説明

磁性に優れた無方向性電気鋼板及びその製造方法

無方向性電気鋼板を提供する。本発明は、重量%で、Al:1.0〜3.0%、Si:0.5〜2.5%、Mn:0.5〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなり、Al、Mn、N及びSは{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1400の組成式を満足するように含有される、磁性に優れた無方向性電気鋼板及びその製造方法を提供する。これにより、Al、Si、Mn、N及びSの添加成分を最適化して粗大な介在物の分布密度を高めることにより結晶の成長性及び磁壁の移動性を向上させて磁性に優れたうえ、硬度が低くて客先の加工性及び生産性にも優れた最高級無方向性電気鋼板を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電気鋼板の製造に関し、鋼の添加成分を最適に設定して鋼中における粗大な介在物の分布密度を高め、結晶粒の成長性と磁壁の移動性を向上させることにより磁性を向上させ、低い硬度の確保により製品生産性及び打抜性を改善させた、最高級無方向性電気鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、回転機器の鉄心材料として使用される無方向性電気鋼板の製造に関する。無方向性電気鋼板は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する重要な部品であって、磁気的特性が非常に重要である。磁気的特性として主に言及されることが鉄損と磁束密度である。鉄損は、エネルギー変換過程で熱として無くなるエネルギーであるので、低いほどよい。磁束密度は、回転体の動力源といえるので、高いほどエネルギー効率に有利である。
【0003】
通常、無方向性電気鋼板は、鉄損を低めるためにSiを主元素として添加する。Siの含量が増加すると、磁束密度が減少し、Siの含量が過度に増加すると、加工性が低下して冷間圧延が困難になる。しかも、客先で打抜する際に金型の寿命も減少する。よって、Siの含量を低減し且つAlの含量を増加させることにより、磁気的性質及び機械的性質を改善しようとする試みが行われているが、最高級無方向性電気鋼板としての磁性には及んでおらず、大量生産工程上の難しさのため、まだ実用化されていない。
【0004】
一方、無方向性電気鋼板で良い磁性を得るためには、鋼中に存在する微細な介在物などのC、S、N、Tiなどの不純物を極めて低く制御して結晶粒の成長性を向上させる必要がある。ところが、通常の電気鋼板の製造工程において不純物を極めて低く管理することは容易ではなく、製鋼段階で費用の増加が発生するという欠点がある。
【0005】
製鋼段階で除去されていない不純物は、連続鋳造の際にスラブ内に窒化物又は硫化物の形で存在し、熱間圧延のためにスラブを1100℃以上の温度で再加熱することにより、窒化物又は硫化物などの介在物は再溶解してから熱間圧延終了の際にさらに微細に析出する。
【0006】
一般的な無方向性電気鋼板から析出する介在物としてのMnS、AlNは約50nm程度の微細な平均サイズを有するものと観察される。このように生成された微細な介在物は、焼鈍の際に結晶粒の成長を妨害してヒステリシス損失を増加させるうえ、磁化の際に磁壁の移動を妨害して透磁率を減少させる。
【0007】
したがって、無方向性電気鋼板の製造工程では、このような微細な介在物が存在しないように製鋼段階から不純物を適切に制御し、残っている介在物が熱間圧延の際に再固溶してさらに微細に析出することを抑制するようにすることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来の技術が有する諸般問題点を解決するために創出されたもので、その目的としては、鋼の合金元素Al、Si、Mnと不純物元素N、Sの成分比率を最適の条件に管理して鋼中に粗大な介在物の分布密度を高め、微細な介在物の発生頻度を低めることにより、結晶粒の成長性と磁壁の移動性を向上させて優れた磁性を示しながらも、低い硬度特性により生産性及び打抜性に優れた、最高級無方向性電気鋼板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の磁性に優れた無方向性電気鋼板は、重量%で、Al:0.7〜3.0%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなり、下記の条件(1)、条件(2)及び条件(3)の少なくとも一つを満足する。
条件(1):0.7≦[Al]≦2.7、0.2≦[Si]≦1.0、0.2≦[Mn]≦1.7、{[Al]+[Mn]}≦2.0、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、230≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,000
条件(2):1.0≦[Al]≦3.0、0.5≦[Si]≦2.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
条件(3):1.0≦[Al]≦3.0、2.3≦[Si]≦3.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
前記[Al]、[Si]、[Mn]、[N]及び[S]はそれぞれAl、Si、Mn、N及びSの含量(重量%)を意味する。
【0010】
前記条件(1)を満足する本発明の無方向性電気鋼板は、前記Al、Si及びMnの含量が下記の式(1)と式(2)を満足し、断面ビッカース硬度(Hv1)が140以下であることが好ましい。
式(1):1.0≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦2.0
式(2):1≦[Al]/[Mn]≦8
【0011】
前記条件(2)を満足する本発明の無方向性電気鋼板は、前記Al、Si及びMnの含量が前記式(2)、下記の式(3)及び式(4)を満足し、断面ビッカース硬度(Hv1)が190以下であることが好ましい。
式(3):1.7≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦5.5
式(4):0.6≦[Al]/[Si]≦4.0
【0012】
前記条件(3)を満足する本発明の無方向性電気鋼板は、前記Al、Si及びMnの含量が前記式(2)と下記の式(5)を満足し、断面ビッカース硬度(Hv1)が225以下であることが好ましい。
式(5):3.0≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦6.5
【0013】
前記条件(1)〜条件(3)の少なくとも一つを満足する本発明の無方向性電気鋼板は、鋼板中に窒化物と硫化物を単独で或いは複合的に用いて介在物が形成され、平均サイズ300nm以上の介在物の分布密度は0.02個/mm以上であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の無方向性電気鋼板はさらに0.2%以下のPが含有されることが好ましい。
【0015】
また、本発明の無方向性電気鋼板はさらに0.005〜0.2%のSn及び0.005〜0.1%のSbの少なくとも1種が含有されることが好ましい。
【0016】
前記課題を解決するための本発明の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法は、重量%で、Al:0.7〜3.0%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなり、上記の条件(1)、条件(2)及び条件(3)の少なくとも一つを満足するスラブを加熱して熱間圧延し、冷間圧延した後、750〜1100℃の温度で最終焼鈍する。
【0017】
本発明の無方向性電気鋼板の製造方法は、最終焼鈍された鋼板に窒化物と硫化物を単独で或いは複合的に用いて介在物が形成され、平気サイズ300nm以上の介在物の分布密度を0.02個/mm以上にすることが好ましい。
【0018】
また、本発明の無方向性電気鋼板の製造意方法は、0.3〜0.5%のAlを添加して脱酸が行われるようにした後、残余合金元素を投入し、残余合金元素の投入後に温度を1500〜1600℃に維持して前記スラブを製造することが好ましい。
【0019】
前記課題を解決するための本発明の無方向性電気鋼板スラブは、重量%で、Al:0.7〜3.0%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなり、上記の条件(1)、条件(2)及び条件(3)の少なくとも一つを満足する。
