説明

硬化性樹脂組成物及び室温硬化性接着剤組成物

【課題】硬化性シリコーン系樹脂とエポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物において、プラスチック類に対する密着性を向上させる。
【解決手段】分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)と、分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂(B)と、分子内に五員環カーボネート基を有する化合物(C)と、下記の化合物(D)〜化合物(G)からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含有する硬化性樹脂組成物。化合物(D):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物。化合物(E):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物。化合物(F):分子内にC=N結合を有するケチミン化合物及び/又はアルジミン化合物。化合物(G):分子内にC=N結合並びに架橋可能な反応性珪素基を有するケチミンシラン化合物及び/又はアルジミンシラン化合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びそれを主体的成分とする室温硬化性接着剤組成物に関し、特定の化学構造・硬化機構を有する硬化性樹脂組成物からなる接着性に優れた硬化性樹脂組成物及びそれを用いた室温硬化性接着剤組成物に関する。より詳細には、分子内に五員環カーボネート基を有する硬化性樹脂を配合した硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂と、分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂とを配合した接着剤等が提案されている(特許文献1〜5)。該接着剤等は、硬化性シリコーン系樹脂の強度不足をエポキシ樹脂で補うことによって、可撓性、耐衝撃性、強靱性、強度などが改善されており、金属パネルのはり合わせ、あるいは、タイルのはり合わせなどに使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3−31726号公報
【特許文献2】特開平2−140269号公報
【特許文献3】特開平2−145674号公報
【特許文献4】特開平2−145675号公報
【特許文献5】特開平2−228365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、該接着剤等は、エポキシ樹脂が配合されているため金属に対する密着性は比較的高いが、一方でエポキシ樹脂はプラスチックに対する密着性がほとんどなく、さらには、元来接着性の乏しい硬化性シリコーン系樹脂を主の硬化性樹脂として配合していることから、特にABSなどに代表されるプラスチック類に対する密着性が十分ではなかった。そのため、該接着剤の使用範囲は金属やタイル等の無機物に限定されており、該接着剤の優れた皮膜性能を活かし切れていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような問題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、硬化性シリコーン系樹脂とエポキシ樹脂にくわえ、さらに特定の五員環カーボネート基を有する化合物を配合することにより、プラスチックに対する密着性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は次の第1〜5の発明から構成される。
【0006】
すなわち、第1の発明は、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)と、分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂(B)と、分子内に下記一般式(1)で示される五員環カーボネート基を有する化合物(C)と、下記の化合物(D)〜化合物(G)からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関するものである。
化合物(D):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物
化合物(E):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物
化合物(F):分子内にC=N結合を有するケチミン化合物及び/又はアルジミン化合物
化合物(G):分子内にC=N結合並びに架橋可能な反応性珪素基を有するケチミンシラン化合物及び/又はアルジミンシラン化合物
【化1】

・・・(1)
(ただし、式中のXは、水素原子又は分子量100以下の有機基を示す)
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明に係る硬化性樹脂組成物であって、化合物(D)及び化合物(E)をともに含有し、かつ、化合物(D)が分子内に2個以上の第1級アミノ基を有するポリアミン化合物(d)であり、化合物(E)が分子内に第1級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(e)であることを特徴とする硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0008】
