説明

磁気共鳴イメージングシステム及び方法

【課題】マルチステーションMRIのワークフローにおける検査全体の時間を短縮することができる磁気共鳴イメージングシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第1の収集部と、受付部と、第2の収集部とを備える。第1の収集部は、マルチステーションMRIにおける複数の異なる撮像ステーションそれぞれに置かれた被検体の異なる部位から、少なくとも位置決め画像データを含む準備スキャンデータを収集する。受付部は、前記撮像ステーションそれぞれに対応する前記準備スキャンデータに基づいて、前記撮像ステーションごとに診断スキャンパラメータを設定する操作を操作者から受け付ける。第2の収集部は、前記診断スキャンパラメータを用いて、前記複数の異なる撮像ステーションそれぞれで診断スキャンデータを収集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MRI装置に関する技術として、被検体が置かれるテーブルを複数の撮像ステーションごとに段階的に移動させてデータを収集することで、下肢などの広い範囲を撮像するマルチステーションMRIが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0249574号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、マルチステーションMRIのワークフローにおける検査全体の時間を短縮することができる磁気共鳴イメージングシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージングシステムは、第1の収集部と、受付部と、第2の収集部とを備える。第1の収集部は、マルチステーションMRIにおける複数の異なる撮像ステーションそれぞれに置かれた被検体の異なる部位から、少なくとも位置決め画像データを含む準備スキャンデータを収集する。受付部は、前記撮像ステーションそれぞれに対応する前記準備スキャンデータに基づいて、前記撮像ステーションごとに診断スキャンパラメータを設定する操作を操作者から受け付ける。第2の収集部は、前記診断スキャンパラメータを用いて、前記複数の異なる撮像ステーションそれぞれで診断スキャンデータを収集する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、実施形態に係るMRIシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、改良型マルチステーションワークフローシーケンスの例示的な実施形態を概略的に示す図である。
【図3】図3は、図2に示す典型的なワークフローシーケンスを実現するための例示的なコンピュータプログラムコード構造を概略的に示すフローチャートである。
【図4】図4は、腸骨部、大腿部、腓部の各ステーションから見た、コロナル方向、サジタル方向、アキシャル方向のMIP画像をまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に示すMRIシステムは、ガントリ10(概略断面で示す)と、ガントリ10に接続された各種の関連システム構成要素20とを含む。少なくともガントリ10は、典型的には、シールドルーム内に配置される。図1に示すMRIシステムの構造は、実質的に同軸の円筒形に配置された静磁場B磁石12と、G、G、及びGの傾斜磁場コイルセット14と、RF(Radio Frequency)コイルアセンブリ16とを含む。これらの円筒形に配列された要素の水平軸に沿って、患者用寝台又はテーブル11によって支持された被検体9の頭部を実質的に取り囲むように、撮像空間(イメージングボリューム)18が形成される。
【0008】
MRIシステムコントローラ22は、ディスプレイ24、キーボード/マウス26、及びプリンタ28に接続された入力/出力ポートを有する。自明であるが、ディスプレイ24は、制御入力もできるようにタッチスクリーンタイプのものでもよい。
【0009】
また、MRIシステムコントローラ22は、MRIシーケンスコントローラ30に接続される。MRIシーケンスコントローラ30は、順次、G、G、及びGの傾斜磁場コイルドライバ32、RF送信部34、送信/受信スイッチ36(同じRFコイルが送信と受信の両方に使用される場合)を制御する。当業者には明らかなように、心電図(Electrocardiogram:ECG)信号及び/又は末梢脈波ゲート(Peripheral Pulsatile Gating:PPG)信号をMRIシーケンスコントローラ30に送るために、1つ以上の適切な体電極8を被検体に取り付けてもよい。また、MRIシーケンスコントローラ30は、MRIシーケンスコントローラ30内ですでに利用可能になっているMRIデータ収集シーケンスを実行するための適切なプログラムコード構造にアクセスする。MRIシーケンスコントローラ30は、例えば、特定のMRIデータ取得シーケンスパラメータを定義する操作者及び/又はシステムの入力を用いて、非造影磁気共鳴血管撮影(Magnetic Resonance Angiography:MRA)画像及び/又は磁気共鳴静脈撮影(Magnetic Resonance Venography:MRV)画像を生成するために、適切なプログラムコード構造にアクセスする。
【0010】
また、MRIシステム20は、RF受信部40を含む。RF受信部40は、入力した情報をデータプロセッサ42に送ることで、処理された画像データをディスプレイ24に表示させる。MRIデータプロセッサ42は、画像再構成プログラムコード構造44及び磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)画像メモリ46(例えば、例示的な実施形態及び画像再構成プログラムコード構造44による処理で得られるMR画像データを格納するためのメモリ)へアクセスする。
【0011】
また、図1には、MRIシステムプログラム/データ記憶装置50の一般的な説明を示している。MRIシステムプログラム/データ記憶装置50では、MRIシステムの様々なデータ処理構成要素へアクセス可能なコンピュータ可読の記憶媒体に、プログラムコード構造(例えば、腸骨部、大腿部、及び腓部の生体組織の非造影MRA及び/又はMRV画像等のマルチステーションMR画像の生成、操作者から入力される情報など)が格納される。当業者には明らかなように、プログラム記憶装置50は、セグメント化されてもよく、少なくとも一部分が、通常操作におけるそのような格納されたプログラムコード構造を最優先で必要とするシステム20の処理コンピュータの異なる構成要素に直接接続されてもよい(すなわち、MRIシステムコントローラ22に通常格納され直接接続されるのではなく)。
