説明

磁性材料

数百MHzから数GHz領域のノイズ成分を減衰しうる高周波用磁性材料を提供することを目的とする。 Ba−Co−Fe−Me−Qe五元系又はBa−Co−Fe−Ae−Me−Qe六元系CoZ型六方晶系フェライト(但し、式中、Aeは、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種以上、MeはFe、Mn、Ni、Cu、Mg及びZnからなる群から選ばれる1種以上、QeはCr、Mn、Ni及びCoからなる群から選ばれる1種以上)を主成分とし、Z型六方晶系フェライト中のZ相結晶構造中のAe、Co、MeおよびQeの何れかの少なくとも一部が、材料の磁気モーメントのc軸に対する角度が90°に近づくようなサイトに選択的に配置されていることを特徴とする磁性材料で、それを用いてノイズ吸収素子が形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、数百MHzから数GHz領域のノイズ成分を減衰しうる磁性材料に係るもので、さらに詳しくは特に、コンピュータや携帯電話などの電子回路に用いられるインピーダンス素子および電波吸収タイルとして使用するに適した高周波用磁性材料に関するものである。
【背景技術】
マルチメディア時代の到来により、携帯電話などの小型で高性能な電子通信機器が日常生活で欠かせないものになってきたが、このような小型化、高性能化には集積技術の向上と回路内での信号の高速化が大きく貢献している。信号の周波数がGHz帯域に高まるにつれ、輻射される電磁ノイズも高周波化しており、ノイズが通信の品質に与える影響が懸念されている。
高周波ノイズを効率的に除去するためには、ノイズが発生する周波数領域で、より高い透磁率μを持つ材料を開発する必要がある。立方晶系のスピネル型フェライト(NiZnFe)は、数百MHzまでの周波数領域において高い透磁率を有するが、スヌークの限界則によってGHz領域では透磁率が急激に低下するため、GHz領域に発生する電磁波ノイズを効率よく吸収することができない。これに代わる材料として、BaMeFe2441(ここで、MeはMn2+、Fe2+、Co2+、Zn2+、Mg2+、Cu2+である。)で表される六方晶系Z型Baフェライトが注目されている。このフェライトは、式中MeがCoの場合(BaCoFe2441)にのみc面内に磁化容易軸を持ち、スピネル型フェライトに比べ大きな磁気異方性を持つため、数百MHzから数GHz帯域で比較的高い透磁率μを持つことが知られている(非特許文献1:J.Smit and H.P.J.Wiji:″Ferrites″,Philips Technical Library,Eindhoven,The Netherlands,(1959)175−300)。また、この種のCoZ型Baフェライトは結晶構造の近いW相、Y相に比べて透磁率が高く、GHz帯の電波吸収タイルやノイズ吸収素子として期待されているが、Z型フェライトを工業的に実用化するには、Z相の透磁率の向上および周波数特性の改善が必要であり、従来、Z型フェライトの化学式BaCoFe2141において、透磁率特性を向上させるためにCoの一部に他の2価陽イオン(Me)を選択、置換する方法(Ba−Co−Me−Fe:4元系)が一般的に試みられる(特許文献1:特許2794311号)。
他方、組成式(AO)(MeO)(Fe2−yにおいて、Feの一部を3価のAl、Mn、Cr、Gaなどで置換した六方晶のフェライトであるc軸以外の方向に磁気異方性を有するフェライトを主成分とする軟磁性フェライト粉末を得る方法が提供されている(特許文献2:特許第2717815号)。
【発明の開示】
(発明が解決しようとする技術的課題)
しかしながら,前者はたとえばCo2+の一部をZn2+やMg2+で置換した組成では、置換量の増加に伴い透磁率が増加するが、異方性磁界の低下により、限界周波数が低周波数側へ移行する問題があった。他方、後者では、高周波領域で高い透磁率を得ることができない等の問題があった。
(その解決方法)
本発明は、前記問題を解決するために、Z型組成(Z相:BaCoFe2441)でこれまでに試みられていた、Co2+を他の2価イオンで単独に置換するだけでなく、同時にFe3+を3価イオンで置換した、Ba−Co−Fe−Me−Qe五元系CoZ型組成、好ましくはさらにはBa2+に2価イオンの置換を組合せた、Ba−Co−Fe−Ae−Me−Qe六元系CoZ型六方晶系フェライト組成では、大気中に含まれる酸素濃度以上の酸素分圧雰囲気(Po>21.3kPa)で仮焼することにより、Co2+あるいは置換する2価イオン元素Me、3価イオン元素Qeの何れかの一部を、選択的に結晶構造中の原子サイトに配置するようにコントロールすることができ、それによって磁気モーメントのc軸に対する角度が90°に近づき所望の透磁率特性を得ることができることを見出した。
この異方性磁界および透磁率特性の変化は、結晶構造中の磁気モーメントのc軸に対する角度ψと、大きさによって説明することができる。CoZは室温付近での結晶磁気異方性定数が負の値を持つため、磁化容易方向は、ほぼc面(a軸およびc軸でなる面)内にある。ここで、磁気モーメントをc軸側(磁化困難方向)に回転させるとき働く異方性磁界をHθ、c面内(磁化容易方向)に回転させるときに働く異方性磁界をHψとすると、磁気モーメントの角度が90°に近づくほどHθが増加し、Hψが減少する。またこれらの大きさは、磁気モーメントの大きさに依存する。ここで初透磁率μ;低周波数域の透磁率(≒μ’,atf=100MHz)と飽和磁化Ms、異方性磁界Hψの関係は(1)式によって表される。

