説明

硬貨処理機

【課題】異常硬貨を識別したときに、この異常硬貨を特定し、しかもその識別要因を明らかにできる硬貨処理機の提供。
【解決手段】硬貨を硬貨通路15上で搬送する硬貨搬送手段26と、硬貨通路15上の硬貨を識別する識別手段34と、硬貨通路15上の硬貨を停止させる硬貨停止手段36a,36bと、表示を行う表示手段と、識別手段34により異常硬貨が識別されると、硬貨停止手段36a,36bにより当該異常硬貨を停止させるとともに、識別手段34による異常硬貨の識別要因が検出画像に関わる要因のとき表示手段に当該異常硬貨の検出画像を表示する制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨を識別して所定の処理を行う硬貨処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨処理機は、硬貨の真偽、金種および正損等を識別し、識別結果に基づいて、例えば、真且つ正の硬貨を金種別に計数したり、計数後、所定金種の硬貨のみを包装したりするものであるが、その際の識別を精度良く行うために、硬貨を撮像しその検出画像に基づいて識別を行うものがある(例えば特許文献1参照)。また、ユーロ硬貨は、片面に金種を含む各発行国共通の図柄が刻印され、逆の片面に各発行国毎の独自の図柄が刻印されており、各発行国別且つ各金種別に分類するために表裏両面を撮像し両面の検出画像に基づいて識別を行うものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−143121号公報
【特許文献2】特開2000−306135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の硬貨処理機にあっては、識別の結果、偽あるいは汚損等の異常硬貨を、それがどのような異常であるかを問わずに一纏めに排除しているため、処理の終了後に、オペレータが一枚一枚の排除硬貨を目視確認して、異常硬貨の識別要因を推測することになる。しかしながら、その中には一見しただけでは識別要因が定かでない異常硬貨が存在することがあり、その場合は、硬貨処理機側の識別ミスということも考えられるため、再度硬貨処理機で処理を行うようにし、それでも排除される場合に、識別要因が不明のまま処理を諦めるようにしている。
【0004】
したがって、本発明は、異常硬貨を識別したときに、この異常硬貨を特定し、しかもその識別要因を明らかにできる硬貨処理機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、硬貨を硬貨通路上で搬送する硬貨搬送手段と、前記硬貨通路上の硬貨を識別する識別手段と、前記硬貨通路上の硬貨を停止させる硬貨停止手段と、表示を行う表示手段と、前記識別手段により異常硬貨が識別されると、前記硬貨停止手段により当該異常硬貨を停止させるとともに、前記識別手段による前記異常硬貨の識別要因が検出画像に関わる要因のとき前記表示手段に当該異常硬貨の検出画像を表示する制御手段とを有することを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記表示手段は、前記異常硬貨の表裏両面の画像を表示可能であることを特徴としている。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記制御手段は、前記異常硬貨の識別要因の内容を該異常硬貨の検出画像とともに前記表示手段に表示させることを特徴としている。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明において、確認操作手段を有し、前記異常硬貨の前記硬貨停止手段による停止中に、前記確認操作手段に確認入力がなされると、前記制御手段は、前記異常硬貨の前記硬貨停止手段による停止状態を解除するとともに、前記硬貨搬送手段で前記異常硬貨を硬貨通路上で搬送し、下流側の硬貨選別手段により、当該異常硬貨を前記硬貨通路から排除することを特徴としている。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記制御手段は、停止させていた前記異常硬貨より後続の硬貨の前記硬貨搬送手段による搬送を、前記硬貨選別手段による前記異常硬貨の前記硬貨通路からの排除動作とともに再開することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、硬貨搬送手段による硬貨の硬貨通路上での搬送中に、識別手段が硬貨通路上の硬貨を識別することになり、識別手段により異常硬貨が識別されると、制御手段が硬貨停止手段によりこの異常硬貨を停止させる。さらに、制御手段は、識別手段によるこの異常硬貨の識別要因が検出画像に関わる要因のとき表示手段にこの異常硬貨の検出画像を表示する。よって、オペレータは表示手段に異常硬貨の検出画像が表示されていることで、硬貨停止手段で停止させられている異常硬貨とその識別要因が検出画像に関わる要因であることとを認識できる。したがって、異常硬貨を識別したときに、この異常硬貨を特定し、しかもその識別要因を明らかにできる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、表示手段は、異常硬貨の表裏両面の画像を表示可能であるため、異常硬貨の識別要因が表裏のいずれの面にあっても表示可能となる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、制御手段が、異常硬貨の識別要因の内容をこの異常硬貨の検出画像とともに表示手段に表示させるため、オペレータは表示手段に異常硬貨の検出画像とともに表示された異常硬貨の識別要因の内容を見ることで、識別要因をより詳細に認識することができる。したがって、異常硬貨の識別要因を一層詳細に明らかにできる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、異常硬貨の硬貨停止手段による停止中に、オペレータが表示手段の表示から識別要因を認識した後、確認操作手段に確認入力を行うと、制御手段が、異常硬貨の硬貨停止手段による停止状態を解除するとともに、硬貨搬送手段でこの異常硬貨を搬送し、下流側の硬貨選別手段により硬貨通路から排除する。