【0012】
実際に、当業者には明らかなように、図1は、後述する例示的な実施形態を実現するために修正された典型的なMRIシステムを非常に高度に簡略化した図である。システムの構成要素は、様々な論理集合の「ボックス」に分割されており、典型的には、多数のデジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)と、マイクロプロセッサと、専用処理回路(例えば、高速A/D変換、高速フーリエ変換、アレイ処理等用)とを含む。これらのプロセッサの各々は、典型的には、クロック制御された「ステートマシン」であり、物理的なデータ処理回路は、クロックサイクル(または、所定数のクロックサイクル)ごとに、ある物理的状態から別の物理的状態に移る。
【0013】
処理回路(例えば、CPU、レジスタ、バッファ、演算装置等)の物理的状態が、操作過程で1つのクロックサイクルから別のクロックサイクルに徐々に変化するだけでなく、関連データ記憶媒体の物理的状態(例えば、磁気記憶媒体内のビット記憶場所)が、このようなシステムが動作する過程で、ある状態から別の状態に変換される。例えば、MRイメージングの再構成処理の終わりに、物理的な記憶媒体内のコンピュータ可読でアクセス可能なデータ値の記憶場所の配列(例えば、複数桁のバイナリ表示のピクセル値)が、ある先行状態(例えば、全て一様に「0」値、または全て「1」値)から新しい状態に変換される。そのような配列の(例えば、ピクセル値の)物理的な場所の物理的状態は、最小値と最大値との間で変化し、実世界の物理的イベント及び条件(例えば、撮像空間にわたる被検体の組織)を示す。当業者には明らかなように、記憶されたデータ値のこのような配列は、命令レジスタに順次読み込まれ、MRIシステム20の1つ以上のCPUによって実行されたときに、MRIシステム内で特定のシーケンスの動作状態を引き起こして遷移させる特定の構造のコンピュータ制御プログラムコードと同様に、物理的な構造を表し構成する。
【0014】
以下で説明する例示的な実施形態は、MRIデータの収集及び/又は処理及び/又はMR画像の生成及び表示のための改善された方法を提供する。
【0015】
典型的には、マルチステーションMRI用のワークフローは、任意のステーションにおいて、次の撮像ステーションに進む前に、全ての準備スキャン及び診断スキャンを完了する。例えば、典型的な腸骨部→大腿部→腓部のシーケンスにおいて、最初の腸骨部の撮像ステーションでは、準備スキャン及び診断スキャンの両方が、次の撮像ステーション(例えば、大腿部の組織)へ移動する前に実行される。そして、次の撮像ステーションでは、再度、全ての準備スキャン及び診断スキャンが、次の撮像ステーション(例えば、腓部の組織)へ移動する前に実行される。当然ながら、同じ撮像ステーションが逆の順番(すなわち、腓部→大腿部→腸骨部)で扱われる場合もある。
【0016】
典型的には、準備スキャンの間に、周知の位置決め画像のイメージング(例えば、いくつかのスライスに対して短いグラディエントエコーシーケンスを用いたイメージング)、MAP画像の収集(アレイ状のRFコイルを用いてパラレルイメージングを実行する場合に、撮像対象の生体組織に対する個々のRFコイルの感度の有効範囲を決定するためのMAP画像の収集)、シミング(shimming)用のマップ画像の収集、心電計(Electrocardiograph:ECG)関連のイメージング、及び、ECGのトリガー時間の関連分析等が実行される。
【0017】
なお、ここでいうシミングには、B0シミング及びB1シミングがある。B0シミングは、シムコイルにより発生させた補正磁場を静磁場磁石が発生する静磁場に重畳することで、撮像領域における静磁場を均一化することをいう。シミングの計算では、関心領域における磁場分布を計測するための信号収集を実際に行い、シミングの対象としている磁場成分ごとに磁場分布を展開し、静磁場の不均一成分を打ち消す補正磁場を求める。そして、補正磁場を発生するために各シムコイルに供給すべき電流値すなわち補正値を計算する。つまり、本実施形態における準備スキャンとは、関心領域における磁場分布を計測するための信号収集を行うことである。なお、B0シミングとして、RFパルスの中心周波数を設定することを意味することもあり、本実施形態では、磁場均一性の補正だけでなく、RFパルスの中心周波数設定を含んでもよいし、別々でもよい。別々の場合は、B0シミングとは別に、RFパルスの中心周波数を設定するための周波数スペクトラム収集を準備スキャンとして実行する。また、B1シミングは、RFパルスの位相、振幅を設定すること、RFパルスのムラを画像補正により均一化することをいい、本実施形態では、少なくとも一方を行うことをいう。準備スキャンは、RFパルスの位相、振幅を設定するために、例えば撮像部位の外形や楕円率を求めるための信号収集、撮像部位の画像の信号ムラを求めるための信号収集を行うことである。
【0018】
当然ながら、このような準備スキャンの後でのみ、実際の診断スキャン(例えば、被検体の生体組織の特定領域をカバーする3次元MRI処理)が実行される。典型的には、操作者が、被検体の収縮期の心位相と拡張期の心位相とを一致させるための適切なECG又は末梢脈波ゲートのトリガー遅延時間を決定する。このトリガー遅延時間は、後に3次元診断MRIスキャン(例えば、フレッシュブラッドイメージング(Fresh Blood Imaging:FBI)用のスキャン)の間で用いられる。しかし、準備スキャンが所定の撮像ステーションで所定の生体組織の部位を撮像するための診断スキャンの直前に行われた場合でも、収縮期及び/又は拡張期の遅延時間は、診断スキャンの間に変化することがある。この遅延時間の変化は、当然ながら、得られる診断画像の質に悪影響を与える。さらに、操作者が収縮期及び拡張期のトリガー遅延時間を決めることが、検査全体の時間を長くする一因となっている。
【0019】
抹消組織FBIでは、位置決め画像、ECG−prep画像、又は、最大流量に対する位相コントラスト画像を取得するのが一般的である。操作者がこれらの画像から収縮期及び拡張期のトリガー遅延時間を決定することで、最終的に、3次元FBI(収縮期スキャン及び拡張期スキャン)を行うことができる。典型的には、これが3つ又は4つ程度のステーション(例えば、大動脈腸骨動脈部、大腿部、腓部、足部等の連続する被検体の生体組織)で、繰り返されていた。これは時間を要するだけでなく、適切な心位相の遅延時間等を決定するためのデータ収集にはいくつか複雑なものがあるため、操作者に経験が必要である。
