説明

硬質表面用洗浄剤組成物

【課題】洗浄剤組成物が均一で、安全性が高く、狭いギャップにおける各種汚れの洗浄性、繰り返し洗浄性及びすすぎ性に優れ、洗浄時とすすぎ時において耐泡立ち性の良い硬質表面用洗浄剤組成物及び当該洗浄剤組成物を用いた洗浄方法を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)〜(E):(A)グリセリルエーテルを0.25〜15.0重量%、(B)HLBが12.0〜18.0である、非イオン界面活性剤を1.0〜60.0重量%、(C)炭化水素を1.0〜10.0重量%、(D)グリコールエーテルを1.0〜20.0重量%、及び(E)水を含有してなり、かつ該成分(B)の非イオン界面活性剤が次の式:R−X−(EO)m(PO)n−Hで示され、かつ、該成分(B)と該成分(A)との重量比(成分(B)/成分(A))が4/1〜8/1である、硬質表面用洗浄剤組成物、並びに当該硬質表面用洗浄剤組成物を用いた硬質表面の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用洗浄剤組成物に関し、さらに詳細には精密部品、冶工具類、金属、ガラス、陶磁器、プラスチック等の硬質部材の表面(以下、単に硬質表面という場合がある)に存在する汚れの溶解性及び除去性及びすすぎ性に優れ、しかも安全性の高い硬質表面用洗浄剤組成物(以下、単に洗浄剤組成物という場合がある)に関する。また、当該洗浄剤組成物を用いた硬質表面の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精密部品又は組立加工工程に用いられる冶工具、部品等の硬質部材の表面に存在する油脂、機械油、切削油、グリース、液晶、シリコンオイル、ロジン系ワックス等の有機物を主体とする汚れ成分の除去には、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン等の塩素系溶剤、トリクロロフルオロエタン等のフロン系溶剤、オルソケイ酸ソーダや苛性ソーダに界面活性剤やビルダーを配合したアルカリ性の洗浄剤、低沸点の炭化水素系溶剤等が使用されている。しかしながら、塩素系及びフロン系の溶剤は安全性、毒性、作業環境及び環境汚染等に課題を有しており、また、アルカリ性洗浄剤は精密部品等に用いる場合には、被洗浄物表面に残存するとプラスチック部品等に悪影響を与えるという懸念、電機、電子部品においては電気特性に極めて悪影響を与えるという懸念があった。
【0003】
この問題を解決するため、例えば、アルキルグリセリルエーテルとオクタデセン及び/又は水とからなる洗浄剤組成物(特許文献1)、特定のアルキルポリグルコシドを含む洗浄剤組成物(特許文献2)、アルキルグリコシド、アルキルポリグリセリルエーテルとからなる洗浄剤組成物(特許文献3)等が開示されている。
【0004】
また、高い洗浄性とすすぎ性を得ることができ、アルキルグルコシド、グリセリルエーテル、炭化水素、グリコールエーテル及び水を含む硬質表面用洗浄剤組成物並びに硬質表面の洗浄方法が開示されている(特許文献4)。
【0005】
さらに、非イオン界面活性剤、グリセリルエーテル、炭化水素、グリコールエーテル及び水を含む液体洗浄剤組成物が開示されている(特許文献5)。
【特許文献1】特開平6−346092号公報
【特許文献2】特開平8−319497号公報
【特許文献3】特開平3−174496号公報
【特許文献4】特開2007−39627号公報
【特許文献5】特開2008−133477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に開示されている洗浄剤組成物は、いずれもすすぎ性や工業用洗浄剤に求められる繰り返し洗浄性等の点で充分満足な効果を有するとはいえなかった。
【0007】
また、これらの洗浄剤組成物を用いた洗浄方法としては、まず洗浄工程として洗浄剤原液又は水で希釈した洗浄剤液で洗浄し、その後、すすぎ工程として水ですすぎ、その後、乾燥工程を経るのが一般的な洗浄方法となっている。
【0008】
さらに、最近は精密部品の加工精度が向上し、かかる精密部品においては非常に凹凸が多く、凹部の隙間も非常に狭くなっており、さらには生産性向上から洗浄工程にかけられる時間もより短縮化される傾向にある。
【0009】
特に、液晶汚れの除去については、液晶表示パネルの薄型化に伴い、液晶セルのギャップ間隔がより狭くなり、ギャップ間に存在する液晶の洗浄がより困難になってきている。かかる液晶汚れに対して、前記のような従来の洗浄剤組成物を用いた場合、表面に存在する液晶に対する洗浄性は良好であったとしてもギャップ間に存在する液晶の洗浄性は不十分であった。
【0010】
これらのことから、精密部品又は組立加工工程に用いられる冶工具、部品等の硬質部材の表面に存在する各種油脂汚れ(特に精密部品の狭い隙間、凹部に付着している汚れ)の溶解性、除去性に優れ、かつすすぎにも時間を必要としない洗浄剤組成物が望まれていた。
【0011】
さらに近年、洗浄性及びすすぎ性のみならず、洗浄設備等への汚染の少ない、即ち、泡立ちの少ない(耐泡立ち性の良い)洗浄剤組成物が望まれている。しかし、従来の技術では洗浄性、すすぎ性、及び耐泡立ち性のすべてを満たす洗浄剤組成物は得られていない。
【0012】
