説明

磁気センサ装置

【課題】筺体から引き出されるケーブルを筺体に固定するための固定用部材の長さにかかわらず、固定用部材からのケーブルの抜け強度を高めることが可能な磁気センサ装置を提供する。
【解決手段】磁気抵抗素子が内部に配置される筺体8には、筺体8の内部からケーブル5を引き出すためのケーブル引出孔8eが形成されている。スリーブ10は、ケーブル引出孔8eに配置され、スリーブ10の内周側には、ケーブル5が配置され、固定用ネジ11は、その先端がスリーブ10の外周面に接触するように筺体8に取り付けられている。スリーブ10の外周面には、固定用ネジ11が接触可能なネジ接触部10fが形成され、スリーブ10の内周面の、ネジ接触部10fの内周側には、凸部10gが形成され、スリーブ10の軸方向において、スリーブ10のネジ接触部10fの両側には、ネジ接触部10fを挟むように一対のスリット10dが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗素子を有する磁気センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械等においてその可動部の位置検出等を行うための磁気センサ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の磁気センサ装置は、読取りヘッド(ヘッド)と、磁気スケールと、ヘッドから引き出されるケーブルとを備えている。ヘッドは、磁気抵抗素子と、磁気抵抗素子が内部に配置される筺体と、筺体からのケーブルの抜けを防止するスリーブとを備えている。筺体には、筺体の内部から筺体の外部へケーブルを引き出すためのケーブル挿入孔が形成されている。ケーブルの一端側は、円筒状のスリーブの内周側に通された状態で筺体の内部に配置されており、スリーブは、ケーブル挿入孔に嵌まっている。
【0003】
スリーブの軸方向の一端には、環状のフランジ部が形成されている。スリーブには、その軸方向の他端から一端側に向けて切り込まれた4本のスリットが形成されており、この4本のスリットによって、スリーブには、4枚の爪状の弾性片部が略90°ピッチで形成されている。4つの弾性片部のうち、相対向する2つの第1の弾性片部は、外側に突出する第1の係合突起を備えている。他の2つの第2の弾性片部は、内側に突出する第2の係合突起を備えている。
【0004】
特許文献1に記載の磁気センサ装置では、スリーブとともにケーブルがケーブル挿入孔に挿入されると、第1の弾性片部に形成されている第1の係合突起が筺体に係合する。また、スリーブとともにケーブルがケーブル挿入孔に挿入された後、筺体に形成されているネジ孔にネジが取り付けられると、ネジの先端が第2の弾性片部に接触し、第2の弾性片部が内側に変形して、第2の弾性片部に形成されている第2の係合突起がケーブルの被覆層に食い込む。この磁気センサ装置では、第1の係合突起が筺体に係合することで、筺体からのスリーブの抜けが防止され、第2の係合突起がケーブルの被覆層に食い込むことで、スリーブからのケーブルの抜けが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−84407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の磁気センサ装置では、ネジの先端を第2の弾性片部に接触させ、第2の弾性片部を内側に変形させて、第2の係合突起をケーブルの被覆層に食い込ませることで、スリーブからのケーブルの抜けが防止されている。第2の弾性片部は、スリーブの軸方向の一端側から他端に向かって形成されているため、この磁気センサ装置では、スリーブの軸方向の長さを長くして第2の弾性片部の長さを長くしないと、第2の弾性片部を内側へ変形させることが困難になり、その結果、第2の係合突起をケーブルの被覆層に食い込ませて、スリーブからのケーブルの抜けを防止することが困難になるおそれがある。