【0020】
現在では、収縮期及び拡張期のトリガー遅延時間を自動的に決定することが可能な自動ECG機能(例えば、ECG−prep画像の取得を必要とせずに心電計信号から直接トリガー時間を決定する機能)も利用できる。しかし、これまでは、このような機能がマルチステーションFBI画像収集に使われることはなかったようである。
【0021】
FBI技術及び自動ECG技術については、例えば、米国特許出願公開第2010/0249574号明細書に詳細に記載されている。この中で特に注目される点は、自動的に決定された収縮期及び/又は拡張期の時間周期は、それぞれ異なる領域(例えば、腸骨部、大腿部、腓部)に適切に対応するように調整する必要があるということである(例えば、段落[0022]〜[0023]を参照)。MRIシーケンスのトリガー時間における遅延は、被検体の心臓からの距離及び/又は血流速度の変化に応じて、広い範囲で変化してもよい。遅延されたトリガー時間(例えば、ECGのR波からMRIデータ収集スキャンシーケンスの開始までの経過時間)は、異なる心周期特性を有する異なる人体部位を撮像する際に、自動的に調整されてもよい。また、自動ECGのタイミングは、ECG信号と指又は手のような末梢生体部位から得られるPPG信号との間の時間差、及び/又は、平均血流速度の差に影響されてもよい。
【0022】
FBI法は、非造影(コントラスト強調をしない)MRA法であり、連続的な心周期の間に、R波のようなECG波の基準部と同期したECGトリガー信号から所定の遅延時間だけMRIシーケンスのトリガー時間を遅延させながら、エコーデータを繰り返し取得するために用いられる。各遅延は、SSFP(Steady State Free Precession)シーケンスや、ハーフフーリエ(Half−Fourier)法を用いるFASE(Fast Asymmetric Spin Echo又はFast Advanced Spin Echo)のようなSE(Spin Echo)系のMRIシーケンスを用いて、被検体の心時相を表す。例示的なFBI法によれば、血液中の磁化の横緩和(T)成分が複数の心拍周期にわたって回復され、血液のT磁化成分が強調された水(血液)強調画像が血管画像として得られる。FBI法では、所定のスライスエンコード量に対するエコーデータ(ボリュームデータ)を取得するための3次元スキャンが実行される。例えば、FBI法によるイメージングでは、複数の心周期にわたってSSFPシーケンス又はFASEシーケンスにより収縮期及び拡張期それぞれの心位相におけるデータを収集した後に、収集した収縮期及び拡張期の画像データセット間で差分をとることによって、動脈と静脈とを区別した血流画像データを良好なコントラストで生成することができる。
【0023】
イメージング条件設定ユニットにおける心拍数の取得は、ECGユニット又はPPGユニットから被検体のECG心拍数情報を取得する役割を果たし、これにより被検体の心拍数(Heart Rate:HR)及びECGデータが遅延時間設定プロセスに送られる。ここで取得される心拍数情報には、ECG信号(又はPPG信号)だけでなく、HRそのものと、ECG信号(又はPPG信号)内の隣接する基準波間の時間間隔が含まれる。ECGユニット又はPPGユニットがHRを計算する機能を有する場合には、心拍数取得モジュールは、HRをECGユニット又はPPGユニットから直接取得してもよい。また、心拍数取得モジュールは、ECG信号、PPG信号、又は、ECG信号又はPPG信号における隣接する基準波間の間隔をECGユニット又はPPGユニットから取得し、ECG信号又はPPG信号に基づいてHRを計算してもよい。
【0024】
なお、心拍数取得モジュールは、複数のHRを計算又は取得し、その複数のHRの平均値を精度改善のために遅延時間設定モジュールに供給してもよい。例えば、心拍数取得モジュールは、HRを10回程度取得し、取得した10個のHRの平均値を、遅延時間設定モジュールに供給するHRとして用いてもよい。例えば、実用上の精度を有する平均HR値を計算するために、ほんの4回から20回までHRデータを取得してみるとよい。
【0025】
遅延時間設定モジュールは、心拍数取得モジュールから取得したHRに基づいて、心拍数と同期したイメージングにおける撮像条件として、基準波からの適切な遅延時間を設定する機能を有する。遅延時間を設定する方法は、例えば、HRと遅延時間との関係を表す計算式を用いてHRから遅延時間を計算する方法や、HRと遅延時間との関係を示すテーブルを作成し、そのテーブルを参照して、被検体のHRに対応する遅延時間を取得する方法などである。
【0026】
また、血流画像のためのイメージング領域は、任意に設定することができる。したがって、下肢の血流イメージング又は冠動脈イメージングのための撮像条件を設定することができる。しかし、血流速度は、撮像部位によって異なる。したがって、ECGデータ取得タイミングの基準波からの適切な遅延時間は、撮像部位に応じて異なる値として、より高い精度で設定するのが望ましい。このため、HRと遅延時間との関係を示す計算式は、撮像部位ごとに設定してもよい。例えば、下肢のような下端部における血流速度は心臓付近の血流速度と比べて遅いため、人体の下端部用の遅延時間は心臓付近の撮像部位用の遅延時間と異なるように設定してもよい。この場合には、遅延時間は、心臓から撮像位置までの距離だけでなく、ECG信号と手の指等の末梢部から得られるPPG信号との時間差、及び/又は、平均血流速度の差に応じて決定してもよい。
【0027】
正確なオフセット時間(例えば、後述するα)の値は様々であってもよいが、一般的に拡張期用のECGオフセット時間は収縮期用のECGオフセット時間と異なってもよい。また、収縮期用のECGオフセット時間は、拡張期用よりも小さくてもよい。例えば、収縮期用のECGオフセット時間は、0〜数十ミリ秒であってもよく、拡張期用のECGオフセット時間は、さらに100〜200m秒あってもよい。
【0028】
拡張期用のECGオフセット時間は、特定の撮像ステーションの位置に応じて、より小さく設定してもよい。前述のように、各ステーションにおける収縮期/拡張期のオフセット時間は異なる値であってもよく、また場合によっては、いくつか又は全てのステーションにおけるオフセット時間が同じ値であってもよい。例えば、拡張期用のECGオフセット時間は、心臓から遠い位置ほど小さく設定してもよい。例えば、下肢の血流イメージングの場合には、拡張期用のECGオフセット時間は、腸骨部のステーション、大腿部のステーション、腓部のステーションの順に、より小さく設定してもよい。なお、収縮期のオフセット時間も、同様に、心臓から遠い位置ほど小さく設定してもよい。
