=1.5の水熱反応生成物、bはS/Rh比=1.5の水熱反応生成物の400℃焼成物、cはS/Rh比=3.0の水熱反応生成物、dはS/Rh比=3.0の水熱反応生成物の400℃焼成物である。
水熱反応の生成物Rh2S3はS/Rh比によらず低結晶性であったが、仮焼することにより結晶化が著しく進行した。S/Rh比が1.5の場合、仮焼物中に不純物が存在し、S/Rh比が3.0の方が目的相が得られた。
【0041】
図37A,B、に、水熱反応の生成物Rh2S3とその仮焼物の電子顕微鏡写真を示す。図中、aはS/Rh比=1.5の水熱反応生成物の400℃焼成物、bはS/Rh比=3.0の水熱反応生成物の400℃焼成物である。水熱合成物は一部自形を有し大きな結晶へと成長していた。XRDパターンが非晶質的な性質を有しているのに対し、結晶が確実に成長していることは、不思議な現象である。
【0042】
図38A,Bに、S/Rh=3.0の水熱反応の生成物Rh2S3の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。図39A,Bに、S/Rh=3.0の水熱反応の生成物Rh2S3の400℃焼成物の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。上記の結晶成長は、図38A,B、図39A,Bに示した透過型電子顕微鏡写真や電子線回折図形からも確認できた。
【0043】
図40に、水熱合成物Rh2S3(S/Rh比=3)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。図中、aは水熱合成物、bは仮焼物である。図40のIRスペクトルから、水熱反応生成物中には有機物は取り込まれていないことがわかった。
【0044】
[実施例4:ReS2の合成]
Re原料として、Re2(CO)10を、S原料として、S(硫黄固体)を、溶媒としてキシレンあるいは蒸留水を用い、ソルボサーマル反応あるいは水熱反応を、反応条件:220℃、10時間行った。その後、Ar雰囲気下、400℃又は750℃、5時間の仮焼を行った。
【0045】
4.1 ソルボサーマル反応によるReS2の合成
図41に、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したReS2のXRDパターンを示す。又、図42に、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したReS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。各図中、aはS/Re=1.32、bはS/Re=2、cはS/Re=4、dはS/Re=9である。
【0046】
S/Re比が2より低い場合には、低結晶性物質からのブロードな回折線の他に、非常に鋭い回折線が観察された。しかし、同定することはできなかった。また、この回折線は仮焼することにより消失することから、有機物に起因しているものと考えられる。400℃で仮焼した場合にも、S/Re比が2より低い時には40℃付近の回折線が全く分離せず、S/Re比が高い試料とは異なる挙動を示した。
【0047】
図43に、S/Re比が4で得られた生成物ReS2及び仮焼物のXRDパターンを示す。図中、aはソルボサーマル反応生成物ReS2、bはその400℃仮焼物、cはその750℃仮焼物である。又、図44に、S/Re比が9で得られた生成物ReS2及び仮焼物のXRDパターンを示す。図中、aはソルボサーマル反応生成物ReS2、bはその400℃仮焼物、cはその750℃仮焼物である。750℃の焼成により結晶性の増加は認められるものの、それでも回折線はブロードで試料は完全には結晶化していないものと考えられる。
【0048】
図45A,B,C,Dに、ソルボサーマル反応生成物ReS2及び仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。図中、aはS/Re=4のソルボサーマル反応生成物、bはS/Re=4のソルボサーマル反応生成物の400℃仮焼物、cはS/Re=2のソルボサーマル反応生成物、dはS/Re=2のソルボサーマル反応生成物の400℃仮焼物である。生成物は球状粒子よりなっており、特にS/Re比が2の場合には、大きさが均一であった。S/Re比が4の場合には、粒径分布は広くなった。
図46A,Bに、S/Rh=9.0のソルボサーマル反応の生成物ReS2の750℃焼成物の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。
図47に、ソルボサーマル生成物(S/Rh比=4)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。図中、aは水熱合成物、bは仮焼物である。
【0049】
下記表1に、750℃仮焼物のEDX分析結果を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
EDXの組成分析の結果、平均値としてS/Re比1.98が得られたが、同一球状粒子内においても組成のばらつきが見られ、必ずしも正確な組成比が与えられていないものと考えられる。
【0052】
4.2 水熱反応によるReS2の合成
図48に、水熱反応(220℃、10時間)により合成したReS2のXRDパターン、及び水熱反応(220℃、10時間)により合成したReS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。各図中、aはS/Re=2、bはS/Re=2の仮焼物、cはS/Re=4、dはS/Re=4の仮焼物である。
S/Re比を2あるいは4と変化させても、また400℃で仮焼してもやや結晶性は向上するものの、生成物は低結晶性のままであった。
【0053】
図49A,B,C,Dに、水熱反応生成物ReS2及び仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。図中、aはS/Re=4の水熱反応生成物、bはS/Re=4の水熱反応生成物の400℃仮焼物、cはS/Re=2の水熱反応生成物、dはS/Re=2の水熱反応生成物の400℃仮焼物である。生成物は強く凝集していた。
【0054】
[性能評価]
図50に、本発明の幾つかの硫化物又は複合硫化物の酸素還元触媒性能の結果を示す。図50の結果より、本発明の硫化物又は複合硫化物は優れた酸素還元触媒性能を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末を得ることが出来る。特に、微細な球状単結晶を得ることができる。これらの、特定元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末は公知の用途に用いられるほか、その特性を生かして種々の用途への開発が期待できる。例えば、低コスト化が可能な燃料電池用触媒として利用できる。更に、ドープするドーパント元素を選択することにより各種物性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の水熱反応あるいはソルボサーマル反応による合成方法をフロチャートに示す。
【図2】ソルボサーマル反応により合成したMoS2のXRDパターンを示す。