すなわち、この磁気センサ装置では、スリーブの軸方向の長さによって、スリーブからのケーブルの抜け強度が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、筺体から引き出されるケーブルを筺体に固定するための固定用部材の長さにかかわらず、固定用部材からのケーブルの抜け強度を高めることが可能な磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の磁気センサ装置は、磁気抵抗素子と、磁気抵抗素子が内部に配置される筺体と、一端側が筺体に固定されるとともに筺体の内部から筺体の外部へ引き出されるケーブルと、ケーブルを筺体に固定するための略筒状の固定用部材および固定用ネジとを備え、筺体には、筺体の内部から筺体の外部へケーブルを引き出すためのケーブル引出孔が形成され、固定用部材は、ケーブル引出孔に配置されるとともに、固定用部材の内周側に、ケーブルが配置され、固定用ネジは、その先端が固定用部材の外周面に接触するように筺体に取り付けられ、固定用部材の外周面には、固定用ネジが接触可能なネジ接触部が形成され、固定用部材の内周面の、ネジ接触部の内周側には、内周側に向かって突出する凸部が形成され、固定用部材の軸方向において、固定用部材のネジ接触部の両側には、ネジ接触部を挟むように一対のスリットが形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の磁気センサ装置では、ケーブルを筺体に固定するための固定用部材の外周面に、ケーブルを筺体に固定するための固定用ネジが接触可能なネジ接触部が形成され、固定用部材の内周面の、ネジ接触部の内周側に、内周側に向かって突出する凸部が形成されている。そのため、本発明では、固定用ネジの先端をネジ接触部に接触させて、固定用部材の内周側にネジ接触部を変形させることで、凸部をケーブルの被覆層等に食い込ませて、固定用部材からのケーブルの抜けを防止することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、固定用部材の軸方向において、固定用部材のネジ接触部の両側に、ネジ接触部を挟むように一対のスリットが形成されているため、固定用ネジの先端がネジ接触部に接触すると、固定用部材の長さにかかわらず、固定用部材の内周側にネジ接触部が変形しやすくなる。すなわち、本発明では、固定用部材の長さにかかわらず、固定用部材の内周側へのネジ接触部の変形量を大きくして、ケーブルの被覆層等への凸部の食い込み量を大きくすることが可能になる。したがって、本発明では、固定用部材の長さにかかわらず、固定用部材からのケーブルの抜け強度を高めることが可能になる。
【0011】
本発明において、ネジ接触部および一対のスリットは、固定用部材の周方向において少なくとも2箇所に形成され、少なくとも2箇所のネジ接触部は、固定用部材の内周側に向かって潰れていることが好ましい。このように構成すると、固定用部材の周方向の少なくとも2箇所で、ケーブルの被覆層等へ凸部を食い込ませることが可能になる。したがって、固定用部材からのケーブルの抜け強度を効果的に高めることが可能になる。
【0012】
本発明において、ネジ接触部および一対のスリットは、固定用部材の周方向において略180°ピッチで2箇所に形成されていることが好ましい。このように構成すると、ネジ接触部および一対のスリットが形成される箇所を最小にしつつ、固定用部材からのケーブルの抜け強度を効果的に高めることが可能になる。すなわち、固定用部材の構成を簡素化しつつ、固定用部材からのケーブルの抜け強度を効果的に高めることが可能になる。
【0013】
また、上記の課題を解決するため、本発明の磁気センサ装置は、磁気抵抗素子と、磁気抵抗素子が内部に配置される筺体と、一端側が筺体に固定されるとともに筺体の内部から筺体の外部へ引き出されるケーブルと、ケーブルを筺体に固定するための略筒状の固定用部材とを備え、筺体には、筺体の内部から筺体の外部へケーブルを引き出すためのケーブル引出孔が形成され、固定用部材は、ケーブル引出孔に配置されるとともに、固定用部材の内周側に、ケーブルが配置され、固定用部材には、筺体の内部へ向かって立ち上がる突出片部が形成され、突出片部は、ケーブルの外周面に所定の圧力で接触するように、その基端からその先端に向かうにしたがって、固定用部材の径方向の内側に傾斜していることを特徴とする。
【0014】
本発明の磁気センサ装置では、ケーブルを筺体に固定するための固定用部材に、筺体の内部へ向かって立ち上がる突出片部が形成され、突出片部は、ケーブルの外周面に所定の圧力で接触するように、その基端からその先端に向かうにしたがって、固定用部材の径方向の内側に傾斜している。そのため、本発明では、筺体の外部に向かって固定用部材からケーブルを引き抜く力がケーブルに作用したときに、突出片部の先端をケーブルの被覆層等に食い込ませて、固定用部材からのケーブルの抜けを防止することが可能になる。また、本発明では、筺体の内部へ向かって立ち上がる突出片部の先端をケーブルの被覆層等に食い込ませることが可能であるため、固定用部材の長さにかかわらず、固定用部材からのケーブルの抜け強度を高めることが可能になる。