【0029】
例えば、拡張期用のECGオフセット時間は、ほぼ以下の値であってもよい。
腸骨部=+150ms、大腿部=+140ms、腓部=+100ms、又は、
腸骨部=+150ms、大腿部=+150ms、腓部=+120ms、等
【0030】
また、所定の体型の集合、撮像ステーション、心周期の位相等に応じて、適切な式を導き出してもよい。例えば、腓部、大腿部、及び腸骨部用のFBIにおける平均的な体型については、以下の式が適切でありうる。
収縮期の遅延(m秒)=(550−2HR)/2
拡張期の遅延(m秒)=(RR−550+2HR)/(2+α)
【0031】
ここで、RRは、ECG信号における2つの連続するR波間の周期であり、αは腓部、大腿部、腸骨部の領域毎に異なる値が用いられてもよい(例えば、上述のように、各領域に対して、異なる値がそれぞれ用いられる)。自明であるが、ミリ秒単位のHRは、RR=60000/HR又はHR=60000/RRの式を用いて、R−R間隔から即座に計算することができる。
【0032】
典型的な腸骨部、大腿部、腓部の3つのステーションのFBIスキャンシーケンスは、従来のマルチステーションワークフローであること、及び/又は、マルチステーションFBI画像収集では自動ECG機能が用いられないことから、典型的には、約40分の時間がかかることもあり得る。しかし、検査全体の時間は、自動ECG機能を利用すれば、約半分に短縮することができる(例えば、同じ3ステーションFBI手順に対して20分程度まで)。また、図2に示す改良型マルチステーションワークフローを用いることによって、同じ手順に対し、検査全体の時間はさらに最大約15分にまで短縮することができる。これにより、検査全体の時間を大幅に短縮することができ、また、これに応じて、MRIシステムの利用時間も改善することができる。
【0033】
ここでは、現在の好ましい例示的な実施形態として、MRA画像及び/又はMRV画像を提供する非造影FBIスキャンに関する実施形態について説明する。しかし、当業者には明らかなように、この実施形態は、他のマルチステーションMRIの手順にも適用することができる。例えば、TOF(Time Of Flight)−MRIは、もうひとつの周知の種類の血管撮影法である(例えば、TOF−MRIは、基本的に、静止しているMR核と流れているMR核とを区別することが可能な方法である)。
【0034】
例示的な実施形態において、ワークフローのステーションの順序(例えば、頭から足、又は、足から頭)は、選択可能である。この実施形態では、伸びた末梢組織構造(例えば、この末梢組織である腸骨部から大腿部と腓部にかけて伸びている下肢)に沿った複数の撮像ステーションで取得された非造影FBIスキャン画像を得ることができる。ここで、図2に示す例示的ワークフローシーケンスでは、最初に、全ての撮像ステーションについて、位置決め画像、(必要に応じて)シミング情報、MAP画像など、所定のシステムで準備スキャンの間に必要とされ得るものの全てが収集される。なお、ここでいうシミング情報は、スキャン(例えばRFパルスの中心周波数設定やRFパルスの位相及び/又は振幅設定)や診断スキャンデータから画像を再構成する際に用いられる。その後、各ステーションでステーションごとに収集された準備スキャンデータに基づいて事前に設定されたセットアップ情報を用いて、全てのステーションで(例えば、逆又は同じ順番で)実際の3次元FBI診断スキャンが実行される。
【0035】
診断スキャンのパラメータは、最初にスキャンされたステーションから準備ステーションデータが得られしだい開始することができるマルチタスクモードで設定してもよい。これにより、操作者によって中断されることなく、準備スキャンから診断スキャンへ切れ目なく進むことができる。ここでいう診断スキャンパラメータは、例えば、FOV(Field Of View)や撮像位置などである。なお、シミング情報やMAP画像に関する設定情報については、操作者から受け付けるのではなく、MRIシステムが自動的に設定してもよい。
【0036】
また、自動ECG機能を適用できる場合(例えば、FBIに適用できる場合)は、診断スキャンの間に自動ECG機能を用いることで、(a)準備手順の間に手動で収縮期/拡張期を決める必要がなくなり、かつ、(b)実際の診断スキャンの間に生じる被検体の収縮期/拡張期のトリガーポイントの変化に自動的に適応すること(例えば、心臓に対するステーション位置の関数として、収縮期/拡張期のトリガー時間を自動的に調整することを含む)ができる。
【0037】
また、要望に応じて、あるステーションで診断スキャンが完了した後に、次のステーションでの診断スキャンに進む前に、収集された直後の診断スキャンデータの画像品質を確認することができるように、比較的低い解像度の画像(例えば、FBI処理用に差分処理した収縮期/拡張期の最大値投影(Maximum Intensity Projection:MIP)画像)をコンソールに表示させてもよい。その後、必要であれば、操作者が(要望に応じて、変更されたイメージングパラメータを用いて)新しい診断データを収集しなおすことを選択できるようにしてもよい。あるいは、手動による確認をさせるために停止することなく、連続する各ステーションで診断スキャンデータの全てを自動的に収集するようにしてもよい。さらに、前述のように、いったん準備スキャンを開始すると、その後は処理を中断することなく、全ての準備スキャン及び診断スキャンを切れ目なく進めることが可能である。例えば、マルチタスクモードを使用する場合には、操作者は、任意のステーションについて、速やかに診断スキャンパラメータの入力/設定を始めることができる(これにより、例えば、他のステーションの準備スキャンが行われている間でも、操作者による入力を待つ必要なく、希望時にはいつでも直ちに診断スキャンを開始できる)。
【0038】
本例示的な実施形態によれば、特に、診断スキャンのために、自動ECG機能が用いられる場合、及び、複数の撮像ステーションに沿ってシーケンスが自動的に実行される場合に、操作者の作業負荷が大幅に軽減される。また、この例示的な実施形態によれば、準備スキャン及び診断スキャンの両方に関するワークフローが大幅に改善される。全体的に考えると、検査全体に必要な時間が大幅に短縮される。
【0039】