例えば特許文献4及び5の技術では、洗浄時に高い洗浄性とすすぎ性が得られるものの、泡立ちのために洗浄機器を汚染してしまうのみならず、洗浄後においても希釈された排液による泡立ちのために排水設備を汚染するため、消泡剤を必要とする。
【0013】
本発明は、洗浄剤組成物が均一で、安全性が高く、狭いギャップにおける各種汚れの洗浄性、繰り返し洗浄性及びすすぎ性に優れ、洗浄時とすすぎ時において耐泡立ち性の良い硬質表面用洗浄剤組成物及び当該洗浄剤組成物を用いた洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 次の成分(A)〜(E):(A)グリセリルエーテルを0.25〜15.0重量%、(B)HLBが12.0〜18.0である、非イオン界面活性剤を1.0〜60.0重量%、(C)炭化水素を1.0〜10.0重量%、(D)グリコールエーテルを1.0〜20.0重量%、及び(E)水を含有してなり、かつ
当該成分(B)の非イオン界面活性剤が下記の一般式(1)
R−X−(EO)m(PO)n−H (1)
〔式中、Rは炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、又は炭素数6〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基で置換されているフェニル基を示し、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基であり、mはEOの平均付加モル数を示しm≧1であり、nはPOの平均付加モル数を示しn≧0であり、かつm>nであって、EOとPOはこの順に、あるいはランダムに配列している。XはO又はCOOである。〕で示され、
かつ、当該成分(B)と当該成分(A)との重量比(成分(B)/成分(A))が4/1〜8/1である、硬質表面用洗浄剤組成物;並びに
〔2〕 前記〔1〕記載の硬質表面用洗浄剤組成物を用いた硬質表面の洗浄方法;に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、安全性が高く、洗浄剤組成物が均一で、硬質表面上の各種汚れの洗浄性、繰り返し洗浄性及びすすぎ性に優れ、洗浄時とすすぎ時において耐泡立ち性が良いという優れた効果を奏し、本発明の洗浄方法は狭いギャップにおける各種汚れの洗浄性、繰り返し洗浄性及びすすぎ性に優れ、洗浄時とすすぎ時において耐泡立ち性が良いという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、非イオン界面活性剤、グリセリルエーテル、炭化水素、グリコールエーテル、及び水を含有してなる洗浄剤組成物であって、特定の非イオン界面活性剤とグリセリルエーテルとを特定の比率で組み合わせることにより、本来水に溶解しない炭化水素を高含水域でも分散することができる。本発明により、洗浄性、繰り返し洗浄性、すすぎ性及び耐泡立ち性のいずれも満足する理由としては、グリセリルエーテルと特定の非イオン界面活性剤とが特定の重量比で含有されているために、洗浄剤組成物中で非イオン界面活性剤とグリセリルエーテルと炭化水素が配向して存在し、その結果、洗浄剤組成物の各成分が均一に分散されるためと考えられる。
【0017】
また、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物(以下、単に本発明の洗浄剤組成物という)及び洗浄方法においては、洗浄工程において耐泡立ち性に優れることから、洗浄後の排水設備等に対する耐泡立ち性にも優れるものである。
【0018】
<洗浄対象>
本発明の洗浄対象となる硬質表面とは、被洗浄物である精密部品、冶工具類、金属、ガラス、陶磁器、プラスチック等の硬質部材の表面をいう。
【0019】
本発明において精密部品とは、例えば、電子部品、金属部品、電機部品、樹脂加工部品、光学部品等をいう。電子部品としては、例えば、液晶パネル、半導体パッケージ、プリント配線基板、ICリード、シリコーンやセラミックウエハ等の半導体材料、水晶振動子等が挙げられる。金属部品としては、例えば、精密駆動機器に用いられるベアリング、電子ポットや電子ジャーの深絞り容器や缶等の塑性加工品等が挙げられる。電機部品としては、例えば、ブラシ、ローター、ハウジング等の電動機部品等が挙げられる。樹脂加工品としては、例えば、カメラ、自動車等に用いられる精密樹脂加工部品等が挙げられる。光学部品としては、例えば、カメラ、眼鏡、光学機器に用いられるレンズ等が挙げられる。
【0020】
本発明において冶工具類とは、前記の精密部品の製造、加工、組立、仕上げ等の各種工程において使用される冶具、工具、精密部品を取り扱う各種機器、その部品等をいう。
【0021】
<除去対象>
本発明の洗浄剤組成物の主な除去対象は、前記硬質表面上に付着する液晶、油成分、フラックス(はんだ付けの際に生じる残渣)等の各種の汚れである。本発明の洗浄剤組成物は、特に、油性汚れ、シリコンオイル、具体的には、液晶パネルのギャップに存在する液晶汚れ、半導体パッケージ又はプリント配線基板に残存したフラックス、シリコンインゴット切削後に表面に付着した加工油、粗洗浄で使用される灯油、金属部品の塑性加工時に表面に付着した加工油に対して高い洗浄性を発揮する。さらに、これらの除去対象に加え、金属粉、無機物粉、水分等が混入した汚れに対しても高い洗浄性を発揮する。
【0022】