【0020】
前記条件(1)〜条件(3)の少なくとも一つを満足する本発明の無方向性電気鋼板スラブは、さらに0.2%以下のPが含有されることが好ましい。
【0021】
また、本発明の無方向性電気鋼板スラブは、さらに0.005〜0.2%のSn及び0.005〜0.1%のSbの少なくとも1種が含有されることが好ましい。
【0022】
前記課題を解決するための本発明の無方向性電気鋼板スラブの製造方法は、溶鋼に0.3〜0.5%のAlを添加して脱酸が行われるようにした後、残余AlとSi及びMnを投入し、温度を1500〜1600℃に維持させることにより、重量%で、Al:0.7〜3.0%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなり、上記の条件(1)、条件(2)及び条件(3)の少なくとも一つを満足する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、合金元素Al、Si、Mnと不純物元素N、Sの成分比率を適切に管理して粗大な介在物の分布密度を高めることにより、結晶粒の成長性と磁壁の移動性を向上させて磁性に優れるうえ、非常に低い硬度を有する、最高級無方向性電気鋼板を安定的に製造することができる。また、客先の加工性及び生産性に優れるうえ、製品の生産コストを下げてコストを節減する効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の無方向性電気鋼板に存在する複合介在物を示す図である。
【図2】0.5〜2.5%のSiを含有する無方向性電気鋼板において[N]+[S]を横軸、[Al]+[Mn]を縦軸として、平均サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mm以上であるか否かを基準として区分して示すグラフである。
【図3】0.2〜1.0%のSiを含有する無方向性電気鋼板において[N]+[S]を横軸、[Al]+[Mn]を縦軸として、平均サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mm以上であるか否かを基準として区分して示すグラフである。
【図4】2.3〜3.5%のSiを含有する無方向性電気鋼板において[N]+[S]を横軸、[Al]+[Mn]を縦軸として、平均サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mm以上であるか否かを基準として区分して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
前述した技術的問題点を解決するために、本発明者らは、鋼の合金元素、不純物元素及び各元素間の関係が介在物の形成に及ぼす種類別影響と、これにより磁性と加工性に及ぼす影響について調査した結果、鋼に添加される合金元素Al、Si、Mn及び不純物元素N、Sの含量を適切に調節し、Al/SiとAl/Mn、Al+Si+Mn/2、Al+Mn、N+S、(Al+Mn)/(N+S)の比率を最適に管理することにより、鋼板の硬度を低下させ、鋼板中における平均サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度を高めることができ、これにより磁気的特性が著しく向上し、製品の生産性及び打抜性が改善されることに注目し、本発明を完成した。
【0026】
本発明は、重量%で、Al:0.7〜3.0%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなる成分系において、下記の条件(1)、条件(2)及び条件(3)の少なくとも一つを満足するようにAl、Si、Mn、N及びSの成分元素を含有させることにより、窒化物と硫化物とが複合された300nm以上の巨大な介在物の分布密度を0.02個/mm以上と高め、これにより優れた磁性と共に低い硬度を有する最高級無方向性電気鋼板を製造することを要旨とする。
【0027】
条件(1):0.7≦[Al]≦2.7、0.2≦[Si]≦1.0、0.2≦[Mn]≦1.7、{[Al]+[Mn]}≦2.0、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、230≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,000
【0028】
条件(2):1.0≦[Al]≦3.0、0.5≦[Si]≦2.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
【0029】
条件(3):1.0≦[Al]≦3.0、2.3≦[Si]≦3.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
【0030】
上記[Al]、[Si]、[Mn]、[N]及び[S]はそれぞれAl、Si、Mn、N及びSの含量(重量%)を意味する。
【0031】
上記の知見と共に、本発明は、製鋼段階で溶鋼に0.3〜0.5%のAlを先ず添加して脱酸が行われるようにした後、残余合金元素を投入し、残余合金元素の投入後に溶鋼の温度を1500〜1600℃に維持して上記の条件(1)、条件(2)及び条件(3)の少なくとも一つを満足する成分組成を有するスラブを製造し、スラブを1100〜1250℃の温度で加熱した後、熱間圧延するが、熱間仕上げ圧延を800℃以上の温度で行い、冷間圧延した後、冷間圧延された冷延板を750〜1100℃の温度で最終焼鈍することにより、磁性・加工性ともに優れた無方向性電気鋼板を製造することにもその特徴がある。
【0032】
鋼の合金元素であるAl、Si及びMnについて説明すると、これらの合金元素は電気鋼板の鉄損を低めるために添加される元素であるが、その添加される含量が増加するにつれて、磁束密度が減少し材料の加工性には劣位となるので、このような合金成分を適切に設定して鉄損及び磁束密度を改善させ、硬度も適正水準以下に維持させる必要がある。
【0033】
しかも、AlとMnは不純物元素N及びSと結合して窒化物や硫化物などの介在物を形成する。このような介在物は、磁性に大きい影響を及ぼすので、磁性の劣化を最小化する介在物の形成頻度を高めなければならない必要性がある。
【0034】
本発明者らは、Al、Mn、Si、N及びSの含量が特定の条件を満足するように含有される場合において、窒化物や硫化物などが複合されてなる巨大な複合介在物が形成されることを最初に発見した。このような複合介在物の分布密度を一定の水準以上に確保することにより加工性を劣化させる合金元素を最小量のみで含有させるにも拘らず、磁性が著しく向上するという事実に着目し、本発明に至った。
【0035】
まず、本発明を構成する成分元素の範囲とその成分元素間の含量比率を限定した理由について説明する。
【0036】
[Al:0.7〜3.0重量%]
Alは、材料の比抵抗を高めて鉄損を低め、窒化物を形成する役目を果たすために添加され、粗大な窒化物が形成できるように0.7〜3.0%で含有される。Alが0.7%未満で含有されると、介在物を充分に成長させることができず、3.0%超過で含有されると、加工性が劣化し、製鋼や連続鋳造などの全ての工程上に問題を生じさせて通常の工程では生産することができなくなる。
【0037】
[Si:0.2〜3.5重量%]
Siは、材料の比抵抗を高めて鉄損を低める役目を果たし、0.2%未満で含有されると、鉄損低減効果を期待することが難しく、3.5%超過で含有されると、材料の硬度上昇により生産性及び打抜性に劣位となる。
【0038】
[Mn:0.2〜2.0重量%]
Mnは、材料の比抵抗を高めて鉄損を改善し、硫化物を形成させる役目を果たすので、0.2%以上で含有し、2.0%超過であれば、磁性に不利な[111]集合組織の形成を助長するので、Mnの含量は0.5〜2.0%に制限することが好ましい。
【0039】
[Sn:0.2重量%以下]
Snは、表面及び結晶粒界に優先的に偏析し、熱間圧延と冷間圧延の際に蓄積変形エネルギーを減らして磁性に有利な{100}方位の強度を増加させる一方、磁性に不利な{111}方位の強度を減少させて集合組織を改善するため、0.2%以下の範囲で添加される。また、Snは、溶接中に表面に先ず形成されて表面酸化を抑制させ、溶接部の特性を強化させて連続ラインの生産性を向上させ、熱処理中に表面又は表面下層部にAl系酸化物及び窒化物の形成を抑制させて磁性を向上させ、客先の打抜の際に表面下層部の窒化物による硬度上昇を抑制して打抜性を良好にする。
