説明

磁気熱交換用構造体及びその製造方法

磁気熱交換用構造体及びその製造方法が提供される。反応焼結磁気構造体,外被と少なくとも1つのコアとを含む複合構造体,及び2つ以上の複合構造体を含む積層構造体が提供される。各構造体は,(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む。ここで,0=a=0.9,0=b0.2,0.05=c=0.2,−1=d=+1,0=e=3であり,Mは,Ce,Pr,及びNdの1つ以上の元素であり,Tは,Co,Ni,Mn,及びCrの1つ以上の元素であり,Yは,Si,Al,As,Ga,Ge,Sn,及びSbの1つ以上の元素であり,Xは,H,B,C,N,Li,及びBeの1つ以上の元素である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,磁気熱交換用構造体,特に,焼結磁気構造体,及び,外被と少なくとも1つの焼結磁気コアとを含む構造体,並びに,それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気熱量効果とは,磁気的に誘導されたエントロピー変化が熱の発生又は吸収へと断熱変換されることをいう。したがって,磁気熱量物質に磁場を印加することにより,エントロピー変化を誘導し,熱の発生又は吸収をもたらすことができる。この効果を利用して,冷却及び/又は加熱を提供することができる。
【0003】
磁気熱交換技術は,利点を有しており,その利点は,磁気熱交換器の方が,気体圧縮・膨張サイクルシステムよりも,原理的に,エネルギー効率がよい,ということである。また,磁気熱交換器は,クロロフルオロカーボン(CFC)などのオゾン層破壊化学物質を使用していないので環境に優しい。
【0004】
米国特許第6,676,772号明細書に開示されているような磁気熱交換器は,典型的には,ポンプ再循環システムと,液体冷却剤などの熱交換媒体と,磁気熱量効果を示す磁気冷却作動物質の粒子で満たされたチャンバーと,チャンバーに磁場を印加する手段とを含む。
【0005】
近年,La(Fel-aSial3,Gd5(Si,Ge)4,Mn(As,Sb),及びMnFe(P,As)などの室温の又は室温に近いキュリー温度Tを有する物質が開発されてきている。キュリー温度は,磁気熱交換システムの物質の動作温度となる。したがって,これらの物質は,建物の温度制御,家庭用・産業用の冷蔵庫及び冷凍庫,並びに,自動車の温度制御などの用途での利用に適している。
【0006】
これらの物質のさらなる開発が,組成を最適化し,エントロピー変化を増大させるため,また,エントロピー変化が起こる温度範囲を拡大させるため,に行われてきている。これにより,印加する磁場を小さくしても冷却を十分に行うことや,冷却サイクルをより広い温度範囲で安定的に実現することが可能となる。小さい磁場は,電磁石や超電導磁石ではなく,永久磁石によって生成することができるものであるので,これらの手法は,熱交換システムの設計を単純化することを目的としている。しかしながら,磁気熱交換技術をより広範囲の用途に適用するには,さらなる改善が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は,確実にかつコスト効率よく製造可能な,また,磁気冷却システムでの使用に適した形態で製造可能な磁気熱交換システム用磁気構造体を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は,構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は,(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む反応焼結磁気構造体を提供する。ここで,0≦a≦0.9,0≦b≦0.2,0.05≦c≦0.2,−1≦d≦+1,である。
【0010】