飽和磁化Msが増加し、Hψが減少、すなわち磁気モーメントの角度が90°に近づく程、μ’は増加する。また角度が90°に近づくとHψが増加するので、フェリ磁性共鳴周波数fとμの積は、飽和磁化および異方性磁界(Hψ、HΘ)の関係((2)式)から増加し、その結果、スピネル型フェライト(HΘ≒Hψ)に比べて透磁率特性が高周波数側へ増進する。
したがって、本発明で得る材料の、透磁率(μ’、μ″)の向上および周波数特性(f、f)の増進については、異方性磁界の変化、すなわち磁気モーメントの角度が、Co2+の一部をMe(Fe2+)で、Fe3+の一部をQe(Cr3+)で同時に置換することで、よりc面内に傾いたことによる効果が大きく影響していると考えられる。
すなわち、本発明は、Ba−Co−Fe−Me−Qe五元系又はBa−Co−Fe−Ae−Me−Qe六元系CoZ型六方晶系フェライト(但し、式中、Aeは、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種以上、MeはFe、Mn、Ni、Cu、Mg及びZnからなる群から選ばれる1種以上、QeはCr、Mn、Ni及びCoからなる群から選ばれる1種以上)を主成分とし、Z相結晶構造中のAe、Co、MeおよびQeの何れかの少なくとも一部が、材料の磁気モーメントのc軸に対する角度が90°に近づくようなサイトに選択的に配置されていることを特徴とする。
磁気モーメントの角度が、Co2+の一部をMe(Fe2+)で、Fe3+の一部をQe(Cr3+)で同時に置換することで、よりc面内に傾いたことによる効果が大きく影響しているからである。磁気モーメントの角度の変化は、結晶構造中の磁性イオン同士が、酸素イオンまたはBa(Ae)イオンを介して働く超交換相互作用の変化によるものと理解できる。
これを、Z型フェライトの(110)方向から眺めた結晶構造モデル(図4:図では、結晶構造全体を見やすくするために、酸素イオンを磁性イオンに対して小さくして示している)を見て説明すると、Z型フェライトの空間群はP63/mmcで表され、磁性原子のサイトは図の右側に示すように、Me−1からMe−10の10種類で区別することができる。ここではCoとFeは区別せずMeとして表記している。
表1の左側のカラムには、Me−1からMe−10のサイトと、これらのサイトにおける磁気モーメントの向きを上下の矢印(↑)で付記して示した。スピンの向きは、アップスピン(↑)とダウンスピン(↓)のみを考慮し、すべての磁気モーメントがc軸となす角度をψとした。すなわち、部分的に磁気モーメントが異なった角度をもつキャント構造はとらないと仮定した。なお、ワイコフレターは単位胞中に含まれる各サイトの数と同価点の種類を示している。

単位胞当たりの磁化は、上下のスピンの磁気モーメントの差が現れることになり、全てのサイトに5μのFeが占める場合、12(↑の数)×5μ=60μ(一組成当たり30μ)となる。CoZ組成では3μのCoの配置するサイトに依存し、磁化が増減する。すなわち下向きのサイト(Me−2、Me−3、Me−5、Me−7、Me−9)のいずれかに入ることによって、磁化は増加し、上向きのサイト(Me−1、Me−4、Me−6、Me−8)に入ることによって、磁化は減少する。したがって、CoZ組成における置換元素については以下の通りである。
Coとその置換元素Meについて
Z型結晶構造中のCoは磁気モーメントの容易磁化方向をc面内に維持するために必須であるが、先に述べたようにCoの大半を置換すると、異方性の低下から周波数特性が劣化する。また、Z相以外の相が顕著に生成し、Z型フェライトの透磁率を劣化させる。他方、置換無しの組成では、Z相がほぼ単相で生成する温度や酸素分圧の条件が限られており、Z相本来の透磁率を得ることはできない。
本発明者らは、Coの一部をFeで置換した組成で、好ましくは温度と酸素分圧を制御した条件で、Z相を容易にほぼ単相で得ることを見出した(下記表2参照:BaCo2−xFe24+x41において、xをFeとし、x量、温度、酸素分圧を変化させた例で、材料の透磁率が増加することを見出している)。
Coと置換するFeの価数は2価であり、磁化は4mBであるので、磁気特性を損なうことはないが、xが0.6モルを超えれば、他の相が生成し透磁率を劣化させる。置換元素が、たとえばMn2+(5mB)、Ni2+(2mB)、Cu(1mB)でも同様の効果が得られる。Zn2+(0mB)、Mg2+(0mB)は非磁性であるが、上記範囲であれば同様の効果が得ることができる。

Feの置換元素Qeについて:
Fe3+(5mB)の一部を他の3価の陽イオンで置換し、Fe3+の濃度を薄めることで、Fe3+−O−(Fe3+若しくはCo2+)間に作用する超交換相互作用を弱め、磁気モーメントを90°に近づけ、磁気異方性を増加することができる。Cr3+(3mB)で置換した組成の実施例を図18に示す。置換量の増加に伴い、μ’はより高周波数へと増進し、y=0.6では、f=400MHzとなった。置換量がy>1.0では、異相の増加により透磁率が低下する。μ″のピークも高周波数側へ増進するとともにピーク値が増加し、y=0.6では、f=900MHzとなることが判る。六方晶フェライトの自然共鳴周波数fは、異方性磁界Hθによって変化する。Hθは、磁気モーメントの角度によって変化し、その角度が90°に近づくほど増加する傾向がある。すなわち、Cr置換による周波数特性の増進の効果は、Hθの増加によるものであり、これは磁気モーメントの角度が90°に近づいたためと理解できる。
本実施例では、Cr3+を単独で置換した場合について示したが、これはFeと置換する事で得られる効果を明確にするためであり、本発明で請求する同時置換によって得られる透磁率向上の効果には、当然含まれる効果である。また本発明で請求する他の陽イオン(Mn3+:4mB、Ni3+:3mB、Co3+:4mB)についてもCr3+と磁気的特性に差が少ないため同様の効果が得られる。
