説明

磁気カードリーダおよび商品販売データ処理装置

【課題】 磁気カードに記録された磁気データが表すカードデータを安定的に読み出せることが望まれていた。
【解決手段】 磁気カードリーダ14は、磁気カードに記録されている磁気データに応じた読取信号を出力する磁気ヘッド14aと、それぞれ異なる増幅率で読取信号を増幅する増幅器14c、14dと、増幅器14c、14dでそれぞれ増幅された読取信号から磁気データが表すカードデータを復調する復調回路14e,14fと、復調回路14e,14fのそれぞれで復調された第1および第2のカードデータのうちから誤りが生じていない1つを選出する選出手段14gとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気カードリーダおよび商品販売データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気カードリーダは、磁気カードに記録された磁気データを磁気ヘッドで読み取って得られる読取信号から、上記の磁気データが表すカードデータを復調する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−199649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気ヘッドに対する磁気カードの移動速度の変化や、磁性粒子の磁化レベルの等に起因して、磁気ヘッドから出力される読取信号のレベルが変動する。そして、読取信号のレベルの変動のために、カードデータの復調の精度が変動してしまい、復調されたカードデータに誤りが生じてしまうことがあった。すなわち、磁気カードの読み取りに失敗してしまうことがあった。
【0005】
このような事情から、磁気カードに記録された磁気データが表すカードデータを安定的に読み出せることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の磁気カードリーダは、磁気カードに記録されている磁気データに応じた読取信号を出力する磁気ヘッドと、それぞれ異なる増幅率で前記読取信号を増幅する複数の増幅器と、前記複数の増幅器にそれぞれ対応付けられ、対応する前記増幅器で増幅された前記読取信号から前記磁気データが表すカードデータを復調する複数の復調回路と、前記複数の復調回路のそれぞれで復調された複数のカードデータのうちから誤りが生じていない1つの前記カードデータを選出する選出手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係るPOS端末装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】図1に示すPOS端末装置の外観を示す斜視図。
【図3】図1中の判定回路での処理のフローチャート。
【図4】エラー報知画面の一例を示す図。
【図5】第2の実施形態に係るPOS端末装置の要部構成を示すブロック図。
【図6】図5中の判定回路での処理のフローチャート。
【図7】エラー報知画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお本実施形態では、磁気カードリーダを内蔵した商品販売データ処理装置としてのPOS(point-of-sale)端末装置を例に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るPOS端末装置100の要部構成を示すブロック図である。図2はPOS端末装置100の外観を示す斜視図である。
【0010】
POS端末装置100には、ドロワ開放ユニット110、スキャナ120、キーボード130、プリンタ140およびカードターミナル150がそれぞれ接続される。またPOS端末装置100は、通信ネットワーク200を介してサーバ300に接続される。ただし、POS端末装置100に対するドロワ開放ユニット110、スキャナ120、キーボード130、プリンタ140、カードターミナル150およびサーバ300の接続はそれぞれ必須ではなく、それらの一部または全てがPOS端末装置100に接続されない場合もある。すなわち一例としては、ドロワ開放ユニット110、スキャナ120、キーボード130、プリンタ140およびカードターミナル150は、いずれもPOS端末装置100にとってのオプション製品として提供され、使用者のニーズに応じてPOS端末装置100に接続されて使用される。
【0011】
POS端末装置100は、CPU(central processing unit)1、ROM(read-only memory)2、RAM(random-access memory)3、補助記憶ユニット4、時計ユニット5、入出力ポート(I/O)6、タッチセンサ7、タッチセンサコントローラ8、オペレータ用表示器9、表示コントローラ10、客面表示器11、表示コントローラ12、通信デバイス13、磁気カードリーダ14およびカードリーダインタフェース(カードリーダI/F)15を含む。これらの各部のうちのCPU1、ROM2、RAM3、補助記憶ユニット4、時計ユニット5、入出力ポート6、タッチセンサコントローラ8、表示コントローラ10、表示コントローラ12、通信デバイス13およびカードリーダインタフェース15は、システムバス16にそれぞれ接続されている。