<グリセリルエーテル>
本発明に用いられる成分(A)のグリセリルエーテルとしては、高い洗浄性と使用温度範囲での洗浄剤組成物の均一性の観点から、炭素数4〜12の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基又はアルケニル基を有するものが挙げられ、例えばn−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数4〜12のアルキル基を有するものが好ましく、中でも炭素数5〜10のアルキル基、さらには炭素数5〜8のアルキル基を分子中に1個又は2個有するものが好ましく、当該アルキル基を1個有するものがより好ましい。さらに本発明に用いるグリセリルエーテルとしては、グリセリル基が2個以上、好ましくは2〜3個のグリセリル基がエーテル結合で繋がった、モノアルキルジグリセリルエーテル又はモノアルキルポリグリセリルエーテルでもよく、高い洗浄性を得る観点から、モノアルキルグリセリルエーテル、モノアルキルジグリセリルエーテルが好ましい。中でも、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル及びヘキシルグリセリルエーテルがより好ましい。これらのグリセリルエーテルを、成分(A)として単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。本発明においては、かかるグリセリルエーテルを用いることで、炭化水素と非イオン界面活性剤と水との組み合わせにおいて、洗浄剤組成物中の各成分の分散を安定化させることができるため、汚れのひどい油性及び液晶の汚れに対して優れた洗浄性が得られるという利点がある。
【0023】
本発明の洗浄剤組成物におけるグリセリルエーテルの含有量は、洗浄剤組成物中の炭化水素と水と非イオン界面活性剤の分散を安定化させ、高い洗浄性、すすぎ性及び洗浄剤組成物の均一性の観点から、0.25〜15.0重量%であり、0.25〜13.0重量%が好ましく、0.25〜10.0重量%がさらに好ましい。
【0024】
<非イオン界面活性剤>
本発明に用いられる成分(B)の非イオン界面活性剤のHLBは12.0〜18.0であり、洗浄性、繰り返し洗浄性、すすぎ性及び耐泡立ち性の観点から、12.0〜16.0が好ましく、12.0〜14.0がより好ましい。本明細書において、別に規定のない限り、非イオン界面活性剤のHLBはグリフィン法により算出される値である。
【0025】
非イオン界面活性剤としては、下記の一般式(1)
R−X−(EO)m(PO)n−H (1)
【0026】
〔式中、Rは炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、又は炭素数6〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基で置換されているフェニル基を示し、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基であり、mはEOの平均付加モル数を示しm≧1であり、nはPOの平均付加モル数を示しn≧0であり、かつm>nであって、EOとPOはこの順に、あるいはランダムに配列している。XはO又はCOOである。〕で示される非イオン界面活性剤が用いられる。
【0027】
Rにおけるアルキル基の炭素数は、洗浄剤組成物の均一性の観点から、8〜18が好ましく、8〜12がより好ましく、8〜10がさらに好ましい。mの値としては、洗浄剤組成物の均一性の観点から、4〜18が好ましく、4〜16がより好ましく、4〜12がさらに好ましい。nの値は、同様の観点から、0〜8が好ましく、0〜6がより好ましく、0〜5がさらに好ましい。
【0028】
また、すすぎ性の観点から、本発明における非イオン界面活性剤の分子量分布は広いことが好ましい。XはO又はCOOであるが、洗浄性、繰り返し洗浄性、すすぎ性及び耐泡立ち性の観点から、Oが好ましい。
【0029】
より具体的には、一般式(1)において、X=Oでn=0のものとしてポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが挙げられ、X=Oでn>0のものとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテルが挙げられる。
【0030】
また、X=COOでn=0のものとして、ポリオキシエチレンアルキルエステルが挙げられ、X=COOでn>0のものとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエステルが挙げられる。
【0031】