Baの置換元素Aeについて:
Ba2+(0.135Å)の一部をイオン半径の近いCa2+(0.099Å)やSr2+(0.113Å)で置換することで、磁気モーメントを90°に近づけ、磁気異方性を増加することができる。図13にBa2+の半分をSr2+で置換し(z=1.5)、Co2+の一部をFe2+で置換し(x=0.2)、さらにFe3+の一部をCr3+で置換した組成(y=0.1)を1573K、101.3kPaで作製した材料の透磁率特性を示す。透磁率の実数部m’=23(100MHz)、m″(ピーク)=15(100MHz)が得られ、他方、Baの全量をSrで置換したものを同様に図13に示すが、透磁率は大幅に低下していることがわかる。この透磁率の変化は、置換量zを1.5以上とした場合に顕著に現れる。すなわち置換量zが1.5までは、Sr置換により(Co若しくはFe)−(Ba若しくはSr)−(Co若しくはFe)からなる超交換相互作用が変化し、磁気モーメントの角度が、よりc面の方向へ傾くことで磁気異方性が増加し、異方性磁界Hψが低下することで透磁率が増加するためである。一方、1.5を超えると、磁気モーメントがc面からc軸方向へ立ち上がり、磁気異方性が低下し、異方性磁界Hψが増加する。
また、磁気モーメントの角度の変化は、結晶構造中の磁性イオン同士が、酸素イオンまたはBa(Ae)イオンを介して働く超交換相互作用の変化によるものと理解できるが、この効果を確かめるために、中性子回折実験によって磁性イオンのサイト、および磁気モーメントの角度を検証した。そして、このZ型フェライトの磁気構造を反映するパラメータとしては、(0010)又は(0012)面の磁気散乱因子の強度で表すことが適当で、(106)面の強度を基準にした場合に、所定の強度より強く、かつ(101)面の強度が所定の強度より低い磁性材料が、透磁率が高く、また周波数特性に優れていることを見出した。
したがって、本発明は、Ba−Co−Fe−Me−Qe五元系又はBa−Co−Fe−Ae−Me−Qe六元系CoZ型六方晶系フェライト(但し、式中、Aeは、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種以上、MeはFe、Mn、Ni、Cu、Mg及びZnからなる群から選ばれる1種以上、QeはCr、Mn、Ni及びCoからなる群から選ばれる1種以上)を主成分とし、粉末中性子回折パターン(波長λ=1.8207Å)を、リートベルト法により磁気散乱因子を解析した結果において、(101)面の磁気散乱因子の大きさを1とした場合(0010)面の相対値が6.95以上、または(0012)面の相対値が5.05以上であることを特徴とする磁性材料を提供するものである。
図面に基づいて説明すると、図8は、中性子と磁性原子の相互作用により散乱する、磁気散乱強度の程度を、磁気モーメントの角度と大きさ、結晶面の関係で定性的に示している。磁気散乱強度は、磁気モーメントの結晶面へ投影した成分の大きさに比例するので、結晶面に配列する磁性原子の種類と分布、磁気モーメントの角度に大きく依存する。すなわち、材料の磁気構造の特徴を、散乱面の指数および磁気散乱因子の強度を参照することで、言い換えることが可能である。そこで、上記効果を中性子回折実験によって磁性イオンのサイト、および磁気モーメントの角度を中性子回折パターンをリートベルト解析することによって、決定した。粉末中性子回折パターン(波長λ=1.8207Å)を、リートベルト法により磁気散乱因子を解析した結果において、本発明では、c軸に対する磁気モーメントの角度が90°に近づき、(101)面の磁気散乱因子の大きさを1とした場合、(0010)面の相対値が6.95以上、または(0012)面の相対値が5.05以上であることを特徴とすることが判明した(表3)。

また、本発明によれば、500MHz〜3GHzの領域において良好なインピーダンス素子材料であるための、600MHzにおける初透磁率μ’が16以上であるものを得ることができる。
本発明で得られるCoZ型六方晶系Baフェライトは、式:BaCo2−xMeFe24Qe41又は式:Ba3−zAeCo2−xMeFe24−yQe41(但し、式中、AeはSr2+及びCa2+からなる群から選ばれる1種以上、MeはFe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+及びZn2+からなる群から選ばれる1種以上、QeはCr3+、Mn3+、Ni3+及びCo3+からなる群から選ばれる1種以上であって、x、y、zはモルで、0<x≦0.6、0<y≦1.0、0<z≦1.5である)で表わすことができ、Z相結晶構造中のAe、Co、MeおよびQeの何れかの少なくとも一部が、材料の磁気モーメントのc軸に対する角度が90°に近づくようなサイトに選択的に配置され、所定の磁気特性を得ることができるものである。
なお、本発明のZ相が発揮する磁気特性は上記結晶構造に由来するものであるが、Oは組成や製造方法などによって若干上下するため、必ずしも「41」でなくても良い。また、式中、x、y、zはモルで、0<x≦0.6、0<y≦1.0、0<z≦1.5であるのが好ましく、Feの置換元素Qe:Mn3+、Ni3+、Co3+の磁化はそれぞれ4μ、3μ、4μであり、Coが存在する限り、Cr3+(3μ)と同様の効果を得ることができ、その一部と置換することができる。Coは70%を残して、置換元素Me:Fe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+及びZn2+からなる群から選ばれる1種で置換されても透磁率の周波数特性において置換のないものに比して優れた効果を発揮することができる。また、Z相中にさらに同時にBaの一部を1.5モルを超えない範囲で、他の2価イオン(Sr2+、Ca2+)で置換した組成を組み合わせても同様の効果を得ることができる。上記置換元素の置換量の限定意義は次の通りである。