【0012】
CPU1は、ROM2およびRAM3に記憶されたオペレーティングシステム、ミドルウェアおよびアプリケーションプログラムに基づいて、POS端末装置100としての各種の動作を実現するべく各部を制御する。
【0013】
ROM2は、上記のオペレーティングシステムを記憶する。ROM2は、上記のミドルウェアやアプリケーションプログラムを記憶する場合もある。またROM2は、CPU1が各種の処理を行う上で参照するデータを記憶する場合も有る。
【0014】
RAM3は、上記のミドルウェアやアプリケーションプログラムを記憶する。またRAM3は、CPU1が各種の処理を行う上で参照するデータを記憶する。さらにRAM3は、CPU1が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶しておくための領域、いわゆるワークエリアとして利用される。
【0015】
補助記憶ユニット4は、例えばハードディスクドライブやSSD(solid state drive)などであり、CPU1が各種の処理を行う上で使用するデータや、CPU1での処理によって生成されたデータを保存する。
【0016】
時計ユニット5は、定常的に経時動作を行い、日付および時刻を表した日時情報を生成する。
【0017】
入出力ポート6は、CPU1からドロワ開放が指示されたことに応じてドロワ開放ユニット110を駆動するための駆動信号をドロワ開放ユニット110に対して出力する。
【0018】
タッチセンサ7は、オペレータ用表示器9および客面表示器11のいずれか一方、またはその双方の表示面に重ねて配置されたタッチセンサを含み、オペレータ用表示器9や客面表示器11に対するタッチがなされた場合に、そのタッチ位置を表した位置情報を出力する。
【0019】
タッチセンサコントローラ8は、CPU1の制御の下にタッチセンサ7の動作を制御するとともに、タッチセンサ7が出力する位置情報をRAM3に書き込む。
【0020】
オペレータ用表示器9は、例えばLCD(liquid crystal display)であり、CPU1の制御の下に任意の画像を表示可能である。オペレータ用表示器9は、オペレータに対して提示するべき各種の情報を表した画像を表示するために利用される。
【0021】
表示コントローラ10は、CPU1の制御の下にオペレータ用表示器9の動作を制御する。
【0022】
客面表示器11は、例えばLCDや蛍光表示装置であり、CPU1の制御の下に任意の画像を表示可能である。客面表示器11は、客に対して提示するべき各種の情報を表した画像を表示するために利用される。
【0023】
表示コントローラ12は、CPU1の制御の下に客面表示器11の動作を制御する。
【0024】
通信デバイス13は、各種の外部装置とのデータ通信のための周知の各種の処理を行う。通信デバイス13は、例えばシリアル通信規格、USB(universal serial bus)、PS/2(登録商標)、あるいはイーサネット(登録商標)などのような周知の各種の通信規格に準拠したデータ通信を行う機能を備える。そして例えば、スキャナ120およびカードターミナル150とのデータ通信にはUSBが、キーボード130とのデータ通信にはPS/2が、そしてプリンタ140とのデータ通信にはシリアル通信規格がそれぞれ利用される。また通信デバイス13は、イーサネットを利用し、LAN(local area network)やインターネットなどの通信ネットワーク200を介してサーバ300とデータ通信する。
【0025】
磁気カードリーダ14は、磁気カード400に磁気データとして記録されたカードデータを読み取る。磁気カードリーダ14は、読み取ったカードデータを送出する。また磁気カードリーダ14は、磁気カードの読み出し動作に係わる状況をCPU1に通知するためのコマンドを送出する。磁気カード400は、例えばクレジットカード、デビットカード、あるいはポイントカードなどである。
【0026】
磁気カードリーダ14は、図1に示すように磁気ヘッド14a、分配器14b、増幅器14c,14d、復調回路14e,14fおよび判定回路14gを含む。また磁気カードリーダ14の筐体には、スライド溝14hが形成されている。
【0027】
磁気ヘッド14aは、オペレータによってスライド溝14hに沿ってスライドされる磁気カード400に記録された磁気データに応じた電気的な読取信号を出力する。なお、磁気カード400には、磁気ストライプ400aが形成されていて、この磁気ストライプ400a中の多数の磁性粒子の磁化状態として磁気データを記録している。磁気カード400での記録方式には、例えばF2F方式が利用される。