【図3】MoCl5から合成したMoS2粉末のSEM写真(仮焼400℃、5h)を示す。
【図4】ソルボサーマル反応のより合成したMoS2のXRDパターンを示す。
【図5】thioureaから合成したMoS2粉末のSEM写真(仮焼400℃、5h)を示す。
【図6】ソルボサーマル反応のより合成したMoS2(a)とその仮焼物(b、c)のXRDパターンを示す。
【図7】S/Mo比を変化させた、Mo(CO)6とSから220℃、10時間のソルボサーマル反応により合成したMoS2生成物のXRDパターンを示す。
【図8】S/Mo比を変化させた、Mo(CO)6とSから220℃、10時間のソルボサーマル反応により合成したMoS2の400℃、5時間の仮焼物のXRDパターンを示す。
【図9】図9Aは、ソルボサーマル反応による生成物MoS2の、図9Bは、その400℃、5時間の仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図10】ソルボサーマル反応による生成物MoS2の400℃、5時間の仮焼物の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図11】ソルボサーマル反応による生成物MoS2のXRDパターンを示す。
【図12】図12A,Bは、ソルボサーマル反応による生成物MoS2の電子顕微鏡写真を示す。
【図13】アンモニアを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2のXRDパターンを示す。
【図14】アンモニアを添加して水熱合成したMoS2をアルゴン気流中で仮焼(400℃、5時間)したMoS2のXRDパターンを示す。
【図15】図15A,Bは、アンモニアを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2(S/Mo=2.2)の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図16】S/Mo比を2.2とし水酸化ナトリウムを添加して水熱合成(220℃、10時間)したMoS2とそれをアルゴン気流中で仮焼(400℃、5時間)したMoS2のXRDパターンを示す。
【図17】0.6MNaOH水溶液中で水熱合成(220℃、10時間)したMoS2の走査型電子顕微鏡写真(S/Mo比=2.2)を示す。
【図18】(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のXRDパターンを示す
【図19】図19A,Bは、(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図20】(NH4)3[PO4Mo12O]・3H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のFTIRスペクトルを示す。
【図21】(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のXRDパターンを示す。
【図22】図22A,Bは、(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図23】(NH4)6Mo7O24・4H2Oとthioureaとの水熱反応により得られた生成物とその仮焼物のFTIRスペクトルを示す。
【図24】S/Ru比を変化させ、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2のXRDパターンを示す。
【図25】ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図26】図26A,B,Cは、ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRuS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図27】図27A,B,C,Dは、RuS2の仮焼物の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図28】ソルボサーマル反応合成物RuS2(S/Ru比=4)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。
【図29】水熱反応による生成物RuS2(220℃、10時間)のXRDパターンを示す。
【図30】水熱反応による生成物RuS2(220℃、10時間)の仮焼物(400℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図31】図31A,Bは、RuS2とその仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図32】ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3のXRDパターンを示す。
【図33】ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図34】S/Rh=5.0でソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したRh2S3とその仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間、及び750℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図35】図35A,B,C,Dは、ソルボサーマル反応による生成物Rh2S3とその仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図36】水熱反応による生成物Rh2S3とその仮焼物のXRDパターンを示す。
【図37】図37A,Bは、水熱反応の生成物Rh2S3とその仮焼物の電子顕微鏡写真を示す。
【図38】図38A,Bは、S/Rh=3.0の水熱反応の生成物Rh2S3の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。
【図39】図39A,Bは、S/Rh=3.0の水熱反応の生成物Rh2S3の400℃焼成物の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。
【図40】水熱合成物Rh2S3(S/Rh比=3)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。
【図41】ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したReS2のXRDパターンを示す。
【図42】ソルボサーマル反応(220℃、10時間)により合成したReS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図43】S/Re比が4で得られた生成物ReS2及び仮焼物のXRDパターンを示す。
【図44】S/Re比が9で得られた生成物ReS2及び仮焼物のXRDパターンを示す。