Ae:0<x≦0.6の理由
xを0より大きいとした理由は、Coの一部を置換することで、Z相がより安定して生成するからである。また、0.6以下とした理由は、Z相以外の相が顕著に生成し、透磁率が低下するためである。
Me:0<y≦1.0の理由
yを0より大きいとした理由は、Feの一部を置換することで、磁気モーメントの角度がより90°に近づき、異方性磁界Hθが増加するため透磁率がより高周波数側まで維持されるためである。1.0以下とした理由は、Z相以外の相が顕著に生成し、透磁率が低下するためである。
Qe:0<z≦1.5の理由
zを0より大きいとした理由は、Baの一部を置換することで、磁気モーメントの角度がより90°に近づき、異方性磁界Hθが増加するため透磁率がより高周波数側まで維持されるためである。また異方性磁界Hψが低下するため、透磁率が増加する。1.5以下とした理由は、Baを半分以上置換すると、磁気モーメントの角度がc面からc軸方向に立ち上がり、異方性磁界Hψが増加し、その結果透磁率が低下するためである。
上記Ba−Co−Fe−Me−Qe五元系フェライトの場合は、a)Ba2+酸化物またはその前駆物質、Co2+酸化物またはその前駆物質及びFe3+酸化物またはその前駆物質に、少なくともb)Co2+酸化物またはその前駆物質の一部に代え、Fe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+及びZn2+の酸化物またはその前駆物質からなる群から選ばれる1種以上と、c)Fe3+酸化物またはその前駆物質の一部に代え、Cr3+、Mn3+、Ni3+及びCo3+かの酸化物またはその前駆物質からなる群から選ばれる1種以上とを所望の化学量論量で配合し、酸素分圧21.3kPa以上の雰囲気で仮焼することにより、上記五元系CoZ型フェライトを得ることができる。ここで、各種酸化物の前駆物質とは、仮焼時に酸化物を形成するものをいい、各種元素の水酸化物、炭酸塩等を含む。
上記Ba−Co−Fe−Ae−Me−Qe六元系フェライトの場合は、更にd)Ba2+酸化物またはその前駆物質の一部に代え、Sr2+及びCa2+の酸化物またはその前駆物質からなる群から選ばれる1種以上を所望の化学量論量で配合し、酸素分圧21.3kPa以上の雰囲気で仮焼することにより、上記六元系CoZ型フェライトを得ることができる。
本件発明のフェライト焼結体を得るに当っては、Bi、SnO、及びSiOからなる群から選ばれる1種以上を焼結助剤として1wt%以下の範囲で添加することができる。
本件発明の仮焼は、大気圧以上の酸素分圧以上の雰囲気、好ましくは大気圧またはそれ以上の100%の酸素雰囲気で行なうのがよく、1350°以下の比較的低温度でZ相を形成することができるが、1200°以上で仮焼するのが好ましい。本発明方法では、仮焼粉末の70%以上がZ相を形成することを確認しており、Z相以外にW相およびY相を含むが全体としてZ相の磁性特性を阻害するものでない。
本発明方法で製造した仮焼粉は既にc面に磁気モーメントが配向される傾向にあるが、固定磁場中に置かれた金型を回転させることで磁気モーメントを回転軸に対して垂直に配向することにより結晶軸のc軸を、磁場方向に対してほぼ垂直に配向させ、焼結することによりCoZ型フェライト製品の磁気異方性を高めることができる。
したがって、本発明のCoZ型フェライトを用い、フェライトのc面をビーズのZ軸に対して垂直に配向させ、成形し、捲き線を施したノイズ吸収素子を形成することができる(図11参照)。また、シート状に成形し、印刷したコイルと一体成型し、焼結後、Ag外部電極を形成してなる積層型ノイズ吸収素子を形成することもできる(図12参照)し、c面を電磁波が入射される方向に対して垂直に配向、成形した電波吸収タイルを製造することができる。
本発明のフェライトは、有機バインダーである合成樹脂またはゴム等のバインダーと混合して、または無機バインダーである各種セラミックスと複合材料を形成して各種ノイズ吸収、電波吸収の目的に使用することができる。したがって、本発明は、BaCo2−xMeFe24−yQe41又は式:Ba3−zAeCo2−xMeFe24−yQe41(但し、式中、Aeは、Sr2+及びCa2+からなる群から選ばれる1種以上、MeはFe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+及びZn2+からなる群から選ばれる1種以上、QeはCr3+、Mn3+、Ni3+及びCo3+からなる群から選ばれる1種以上であって、x、y、zはモルで、0<x≦0.6、0<y≦1.0、0<z≦1.5である)を含む組成物を提供するものでもある。この組成物を塗料として用いて所望の箇所に電波吸収膜を、成形品として電波吸収シールド品を形成することができる。
(従来技術より有効な効果)
本発明によれば、Ba−Co−Fe−Me−Qe五元系又はBa−Co−Fe−Ae−Me−Qe六元系CoZ型六方晶系フェライト(但し、式中、Aeは、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種以上、MeはFe、Mn、Ni、Cu、Mg及びZnからなる群から選ばれる1種以上、QeはCr、Mn、Ni及びCoからなる群から選ばれる1種以上)を主成分とし、Z型六方晶系フェライト中のZ相結晶構造中のAe、Co、MeおよびQeの何れかの少なくとも一部が、材料の磁気モーメントのc軸に対する角度が90°に近づくようなサイトに選択的に配置されている磁性材料をえることができるので、それを用いて数百MHzから数GHz領域のノイズ成分を減衰しうる高周波用ノイズ吸収素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、各種フェライトの透磁率の周波数特性を示すグラフである。