【0028】
分配器14bは、磁気ヘッド14aから出力される読取信号を2分配し、増幅器14c,14dにそれぞれ供給する。
【0029】
増幅器14cは、予め定められた第1の増幅率で読取信号を増幅する。増幅器14dは、第1の増幅率よりも大きく予め定められた第2の増幅率で読取信号を増幅する。
【0030】
復調回路14eは、増幅器14cで増幅された後の読取信号からカードデータ(以下、第1のカードデータと称する)を復調する。復調回路14fは、増幅器14dで増幅された後の読取信号からカードデータ(以下、第2のカードデータと称する)を復調する。カードデータが具体的にどのような情報を含むかは任意であり、例えば磁気カードの識別情報などを含む。またカードデータには、カードデータの誤りを検出するための誤り検出情報を含む。
【0031】
判定回路14gは、例えばマイクロプロセッサとメモリなどを組み合わせて構成される。判定回路14gは、復調回路14e,14fからそれぞれ出力された第1および第2のカードデータに基づいて、カードデータの読み取りに成功したか否かの判断や、カードデータの読み取りに成功した場合には、第1および第2のカードデータのうちでCPU1で使用するのに適するものの選出などを行う。判定回路14gは、選出したカードデータやコマンドをカードリーダインタフェース15へ送出する。
【0032】
カードリーダインタフェース15は、磁気カードリーダ14から送出されるカードデータやコマンドを取り込み、これらをRAM3に書き込む。
【0033】
ドロワ開放ユニット110は、入出力ポート6に接続される。ドロワ開放ユニット110は、入出力ポートから出力される駆動信号を受けてドロワを自動的に開放する。
【0034】
スキャナ120は、商品に印刷されたバーコードを読み取り、そのバーコードが示す商品コードを送信する。スキャナ120には、固定タイプおよびハンディタイプのいずれか、またはその双方を含み得る。
【0035】
キーボード130は、数値入力キー、商品指定キー(PLUキー)および機能キーなどの多数のキーと、これら多数のキーの押下をそれぞれ検出するスイッチとを含む。キーボード130は、キーが押下されたことに応じて、そのキーに応じたコマンドを出力する。
【0036】
プリンタ140は、例えばサーマルプリンタやドットインパクトプリンタなどであり、レシートなどを印刷する。
【0037】
カードターミナル150は、磁気カードやICカードに記録された情報を読み取り、この情報を送信する。カードターミナル150は、磁気カードやICカードに情報を書き込む機能を備える場合もある。
【0038】
サーバ300は、POS端末装置100が設置されているのと同じ店舗に備えられたいわゆる店舗サーバや、POS端末装置100が設置されているのと同じ店舗を含んだ複数の店舗を総括する本部に備えられたいわゆる本部サーバである。サーバ300は、POS端末装置100およびその他のPOS端末装置(図示せず)でそれぞれ生成された商品販売データを集計したり、各POS端末装置で使用するデータを管理する。
【0039】
次に以上のようなPOS端末装置100の動作について説明する。なお、POS端末装置100における動作で特徴的なのは磁気カードリーダ14の動作であって、その他の動作は周知のPOS端末装置と同様であって良い。そこでここでは、磁気カードリーダ14の動作を主に説明し、その他の周知の動作については説明を省略する。
【0040】
買上金額をクレジット決済やデビット決済する場合や、ポイント処理をする場合などにおいてオペレータは、これらの処理に使用するカードデータが磁気記録された磁気カードを磁気カードリーダ14にスキャンさせる。具体的には、オペレータが磁気カード400を、スライド溝14hに沿ってスライドさせる。そうすると、磁気ヘッド14aは、磁気ストライプ400aに記録された磁気データに応じた読取信号を出力する。この読取信号は、分配器14bで2分配された上で、増幅器14c,14dで個別に増幅され、さらに復調回路14e,14fで個別に復調される。ここで増幅器14cにおける第1の増幅器に対して増幅器14dにおける第2の増幅率のほうが大きく設定されているから、復調回路14e,14fでそれぞれ復調される第1および第2のカードデータは、第2のカードデータのほうが第1のカードデータよりも高感度で読み取られたこととなる。
【0041】
図3は判定回路14gでの処理のフローチャートである。この処理は、例えば判定回路14gに設けられたマイクロプロセッサによって実行される。
【0042】
ステップSa1において判定回路14gは、上記のようなスキャンが開始されるのを待ち受けている。そして上記のようなスキャンが開始されると判定回路14gは、ステップSa1からステップSa2へ移行する。
【0043】
ステップSa2において判定回路14gは、復調回路14e,14fからそれぞれ出力される第1および第2のカードデータを、内蔵しているメモリに記憶する。