よって、異常硬貨を、その識別要因を認識した後に、特定した状態で排除できる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、制御手段は、硬貨選別手段による異常硬貨の硬貨通路からの排除動作とともに、硬貨搬送手段による異常硬貨より後続の硬貨の搬送を再開するため、排除動作と同時に搬送を再開できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一実施形態の硬貨処理機を図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の硬貨処理機は、投入されたバラ硬貨を種類別に計数するとともに同一種類の処理対象設定硬貨のみを集めて包装する包装モードでの処理と、投入されたバラ硬貨を種類別に計数するとともに同一種類の処理対象設定硬貨のみを集める計数モードでの処理とが可能なものである。ここで、同一種類とは、日本国硬貨では同一金種のことを示すが、ユーロ硬貨の場合、発行国は問わず同一金種であれば同一種類とする場合と、同一金種且つ同一発行国であれば同一種類とする場合とがある。
【0016】
まず、包装モードが選択された状態では、投入されたバラ硬貨に対して硬貨の真偽、正損および金種の識別と場合により発行国の識別を行い、さらに計数を行って、この識別結果に基づいて、真且つ正の硬貨であって所定種の処理対象設定硬貨の受け入れと、偽硬貨および真且つ汚損の硬貨の機外排除と、真且つ正の硬貨であって前記所定種の処理対象設定硬貨以外の非処理対象設定硬貨の一時貯留とを行いつつ、受け入れた処理対象設定硬貨を所定枚数単位で包装する。
【0017】
なお、包装モードでは、投入されたバラ硬貨について真且つ正の硬貨であって所定の同一種類の処理対象設定硬貨を包装しつつ、真且つ正の硬貨であって他の種類の非処理対象設定硬貨を一時貯留し、前記所定種の処理対象設定硬貨の包装が終わると、一時貯留していた非処理対象設定硬貨から次に他の所定の同一種類の硬貨を処理対象設定硬貨に設定して、この処理対象設定硬貨を包装するといった処理を順次行うことが可能となっている。
【0018】
また、計数モードが選択された状態では、投入されたバラ硬貨に対して硬貨の真偽、金種および正損の識別と場合により発行国の識別を行い、計数を行って、この識別結果に基づいて、真且つ正の硬貨であって所定の同一種類の処理対象設定硬貨の受け入れと、偽硬貨および真且つ汚損の硬貨の機外排除と、真且つ正の硬貨であって前記所定種の処理対象設定硬貨以外の非処理対象設定硬貨の一時貯留とを行いつつ、受け入れた処理対象設定硬貨を包装せずにバラ硬貨のまま機外に取り出し可能に繰り出す。
【0019】
なお、計数モードでは、投入されたバラ硬貨について真且つ正の硬貨であって所定の同一種類の処理対象設定硬貨を計数しつつ機外に取り出し可能に繰り出し、真且つ正の硬貨であって他の種類の非処理対象設定硬貨を一時貯留し、前記所定の同一種類の処理対象設定硬貨の計数および繰り出しが終わると、一時貯留していた非処理対象設定硬貨から次に他の所定の同一種類の硬貨を処理対象設定硬貨に設定して、この処理対象設定硬貨を計数および繰り出しを行うといった処理を順次行うことが可能となっている。
【0020】
この硬貨処理機は略直方体形状をなすもので、図1に示すように、機体11の上面には、オペレータによりバラ硬貨が投入される投入口12が設けられており、この投入口12の下側には、投入口12からバラ硬貨が導かれる供給円盤13が鉛直軸回りに回転可能に設けられている。この供給円盤13の横には、隣接して回転円盤14が鉛直軸回りに回転可能に設けられている。この回転円盤14は、供給円盤13から遠心力で繰り出されるバラ硬貨を受け入れるとともに、この受け入れた硬貨を遠心力で図示せぬ分離部を通過させることにより一枚ずつ後述する硬貨を案内するための硬貨通路15に繰り出す。これら供給円盤13および回転円盤14は、図2に示す制御装置(制御手段)100で制御される図示略のモータを含む供給駆動部101で正逆駆動される。
【0021】
そして、回転円盤14から繰り出される硬貨を両側の一段高いガイド16,17の間の通路面で案内する硬貨通路15が、機体11の背面部11A、側面部11Bおよび前面部11Cに沿って、回転円盤14を囲むように水平配置されている。
【0022】
硬貨通路15は、回転円盤14に接続されるとともにこの回転円盤14と背面部11Aとの間のスペースに背面部11Aに沿って配置された第1直線部20と、この第1直線部20の回転円盤14に対し反対側に接続され、第1直線部20に対し回転円盤14の方向に直角に屈曲された第1屈曲部21と、この第1屈曲部21の第1直線部20に対し反対側に接続されることにより第1直線部20に対し直角をなす第2直線部22と、この第2直線部22の第1屈曲部21に対し反対側に接続され、第2直線部22に対し回転円盤14の方向に直角に屈曲された第2屈曲部23と、この第2屈曲部23の第2直線部22に対し反対側に接続されることにより第2直線部22に対し直角をなす第3直線部24とを有している。
【0023】
硬貨通路15の近傍には、硬貨通路15上の硬貨をこの硬貨通路15に沿って搬送する硬貨搬送部(硬貨搬送手段)26が設けられている。この硬貨搬送部26は、硬貨通路15の上側に設けられて、回転円盤14から繰り出された硬貨を第1直線部20、第1屈曲部21および第2直線部22の一部に沿って移動させる搬送ベルト27Aと、硬貨通路15の下側に設けられて、搬送ベルト27Aで搬送されてきた硬貨を第2直線部22の一部に沿ってさらに移動させる搬送ベルト27Bと、硬貨通路15の上側に設けられて、搬送ベルト27Bで搬送されてきた硬貨を第2直線部22の一部に沿ってさらに移動させる搬送ベルト27Cと、硬貨通路15の上側に設けられて、搬送ベルト27Cで搬送されてきた硬貨を第2直線部22の残りの一部、第2屈曲部23および第3直線部24に沿って移動させる搬送ベルト28とを有している。また、硬貨搬送部26は、制御装置100で制御される図示略のモータからの動力を、搬送ベルト27A〜27C,28へ伝達するためのベルト29と、これら搬送ベルト27A〜27C,28およびベルト29を連動して正逆駆動する、図2に示す制御装置100で制御される図示略のモータを含む搬送駆動部102とを有している。