かかる構造とHLBを満足するポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの具体例としては、ポリオキシアルキレン2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、secアルコールエトキシレート、secアルコールアルコシキレート等が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルエステルの具体例としては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールオレエート等が挙げられる。これらの中でも、耐泡立ち性の観点から、ポリオキアルキレン2−エチルヘキシルエーテルがより好ましく、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルがさらに好ましい非イオン界面活性剤として挙げられる。これらの非イオン界面活性剤を、成分(B)として単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。本発明においては、かかるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることで、高い耐泡立ち性が得られるという利点がある。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物における非イオン界面活性剤の含有量は1.0〜60.0重量%であり、洗浄性、繰り返し洗浄性、すすぎ性及び耐泡立ち性の観点から、1.0〜50.0重量%が好ましく、1.0〜40.0重量%がより好ましく、1.0〜30.0重量%がさらに好ましい。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物において、非イオン界面活性剤の成分(B)とグリセリルエーテルの成分(A)との重量比(成分(B)/成分(A))は4/1〜8/1である。当該重量比をこのように特定することで、洗浄剤組成物中で炭化水素と非イオン界面活性とグリセリルエーテルとが配向し、汚れ溶解性と高い洗浄性とすすぎ性を維持しつつ、耐泡立ち性を改善できるものと考えられる。検討の結果、当該重量比は4/1〜7/1が好ましい。
【0034】
<炭化水素>
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄性、特に油溶性の汚れを溶解する観点から、炭化水素を含有する。本発明に用いられる成分(C)の炭化水素としては、オレフィン系炭化水素及び/又はパラフィン系炭化水素が好ましい。オレフィン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素としては、炭素数8〜18の化合物が好ましく、炭素数9〜18の化合物がより好ましく、炭素数9〜14の化合物がさらに好ましく、炭素数10〜14の化合物がより好ましい。例えば、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、デセン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン等の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の炭化水素;シクロデカン、シクロドデセン等のシクロ化合物等の脂環式炭化水素等が挙げられる。これらのうち、洗浄性及び安全性の観点から、炭素数10〜18の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の炭化水素が好ましく、炭素数10〜14の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の炭化水素がより好ましく、炭素数10〜14の直鎖又は分岐鎖を有する不飽和の炭化水素がよりさらに好ましく、炭素数12のαオレフィン炭化水素がさらに好ましい。これらの炭化水素を、成分(C)として単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物における炭化水素の含有量は、高い洗浄性、特に油汚れを溶解させる観点から高いほうが好ましいが、炭化水素と水との分散を安定にさせ、高い洗浄性、すすぎ性及び繰り返し洗浄性を両立させる観点から、1.0〜10.0重量%であり、1.0〜8.0重量%が好ましく、1.0〜6.0重量%がさらに好ましい。
【0036】
<グリコールエーテル>
本発明の洗浄剤組成物は、組成物の粘度を下げ、洗浄剤組成物の均一性を得る観点から、グリコールエーテルを含有する。本発明に用いられる成分(D)のグリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノアルキル(炭素数1〜6)エーテル;ジエチレングリコールモノアルキル(炭素数1〜6)エーテル;トリエチレングリコールモノアルキル(炭素数1〜6)エーテル;ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、フェニルグリコール、プロピレングリコール又はジプロピレングリコールのモノアルキル(炭素数1〜6)エーテル;ジアルキルグリコール(炭素数2〜12)のモノアルキル(炭素数1〜6)エーテル等が挙げられ、中でも、洗浄剤組成物の均一性を得る観点から、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジブチルエーテルが好ましい。
【0037】
