説明

磁気データの読取部及び書込部を備えた冊子媒体印字装置

【課題】通帳の磁気部分の厚さが変化しても磁気ストライプに対する磁気ヘッドの当接圧力を適切な圧力に制御して、ジッタの発生しない磁気データの読取部及び書込部を備えた冊子媒体印字装置を提供する
【解決手段】プラテン29を印字ヘッド24に当接するまで上昇させステッピングモータ20aが脱調して停止した所からプラテンセンサ40により検知される初期位置までプラテン29を下降させ、この間の移動距離Aとする。通帳12が媒体搬送路32に搬入されたときプラテン29を通帳12に圧接するまで上昇させ、再び初期位置まで下降させ、この間の移動距離Bとする。通帳の厚さはA−Bである。通帳12の検出された厚さ、設計時に設定された連動機構33による磁気ヘッド31の移動量からステッピングモータ20aの駆動パルス数を算出し、プラテン29を初期位置から下降させ連動機構33を介して磁気ヘッド31を通帳12の磁気記録部16に適切な圧力で当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気データの読取部及び書込部を備えた冊子媒体印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば銀行等の金融機関に預けてある預貯金の出し入れには、郵便局内、銀行内、又は街中等に設置されているATM(Automatic Teller Machine)のカード挿入口にキャッシュカードを挿入し、さらに通帳挿入口に、冊子媒体としての預貯金の通帳を挿入して、預貯金の出し入れを行ない、通帳に残高を記録していた。
【0003】
通常、上記キャッシュカードには帯状の磁気部が設けられており、この磁気部には少なくともキャッシュカードで取引を行うために必要な口座番号等のID(identification)コードが記録されている。
【0004】
また、通帳の裏表紙側にも、キャッシュカードと同様に帯状の磁気部が形成されている。この磁気部には少なくとも通帳に対応する口座番号等のIDや印字行最終位置などを示すデータが記録されている。
【0005】
通帳をATMの通帳挿入口に挿入すると、ATM内部では、先ず通帳を内部に搬送し、磁気ヘッドが通帳の磁気部に当接して、磁気部の記録を読み取り、IDや印字行最終位置(つまり印字開始頁及び印字開始行)を確認する。
【0006】
それから印字ヘッドが通帳への印字を開始する。印字ヘッドが通帳へ印字するときは、プラテンと印字ヘッドが相対的に密着方向に移動して通帳の印字行部分を挟持する形となる。
【0007】
磁気ヘッドにも、印字ヘッドに対するプラテンと同様な機能を有する磁気ヘッド押さえという部材が設けられており、磁気ヘッドが通帳の磁気部の記録を読取り又は書込むときは、磁気ヘッドと磁気ヘッド押さえが相対的に密着方向に移動して通帳の磁気部を挟持する形となる。
【0008】
このような通帳への印字装置としては、例えば足腰の自由が利かないため自分で預貯金している郵便局や銀行に出向いて預貯金の預け入れや引き出しをすることが出来ない得意先のために、渉外員が持ち歩くことができる簡便な携帯型の通帳印字装置がある。
【0009】
この携帯型の通帳印字装置を用いると、預貯金の預け入れでは預け入れ金を受け取って、その場で通帳に預け入れの記録を印字して通帳を預け入れ本人に渡し、預貯金の引き出しでは、持ち歩いている予備の現金の中から支払いをして、その場で通帳に支払い記録を印字して通帳を支払い本人に渡すことができる。
【0010】
ところで、携帯型の通帳印字装置は小型の装置であるため、ATMの内部に備えられているような大掛かりな制御機構を搭載できない。したがって、簡便な機構で通帳の記録部分の印字と磁気部分(磁気ストライプ)の読み書きを行わなければならない。
【0011】
一方、通帳は綴じ込み冊子であるから記録を印字する頁が変わると、通帳の厚さ、つまり記録部分の厚さや、磁気部分の厚さが変化する。通帳の磁気部分のデータを読み書きする磁気ヘッドの磁気部分に対する圧力は、磁気部分の通帳の厚さが薄い部分では低く、厚い部分では高くなる。
【0012】
磁気ヘッドの磁気部分に対する圧力が低いと、磁気出力は悪くなるが負荷抵抗が減るためジッタ(jitter)は良くなる傾向がある。磁気ヘッドの磁気部分に対する圧力が高いと、磁気出力は良くなるが負荷抵抗が増すためジッタは悪くなる傾向がある。
【0013】
ジッタが悪いと、読み取り又は書き込みの信号が隣接する信号と干渉するなどして、磁気データのデータ化けが発生する。したがって、磁気ヘッドによる磁気データの読み書きを安定化させるために何らかの制御が必要になる。
【0014】
例えば、通帳の厚さ、変形量に応じて磁気ストライプガイドを移動させ、通帳の変形を修正した後に、磁気ヘッドを磁気ストライプに当接させて、通帳の厚さや紙質、綴じ目の折り癖に違いがあっても、磁気データの書込み読込み不良となることを低減させる磁気ストライプ処理装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0015】
また、通帳の厚さ、幅、長さの変形量を検出して、帳票の種別や磁気ストライプの有無を検知する帳票処理装置が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−335041号公報
【特許文献2】特開2006−092105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、上記特許文献1の磁気ストライプ処理装置は、磁気ヘッド近傍の磁気ストライプガイドを移動させて磁気ヘッドを磁気ストライプに確実に当接させることにのみ主眼が置かれており、磁気ストライプに対する磁気ヘッドの当接圧力の制御については何ら考慮されていない。
【0018】
また、特許文献2の、綴じ合わせ冊子状の印字媒体に印字する帳票処理装置は、もっぱら帳票種別の判別や磁気ストライプの有無の検知に主眼が置かれ、磁気部の記録の読取りや書込みに関する構成や動作については何も記載されていない