【0024】
回転円盤14と硬貨通路15の第1直線部20との間であって、一方のガイド16の先端部位置には、このガイド16の先端部に衝突して滞留する硬貨を、回転円盤14内へ戻すか、硬貨通路15へ導きやすくするための、回転自在のガイドローラ30が設けられている。
【0025】
硬貨通路15の硬貨搬送方向における上流側となる第1直線部20には、第1直線部20上で搬送される硬貨の材質を磁気的性質より検出する材質検出センサ31が、硬貨通路15の通路面の一部を構成するように配置されている。なお、材質検出センサ31の両側には、該材質検出センサ31による検出データの取り込みのタイミングを計るための硬貨検知センサ31a,31bが設けられている。すなわち、制御装置100は、これら硬貨検知センサ31a,31bで共に硬貨が検出された時点で材質検出センサ31に検出データの取り込みを実行させる。
【0026】
また、硬貨通路15の第2直線部22の第1屈曲部21側であって下側に設けられた搬送ベルト27Bの位置には、第2直線部22で搬送される硬貨の画像を上側から検出するCCDエリアセンサ等の上側画像検出部32が配置されている。なお、上側画像検出部32の両側には、この上側画像検出部32による検出データの取り込みのタイミングを計るための硬貨検知センサ32a,32bが設けられている。すなわち、制御装置100は、これら硬貨検知センサ32a,32bで共に硬貨が検出された時点で上側画像検出部32に検出データの取り込みを実行させる。
【0027】
さらに、硬貨通路15の第2直線部22の上側画像検出部32よりも下流側であって上側に設けられた搬送ベルト27Cの位置には、第2直線部22で搬送される硬貨の画像を下側から検出するCCDエリアセンサ等の下側画像検出部33が、通路面の一部を構成するように配置されている。なお、下側画像検出部33の両側には、この下側画像検出部33による検出データの取り込みのタイミングを計るための硬貨検知センサ33a,33bが設けられている。すなわち、制御装置100は、これら硬貨検知センサ33a,33bで共に硬貨が検出された時点で下側画像検出部33に検出データの取り込みを実行させる。
【0028】
これにより、硬貨通路15上の硬貨を識別するための上記した材質検出センサ31、上側画像検出部32および下側画像検出部33で構成される識別部(識別手段)34が、硬貨通路15の第1直線部20および第2直線部22の二つにまたがって配置されている。
【0029】
ここで、材質検出センサ31、上側画像検出部32および下側画像検出部33の出力は、制御装置100に入力されることになり、この制御装置100では、例えば、上流側の材質検出センサ31の検出硬貨に対する検出データを各金種の硬貨の材質の基準データと順に比較し、材質の検出データがいずれの金種の硬貨の材質の基準データとも一致しないと判定した場合には、その時点で検出硬貨を偽硬貨と識別する。
【0030】
他方、制御装置100は、材質検出センサ31の検出結果から、いずれかの金種の硬貨の材質の基準データと一致したと判定した場合には、次に、この一致した材質の金種の硬貨の表裏の画像の基準パターンデータを読み出し、これらの画像の基準パターンデータと、同じ検出硬貨に対する上側画像検出部32の検出パターンデータおよび下側画像検出部33の検出パターンデータとを比較して、表裏それぞれのパターンデータおよび外径が一致しているか否かを検出する。そして、表裏それぞれの画像の基準パターンデータと検出パターンデータとが一致し、且つこれらの外径が一致していると判定した場合には、この検出硬貨が検出された金種の真硬貨であると判定する一方、少なくとも表裏のいずれか一方の画像の基準パターンデータと検出パターンデータとが一致せず、あるいは外径が一致していないと判定した場合には、この検出硬貨が偽硬貨であると判定する。
【0031】
なお、硬貨が、ユーロ硬貨のように同一金種に対し片面がすべての発行国で共通の図柄であって、逆の片面が発行国毎に異なる図柄の硬貨を識別する場合には、片面の各発行国共通の図柄については各発行国共通の基準マスタデータに対して一致を判定し、各発行国毎に異なる逆の片面の図柄については各発行国毎の基準マスタデータに対して一致を判定して、共通の図柄が各発行国共通のマスタデータに対して一致し、各発行国毎に異なる図柄についてはいずれかの発行国の図柄のマスタデータに一致していれば、真硬貨と判定する。
【0032】
ここで、制御装置100は、上記したように、検出硬貨の上下つまり表裏のそれぞれについて、基準パターンデータに対し検出パターンデータが所定の一致度以上に一致し、且つ基準パターンデータの硬貨外径に対し検出パターンデータの硬貨外径の誤差が許容範囲内にあるとき、これらの一致度が高く正常な真硬貨であると判定する一方、検出硬貨の上下つまり表裏のいずれかについて、基準パターンデータに対し検出パターンデータが所定の一致度以上に一致していない場合、または、基準パターンデータの硬貨外径に対し検出パターンデータの硬貨外径の誤差が許容範囲内にないとき、これらの一致度が低く偽硬貨であると判定する。
【0033】
加えて、制御装置100は、上記により真硬貨であると判定した検出硬貨に対して、上下つまり表裏それぞれについて、基準パターンデータに対する検出パターンデータの例えば色調についての一致度を比較し、色調についての一致度が所定の一致度以上に一致していた場合に、汚れ度が許容範囲内にあって正常であると判定し、色調についての一致度が所定の一致度以上に一致していない場合に、汚れ度が許容範囲内になく異常であると判定し検出硬貨を汚れ硬貨と判定する。
【0034】