また、本発明の洗浄剤組成物を用いて洗浄する場合において、すすぎ工程においては環境負荷低減の観点から油水分離法が好ましく、かかる油水分離法を行う観点からは、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールジブチルエーテルがより好ましい。これらのグリコールエーテルを、成分(D)として単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物におけるグリコールエーテルの含有量は、洗浄剤組成物の曇点を30℃以上とすることで高温での洗浄を可能とし、かつ油水分離法にも適用可能とする観点から、1.0〜20.0重量%であり、1.0〜15.0重量%が好ましく、1.0〜10.0重量%がより好ましい。
【0039】
<好適な組み合わせ>
また、本発明における、グリセリルエーテル、非イオン界面活性剤、炭化水素及びグリコールエーテルの好ましい組み合わせとしては、非イオン界面活性剤がそのHLBが12.0〜18.0であってかつ一般式(1)のRのアルキル基の炭素数が8〜10の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基であるものであり、グリセリルエーテルが2−エチルヘキシルグリセリルエーテル及び/又はヘキシルグリセリルエーテルであり、炭化水素が炭素数12のαオレフィンであり、グリコールエーテルがジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルより選択される少なくとも1種である組み合わせが挙げられる。
【0040】
<水>
本発明に用いられる成分(E)の水としては、特に限定はなく、イオン交換水、純水等が挙げられ、精密部品洗浄用途には純水が好ましく、冶工具類、金属、ガラス、陶磁器又はプラスチック洗浄用途にはイオン交換水が好ましく、純水がより好ましい。本発明において、25℃での電気伝導率はイオン交換水で2μS/cm以下であり、純水で1μS/cm以下を示すものである。水の含有量は、本発明の組成物の使用態様にあわせて適宜設定すればよい。
【0041】
例えば、本発明の組成物を硬質表面の洗浄に用いる場合、水の含有量は、洗浄剤組成物が引火しないようにする観点及び経済性の観点から、洗浄剤組成物の5〜90重量%が好ましく、30〜90重量%がより好ましく、40〜90重量%がさらに好ましく、50〜90重量%がより好ましい。
【0042】
<硬質表面用洗浄剤組成物>
本発明の洗浄剤組成物は、前記の構成を有するものである。硬質表面用洗浄剤組成物のpHとしては、特に制限されるものではないが、例えば25℃において、4〜10の範囲が好ましく6〜9の範囲がより好ましく、6〜8の範囲がさらに好ましい。金属の腐食防止の観点から、当該pHは4以上であることが好ましく、例えばアルミニウムのような両性金属の腐食防止の観点から、当該pHは10以下であることが好ましい。
pHは、例えば、弱酸性塩類、弱塩基性塩類、より具体的には、炭酸塩、硝酸塩、有機アミン等により調整することができる。
【0043】
<調製方法>
以上の構成を有する本発明の洗浄剤組成物は、前記成分及びその他の成分等を常法により混合することにより製造することができる。例えば、前記非イオン界面活性剤、前記グリセリルエーテル、前記炭化水素、前記グリコールエーテル及び前記水を攪拌しながら混合し、さらに必要に応じてその他の成分を混合して製造することができる。
【0044】
<用途>
本発明の洗浄剤組成物は、精密部品、冶工具類、金属、ガラス、陶磁器、プラスチック等の硬質部材の表面の洗浄に適用することができる。また、本発明の洗浄剤組成物は、低温での金属、ガラス、陶磁器、プラスチック等の硬質部材の表面の洗浄にも好適に適用することができる。特に、本発明の洗浄剤組成物は、洗浄性、すすぎ性及び耐泡立ち性に優れるため、液晶等に用いられるガラス表面の洗浄に好適に用いることができる。また、製鉄所等における鋼板の連続洗浄、すなわち浸漬洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、電解洗浄等、製鉄所等における銅板の連続洗浄、すなわち、浸漬洗浄、シャワー洗浄、浸漬超音波洗浄等においてその効果を発揮することができる。また、本発明の洗浄剤組成物は、すすぎ液の排水負荷を低減する油水分離法による洗浄にも適用することができる。以上のような洗浄に本発明の洗浄剤組成物を適用することにより、洗浄時間の短縮、省エネルギー等の効果が奏される。したがって、本発明はまた、前記硬質表面用洗浄剤組成物を用いる硬質表面の洗浄方法に関する。
【0045】
<繰り返し洗浄性>
例えば液晶パネル等の工業用の洗浄工程は、一般に、第一工程(洗浄)、第二工程(あらすすぎ)、及び第三工程(仕上げすすぎ)の順で行われる。かかる洗浄工程においては、第一工程の洗浄槽では洗浄剤組成物を循環させて洗浄剤組成物を繰り返し使用することがある。このため、各工程の槽には循環タンクが併設され、洗浄剤組成物には、同じ液を複数回長期にわたり、例えば1〜6ヶ月間繰り返し使用してもその洗浄性が確保できるという、高い繰り返し洗浄性が求められる。本発明の洗浄剤組成物は、かかる繰り返し洗浄性が高いという優れた性質を有する。
【0046】
<油水分離法>
前記の洗浄工程で、例えば、第二工程(あらすすぎ)の循環用タンク内の液温を循環用タンク内の液の曇点以上に上げると、汚れと油性物がすすぎ液から分離(浮上)する。次いで上層の汚れと油成分とを排出し、下層に残った液を第二工程(あらすすぎ)のあらすすぎ槽に還流させてすすぎ液として使用することができる。この方法を油水分離法といい、特許2539284号公報記載の方法が好適に利用できる。かかる方法を利用することにより、排水負荷を低減することができる。本発明の洗浄剤組成物を、かかる油水分離法に適用することができる。