【0019】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、通帳の磁気部分の厚さが変化しても磁気ストライプに対する磁気ヘッドの当接圧力を適切な圧力に制御して、ジッタの発生しない磁気データの読取部及び書込部を備えた冊子媒体印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の磁気データの読取部及び書込部を備えた冊子媒体印字装置は、冊子状の印字媒体に対して印字処理を行う印字部と、該印字部が上記印字処理を行うに際し、上記印字媒体を上記印字部とで媒体搬送路に垂直な方向に挟み込むプラテンと、上記媒体搬送路に垂直な方向において上記プラテンを上記印字部に対して密着方向又は乖離方向に移動させる駆動部と、上記プラテンの移動経路において上記プラテンの上面が上記媒体搬送路の底面と同じ高さになるプラテン待機位置を検知する検知装置と、上記印字媒体が有する磁気記録部に記録された磁気データの読取又は書込を行う磁気ヘッド部と、該磁気ヘッド部が上記磁気データの読取又は書込を行うに際し、上記印字媒体を上記磁気ヘッド部とで上記媒体搬送路に垂直な方向に挟み込む磁気ヘッド押さえ部材と、上記プラテンの移動に上記磁気ヘッド部の移動を連動させ、該磁気ヘッド部を上記媒体搬送路に垂直な方向に動作させる連動機構と、制御部と、を有し、上記連動機構は、上記制御部の制御の下に、上記プラテンが上記プラテン待機位置にあるとき上記磁気ヘッド部が上記媒体搬送路に突出しない磁気ヘッド待機位置にあるように連動させ、上記プラテンが上記プラテン待機位置から上記印字部に対して乖離方向となる第1の方向へ移動するとき上記磁気ヘッド部が上記磁気ヘッド押さえ部材に対して密着方向に移動するよう連動させ、上記プラテンが上記プラテン待機位置から上記印字部に対して密着方向となる第2の方向へ移動するとき上記磁気ヘッド部が上記磁気ヘッド待機位置にとどまるよう上記プラテンとの連動を解除する、ように構成される。
【0021】
この磁気データの読取部及び書込部を備えた冊子媒体印字装置において、例えば、上記プラテンを上記プラテン待機位置から上記印字部に当接するまで移動させる移動量を第1の移動量初期値として記憶する記憶部を更に備え、上記駆動部は、搬送部が媒体搬送処理を行うに際し上記プラテンが上記プラテン待機位置にあるよう駆動し、上記磁気ヘッド部が上記磁気データの読取又は書込み処理を行うに際し、上記プラテンを上記プラテン待機位置から上記第2の方向へ移動させて上記搬送部により搬入された上記印字媒体に当接するまでの移動量を第2の移動量初期値として上記記憶部に記憶させ、上記制御部は、上記記憶部に記憶されている上記第1の移動量初期値と上記第2の移動量初期値との差分を算出し、該差分と上記連動機構による上記磁気ヘッド部の連動移動量とから、上記磁気ヘッド部が上記印字媒体の磁気記録部分に適切な圧力で当接するまで上記プラテンを上記第1の方向へ移動させるための上記駆動部による磁気部移動量として算出し、上記駆動部は、上記制御部が算出した上記磁気部移動量により上記プラテンを上記プラテン待機位置から上記第1の方向へ移動させる、ように構成される。この場合、上記第1の移動量初期値及び上記第2の移動量初期値は、上記駆動部の駆動回転パルス数により算出されるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、高い印字品質の維持、印字ヘッドの保護、頁めくりローラの適正動作等のために必須な要件である通帳の厚さを検知する検知機能を利用して、磁気ストライプに対する磁気ヘッドの当接圧力を適切な圧力に制御するので、磁気ストライプデータの読み書きが安定した磁気データの読取部及び書込部を備えた冊子媒体印字装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a) は本発明の実施例1に係る印字装置を印字媒体と共に示す外観斜視図、(b) は左に印字媒体の見開き印字面、中央に印字媒体の見開き側面、右に見開き背面を示す図である。
【図2】実施例1に係る印字装置の内部の主要部の構成を示す図である。
【図3】実施例1に係る印字装置の印字部、プラテン、磁気読取書込装置が形成する本例の主要部のみを取り出して示す斜視図である。
【図4】(a),(b),(c)はそれぞれ図3を矢印e方向に見た図であり、主要部の基本動作を説明する図である。
【図5】実施例1に係る印字装置の制御部の構成を示すシステムブロック図である。
【図6】(a),(b),(c)は実施例1に係る印字装置に対し搬入・搬出される印字媒体と主要部との位置関係を示す図である。
【図7】(a)〜(d)は実施例1に係る印字装置において搬入された印字媒体の厚さを検知する原理を説明する図である。
【図8】実施例1に係る印字装置において主制御部により実行される処理動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1(a) は、実施例1に係る印字装置を印字媒体と共に示す外観斜視図であり、同図(b) は、左に印字媒体の見開き印字面、中央に印字媒体の見開き側面、右に見開き背面を示す図である。図1(a) に示すように、印字装置1は、基台2と、この基台2の上方を覆う筐体3を備えている。
【0026】
筐体3は、後方上部に回動蓋4を備え、回動蓋4から前方両側には、斜め下に傾斜して延び出す迫り出し部5(5a、5b)が形成されている。一方の迫り出し部5aの傾斜がやや緩やかとなっている前部上面のオペレーションパネル6には、電源スイッチ7と、報知ランプ8が配設されている。報知ランプ8は、例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)を発光するLED(light-emitting-diode)が一体となって構成されている。
【0027】
また、両側の迫り出し部5に挟まれる形となる筐体3の回動蓋4より前方の中央部は、斜め下方に急傾斜する前面9と、その下方にほぼ水平な案内面10が形成されている。前面9の下端部と案内面10の後端部との間には、搬入/搬出口11が形成されている。
【0028】
この印字装置1は、例えば、設置面積はA4判程度、すなわちA4判の用紙上に載せると、用紙の端部が印字装置1の下部四方からはみ出す程度であり、高さは80mm程度の大きさであり、片手で小脇に抱えることができる程度の重さである。すなわち、銀行等の金融機関の渉外員等がノート型パーソナルコンピュータと一緒に鞄に入れて持ち運べるような大きさ、重量になっている。
【0029】
印字媒体12は、例えば銀行の預金通帳または郵便局の貯金通帳等であり、案内面10により案内され、矢印aで示すように、搬入/搬出口11から筐体3の内部に搬入され、矢印bで示すように、筐体3から外部に搬出される。
【0030】
印字媒体12の図1(b) の左に示す見開き印字面13には、図の横方向に印字行が形成され、その印字行には、例えば、日付、備考、預貯金の預け入れ金額、引き出し金額、及び残高が印字される。
【0031】