さらに、制御装置100は、上記により真硬貨であると判定した検出硬貨に対して、上下つまり表裏それぞれについて、基準パターンデータおよび検出パターンデータの一致度が局所的に所定の割合より低い部分があるか否かを判定し、一致度が局所的に所定の割合より低い部分がない場合に、損傷度が許容範囲内であって正常であると判定し、一致度が局所的に所定の割合より低い部分がある場合に、損傷度が許容範囲内になく異常であると判定し検出硬貨を局所損傷硬貨と判定する。
【0035】
加えて、制御装置100は、上記により真硬貨であると判定した検出硬貨に対して、上下つまり表裏それぞれについて、検出パターンデータから硬貨の外径部の変形度(真円度)を検出することになり、外径部の変形度が所定値未満の場合に、変形度が許容範囲内にあって正常であると判定し、変形度が所定値以上の場合に、変形度が許容範囲内になく異常であると判定し検出硬貨を全体損傷硬貨と判定する。
【0036】
そして、制御装置100は、真硬貨のうち、汚れ硬貨、局所損傷硬貨および全体損傷硬貨の少なくともいずれか一つに当てはまる硬貨は汚損硬貨と判定し、偽硬貨と汚損硬貨とを異常硬貨とする。また、真硬貨のうち、汚れ硬貨、局所損傷硬貨および全体損傷硬貨のいずれにも当てはまらない硬貨を正硬貨と判定する。
【0037】
第2直線部22の下側画像検出部33より下流側には、第2直線部22上の硬貨に下流側から当接してこれを停止させるストッパ部材(硬貨停止手段)36a,36bが第2直線部22を挟んで両側に設けられている。これらストッパ部材36a,36bは、図示略のロータリソレノイドを含む図2に示すストッパ駆動部103で所定角度正逆回転させられるものである。
【0038】
これらストッパ部材36a,36bは、第一に包装時の計数用のストッパとして機能することになり、その際に、必要金種の通貨硬貨が所定枚数に達すると、制御装置100の制御により、双方同時に第2直線部22内に突出し第2直線部22で搬送される所定枚数を超える硬貨の通過を阻止する。また、これらストッパ36a,36bは、第二に異常硬貨の停止用のストッパとして機能することになり、その際に、搬送される硬貨が真且つ正の硬貨以外の異常硬貨であった場合に、制御装置100の制御により、この異常硬貨の通過直前に、双方同時に第2直線部22内に突出し異常硬貨に当接してその通過を阻止する。なお、計数用のストッパとして機能する場合、これらストッパ部材36a,36bを作動させた後に、制御装置100が硬貨搬送部26で搬送ベルト27A〜27C,28を逆回転させることになり、その結果、ストッパ部材36a,36bよりも上流側にあった硬貨をすべて回転円盤14に戻す。
【0039】
さらに、第2直線部22におけるストッパ部材36a,36bの上流側の直前位置には、これらストッパ部材36a,36bを駆動するストッパ駆動部103の作動タイミングを計るための硬貨検知センサ37a,37bが設けられている。すなわち、制御装置100は、これら硬貨検知センサ37a,37bで共に目的とする硬貨が検出されたタイミングでストッパ駆動部103を駆動してストッパ部材36a,36bを第2直線部22に突出させることになり、その結果、ストッパ部材36a,36bが、この目的とする硬貨に当接してこれを停止させることになる。
【0040】
第2直線部22におけるストッパ部材36a,36bより下流側には、材質検出センサ31、上側画像検出部32および下側画像検出部33からなる識別部34の検出結果で異常硬貨と識別された硬貨を排除可能なリジェクト部(硬貨選別手段)40が設けられている。このリジェクト部40は、第2直線部22の通路面に形成されたリジェクト孔41と、該リジェクト孔41の硬貨搬送方向における上流側の端部位置のガイド17側に設けられて第2直線部22内へ突出および第2直線部22内から引込み可能なリジェクト突出部材42と、リジェクト突出部材42を所定角度正逆回転させる図示略のロータリソレノイドを含む図2に示すリジェクト駆動部104とを有している。
【0041】
ここで、第2直線部22内からリジェクト突出部材42が引込んだ状態においては、リジェクト部40を通過する硬貨は、リジェクト突出部材42が設けられた側のガイド17に接触案内されて移動するように搬送ベルト28や硬貨通路15が設定されており、また、リジェクト孔41は、その幅が、取り扱う硬貨の最小径のものの径よりも小さく設定されている。
【0042】
そして、制御装置100がリジェクト突出部材42を第2直線部22内から引込めた状態とすると、ガイド17に常に接触しながら移動する硬貨は、リジェクト孔41への落下が回避され該リジェクト孔41を通過してさらに第2直線部22において下流側に移動するようになっている。他方、制御装置100がリジェクト駆動部104を駆動してリジェクト突出部材42を第2直線部22内に突出させると、ガイド17に接触しながら移動していた硬貨は、該リジェクト突出部材42に接触しこれに押されてガイド17から離れるように搬送経路がずれることになり、その結果、リジェクト孔41に落下するようになっている。
【0043】
さらに、第2直線部22におけるリジェクト突出部材42の上流側の直前位置には、このリジェクト突出部材42を駆動するタイミングを計るための硬貨検知センサ43が設けられている。すなわち、制御装置100は、この硬貨検知センサ43で目的とする硬貨が検出されたタイミングでリジェクト駆動部104によりリジェクト突出部材42を第2直線部22に所定時間だけ突出させると、この目的とする硬貨のみをリジェクト孔41に落下させることになる。
【0044】
以上のようにして、リジェクト部40は、異常硬貨と識別された硬貨を、リジェクト突出部材42を第2直線部22内に突出させることによってリジェクト孔41に落下させて第2直線部22から排除する一方、真硬貨且つ正硬貨と識別された硬貨を、リジェクト突出部材42を第2直線部22内に突出させないことにより、リジェクト孔41に落下させず第2直線部22においてさらに下流側まで搬送させる。
【0045】