また、マルチステーションのイメージング(例えば、腸骨部、大腿部、腓部の組織領域におけるイメージング)に関する検査全体の時間を短縮するために、必要な全ての画像を系統的に自動的に収集してもよい。例えば、本システムは、腓部組織、大腿部組織、及び腸骨部組織から、全ての位置決め画像をいずれの所望の順番(例えば、足から頭の順、又はその逆)で収集してもよい。これには、アキシャル(axial)方向及び/又はコロナル(coronal)方向のイメージングにおけるギャップを調整できるようにしながら、多方向スキャン(例えば、アキシャル方向及び/又はコロナル方向)を行うことも含まれる。これにより、操作者がより簡単に所望の組織の対象範囲を決定できるようになり、この結果、連続する組織部位ごとに、所望のFBI3次元スラブの位置を適切に設定することが可能になる。また、これらの準備処理の間に、MAP画像、シミング情報(例えば、3テスラ(Tesla)静磁場及び上記MRIシステムのための情報)を収集して記録してもよい。
【0040】
少なくとも1つの準備スキャンが完了して操作者が所望の診断画像の撮像範囲(例えば、特定のスライス及び/又は3次元スラブのための範囲)を決定した後に、操作者が収集された準備データを確認して、そのスキャンステーション用の診断スキャンパラメータを設定してもよい。あるいは、全ての準備スキャンデータを先に収集し、その後、診断スキャンパラメータの設定を開始し、適切な「開始」入力コマンドをアクティブにすることにより、(例えば、できる限りいかなる所望の順番でも)複数の撮像ステーションの全てから診断データを収集するようMRIシステムに指示してもよい。また、あるステーションで準備スキャン又は診断スキャンが実行されている間に、操作者が、残りのステーション用の準備データを、まだ設定済みでなければ、設定し続けてもよい。また、一般的に、所望の診断スキャンパラメータの設定にかかる時間(例えば、およそ20秒程度)は診断スキャンの実行にかかる時間(例えば、およそ2分程度)よりもかなり短いことが多いため、自動的に順次進行しているマルチステーション診断スキャンは、いったん開始したら、操作者を追い越すことはない。もし追い越せば、操作者が追い付くまでに、短い待機ループが生じる可能性がある。あるいは、操作者が全てのステーションについて所望の診断スキャンパラメータを設定した後に、自動的な診断スキャンを開始してもよい。
【0041】
いずれの場合でも、マルチステーションの準備スキャンに基づいて取得されたセットアップデータを用いて、MRIシステム自体が、自動的にあるステーションから次のステーションに進むことで、適切に診断データの収集を実行してもよい。一方、要望に応じて、あるステーションで診断イメージングデータを取得した後に、次のステーションに移る前に操作者に直ちに確認及び承認をさせるために、簡単な低解像度の画像を生成して表示させることも可能である。なお、このオプションが選択されて、操作者が承認をしない場合には、操作者がその特定のステーションで収集された診断画像データに満足するまで、要望に応じて異なる診断スキャンパラメータを用いて、診断スキャンを繰り返すようにしてもよい。
【0042】
また、前述のように、所定の状況で要求される準備手順、セットアップ手順、及び/又は診断スキャン手順に応じて、マルチタスク処理が用いられてもよい。例えば、腸骨部において準備スキャンデータ又は診断スキャンデータを収集しながら、大腿部用に収集された導出済みの準備スキャンデータを確認して、次の(すなわち、大腿部の)撮像ステーションで用いるための診断スキャンパラメータを設定してもよい。また、準備スキャンの時間を節約するために、準備スキャンがまだ実行されず、まだMAP画像やその他の情報を記録せずに、さらなる準備スキャンが必要とされている状態となることもあり得る。このような場合に、自動的に次の収集を行い、現在の撮像ステーションで、そのステーションで直後に実行される診断スキャンの簡略的な準備部分として、このようなデータを実質的に即時に使用することが可能な状態にすることが可能である。また、もしも時間があれば、このような自動スキャンパラメータを1つの領域用に一旦設定し、マルチタスク処理を進めて、次のステーションのこのようなパラメータを同様に設定するなどしてもよい。
【0043】
前述のように、ある領域(例えば、腸骨部)でFBI画像を取得した後に、次の撮像ステーションに進む前に操作者にその結果の承認を求めるために、より低い解像度の差分MIP画像(例えば、より高い解像度の診断画像に用いられるような256又は512程度のピクセルの代わりに、128×128ピクセルの差分MIP画像)を直ちに生成してモニターに表示することが望まれる場合もある。そして、より低い解像度の簡易な画像が操作者によって承認されない場合には、操作者の裁量で撮像パラメータを変更したうえで、その特定領域(例えば、腸骨部)に対する診断スキャンデータ取得を繰り返すこともできる。
【0044】
例えば、操作者が観察する領域内に、GUI(Graphical User Interface)として、図2に示すような複数の撮像ステーションの領域を表示するのが好適である(例えば、場合により、それぞれのステーションワークフローに関する比較的小縮尺のより低い解像度の画像を含める)。好ましくは、作業者が、取得された準備スキャンデータを考慮して診断スキャンパラメータを設定する際に、観察対象となる任意のワークフロー項目を指定してディスプレイスキャンの様々な「作業領域」に移動させてもよい。これにより操作者は、位置決め画像等のためのギャップを変えるなどのように、スキャン条件を設定することができる。
【0045】
図3に、図2に示す改良型ワークフローを実現するための例示的なコンピュータプログラムコード構造を示す。まず、ステップ400で、マルチステーションMRI手順/モジュールが入力される。ステップ402で、所望の初期パラメータを操作者から受け付ける。ここでいう所望の初期パラメータは、例えば、所望のマルチステーション生体組織1〜M(例えば、腸骨部、大腿部、及び腓部の組織に相当する1〜3)や、所望のワークフローの順序(例えば、頭から足、又は足から頭)、あるステーションにおいて次のステーションに進む前に診断画像データの収集手順の中で低解像度画像による確認を希望するか否かを示すフラグなどである。
【0046】