また、印字媒体12の図1(b) の右に示す見開き背面は、上が表表紙14、下が裏表紙15となっており、裏表紙15の所定の位置に、印字面13の印字行に直交する方向に磁気記録部16が形成されている。
【0032】
図2は、上記印字装置1の内部の主要部の構成を示す図である。尚、図2には、図1と同一の構成部分には図1と同一の番号を付与して示している。図2に示すように、印字装置1は、筐体3の背面に、印字媒体12の搬入位置が最大移動位置となったときの搬送前端部の逃げ部となる搬送逃げ口17を備えている。
【0033】
そして、搬入/搬出口11と搬送逃げ口17との間に、印字媒体12の搬送を案内する上下二枚の板(すのこ状の板でもよい)からなる前部案内部18と後部案内部19を備えている。
【0034】
搬入/搬出口11の内側近傍には、上ローラ21aと下ローラ21bのローラ対からなる第1の搬送ローラ部21が配設されている。この第1の搬送ローラ部21は、前部案内部18を一部突き抜けて配置されており、搬入/搬出口11から図1(a) の矢印aで示したように挿入される印字媒体12を挟持して搬送(搬入/搬出、以下同様)する。
【0035】
また、この第1の搬送ローラ部21よりも搬入/搬出口11に対し離れた位置(図では搬送逃げ口17の内側に近接する位置)に、ローラ対からなる第2の搬送ローラ部22が配設されている。
【0036】
この第2の搬送ローラ部22は、後部案内部19を一部突き抜けて配置されており、第1の搬送ローラ部21と協働して印字媒体12を挟持して搬送する。上記の第1の搬送ローラ部21及び第2の搬送ローラ部22は、迫り出し部5bの内部に配設されているステッピングモータ20aにより、不図示のギア及び歯付きベルトからなる駆動系を介して回転駆動される。
【0037】
上記の前部案内部18と後部案内部19の間には、印字部23が配置されている。印字部23は、印字ヘッド24、印字ヘッド24を保持するキャリッジ25、キャリッジ25をキャリッジ25の不図示のボールナットを介して摺動自在に保持するボールネジ26等からなる。
【0038】
ボールネジ26は、印字部23よりも紙面奥行き方向の向う側に配置されているステッピングモータ20bにより不図示のギア系からなる駆動系を介して回転駆動される。これにより、キャリッジ25つまり印字部23が、紙面奥行き方向に往復移動する。
【0039】
尚、キャリッジ25のボールナットを単なる丸孔とし、ボールネジ26を単なる丸棒又はパイプとし、ギア及び歯付きベルトからなる駆動系を介してキャリッジ25を往復移動させるようにしてもよい。
【0040】
上記の印字部23及びリボンカセット27は、回動蓋4の裏面に固定して懸架されている。回動蓋4がヒンジ軸28を回動支点として内部開放位置4´に開成されると、この回動蓋4の開成移動に追随して、印字部23及びリボンカセット27は開放位置23´及び27´に移動する。
【0041】
また、前部案内部18と後部案内部19で形成される印字媒体搬送路を挟み印字部23の印字ヘッド24と対向して、プラテン29が、紙面奥行き方向に延在して配置されている。
【0042】
プラテン29は、不図示の切替機構によって切り替えられるステッピングモータ20aの駆動伝達系により駆動されて、上下方向に移動する。すなわち、印字部23の印字ヘッド24に対し、密着方向及びと乖離方向とに移動する。
【0043】
また、第1の搬送ローラ部21のほぼ軸線に沿う所定の位置に、磁気読取書込装置30が配置されている。磁気読取書込装置30は、磁気ヘッド部31と、磁気ヘッド押さえ部材兼用の第1の搬送ローラ部21の上ローラ21a、印字部23(つまり印字ヘッド24)に対して、密着方向又は乖離方向に移動するプラテン29の移動に連動して磁気ヘッド部31を上ローラ21aに対し乖離方向又は密着方向に移動させる連動機構33を備えている。
【0044】
磁気ヘッド押さえ部材を兼用する搬送ローラ部21の上ローラ21aは、シャフト34に摺動可能に嵌合して所定の位置に位置決めされた後、シャフト34に固定される。
【0045】
磁気ヘッド部31は、位置決めされた上ローラ21aに対向する位置で、後述する固定部材によって印字装置本体フレームに回動可能に位置固定される。連動機構33は、連動回転軸35に嵌合し、連動回転軸35により摺動可能に且つ回動可能に支持されている。
【0046】
この連動機構33は、印字ヘッド24に対してプラテン29の乖離方向に配置され、プ
ラテン29が印字部23に対し乖離方向に移動するとき、プラテン29の乖離方向の面29aに当接して乖離方向に押される当接部36を備えている。
【0047】
また、連動機構33は、当接部36が正逆両方向に回動する際の上記の連動回転軸35に対して当接部36と反対方向に延在し、当接部36と一体をなす引き上げ部37を備えている。
【0048】
引き上げ部37は、当接部36が印字ヘッド24に対してプラテン29の乖離方向に押されることに応じて、連動回転軸35を支点にして当接部36と同じ回り方向(図の時計回り方向)に回動し、詳しくは後述する付勢部材を介して磁気ヘッド部31を上ローラ21aの方向に付勢する。
【0049】
また、基台2の底部には、制御装置等の電子部品が搭載された回路基板38が配設されている。この回路基板38には、搭載されている電子部品の他に、着脱自在に装着される内蔵電池39がケーブル接続されている。
【0050】
図3は、上記構成の印字部23、プラテン29、磁気読取書込装置30が形成する本例の主要部のみを取り出して示す斜視図である。
【0051】
図4(a),(b),(c)は、それぞれ図3を矢印e方向に見た図であり、主要部の基本動作を説明するための図である。
【0052】
尚、図4(a),(b),(c)には後述する複数のセンサと、印字媒体12の図示を省略している。また、図3及び図4(a),(b),(c)には、図2と同一の構成部分には図2と同一の番号を付与して示している。また、説明に必要な最小限の付属部材も共に示している。
【0053】
図3及び図4(a),(b),(c)において、プラテン29は、前述したように、ステッピングモータ20aの駆動伝達系の切替により駆動されて、印字部23の印字ヘッド24に対し、図3の矢印cで示す密着方向と、矢印dで示す乖離方向とに移動する。
【0054】
この移動経路におけるプラテン29のホームポジション(図4(a)に示す媒体搬送路32に突出しないプラテン待機位置、つまり初期位置)は、図3に示すプラテンセンサ40によって検知されてプラテン29がプラテン待機位置に設定される。
【0055】