【0044】
ステップSa3において判定回路14gは、第1のカードデータについての誤りの有無を、この第1のカードデータに含まれた誤り検出情報を使用して判断する。そして第1のカードデータに誤りが検出されなければ、判定回路14gはステップSa3からステップSa4へ進む。そしてステップSa4において判定回路14gは、第1のカードデータをカードリーダインタフェース15へ出力する。すなわち、判定回路14gは、低感度な読み取りで得られた第1のカードデータに誤りが生じていないのならば、第2のカードデータに誤りが生じているか否かに拘わらずに、この第1のカードデータを選出する。そして、第1のカードデータを送出し終えたならば、判定回路14gはステップSa1の待ち受け状態に戻る。
【0045】
一方、第1のカードデータに誤りがあった場合に判定回路14gは、ステップSa3からステップSa5へ移行する。
【0046】
ステップSa5において判定回路14gは、第2のカードデータについての誤りの有無を、この第2のカードデータに含まれた誤り検出情報を使用して判断する。そして第2のカードデータに誤りが検出されなければ、判定回路14gはステップSa5からステップSa6へ進む。そしてステップSa6において判定回路14gは、第2のカードデータをカードリーダインタフェース15へ送出する。すなわち、判定回路14gは、低感度な読み取りで得られた第1のカードデータには誤りが生じているものの、高感度な読み取りで得られた第2のカードデータに誤りが生じてないならば、この第2のカードデータを選出する。そして、第2のカードデータを送出し終えたならば、判定回路14gはステップSa1の待ち受け状態に戻る。
【0047】
さて、第2のカードデータにも誤りがあった場合に判定回路14gは、ステップSa5からステップSa7へ進む。そしてステップSa7において判定回路14gは、磁気カード400の読み取りに失敗したことを示すエラーコマンドをカードリーダインタフェース15へ送出し、こののちにステップSa1の待ち受け状態に戻る。
【0048】
以上のように判定回路14gから送出されたカードデータまたはエラーコマンドは、カードリーダインタフェース15によってRAM3に書き込まれる。CPU1は、買上金額をクレジット決済やデビット決済する処理や、ポイント処理の中で、上記のようにRAM3に書き込まれたカードデータを利用する。CPU1は、上記のようにRAM3に書き込まれたエラーコマンドを確認した場合、例えばオペレータ用表示器9にて例えば図4に示すようなエラー報知画面を表示するように表示コントローラ10に指示する。このエラー報知画面には、磁気カードからのカードデータの読み取りに失敗したことをオペレータに報知するための文字メッセージを表した画像Im1を含んでいる。
【0049】
以上のようにPOS端末装置100によれば、磁気カード400の読み取りが互いに異なる2つの感度で同時に行われる。そして低感度の読み取りにより得られた第1のカードデータに誤りがなければこの第1のカードデータが、また高感度の読み取りにより得られた第2のカードデータのみに誤りがなければこの第2のカードデータがそれぞれ選出されて、カードデータに基づく処理のために使用される。従って、2つの感度のいずれか一方でもカードデータの読み取りのために適切であれば、カードデータを正しく読み取ることができる。つまり、磁気ヘッド14aから出力される読取信号のレベルが十分に大きい場合には、高感度な読み取りでは磁気データに基づく信号成分が歪んだり、あるいはノイズに基づく信号成分が大きく増幅されることなどによって、復調されるカードデータに誤りが生じることがあるが、このような場合には低感度な読み取りにより正しいカードデータが得られる可能性が高い。逆に、磁気ヘッド14aから出力される読取信号のレベルが小さい場合には、低感度な読み取りでは増幅後の読取信号のレベルを復調のために適切なレベルまで上げることができずに、復調されるカードデータに誤りが生じることがあるが、このような場合には高感度な読み取りにより正しいカードデータが得られる可能性が高い。かくして、磁気カード400に記録された磁気データが表すカードデータを安定的に読み出すことが可能である。そして、この正しいカードデータに基づいた処理を速やかに実行できる。
【0050】
(第2の実施形態)
図5は第2の実施形態に係るPOS端末装置500の要部構成を示すブロック図である。なお、図1と同一部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