【0040】
したがって、Snは0.005%以上添加することが好ましい。逆に、Snが0.2%超過で添加されると、追加投入分による磁性向上の効果が微々たるものであり、表面及び結晶粒界に先ず偏析する効果より鋼中に微細な介在物と析出物を形成して磁性を悪化させる影響が大きくなる。また、冷間圧延性と打抜性が悪くなり、溶接部特性を示すエリクセン値が5mm以下となって同種間溶接が不可能であり、連続ライン作業のためにはSiとAl含量の合計量が2未満の低級材を連結材として使用しなければならないという問題が伴う。よって、Snは0.005〜0.2%の範囲で添加されることが好ましい。
【0041】
[Sb:0.1重量%以下]
Sbは、表面及び結晶粒界に優先的に偏析し、熱間圧延と冷間圧延の際に蓄積変形エネルギーを減らして磁性に有利な{100}方位の強度を増加させる一方、磁性に不利な{111}方位の強度を減少させて集合組織を改善するため、0.1%以下の範囲で添加される。また、Sbは、溶接中に表面に先ず形成されて表面酸化を抑制させ、溶接部の特性を強化させて連続ラインの生産性を向上させ、熱処理中に表面又は表面下層部にAl系酸化物及び窒化物の形成を抑制させて磁性を向上させ、客先の打抜の際に表面下層部の窒化物による硬度上昇を抑制して打抜性を良好にする。
【0042】
よって、Sbは0.005%以上添加することが好ましい。逆に、Sbが0.1%超過で添加されると、追加投入分による磁性向上の効果が微々たるものであり、表面及び結晶粒界に優先的に偏析する効果より鋼中に微細な介在物と析出物を形成して磁性を悪化させる影響が大きくなる。また、冷間圧延性と打抜性が悪くなり、溶接部の特性を示すエリクセン値が5mm以下となって同種間の溶接が不可能であり、連続ライン作業のためにはSiとAl含量の合計量が2未満の低級材を連結材として使用しなければならないという問題が伴う。よって、Sbは0.005〜0.1%の範囲で添加されることが好ましい。
【0043】
[P:0.2重量%以下]
Pは、0.2%以下で添加されると、磁性に有利な集合組織を形成し、面内異方性を改善し、加工性を向上させる。但し、0.2%超過で添加されると、冷間圧延性を低下させ、加工性が悪くなるので、0.2%以下に限定する。
【0044】
[N:0.001〜0.004重量%]
Nは、不純物元素であって、製造工程中に微細な窒化物を形成して結晶粒の成長を抑制することにより鉄損を劣位にする。よって、窒化物の形成を抑制させなければならないが、このためにはさらに多くの費用と工程時間を必要として非経済的なので、後述するように不純物元素Nとの親和力が大きい元素を積極的に用いて介在物を粗大に成長させ、結晶物の成長に及ぼす影響を減らす方法がより好ましい。このように介在物を粗大に成長させるためには、Nを0.001〜0.004%の範囲で制御することが必須である。Nが0.004%超過であれば、介在物が粗大化せず鉄損が増加し、より好ましくは、Nは0.003%以下で含有されるようにする。
【0045】
[S:0.0005〜0.004重量%]
Sは、不純物元素であって、製造工程中に微細な硫化物を形成して結晶粒の成長を抑制することにより鉄損を劣位にする。よって、硫化物の形成を抑制させなければならないが、このためにはさらに多くの費用と工程時間を必要として非経済的なので、後述するように不純物元素Sとの親和力が大きい元素を積極的に用いて介在物を粗大に成長させ、結晶物の成長に及ぼす影響を減らす方法がより好ましい。このように介在物を粗大に成長させるためには、Sを0.0005〜0.004%の範囲で制御することが必須である。Sが0.004%超過であれば、介在物が粗大化せず鉄損が増加し、より好ましくは、Sは0.003%以下で含有されるようにする。
【0046】
上記不純物元素の他にも、C、Tiなどのその他の不可避的不純物が含まれてもよい。Cは、磁気時効を起こすので、0.004%以下、好ましくは0.003%以下に制限することがよい。Tiは、無方向性電気鋼板において好ましくない結晶方位[111]集合組織の成長を促進するので、0.004%以下、より好ましくは0.002%以下に制限することがよい。
【0047】
上記条件(1)を満足する無方向性電気鋼板におけるAlとMn含量(重量%)の合計量([Al]+[Mn])は2.0%以下に限定されるが、これは0.7〜2.7%のAlと0.2〜1.0%のSiと0.2〜1.7%のMnを含有した鋼におけるAlとMnの合計量が2.0%を超過すると、磁性に不利な[111]集合組織の分率が増加して磁性に劣位となるためである。条件(1)を満足する無方向性電気鋼板の場合、AlとMnの合計量が0.9%未満になると、窒化物、硫化物、或いはこれら2種の複合介在物が粗大に形成されないため磁性に劣位となるが、条件(1)を満足する無方向性電気鋼板において、Alは0.7%以上、Mnは0.2%以上で含有され、AlとMn含量の合計量は0.9%以上になるので、磁性の劣化が防止される。
【0048】
上記条件(2)或いは条件(3)を満足する無方向性電気鋼板におけるAlとMn含量(重量%)の合計量([Al]+[Mn])は3.5%以下に限定されるが、これは1.0〜3.0%のAlと0.5〜3.5%のSiと0.5〜2.0%のMnを含有した鋼におけるAlとMnの合計量が3.5%を超過すると、磁性に不利な[111]集合組織の分率が増加して磁性に劣位となるためである。条件(2)或いは条件(3)を満足する無方向性電気鋼板の場合、AlとMnの合計量が1.5%未満になると、窒化物、硫化物、或いはこれら2種の複合介在物が粗大に形成されないため磁性に劣位となるが、条件(2)或いは条件(3)を満足する無方向性電気鋼板において、Alは1.0%以上、Mnは0.5%以上で含有され、AlとMn含量の合計量は1.5%以上になるので、磁性の劣化が防止される。
【0049】
本発明において、NとS含量の合計量([N]+[S])は0.002〜0.006%に限定されるが、これはこの範囲で介在物が粗大に成長するためである。NとSの合計量が0.006%を超過すると、微細な介在物の分率が増加して磁性が劣化する。
【0050】
また、本発明では、NとS含量(重量%)の合計量([N]+[S])に対するAlとMn含量(重量%)の合計量([Al]+[Mn])の比が重要な要素である。
【0051】
本発明者らの研究によれば、窒化物と硫化物が複合された300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度を0.02個/mm以上に高めるためには([Al]+[Mn])/([N]+[S])を適切に調節しなければならず、Si、Al及びMnの含量に基づいて([Al]+[Mn])/([N]+[S])の適正範囲を異ならしめて設定しなければならないと調査された。
【0052】
まず、上記条件(1)でのように、Al、Si及びMnの含量が多少低く与えられる成分系では、([Al]+[Mn])/([N]+[S])が230〜1000の多少低い範囲を有することが複合介在物の形成頻度を高めるのに有効であると調査された。この範囲内では介在物が粗大化して巨大な複合介在物の分布密度が増加することにより鉄損が向上するが、この範囲から外れると、介在物が粗大化せず、巨大な複合介在物の形成頻度が低く、磁性に不利な集合組織が形成される。
【0053】
これとは異なり、Al、Si及びMnの含量が上記条件(2)或いは条件(3)でのように与えられる成分系では、([Al]+[Mn])/([N]+[S])が300〜1400の範囲を有することが複合介在物の形成頻度を高めるのに有効であると調査された。すなわち、条件(2)或いは条件(3)の成分系では、([Al]+[Mn])/([N]+[S])が300〜1400を満足する範囲内で介在物が粗大化して巨大な複合介在物の分布密度が増加し、この範囲から外れると、介在物が粗大化せず巨大な複合介在物の形成頻度が低く、磁性に不利な集合組織が形成される。
【0054】
図1は本発明の無方向性電気鋼板に存在する複合介在物を示す図である。Al、Mn、NおよびSの含量が最適に管理される範囲で、介在物は通常材と比較して数倍以上成長して300nm以上の平均サイズを有する粗大な複合介在物の形成頻度が高くなり、その結果約50nm程度の平均サイズを有する微細な介在物が減少して磁性が改善される。本発明者らの研究によれば、図1に示すような巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mm以上の場合、無方向性電気鋼板の磁性が著しく向上するものと調査された。
【0055】