【0047】
<洗浄方法>
本発明の硬質表面の洗浄方法は、前記硬質表面用洗浄剤組成物を用いて硬質表面を洗浄する工程(以下、単に洗浄工程という場合がある)を含む。さらに硬質表面に残存している、洗浄剤組成物の成分に可溶化した汚れ及び/又は洗浄剤組成物の成分を洗い流すためのすすぎ工程、並びに洗浄対象物を乾燥させるための乾燥工程を含むことが好ましい。本発明の洗浄剤組成物は硬質表面の液晶汚れに対して好ましく適用することができるので、本発明の硬質表面の洗浄方法も硬質表面の液晶汚れに対して好ましく適用することができる。
【0048】
洗浄工程においては、本発明の洗浄剤組成物を洗浄液として用いる。洗浄剤組成物の作製方法は所定の濃度になるように各成分を一度に混合しても良いし、あらかじめ所定の濃度以上の液を混合し、所定の濃度となるように水で希釈しても良い。洗浄工程における洗浄剤組成物の温度は、高い洗浄性とすすぎ性の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上であり、また、水分の蒸発を抑制する観点から、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
【0049】
洗浄工程における洗浄時間は、洗浄される硬質部材の種類並びに付着している汚れの量及び種類によっても異なるので一概にはいえないが、好ましくは、3〜30分間の洗浄時間とすることで、硬質表面から汚れが十分に除去される。
【0050】
洗浄工程における洗浄手段としては、浸漬法、超音波洗浄法、浸漬揺動法、スプレー法、手拭き法の各種の公知の洗浄手段が挙げられるが、洗浄性の観点から超音波洗浄法が好ましい。硬質部材の種類にあわせて、これらの手段を単独で又は適宜組み合わせて硬質表面を洗浄することができる。
【0051】
すすぎ工程は、洗浄工程が終了した後、硬質表面に残存している洗浄剤組成物に可溶化した汚れ及び/又は洗浄剤組成物の成分を硬質表面から取り除くために行われる。乾燥工程は、すすぎ工程が終了した後、硬質表面に残存している水分を除去するために行われる。
【0052】
すすぎ工程におけるすすぎ手段としては、浸漬法、超音波洗浄法、浸漬揺動法、スプレー法の各種の公知のすすぎ手段としての洗浄手段が挙げられるが、洗浄性の観点から超音波洗浄法が好ましい。また、乾燥工程における乾燥手段としては、例えば80℃〜120℃のオーブンに3分から10分加熱して水分を飛ばす方法が挙げられる。
【実施例】
【0053】
実施例及び比較例
<洗浄剤組成物の調製>
表1に示す成分を用いて洗浄剤組成物を調製した。表2及び表3(実施例1〜14、比較例1〜13)に示される含有量となるように、各成分を秤量し、下記条件で混合して洗浄剤組成物を調製した。また、実施例等における各組成物のpHは、25℃における値である。
・液温度:25℃
・攪拌機:マグネチックスターラー(50mm回転子)
・回転数:200rpm
・攪拌時間:10分
【0054】
【表1】

【0055】
なお、表1〜3における各成分の詳細は次の通りである。
・A-1:(花王社製:ベネトールGE−EH;2−エチルヘキシルグリセリルエーテル)
・B-1:(青木油脂社製:ブラウノンEH−6;EO平均付加モル数=6;HLB=13.4)
・B-2:(青木油脂社製:ファインサーフD−1307;EO平均付加モル数=7;HLB=13.2)
・B-3:(日本触媒社製:ソフタノール90;EO平均付加モル数=9;HLB=13.3)
・B-4:(花王社製:EO平均付加モル数=10;PO平均付加モル数=2;HLB=13.9)
・B-5:(花王社製:エマノーン1112; EO平均付加モル数=12;HLB=13.7)
【0056】
・B-6:(青木油脂社製:ブラウノンEH−4; EO平均付加モル数=4;HLB=11.5)
・B-7:(花王社製:エマルゲン840S;EO平均付加モル数=40;HLB=17.9)
・B-8:(花王社製:エマルゲン985;EO平均付加モル数=75;HLB=18.9)
・C-1:1−ドデセン(出光興産社製;リニアレン12)
・D-1:(日本乳化剤社製;ジエチレングリコールモノブチルエール;EO付加モル数=2)
・D-2:(日本乳化剤社製;ジエチレングリコールモノヘキシルエール;EO付加モル数=2)
・D-3:(日本乳化剤社製;トリエチレングリコールモノブチルエーテル;EO付加モル数=3)
・AG:(花王社製:アルキルグルコシド(R1-Gy);R1=平均炭素数11.3の直鎖アルキル基、G=グルコース基、y=1.43)
・AES:(花王社製:エマール20;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
<液晶セル表面の洗浄性>
1.試験基板の作製
液晶セル(3.5インチTFTパネル、ギャップ間距離5μm)のギャップ内にTFT(薄膜トランジスター)液晶を0.4mg封入し、40℃で60分間静置したものを試験基板とした。
【0060】
2.洗浄試験
前記のようにして調製された洗浄剤組成物1Lを40℃に加温し、その中に前記試験基板を1枚入れ、3分間超音波洗浄(38kHz、600W)した。その後、4槽の各純水槽(40℃)にて4分間すすぎを行った後、90℃の熱風乾燥機で30分間乾燥を行い、観察サンプルとした。