【0015】
本発明において、磁気センサ装置は、固定用部材の外周側から突出片部に接触するように筺体に取り付けられる固定用ネジを備えることが好ましい。このように構成すると、固定用ネジが接触する突出片部の先端の、ケーブルの被覆層等への食い込み量を大きくすることが可能になる。したがって、固定用部材からのケーブルの抜け強度を効果的に高めることが可能になる。
【0016】
本発明において、たとえば、突出片部は、固定用部材の周方向において略90°ピッチで4箇所に形成されている。この場合には、4個の突出片部を用いて、固定用部材からのケーブルの抜け強度を効果的に高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の磁気センサ装置では、筺体から引き出されるケーブルを筺体に固定するための固定用部材の長さにかかわらず、固定用部材からのケーブルの抜け強度を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態にかかる磁気センサ装置の一部の斜視図である。
【図2】図1に示すヘッド部およびケーブルの一端側の断面図である。
【図3】図1に示すスリーブの図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は(B)のE−E断面の断面図である。
【図4】図2のF部の拡大図である。
【図5】本発明の他の実施の形態にかかるスリーブの図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は(B)のG−G断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(磁気センサ装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる磁気センサ装置1の一部の斜視図である。図2は、図1に示すヘッド部4およびケーブル5の一端側の断面図である。
【0021】
本形態の磁気センサ装置1は、電子部品の実装装置や工作機械等においてその可動側の部材の位置や速度を検出するための磁気式リニアエンコーダである。この磁気センサ装置1は、磁気スケール2と、磁気抵抗素子3(図2参照)を内部に有するヘッド部4と、ヘッド部4から引き出されるケーブル5と、ケーブル5を介してヘッド部4に接続される本体部(図示省略)とを備えている。磁気スケール2には、その長さ方向において、N極とS極とが交互に着磁されている。磁気センサ装置1では、たとえば、実装装置等の可動側の部材に磁気スケール2が取り付けられ、実装装置等の固定側の部材にヘッド部4および本体部が取り付けられている。また、磁気スケール2に対向するようにヘッド部4内の磁気抵抗素子3が配置されており、磁気抵抗素子3から出力される信号に所定の処理を行うことで、実装装置等の可動側の部材の位置や速度が検出される。
【0022】
ヘッド部4は、上述の磁気抵抗素子3に加えて、磁気抵抗素子3およびケーブル5の一端側が電気的に接続される基板7と、磁気抵抗素子3および基板7が内部に配置される(収容される)筺体8とを備えている。ケーブル5の一端側は、筺体8の中に引き込まれており、ケーブル5の他端側は、筺体8から引き出されている。すなわち、ケーブル5は、筺体8の内部から筺体8の外部へ引き出されている。また、ケーブル5の一端側は、筺体8に固定されている。ヘッド部4は、ケーブル5の一端側を筺体8に固定するための固定用部材としてのスリーブ10と、固定用ネジ11とを備えている。
【0023】
基板7は、ガラスエポキシ樹脂等で形成された剛性基板である。固定用ネジ11は、ネジの全体にオネジが形成されたセットビス(イモネジ)であり、具体的には、頭部に六角形の孔が形成された六角穴付き止めネジである。なお、固定用ネジ11は、六角穴付き止めネジ以外の各種のネジであっても良い。
【0024】
筺体8は、略直方体状の箱状に形成されている。筺体8の1つの側面8aには、開口部8bが形成されている。側面8aは、磁気スケール2に対向配置されるセンサ面となっており、開口部8bには、磁気抵抗素子3が配置されている。なお、磁気抵抗素子3は、図示を省略するカバーによって覆われている。
【0025】