図4(a)は、そのようにプラテン29がプラテン待機位置に設定されている状態を示している。このとき、磁気ヘッド部33の磁気ヘッド部31が連動機構33を介して媒体搬送路32に突出しない磁気ヘッド待機位置に設定される。
【0056】
プラテン29が図4(a)のプラテン待機位置から図4(b)に矢印dで示すように印字部23に対して乖離方向となる第1の方向へ移動すると、プラテン29の乖離方向の面29aに当接する連動機構33の当接部36がプラテン29の乖離方向(第1の方向)に押される。
【0057】
これにより、当接部36及び当接部36と一体な引き上げ部37が、連動回転軸35を支点にして、矢印gで示す時計回り方向に回動する。連結機構33が時計回り方向に回動することにより、引き上げ部37の端部に上端が係止する付勢部材(例えば引き螺旋バネ)41が上方に引き伸ばされる。
【0058】
付勢部材41の下端部は、回動支持部材42の係止部43に係止している。したがって、付勢部材41が上方に引き伸ばされることによる付勢部材41の縮み方向の復元力により、回動支持部材42が上方に引き揚げられる。
【0059】
これにより回動支持部材42は、図3に示す支持軸44を支点にして図4(b)の矢印hで示すように時計回り方向に回動する。支持軸44は不図示の固定部に係合しており、固定部は印字装置本体フレームの溝状の長孔の上下から例えばビスとナットで挟めつけるようにして摺動可能に固定されている。
【0060】
支持軸44を支点にして図3の時計回り方向に回動する回動支持部材42の回動自由端には磁気ヘッド部31を保持する磁気ヘッド保持部材48が他の支持軸47により支持されている。
【0061】
これにより、付勢部材41の上記の縮み方向の復元力により、上方に引き揚げられて矢印h方向に付勢されて回動する支持部材42により、磁気ヘッド部31は、磁気ヘッド保持部材48を介し図4(b)に矢印hで示すように上ローラ21aに密着する方向へ付勢される。
【0062】
尚、図3では、上ローラ21aには嵌合孔49のみ示し、この嵌合孔49に嵌入して上ローラ21aを支持するシャフト34(図3、図4(a),(b),(c)参照)の図示は省略している。
【0063】
また、図4(a)に示す動作状態図は、上述したようにプラテン29と磁気ヘッド部31が共にプラテン待機位置と磁気ヘッド待機位置とに設定された状態を示すと共に、図4(b)の状態からプラテン29が図4(a)の矢印nで示すように印字部23に対して密着方向となる第2の方向へ移動してプラテン待機位置まで戻ったときを示している。
【0064】
更に図4(a)は、プラテン29の図4(b)から同図(a)への上方移動に対し、連動機構33が付勢部材41の縮み方向の復元力により矢印jで示す反時計回り方向に回動するよう付勢されていることにより、当接部36がプラテン29に追随して上方移動し、これに対応して引き上げ部37が磁気ヘッド部31と共に矢印mで示すように下方に下がり、磁気ヘッド部31が磁気ヘッド待機位置に設定された状態を示している。
【0065】
この状態で、付勢部材41の縮み方向の復元力は消失している。ここで更にプラテン29が、図4(a)のプラテン待機位置から図4(c)に矢印cで示す印字部23に対して密着方向となる第2の方向へ移動すると、プラテン29の乖離方向の面29aに当接する連動機構33の当接部36がプラテン29の押圧から開放される。
【0066】
すなわち、磁気ヘッド部31がプラテン29との連動を解除される。このように、プラテン29がプラテン待機位置よりも、矢印cで示す第2の方向へ移動すると、磁気ヘッド部31はプラテン29との連動を解除されて、図4(a)に示すと同様の磁気ヘッド待機位置にとどまる状態に設定される。
【0067】
図5は、上記の構成における、印字装置1の制御部の構成を示すシステムブロック図である。尚、図5には、本発明に直接関る構成部分を制御するシステムブロックのみを示している。
【0068】
図5に示すように、印字装置1の制御部システムは、主制御部50と、この主制御部50にシステムバス51を介して接続された印字機構部52、プラテン機構部53、磁気機構部54、媒体搬送部55、記憶部56から成る。プラテン機構部53には図3に示したプラテンセンサ40が接続され、媒体搬送部55には媒体セットセンサ57、媒体位置センサ58、及び特には図示しないが、その他のセンサが接続されている。
【0069】
印字機構部52は、ステッピングモータ20bにより印字部23をプラテン29に沿って往復させながら、印字ヘッド24の印字素子を印字イメージデータに合わせて印字駆動する。これにより、図1(b) の左に示した印字媒体12の見開き印字面13に、印字部23により、日付、備考、預貯金の預け入れ金額、引き出し金額、残高等の印字が実行される。
【0070】
プラテン機構部53は、ステッピングモータ20aの駆動伝達系をプラテン駆動側に切り替えて、プラテンセンサ40の出力信号を参照しながら、ステッピングモータ20aを正逆回転駆動する。これにより、図4(a),(b),(c)で説明したように、プラテン29が上下に昇降する。
【0071】
磁気機構部54は、磁気ヘッド部31を制御する。これにより、図1(b) の右に示した印字媒体12の裏表紙15に設けられている磁気記録部16に対して、磁気読取書込装置30による磁気データの読み取りや書き込みや実行される。
【0072】
媒体搬送部55は、ステッピングモータ20aの駆動伝達系を搬送側に切り替えて、媒体セットセンサ57と媒体位置センサ58の出力信号を参照しながら、ステッピングモータ20aを正逆回転駆動する。
【0073】
これにより、第1の搬送ローラ部21及び第2の搬送ローラ部22が正逆回転駆動され、図1(a)に示したように、印字媒体12が、案内面10により案内され、矢印aで示すように、搬入/搬出口11から筐体3の内部に搬入され、矢印bで示すように、筐体3から外部に搬出される。
【0074】
記憶部56は、特には図示しないが、ROM(read only memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュROM等を備えている。ROMには印字装置1を制御する制御プログラムが格納されている。RAMには各センサの出力信号データが一時的に記憶され、また主制御部50が演算する演算途中のデータや演算結果のデータが格納される。フラッシュROMには、例えば、ステッピングモータ21aや21bの所定の駆動回転パルス数が予め記憶されている。
【0075】
主制御部50は、ROMに格納されている制御プログラムを読見出しながら、その制御プログラムにしたがって、フラッシュROMのデータを参照し、RAMの演算領域を使用しながら演算し、演算結果にしたがって上記の各部を制御する。