【0061】
〔洗浄性〕
観察サンプルについて、次の2項目を観察した。即ち、ギャップ内に残留しているTFT液晶、及びすすぎ時に十分に排出されなかったTFT液晶と洗浄剤組成物との混合物を、偏光顕微鏡(倍率25倍)で観察した写真を画像解析することで、液晶セル表面の洗浄性を評価した。具体的には、顕微鏡観察で得られた写真を、2値化(デジタル化)し、「画像解析ソフトWinROOF(三谷商事社製)」を用いて画像解析行い、全画像面積から、残留TFT液晶及びすすぎ時に十分に排出されなかったTFT液晶と洗浄剤組成物との混合物が残留している全面積を引いた面積(洗浄された面積)を全画像面積で除した値(洗浄率)を算出し、以下の評価基準に従って洗浄性を評価した。数値が高いほど洗浄性に優れることを示す。
【0062】
〔評価基準〕
A:90%以上
B:80〜90%未満
C:40〜80%未満
D:40%未満
【0063】
<繰り返し洗浄試験>
洗浄剤組成物の繰り返し洗浄性を評価するために、液晶飽和溶解濃度を調べた。調製された洗浄剤組成物20gを40℃に加温し、その中にTFT液晶を0.02g添加し、3分間40℃で保持した。その後、洗浄剤組成物を目視にて確認し、透明であればTFT液晶が溶解したものと判断して、洗浄剤組成物が白濁するまで同じ操作を繰り返した。洗浄剤組成物が初めて白濁した液晶量から0.01gを差し引いた量から飽和溶解濃度を算出し、液晶飽和溶解濃度と定義した。
【0064】
例えば、TFT液晶を0.24g加えた際に初めて白濁したと仮定すると、液晶飽和溶解濃度は、(0.24−0.01)/(20+0.24−0.01)×100で算出される。かかる液晶飽和溶解濃度を用い、下記評価基準に基づいて繰り返し洗浄性を評価した。その結果を表2及び表3に示す。飽和溶解濃度の数値が高いほど、その洗浄剤組成物の洗浄性が優れていることを示す。
【0065】
〔評価基準〕
A:2%以上
B:1%以上〜2%未満
C:0.5%以上〜1%未満
D:0.5%未満
【0066】
<すすぎ試験>
【0067】
〔すすぎ性評価〕
〈1〉 各洗浄剤組成物の10重量%水溶液(500g)を60℃に加温し、その中に前記試験基板を5枚、10分間浸漬した。
〈2〉 その後、20秒かけてパネルをゆっくり引上げ、40℃の純水500gを入れた第一すすぎ槽に2分間浸漬した。
〈3〉 第一すすぎ槽から〈2〉と同様にパネルを引上げ、40℃の純水500gを入れた第二すすぎ槽に2分間浸漬した。
〈4〉 第二すすぎ槽から〈2〉と同様にパネルを引上げ、40℃の純水500gを入れた抽出槽(超音波槽)に浸漬した。次いで、超音波(38KHz、400W)で10分間パネルを処理し、パネル表面に残存した洗浄剤組成物の成分に可溶化した液晶及び/又は洗浄剤組成物の成分を抽出した。
〈5〉 次に各すすぎ槽(第一及び第二)中のすすぎ水、並びに抽出槽中の抽出水の有機物濃度をTOC(全有機炭素計)により測定し、下式に従って、第一すすぎ槽における油分除去率を算出した。
【0068】
式:第一すすぎ槽における油分除去率(%)=
(第一すすぎ槽中のすすぎ水の有機物重量)/(第一すすぎ槽中のすすぎ水の有機物重量+第二すすぎ槽中のすすぎ水の有機物重量+抽出槽中の抽出水の有機物重量)×100
〈6〉 〈5〉で算出した油分除去率を元に、以下の評価基準に従ってすすぎ性を評価した。その結果を表2及び表3に示す。油分除去率の数値が高いほどすすぎ性に優れることを示す。
【0069】
〔評価基準〕
A:90%以上
B:70%以上〜90%未満
C:50%以上〜70%未満
D:50%未満
【0070】
<耐泡立ち性試験>
・(原液)100mLのガラス容器に、調製された洗浄剤組成物を30mL充填し、液温を40℃に保持した。その後、ガラス容器を手振りで20回(30cm幅、1往復/秒)振とうさせて静置し、静置直後の洗浄剤組成物と泡体積とを合わせた体積を初期泡体積とした。次いで、そのガラス容器を40℃で3分間静置した後の洗浄剤組成物と泡体積とを合わせた体積を3分静置後の泡体積とした。泡体積の値が小さいほど耐泡立ち性に優れることを示す。また、3分静置後の泡体積の値が小さいほど、破泡性に優れることを示す。ここで破泡性とは、形成された泡が消失する程度をいい、耐泡立ち性の指標の一つである。
【0071】
排水設備での耐泡立ち性を想定して、希釈液での耐泡立ち性の評価を実施した。
・(希釈液)500mLのメスシリンダーに、有機物濃度を200ppmに調整した洗浄剤組成物の希釈液を50mL投入し、液温を40℃に保持した。その状態で泡体積が一定になるまで希釈液中に空気を吹き込んだ。その時点での洗浄剤組成物の希釈液と泡体積とを合わせた体積を飽和泡体積とした。また、その後、空気吹き込みを停止し、40℃で3分間保持した後の洗浄剤希釈液と泡体積とを合わせた体積を3分静置後の泡体積とした。希釈液の有機物濃度はTOC(全有機炭素計)で測定して調整した。空気吹き込み量は1000mL/minとし、空気吹き込み管は、ガラスポールフィルター 503G(木下理化工業社製)を使用した。泡体積の値が小さいほど耐泡立ち性に優れることを示す。また、3分静置後の泡体積の値が小さいほど、破泡性に優れることを示す。
【0072】
〔評価基準〕
それぞれの耐泡立ち性は、以下の指標で判定した。
原液(初期泡体積と3分静置後の泡体積)
A:40mL未満