【図45】図45A,B,C,Dは、ソルボサーマル反応生成物ReS2及び仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図46】図46A,Bは、S/Rh=9.0のソルボサーマル反応の生成物ReS2の750℃焼成物の電子顕微鏡写真と電子線回折図形を示す。
【図47】ソルボサーマル生成物(S/Rh比=4)とその400℃仮焼物のFTIRスペクトルを示す。
【図48】水熱反応(220℃、10時間)により合成したReS2のXRDパターン、及び水熱反応(220℃、10時間)により合成したReS2の仮焼物(Ar気流中、400℃、5時間)のXRDパターンを示す。
【図49】図49A,B,C,Dは、水熱反応生成物ReS2及び仮焼物の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図50】本発明の幾つかの硫化物又は複合硫化物の酸素還元触媒性能の結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末。
【請求項2】
略球状であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶微粉末。
【請求項3】
前記硫化物は、硫化モリブデン、硫化ロジウム、硫化ルテニウム、又は硫化レニウムから選択される2元系化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶微粉末。
【請求項4】
前記複合硫化物は、Rh−X−Sで表される3元系化合物であり、Xはモリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、テルル(Te)、トリウム(Th)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)から選択される1種以上の元素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶微粉末。
【請求項5】
前記複合硫化物は、Ru−X−Sで表される3元系化合物であり、Xはモリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、テルル(Te)、トリウム(Th)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、ロジウム(Rh)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)から選択される1種以上の元素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶微粉末。
【請求項6】
モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される元素を含む化合物の1種以上と、硫黄(S)を含む化合物とから、溶媒混合液を作製する工程と、該溶媒混合液を水又は溶媒の超臨界状態または亜臨界状態とする圧力および温度で水熱反応又はソルボサーマル反応させる工程とを含む、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末の製造方法。
【請求項7】
前記水熱反応又はソルボサーマル反応する工程は、200℃〜600℃で反応させることを特徴とする請求項6に記載の単結晶微粉末の製造方法。
【請求項8】
前記水熱反応又はソルボサーマル反応する工程の後に、不活性ガス雰囲気下で300℃〜800℃で熱処理させることを特徴とする請求項6又は7に記載の単結晶微粉末の製造方法。
【請求項1】
モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末。
【請求項2】
略球状であることを特徴とする請求項1に記載の単結晶微粉末。
【請求項3】
前記硫化物は、硫化モリブデン、硫化ロジウム、硫化ルテニウム、又は硫化レニウムから選択される2元系化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶微粉末。
【請求項4】
前記複合硫化物は、Rh−X−Sで表される3元系化合物であり、Xはモリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、テルル(Te)、トリウム(Th)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)から選択される1種以上の元素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶微粉末。
【請求項5】
前記複合硫化物は、Ru−X−Sで表される3元系化合物であり、Xはモリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、テルル(Te)、トリウム(Th)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、ロジウム(Rh)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)から選択される1種以上の元素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶微粉末。
【請求項6】
モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される元素を含む化合物の1種以上と、硫黄(S)を含む化合物とから、溶媒混合液を作製する工程と、該溶媒混合液を水又は溶媒の超臨界状態または亜臨界状態とする圧力および温度で水熱反応又はソルボサーマル反応させる工程とを含む、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)から選択される1種以上の元素の硫化物又は複合硫化物の単結晶微粉末の製造方法。
【請求項7】
前記水熱反応又はソルボサーマル反応する工程は、200℃〜600℃で反応させることを特徴とする請求項6に記載の単結晶微粉末の製造方法。
【請求項8】
前記水熱反応又はソルボサーマル反応する工程の後に、不活性ガス雰囲気下で300℃〜800℃で熱処理させることを特徴とする請求項6又は7に記載の単結晶微粉末の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
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【図50】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【公開番号】特開2009−67647(P2009−67647A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239840(P2007−239840)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504174180)国立大学法人高知大学 (174)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504174180)国立大学法人高知大学 (174)
【Fターム(参考)】
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