POS端末装置500には、ドロワ開放ユニット110、スキャナ120、キーボード130、プリンタ140およびカードターミナル150がそれぞれ接続される。またPOS端末装置500は、通信ネットワーク200を介してサーバ300に接続される。ただし、POS端末装置500に対するドロワ開放ユニット110、スキャナ120、キーボード130、プリンタ140、カードターミナル150およびサーバ300の接続はそれぞれ必須ではなく、それらの一部または全てがPOS端末装置500に接続されない場合もある。すなわち一例としては、ドロワ開放ユニット110、スキャナ120、キーボード130、プリンタ140およびカードターミナル150は、いずれもPOS端末装置500にとってのオプション製品として提供され、使用者のニーズに応じてPOS端末装置500に接続されて使用される。
【0052】
POS端末装置500は、CPU1、ROM2、RAM3、補助記憶ユニット4、時計ユニット5、入出力ポート6、タッチセンサ7、タッチセンサコントローラ8、オペレータ用表示器9、表示コントローラ10、客面表示器11、表示コントローラ12、通信デバイス13、カードリーダインタフェース15および磁気カードリーダ17を含む。
【0053】
すなわちPOS端末装置500は、POS端末装置100における磁気カードリーダ14に代えて磁気カードリーダ17を備えている。
【0054】
磁気カードリーダ17は、磁気カード400に磁気データとして記録されたカードデータを読み取る。磁気カードリーダ17は、読み取ったカードデータを出力する。また磁気カードリーダ17は、磁気カードの読み出し動作に係わる状況をCPU1に通知するためのコマンドを出力する。磁気カード400は、例えばクレジットカード、デビットカード、あるいはポイントカードなどである。
【0055】
磁気カードリーダ17は、図5に示すように磁気ヘッド14a、分配器14b、復調回路14e,14f、増幅器17a,17bおよび判定回路17cを含む。すなわち磁気カードリーダ17は、磁気カードリーダ14における増幅器14c,14dおよび判定回路14gに代えて増幅器17a,17bおよび判定回路17cを備える。
【0056】
増幅器17a,17bは、それぞれ読取信号を増幅する。増幅器17a,17bは、個別に増幅率を変更可能である。ここでは、増幅器17aは増幅率G11,G12を選択的に設定でき、増幅器17aは増幅率G21,G22を選択的に設定できるものとする。そしてこれらの増幅率は、G11<G21<G12<G22なる関係にあることとする。
【0057】
判定回路17cは、例えばマイクロプロセッサとメモリなどを組み合わせて構成される。判定回路17cは、判定回路14gが有していた機能に加えて、増幅器17a,17bの増幅率を制御する機能を備える。
【0058】
次に以上のようなPOS端末装置500の動作について説明する。なお、POS端末装置500における動作で特徴的なのは磁気カードリーダ17の動作であって、その他の動作は周知のPOS端末装置と同様であって良い。そこでここでは、磁気カードリーダ17の動作を主に説明し、その他の周知の動作については説明を省略する。
【0059】
買上金額をクレジット決済やデビット決済する場合や、ポイント処理をする場合などにおいてオペレータは、これらの処理に使用するカードデータが磁気記録された磁気カードを磁気カードリーダ17にスキャンさせる。その具体的な動作は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0060】
図6は判定回路17cでの処理のフローチャートである。この処理は、例えば判定回路17cに設けられたマイクロプロセッサによって実行される。なお、図6において図3と同一の処理には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0061】
POS端末装置500の動作が起動されたのちに、判定回路17cは図6に示す処理を開始する。
【0062】
そしてこの直後に判定回路17cはステップSb1およびステップSb2において、初期化処理を行う。すなわちステップSb1において判定回路17cは、変数Nを0に初期化する。またステップSb2において判定回路17cは、増幅器17a,17bの増幅率をG11,G21にそれぞれ設定する。
【0063】
そしてこののちに判定回路17cは、ステップSa1乃至ステップSa6の処理を第1の実施形態と同様にして実施する。
【0064】
第1および第2のデータの双方に誤りが生じていた場合、判定回路17cはステップSa5からステップSb3へ移行する。そしてステップSb3において判定回路17cは、変数Nが0であるか否かを確認し、そうである場合にはステップSb3からステップSb4へ移行する。
【0065】
ステップSb4において判定回路17cは、変数Nを1に変更する。さらにステップSb5において判定回路17cは、増幅器17a,17bの増幅率をG12,G22にそれぞれ変更する。すなわち判定回路71cは、増幅率をそれぞれ増大させるように増幅器17a,17bを制御する。そしてこの後にステップSb6において判定回路17cは、磁気カード400の1回目の読み取りに失敗したことを示す第1のエラーコマンドをカードリーダインタフェース15へ送出する。
【0066】