図2は、各種フェライトの磁化容易方向及び困難軸方向の磁化曲線を示すグラフである。
図3は、本発明材料と比較材料の初磁化曲線を示すグラフである。
図4は、Z型フェライトの結晶構造モデルを示す模式図である。
図5は、CoZ型フェライト(21.3kPa)のリーベルト解析結果を示すグラフである。
図6は、CoZ型フェライト(101.3kPa)のリーベルト解析結果を示すグラフである。
図7は、Co1.8Fe23.6Cr0.6Z型フェライト(101.3kPa)のリーベルト解析結果を示すグラフである。
図8は、磁気散乱の機構を示す模式図である。
図9は、磁気散乱強度比を示すグラフである。
図10は、配向試料と無配向試料の透磁率特性の比較グラフである。
図11は、ビーズ型ノイズ吸収素子の概略斜視図である。
図12は、積層型ノイズ吸収素子の概略斜視図である。
図13は、材料特性を示す図である。
図14は、本発明と比較例の材料特性を示す図である。
図15は、コアに巻き線を10ターン施した際の周波数とインピーダンスを示す図である。
図16は、コアに巻き線を6ターン施した際の周波数とインピーダンスを示す図である。
図17は、コアに巻き線を4ターン施した際の周波数とインピーダンスを示す図である。
図18は、Fe3+をCr3+で置換した組成における置換量を透磁率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、具体例に基づいて具体的に説明する。
出発原料にCo、BaCo、Fe、CrをZ型の組成(Ba3−AeCo2−xMeFe24−yQe41)となるように秤量し、純水中でボールミルにより20時間混合した。これを酸素分圧Po=101.3kPa(100%酸素雰囲気)、1300°で仮焼成した。この仮焼粉にBiを0.25wt%焼結助剤として加えて純水中でボールミルにより1μm以下の粒径になるように粉砕した。脱水乾燥した粉末にバインダーを加えて成形し、再度Po=101.3kPa、1300°の温度で焼結することによって本発明による材料を得た。
透磁率特性の測定は、焼結体の試料を外形7mmψ、内径3mmψ、厚み3〜5mmに加工し、ネットワークアナライザを用いて同軸管法により行った。
本発明で得られるZ相の飽和磁化Msおよび異方性磁界(Hθ,Hψ)を評価した。試料は、固定磁場中に置かれた金型を、磁場印加方向に対し、垂直方向を軸に回転させることで、磁気モーメントを配向させ、結晶軸のc軸を磁場方向に対してほぼ垂直に配向し、プレス成形した。
他方、上記方法と同様に、出発原料Co、BaCo、Feを従来のZ相(BaCoFe2441)の組成となるように秤量し、純水中でボールミルにより20時間混合した。これを21.3kPaまたはPo=101.3kPa雰囲気で、1300°で仮焼成した。この仮焼粉を純水中でボールミルにより1μm以下の粒径になるように粉砕した。脱水乾燥した粉末にバインダーを加えて成形し、再度、21.3kPaまたはPo=101.3kPa雰囲気で、1300°の温度で焼結することによって比較材料を得た。
透磁率特性の測定
図1は実施例1で作製した試料の透磁率μの周波数特性を示している。図中、(a)は透磁率の実数部μ’を示し、(b)は虚数部μ″を示している。(a)において、×印および太実線はそれぞれ21.3kPaおよび101.3kPaで作製した比較材料(CoZ)の透磁率特性を示している。比較材料のμ’は、300MHz付近から低下し始めている(f)。100MHにおけるμ’の値を比較すると、それぞれ13(21.3kPa)および18(101.3kPa)となり、約30%増加している。
つぎにCo2+とFe3+の一部を他の2価、3価イオンで同時に置換した試料について説明する。試料作製の際の雰囲気は101.3kPaとした。
細実線はCo2+の一部をFe2+で置換した組成(x=0.2、y=0、z=0)で作製した試料の特性を示している。fは300MHz付近であり比較材料とほぼ変わらないが、μ’が18から20へと増加した。一方、Fe3+の一部をCr3+で置換した組成(△印:x=0、y=0.6、Z=0)では、透磁率の値に変化は見られないが、fが400MHz付近へ増進することが判る。さらにCo2+とFe2+、Fe3+とCr3+を同時に置換した組成(□印:x=0.2、y=0.6、z=0)では、μ’は21まで増加し、Co2+にFe2+を単独で置換した場合以上に増加すると共に、fは400MHz付近まで増進した。
(b)はμ″の周波数特性を示している。×印および太実線はμ’と同様に、それぞれ21.3kPaおよび101.3kPaで作製した従来材料(CoZ)の透磁率の虚数部μ″を示している。21.3kPaのμ″のピーク値7に対して、101.3kPaで作製した基準試料のμ″のピーク値は10まで増加した。このときピークの周波数fは750MHzである。
Co2+の一部をFe2+で置換した組成(細実線:x=0.2、y=0、z=0)では、μ″は11.5まで増加した。Fe3+の一部をCr3+で置換した組成(△印:x=0、y=0.6、z=0)では、μ″は11.5まで増加し、さらにfは900MHzまで増進した。さらにCo2+にFe2+、Fe3+にCr3+を同時に置換した組成(□印:x=0.2、y=0.6、z=0)では、μ″は14まで増加しさらにfは950MHzに増進した。