「反応焼結」の語は,反応焼結接合により,粒が結合して調和した粒となった構造体を表す。反応焼結接合は,異なる組成の前駆体粉末の混合物を加熱処理することにより生成される。異なる組成の粒子は,反応焼結処理中,互いに化学的に反応して,所望の最終相又は最終生成物を形成する。従って,粒子の組成は,加熱処理の結果,変化する。相形成処理はまた,粒子を結合させて,機械的完全性を有する焼結体を形成する。
【0011】
反応焼結は,従来の焼結とは異なる。これは,従来の焼結においては,その焼結処理前に粒子が既に所望の最終相から構成されているからである。従来の焼結処理は,隣接粒子間の原子を拡散させ,粒子を結合させる。したがって,従来の焼結処理の結果,粒子の組成は,変化しないままである。
【0012】
反応焼結磁気構造体は,単純な製造処理を用いて容易に製造できるという利点を有する。磁気熱量相は,前駆体粉末に圧力を加えて素地として所望の形状に成形した後に,前駆体粉末から直接生成される。さまざまな前駆体粉末は,適当量提供されて所望の相の化学量論を提供し,また,単純に混合され粉砕されて,所望の形状を有する素地に成形され,反応焼結して磁気熱量相を生成し,機械的完全性を有する構造体を形成する。
【0013】
焼結体を生成するのに従来の焼結を使用することが知られている。しかしながら,周知の方法は複雑である。なぜなら,(La1−a)(Fe1−b−c13−d相を形成するための,溶融鋳造又は溶融紡糸と均質化処理の後,事前形成物質の粉砕を実行し,そして,その粉砕粉を焼結して構造体を形成するのには,その後に,さらなる熱処理が必要となるからである。したがって,反応焼結は,処理ステップがほとんどなくてすみ,よりコスト効率のよい製造ルートを提供する。
【0014】
反応焼結において,最終相は,異なる組成の前駆体粉末の混合物からの直接的な化学反応により生成される。これにより,該反応と,ひいては固形物を形成する焼結とが,従来の溶融鋳造,均質化,及び従来の事前形成相の焼結に必要とされる温度よりも低い温度で実行可能である,という利点が生み出される。その結果,反応焼結構造体は,構造体の粒の大きさが,従来の焼結法により得られるものに比べ小さい,というさらなる利点を有する。この粒の大きさが小さいことは,反応焼結磁気構造体の耐食性を向上させ,機械的特性を改善させる。
【0015】
反応焼結構造体の組成は,前駆体粉末の化学量論を調整することにより,容易に調整することができる。これにより,異なる組成及び磁気熱量特性の構造体を同じ製造ラインを使用して生成することが可能となる。
【0016】
さらに,反応焼結処理を容易に使用して,冷却システム又は熱交換システムの設計に応じて,ホイル状,プレート状,巨体状といった様々な形状を製造することができる。したがって,溶融鋳造法,及び,特に,溶融紡糸,で生成された物質の大きさに対する制限は回避される。
【0017】
磁気熱交換システムにおける磁気作動物質としての粒子の使用に関する問題もまた,反応焼結構造体を提供することにより回避される。なぜなら,反応焼結構造体は,機械的完全性を有するためである。作動物質の作動寿命が長くなり,磁気熱交換システムの使いやすさ,及びコスト効率がさらに向上する。
【0018】
磁気焼結構造体は,NaZn13型結晶構造を有する(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む少なくとも1つの相を含んでもよい。組成に応じて,該相は,立方晶又は正方晶であり,Fm3c又はI4/mcmの空間群を有してもよい。(La1−a)(Fe1−b−c13−d相の格子定数は,組成に応じて変化する。立方相の場合,a軸の格子定数は,11.1〜11.5Å(オングストローム)の範囲にあってもよい。正方相の場合,a軸の格子定数は,7.8〜8.1Åの範囲に,また,c軸の格子定数は,11.1〜11.8Åの範囲にあってもよい。
【0019】
キュリー温度T,及び,従って,(La1−a)(Fe1−b−c13−d相の動作温度は,置換元素M及び置換元素Tを選択することにより調整することができる。用途によっては,装置の動作温度範囲を広げるように,さまざまなキュリー温度を含む構造体を生成すること,あるいは,各々わずかに異なるキュリー温度を有するさまざまな構造体を生成すること,が望ましい。言い換えると,装置が加熱又は冷却を提供することが可能な温度範囲が広がる。