ここで、リジェクト孔41から落下した硬貨は、図示は略すが、このリジェクト孔41の下部に配置されたリジェクトボックスに回収される。そして、オペレータが硬貨処理機からリジェクトボックスを取り出した後、このリジェクトボックスから異常硬貨を外部に取り出すことになる。
【0046】
第2直線部22におけるリジェクト部40より下流側には、材質検出センサ31、上側画像検出部32および下側画像検出部33の検出結果で、真硬貨且つ正硬貨であって指定された処理対象設定硬貨以外の非処理対象設定硬貨と識別された硬貨を排除する選別部45が設けられている。この選別部45は、リジェクト部40と同様の構造をなしており、第2直線部22の通路面に形成された選別孔46と、該選別孔46の硬貨搬送方向における上流側の端部位置のガイド17側に設けられて第2直線部22内へ突出および第2直線部22内から引込み可能な選別突出部材47と、選別突出部材47を所定角度正逆回転させる図示略のロータリソレノイドを含む図2に示す選別駆動部105とを有している。
【0047】
ここで、第2直線部22内から選別突出部材47が引込んだ状態においては、選別部45を通過する硬貨は、選別突出部材47が設けられた側のガイド17に接触案内されて移動するように搬送ベルト28や硬貨通路15が設定されており、また、選別孔46は、その幅が、取り扱う硬貨の最小径のものの径よりも小さく設定されている。
【0048】
そして、制御装置100が選別突出部材47を第2直線部22内から引込んだ状態とすると、ガイド17に常に接触しながら移動する硬貨は、選別孔46への落下が回避され該選別孔46を通過してさらに第2直線部22において下流側に移動するようになっている。他方、制御装置100が選別駆動部105を駆動して選別突出部材47を第2直線部22内に突出させると、ガイド17に接触しながら移動していた硬貨は、該選別突出部材47に接触しこれに押されてガイド17から離れるように搬送経路がずれることになり、その結果、選別孔46に落下するようになっている。
【0049】
さらに、第2直線部22における選別突出部材47の上流側の直前位置には、この選別突出部材47を駆動するタイミングを計るための硬貨検知センサ48が設けられている。すなわち、制御装置100は、この硬貨検知センサ48で目的とする硬貨が検出されたタイミングで選別駆動部105を駆動して選別突出部材47を第2直線部22に所定時間だけ突出させることになり、その結果、この目的とする硬貨のみを選別孔46に落下させることになる。
【0050】
以上のようにして、選別部45は、真硬貨且つ正硬貨であって指定された処理対象設定硬貨以外の非処理対象設定硬貨と識別された硬貨を、選別突出部材47を第2直線部22内に突出させることによって選別孔46に落下させて第2直線部22から排除する一方、正硬貨であって包装あるいは計数する指定された処理対象設定硬貨と識別された硬貨を、選別突出部材47を第2直線部22内に突出させないことによって選別孔46に落下させず第2直線部22においてさらに下流側まで搬送させる。
【0051】
ここで、選別孔46から落下した硬貨は、図示は略すが、この選別孔46の下部に配置された一時貯留部に一時貯留される。一時貯留部には、図2に示す一時貯留駆動部120が設けられており、この一時貯留駆動部120の駆動で硬貨を図示略の戻し搬送部に受け渡す。戻し搬送部には、図2に示す戻し搬送駆動部121が設けられており、この戻し搬送駆動部121の駆動で硬貨を供給円盤13に戻す。つまり、包装モードで各種類別に硬貨を包装する場合および計数モードで各種類別に計数および繰り出しを行う場合には、非処理対象設定硬貨が選別孔46から一時貯留部に導かれ、適宜供給円盤13に戻される。なお、一時貯留部は一時貯留した硬貨を機外にも取り出し可能となっており、包装モードで指定された種類の処理対象設定硬貨のみを包装する場合および計数モードで指定された種類の処理対象設定硬貨のみを分離して繰り出す場合に、指定以外の非処理対象設定硬貨をまとめて機外に取り出すことが可能となっている。
【0052】
第2直線部22の選別部45よりさらに下流側には、誤選別チェック部50が設けられている。これは、リジェクト部40、選別部45を通過してきた硬貨が、本当に真且つ正の硬貨であって処理対象設定硬貨であるか否かを最終確認するためのものであり、この最終確認を、硬貨の材質を硬貨の磁気的性質で検出する材質検出センサ51によって行うのである。なお、この材質検出センサ51の両側には、上記した材質検出センサ31と同様に、材質検出センサ51による検出データの取り込みのタイミングを計るための硬貨検知センサ51a,51bが設けられている。すなわち、制御装置100は、これら硬貨検知センサ51a,51bで共に硬貨が検出された時点で材質検出センサ51による検出データの取り込みを実行させる。
【0053】
この誤選別チェック部50で、リジェクト部40、選別部45を通過してきた硬貨が、処理対象設定硬貨でないと識別された場合に、制御装置100は、直ちに機械全体を停止させ、警報装置110によりエラーが発生した旨の報知を視覚的あるいは聴覚的に行うことになる。
【0054】
上記誤選別チェック部50より下流側の第2屈曲部23には、硬貨通路15上の硬貨を硬貨通路15上でさらに下流に搬送するか、硬貨通路15から排除するかを振り分ける振分部55が設けられている。
【0055】
この振分部55は、第2屈曲部23の通路面に形成された振分孔56aと、この振分孔56aを開閉させるシャッタ部材56と、シャッタ部材56の開閉を駆動する図2に示す開閉駆動部112とを有している。制御装置100は、計数処理が作業内容として選択された場合にはシャッタ部材56を開閉駆動部112を駆動することで開状態とする。すると、誤選別チェック部50から下流側に搬送されてきた硬貨がすべて振分孔56aから落下させられることになる。
【0056】