筺体8の、側面8aに略直交する1つの側面8cには、筺体8の外側へ突出する突出部8dが形成されている。ケーブル5は、突出部8dから筺体8の外部へ引き出されている。突出部8dには、筺体8の内部から筺体8の外部へケーブル5を引き出すためのケーブル引出孔8eが突出部8dを貫通するように形成されている。また、突出部8dには、固定用ネジ11が螺合するメネジを内周面に有するネジ孔8fが形成されている。ネジ孔8fは、突出部8dの突出方向に略直交する方向を軸方向として形成されている。このネジ孔8fは、突出部8dの外周面とケーブル引出孔8eとを繋ぐように形成されている。
【0026】
ケーブル5は、複数の心線(リード線)と、その周りを覆う静電シールドとを備えるシールド線であり、その表面には、樹脂製の被覆層が形成されている。ケーブル5を構成する複数のリード線は、磁気抵抗素子3や基板7に電気的に接続されている。
【0027】
(スリーブの構成、および、筺体からのケーブルの引き出し部分の構成)
図3は、図1に示すスリーブ10の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は(B)のE−E断面の断面図である。図4は、図2のF部の拡大図である。
【0028】
スリーブ10は、金属材料で形成されている。たとえば、スリーブ10は、亜鉛合金で形成されている。また、スリーブ10は、略円筒状の筒部10aと鍔部10bとを有する鍔付きの略円筒状に形成されている。鍔部10bは、スリーブ10の軸方向の一端(図3(B)、(C)の下端)に形成されている。また、鍔部10bは、スリーブ10の径方向の外側へ広がる略円環状に形成されている。鍔部10bには、3つの平面部10cが形成されている。3つの平面部10cのうちの2つの平面部10cは、互いに略平行に形成され、残りの1つの平面部10cは、他の2つの平面部10cと略直交するように形成されている。なお、以下の説明では、スリーブ10の軸方向を「軸方向」、スリーブ10の径方向を「径方向」、スリーブ10の周方向を「周方向」とする。
【0029】
筒部10aには、図3(B)に示すように、軸方向に所定の間隔をあけた状態で一対のスリット10dが形成されている。スリット10dは、径方向において、筒部10aを貫通するように形成されている。また、スリット10dは、周方向に細長い長円形状に形成されている。軸方向におけるスリット10dの側面10eは、円弧状に形成されている。筒部10aの外周面の、軸方向における一対のスリット10dの間は、固定用ネジ11の先端が接触可能なネジ接触部10fとなっている。すなわち、軸方向において、ネジ接触部10fの両側には、ネジ接触部10fを挟むように一対のスリット10dが形成されている。
【0030】
本形態では、ネジ接触部10fおよび一対のスリット10dは、図3(C)に示すように、周方向において、2箇所に形成されている。具体的には、ネジ接触部10fおよび一対のスリット10dは、周方向において、略180°ピッチで2箇所に形成されている。筒部10aの内周面には、内周側に向かって(すなわち、径方向の内側に向かって)突出する凸部10gが形成されている。凸部10gは、軸方向において、筒部10aの内周面の、ネジ接触部10fの内周側に形成されている。また、凸部10gは、周方向の全域に亘って形成されている。凸部10gの内径は、軸方向の一端(図3(B)、(C)の下端)から他端(図3(B)、(C)の上端)に向かうにしたがって、しだいに小さくなっている。すなわち、凸部10gの先端面10hは、軸方向の一端から他端に向かうにしたがって径方向の内側へ傾斜する傾斜面となっている。凸部10gの軸方向の一端の内径は、筒部10aの内径と等しくなっている。
【0031】
図4に示すように、スリーブ10は、ケーブル引出孔8eの中に配置されている。具体的には、スリーブ10の鍔部10bが筺体8の突出部8dの端面(図4の右端面)に当接するように、スリーブ10は、ケーブル引出孔8eの中に配置されている。また、ケーブル5の一端側は、スリーブ10の内周側に配置されている。さらに、固定用ネジ11は、その先端が2個のネジ接触部10fのうちの一方のネジ接触部10fに接触するように、筺体8のネジ孔8fに取り付けられている。
【0032】