以上のように判定回路17cから送出された第1のエラーコマンドは、カードリーダインタフェース15によってRAM3に書き込まれる。CPU1は、この第1のエラーコマンドを確認した場合、例えばオペレータ用表示器9にて例えば図7に示すようなエラー報知画面を表示するように表示コントローラ10に指示する。このエラー報知画面には、磁気カード400のスキャンを再度行うようにオペレータを促す文字メッセージを表した画像Im2と、磁気カード400の読み取りを中止するオペレータの要求を入力するためのボタンBとが含まれる。
【0067】
オペレータは、図7に示すようなエラー報知画面の表示に応じて、磁気カード400の読み取りを再試行する場合には、磁気カード400を磁気カードリーダ17にスキャンさせる。またオペレータは、磁気カード400の読み取りを断念する場合には、ボタンBにタッチする。ボタンBがタッチされた場合にCPU1は、読み取りの中止を指示する中止コマンドをカードリーダインタフェース15から磁気カードリーダ17に送出する。
【0068】
そこで判定回路17cは、ステップSb6にて第1のエラーコードを送出したのちに、ステップSb7およびステップSb8の待ち受け状態に移行する。ステップSb7およびステップSb8の待ち受け状態において判定回路17cは、磁気カード400のスキャンが開始されるか、あるいは中止コマンドがカードリーダインタフェース15を介して磁気カードリーダ17へと供給されるのを待つ。
【0069】
前述のようにオペレータが磁気カード400を磁気カードリーダ17にスキャンさせた場合には、判定回路17cはステップSb7からステップSa2に移行し、ステップSa2以降の処理を前述と同様に繰り返す。ただし、この際には増幅器17a,17bの増幅率をG12,G22にそれぞれ変更されているから、前回のスキャンの際よりも高感度での読み取りが行われることになる。
【0070】
そしてこのような状態での読み取りによって第1または第2のカードデータが誤り無く取得できたならば、判定回路17cはステップSa4またはステップSa6からステップSb1に戻り、それ以降の処理を前述と同様に実行する。かくして、次に磁気カード400がスキャンされるのに先立って増幅器17a,17bの増幅率はG11,G21にそれぞれ戻され、次の磁気カード400の読み取りは低感度で行われる。
【0071】
増幅器17a,17bの増幅率がG12,G22にそれぞれ設定された状態でも第1および第2のカードデータの双方に誤りが生じてしまっていた場合、判定回路17cはステップSb3からステップSb9へ移行する。ステップSb9において判定回路17cは、磁気カード400の2回目の読み取りに失敗したことを示す第2のエラーコマンドをカードリーダインタフェース15へ送出する。
【0072】
以上のように判定回路17cから送出された第2のエラーコマンドは、カードリーダインタフェース15によってRAM3に書き込まれる。CPU1は、この第2のエラーコマンドを確認した場合、例えばオペレータ用表示器9にて例えば図4に示すようなエラー報知画面を表示するように表示コントローラ10に指示する。そしてこののちに判定回路17cは、ステップSb1以降の処理を前述と同様に繰り返す。すなわち、次に磁気カード400がスキャンされるのに先立って増幅器17a,17bの増幅率はG11,G21にそれぞれ戻され、次の磁気カード400の読み取りは低感度で行われる。
【0073】
なお、図7に示すエラー報知画面におけるボタンBにオペレータがタッチしたことに応じて中止コマンドが磁気カードリーダ17へと送出されたならば、この中止コマンドは判定回路17cによって取り込まれる。そしてこの中止コマンドを取り込んだことに応じて判定回路17cは、ステップSb8からステップSb1に戻り、ステップSb1以降の処理を前述と同様に繰り返す。すなわち、高感度での2回目の読み取りを行うことなしに、次の磁気カード400の読み取りは低感度で行う。
【0074】
以上のようにPOS端末装置500によれば、POS端末装置100とほぼ同規模の構成ながら、磁気カード400の読み取りを互いに異なる4つの感度で行うことが可能である。そしてこのように多種類の感度での読み取りが行えることにより、磁気カード400に記録された磁気データが表すカードデータをさらに安定的に読み出すことが可能である。
【0075】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0076】
第1または第2の実施形態において、磁気カードリーダ14,17はPOS端末装置100,500から独立した装置として実現されても良い。あるいは、磁気カードリーダ14,17は、例えばキャッシュレジスタなどのようなPOS端末装置100,500とは別の商品販売データ処理装置に内蔵されても良いし、商品販売データ処理装置以外の装置に内蔵されても良い。
【0077】
判定回路14g,17cは省略し、判定回路14g,17cで行っていた処理をCPU1にて行っても良い。
【0078】