B:40以上〜50mL未満
C:50以上〜60mL未満
D:60mL以上
【0073】
希釈液(飽和泡体積と3分静置後の泡体積)
A:150mL未満
B:150以上〜250mL未満
C:250以上〜350mL未満
D:350mL以上
【0074】
<油水分離性>
油水分離性試験
実施例9及び10で調製された各洗浄剤組成物について、水以外の成分の合計が5重量%となるようにイオン交換水で希釈した。この希釈液を、直径40mm、高さ120mm、容量100mLのガラス瓶に入れ、60℃の雰囲気下にて1時間保温静置した。その後、各希釈液を観察した(状態1)。当該希釈液が上下2層に分層している場合は、さらに、10秒間ガラス瓶を上下に激しく振動振した。その後、再び分層するまでの時間を測定した(状態2)。当該希釈液を振動させてさらに状態2を観察した。当該観察結果を表4に示す評価基準に従って評価した。上下2層に分離する時間が短いほど油水分離性に優れることを示す。
【0075】
【表4】

【0076】
前記の実験から次の事柄が分かった。
・洗浄性、繰り返し洗浄性及びすすぎ性
比較例9の洗浄剤組成物のアルキルグルコシド及び比較例10の洗浄剤組成物の陰イオン界面活性剤に代えて、B−1〜B−5及びB−7で示される非イオン界面活性剤を用いた場合、得られた洗浄剤組成物の洗浄性、繰り返し洗浄性及びすすぎ性とも優れていることが分かった(実施例1〜14)。一方、成分(B)が本発明の範囲内であっても成分(A)が本発明の範囲外の洗浄剤組成物(比較例1及び比較例8)では、すすぎ性に劣ることが分かった。さらに、成分(B)と成分(A)との重量比が本発明の範囲外の洗浄剤組成物(比較例2、比較例4、比較例5及び比較例7)も、すすぎ性に劣り、洗浄剤組成物として使えないことが分かった。さらに、成分(B)のHLBが本発明の範囲外の洗浄剤組成物(比較例3)及び成分(C)の含有量が本発明の範囲外の洗浄剤組成物(比較例6)においても、すすぎ性に劣り、洗浄剤組成物として使えないことが分かった。さらに、成分(B)の量が本発明の範囲外の洗浄剤組成物(比較例11及び比較例12)においても、洗浄性、すすぎ性が大きく低下することが分かった。さらに比較例13の結果から、非イオン界面活性剤のHLBの値が本発明の範囲を超えると、非イオン界面活性剤が固体となるため、洗浄剤組成物を均一にすることができなかった。
【0077】
・耐泡立ち性
アルキルグルコシド及び陰イオン界面活性剤を用いて得られた洗浄剤組成物(比較例9及び比較例10)は、原液及び希釈液共に耐泡立ち性に劣るものであった。一方、実施例における洗浄剤組成物は、いずれも耐泡立ち性に優れたものであった。
このように、洗浄剤組成物を本発明の範囲とすることにより、洗浄性、すすぎ性及び耐泡立ち性の全ての物性を満足させることができた。
【0078】
・油水分離性
本発明品(実施例9及び実施例10)を用いて油水分離性の試験を行ったところ、本発明品は油水分離性に優れた洗浄剤組成物であることが分かった。従って、本発明の洗浄剤組成物を上記の油水分離法に好適に適用できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の洗浄剤組成物は、精密部品等の硬質部材の表面に存在する汚れ成分の除去のような様々な工業用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E):
(A)グリセリルエーテルを0.25〜15.0重量%、
(B)HLBが12.0〜18.0である、非イオン界面活性剤を1.0〜60.0重量%、
(C)炭化水素を1.0〜10.0重量%、
(D)グリコールエーテルを1.0〜20.0重量%、及び
(E)水
を含有してなり、かつ
該成分(B)の非イオン界面活性剤が下記の一般式(1)
R−X−(EO)m(PO)n−H (1)
〔式中、Rは炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、又は炭素数6〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基で置換されているフェニル基を示し、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基であり、mはEOの平均付加モル数を示しm≧1であり、nはPOの平均付加モル数を示しn≧0であり、かつm>nであって、EOとPOはこの順に、あるいはランダムに配列している。XはO又はCOOである。〕で示され、
かつ、該成分(B)と該成分(A)との重量比(成分(B)/成分(A))が4/1〜8/1である、硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分(E)の水の含有量が5〜90重量%である、請求項1記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の硬質表面用洗浄剤組成物を用いた硬質表面の洗浄方法。

【公開番号】特開2010−155904(P2010−155904A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334471(P2008−334471)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】