このように粗大な複合介在物が形成される正確なメカニズムは未だ解明されていないが、製鋼段階で行われるものと推定され、製鋼段階で初期Alの投入の際に脱酸作用によってAl系酸化物と窒化物が形成され、追加的なAl及びMnなどの合金元素の添加とバブリングの際に、本発明で解明したAl、Mn、Si、N及びSの成分比率を満足する成分系では、Al系酸化物/窒化物が成長し、これと同時にMn系硫化物がその上に析出することに起因するものと思われる。
【0056】
図2は0.5〜2.5%のSiを含有する無方向性電気鋼板において[N]+[S]を横軸、[Al]+[Mn]を縦軸として、平均サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mm以上であるか否かを基準として区分して示すグラフである。
【0057】
図2に示すように、上記条件(2)、すなわちAlとMn含量(重量%)の合計量[Al]+[Mn]が3.5%以下であり、NとS含量(重量%)の合計量[N]+[S]が0.002〜0.006であると同時に、NとS含量の合計量に対するAlとMn含量の合計量の比率([Al]+[Mn])/([N]+[S])が300〜1400を満足する本発明の範囲(太い線の内部)では、介在物が粗大化し、平均サイズが300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mmより高くて磁性に優れるが、本発明から外れる範囲(太い線の外部)では、粗大な介在物が形成されず、平気サイズが300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mmより低く、集合組織が劣位であって磁性が低下する。
【0058】
図3は0.2〜1.0%のSiを含有する無方向性電気鋼板において[N]+[S]を横軸、[Al]+[Mn]を縦軸として、平均サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mm以上であるか否かを基準として区分して示すグラフである。
【0059】
図3に示すように、上記条件(1)、すなわちAlとMn含量(重量%)の合計量[Al]+[Mn]が2.0%以下であり、NとS含量(重量%)の合計量[N]+[S]が0.002〜0.006であると同時に、NとS含量の合計量に対するAlとMn量の合計量の比率([Al]+[Mn])/([N]+[S])が230〜1000を満足する本発明の範囲(太い線の内部)では、介在物が粗大化し、平均サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mmより高くて磁性に優れるが、本発明から外れる範囲(太い線の外部)では、粗大な介在物が形成されず、平均サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mmより低く、集合組織が劣位であって磁性が低下する。
【0060】
図4は2.3〜3.5%のSiを含有する無方向性電気鋼板において[N]+[S]を横軸、[Al]+[Mn]を縦軸として、平均サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mm以上であるか否かを基準として区分して示すグラフである。
【0061】
図4に示すように、上記条件(3)、すなわちAlとMn含量(重量%)の合計量[Al]+[Mn]が3.5%以下であり、NとS含量(重量%)の合計量[N]+[S]が0.002〜0.006であると同時に、NとS含量の合計量に対するAlとMn含量の合計量の比率([Al]+[Mn])/([N]+[S])が300〜1400を満足する本発明の範囲(太い線の内部)では、介在物が粗大化し、平気サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mmより高くて磁性に優れるが、本発明から外れる範囲(太い線の外部)では、粗大な介在物が形成されず、平均サイズ300nm以上の巨大な複合介在物の分布密度が0.02個/mmより低く、集合組織が劣位であって磁性が低下する。
【0062】
粗大な介在物は、主に窒化物と硫化物が複合されて300nm以上の平均サイズを有するものと観察されたが、多数の窒化物又は硫化物が複合されて300nm以上の平均サイズを有することもこれに含まれ、窒化物又は硫化物が単独で使用されて300nm以上に成長したこともこれに含まれ得る。ここで、介在物の平均サイズは、鋼板断面における介在物の最長長さと最短長さを測定し、これを平均して求めた値にした。
【0063】
また、上記の条件(2)を満足する本発明の無方向性電気鋼板におけるSi含量に対するAl含量の比率([Al]/[Si])は0.6〜4.0に限定されるが、これはSi含量に対するAl含量の比率が0.6〜4.0の場合、結晶粒の成長性に優れるうえ、材料の硬度が低くなって生産性及び打抜性が向上するためである。[Al]/[Si]が0.6未満では、介在物が大きく成長しないため結晶粒の成長性が悪くなって磁性に劣位となり、Siの含量が増加して硬度が上昇する。[Al]/[Si]が4.0超過であれば、材料の集合組織が悪くなって磁束密度が劣位になる。
【0064】
本発明において、Mn含量に対するAl含量の比率[Al]/[Mn]は1〜8に限定することが好ましい。これは、Mn含量に対するAl含量の比率が1〜8の場合には介在物の成長性に優れて鉄損特性に優れるが、この範囲から外れる場合には介在物の成長性が低下し、磁性に有利な集合組織の分率が減少するためである。
【0065】
次に、比抵抗に関連する合金成分の比率限定について説明する。最近、環境にやさしい自動車の需要が急激に増加するにつれて、高速で回転可能なモーターに使用できる無方向性電気鋼板の需要も増加しつつある。このような環境にやさしい自動車に使用されるモーターは回転数を大きく増加させなければならないが、モーターの回転数が増加すると、内部鉄心における損失のうち渦電流損失の分率が急激に増加するので、この渦電流損失を減らすために比抵抗を増やさなければならない。
【0066】
無方向性電気鋼板の合金元素の含量と固有抵抗との関係は次の実験式で表される。
【0067】
ρ=13.25+11.3([Al]+[Si]+[Mn]/2)(ρ:固有抵抗、Ω・m)
【0068】
上記条件(3)を満足する本発明では、47以上の比抵抗を確保することができるように[Al]+[Si]+[Mn]/2を3.0以上に限定する。
【0069】
しかも、最近、冷延技術の発展にも拘らず、比抵抗(固有抵抗)が87を超過する場合、合金元素の含量が増加して加工性が不良になり、通常の冷間圧延では生産が不可能なので、比抵抗は87以下となるようにする。
【0070】
したがって、条件(3)を満足する本発明では、47〜87(Ω・m)の比抵抗と225以下水準のビッカース硬度(Hvl)を[Al]+[Si]+[Mn]/2を3.0〜6.5%に管理する。
【0071】
上記条件(2)を満足する本発明では、32以上の比抵抗を確保することができるように[Al]+[Si]+[Mn]/2を1.7以上に限定する。しかも、条件(2)を満足する本発明では、比抵抗(固有抵抗)を75以下の水準に維持して190以下のビッカース硬度(Hv1)を有するように[Al]+[Si]+[Mn]/2を5.5%以下に管理する。
【0072】
また、最近、モーターで高効率達成のための高磁束密度製品に対する需要が急激に増加しており、これにより比抵抗を低めて磁束密度を向上させた無方向性電気鋼板に対する需要が増加している。このように磁束密度特性が重要視される場合には、比抵抗(固有抵抗)を36以下に低めて磁束密度を高めなければならないとともに、高速回転にも対応するために比抵抗を少なくとも25以上に管理しなければならない。
【0073】
したがって、条件(1)を満足する本発明では、25〜36(Ω・m)の比抵抗と140以下水準の非常に低いビッカース硬度(Hv1)を有するように[Al]+[Si]+[Mn]/2を1.0〜2.0%に管理する。
【0074】
以下、本発明に係る無方向性電気鋼板の製造方法について説明する。本発明に係る無方向性電気鋼板の製造方法は、まず、製鋼段階で全体Alの投入量のうち0.3〜0.5%を先に添加し、鋼中の脱酸が充分に起こるようにした後、残余合金元素を投入することが好ましい。合金元素の投入後には溶鋼の温度を1500〜1600℃に維持させて鋼中の介在物が充分に成長するようにして製造した後、これを連続鋳造工程で凝固させてスラブを製造する。
【0075】
次いで、スラブを加熱炉に装入して1100℃以上1250℃以下の温度で再加熱する。スラブを1250℃超過の温度で加熱すると、磁性を害する析出物が再溶解して熱間圧延の後に微細に析出できるので、1250℃以下の温度でスラブを加熱する。