すなわち、Co2+の一部またはFe3+の一部を個々に2価および3価のイオンで置換する場合よりも、同時に置換し、かつ101.3kPaで仮焼することにより、μ’およびμ″の値は増加し、またμ’のfおよびμ″のfを高周波数側へ増進させる材料を得ることができた。
本発明で得られる試料の異方性磁界Hθ、Hψおよび飽和磁化Msを測定、評価した。測定に用いた試料は、上記仮焼した粉末をスラリー化し、固定磁場中に置かれた金型を、磁場印加方向に対し、垂直方向を軸に回転させることで、結晶軸のc軸を磁場方向に対して垂直に配向し、プレス成形した。配向した試料から円柱を切り出し、SQUIDで磁化容易方向と困難方向の磁化曲線を測定した。飽和磁化は磁化容易方向の磁化曲線から飽和漸近則により求めた。異方性磁界Hθは、磁化困難方向の磁化曲線を二次微分し、ピーク値から求めた。またHψはそれぞれの試料の100MHzにおける透磁率μ’と、Msの値を用いて(3)式の関係から求めた。

図2は図1で示した試料のうち、比較材料のCoZ(21.3kPa、101.3kPa)および同時置換の効果が得られた組成(Co1.8Fe23.6Cr0.6Z)の測定結果を示している。
飽和磁化の値は、表4に示す通り、それぞれの試料で0.368T(CoZ、21.3kPa)、0.362T(CoZ、101.3kPa)、0.356T(Co1.8Fe23.6Cr0.6Z、101.3kPa)であった。一方、異方性磁界Hθは、図2の困難軸方向の磁化曲線を二次微分した曲線の極大値から求めた。その結果、表4に示す通り、それぞれ0.493、0.613、0.724MA/mと増加傾向にある。これは、飽和磁化Msがほぼ同一にもかかわらず、透磁率が増加していることを示しており、その理由は、Hψが減少しているからであると想定される。図3は図2の初磁化曲線を示している。図3より、磁化容易方向の磁化曲線がより低磁場で磁化されることが分かる。さらに(3)式の関係から求めたHψは、表4に示す通り、それぞれ6.828、5.329、4.315kA/mと大幅に減少している。これは、図3の結果と一致しており、Hψの減少によって、透磁率が増加したことを裏づけている。すなわち、Co2+の一部をFe2+で置換し、さらにFe3+の一部をCr3+で置換した組成で、101.3kPaで作製することにより、比較材料に比べて異方性磁界Hθが増加し、またHψが減少する効果が得られるのである。

以下に、実施例で述べた材料の、中性子回折実験から得た磁気構造について述べる。本発明で得られるZ相の結晶構造、Co2+、Fe2+、Fe3+、Cr3+イオンの占有サイト、磁気モーメントの角度と磁気散乱因子を、中性子回折パターン(波長λ=1.8207Å)のリートベルト解析により求めた。
図5から図7は、中性子回折パターンのリートベルト解析結果を示している。図中のプロットは観測点を示し、実線は上述のモデルに基づいて計算した結果を示している。計算の結果は、実験値と良く一致していることがわかる。
表1の中央から右側には、中性子回折パターンのリートベルト法による解析から求めた、それぞれの試料の磁性イオンの占有サイトの分布と、計算から求めたMsの値および磁気モーメントの角度を示している。解析の結果、Co(21.3、101.3kPa)およびCo1.8Fe23.6Cr0.6Z(101.3kPa)で作製した試料では、それぞれCo2+は、Me−1、Me−4、Me−5、Me−8、Me−10に分布する傾向がある。このうちMe−5は下向きのサイトであり、大気中で仮焼した試料の飽和磁化が、他の二つの試料に比べて増加していることを説明できる結果であった。また磁気モーメントのc軸に対する角度は、CoZ(21.3kPa)で作製した試料がψ=77.6°、CoZ(101.3kPa)が83.5°、Co1.8Fe23.6Cr0.6Z(101.3kPa)が90°であり、本発明で得る材料の磁気モーメントが他の2つの試料にくらべ、c面内に存在することが示され、この結果は磁化測定の結果を裏付けるものである。
c面内に磁気モーメントが向いている場合、(001)面の磁気散乱因子が増加し、結晶面の法線との角度が90°で最も大きい。一方、c軸方向に向いている場合、(hkl)面の磁気散乱因子が増加する。なおZ相の磁気散乱は、上述のように磁気モーメントがほぼ面内に存在するため、(001)面からの寄与が大きくなる。
表2にZ相の磁気散乱が顕著に現れる角度範囲18°〜26°の回折面の磁気散乱因子の一覧をまとめた。磁気散乱因子に続くカラムは、(101)面の磁気散乱因子の大きさを基準とした強度比を示している。
図9はそれぞれの試料の磁気散乱因子の強度比をグラフ化して示している。Co2+とFe2+、Fe3+とCr3+の同時置換したものは、CoZ、21.3kPaに比べ(0010)、(0012)面の強度が増加しているが、これは上述のように磁気モーメントの角度が90°に近づくことを反映したものであり、また異方性磁界の増加や透磁率特性の向上を裏付ける結果である。すなわち、(101)面の磁気散乱因子の強度を基準にした場合に、(0010)または(0012)面の強度が所定の強度より強いことを特徴とする材料が、透磁率が高くまた周波数特性に優れていることがわかる。
【実施例2】
実施例1と同様の方法で、Co、BaCO、Fe、CrをZ相の組成となるように秤量し、純水中でボールミルにより20時間混合した。これを酸素濃度100%雰囲気中、1300°で仮焼成した。この仮焼粉にBiを0.25wt%焼結助剤として加えて純水中でボールミルにより1μm以下の粒径になるように粉砕し、スラリー化した。スラリーを磁場発生装置内に設置した金型に注入し、金型を最大1Tの一定磁場中で回転させZ相のc面を配向させた。金型を静止した後、磁場中で脱水し、プレス成形した。