また、第3の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(A)が、分子内にウレタン結合及び/又は尿素結合を有することを特徴とする、第1又は第2の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。なお、本発明においては、硬化性シリコーン樹脂(A)が分子内に有するウレタン結合及び/又は尿素結合における活性水素は、有機基で置換されていてもよい。したがって、本発明においては、アロファネート結合もウレタン結合の範疇に属するし、ビュレット結合も尿素結合の範疇に属する。
【0009】
また、第4の発明は、五員環カーボネート基を有する化合物(C)が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びグリセリンカーボネートからなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、第1〜3のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0010】
また、第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物を主体的成分とする室温硬化性接着剤組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、硬化性シリコーン系樹脂とエポキシ樹脂とからなる硬化性樹脂組成物に、特定の五員環カーボネート基を有する化合物を配合することにより、プラスチック(特にABS樹脂)に対する密着性が向上するという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施するための最良の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0013】
[硬化性シリコーン系樹脂(A)について]
本発明における硬化性シリコーン系樹脂(A)は、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂である。上記反応性珪素基とは、珪素原子における主鎖との結合手以外に加水分解性基が1〜3個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基が2〜0個結合しているものである。珪素原子に結合している加水分解性基としては、ヒドロキシル基や、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシル基が一般的に用いられる。その他、ハロゲン基やメルカプト基等の従来公知の加水分解性基も用いることができる。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基としては、メチル基やエチル基等のアルキル基が一般的に用いられる。主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられているものが採用される。
【0014】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の市販品としては、シリコーン樹脂又は変成シリコーン樹脂として多数販売されている。例えば、株式会社カネカ製のサイリルシリーズ、MSポリマーシリーズ、MAシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、エピオンシリーズ;旭硝子株式会社製のESシリーズ;デグサジャパン株式会社製のベストプラスト206、信越化学工業株式会社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ;東亞合成株式会社製のXPRシリーズ;綜研化学株式会社製のアクトフローシリーズ等が挙げられる。
【0015】
また、本発明では、硬化性シリコーン系樹脂(A)として、分子内にウレタン結合、尿素結合等の極性基を含有する硬化性シリコーン系樹脂を好適に用いることができる。なお、主鎖又は側鎖に導入されているウレタン結合及び/又は尿素結合における活性水素は、有機基で置換されていてもよい。したがって、本発明においては、アロファネート結合もウレタン結合の範疇に属するし、ビュレット結合も尿素結合の範疇に属する。このような極性基を架橋可能な反応性珪素基の近傍に導入すると、硬化性シリコーン系樹脂の硬化がさらに促進されるため好ましい。硬化が促進する理由としては、硬化性シリコーン系樹脂の分子内に存在する極性基同士が水素結合等の相互作用によってドメインを形成し、それによって架橋可能な反応性珪素基同士の分子的な距離が近くなり、架橋可能な反応性珪素基同士のカップリング反応(縮合反応)が起こりやすくなるためであると考えられる。
【0016】
分子内に極性基を含有する硬化性シリコーン系樹脂は、従来公知の方法及び原料で合成すればよい。例えば、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物(あるいはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物)を反応させる方法や、水酸基末端ポリオールにイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法等が知られている。より具体的には、特許第3030020号公報記載の方法や、特開2005−54174号公報、特開2005−139452号公報、特表2005−501146号公報等に記載の原料及び方法が挙げられる。
【0017】
[エポキシ樹脂(B)について]