【0020】
Mは,Ce,Pr,及びNdの1種類以上の元素であってもよい。MがCeである場合,0≦a≦0.9である。MがPr及びNdの1種類以上の元素である場合,0≦a≦0.5である。Ceは,キュリー温度,及び,ひいては動作温度を下げ,Laよりも安価であるという利点を有する。Pr及びNdの置換体もまた,キュリー温度を下げる。
【0021】
Tは,Co,Ni,Mn,及びCrの1種類以上の元素であってもよい。これらの元素もまた,T及び動作温度に影響を及ぼす。Mn及びCrは,Tを低下させるのに対し,Co及びNiは,Tを上昇させる。
【0022】
Yは,Si,Al,As,Ga,Ge,及びSbの1種類以上の元素であってもよい。
【0023】
反応焼結構造体はまた,Xをさらに含んでもよい。Xは,H,B,C,N,Li,及びBeの1種類以上の元素である。これらの元素もまた,Tを上昇させる。
【0024】
元素Xは,(La1−a)(Fe1−b−c13−dを形成する(La1−a)(Fe1−b−c13−dの結晶構造の格子間に少なくとも一部が収容されてもよい。eは,0<e≦3の範囲である。
【0025】
これらの実施形態の1つによる組成を有する(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む反応焼結磁気構造体はまた,500ppm〜8000ppmの酸素含有量をさらに含んでいてもよい。
【0026】
反応焼結磁気構造体は,(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む相であって,磁気熱量効果を示す1つ以上の相を少なくとも80体積%含んでいてもよい。(La1−a)(Fe1−b−c13−d相は,磁気熱量活性である。磁気熱量効果を示す相の体積百分率を増加させることにより,構造体の冷却能力又は加熱能力を高めることができ,構造体を使用する装置の効率を高めることができる。
【0027】
一実施形態において,構造体は,反応焼結で得られた(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む2つ以上の相を含み,各相は,異なるTを含む。異なるTを有する2つ以上の相を提供する結果,構造体の動作温度又は適用温度範囲を拡大することができる。これらの相は,構造体のTが,例えば,構造体の高さ方向に上昇するように,層状に配置してもよい。これらの相は,構造体の体積にわたってほぼ均質的に分布していてもよい。
【0028】
反応焼結磁気構造体の平均的な粒径kは,20m m以下又は10m m以下であってもよい。平均粒径が小さいことは,構造体の機械的強度及び耐食性が向上するという利点を有する。
【0029】
上述の実施形態の1つによる反応焼結構造体は,5000Oe(oersted:エルステッド)未満又は500Oe未満の磁場間隔における常磁性状態から強磁性状態への遷移を示してもよい。等温磁気エントロピー変化は,永久磁石が生成可能な磁場における実際的に有用なエントロピー変化を提供するため,0kOe〜16kOeの磁場変化に対し,少なくとも5J/kgKであってもよい。
【0030】
反応焼結磁気構造体の密度は,少なくとも6.00g/cmであってもよい。密度は,反応焼結温度及び/又は素地を焼結する時間を選択することにより調整してもよい。ある用途では,多孔質体を提供することができるように,低密度の構造体が望ましい。そしてその細孔を液体冷却剤が流れ,これにより,磁気熱量物質及び冷却剤からの熱伝導の効率を高めることができる。用途によっては,構造体の機械的強度を高めるために高密度のほうが望ましい場合がある。構造体の密度は,相の理論密度の70〜100%の間であってもよい。
【0031】