【0076】
図6(a),(b),(c)は、上述した構成の印字装置1に対し搬入・搬出される印字媒体12と主要部との位置関係を示す図である。尚、図6(a),(b),(c)には、図1ないし図4(a),(b),(c)に示した構成と同一の構成部分には図1ないし図4(a),(b),(c)と同一の番号を付与して示している。
【0077】
尚、図6(a)は、印字媒体12と、その印字媒体12を上下から挟む部材と共に示す平面図であり、印字媒体12を上下から挟む部材の下部材も明示するため、印字媒体12を二点鎖線の仮想線で透視的に示している。この図6(a)では、第1の搬送ローラ部21の上ローラ21aは、印字媒体12の裏表紙15の磁気記録部16の所に移動している。
【0078】
図6(b)に示す側面図は、プラテン29と磁気ヘッド部31がそれぞれプラテン待機位置と磁気ヘッド待機位置に設定されており、図4(a)に示した状態と同一の状態を示している。また、図6(a),(b)では、両方向矢印kで示すように印字媒体12が搬入又は搬出される状態を示している。
【0079】
この状態で、プラテン29が印字ヘッド24から乖離する方向へ移動(図6(b)では下降)すると、図4(b)に示した状態と同一の状態になり、磁気ヘッド部31が適切な圧力で磁気記録部16に当接し、印字媒体12の搬入移動に応じて、磁気記録部16からデータを読み取り、印字媒体12の搬出移動に応じて、磁気記録部16にデータを書き込む。
【0080】
図6(c)に示す側面図は、プラテン29が印字媒体12の裏表紙15の見開きの折り目近傍の印字行に対応する部分の裏表紙15の面に圧接して、印字ヘッド24と共に印字媒体12を挟持し、印字ヘッド24により印字が実行される状態を示している。これは、図4(c)の状態と同一の状態を示している。
【0081】
この構成において、図4(a),(b),(c)では図示を省略したが、図6(b),(c)に示すように、前部案内部18の上流側(図の左方)近傍には光反射型の媒体セットセンサ57が配置されえおり、前部案内部18の下流側端部近傍には、搬送路を挟んで光透過型の媒体位置センサ58が配置されており、第2の搬送ローラ部22の上流側近傍にはエラーセンサ59が配置されている。
【0082】
媒体セットセンサ57は、搬入/搬出口11(図1(a)又は図2参照)から挿入される印字媒体12を検知する。この検知結果に基づいて、第1の搬送ローラ部21が駆動され、印字媒体12が印字装置1本体内部に搬入される。
【0083】
媒体位置センサ58は、搬入される印字媒体12の先端部を検知する。この検知結果に基づいて、予め知られている印字媒体12の寸法に合わせて、磁気記録部16のデータ読み出し開始位置が上ローラ21aと磁気ヘッド部31との対向部に来るまで印字媒体12を搬送する。この時点では、印字媒体12の搬入先端は第2の搬送ローラ部22を通過して図2に示した搬送逃げ口17から装置外部に突出する。
【0084】
エラーセンサ59は、印字媒体12の搬入先端が搬送逃げ口17から装置外部に突出するタイミングになっても印字媒体12の搬入先端を検知できないとき、搬入処理にエラーが発生したことを媒体搬送部55を介して主制御部50に通知する。
【0085】
図7(a)〜(d)は、上記の構成の印字装置1において、搬入された印字媒体の厚さを検知する原理を説明する図である。尚、図7(a)〜(d)には、図1ないし図4(a),(b),(c)又は図6(a),(b),(c)と同一の構成部分には図1ないし図4(a),(b),(c)又は図6(a),(b),(c)と同一の番号を付与して示している。
【0086】
図7(a)は媒体搬送路32に印字媒体12が搬入されていない状態であり、プラテン29は、プラテンセンサ40によって検知されたプラテン待機位置(以下、初期位置という)に設定されている。
【0087】
この初期位置から、図7(b)に示すように、プラテン29を印字ヘッド24に当接するまで上昇させる。プラテン29が印字ヘッド24に当接したことは、プラテン29を上昇駆動するステッピングモータ20aが脱調することで検知される。
【0088】
この位置から、再び図7(a)に示すように、プラテンセンサ40によって検知される初期位置までプラテン29を下降させる。この間のプラテン29の移動距離Aは、脱調位置から初期位置までプラテン29を駆動したステッピングモータ20aの駆動回転ステップ数に対応する。この駆動回転ステップ数はパルス数初期値として予め記憶部56のフラッシュROMに記憶されている。
【0089】
図7(c)は、図7(a)と同様にプラテン29が初期位置にあって、印字媒体12が媒体搬送路32に搬入された状態を示している。
【0090】
ここで、図7(d)に示すように、プラテン29を印字媒体12に圧接するまで上昇させる。この場合も、プラテン29が印字媒体12に圧接したことは、プラテン29を上昇駆動するステッピングモータ20aが脱調することで検知される。
【0091】
この位置から、再び図7(c)に示すように、プラテンセンサ40によって検知される初期位置までプラテン29を下降させる。この間のプラテン29の移動距離Bは、脱調位置から初期位置までプラテン29を駆動したステッピングモータ20aの駆動回転ステップ数に対応する。この駆動回転ステップ数は媒体搬入時パルス数として記憶部56のフラッシュROMの所定領域に記憶される。
【0092】
ここで、移動距離Aに対応するパルス数初期値をパルスa、移動距離Bに対応する媒体搬入時パルス数をパルスb、印字媒体12の厚さに対応するステッピングモータ20aの駆動回転ステップ数をパルスcとすれば、図7(b)と図7(c)から明らかなように「パスルc=パルスa−パルスb」である。
【0093】
本例では、ステッピングモータ20aの駆動回転ステップ数の1パルスは、プラテン29の移動量の2/100mmに相当する。したがって、印字媒体12の厚さを厚さt(mm)とすれば、t=パスルc×2/100(mm)である。印字媒体12の厚さはこのようにして検知される。
【0094】
また、プラテン29の下降移動距離と磁気ヘッド部31の上昇移動距離との関係は、連動機構33を含む磁気読取書込装置30の設計段階で定まっている。プラテン29の下降移動距離を距離p、磁気ヘッド部31の上昇移動距離を距離m、設計段階で定まった係数を値aとすれば、m=a×pである。
【0095】
磁気ヘッド部31が印字媒体12の磁気記録部16を上ローラ21aとの間に挟み込むために磁気ヘッド部31に必要とされる上昇移動の距離mは、印字媒体12の厚さ検知の際に得られたパルスbに対応する図7(c)に示す距離Bである。この距離Bは、B=パルスb×2/100(mm)の式で算出することができる。