本発明におけるエポキシ樹脂(B)は、分子内にオキシラン環を有する従来公知のエポキシ化合物である。具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アミンをエポキシ化したエポキシ樹脂、複素環を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂等の一分子中に一個以上のオキシラン環を含有する化合物等の従来公知のエポキシ基含有化合物が挙げられる。また、市販品としては、DIC株式会社製のエピクロンシリーズ;ダイセル化学工業株式会社製のセロキサイドシリーズ、エポリードシリーズ、EHPEシリーズ、サイクロマーシリーズ;ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコートシリーズ、ダウケミカル日本株式会社製のD.E.R.シリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0018】
上記エポキシ樹脂(B)の配合量は、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して1.0〜500質量部が好ましく、5.0〜200質量部がより好ましく、10〜100質量部が特に好ましい。1.0質量部を下回ると硬化物の強靱性が十分発現しない場合があり、500質量部を上回ると硬化性シリコーン系樹脂(A)の性能が十分発現しない場合がある。上記エポキシ樹脂(B)は、求められる性能に応じて、一種もしくは複数種組み合わせて用いればよい。
【0019】
[五員環カーボネート基を有する化合物(C)について]
本発明における、五員環カーボネート基を有する化合物(C)は、上記一般式(1)で示される五員環カーボネート基を有する化合物である。なお、以下では単に「化合物(C)」と表記することがある。
【0020】
上記化合物(C)の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ヘキシレンカーボネート、オクチレンカーボネート、グリセリンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの中では、下記一般式(2)で表されるエチレンカーボネート、下記一般式(3)で表されるプロピレンカーボネート、下記一般式(4)で表されるグリセリンカーボネートが入手の容易さ及び反応性の高さから好ましく、なかでもグリセリンカーボネートがABSに対する密着性向上効果が高いことから特に好ましい。
【0021】
【化2】

・・・(2)

【0022】
【化3】

・・・(3)
【0023】
【化4】

・・・(4)
【0024】
上記化合物(C)は各種化合物から誘導することができる。例えば、臭化リチウム等の触媒を用いてオキシラン環を有する化合物と二酸化炭素とを反応させることで合成する方法や、グリコール化合物と尿素から誘導する方法など、種々の方法が知られている。また、特開2008−001659号公報、Journal of the Japan Petroleum Institute,48,(2),67−75(2005)に記載の方法、反応性高分子の新展開,シーエムシー出版(2005)の第1章に引用されている方法などを利用することができる。
【0025】
上記化合物(C)の配合量は、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1.0〜10質量部が特に好ましい。0.1質量部を下回ると密着性付与効果が十分発現しない場合があり、30質量部を上回ると硬化物の耐水性が低下する場合がある。上記化合物(C)は、求められる性能に応じて、一種もしくは複数種組み合わせて用いればよい。また、後述する化合物(D)及び上記化合物(E)中の第1級及び/又は第2級アミノ基に対する上記化合物(C)の配合量は特に限定されないが、該アミノ基1molに対して、0.01〜2.0molが好ましく、0.05〜1.0molがより好ましく、0.10〜0.50molが特に好ましい。さらに、後述する化合物(F)及び化合物(G)中のC=N結合基に対する上記化合物(C)の配合量は特に限定されないが、該C=N結合基1molに対して、0.01〜2.0molが好ましく、0.05〜1.0molがより好ましく、0.10〜0.50molが特に好ましい。
【0026】
[ポリアミン化合物(D)について]
本発明におけるポリアミン化合物(D)は、分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を複数有する化合物であり、従来公知のポリアミン化合物を使用することができる。なお、以下では単に「化合物(D)」と表記することがある。なかでも、分子内に2個以上の第1級アミノ基を有するポリアミン化合物(d)であると、エポキシ樹脂(B)が有するオキシラン環(エポキシ基)と良好な反応性を示し、強固なネットワークを形成することから特に好ましい。
【0027】
化合物(D)の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ノルボルナンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、式 HN(CNH)H(n≧5)で表わされる化合物(商品名:ポリエイト、東ソー株式会社製)、ハンツマン社製商品名ジェファーミンシリーズ等の分子末端に第1級アミノ基を有するポリオキシプロピレン、日本触媒株式会社製商品名エポミンシリーズ等のポリエチレンイミン、日本触媒株式会社製商品名ポリメントシリーズ等のアミノエチル化アクリルポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0028】