本形態では、筺体8にケーブル5を固定する際に、まず、ケーブル5の一端側が内周側に配置されているスリーブ10をケーブル引出孔8eの中へ挿入する。その後、固定用ネジ11をネジ孔8fにねじ込んで、組立完了後に固定用ネジ11の先端が接触していない他方のネジ接触部10fをスリーブ10の内周側に向かってわずかに潰した後に、固定用ネジ11を緩めて、スリーブ10を周方向へ180°回転させる。その後、固定用ネジ11をネジ孔8fにねじ込んで、組立完了後に固定用ネジ11の先端が接触している一方のネジ接触部10fをスリーブ10の内周側に向かってわずかに潰す。
【0033】
すなわち、本形態では、2箇所のネジ接触部10fにおいて、ネジ接触部10fがスリーブ10の内周側に向かってわずかに潰れている。具体的には、組立完了後に固定用ネジ11の先端が接触している一方のネジ接触部10fは、固定用ネジ11に押されて、スリーブ10の内周側に向かってわずかに潰れており、組立完了後に固定用ネジ11の先端が接触していない他方のネジ接触部10fも、組立途中で固定用ネジ11に押されて、スリーブ10の内周側に向かってわずかに潰れている。なお、本形態では、スリーブ10は、固定用ネジ11によって、筺体8の突出部8dに固定されている。
【0034】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の磁気センサ装置1では、スリーブ10の外周面に、固定用ネジ11が接触可能なネジ接触部10fが形成され、スリーブ10の内周面の、ネジ接触部10fの内周側に凸部10gが形成されている。また、本発明では、固定用ネジ11によって押されたネジ接触部10fは、スリーブ10の内周側に潰れている。そのため、本形態では、凸部10gをケーブル5の被覆層に食い込ませて、スリーブ10からケーブル5の抜けを防止することが可能になる。
【0035】
また、本形態では、軸方向において、スリーブ10の、ネジ接触部10fの両側に一対のスリット10dが形成されているため、固定用ネジ11の先端がネジ接触部10fに接触すると、スリーブ10の軸方向の長さにかかわらず、スリーブ10の内周側へネジ接触部10fが変形しやすくなる。すなわち、本形態では、スリーブ10の長さにかかわらず、スリーブ10の内周側へのネジ接触部10fの変形量を大きくして、ケーブル5の被覆層への凸部10gの食い込み量を大きくすることが可能になる。したがって、本形態では、スリーブ10の長さにかかわらず、スリーブ10からのケーブル5の抜け強度を高めることが可能になる。
【0036】
本形態では、ネジ接触部10fおよび一対のスリット10dは、周方向において、2箇所に形成され、2箇所のネジ接触部10fがスリーブ10の内周側に向かってわずかに潰れている。そのため、本形態では、周方向の2箇所において、ケーブル5の被覆層へ凸部10gを食い込ませることが可能になり、その結果、スリーブ10からのケーブル5の抜け強度を効果的に高めることが可能になる。
【0037】
また、本形態では、ネジ接触部10fおよび一対のスリット10dは、周方向において、略180°ピッチで2箇所に形成されているため、スリーブ10からのケーブル5の抜け強度を効果的に高めつつ、ネジ接触部10fおよび一対のスリット10dが形成される箇所を最小にすることが可能になる。すなわち、本形態では、スリーブ10の構成を簡素化しつつ、スリーブ10からのケーブル5の抜け強度を効果的に高めることが可能になる。
【0038】
(スリーブの変形例)
図5は、本発明の他の実施の形態にかかるスリーブ20の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は(B)のG−G断面の断面図である。
【0039】
ヘッド部4は、上述のスリーブ10に代えて、図5に示す固定用部材としてのスリーブ20を備えていても良い。スリーブ20は、金属材料で形成されている。たとえば、スリーブ20は、銅合金で形成されている。また、スリーブ20は、略円筒状の筒部20aと鍔部20bとを有する鍔付きの略円筒状に形成されている。鍔部20bは、スリーブ20の軸方向の一端(図5(B)、(C)の下端)に形成されている。また、鍔部20bは、スリーブ20の径方向の外側へ広がる略円環状に形成されている。なお、以下の説明では、スリーブ20の軸方向を「軸方向」、スリーブ20の径方向を「径方向」、スリーブ20の周方向を「周方向」とする。
【0040】
筒部20aには、軸方向の一端側から他端側に向かって立ち上がる突出片部20dが形成されている。具体的には、筒部20aには、径方向において、筒部20aを貫通する門型の切欠き部20eが形成されており、この切欠き部20eに囲まれた略長方形の部分が突出片部20dとなっている。突出片部20dは、周方向において、略90°ピッチで4箇所に形成されている。突出片部20dは、その基端(図5(B)、(C)の下端)からその先端(図5(B)、(C)の上端)に向かうにしたがって径方向の内側に傾斜している。