【0096】
したがって、式「m=a×p」のmにBを代入して「B/a=p」により、磁気ヘッド部31を距離Bだけ上昇移動させるためのプラテン29の下降移動の距離pが算出される。そして、プラテン29を距離pだけ下降移動させるためのステッピングモータ20aの駆動回転ステップ数をパルスdとすれば、d=p/(2/100)の式からパスルdを算出することができる。
【0097】
すなわち、プラテン29が下降移動する方向へ、ステッピングモータ20aをパスルdだけ回転駆動すれば、磁気ヘッド部31が距離Bだけ上昇して印字媒体12の磁気記録部16を押圧する。
【0098】
プラテン29が印字媒体12を押圧する力と、磁気ヘッド部31が印字媒体12を適切な圧力で押圧する力とは異なるので、実験による最適値からステッピングモータ20aのパスルdに適正な補正係数を設定する。
【0099】
これにより、印字媒体12の印字頁がどの頁になっていても、つまり磁気記録部16に読み書きする部分の印字媒体12の厚さがどのように変化しても、磁気ヘッド部31を常に適切な圧力で印字媒体12の磁気記録部16に接触させるように、ステッピングモータ20aを駆動してプラテン29を下降移動させることができる。
【0100】
図8は、上記構成の印字装置1において、主制御部50により実行される処理動作を説明するフローチャートである。
【0101】
図8において、処理Aは初期設定動作を示し、処理Bは印字媒体搬入動作を示し、処理Cは磁気読取り動作を示し、処理Dは印字動作を示し、処理Eは磁気書込み(書換え)動作を示し、そして、処理Fは印字媒体排出動作を示している。
【0102】
先ず、渉外員の手によって印字装置1の電源がオンになると、処理Aの初期設定動作が開始される。この処理Aは、電源がオンになる前はプラテン29がホームポジションから位置ずれしている可能性があるので、プラテン29がホームポジションに在るか否かを検出する処理である。
【0103】
主制御部50は、先ず、プラテン29を適宜の位置まで上昇させる(ステップS1)。そしてプラテンセンサ40により、プラテン29がホームポジションに在るか否かを検知させ(ステップS2)、プラテン29がまだホームポジションに来ていないときは(S2の判別がNo)、プラテン29を下降させて(ステップS3)、再びステップS2の検知処理を行う、ということを繰り返す。
【0104】
そしてステップS2でプラテン29がホームポジションに来たことが検知されれば(S2の判別がYes)、主制御部50は、処理Aの初期設定動作を終了して、次の処理Bの印字媒体搬入動作に移る。
【0105】
尚、プラテン29のホームポジションは、図4(a)又は図7(a)に示すように、プラテン29の上面が媒体搬送路32の底面と同じ高さになる位置、かつ、磁気ヘッド部31が媒体搬送路32に突出しない位置である。
【0106】
プラテン29がホームポジションで媒体搬送路32の底面と同じ高さに位置することによって、媒体搬送路32を前部案内部18から後部案内部19へと搬送される印字媒体12の搬送方向先端が、後部案内部19の前端部に引っ掛かる不具合を防止することができる。
【0107】
また、図1(a) に示したように、搬入/搬出口11から挿入された印字媒体12は、図6(a),(b)の矢印kで示すように、順逆両方向に搬送(搬入/搬出)される。
【0108】
尚、プラテン29がホームポジションに在るときは、連動機構33の付勢部材41の縮み方向の復元力は消失しており、磁気ヘッド部31がプラテン29との連動を解除され、磁気ヘッド待機位置にとどまる状態に設定されている。
【0109】
これにより、前部案内部18及び後部案内部19とで形成される媒体搬送路32は、印字媒体搬送のためにプラテン29からも磁気ヘッド部31からも開放される。ここで渉外員により印字媒体12が搬入/搬出口11から挿入されると、反射型光学センサからなる媒体セットセンサ57により印字媒体12の挿入が検知される。
【0110】
この検知の通知を受け取って、主制御部50は、印字媒体12の搬入動作を開始する(ステップS4)。この処理では、プラテン29がホームポジションで停止したまま、ステッピングモータ20aの駆動伝達系が切り替えられ、第1の搬送ローラ部21及び第2の搬送ローラ部22が順方向に回転駆動され、印字媒体12が本体装置内に搬入される。
【0111】
そして、透過型光学センサからなる媒体位置センサ58により搬入される印字媒体12の先端部が検知され、この検知結果に基づいて、磁気記録部16のデータ読み出し開始位置が磁気ヘッド部31の位置に来るまで印字媒体12が搬送される。
【0112】
主制御部50は、磁気記録部16の記録読取開始位置が磁気ヘッド部31の位置に来たことをステッピングモータ20aの駆動回転ステップ数で検知すると、ステッピングモータ20aの駆動伝達系が切り替えて、搬入動作が停止する(ステップS5)
【0113】
図6(a),(b),(c)及び図7(c),(d)に示す記録媒体12の位置は、上記のように磁気記録部16の記録読取開始位置が磁気ヘッド部31の位置に来て停止した状態を示している。
【0114】
続いて、主制御部50は、プラテン29をステッピングモータ20aが脱調するまで上昇させる(ステップS6)。そして、主制御部50は、プラテンセンサ40により、プラテン29がホームポジションに在るか否かを検知させ(ステップS7)、プラテン29がまだホームポジションに来ていないときは(S7の判別がNo)、プラテン29を下降させて(ステップS8)、再びステップS7の検知処理を行う、ということを繰り返す。
【0115】
そしてステップS7でプラテン29がホームポジションに来たことが検知されれば(S7の判別がYes)、主制御部50は、脱調位置からホームポジションまでプラテン29を駆動したステッピングモータ20aの駆動回転ステップ数を媒体搬入時パルス数として記憶部56のフラッシュROMの所定領域に格納する。
【0116】
上記のステップS6、S7、S8の処理は、図7(c),(d)で説明した印字媒体12の厚さを測定する処理である。
【0117】
続いて、主制御部50は、これも図7(c),(d)で説明したが、磁気ヘッド部31を適切な圧力で磁気記録部16に当接させるためにプラテン29をホームポジションからステッピングモータ20aの何駆動回転ステップ数分下降させるかを示すパスルdを演算し、更にパスルdを適正な補正係数で補正し、この補正したパルス数でステッピングモータ20aを駆動してプラテン29を下降させる(ステップS9)。