初期設定の後に、ステップ404で、撮像ステーションのカウンタNを「1」に初期化する。また、ステップ406で、患者用診断を移動する。このとき、患者用診断を撮像ステーションNに移動することで、対応する被検体の組織をMRIシステムの撮像空間内に位置付ける。また、ステップ408で、この撮像ステーションNについて、望ましくは全ての所望の準備処理を実行する。ここでいう準備処理は、位置決め画像やMAP画像、シミングマップ等の収集などである。望ましくは、初期設定の後で、操作者とさらに対話をすることなく、これらの準備手順を行う。これにより、準備スキャンデータを収集しながら、自動的なマルチステーションシーケンスを継続することができる。そして、ステーションNについて準備スキャンデータが利用可能になると、ステップ409で、要望に応じて、ステーションNについて診断スキャンパラメータを設定するためのマルチタスクデータ入力を開始するために、操作者が準備スキャンデータを利用することができるようにする(すなわち、後にそのステーションに対する診断スキャニンが希望された場合はすぐに、診断スキャンパラメータが既に設定されて使用可能な状態となるようにする)。その後、ステップ410で、ステーションカウンタNをインクリメントし、ステップ412で、指定された全てのステーションについて準備処理が完了したかどうかを判定する。そして、全てのステーションについて準備処理が完了していない場合には、患者用寝台を移動するステップ406に制御を戻す。
【0047】
一方、複数のステーション全てについて準備スキャンデータが収集されると、ステップ412の判定が行われ(この判定には、任意の操作者インタフェース又は準備スキャンが完了したかどうかの自動判定が含まれてもよい)、その後、図3に示す診断処理の部分に制御を進める。まず、ステップ415で、ステーションN(この例では、最初はNの値をMのままにしておく)について診断MRIスキャンデータを取得する。ここで、ステップ415に示すように、かかる診断データを収集するために自動ECG機能が利用される。これにより、準備段階における操作者の時間及びマシン時間を低減させることができるとともに、診断イメージングの間に被検体の収縮期/拡張期の心時相の変化に自動的に適応することができる。また、米国特許出願公開第2010/0249574号明細書に記載されているように、収縮期/拡張期のトリガー時間は、特に、被検体の心臓に対するステーションの位置の関数として自動的に調整することができる(例えば、大腿部のステーションに対するトリガーポイントは、腸骨部ステーション等に対するトリガーポイントよりもわずかに遅延される)。
【0048】
そして、ステップ415で診断スキャンデータが収集されると、ステップ416で、低解像度画像の確認を希望するようにフラグが設定されていた場合には、ステップ417で、操作者による承認のために、速やかに低解像度画像を生成して表示させる。例えば、FBIが利用される場合には、収縮期/拡張期の画像の差分処理及びMIP処理を速やかに行うことにより、ここで表示するための低解像度画像として128×128ピクセルの画像を生成してもよい。また、ステップ418で、表示された低解像度画像を操作者が承認しなかった場合には、ステップ420で、操作者に必要に応じて診断スキャンパラメータをリセット/変更させ、その後、この同じステーションについて診断MRIスキャンデータを再収集するためにステップ415に制御を戻す。
【0049】
また、操作者が表示された低解像度画像に満足した場合、又は、低解像度画像の確認を希望するようにフラグが設定されてなかった場合には、ステップ422に制御を進めて、ステーションカウンタをデクリメントする。その後、ステップ424で、全てのステーションについて処理が完了したかどうかを判定する。そして、全てのステーションについて処理が完了していない場合には、患者用寝台を次の撮像ステーションに移動するステップ426に制御を進め、その後、この次のステーションで診断MRIスキャンデータを再収集するためのステップ415に制御を進める。
【0050】
こうして、全ての撮像ステーションについて処理が行われた後に、ステップ424からステップ428に制御を進め、ステップ428でリターン制御が行われる(例えば、最初にマルチステーションMRIモジュール400を呼び出してスタートさせたプログラムルーチンのステップに戻る)。
【0051】
なお、当業者には明らかなように、要望に応じて、準備スキャン及び診断スキャンの順番は任意に規定してもよい。例えば、準備スキャンを頭から足の方向で行ってもよく、また診断スキャンを足から頭又は頭から足のいずれの順序で行ってもよい。さらに、スキャンするステーションの順番は、生体組織の配列に合わせる必要はない。また、自明であるが、ステーションカウンタのインクリメント、デクリメントの設定等については、任意のステーションの順番で、細かい変更が生じ得る。
【0052】
また、例示的なGUIによって、ワークフローが改善されることから、操作者によるスキャン条件の設定を改善できるとともに、末梢組織のマルチステーションイメージングにおいて、全てのステーションにおける画像を得るためのスキャン時間を短縮できる。また、診断イメージングの間に「自動FBI」を用いて算出されたECG又はPPGの遅延時間を使用することによって、ECG−prep画像の収集及び計算/FBI−Navi機能と比べて、診断スキャンで実際のリアルタイムな心拍数を用いることが可能になる。全スキャン時間は、このGUIで自動FBIを用いることによって、さらに短縮される。最適な実施形態では、(例えば、操作者が「スキャン開始」アイコン又はボタンを起動することによって)いったん処理が開始されると、マルチステーション処理の全体が切れ目なく行われ、操作者の操作が中断することによってマシンの動作が遅れることがなくなる。
【0053】
また、このシステムのGUIによって、末梢組織血流の非造影FBIスキャンのワークフローが改善される。また、位置決め画像及び/又はシミング情報を取得するための患者台の動きは、システム内に保持されたデータに基づいて行われる。このデータは、実際の診断スキャン条件の間に再度用いられる。各ステーションにおけるFBI取得は、診断データを収集するたびにこのデータを更新するために、ECG又はPPGの「インターバル取得(get interval)」機能として利用することができる。これにより、「自動ECG」機能を利用して収縮期及び拡張期のトリガー遅延を自動的に設定することができる。また、差分MIP診断画像の画像品質を確認するために、低解像度の差分MIPをコンソールに表示するのが望ましい。
【0054】
これにより、特に非造影MR血管撮影技術及びMR静脈撮影技術において、簡単な操作、より高速なスキャン、及び、より信頼性の高いイメージングを実現することができる。
【0055】