【0076】
スラブが加熱されると、次いで熱間圧延を行う。熱間圧延の際に熱間仕上げ圧延は800℃以上の温度で行うことが好ましい。熱間圧延された熱延板は850〜1100℃の温度で熱延板焼鈍する。熱延板焼鈍温度が850℃未満であれば、組織が成長しないか微細に成長して磁束密度の上昇効果が少なく、熱延板焼鈍温度が1100℃超過であれば、磁気特性が却って劣化し、板状の変形により圧延作業性が悪くなるおそれがあるので、その温度範囲は850〜1100℃に制限する。より好ましい熱延板の焼鈍温度は950〜1100℃である。熱延板焼鈍は、必要に応じて、磁性に有利な結晶方位を増加させるために行われるものであるが、省略してもよい。
【0077】
前述したように熱延板焼鈍を行い或いは省略し、次いで熱延板を酸洗した後、70〜95%の圧下率で冷間圧延して所定の板厚に形成する。
【0078】
本発明は、冷間圧延性に影響を及ぼすSi、Mn、Al合金元素の添加量が適切に調節されて冷間圧延性に優れるので、高い圧下率の適用が可能である。よって、1回の冷間圧延のみで厚さ0.15mm程度の薄板に製造可能である。冷間圧延の際に、必要に応じて中間焼鈍を含む2回の冷間圧延を行うか、2回の焼鈍を適用する方法も可能である。
【0079】
冷間圧延された冷延板は最終焼鈍を行う。最終焼鈍温度が750℃未満であれば、再結晶が充分に発生せず、最終焼鈍温度が1100℃超過であれば、表層部の酸化層が深く形成されて磁性が低下するので、最終焼鈍は750〜1100℃の温度で行うことが好ましい。
【0080】
最終焼鈍された鋼板は、通常の方法による絶縁被膜処理の後に客先へ出荷される。絶縁被膜コートの際に通常のコーティング材の適用が可能であり、クロム系(Cr−type)又は無クロム系(Cr−free type)のいずれも制限なく使用可能である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。これらの実施例において、特に断らない限り、成分含量は重量%で示す。
【0082】
[実施例1]
実験室で真空溶解し、下記表1に示す成分の鋼塊を製造した。素材の不純物C、S、N及びTiの含有量はそれぞれ0.002%に制御し、溶鋼にAlを0.3〜0.5%添加して介在物の形成を助長した後、残りのAlとSi、Mnを投入して鋼塊を製造した。各素材は1150℃で加熱し、850℃で熱間仕上げ圧延して板厚2.0mmの熱延板を製作した。熱間圧延された熱延板は1050℃で4分間焼鈍した後、酸洗した。その後、冷間圧延して板厚を0.35mmにした後、1050℃で38秒間最終焼鈍を行った。
【0083】
それぞれに対する介在物のサイズ、介在物の分布密度、鉄損、磁束密度及び硬度を測定し、結果を下記表2に示す。介在物の観察のためのサンプル製作は鉄鋼材料における一般的な方法としてのレプリカ法を用い、装置としては透過電子顕微鏡を使用した。この際、加速電圧は200kVを印加した。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
表2に示すように、鋼種A3、A5、A6、A9、A10、A12及びA14は、条件(2)を満足する発明例であって、サイズ300nm以上の粗大な複合介在物が観察されており、その分布密度が0.02(1/mm)より高くて磁性に優れたううえ、ビッカース硬度(Hvl)が190以下と低くて生産性及び客先の打抜性に優れた。
【0087】
これに対し、鋼種A1は、Al/Siの比率とAl+Mnが本発明の条件(2)を満足しないため、サイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種A2及びA15は、Al/Siの比率が本発明の条件(2)を満足しないため、サイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種A4、A8、A11及びA13は、Al+Mnが本発明の条件(2)を満足しないため、サイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種A7は、Al/Siの比率とAl/Mnの比率が本発明の条件(2)を満足しないため、サイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。
【0088】
[実施例2]
実験室で真空溶解し、下記表3に示す成分の鋼塊を製造した。素材の不純物N、Sの含量を多様にしながら成分を調節した。溶鋼にAlを0.3〜0.5%添加して介在物の形成を助長した後、残りのAlとSi、Mnを投入して鋼塊を製造した。各素材は1150℃で加熱し、850℃で熱間仕上げ圧延して板厚2.0mmの熱延板を製作した。熱間圧延された熱延板は1050℃で4分間焼鈍した後、酸洗した。その後、冷間圧延して板厚を0.35mmにした後、1050℃で38秒間最終焼鈍を行った。
【0089】
それぞれに対する介在物のサイズ、介在物の分布密度、鉄損、磁束密度及び硬度を測定し、結果を下記表4に示す。介在物の観察のためのサンプル製作は鉄鋼材料における一般的な方法としてのレプリカ法を用い、装置としては透過電子顕微鏡を使用した。この際、加速電圧は200kVを印加した。
【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
上記表4に示すように、鋼種B1、B4、B5、B7、B9、B10、B13及びB14は、条件(2)を満足する発明例であって、サイズ300nm以上の粗大な介在物が観察されており、その分布密度が0.02(1/mm)より高くて磁性に優れたうえ、硬度が低くて生産性及び客先の打抜性に優れた。
【0093】
これに対し、鋼種B3、B6、B11及びB15は、N+Sが本発明の条件(2)から外れてサイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種B8は、Al+Mnが本発明の条件(2)から外れ、鋼種B2及びB12は、(Al+Mn)/(N+S)が本発明の条件(2)から外れてサイズ300nm以上の粗大な介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。
【0094】
[実施例3]
実験室で真空溶解し、下記表5に示す成分の鋼塊を製造した。この際、溶鋼にAlを0.3〜0.5%添加して介在物の形成を助長した後、残りのAlとSi、Mn及びPを投入して鋼塊を製造した。各素材は1150℃で加熱し、850℃で熱間仕上げ圧延して板厚2.0mmの熱延板を製作した。熱間圧延された熱延板は1050℃で4分間焼鈍した後、酸洗した。その後、冷間圧延して0.15〜0.35mmの様々な板厚にした後、1050℃で38秒間最終焼鈍を行った。それぞれの板厚に対して鉄損と磁束密度を測定し、結果を下記表6に示す。介在物の観察のためのサンプル製作は鉄鋼材料における一般的な方法としてのレプリカ法を用い、装置としては透過電子顕微鏡を使用した。この際、加速電圧は200kVを印加した。
【0095】
【表5】

【0096】
【表6】

【0097】
上記表6に示すように、鋼種C2〜C7は、条件(2)を満足する発明例であって、磁束密度が高く、鉄損は低い。これは本発明の成分系において介在物が粗大に成長し、粗大な複合介在物の分布密度が0.02(1/mm)より高く形成され、集合組織が安定化されるためであると思われる。高周波鉄損(W10/400)は鋼板厚さとの相関度が明確であって厚さが薄くなるにつれて特性が向上し、0.35mm厚さと比較して厚さ0.15mmの鋼板は鉄損が50%近く改善される。鋼種C1は、Al+MnとAl/Siが本発明の条件(2)を満足しないため、鉄損(W10/400)と磁束密度(B50)が劣位であった。
【0098】
[実施例4]
実験室で真空溶解し、下記表7に示す成分の鋼塊を製造した。この際、溶塊にAlを0.3〜0.5%添加して介在物の形成を助長した後、残りのAlとSi、Mn及びPを投入して鋼塊を製造した。各素材は1150℃で加熱し、850℃で熱間仕上げ圧延して板厚2.0mmの熱延板を製作した。熱間圧延された熱延板は1050℃で4分間焼鈍した後、酸洗した。その後、冷間圧延して板厚さを0.35mmにした後、1050℃で38秒間最終焼鈍を行った。
【0099】
それぞれに対する介在物のサイズ、介在物の分布密度、鉄損、磁束密度、エリクセン値及び硬度を測定し、結果を下記表8に示す。介在物の観察のためのサンプル製作は鉄鋼材料における一般的な方法としてのレプリカ法を用い、装置としては透過電子顕微鏡を使用した。この際、加速電圧は200kVを印加した。
【0100】