【0041】
スリーブ20は、スリーブ10と同様に、ケーブル引出孔8eの中に配置されている。具体的には、スリーブ20の鍔部20bが筺体8の突出部8dの端面(図4の右端面)に当接するように、スリーブ20は、ケーブル引出孔8eの中に配置されている。すなわち、スリーブ20は、突出片部20dが筺体8の内部へ向かって立ち上がるようにケーブル引出孔8eの中に配置されており、突出片部20dは、筺体8の内部に向かうにしたがって径方向の内側へ傾斜している。
【0042】
また、ケーブル5の一端側は、スリーブ20の内周側に配置されている。上述のように、突出片部20dは、その基端からその先端に向かうにしたがって径方向の内側に傾斜している。具体的には、突出片部20dは、ケーブル5の外周面に所定の圧力で接触するように、筺体8の内部に向かうにしたがって径方向の内側へ傾斜している。また、固定用ネジ11は、その先端が4個の突出片部20dのうちの1個の突出片部20dに接触するように、筺体8のネジ孔8fに取り付けられている。なお、この場合には、スリーブ20は、固定用ネジ11によって、筺体8の突出部8dに固定されている。
【0043】
ヘッド部4が、スリーブ10に代えてスリーブ20を備えている場合には、突出片部20dが、ケーブル5の外周面に所定の圧力で接触するように、筺体8の内部に向かうにしたがって、径方向の内側に傾斜しているため、筺体8の外側に向かってスリーブ20からケーブル5を引き抜く力がケーブル5に作用したときに、突出片部20dの先端をケーブル5の被覆層に食い込ませて、スリーブ20からのケーブル5の抜けを防止することが可能になる。また、この場合には、筺体8の内部へ向かって立ち上がる突出片部20dの先端をケーブル5の被覆層に食い込ませることが可能になるため、スリーブ20の長さにかかわらず、スリーブ20からのケーブル5の抜け強度を高めることが可能になる。
【0044】
また、この場合には、突出片部20dが周方向において略90°ピッチで4箇所に形成されているため、4個の突出片部20dを用いて、スリーブ20からのケーブル5の抜け強度を効果的に高めることが可能になる。さらに、この場合には、固定用ネジ11の先端が4個の突出片部20dのうちの1個の突出片部20dに接触しているため、固定用ネジ11が接触する突出片部20dの先端の、ケーブル5の被覆層への食い込み量を大きくすることが可能になる。したがって、スリーブ20からのケーブル5の抜け強度を効果的に高めることが可能になる。
【0045】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0046】
上述した形態では、一対のスリット10dは、周方向において2箇所に形成されている。この他にもたとえば、一対のスリット10dは、周方向において3箇所以上に形成されても良いし、1箇所に形成されても良い。一対のスリット10dが1箇所に形成される場合には、このスリット10dに挟まれるネジ接触部10fは、スリーブ10の内周側に向かって潰れている。また、一対のスリット10dが3箇所以上に形成されている場合には、一対のスリット10dに挟まれる少なくとも2箇所のネジ接触部10fがスリーブ10の内周側に向かって潰れていれば良い。
【0047】
また、変形例のスリーブ20では、突出片部20dが4箇所に形成されているが、突出片部20dは、2箇所、3箇所または5箇所以上に形成されても良い。また、変形例のスリーブ20では、4個の突出片部20dのうちの1個の突出片部20dに固定用ネジ11の先端が接触しているが、固定用ネジ11の先端は、突出片部20dに接触していなくても良い。
【0048】
上述した形態では、凸部10gは、スリーブ10の内周面において、周方向の全域に亘って形成されている。この他にもたとえば、凸部10gは、周方向において、筒部10aの内周面の、ネジ接触部10fの内周側にのみ形成されても良い。また、上述した形態では、凸部10gの先端面10hは、軸方向の一端から他端に向かうにしたがって径方向の内側へ傾斜する傾斜面となっているが、凸部10gの先端面10hは、軸方向に平行な平面状に形成されても良い。また、上述した形態では、スリット10dは、周方向に細長い長円形状に形成されているが、スリット10dは、周方向に細長い長方形状や楕円形状に形成されても良い。