上記化合物(D)のアミノ基は、上記エポキシ樹脂(B)が有するオキシラン環(エポキシ基)又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基と反応することから、硬化物の皮膜凝集力をさらに一段と向上させることができ、硬化性樹脂組成物を効果的に硬化させる。上記化合物(D)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよく、さらにこれらは1種又は2種以上使用してもよい。上記化合物(D)の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基及び上記化合物(C)の五員環カーボネート基の総量1molに対して、上記化合物(D)中の第1級及び/又は第2級アミノ基が0.01〜3.0molであるのが好ましく、0.1〜2.0molであるのがさらに好ましく、0.2〜1.0molであるのが特に好ましい。0.01molを下回ると硬化物の強靱性が十分発現しない場合があり、3.0molを上回ると上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)が十分硬化しない場合がある。
【0029】
[アミノシラン化合物(E)について]
本発明における、アミノシラン化合物(E)は、分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基、並びに架橋可能な反応性珪素基を有する化合物である。なお、以下では単に「化合物(E)」と表記することがある。なかでも、分子内に第1級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(e)であると、エポキシ樹脂(B)が有するオキシラン環(エポキシ基)と良好な反応性を示すことから特に好ましい。
【0030】
上記化合物(E)としては、下記一般式(5)で示される化合物(e1)、化合物(e1)の縮合生成物、又は、化合物(e1)と下記一般式(6)で示される化合物(e2)との縮合反応生成物が挙げられる。これらの中では、化合物(e1)の縮合生成物、及び、化合物(e1)と化合物(e2)との縮合反応生成物がより好ましく、化合物(e1)の縮合生成物、及び、化合物(e1)と化合物(e2)との縮合反応生成物のうち2個以上の化合物(e1)と1個以上の化合物(e2)との縮合反応生成物が特に好ましい。その理由は、上記縮合生成物はその分子内に第1級アミノ基を複数個有しているため、上記エポキシ樹脂(B)や上記化合物(C)との反応確率が向上するからである。
【0031】
【化5】

・・・(5)
(ただし、式中、R1はフェニル基及び炭素数1〜6のアルキル基から選ばれる一種以上の官能基を、Rは第2級アミノ基を含んでいてもよい分子量200以下の二価の有機基を、Wはフェノキシ基及び炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる一種以上の基を、nは0、1又は2を、それぞれ表す)
【化6】

・・・(6)
(ただし、式中、R、R、Rは、フェニル基、分子量500以下のアルキル基、メルカプトプロピル基、ウレイドプロピル基、フェノキシ基、及び、炭素数1〜6のアルコキシ基に代表される分子量500以下の有機基から選ばれる一種以上の基をそれぞれ表し、Rは、フェニル基、及び、炭素数1〜6のアルキル基から選ばれる一種以上の基をそれぞれ表す)
【0032】
[化合物(e1)について]
化合物(e1)の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、[N−(2−アミノエチル)アミノメチル]メチルジメトキシシラン、[N−(2−アミノエチル)アミノメチル]トリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、[2−アミノエチル−(2′−アミノエチル)]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の第1級アミノ基含有アミノシラン化合物等が例示される。また、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン等のケチミンシラン化合物も、湿気により第1級アミノ基が生成するため実質的に含まれる。なかでも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、又は、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いることが、入手が容易であるという観点から好ましい。
【0033】
[化合物(e2)について]
化合物(e2)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等が例示される。なかでも、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランを用いることが、化合物(e1)との縮合反応の容易性の観点から好ましい。
【0034】
化合物(e1)単独、あるいは、化合物(e1)と化合物(e2)との縮合生成物は、従来公知の定法により合成すればよい。具体的には、化合物(e1)を水と反応させる方法、あるいは、化合物(e1)及び化合物(e2)を水と反応させる方法が挙げられる。化合物(e1)単独、あるいは、化合物(e1)と化合物(e2)との縮合生成物は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、MS3301(チッソ株式会社製商品名)、MS3302(チッソ株式会社製商品名)、X−40−2651(信越化学工業株式会社製商品名)等のアミノシランのシリル基を単独あるいはその他のアルコキシシラン化合物と一部縮合させた化合物が挙げられる。
【0035】