エリクセン値は、常温で熱延板溶接部を直径20mmの鋼球(steel ball)で押し上げて破断が発生する前までの高さを測定した値とした。通常、エリクセン値が5mm以上の場合、同種間を溶接して連続ラインの生産が可能である。
【0101】
【表7】

【0102】
【表8】

【0103】
上記表8に示すように、鋼種D2〜D6、D8〜D12、D14、D15及びD17は、条件(2)を満足し、0.005〜0.2%のSn或いは0.005〜0.1%のSbが添加された発明例であって、大きさ300nm以上の粗大な介在物の分布密度が0.02(1/mm)より高く、最終焼鈍の際に表面の酸化層及び窒化層が減少して鉄損と磁束密度が向上し、エリクセン値が高くビッカース硬度(Hv1)が低くて溶接生、生産性及び客先の打抜性に優れた。
【0104】
これに対し、鋼種D1は、Al/Siの比が本発明の条件(2)から外れてサイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。また、SnとSbが添加されないため、エリクセン値が低くて溶接性に劣り、硬度が高くて加工性が劣位であった。鋼種D7及びD18は、Sbが0.1%を超過し、鋼種D13及びD16は、Snが0.2%を超過してエリクセン値が低く、硬度が高くて溶接性に劣ったうえ、生産性及び打抜性が不良であり、磁性も劣位であった。
【0105】
[実施例5]
実験室で真空溶解し、下記表9に示す成分の鋼塊を製造した。この際、溶鋼にAlを0.3〜0.5%添加して介在物の形成を助長した後、残りのAlとSi及びMnを投入して鋼塊を製造した。各素材は1150℃で加熱し、850℃で熱間仕上げ圧延して板圧2.3mmの熱延板を製作した。熱間圧延された熱延板は1050℃で4分間焼鈍した後、酸洗した。その後、冷間圧延して板厚を0.50mmにした後、900℃で30秒間最終焼鈍を行った。
【0106】
それぞれに対する介在物のサイズ、介在物の分布密度、鉄損、磁束密度及び硬度を測定し、結果を下記表10に示す。介在物の観察のためのサンプル製作は鉄鋼材料における一般的な方法としてのレプリカ法を用い、装置としては透過電子顕微鏡を使用した。この際、加速電圧は200kVを印加した。
【0107】
【表9】

【0108】
【表10】

【0109】
上記表10に示すように、鋼種E1〜E3、E6、E10、E12、E13、E16、E20及びE21は、条件(1)を満足する発明例であって、サイズ300nm以上の粗大な介在物が観察されており、その分布密度が0.02(1/mm)より高くて磁性に優れたうえ、ビッカース硬度(Hvl)が140以下であって生産性及び客先の打抜性に優れた。
【0110】
これに対し、鋼種E4、E9及びE14は、Al/Mnの比とAl+Mn含量が本発明の条件(1)を満足しないため、サイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種E17及びE18は、Al+Mnが本発明の条件(1)を満足しないため、サイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種E19は、Al/Mnが本発明の条件(1)を満足しないため、サイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種E4、E5、E9及びE14は、Al+Si+Mn/2が本発明の条件(1)を満足しないため硬度が高く、これにより生産性及び打抜性が劣位であった。
【0111】
[実施例6]
実験室で真空溶解し、下記表11に示す成分の鋼塊を製造した。この際、溶鋼にAlを0.3〜0.5%添加して介在物の形成を助長した後、残りのAlとSi及びMnを投入して鋼塊を製造した。各素材は、1150℃で加熱し、850℃で熱間仕上げ圧延して板圧2.3mmの熱延板を製作した。熱間圧延された熱延板は1050℃で4分間焼鈍した後、酸洗した。その後、冷間圧延して板厚を0.50mmにした後、900℃で30秒間最終焼鈍を行った。
【0112】
それぞれに対する介在物のサイズ、介在物の分布密度、鉄損、磁束密度及び硬度を測定し、結果を下記表12に示す。介在物の観察のためのサンプル製作は鉄鋼材料における一般的な方法としてのレプリカ法を用い、装置としては透過電子顕微鏡を使用した。この際、加速電圧は200kVを印加した。
【0113】
【表11】

【0114】
【表12】

【0115】
上記表12に示すように、鋼種F1、F3、F4、F6、F8、F9、F11及びF12は、条件(1)を満足する発明例であって、サイズ300nm以上の粗大な介在物が観察されており、その分布密度が0.02(1/mm)より高くて磁性に優れたうえ、硬度が低くて生産性及び客先の打抜性に優れた。
【0116】
これに対し、鋼種F5、F10及びF13は、N+Sが本発明の条件(1)を満足しないためサイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種F7は、Al+Mnが本発明の条件(1)を満足しないためサイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。
【0117】
[実施例7]
実験室で真空溶解し、下記表13に示す成分の鋼塊を製造した。この際、溶鋼にAlを0.3〜0.5%添加して介在物の形成を助長した後、残りのAlとSi及びMnを投入して鋼塊を製造した。各素材は1150℃で加熱し、850℃で熱間仕上げ圧延して板圧2.0mmの熱延板を製作した。熱間圧延された熱延板は1050℃で4分間焼鈍した後、酸洗した。その後、冷間圧延して板厚を0.35mmにした後、1050℃で38秒間最終焼鈍を行った。
【0118】
それぞれに対する介在物のサイズ、介在物の分布密度、鉄損、磁束密度及び硬度を測定し、結果を下記表14に示す。介在物の観察のためのサンプル製作は鉄鋼材料における一般的な方法としてのレプリカ法を用い、装置としては透過電子顕微鏡を使用した。この際、加速電圧は200kVを印加した。
【0119】
【表13】

【0120】
【表14】

【0121】
上記表14に示すように、鋼種G3〜G6、G9、G10、G12、G14及びG15は、条件(3)を満足する発明例であって、サイズ300nm以上の粗大な介在物が観察されており、その分布密度が0.02(1/mm)より高くて磁性に優れ、ビッカース硬度(Hvl)が225以下と低かった。
【0122】
これに対し、鋼種G1、G8、G11及びG13は、Al+Mnが本発明の条件(3)を満足しないため、サイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種G2は、Al/Siの比が本発明の条件(3)を満足しないためサイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種G7は、Al/Si、Al/Mn、及びAl+Mn含量が本発明の条件(3)を満足しないためサイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種G8及びG11は、Al+Si+Mn/2が本発明の条件(3)を満足しないため硬度が高く、これにより生産性及び打抜性が劣位であった。
【0123】
[実施例8]
実験室で真空溶解し、下記表15に示す成分の鋼塊を製造した。この際、溶鋼にAlを0.3〜0.5%添加して介在物の形成を助長した後、残りのAlとSi及びMnを投入して鋼塊を製造した。各素材は1150℃で加熱し、850℃で熱間仕上げ圧延して板圧2.0mmの熱延板を製作した。熱間圧延された熱延板は1050℃で4分間焼鈍した後、酸洗した。その後、冷間圧延して板厚を0.35mmにした後、1050℃で38秒間最終焼鈍を行った。
【0124】
それぞれに対する介在物のサイズ、介在物の分布密度、鉄損、磁束密度及び硬度を測定し、結果を下記表16に示す。介在物の観察のためのサンプル製作は鉄鋼材料における一般的な方法としてのレプリカ法を用い、装置としては透過電子顕微鏡を使用した。この際、加速電圧は200kVを印加した。
【0125】
【表15】

【0126】
【表16】

【0127】
上記表16に示すように、鋼種H1、H3、H4、H6、H8、H9、H11及びH12は、条件(3)を満足する発明例であって、サイズ300nm以上の粗大な介在物が観察されており、その分布密度が0.02(1/mm)より高くて磁性に優れた。
【0128】