そして、このように振分孔56aから落下させられた硬貨は、計数用搬送路81および計数シュート部80で案内されて、図示略の取出ボックスに導入される。つまり、計数モードが作業内容として選択された場合にはシャッタ部材56を開状態として処理対象設定硬貨を振分孔56aから取出ボックスに導入することになり、オペレータが硬貨処理機から取出ボックスを取り出した後、この取出ボックスから処理対象設定硬貨を外部に取り出すことになる。他方、制御装置100は、包装モードが作業内容として選択された場合にはシャッタ部材56を閉状態とする。すると、誤選別チェック部50から下流側に搬送されてきた処理対象設定硬貨がすべて、振分孔56aから落下することなく第3直線部24に導かれることになる。
【0057】
この第3直線部24には、識別部34により処理対象設定硬貨と識別されて第3直線部24に搬送されてきた硬貨を、所定枚数ずつに集積し包装する硬貨包装部70が設けられている。
【0058】
この硬貨包装部70は、第3搬送部24に搬送されてきた硬貨を所定枚数集積させて柱状の集積硬貨を形成する集積部71と、集積部71で集積された集積硬貨の周面に包装紙を巻回してその両端を加締めることにより包装硬貨を形成する包装部72と、集積部71で形成された集積硬貨を包装部72に向け搬送する硬貨移動部73とを具備している。
【0059】
集積部71は、上下方向にそれぞれ軸線を配置して設けられるとともに螺旋状の突起部74をそれぞれ有する一対の集積ドラム75,75と、これら集積ドラム75,75の間位置の後側に鉛直立設されて突起部74,74の傾斜による硬貨の移動を規制する図示せぬ後側規制板と、該後側規制板に集積ドラム75,75の間位置を介して対向配置された図示せぬ前側規制板とを有しており、集積ドラム75,75は、相互の突起部74,74の対向部分の高さ位置を一致させた状態で、第3直線部24からの硬貨の供給に同期して互いに反対方向に回転する。すなわち、第3直線部24を通じて供給された硬貨が、前側規制板および後側規制板で前後方向の移動が規制された状態で、集積ドラム75,75の突起部74,74に乗せられて、集積ドラム75,75の回転で一枚分下降させられ、その後に供給された硬貨が先の硬貨の上に積み重ねられる結果、これら集積ドラム75,75間および規制板間に、複数の硬貨が上下方向に積み重ね状態に集積され、集積硬貨が形成されるようになっている。
【0060】
硬貨移動部73は、集積部71の下側において上下方向に移動自在に配置され、集積部71から受け取った集積硬貨を、下方から支持する支持ポスト77を有しており、該支持ポスト77は、集積部71から集積硬貨を受け取る待機位置と、包装部72による包装作業が実施される包装位置との間で移動する。
【0061】
包装部72は、集積部71の第3直線部24に対し反対側に配置されており、図示は略すが、包装位置に位置させられた硬貨移動部73の支持ポスト77に支持された集積硬貨の周囲に包装紙を供給して巻回する包装機構と、包装された包装紙を集積硬貨の上下端縁において加締める加締機構と、図2に示す棒金搬送駆動部122を含み包装後の包装硬貨を搬送する棒金搬送部と、棒金搬送部で搬送される包装硬貨を収納する図示略の棒金収納部とを具備している。
【0062】
さらに、本実施形態の硬貨処理機は、オペレータにより操作入力が行われるキーボードを含む操作部(確認操作手段)115と、オペレータに向けて表示を行う液晶画面を含む表示部(表示手段)116とを備えている。
【0063】
本実施形態の硬貨処理機によれば、包装モードおよび計数モードのいずれのモードが選択された状態であっても、投入口12を介して供給円盤13にバラ硬貨が投入された状態で操作部115にオペレータが処理開始の操作入力を行うと、制御装置100は供給駆動部101を駆動して供給円盤13および回転円盤14を回転させるとともに搬送駆動部102を駆動して搬送ベルト27A〜27C,28およびベルト29を回転させる。すると、供給円盤13から硬貨が回転円盤14に供給されることになり、回転円盤14から硬貨が硬貨通路15に一枚ずつ繰り出されて搬送ベルト27A〜27C,28によって、硬貨通路15の上流側の第1直線部20で搬送された後、第1屈曲部21を介して下流側の第2直線部22で搬送される。そして、これら第1直線部20および第2直線部22で搬送されている間に、これら第1直線部20および第2直線部22にまたがって配置された識別部34としての材質検出センサ31、上側画像検出部32および下側画像検出部33の検出結果に基づいて制御装置100が各硬貨の真偽、正損および金種の識別および場合により国の識別を行う。
【0064】
そして、制御装置100は、材質検出センサ31、上側画像検出部32および下側画像検出部33の検出結果に基づいて真且つ正の硬貨と識別した硬貨については、リジェクト部40のリジェクト孔41で落下させることなく、硬貨通路15上でさらに下流側に搬送することになる。他方、材質検出センサ31、上側画像検出部32および下側画像検出部33の検出結果から異常硬貨と識別した硬貨については、上側画像検出部32および下側画像検出部33のそれぞれの検出画像を含む検出結果を記憶するとともに、この異常硬貨を硬貨検知センサ37a,37bが検知したタイミングでストッパ駆動部103を駆動して、ストッパ部材36a,36bを第2直線部22内に突出させてこの異常硬貨の通過を阻止すると同時に供給駆動部101による供給円盤13および回転円盤14の駆動を停止させ、その後、ストッパ部材36a,36bで停止させられたこの異常硬貨よりも下流側の硬貨がすべて硬貨通路15上からなくなると、搬送駆動部102による搬送ベルト27A〜27C,28およびベルト29の駆動を停止させて、この異常硬貨から後続の硬貨の搬送を停止させる。
【0065】
ストッパ部材36a,36bで異常硬貨を停止させると、制御装置100は、表示部116に、異常硬貨を異常硬貨と識別した識別要因を表示させる。例えば、異常硬貨の識別要因が上側画像検出部32および下側画像検出部33のうちの少なくともいずれか一方による検出画像に関わる要因のとき、表示部116にこの異常硬貨の上側画像検出部32および下側画像検出部33のうちの少なくともいずれか一方による検出画像を表示するとともに、この異常硬貨のエラーファクタをテキストで表示する。なお、異常硬貨の識別要因が材質検出センサ31の検出結果による場合、検出画像を表示部116に表示せず、この異常硬貨のエラーファクタのみをテキストで表示する。