反応焼結磁気構造体は,熱交換器,冷却システム,建物や乗物(特に,自動車)用の空調ユニット,又は,建物や自動車用の温度調節装置の部品でありうる。温度調節装置は,液体冷却剤又は熱交換媒体の方向を転換することにより,冬は加熱器として,夏は冷却器として使用することができる。これは,自動車その他の乗物にとって特に有利である。なぜなら,温度調節システムを収容するためのシャーシ内で利用可能なものは,乗物の設計により制限されるためである。
【0032】
反応焼結磁気構造体は,外部保護コーティングをさらに含んでいてもよい。この外部保護コーティングは,空気などの環境,及び/又は,液体冷却剤や熱交換器の熱交換媒体による反応焼結構造体の腐食を防ぐために提供されうる。外部保護コーティングの材料は,構造体を使用する環境に応じて選択してもよく,金属又は合金又はポリマーを含んでいてもよい。外部保護コーティングの材料はまた,磁気熱量相から熱交換媒体への熱伝導を増加させるよう高い熱伝導率を有するように選択してもよい。Cu,Al,Ni,Snなどの金属及びこれらの合金を使用してもよい。
【0033】
反応焼結磁気構造体は,表面に少なくとも1つのチャネル(通路)をさらに含んでいてもよい。このチャネルは,適切なダイや型(フォーマー)を使用して素地に形成されてもよいし,あるいは,反応焼結処理後に表面に導入されてもよい。チャネルは,熱交換媒体の流れを誘導するように構成してもよい。これは,チャネルの幅及び深さの両方,並びに,構造体の表面における形状及び位置を選択することにより実現することができる。
【0034】
チャネルは,熱伝導の効率を高めるように,構造体と冷却剤の間の接触面積を増大させることができる。さらに,チャネルは,液体冷却剤や熱交換媒体における渦の形成を抑え,冷却剤の流動抵抗を抑え,熱伝導の効率を高めるように構成してもよい。
【0035】
本発明はまた,外被と少なくとも1つのコアを含む構造体を提供する。コアは,上述の実施形態の1つによる反応焼結で得られた(La1−a)(Fe1−b−c13−d又はその前駆体を含む。構造体は,熱交換器,磁気冷却装置,温度調節システム,又は冷却システムの部品でありうる。
【0036】
外被は,コアを取り囲み,多くの改善を提供するように選択された材料を含んでいてもよい。外被は,構造体の機械的強化を提供することができる。これは,コアが,所望の磁気熱量(La1−a)(Fe1−b−c13−d相を形成するように未だ反応していない(La1−a)(Fe1−b−c13−d相の前駆体を含む実施形態に特に有用である。構造体は,反応焼結処理が行われる前に,容易に運んで動作させることができる。さらに,外被は,構造体の耐食性を高めるように,前駆体及び反応焼結材料の両方に環境に対する保護を提供する。
【0037】
外被は,各々異なる特性を有する2つ以上の層を含んでいてもよい。例えば,外側外被が,耐食性を提供し,内側外被が,機械的強度の強化を提供してもよい。外被はまた,コアから構造体の位置する熱交換器内の熱交換媒体への熱伝導を向上させるように,高い熱伝導率を有するように選択してもよい。
【0038】
外被は,コアの反応焼結処理が外被の融点直下の温度で行われるのを可能とするために,1100℃以上の融点を有する材料を含んでいてもよい。
【0039】
外被は,鉄,鉄−シリコン,ニッケル,鋼,又はステンレス鋼を含んでもよい。ステンレス鋼は,耐食性に優れるという利点を有する。鉄は,安価であるという利点を有する。鉄−シリコン合金は,コアと鉄−シリコンとの間で反応が起こることを可能にするように選択し,コアの近くに配置してもよい。コアの前駆体の組成は,コアの最終反応焼結材料が所望の(La1−a)(Fe1−b−c13−d相の組成を有するように,適宜調整してもよい。
【0040】
構造体は,基盤(マトリクス)に埋め込まれ外被に包まれる複数のコアを含んでいてもよい。基盤や外被は,同じ又は異なる材料を含んでいてもよい。
【0041】