これに対し、鋼種H5、H10及びH13は、N+Sが本発明の条件(3)を満足しないためサイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種H7は、Al+Mnが本発明の条件(3)を満足しないためサイズ300m以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。鋼種H2、H5及びH13は、(Al+Mn)/(N+S)が本発明の条件(3)を満足しないためサイズ300nm以上の介在物が観察されておらず、鉄損と磁束密度が劣位であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Al:0.7〜3.0%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなり、下記の条件(1)、条件(2)及び条件(3)の少なくとも一つを満足する、磁性に優れた無方向性電気鋼板。
条件(1):0.7≦[Al]≦2.7、0.2≦[Si]≦1.0、0.2≦[Mn]≦1.7、{[Al]+[Mn]}≦2.0、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、230≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,000
条件(2):1.0≦[Al]≦3.0、0.5≦[Si]≦2.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
条件(3):1.0≦[Al]≦3.0、2.3≦[Si]≦3.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
(ここで、前記[Al]、[Si]、[Mn]、[N]及び[S]はそれぞれAl、Si、Mn、N及びSの含量(重量%)を意味する。)
【請求項2】
前記条件(1)を満足し、前記Al、Si及びMnの含量が下記の式(1)を満足する、請求項1に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
式(1):1.0≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦2.0
【請求項3】
前記Al及びMnの含量が下記の式(2)を満足する、請求項1に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
式(2):1≦[Al]/[Mn]≦8
【請求項4】
断面ビッカース硬度(Hv1)が140以下である、請求項2に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項5】
前記条件(2)を満足し、前記Al、Si及びMnの含量が下記の式(3)を満足する、請求項1に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
式(3):1.7≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦5.5
【請求項6】
前記条件(2)を満足し、前記Al及びSiの含量が下記の式(4)を満足する、請求項1に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
式(4):0.6≦[Al]/[Si]≦4.0
【請求項7】
断面ビッカース硬度(Hv1)が190以下である、請求項5に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項8】
前記条件(3)を満足し、前記Al、Si及びMnの含量が下記の式(5)を満足する、請求項1に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
式(5):3.0≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦6.5
【請求項9】
断面ビッカース硬度(Hv1)が225以下である、請求項8に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項10】
鋼板中に窒化物と硫化物を単独で或いは複合的に用いて介在物が形成され、平均サイズ300nm以上の介在物の分布密度は0.02個/mm以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項11】
さらに0.2%以下のPが含有される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項12】
鋼板中に窒化物と硫化物を単独で或いは複合的に用いて介在物が形成され、平均サイズ300nm以上の介在物の分布密度は0.02個/mm以上である、請求項11に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項13】
さらに0.005〜0.2%のSn及び0.005〜0.1%のSbの少なくとも1種が含有される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項14】
鋼板中に窒化物と硫化物を単独で或いは複合的に用いて介在物が形成され、平均サイズ300nm以上の介在物の分布密度は0.02個/mm以上である、請求項13に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項15】
重量%で、Al:0.7〜3.0%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなり、鋼板中に窒化物と硫化物を単独で或いは複合的に用いて介在物が形成され、平均サイズ300nm以上の介在物の分布密度が0.02個/mm以上である、磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項16】
さらに0.2%以下のPが含有される、請求項15に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項17】
さらに0.005〜0.2%のSn及び0.005〜0.1%のSbの少なくとも1種が含有される、請求項15又は16に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板。
【請求項18】
重量%で、Al:0.7〜3.0%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなり、下記の条件(1)、条件(2)及び条件(3)の少なくとも一つを満足するスラブを加熱して熱間圧延し、冷間圧延した後、750〜1100℃の温度で最終焼鈍する、磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
条件(1):0.7≦[Al]≦2.7、0.2≦[Si]≦1.0、0.2≦[Mn]≦1.7、{[Al]+[Mn]}≦2.0、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、230≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,000
条件(2):1.0≦[Al]≦3.0、0.5≦[Si]≦2.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
条件(3):1.0≦[Al]≦3.0、2.3≦[Si]≦3.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
(ここで、前記[Al]、[Si]、[Mn]、[N]及び[S]はそれぞれAl、Si、Mn、N及びSの含量(重量%)を意味する。)
【請求項19】
前記スラブは条件(1)を満足し、前記Al、Si及びMnの含量が下記の式(1)を満足する、請求項18に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
式(1):1.0≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦2.0
【請求項20】
前記Al及びMnの含量が下記の式(2)を満足する、請求項18に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
式(2):1≦[Al]/[Mn]≦8
【請求項21】
前記スラブは条件(2)を満足し、前記Al、Si及びMnの含量は下記の式(3)を満足する、請求項18に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
式(3):1.7≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦5.5