なお、磁場配向は、固定式の金型のまわりを磁場が回転する方式でも同様に配向が可能である。磁場配向は、乾式のプレス成形でも粉末の流動性を考慮すれば同様の配向試料を作製可能である。配向度はX線回折により、(4)式を用いて配向度fを求めた。表5にそれぞれの試料の配向度を示す。ここでPはΣIhklとΣI001の比を表しており、それぞれ(hkl)面および(001)面のX線回折強度の和を示す。Pは無配向試料の値、Pは配向試料の値を示す。



成形体を、酸素分圧21.3kPa雰囲気中、1300°の温度で焼結することによって、本発明による材料を得た。
透磁率特性の測定は、焼結体の試料をc面配向された面に対し垂直方向から外形7mmψ、内径3mmψ、厚み3〜5mmに加工し、ネットワークアナライザを用いて同軸管法により行った。
以下、上記の実施例で示した方法で得た材料の透磁率特性の測定結果について説明する。
図10は実施例2で作製した配向試料の透磁率μ(μ’、μ″)の周波数特性を示している。
△、◇および○は、CoZ組成の21.3kPa、101.3kPaおよび本発明で得たCo1.8Fe23.6Cr0.6Z(Co1.8Fe0.2Fe23.4Cr0.6Z)組成の101.3kPaで作製した、無配向試料の透磁率特性を示している。また■および◆●は配向試料の特性を示している。この場合、CoZ、101.3kPaの配向試料の透磁率に比べ、本発明で得たμ’は45から52(100MHz)へ増加しているが、配向度がこれらの試料では0.94とほぼ同程度であることから、上述のように磁気モーメントの角度が90°になり、異方性磁界Hψが低下したことによると考えられる。
(実施例3)(ノイズ吸収素子)
本発明試料は、実施例2で用いたCo1.8Fe23.6Cr0.6Z組成(図10における●印)を用いて図11に示すビーズ型ノイズ吸収素子を形成した。比較例としては、従来のスピネル型フェライト(NiZnFe)を用いた。ノイズ吸収素子のコア形状は、外径3.0mm、内径1.0mm、長さ4.0mmとした。図14は、本発明と比較例の材料特性を示す。
図15は、コアに巻き線を10ターン施した際の周波数とインピーダンスを示すグラフであり、図16は、コアに巻き線を6ターン施した際の周波数とインピーダンスを示すグラフである。他方、図17は、コアに巻き線を4ターン施した際の周波数とインピーダンスを示すグラフである。
各図から明らかなように、本発明によるノイズ吸収素子は、比較例に比べ、高周波帯域で、優れた吸収特性を示すことが明らかである。
【産業上の利用の可能性】
本発明は、数百MHzから数GHz領域のノイズ成分を減衰しうる磁性材料に利用可能である。特に、コンピュータや携帯電話などの電子回路に用いられるインピーダンス素子及び電波吸収タイルとして使用するに適した高周波用磁性材料に利用可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ba−Co−Fe−Me−Qe五元系又はBa−Co−Fe−Ae−Me−Qe六元系CoZ型六方晶系フェライト(但し、式中、Aeは、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種以上、MeはFe、Mn、Ni、Cu、Mg及びZnからなる群から選ばれる1種以上、QeはCr、Mn、Ni及びCoからなる群から選ばれる1種以上)を主成分とし、Z型六方晶系フェライト中のZ相結晶構造中のAe、Co、MeおよびQeの何れかの少なくとも一部が、材料の磁気モーメントのc軸に対する角度が90°に近づくようなサイトに選択的に配置されていることを特徴とする磁性材料。
【請求項2】
Ba−Co−Fe−Me−Qe五元系又はBa−Co−Fe−Ae−Me−Qe六元系CoZ型六方晶系フェライト(但し、式中、Aeは、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種以上、MeはFe、Mn、Ni、Cu、Mg及びZnからなる群から選ばれる1種以上、QeはCr、Mn、Ni及びCoからなる群から選ばれる1種以上)を主成分とし、粉末中性子回折パターン(波長λ=1.8207Å)を、リートベルト法により磁気散乱因子を解析した結果において、(101)面の磁気散乱因子の大きさを1とした場合、(0010)面の相対値が6.95以上、または(0012)面の相対値が5.05以上であることを特徴とする磁性材料。
【請求項3】
600MHzにおけるμ’が16以上であることを特徴する請求項1又は2に記載の磁性材料。
【請求項4】
式:BaCo2−xMeFe24−yQe41又は式:Ba3−zAeCo2−xMeFe24−yQe41(但し、式中、Aeは、Sr2+及びCa2+からなる群から選ばれる1種以上、MeはFe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+及びZn2+からなる群から選ばれる1種以上、QeはCr3+、Mn3+、Ni3+及びCo3+からなる群から選ばれる1種以上であって、x、y、zはモルで、0<x≦0.6、0<y≦1.0、0<z≦1.5である)で示されることを特徴とするCoZ型フェライト。
【請求項5】
大気中の酸素分圧以上の酸素存在下で仮焼し、Z相結晶構造中のAe、Co、Me及びQeの何れかの少なくとも一部が、材料の磁気モーメントのc軸に対する角度が90°に近づくようなサイトに選択的に配置されている請求項4に記載のCoZ型フェライト。
【請求項6】