例示的実施形態により、腸骨部、大腿部、及び腓部等の複数のステーションにおける全スキャン時間が低減され、全てのスキャンを体系的及び自動的に取得することができる。例示的システムは、例えば、腓部から大腿部及び腸骨部の順番(足から頭の順番、又はその逆の順番)で、位置決め画像を取得する。また、位置決め画像のために、適切なギャップを有する複数方向のスキャン(アキシャル方向及びコロナル方向)を実行することができる。これにより、操作者がより簡単に被写域を決定することができる。また、FBIスラブ位置を腸骨部に設定すると、記録されたMAP及びシミングに関する情報が適用される。また、操作者は、スライスの範囲を決定した後に、スキャンボタンを押すだけで腸骨部の診断データを収集することができ、これを自動的に継続し、又は、要望に応じて後続の生体組織のために繰り返すことが可能である。また、4つのステーションが必要な場合には、同じ方法が適用される。また、データ収集の順序は選択することができる。すなわち、下部から上部の順番の代わりに、上部から下部の順番(または、あらゆる任意の所望の順番)を設定することができる。腸骨部のMR静脈撮影の場合には、非造影MR静脈撮影を得るために、このステーションで3つの画像を取得することができる。
【0056】
図4は、例示的な腸骨部、大腿部、腓部の効率的なマルチステーションイメージングプロセスによって取得されたコロナル方向、サジタル方向、アキシャル方向のMIP画像をまとめた図であり、結果として得られる典型的な256×256解像度の画像を示している。
【0057】
本発明のある特定の実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は、単なる事例として提示したものであって、本発明の範囲を限定するものではない。実際、本明細書で説明した新規の方法及びシステムは、様々な別の態様で具体化が可能である。さらには、本発明の精神を逸脱することなく、本明細書で説明した方法及びシステムにおいて様々な省略、置換、及び変更が可能である。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本発明の範囲と精神に収まると考えられる態様又は変更を有効範囲に含むためのものである。
【0058】
例えば、上記実施形態では、腸骨部、大腿部、腓部の3つのステーションについて非造影FBIスキャンを行う場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、被検体の胸部、腹部の2つのステーションや、胸部、腹部、下腹部の3つのステーションでマルチステーションMRIを行う場合も同様に実施が可能である。
【0059】
また、例えば、被検体の頭頸部及び脊椎部の2つのステーションについて脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)を撮像する場合も同様に実施が可能である。この例は、例えば、脊髄空洞症などの診断において用いることができる。この場合には、準備スキャンにおいて、頭頸部の撮像ステーション及び脊椎部の撮像ステーションそれぞれから準備スキャンデータを収集する。その後、撮像ステーションそれぞれに対応する準備スキャンデータに基づいて、撮像ステーションごとに診断スキャンパラメータを設定する操作を操作者から受け付ける。そして、診断スキャンにおいて、設定された診断スキャンパラメータを用いて、2つの撮像ステーションそれぞれで診断スキャンデータを収集する。
【0060】
なお、この場合には、準備スキャンでは、頭頸部及び脊椎部から任意の順で準備スキャンデータを収集することができる。例えば、準備スキャンでは、頭頸部、脊椎部の順で準備スキャンデータを収集してもよいし、逆に、脊椎部、頭頸部の順で準備スキャンデータを収集してもよい。また、診断スキャンでも、頭頸部及び脊椎部から任意の順で診断スキャンデータを収集することができる。例えば、診断スキャンでは、頭頸部、脊椎部の順で準備スキャンデータを収集してもよいし、逆に、脊椎部、頭頸部の順で準備スキャンデータを収集してもよい。
【0061】
また、この場合には、例えば、診断スキャンでは、被検体の心周期における拡張期に同期してCSFの画像データを収集する。例えば、診断スキャンでは、拡張期のECG信号をトリガーにして、ASL(Arterial Spin Labeling)法又はtime−SLIP(Spatial Labeling Inversion Pulse)法のシーケンスを実行することで、CSFの画像データを収集する。ここで、ASL法は、血液やCSFなどの流体そのものをRFパルスにより磁気的に標識化し、標識化した流体をトレーサとして用いることで、造影剤を用いずに、流体を可視化する手法である。また、time−SLIP法は、撮像領域に流出又は流入する流体を、この撮像領域とは独立の標識化領域で標識化し、撮像領域に流出又は流入する流体の信号値を高く又は低くすることで、流体を可視化する手法である。
【0062】
また、例えば、診断スキャンでは、被検体の呼吸に同期してCSFの画像データを収集してもよい。この場合には、例えば、被検体の横隔膜の位置変動や被検体に装着されたマーカーの位置変動を検出するナビゲータシーケンスを実行することで、被検体の呼吸を検知する。また、例えば、被検体に装着された呼吸センサから出力される信号、被検体に対して与えられる音声指示や、表示部に表示される指示などを検出することで、被検体の呼吸を検知してもよい。そして、検知した被検体の呼吸に同期しながら、ASLやtime−SLIPなどのシーケンスを実行する。このとき、例えば、呼吸の開始をトリガーとして、ASLやtime−SLIPなどのシーケンスを実行する。
【0063】
なお、この場合でも、各撮像ステーションにおいて、収集された診断スキャンデータの低解像度画像を次のステーションに進む前に表示し、その低解像度画像に対する承認を操作者から受け付けるようにしてもよい。また、操作者が低解像度を承認しない場合に、次の撮像ステーションに進む前に、診断スキャンパラメータをリセットして現在の撮像ステーションで診断スキャンデータを再収集するようにしてもよい。
【0064】
また、各撮像ステーションそれぞれで診断スキャンデータを連続して収集するようにしてもよいし、準備スキャンデータが収集されしだい、診断スキャンデータの収集を行うようにしてもよい。また、1つの撮像ステーションで診断スキャンデータを収集している間に、他の撮像ステーションで用いられる診断スキャンパラメータを設定するマルチタスクモードについても、前述した実施形態と同様に実施可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 ガントリ
11 寝台
12 静磁場磁石
14 傾斜磁場コイルセット
16 RFコイル
20 MRIシステム構成要素
22 MRIシステムコントローラ
24 ディスプレイ
26 キーボード/マウス
28 プリンタ
30 MRIシーケンスコントローラ