第1または第2の実施形態において、増幅器および復調回路を3組以上備えても良い。このようにすれば、より多種類の感度での読み取りが行えることにより、磁気カード400に記録された磁気データが表すカードデータをさらに安定的に読み出すことが可能である。
【0079】
磁気カード400のスキャンが、客により行われても良い。この場合には、エラー報知画面は客面表示器11に表示させても良い。またエラー報知画面は、オペレータ用表示器9および客面表示器11の双方に表示させても良い。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…CPU、2…ROM、3…RAM、4…補助記憶ユニット、5…時計ユニット、6…入出力ポート、7…タッチセンサ、8…タッチセンサコントローラ、9…オペレータ用表示器、10…表示コントローラ、11…客面表示器、12…表示コントローラ、13…通信デバイス、14,17…磁気カードリーダ、14a…磁気ヘッド、14b…分配器、14c,14d,17a,17b…増幅器、14e,14f…復調回路、14g,17c…判定回路、14h…スライド溝、15…カードリーダインタフェース、100,500…POS端末装置、400…磁気カード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気カードに記録されている磁気データに応じた読取信号を出力する磁気ヘッドと、
それぞれ異なる増幅率で前記読取信号を増幅する複数の増幅器と、
前記複数の増幅器にそれぞれ対応付けられ、対応する前記増幅器で増幅された前記読取信号から前記磁気データが表すカードデータを復調する複数の復調回路と、
前記複数の復調回路のそれぞれで復調された複数のカードデータのうちから誤りが生じていない1つの前記カードデータを選出する選出手段とを具備したことを特徴とする磁気カードリーダ。
【請求項2】
前記選出手段は、誤りが生じていない前記カードデータのうちから、そのカードデータが復調された前記復調回路が対応する前記増幅器の増幅率が最も小さい1つの前記カードデータを選出することを特徴とする請求項1に記載の磁気カードリーダ。
【請求項3】
前記複数の復調回路のそれぞれで復調された複数のカードデータのうちから誤りが生じていない前記カードデータを前記選出手段により1つも抽出できなかったことに応じて、前記磁気カードの読み取りに失敗したことを前記磁気カードリーダのユーザに通知するための報知動作を行う報知手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気カードリーダ。
【請求項4】
磁気カードに記録されている磁気データに応じた読取信号を出力する磁気ヘッドと、
それぞれ増幅率を変更設定することが可能で、設定されている増幅率で前記読取信号を増幅する複数の増幅器と、
前記複数の増幅器にそれぞれ対応付けられ、対応する前記増幅器で増幅された前記読取信号から前記磁気データが表すカードデータを復調する複数の復調回路と、
前記複数の復調回路のそれぞれで復調された複数のカードデータのうちから誤りが生じていない1つを選出する選出手段と、
前記磁気カードの1回目の読み取りに当たっては前記複数の増幅器の増幅率をそれぞれ異なる初期値に設定し、誤りが生じていない前記カードデータを前記選出手段が選出できないことに応じて前記複数の増幅器の増幅率をそれぞれ少なくとも1回は増大するように前記複数の増幅器を制御する制御手段とを具備したことを特徴とする磁気カードリーダ。
【請求項5】
前記磁気ヘッドは、前記磁気ヘッドに面して前記磁気カードが移動されるときに前記磁気データを読み取ってそれに応じた前記読取信号を出力するものであって、
前記制御手段が前記複数の増幅器の増幅率を増大した後に、前記磁気ヘッドに面して前記磁気カードを移動させるように前記磁気カードリーダのユーザを促すための報知動作を行う報知手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の磁気カードリーダ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の磁気カードリーダと、
商品販売に関する商品販売データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された商品販売データに対して、前記磁気カードリーダに備えられた選出手段が選出したカードデータに基づく処理を施す処理手段とを具備したことを特徴とする商品販売データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−48771(P2012−48771A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187493(P2010−187493)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】