【0066】
つまり、例えば、上側画像検出部32および下側画像検出部33の両方の異常硬貨の検出画像とともに、異常硬貨のパターン一致度、パターン径一致度、汚れ度、損傷度および変形度の各エラーファクタにうち割出可能なものに対して、それぞれ、数値(%)と、適であるか不適であるかを表示する。また、不適であったエラーファクタについて、強調表示や、他とは異なるカラーでの警告カラー表示等で表示を行うことでエラーファクタを容易に判読できるようにする。また、上側画像検出部32および下側画像検出部33の検出画像のエラーファクタに該当する画像部分を、強調表示やエリア指定表示(該当箇所を破線で囲む表示等)で表示する。
【0067】
表示部116に、例えば、図3に示すように、上側画像検出部32による異常硬貨の検出画像Z1を表示するとともに、下側画像検出部32による異常硬貨の検出画像Z2を表示する。そして、上側画像検出部32による異常硬貨の検出画像Z1の下側に、上側画像検出部32による検出画像のパターン一致度が20%で不適であり、上側画像検出部32による検出画像のパターン径一致度が99%で適であるといった表示を行う。この場合、上側画像検出部32による検出画像のパターン一致度が20%で不適であるため、上側画像検出部32による検出画像の汚れ度、上側画像検出部32による検出画像の損傷度、上側画像検出部32による検出画像の変形度については、表示することが適正でないため、数値および適であるか不適であるかの表示はしない。
【0068】
それと同時に、表示部116に、下側画像検出部33による異常硬貨の検出画像Z2の下側に、下側画像検出部33による検出画像のパターン一致度が20%で不適であり、下側画像検出部33による検出画像のパターン径一致度が99%で適であるといった表示を行う。この場合も、下側画像検出部33による検出画像のパターン一致度が20%で不適であるため、下側画像検出部33による検出画像の汚れ度、下側画像検出部33による検出画像の損傷度、下側画像検出部33による検出画像の変形度については、表示することが適正でないため、数値および適であるか不適であるかの表示はしない。
【0069】
これにより、オペレータは、表示部116の表示から、異常硬貨の識別要因の内容が、パターン一致度が低く不適と判断されたことを認識するとともに、表示された表裏の検出画像から実際の検出画像を確認する。
【0070】
また、例えば、図4に示すように、上側画像検出部32による異常硬貨の検出画像Z3の下側に、上側画像検出部32による検出画像のパターン一致度が95%で適であり、上側画像検出部32による検出画像のパターン径一致度が99%で適であり、上側画像検出部32による検出画像の汚れ度が5%で適であり、上側画像検出部32による検出画像の損傷度が2%で適であり、上側画像検出部32による検出画像の変形度が10%で不適であるといった表示を行う。
【0071】
それと同時に、下側画像検出部33による異常硬貨の検出画像Z4の下側に、下側画像検出部33による検出画像のパターン一致度が96%で適であり、下側画像検出部33による検出画像のパターン径一致度が99%で適であり、下側画像検出部33による検出画像の汚れ度が2%で適であり、下側画像検出部33による検出画像の損傷度が5%で適であり、下側画像検出部33による検出画像の変形度が10%で不適であるといった表示を行う。これにより、オペレータは、表示部116の表示から、異常硬貨の識別要因の内容が、変形度が10%で不適と判断されたことを認識するとともに、表示された表裏の検出画像から実際の変形の度合いを確認する。
【0072】
そして、オペレータは、上記のような異常硬貨のストッパ部材36a,36bによる停止中に、表示部116の表示を確認後、操作部115へ確認入力を行うことになり、これを受けて制御装置100は、ストッパ駆動部103を駆動して、ストッパ部材36a,36bを第2直線部22内から引込ませて、異常硬貨の停止状態を解除する。それと同時に、供給駆動部101を駆動して供給円盤13および回転円盤14を回転させるとともに搬送駆動部102を駆動して搬送ベルト27A〜27C,28およびベルト29を回転させる。すると、異常硬貨から後続の硬貨の下流側への搬送ベルト27A〜27C,28による搬送が再開されることになる。
【0073】
次に、制御装置100は、この異常硬貨が硬貨検知センサ43で検出されたタイミングでリジェクト駆動部104によりリジェクト突出部材42を第2直線部22に所定時間だけ突出させると、この異常硬貨のみが硬貨通路15上からリジェクト孔41に落下させられることになり、図示略のリジェクトボックスに回収される。そして、オペレータがすぐに硬貨処理機からリジェクトボックスを取り出し、このリジェクトボックスから異常硬貨を外部に取り出すと、上記のように検出画像で確認した異常硬貨そのものを得ることになる。よって、例えば、異常硬貨の識別要因の内容が、変形度が10%であることで不適と判断された異常硬貨を手にすることになり、このような変形硬貨は再使用が不可として処理することになる。
【0074】
なお、異常硬貨と識別する識別要因に、上記以外に、硬貨の搬送位置の異常や、硬貨同士の間隔が所定値より狭い近接搬送、硬貨同士が上下に重なる重なり搬送等を含めることも可能である。
【0075】
また、上側画像検出部32および下側画像検出部33の両方の異常硬貨の検出画像を同時に表示部116に表示させる以外にも、上側画像検出部32および下側画像検出部33の各検出画像を操作部115への切換操作で選択的に表示させたり、異常硬貨と識別する識別要因を有する側の検出画像のみを表示させたり、両方を表示させて異常がある面と異常がない面とを一見して判読可能となるように表示方向を異ならせたりしても良い。さらには、これらの複数のモードの中からオペレータが適宜のモードを選択して設定するようにしても良い。
【0076】