【0118】
これにより、図6(b)の状態から下降した図4(b)に示した状態と同一の状態(但し図4(b)では印字媒体12の図示は省略されている)になり、磁気ヘッド部31が適切な圧力で磁気記録部16に当接する。
【0119】
ここで、主制御部50は、搬入動作を再開する(ステップS10)。この処理では、プラテン29と印字ヘッド部24が離れるため、印字媒体12は邪魔されることなく、低速で搬送される。そして、磁気ヘッド部31により、印字媒体12の磁気記録部16から磁気記録データが読み取られる。
【0120】
この磁気記録データの読み取りでは、通帳所有者IDや預貯金額のデータと共に、見開き印字面13の記録最終行を示すデータも読み取られる。そして、図6(b)では示していないが、印字媒体12の搬入方向後端部が第1の搬送ローラ部21の位置まで来たときに、磁気記録部16の記録読取終了位置が磁気ヘッド31の位置に来る。
【0121】
また、このとき、印字媒体12の搬入方向にある表表紙14及びこれと重なる見開き印字面13の部分は、図2に示した搬送逃げ口17から外部に突出する。この状態で、主制御部50は、ステッピングモータ20aの駆動伝達系を切り替えて、印字媒体12の搬入動作を停止する(ステップS11)。
【0122】
続いて、主制御部50は、プラテン29を再びホームポジションの位置、すなわち媒体搬送路32を遮らない高さまで上昇させる(ステップS12)。これにより、前述したように磁気ヘッド部31が下降し、媒体搬送路32は、再び印字媒体12の搬送(移動)のためにプラテン29からも磁気ヘッド31からも開放される。
【0123】
次に、処理Dの印字動作が開始される。この処理Dでは、主制御部50は、ステッピングモータ20aの駆動伝達系を搬送系に切り替えて、第1及び第2の搬送ローラ部21及び22を回転駆動して、印字媒体12の移動を開始する(ステップS13)。
【0124】
この処理では、ステップS10の処理で磁気記録部16から読み取られている記録最終行を示すデータに基づいて、印字媒体12の今回の記録開始行が認識され、その記録開始行が印字部23の印字ヘッド24に対向する位置に来た時点で印字媒体12の搬送(移動)を停止する(ステップS14)。
【0125】
ここで、主制御部50は、プラテン29を、ホームポジションから、媒体搬送路32の中を印字媒体12の見開き印字面13の記録開始行の部分の表表紙14又は裏表紙15の面に当接するまで上昇させる(ステップS15)。
【0126】
主制御部50は、プラテン29が印字媒体12の面に当接して、ステッピングモータ20aが脱調したことを検出することにより、ステッピングモータ20aの駆動を停止させてプラテン29を停止させる(ステップS16)。
【0127】
その後、主制御部50は、ステッピングモータ20aを所定ステップ回転させて、プラテン29を印字媒体12への当接面から規定距離だけ離れた位置まで下降させる(ステップS17)。これにより、印字ヘッド24とプラテン29が適正な圧力で印字媒体12の見開き印字面13の記録開始行の部分を挟持することになる。
【0128】
続いて、主制御部50は、印字ヘッド24を駆動して印字動作を実行する(ステップS18)。この処理では、印字部23は印字媒体12の記録開始行に沿って移動しながら、印字ヘッド24により、記録開始行に、例えば、日付、備考、預け入れ金額又は引き出し金額、及び残高等を印字する。
【0129】
また、この処理では、記録行が記録開始行の他に数行に及ぶときは、記録行の行数だけ搬送と印字動作が繰り返される。そして、必要な記録の印字が全て終了すると、印字動作が停止する。したがって、この場合、上ローラ21aと磁気ヘッド29が乖離しているため、邪魔されることなく改行動作が行なわれる。したがって、斜行などの影響を受けずに適正に印字処理が行なわれる。
【0130】
上記に続いて、主制御部50は、プラテン29を、ホームポジション、すなわち媒体搬送路32を遮らない位置まで下降させる(ステップS19)。これにより、磁気ヘッド部31は下降したままの位置にあり、媒体搬送路32は、再び印字媒体12の搬送(移動)のためにプラテン29からも磁気ヘッド31からも開放される。
【0131】
そして、処理Eの磁気書込み(書換え)動作が開始される。主制御部50は、先ず、第1及び第2の搬送ローラ部21及び22を駆動して、印字媒体12の搬入方向への搬送を開始する(ステップS20)。
【0132】
なお、磁気記録部16の記録書込開始位置は、記録読取開始位置とは反対側端部になっている。つまり、磁気記録部16の記録読取終了位置が記録書込開始位置となっている。したがって、上記の処理Dの印字動作における最終印字位置がどの行であっても、磁気書込み処理では、最初の印字媒体12の搬送は搬入方向への搬送となる。
【0133】
そして、媒体位置センサ58により印字媒体12の挿入方向後端部が検出されることにより、磁気記録部16の記録書込開始位置が磁気ヘッド31の位置に来たことが検知される。ここで主制御部50は搬入動作を停止する(ステップS21)。
【0134】
この場合も、印字媒体12の搬入方向にある表表紙14及びこれと重なる見開き印字面13の部分は、図2に示した搬送逃げ口17から外部に突出する。
【0135】
続いて、主制御部50は、プラテン29を下降させる(ステップS22)。これにより、連動機構33を介して磁気ヘッド部31が印字媒体12の磁気記録部16に当接する。この場合も、主制御部50は、印字媒体12の厚さ認識結果に基づく補正したステップ数でステッピングモータ20aを回転駆動する。これにより、磁気ヘッド部31は、磁気記録データを読み取ったときと同様の適切な圧力で磁気記録部16に当接する。
【0136】
ここで主制御部50は、搬出動作を開始する(ステップS23)。この搬出動作中に、磁気ヘッド部31による印字媒体12の磁気記録部16への磁気記録データの書込み処理が行われる。尚、この書き込み処理では、磁気データは、逆方向に並べ替えられて書き込まれていく。
【0137】
そして、主制御部50は、磁気ヘッド31が磁気記録部16の記録書込終了位置に来たことを認識すると、搬出動作を停止する(ステップS24)。
【0138】
続いて、主制御部50は、搬入動作を開始し、磁気ヘッド31による磁気記録部16の磁気データの記録を読み取らせる(ステップ25)。そして、読み取りが終了すると搬入を停止する(ステップS26)。この読み取りにより、いま書き込まれた磁気データの記録が正しく書き込まれているかが確認される。