本発明においては、上記化合物(E)を配合しなくともABS樹脂に対する密着性が向上するが、上記化合物(E)を配合することでよりその効果が高まる上、その他の被着材(特に金属材料)に対する密着性も向上する。その理由としては、上記化合物(E)のアミノ基は、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基と反応するうえ、上記化合物(E)の反応性珪素基が架橋するため、上記化合物(E)はいわば上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)の硬化剤として働き、硬化性樹脂組成物を効果的に硬化させるからである。また、上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)と反応せずに残った上記化合物(E)は、金属や無機材料への密着性付与剤として働くことができ、各種被着材に対する密着性を向上させるものと推察される。
【0036】
上記化合物(E)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよい。また、上記化合物(E)は1種単独又は2種以上併用してもよい。上記化合物(E)の配合量は特に限定されないが、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1.0〜10質量部が特に好ましい。
【0037】
[ケチミン化合物及び/又はアルジミン化合物(F)について]
本発明における、ケチミン化合物及び/又はアルジミン化合物(F)は、分子内に加水分解性のC=N結合を有する化合物であり、上記化合物(D)のうち第1級アミノ基を有する化合物と、ケトン化合物又はアルデヒド化合物との脱水縮合反応によって合成することができる。なお、以下では単に「化合物(F)」と表記することがある。
【0038】
上記ケトン化合物の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記アルデヒド化合物としては、エタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
上記化合物(F)は、上記化合物(F)中のC=N結合が加水分解した後に生成する第1級アミノ基が、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基と反応することから、硬化物の皮膜凝集力をさらに一段と向上させることができ、硬化性樹脂組成物を効果的に硬化させる。上記化合物(F)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよく、さらにこれらは1種又は2種以上使用してもよい。また、上記化合物(F)は分子中のC=N結合が加水分解して第1級アミノ基が生成するが、該反応に水が必要であるため潜在性硬化剤として利用できることから、配合した硬化性樹脂組成物を水が混入しないような密閉容器に充填することで、本発明にかかる硬化性樹脂組成物を一液型とすることができる。
【0040】
上記化合物(F)の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基1molに対して、上記化合物(F)中のC=N結合が0.01〜3.0molであるのが好ましく、0.1〜2.0molであるのがさらに好ましく、0.2〜1.0molであるのが特に好ましい。上記化合物(F)の添加量が、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基1molに対して0.01molを下回ると化合物(C)を添加する効果が十分でないことがあり、3.0molを上回ると上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)が十分硬化しないことがある。
【0041】
[ケチミンシラン化合物及び/又はアルジミンシラン化合物(G)について]
本発明における、ケチミンシラン化合物及び/又はアルジミンシラン化合物(G)は、分子内に加水分解性のC=N結合並びに架橋可能な反応性珪素基を有する化合物であり、上記化合物(E)のうち第1級アミノ基を有する化合物と、上記ケトン化合物又は上記アルデヒド化合物との脱水反応によって合成することができる。なお、以下、単に「化合物(G)」と表記することがある。
【0042】
本発明においては、上記化合物(G)を配合しなくともプラスチック(特にABS樹脂)に対する密着性が向上するが、上記化合物(G)を配合することでよりその効果が高まる。その理由としては、上記化合物(G)のC=N結合が加水分解することで生成する第1級アミノ基が、上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ基又は上記化合物(C)の五員環カーボネート基と反応するうえ、上記化合物(G)の反応性珪素基が架橋するため、上記化合物(G)はいわば上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)の硬化剤として働き、硬化性樹脂組成物を効果的に硬化させるからである。また、上記エポキシ樹脂(B)及び上記化合物(C)と反応せずに残った上記化合物(G)は、金属や無機材料への密着性付与剤として働くことができ、各種被着材に対する密着性を向上させるのである。特に、上記化合物(F)と同様に、上記化合物(G)は分子中のC=N結合が加水分解して第1級アミノ基が生成するが、該反応に水が必要であるため潜在性硬化剤として利用できることから、本発明にかかる硬化性樹脂組成物を一液型とする際に好適に用いられる。
【0043】