32 傾斜磁場コイルドライバ
34 RF送信部
36 送信/受信スイッチ
40 RF受信部
42 MRIデータプロセッサ
46 MR画像メモリ
50 プログラム/データ記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチステーションMRIにおける複数の異なる撮像ステーションそれぞれに置かれた被検体の異なる部位から、少なくとも位置決め画像データを含む準備スキャンデータを収集する第1の収集部と、
前記撮像ステーションそれぞれに対応する前記準備スキャンデータに基づいて、前記撮像ステーションごとに診断スキャンパラメータを設定する操作を操作者から受け付ける受付部と、
前記診断スキャンパラメータを用いて、前記複数の異なる撮像ステーションそれぞれで診断スキャンデータを収集する第2の収集部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項2】
前記受付部は、前記準備スキャンデータの収集又は前記診断スキャンデータの収集が行われている間に、前記診断スキャンパラメータを設定する操作を受け付け、
前記第2の収集部は、前記撮像ステーションの少なくとも1つについて前記診断スキャンパラメータが設定された後に、前記診断スキャンデータの収集を開始する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項3】
前記第2の収集部は、前記診断スキャンデータとして、前記被検体の心周期における拡張期及び収縮期に同期して非造影FBI画像データを収集することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項4】
前記被検体の異なる部位は、腸骨部、大腿部及び腓部を含み、
前記第1の収集部は、前記腸骨部、前記大腿部及び前記腓部から任意の順で前記準備スキャンデータを収集し、
前記第2の収集部は、前記腸骨部、前記大腿部及び前記腓部から任意の順で前記診断スキャンデータを収集する
ことを特徴とする請求項3に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項5】
前記第2の収集部は、前記診断スキャンデータとして、前記被検体の心周期における拡張期又は前記被検体の呼吸に同期して脳脊髄液の画像データを収集することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項6】
前記被検体の異なる部位は、頭頸部及び脊椎部を含み、
前記第1の収集部は、前記頭頸部及び前記脊椎部から任意の順で前記準備スキャンデータを収集し、
前記第2の収集部は、前記頭頸部及び前記脊椎部から任意の順で前記診断スキャンデータを収集する
ことを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項7】
前記第2の収集部は、前記撮像ステーションごとに、各撮像ステーションの位置の関数として調整されるECGに関するトリガー時間を用いて、前記診断スキャンデータを収集することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項8】
前記第2の収集部は、前記複数の異なる撮像ステーションの各撮像ステーションにおいて、収集された診断スキャンデータの低解像度画像を次のステーションに進む前に表示し、当該低解像度画像に対する承認を操作者から受け付けることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項9】
前記第2の収集部は、前記操作者が前記低解像度を承認しない場合に、次の撮像ステーションに進む前に、前記診断スキャンパラメータをリセットして現在の撮像ステーションで診断スキャンデータを再収集するか否かを操作者に選択させることを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項10】
前記第2の収集部は、前記複数の異なる撮像ステーションそれぞれで診断スキャンデータを連続して収集することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項11】
前記第2の収集部は、前記第1の収集部によって前記準備スキャンデータが収集されしだい、前記診断スキャンデータの収集を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項12】
前記第2の収集部は、1つの撮像ステーションで前記診断スキャンデータを収集している間に、他の撮像ステーションで用いられる診断スキャンパラメータを設定する操作を受け付けることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項13】
前記第1の収集部は、前記準備スキャンデータとして、前記診断スキャン又は前記診断スキャンデータから画像を再構成する際に用いられるシミング情報をさらに収集することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項14】
マルチステーションMRIにおける複数の異なる撮像ステーションそれぞれに置かれた被検体の異なる部位から、少なくとも位置決め画像データを含む準備スキャンデータを収集するステップと、
前記撮像ステーションそれぞれに対応する前記準備スキャンデータに基づいて、前記撮像ステーションごとに診断スキャンパラメータを設定する操作を操作者から受け付けるステップと、
前記診断スキャンパラメータを用いて、前記複数の異なる撮像ステーションそれぞれで診断スキャンデータを収集するステップと
を含んだことを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。
【請求項15】
被検体の心拍数を取得する取得部と、
前記心拍数に基づいて、マルチステーションMRIにおける基準波からの遅延時間を設定する設定部とを備え、
前記設定部は、心臓から遠い位置ほど拡張期用のオフセット時間を小さく設定することを特徴とする磁気共鳴イメージングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−232137(P2012−232137A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−104898(P2012−104898)
【出願日】平成24年5月1日(2012.5.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】