【0139】
上記記録データの読取りと確認により、磁気データの記録が正しく書き込まれていると判断されたときは、主制御部50は、プラテン29を媒体搬送路32を遮らない位置まで上昇させる(ステップS27)。
【0140】
尚、特には図示していないが、磁気データが正しく書き込まれなかったと判断された場合は、再度、磁気記録データの書込み処理が行われる。
【0141】
上記プラテン29の上昇により、磁気ヘッド部31は下降し、媒体搬送路32は、再び印字媒体の搬送(移動)のためにプラテン29からも磁気ヘッド31からも開放される。
【0142】
そして、最後の処理Fの印字媒体排出動作が行われる。この処理Fでは、主制御部50は、第1及び第2の搬送ローラ部21及び22を回転駆動して、印字媒体12を搬入/搬出口11から外部に排出して(ステップS28)、搬出動作を停止する(ステップS29)。
【0143】
このように、印字装置1は、印字媒体12の搬送、磁気データの読取りと書込み、印字媒体12への印字という三通りの処理動作を実行する。そして磁気ヘッド部31は、適切な圧力で印字媒体12に圧接する必要がある。
【0144】
本例の印字装置1では、印字装置にとって最初に行う必須の処理であり印字媒体の厚さ認識の処理で取得したステッピングモータの駆動回転ステップ数を利用して、印字媒体のどの頁を開いた場合でも、磁気ヘッド部31を適切な圧力で印字媒体12に圧接させるようにしている。
【符号の説明】
【0145】
1 印字装置
2 基台
3 筐体
4 回動蓋
5(5a、5b) 迫り出し部
6 オペレーションパネル
7 電源スイッチ
8 報知ランプ
9 前面
10 案内面
11 搬入/搬出口
12 印字媒体
13 見開き印字面
14 表表紙
15 裏表紙
16 磁気記録部
17 搬送逃げ口
18 前部案内部
19 後部案内部
20a、20b ステッピングモータ
21 第1の搬送ローラ部
21a 上ローラ(磁気ヘッド押さえ部材兼用)
21b 下ローラ
22 第2の搬送ローラ部
23 印字部
24 印字ヘッド
25 キャリッジ
26 ボールネジ
27 リボンカセット
28 ヒンジ軸
29 プラテン
29a 乖離方向の面
30 磁気読取書込装置
31 磁気ヘッド部
32 媒体搬送路
33 連動機構
34 シャフト
35 連動回転軸
36 当接部
37 引き上げ部
38 回路基板
39 内蔵電池
40 プラテンセンサ
41 付勢部材(例えば引き螺旋バネ)
42 回動支持部材
43 係止部
44 支持軸
47 支持軸
48 磁気ヘッド保持部材
49 嵌合孔
50 主制御部
51 システムバス
52 印字機構部
53 プラテン機構部
54 磁気機構部
55 媒体搬送部
56 記憶部
57 媒体セットセンサ
58 媒体位置センサ
59 エラーセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冊子状の印字媒体に対して印字処理を行う印字部と、
該印字部が前記印字処理を行うに際し、前記印字媒体を前記印字部とで媒体搬送路に垂直な方向に挟み込むプラテンと、
前記媒体搬送路に垂直な方向において前記プラテンを前記印字部に対して密着方向又は乖離方向に移動させる駆動部と、
前記プラテンの移動経路において前記プラテンの上面が前記媒体搬送路の底面と同じ高さになるプラテン待機位置を検知する検知装置と、
前記印字媒体が有する磁気記録部に記録された磁気データの読取又は書込を行う磁気ヘッド部と、
該磁気ヘッド部が前記磁気データの読取又は書込を行うに際し、前記印字媒体を前記磁気ヘッド部とで前記媒体搬送路に垂直な方向に挟み込む磁気ヘッド押さえ部材と、
前記プラテンの移動に前記磁気ヘッド部の移動を連動させ、該磁気ヘッド部を前記媒体搬送路に垂直な方向に動作させる連動機構と、
制御部と、
を有し、
前記連動機構は、前記制御部の制御の下に、
前記プラテンが前記プラテン待機位置にあるとき前記磁気ヘッド部が前記媒体搬送路に突出しない磁気ヘッド待機位置にあるように連動させ、
前記プラテンが前記プラテン待機位置から前記印字部に対して乖離方向となる第1の方向へ移動するとき前記磁気ヘッド部が前記磁気ヘッド押さえ部材に対して密着方向に移動するよう連動させ、
前記プラテンが前記プラテン待機位置から前記印字部に対して密着方向となる第2の方向へ移動するとき前記磁気ヘッド部が前記磁気ヘッド待機位置にとどまるよう前記プラテンとの連動を解除する、
ことを特徴とする磁気データの読取部及び書込部を備えた冊子媒体印字装置。
【請求項2】
前記プラテンを前記プラテン待機位置から前記印字部に当接するまで移動させる移動量を第1の移動量初期値として記憶する記憶部を更に備え、
前記駆動部は、
搬送部が媒体搬送処理を行うに際し前記プラテンが前記プラテン待機位置にあるよう駆動し、
前記磁気ヘッド部が前記磁気データの読取又は書込み処理を行うに際し、前記プラテンを前記プラテン待機位置から前記第2の方向へ移動させて前記搬送部により搬入された前記印字媒体に当接するまでの移動量を第2の移動量初期値として前記記憶部に記憶させ、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶されている前記第1の移動量初期値と前記第2の移動量初期値との差分を算出し、該差分と前記連動機構による前記磁気ヘッド部の連動移動量とから、前記磁気ヘッド部が前記印字媒体の磁気記録部分に適切な圧力で当接するまで前記プラテンを前記第1の方向へ移動させるための前記駆動部による磁気部移動量として算出し、
前記駆動部は、
前記制御部が算出した前記磁気部移動量により前記プラテンを前記プラテン待機位置から前記第1の方向へ移動させる、
ことを特徴とする請求項1記載の磁気データの読取部及び書込部を備えた冊子媒体印字装置。
【請求項3】
前記第1の移動量初期値及び前記第2の移動量初期値は、前記駆動部の駆動回転パルス数により算出される、
ことを特徴とする請求項2記載の磁気データの読取部及び書込部を備えた冊子媒体印字装置。

【図1】
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【図5】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−171259(P2012−171259A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36426(P2011−36426)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】