上記化合物(G)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよい。また、上記化合物(G)は1種単独又は2種以上併用してもよい。上記化合物(G)の配合量は特に限定されないが、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1.0〜10質量部が特に好ましい。
【0044】
[その他の成分について]
本発明に係る硬化性樹脂組成物中には、従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。例えば、有機金属系化合物、三フッ化ホウ素系化合物等の硬化促進剤、親水性又は疎水性シリカ系粉体、炭酸カルシウム粉体、クレイ粉体、アクリル系等の有機系粉体、有機系・無機系のバルーン等の充填材、フェノール樹脂等の粘着付与剤、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、機能性オリゴマー、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、3−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジ−4−イルオキシ)プロピルトリエトキシシラン等の老化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ブロックドポリイソシアネート等の耐水性向上剤、乾性油等を配合することができる。
【0045】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、上記硬化性シリコーン系樹脂(A)が硬化して形成されるネットワーク(NA)、上記エポキシ樹脂(B)のオキシラン環と上記化合物(D)のアミノ基との反応による反応生成物で形成されるネットワーク(NB)が相互に入り組んだ高次構造を取っていると推察される。さらには、上記エポキシ樹脂(B)のオキシラン環と上記化合物(C)の五員環カーボネート基とが上記化合物(D)のアミノ基との反応によって連結される、あるいは、上記化合物(C)の五員環カーボネート基とが上記化合物(D)のアミノ基との反応によって生成した水酸基が上記エポキシ樹脂(B)と反応することにより、上記ネットワーク(NB)に上記化合物(C)が取り込まれているものと推察される。このような理由から、本発明における硬化性樹脂組成物が硬化後に非常に強靱な硬化物を形成するものと考えられる。そのうえ、上記化合物(C)の五員環カーボネート基と上記化合物(D)のアミノ基とが反応した際には、密着性付与効果の高いウレタン結合及び水酸基が生成するため、金属への密着性及びプラスチックに対する密着性が十分確保されるものと推察される。さらに、上記化合物(E)が配合されている場合には、上記化合物(E)の密着性付与効果だけでなく、化合物(E)が有するアミノ基は、化合物(D)が有するアミノ基と同様、化合物(C)と化合物(D)とも反応する。このため、上記化合物(C)と上記化合物(E)との反応生成物と、上記化合物(D)と上記化合物(E)との反応生成物とが、反応性珪素基の縮合反応により相互にネットワークを形成することにより、より強靱かつ密着性が高くなる効果が得られるものと推察される。したがって、本発明の硬化性樹脂組成物は、化合物(D)及び化合物(E)をともに含有することが好ましい。つまり、本発明は、従来公知の硬化性シリコーン系樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とから構成されるものとは全く異なり、従来に類を見ない硬化機構並びに硬化ネットワーク(いわば「シリコーン・ウレタン・エポキシ・ハイブリッド」)を形成するものであると認識されるべきである。なお、上記化合物(F)又は上記化合物(G)に関しても、加水分解した後に上記化合物(F)は上記化合物(D)に、上記化合物(G)は上記化合物(E)になるため、効果が発現する機構は上記と同様である。
【0046】
また、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、一液型としても二液型としても、場合によっては三液以上を混合して使用することもできる。一液型として使用される場合は、互いに密封状態では不活性な化合物を選択し、保管乃至搬送中は、空気(空気中の水分)と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すればよい。
【0047】
また、二液型(又は三液以上)として使用される場合には、適宜、上記硬化性シリコーン系樹脂(A)、上記エポキシ樹脂(B)、上記化合物(C)、上記化合物(D)〜上記化合物(G)とが、第一液及び第二液(又はさらに第三液)として個別に包装されて提供されるが、その組み合わせは任意である。そして、使用時にこれら第一液と第二液(又はさらに第三液以上)とを混合して任意の箇所に適用すればよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0049】
[硬化性シリコーン系樹脂(A)の準備]