外被及び基盤は,一方が提供される場合,塑性変形可能であってもよい。これにより,従来のパウダー・イン・チューブをベースとした処理方法を用いて,構造体を製造することができる。構造体は,テープ状,ワイヤー状,プレート状といったさまざまな形状で提供されてもよく,また,細長くてもよい。構造体はまた,柔軟性を有していてもよく,これにより,巻く,曲げる,といった単純な機械的処理によって,構造体をさまざまなコイル形状や薄板状に成形することができる。
【0042】
外被がコアの全面を包む単一の細長い構造体を形成することができる。この構造体は,構造体を切断する必要がない特定の用途に適した形状を有するソレノイドコイル又はパンケーキコイルの形状に巻くことができる。構造体を切断することは,切縁においてコアが外被から露出し,この部位が,コアの安定性及びコアの置かれている環境によって,腐食したり又は分解したりする可能性がある,という不利な点を有する。コアの一部分が露出し,それを保護するのが望まれる場合,さらなる外部保護層を設けてもよい。この層は,露出したコアの部位にのみ設けてもよいし,外被全体を追加の保護層により覆って塞いでもよい。構造体の所望の形への成形処理は,反応焼結処理の前に又は後で行ってもよい。
【0043】
構造体は,複数の構造体を含んでいてもよく,各々の構造体は,反応焼結で得られた(La1−a)(Fe1−b−c13−d又はその前駆体を含む少なくとも1つのコアを含む。ここで,各構造体は,異なるTを有するか,又は,(La1−a)(Fe1−b−c13−d相を形成する反応焼結後に異なるTとなる全体組成を有してもよい。(La1−a)(Fe1−b−c13−d相はまた,Xをさらに含んでいてもよく,ここで,0<e≦3である。
【0044】
本発明の構造体はまた,熱交換媒体の流れを誘導するように構成される1つ以上のチャネルを表面に含んでいてもよい。これらのチャネルは,外被の表面に位置し,表面の塑性変形(例えば,加圧や圧延)により容易に形成することができる。あるいは,チャネルは,例えば,切断やフライス加工により,材料を除去することで形成することができる。
【0045】
本発明はまた,上述した実施形態の1つによる反応焼結で得られた(La1−a)(Fe1−b−c13−d又はその前駆体を含む外被と少なくとも1つのコアとを含む複数の構造体を含む積層構造体を提供する。これにより,積層構造を有するより大きな構成要素を組み立てることが可能となる。
【0046】
一実施形態において,積層構造体は,さらに,隣接構造体間に位置する少なくとも1つのスペーサーを含む。積層構造体がn個の構造体を含む場合,積層構造の内側の各構造体は,スペーサーによって隣接構造体から分離されるように,n−1個のスペーサーを含んでいてもよい。あるいは,積層構造体は,スペーサーが構造体の両側に隣接して位置するように,n+1個のスペーサーを含んでいてもよい。
【0047】
スペーサーは,熱交換媒体や冷却剤が積層体の層間を流れるように積層構造体に開放構造を提供する。これにより,積層構造体の断面積が増加し,積層体から熱交換媒体への熱伝導が増加する。
【0048】
スペーサーは,様々な形で設けられてもよい。一実施形態において,スペーサーは,構造体の不可欠な部分であり,構造体の表面の1つ以上の突起部によって設けられてもよい。これらの突起部は,構造体の表面に1つ以上の凹部を設けて凹部間の表面に突起を作ることにより設けることができる。一実施形態において,突起部は,構造体の表面の複数の溝により設けられる。溝は,互いに略平行であってもよい。
【0049】
一実施形態において,スペーサーは,積層スタックの隣接層間に位置する追加要素として設けられる。追加要素は,型によって形成されてもよい。別の実施形態において,スペーサーは,波形テープである。波形テープは,略平らな構造体間に位置して,一般に段ボールと関連した構造に似た構造を形成してもよい。
【0050】
スペーサーは,上述した実施形態の1つによる(La1−a)(Fe1−b−c13−d又はその前駆体を含んでいてもよい。これにより,磁気熱量活性材料を含む積層構造体の体積が増大し,熱交換システムの効率が高まる。
【0051】
波形テープがスペーサーとして設けられる場合,これは,テープ又は積層構造体の平らな部材として設けられるテープに一般に類似した別のテープの波形をなす部分によってうまく生成することができる。