a)Ba2+酸化物またはその前駆物質、Co2+酸化物またはその前駆物質及びFe3+酸化物またはその前駆物質に、少なくともb)Co2+酸化物又はその前駆物質の一部に代え、Me:Fe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+及びZn2+の酸化物またはその前駆物質からなる群から選ばれる1種以上と、
c)Fe3+酸化物またはその前駆物質の一部に代え、Qe:Cr3+、Mn3+、Ni3+及びCo3+の酸化物またはその前駆物質からなる群から選ばれる1種以上とを、式:BaCo2−xMeFe24−yQe41(但し、x、yはモルで、0<x≦0.6、0<y≦1.0である)で示される化学量論量に相当する比率で配合し、酸素分圧21.3kPa以上の雰囲気で仮焼し、Z相を形成することを特徴とするCoZ型フェライト仮焼粉の製造方法。
【請求項7】
更に、d)Ba2+酸化物またはその前駆物質の一部に代え、Ae:Sr2+及びCa2+の酸化物またはその前駆物質からなる群から選ばれる1種以上を式:Ba3−zAeCo2−xMeFe24−yQeO(但し、式中、x、y、zはモルで、0<x≦0.6、0<y≦1.0、0<z≦1.5である)で示される化学量論量に相当する比率で配合し、酸素分圧21.3kPa以上の雰囲気で仮焼し、Z相を形成することを特徴とする請求項6記載のCoZ型フェライト仮焼粉の製造方法。
【請求項8】
Bi、SnO及びSiOからなる群から選ばれる1種以上を1wt%以下の範囲で添加し、酸素分圧21.3kPa以上の雰囲気で仮焼してZ相を形成する請求項6または7記載のCoZ型フェライト仮焼粉の製造方法。
【請求項9】
仮焼温度が1200°から1350°であることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載のCoZ型フェライト仮焼粉の製造方法。
【請求項10】
請求項6から9に記載の条件で製造した仮焼粉を、固定磁場中に置かれた金型を回転させることで磁気モーメントを回転軸に対して垂直に配向することにより結晶軸のc軸を、磁場方向に対してほぼ垂直に配向させ、焼結したことを特徴とするCoZ型フェライト。
【請求項11】
式:BaCo2−xMeFe24−yQe41又は式:Ba3−zAeCo2−xMeFe24−yQe41(但し、式中、Aeは、Sr2+及びCa2+からなる群から選ばれる1種以上、MeはFe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+及びZn2+からなる群から選ばれる1種以上、QeはCr3+、Mn3+、Ni3+及びCo3+からなる群から選ばれる1種以上であって、x、y、zはモルで、0<x≦0.6、0<y≦1.0、0<z≦1.5である)で示され、材料の磁気モーメントのc軸に対する角度がほぼ90°である、CoZ型フェライトの焼結体であって、フェライトのc面をビーズのZ軸に対して垂直に配向させ、成形し、捲き線を施したノイズ吸収素子。
【請求項12】
式:BaCo2−xMeFe24−yQe41又は式:Ba3−zAeCo2−xMeFe24−yQe41(但し、式中、Aeは、Sr2+及びCa2+からなる群から選ばれる1種以上、MeはFe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+及びZn2+からなる群から選ばれる1種以上、QeはCr3+、Mn3+、Ni3+及びCo3+からなる群から選ばれる1種以上であって、x、y、zはモルで、0<x≦0.6、0<y≦1.0、0<z≦1.5である)で示され、材料の磁気モーメントのc軸に対する角度がほぼ90°である、CoZ型フェライトであって、シート状に成形し、印刷したコイルと一体成型し、焼結後、外部電極を形成してなる積層型ノイズ吸収素子。
【請求項13】
式:BaCo2−xMeFe24−yQe41又は式:Ba3−zAeCo2−xMeFe24−yQe41(但し、式中、Aeは、Sr2+及びCa2+からなる群から選ばれる1種以上、MeはFe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+及びZn2+からなる群から選ばれる1種以上、QeはCr3+、Mn3+、Ni3+及びCo3+からなる群から選ばれる1種以上であって、x、y、zはモルで、0<x≦0.6、0<y≦1.0、0<z≦1.5である)で示され、材料の磁気モーメントのc軸に対する角度がほぼ90°である、CoZ型フェライトであって、c面を電磁波が入射される方向に対して垂直に配向、成形した電波吸収タイル。
【請求項14】
式:BaCo2−xMeFe24−yQe41又は式:Ba3−zAeCo2−xMeFe24−yQe41(但し、式中、Aeは、Sr2+及びCa2+からなる群から選ばれる1種以上、MeはFe2+、Mn2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+及びZn2+からなる群から選ばれる1種以上、QeはCr3+、Mn3+、Ni3+及びCo3+からなる群から選ばれる1種以上であって、x、y、zはモルで、0<x≦0.6、0<y≦1.0、0<z≦1.5である)と、有機又は無機バインダーとからなる組成物。

【国際公開番号】WO2004/097863
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505825(P2005−505825)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004307
【国際出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【出願人】(000183417)株式会社NEOMAX (121)
【Fターム(参考)】