(化合物A−1)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(222.4質量部、)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランに対して2倍mol)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にトリメトキシシリル基及び第2級アミノ基を有するシラン化合物SE−1を得た。別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子ウレタン株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量10,000、1,000質量部)、イソホロンジイソシアネート(47.5質量部)及びジオクチルスズジバーサテート(PMLS4012に対して50ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させて、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂を得た。反応の進行度はイソシアネート含有率で追跡し、イソシアネート含有率が理論値以下に下がっていることを確認した。さらにここに上記シラン化合物SE−1(88.9質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で1時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン結合、活性水素が置換された尿素結合、トリメトキシシリル基を有する化合物A−1を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0050】
(化合物A−2)
化合物A−2として、SAT400(カネカ株式会社製商品名、メチルジメトキシシリル基を有するポリエーテルポリオール)を準備した。
【0051】
(化合物A−3)
化合物A−3として、MA440(カネカ株式会社製商品名、メチルジメトキシシリル基を有するポリエーテルポリオール及びポリアクリレートの混合物)を準備した。
【0052】
(化合物A−4)
化合物A−4として、SAT200(カネカ株式会社製商品名、メチルジメトキシシリル基を有するポリエーテルポリオール)を準備した。
【0053】
[分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂(B)の準備]
エポキシ樹脂(B)として、エピコート828(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を準備した。
【0054】
[五員環カーボネート基を有する化合物(C)の準備]
五員環カーボネート基を有する化合物(C)として、エチレンカーボネート(和光純薬工業株式会社製)、プロピレンカーボネート(和光純薬工業株式会社製)、グリセリンカーボネート(宇部興産株式会社製商品名)を準備した。
【0055】
[分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物(D)の準備]
ポリアミン化合物(D)として、分子内に第1級アミノ基を2個有するノルボルナンジアミン(NBDA)、分子内に第1級アミノ基を2個有するイソホロンジアミン(IPDA)を準備した。
【0056】
[分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(E)の準備]
(化合物E−1)
化合物E−1として、分子内に第1級アミノ基、第2級アミノ基及びトリメトキシシリル基をそれぞれ1個ずつ有するN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを準備した。
【0057】
(化合物E−2)
化合物E−2として、分子内に第1級アミノ基及びトリエトキシシリル基をそれぞれ1個ずつ有する3−アミノプロピルトリエトキシシランを準備した。
【0058】
[硬化触媒の準備]
(硬化性シリコーン系樹脂(A)用硬化触媒)
硬化性シリコーン系樹脂(A)の硬化触媒として、SCAT−27(三共有機合成株式会社製商品名、有機スズ触媒)を準備した。
【0059】
(エポキシ樹脂(B)用硬化触媒)
エポキシ樹脂(B)の硬化触媒として、アンカミンK54(エアープロダクツジャパン株式会社製商品名、3級アミン触媒)を準備した。
【0060】
[硬化性樹脂組成物の調製]
表1〜3に示す配合割合(質量部)で、上記準備した各原料を混ぜ合わせ、各硬化性樹脂組成物を調製した。
【0061】
[接着強さ測定(ABS/木材のはり合わせ)]
各硬化性樹脂組成物の接着強さを測定した。被着材として、ABS板(厚さ3mm、幅25mm、長さ100mm)、木板(アサダ材、厚さ5mm、幅25mm、長さ100mm)を準備した。得られた各硬化性樹脂組成物(約0.1g)をABS板に25mm×25mmの面積に均一に塗布し、12.5mm×25mmの面積で木板をはり合わせた。各はり合わせ試験体を23℃相対湿度50%で1日間養生し、引張りせん断接着強さをJIS K 6850に準じて測定した。それぞれの引張せん断接着強さの測定結果を表1に示す。なお、引張りせん断接着強さの単位はN/mmである。
表中に示した括弧内の数値は、ABS板と木板とのはり合わせ試験においては、はり合わせ試験体を破壊した際、ABS側に硬化物皮膜が残った割合(%)を示している。例えば、ABS板と木板とのはり合わせにおいて、(0)であれば、ABS側に全く硬化物が残らなかったことを示し、(100)であれば、ABS側に全て硬化物が残ったことを示す。一般的に、接着強さの値が同じであっても難接着物であるABS側により多く硬化物が残ったほうが接着性能の信頼性が高いと判断できる。
【0062】
【表1】

【0063】
表1の結果から明らかなように、本発明に係る硬化性樹脂組成物(実施例1、2)は、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を配合していない他は同じ組成の硬化性樹脂組成物(比較例1、2)に対して、ABS樹脂に対する密着性が非常に高くなっており、接着強さの値も向上していることが分かる。また、比較例3は五員環構造を有さないカーボネート化合物を添加したものであるが、密着性付与の効果は十分ではなく、本発明にかかる五員環カーボネート基を有する化合物(C)を配合している実施例3のほうが、引張せん断接着強さも密着性も高いことが分かる。