【0049】
上述した形態では、スリーブ10は、略円筒状に形成されているが、スリーブ10は、略六角筒状等の多角筒状に形成されても良い。同様に、変形例のスリーブ20は、略円筒状に形成されているが、スリーブ20は、略六角筒状等の多角筒状に形成されても良い。また、上述した形態では、スリーブ10は、金属材料で形成されているが、スリーブ10は、樹脂材料で形成されても良い。同様に、変形例のスリーブ20は、金属材料で形成されているが、スリーブ20は、樹脂材料で形成されても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 磁気センサ装置
3 磁気抵抗素子
5 ケーブル
8 筺体
8e ケーブル引出孔
10 スリーブ(固定用部材)
10d スリット
10f ネジ接触部
10g 凸部
11 固定用ネジ
20 スリーブ(固定用部材)
20d 突出片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗素子と、前記磁気抵抗素子が内部に配置される筺体と、一端側が前記筺体に固定されるとともに前記筺体の内部から前記筺体の外部へ引き出されるケーブルと、前記ケーブルを前記筺体に固定するための略筒状の固定用部材および固定用ネジとを備え、
前記筺体には、前記筺体の内部から前記筺体の外部へ前記ケーブルを引き出すためのケーブル引出孔が形成され、
前記固定用部材は、前記ケーブル引出孔に配置されるとともに、前記固定用部材の内周側に、前記ケーブルが配置され、
前記固定用ネジは、その先端が前記固定用部材の外周面に接触するように前記筺体に取り付けられ、
前記固定用部材の外周面には、前記固定用ネジが接触可能なネジ接触部が形成され、
前記固定用部材の内周面の、前記ネジ接触部の内周側には、内周側に向かって突出する凸部が形成され、
前記固定用部材の軸方向において、前記固定用部材の前記ネジ接触部の両側には、前記ネジ接触部を挟むように一対のスリットが形成されていることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記ネジ接触部および一対の前記スリットは、前記固定用部材の周方向において少なくとも2箇所に形成され、
少なくとも2箇所の前記ネジ接触部は、前記固定用部材の内周側に向かって潰れていることを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記ネジ接触部および一対の前記スリットは、前記固定用部材の周方向において略180°ピッチで2箇所に形成されていることを特徴とする請求項2記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
磁気抵抗素子と、前記磁気抵抗素子が内部に配置される筺体と、一端側が前記筺体に固定されるとともに前記筺体の内部から前記筺体の外部へ引き出されるケーブルと、前記ケーブルを前記筺体に固定するための略筒状の固定用部材とを備え、
前記筺体には、前記筺体の内部から前記筺体の外部へ前記ケーブルを引き出すためのケーブル引出孔が形成され、
前記固定用部材は、前記ケーブル引出孔に配置されるとともに、前記固定用部材の内周側に、前記ケーブルが配置され、
前記固定用部材には、前記筺体の内部へ向かって立ち上がる突出片部が形成され、
前記突出片部は、前記ケーブルの外周面に所定の圧力で接触するように、その基端からその先端に向かうにしたがって、前記固定用部材の径方向の内側に傾斜していることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項5】
前記固定用部材の外周側から前記突出片部に接触するように前記筺体に取り付けられる固定用ネジを備えることを特徴とする請求項4記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記突出片部は、前記固定用部材の周方向において略90°ピッチで4箇所に形成されていることを特徴とする請求項5または6記載の磁気センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104844(P2013−104844A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250840(P2011−250840)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】