【請求項22】
前記スラブは前記条件(2)を満足し、前記Al及びSiの含量は下記の式(4)を満足する、請求項18に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
式(4):0.6≦[Al]/[Si]≦4.0
【請求項23】
前記スラブは条件(3)を満足し、前記Al、Si及びMnの含量は下記の式(5)を満足する、請求項18に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
式(5):3.0≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦6.5
【請求項24】
最終焼鈍された鋼板に窒化物と硫化物を単独で或いは複合的に用いて介在物が形成され、平均サイズ300nm以上の介在物の分布密度を0.02個/mm以上にする、請求項18〜23のいずれか一項に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項25】
0.3〜0.5%のAlを添加して脱酸が行われるようにした後、残余合金元素を投入し、残余合金元素の投入後に温度を1500〜1600℃に維持してスラブを製造する、請求項18〜23のいずれか一項に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項26】
熱間圧延の後、冷間圧延の前に熱延板焼鈍を行う、請求項18〜23のいずれか一項に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項27】
スラブにさらに0.2%以下のPが含有される、請求項18〜23のいずれか一項に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項28】
鋼板中に窒化物と硫化物を単独で或いは複合的に用いて介在物が形成され、平均サイズ300nm以上の分布密度を0.02個/mm以上にする、請求項27に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項29】
スラブにさらに0.005〜0.2%のSn及び0.005〜0.1%のSbの少なくとも1種が含有される、請求項18〜23のいずれか一項に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項30】
鋼板中に窒化物と硫化物を単独で或いは複合的に用いて介在物が形成され、平均サイズ300nm以上の分布密度を0.02個/mm以上にする、請求項29に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板の製造方法。
【請求項31】
重量%で、Al:0.7〜3.0%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなり、下記の条件(1)、条件(2)及び条件(3)の少なくとも一つを満足する、無方向性電気鋼板スラブ。
条件(1):0.7≦[Al]≦2.7、0.2≦[Si]≦1.0、0.2≦[Mn]≦1.7、{[Al]+[Mn]}≦2.0、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、230≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,000
条件(2):1.0≦[Al]≦3.0、0.5≦[Si]≦2.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
条件(3):1.0≦[Al]≦3.0、2.3≦[Si]≦3.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
(ここで、前記[Al]、[Si]、[Mn]、[N]及び[S]はそれぞれAl、Si、Mn、N及びSの含量(重量%)を意味する。)
【請求項32】
前記条件(1)を満足し、前記Al、Si、Mnの含量が下記の式(1)を満足する、請求項31に記載の無方向性電気鋼板スラブ。
式(1):1.0≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦2.0
【請求項33】
前記Al及びMnの含量が下記の式(2)を満足する、請求項31に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板スラブ。
式(2):1≦[Al]/[Mn]≦8
【請求項34】
前記条件(2)を満足し、前記Al、Si及びMnの含量が下記の式(3)を満足する、請求項31に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板スラブ。
式(3):1.7≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦5.5
【請求項35】
前記条件(2)を満足し、前記Al及びSiの含量が下記の式(4)を満足する、請求項31に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板スラブ。
式(4):0.6≦[Al]/[Si]≦4.0
【請求項36】
条件(3)を満足し、前記Al、Si及びMnの含量が下記の式(5)を満足する、請求項31に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板スラブ。
式(5):3.0≦{[Al]+[Si]+[Mn]/2}≦6.5
【請求項37】
さらに0.2%以下のPが含有される、請求項31〜36のいずれか一項に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板スラブ。
【請求項38】
さらに0.005〜0.2%のSn及び0.005〜0.1%のSbの少なくとも1種が含有される、請求項31〜36のいずれか一項に記載の磁性に優れた無方向性電気鋼板スラブ。
【請求項39】
溶鋼に0.3〜0.5%のAlを添加して脱酸が行われるようにし、残余AlとSi及びMnを投入した後、温度を1500〜1600℃に維持させることにより、重量%で、Al:0.7〜3.0%、Si:0.2〜3.5%、Mn:0.2〜2.0%、N:0.001〜0.004%、S:0.0005〜0.004%を含有し、残部がFe及びその他の不可避的不純物からなり、下記の条件(1)、条件(2)及び条件(3)の少なくとも一つを満足する、無方向性電気鋼板スラブの製造方法。
条件(1):0.7≦[Al]≦2.7、0.2≦[Si]≦1.0、0.2≦[Mn]≦1.7、{[Al]+[Mn]}≦2.0、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、230≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,000
条件(2):1.0≦[Al]≦3.0、0.5≦[Si]≦2.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
条件(3):1.0≦[Al]≦3.0、2.3≦[Si]≦3.5、0.5≦[Mn]≦2.0、{[Al]+[Mn]}≦3.5、0.002≦{[N]+[S]}≦0.006、300≦{([Al]+[Mn])/([N]+[S])}≦1,400
(ここで、前記[Al]、[Si]、[Mn]、[N]及び[S]はそれぞれAl、Si、Mn、N及びSの含量(重量%)を意味する。)
【請求項40】
スラブにさらに0.2%以下のPが含有される、請求項39に記載の無方向性電気鋼板スラブの製造方法。
【請求項41】
スラブにさらに0.005〜0.2%のSn及び0.005〜0.1%のSbの少なくとも1種が含有される、請求項39又は40に記載の無方向性電気鋼板スラブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−515170(P2013−515170A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545866(P2012−545866)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009380
【国際公開番号】WO2011/081386
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(592000691)ポスコ (130)
【Fターム(参考)】