【0052】
追加スペーサー部材は,熱交換媒体の流れを誘導するように構成される1つ以上のチャネルを提供してもよいし,又はそれらを提供するように構成されてもよい。これにより,熱伝導効率は有利に高まる。
【0053】
本発明はまた,焼結磁気構造体を製造するための前駆体粉末を提供し,(La1−a)(Fe1−b−c13−d磁気熱量相に化学量論を提供する量のランタン前駆体,鉄前駆体,及びY前駆体を含む。ここで,前駆体は,実質量の(La1−a)(Fe1−b−c13−d相を含まず,0≦a≦0.9,0≦b≦0.2,0.05≦c≦0.2,−1≦d≦+1,0≦e≦3である。
【0054】
実質量の(La1−a)(Fe1−b−c13−d相を含まないことは,粉末X線回折パターンにおける(La1−a)(Fe1−b−c13−d相に関連するピークがないこと,として定義され,また,それにより決定される。別の実施形態において,前駆体混合物は,5体積%未満の(La1−a)(Fe1−b−c13−d相,1体積%未満の(La1−a)(Fe1−b−c13−d相,及び0.1体積%未満の(La1−a)(Fe1−b−c13−d相を含む。
【0055】
焼結磁気構造体は,上述の実施形態の1つによる,反応焼結磁気構造体,外被と少なくとも1つのコアとを含む構造体,又は積層構造体であってもよい。
【0056】
前駆体は,上述の実施形態の1つによる(La1−a)(Fe1−b−c13−d相の化学量論を提供するように選択してもよい。
【0057】
前駆体化合物は,前駆体粉末を提供する混合・粉砕ステップ中に,より簡単に粉砕するのを可能にする組成を有する形で提供されてもよい。La前駆体は,水素化ランタンであってもよく,Fe前駆体は,カルボニル鉄であってもよい。別の実施形態において,La前駆体及びFe前駆体が二成分前駆体として提供され,又はLa前駆体及びY前駆体が二成分前駆体として提供される。
【0058】
粉末の平均粒径は,20m m未満又は10m m未満又は5m m未満であってもよい。これは,粉砕,破砕,及び/又はフライス加工の条件を変えることによって変化しうる。
【0059】
したがって,本発明は,(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む,反応焼結磁気構造体,熱交換器冷却システム又は温度調節装置の構成要素を生成する反応焼結の使用に関する。ここで,0≦a≦0.9,0≦b≦0.2,0.05≦c≦0.2,−1≦d≦+1,0≦e≦3である。Mは,Ce,Pr,及びNdの1種類以上の元素である。Tは,Co,Ni,Mn,及びCrの1種類以上の元素である。Yは,Si,Al,As,Ga,Ge,Sn,及びSbの1種類以上の元素である。Xは,H,B,C,N,Li,及びBeの1種類以上の元素である。
【0060】
本発明はまた,反応焼結磁気構造体の製造方法を提供する。該方法は,上述の実施形態の1つによる前駆体粉末混合物を提供するステップと,該前駆体粉末混合物を圧縮して素地を形成するステップと,該素地を1000℃〜1200℃の間の温度で2〜24時間の間の時間にわたって焼結して(La1−a)(Fe1−b−c13−dの組成を有する少なくとも1つの相を形成するステップと,を含む。
【0061】
(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む1つ以上の相は,前駆体粉末の粒子の反応によって形成される。同時に,粒子は,結合して固形の構造体を形成する。(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む合金を,溶融鋳造や溶融紡糸により生成し,熱処理により均質化し,粉砕し,加圧して素地を形成し,焼結する方法に比べ,相形成及び焼結の2つのステップは,同じ熱処理中に行われる。
【0062】