【0064】
[接着強さ測定(ABS/ABSのはり合わせ)]
各硬化性樹脂組成物の接着強さを測定した。被着材として、ABS板(厚さ3mm、幅25mm、長さ100mm)を準備した。得られた各硬化性樹脂組成物(約0.1g)を一方のABS板に25mm×25mmの面積に均一に塗布し、12.5mm×25mmの面積で他方のABS板をはり合わせた。各はり合わせ試験体を23℃相対湿度50%で1日間養生し、引張りせん断接着強さをJIS K 6850に準じて測定した。それぞれの引張せん断接着強さの測定結果を表2に示す。なお、引張りせん断接着強さの単位はN/mmである。
表中に示した括弧内の数値は、ABS板同士のはり合わせ試験においては、括弧内の数値は凝集破壊の割合(%)を示している。つまり、強度が高いほど、括弧内の数値が高いほど、接着の信頼性が高いということになる。一般的に、接着強さの値が同じであっても難接着物であるABS表面により多く硬化物が残る、すなわち凝集破壊率が高いほうが接着性能の信頼性が高いと判断できる。
【0065】
【表2】

【0066】
表2の結果から明らかなように、本発明に係る硬化性樹脂組成物(実施例4)は、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を配合していない硬化性樹脂組成物(比較例4)に対して、ABS樹脂に対する密着性が非常に高く、接着強さの値も向上していることが分かる。
【0067】
上記接着強さ測定(ABS/木材のはり合わせ、及び、ABS/ABSのはり合わせ)に従って引張せん断接着強さを測定した。それぞれの引張せん断接着強さの測定結果を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3の結果から明らかなように、本発明に係る硬化性樹脂組成物(実施例5〜7)は、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を配合していない硬化性樹脂組成物(比較例6)に対して、ABS樹脂に対する密着性が非常に高く、接着強さの値も向上していることが分かる。
【0070】
以上のことから明らかなように、従来からある、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂と、分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂とを配合した接着剤に対して、五員環カーボネート基を有する化合物(C)を配合することは、ABS樹脂に対する密着性を向上させる方法として非常に有用であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、従来、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂と、分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂とを配合した接着剤が用いられてきた全ての用途に使用できる。たとえば、接着剤、シーリング材、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)と、
分子内にオキシラン環を有するエポキシ樹脂(B)と、
分子内に下記一般式(1)で示される五員環カーボネート基を有する化合物(C)と、
下記の化合物(D)〜化合物(G)からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
化合物(D):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基を有するポリアミン化合物
化合物(E):分子内に第1級及び/又は第2級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物
化合物(F):分子内にC=N結合を有するケチミン化合物及び/又はアルジミン化合物
化合物(G):分子内にC=N結合並びに架橋可能な反応性珪素基を有するケチミンシラン化合物及び/又はアルジミンシラン化合物
【化1】

・・・(1)
(ただし、式中のXは、水素原子又は分子量100以下の有機基を示す)
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物であって、化合物(D)及び化合物(E)をともに含有し、かつ、化合物(D)が分子内に2個以上の第1級アミノ基を有するポリアミン化合物(d)であり、化合物(E)が分子内に第1級アミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(e)であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
硬化性シリコーン系樹脂(A)が、分子内にウレタン結合及び/又は尿素結合を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
五員環カーボネート基を有する化合物(C)が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びグリセリンカーボネートからなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を主体的成分とする室温硬化性接着剤組成物。


【公開番号】特開2011−12144(P2011−12144A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156484(P2009−156484)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】