以上に述べた本実施形態の硬貨処理機によれば、硬貨搬送部26が搬送ベルト27A〜27C,28により硬貨を硬貨通路15上で搬送中に、材質検出センサ31、上側画像検出部32および下側画像検出部33が硬貨通路15上の硬貨を識別することになり、材質検出センサ31、上側画像検出部32および下側画像検出部33により異常硬貨が識別されると、制御装置100がストッパ部材36a,36bによりこの異常硬貨を停止させるとともに、搬送ベルト27A〜27C,28によるこの異常硬貨から後続の硬貨の搬送を停止させる。さらに、制御装置100は、材質検出センサ31、上側画像検出部32および下側画像検出部33によるこの異常硬貨の識別要因が検出画像に関わる要因のとき表示部116にこの異常硬貨の検出画像を表示する。よって、オペレータは表示部116に異常硬貨の検出画像が表示されていることで、ストッパ部材36a,36bで停止させられている異常硬貨とその識別要因が検出画像に関わる要因であることとを認識できる。したがって、異常硬貨を識別したときに、この異常硬貨を特定し、しかもその識別要因を明らかにできる。
【0077】
また、硬貨通路15の上流側および下流側の上下二箇所に上側画像検出部32および下側画像検出部33を設けて、硬貨の表裏両側の画像を検出し、制御装置100は、異常硬貨を検出した場合、その表裏両面の画像を表示部116に表示させることになるため、異常硬貨の識別要因が表裏のいずれの面にあっても表示可能となる。したがって、異常硬貨の識別要因をより詳細に確認できる。
【0078】
しかも、制御装置100が、異常硬貨の識別要因の内容をこの異常硬貨の検出画像とともに表示部116にテキスト表示させるため、オペレータは表示部116に異常硬貨の検出画像とともに表示された異常硬貨の識別要因の内容を見ることで、識別要因をより一層詳細に認識することができる。したがって、異常硬貨の識別要因をより一層詳細に明らかにできる。
【0079】
加えて、異常硬貨のストッパ部材36a,36bによる停止中に、オペレータが表示部116の表示から識別要因を認識した後、操作部115に確認入力を行うと、制御装置100が、異常硬貨のストッパ部材36a,36bによる停止状態を解除するとともに、硬貨搬送部26の搬送ベルト27A〜27C,28でこの異常硬貨を搬送し、下流側のリジェクト部40により硬貨通路15から排除する。よって、異常硬貨を、その識別要因を認識した後に、特定した状態で排除できる。
【0080】
さらに、制御装置100は、リジェクト部40による異常硬貨の硬貨通路15からの排除動作とともに、硬貨搬送部26の搬送ベルト27A〜27C,28による異常硬貨より後続の硬貨の搬送を再開するため、排除動作と同時に搬送を再開できる。したがって、停止による時間的な影響を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態の硬貨処理機を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態の硬貨処理機の制御系ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態の硬貨処理機の表示部の表示例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態の硬貨処理機の表示部の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
15 硬貨通路
26 硬貨搬送部(硬貨搬送手段)
34 識別部(識別手段)
36a,36b ストッパ部材(硬貨停止手段)
40 リジェクト部(硬貨選別手段)
100 制御装置(制御手段)
115 操作部(確認操作手段)
116 表示部(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を硬貨通路上で搬送する硬貨搬送手段と、
前記硬貨通路上の硬貨を識別する識別手段と、
前記硬貨通路上の硬貨を停止させる硬貨停止手段と、
表示を行う表示手段と、
前記識別手段により異常硬貨が識別されると、前記硬貨停止手段により当該異常硬貨を停止させるとともに、前記識別手段による前記異常硬貨の識別要因が検出画像に関わる要因のとき前記表示手段に当該異常硬貨の検出画像を表示する制御手段とを有することを特徴とする硬貨処理機。
【請求項2】
前記表示手段は、前記異常硬貨の表裏両面の画像を表示可能であることを特徴とする請求項1記載の硬貨処理機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記異常硬貨の識別要因の内容を該異常硬貨の検出画像とともに前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1または2記載の硬貨処理機。
【請求項4】
確認操作手段を有し、
前記異常硬貨の前記硬貨停止手段による停止中に、前記確認操作手段に確認入力がなされると、前記制御手段は、前記異常硬貨の前記硬貨停止手段による停止状態を解除するとともに、前記硬貨搬送手段で前記異常硬貨を硬貨通路上で搬送し、下流側の硬貨選別手段により、当該異常硬貨を前記硬貨通路から排除することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の硬貨処理機。
【請求項5】
前記制御手段は、停止させていた前記異常硬貨より後続の硬貨の前記硬貨搬送手段による搬送を、前記硬貨選別手段による前記異常硬貨の前記硬貨通路からの排除動作とともに再開することを特徴とする請求項4記載の硬貨処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−97099(P2008−97099A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275051(P2006−275051)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(500265501)ローレル精機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】