さらに,1つ以上の(La1−a)(Fe1−b−c13−d相を形成するための焼結時間は,最大で24時間である。したがって,この方法は,鋳造合金を均質化して(La1−a)(Fe1−b−c13−d相を形成するだけで,通常,数百時間にも及ぶ均質化熱処理を要する溶融・均質化アプローチに基づく方法に比べ,はるかに早い。さらなる熱処理が行われて粉末相を焼結し,焼結体を形成する。
【0063】
一実施形態において,La前駆体及びFe前駆体は,ブックモールディングやストリップキャスティングによって組み立てられる二成分前駆体として提供される。別の実施形態において,La前駆体及びY前駆体は,ブックモールドやストリップキャスティングによって組み立てられる二成分前駆体として提供される。これらの二成分前駆体は,比較的高純度で生成され,また,粉砕するのが容易で,小さい平均粒径及び狭い粒径分布を有する前駆体粉末を生成する,という利点を有する。これは,素地及び反応焼結構造体の均質性を向上させる。
【0064】
素地は,温度及び焼結時間を調整することにより,理論密度の少なくとも90%の密度まで焼結してもよい。最適な温度及び時間は,前駆体粉末の組成及び平均粒径に依存してもよく,構成要素である前駆体粉末の組成は,それに応じて選択される。
【0065】
一実施形態において,素地は,1150℃未満の温度で焼結される。1150℃未満の温度は,機械的安定性及び耐食性をさらに向上させることのできるより小さい粒径を有する構造体を生成する。焼結条件は,焼結処理の実行後に,構造体の平均粒径が20m m未満又は10m m未満となるように選択してもよい。
【0066】
焼結は,2段階で行われてもよく,第1段階は,真空下で行われ,第2段階は,不活性ガス下で行われる。不活性ガスは,アルゴンガス及び水素ガスを含む。焼結が行われる雰囲気は,最終焼結構造体の酸素含有量を調整するのに使用されてもよい。不活性ガス,特にアルゴンガス,はまた,選択される酸素分圧を提供するため選択される割合の酸素を含んでもよい。
【0067】
一実施形態において,焼結時間の少なくとも50%は,真空下で行われる。別の実施形態において,焼結時間の少なくとも80%は,真空下で行われる。
【0068】
一実施形態において,2段階焼結処理が行われる。第1段階は,第2段階の焼結温度よりも0℃〜100℃高い焼結温度で行われる。例えば,第1段階において,焼結温度は,1150℃〜1200℃の間であり,第2段階において,焼結温度は,1100℃〜1150℃の間であり,第1段階の焼結温度は,第2段階の焼結温度よりも0℃〜100℃高い。この第1段階は,最大12時間行われてもよく,全焼結時間は,2時間〜24時間の範囲であってもよい。
【0069】
前駆体粉末は,前駆体を混合し,前駆体の平均粒径を縮小することにより生成することができる。これは,例えば,ジェットミル(jet-milling)により行うことができる。前駆体を混合する前に,少なくとも1つの前駆体は,水素を取り込んでもよい。これは,水素取り込みの結果,より容易に粉砕可能な水素化物が形成される場合に有用である。
【0070】
ある実施形態において,(La1−a)(Fe1−b−c13−d相は,さらに,元素Xを含む。Xは,H,C,B,及び/又はOであり,結晶構造の格子間に量eだけ(0<e≦3)収容される。これらの元素は,前駆体粉末の形成後のメソッドステップにおいて追加され,又はその量が調整されてもよい。
【0071】
一実施形態において,焼結反応中,H,B,C,及び/又はOを焼結磁気構造体に導入する。これは,焼結処理の一部において又は全体にわたってガスの組成を調整することにより行うことができる。
【0072】
あるいは,又は上記に加え,焼結処理後に,H,B,C,及び/又はOを焼結磁気構造体に導入してもよい。その後,これらの元素を事前形成(La1−a)(Fe1−b−c13−d相の結晶構造に導入してもよい。構造体は,H,B,C,及び/又はOを含む雰囲気でさらなる処理を受けてもよい。この更なる処理は,20℃〜500℃の温度,1mbar〜10barの圧力で,0.1〜100時間行われてもよい。この熱処理は,焼結処理よりもはるかに低い温度で行われる。
【0073】
焼結磁気構造体の製造後,少なくとも1つのチャネルが,焼結磁気構造体の表面に導入されてもよい。チャネルは,のこ引きや放電切断により導入することができる。
【0074】
あるいは,又は上記に加え,少なくとも1つのチャネルは,適切に採寸されたダイを用いて素地に形成されてもよい。
【0075】
焼結磁気構造体の製造後,焼結磁気構造体の雰囲気又は熱交換媒体との反応による腐食に対する保護を提供すべく,構造体を保護層でコーティングしてもよい。保護コーティングは,ガルバニック蒸着,浸漬,溶射といった従来の方法により施すことができる。
【0076】
本発明はまた,磁気熱量活性複合構造体の製造方法を提供する。該方法は,以下の各ステップを含む:
【0077】
上述の実施形態の1つの前駆体粉末混合物を提供するステップ;
【0078】
外被を提供するステップ;
【0079】
前駆体粉末を外被に包み,前駆体複合構造体を形成するステップ;及び
【0080】
前駆体複合構造体を1000℃〜1200℃の間の温度で2〜24時間の間の時間にわたって焼結して(La1−a)(Fe1−b−c13−dの組成を有する少なくとも1つの相を形成するステップ。
【0081】
外被に包まれる前駆体粉末は,圧縮されて圧縮体を形成してもよいし,ルーズパウダーの形態を取ってもよい。この圧縮体は,外被とは別に形成されてもよいし,外被において粉末を層ごとに圧縮することにより形成されてもよい。
【0082】
外被は,様々な形で設けられてもよい。外被は,管であってもよいし,少なくとも片側が開いた略平らなエンベロープとして設けられてもよいし,又は2つのプレート又はホイルとして設けられてもよい。
【0083】
最適な反応焼結温度及び時間は,前駆体粉末の組成及び粒径のみならず,外被の組成によっても影響されうる。複合構造体の最適な焼結条件は,外被のない反応焼結構造体の焼結条件とは異なりうる。
【0084】
前駆体複合構造体は,反応焼結が行われる前に機械的変形処理を受けてもよい。機械的変形処理は,前駆体複合構造体の大きさを増大させ,また,前駆体粉末の密度を増加させる。機械的に変形した複合構造体は,より優れた冷却能力を一定サイズの複合構造体に提供するよう磁気熱量活性成分を提供する前駆体粉末の高い曲線因子を有することが望ましい。前駆体複合構造体は,圧延,スエージ加工,引抜といった従来の方法の1つ以上により機械的に変形することができる。
【0085】
多段階変形/反応焼結処理もまた行われてもよい。前駆体複合構造体は,単数又は複数の第1の機械的変形処理を受け,部分的に前駆体粉末と反応する第1の反応焼結熱処理を受け,第2の機械的変形処理を受け,第2の反応焼結熱処理を受ける。原理的には,反応焼結及び機械的変形処理は,何回でも行うことができる。
【0086】
外被を軟らかくするために,また,外被に対する粉末の(同様に,粉末に対する外被の)相対的な硬さや焼きなましの挙動に応じて,少なくとも1回以上の中間焼きなまし熱処理を,機械的変形処理の間に行ってもよい。焼きなまし熱処理は,金属や合金を単純に柔らかくし,焼きなまし熱処理中,磁気熱量活性相を形成するような化学反応は,実質的に起こらない。焼きなまし熱処理は,通常,材料の融点の50%近傍で行われる。
【0087】
前駆体を外被に包んだ後,外被を封止してもよい。これは,シームを溶接することにより,又は追加的な溶接手順などにより管の両端に栓をして栓と管とを結合することにより,実現することができる。前駆体複合構造体は,例えば,不要な水,水素,及び酸素を除去するように,外被が封止される前に脱気熱処理を受けてもよい。
【0088】
少なくとも1つのチャネルを複合構造体の表面に導入してもよい。焼結処理が行われる前にチャネルを前駆体複合構造体の表面に導入してもよい。前駆体複合構造体の少なくとも一方の表面の塑性変形によって1つ以上のチャネルを導入してもよい。これは,例えば,プロファイル圧延により実現することができる。
【0089】
焼結処理を行った後に,少なくとも1つのチャネルを複合構造体の表面に導入してもよい。上述のものと同様の方法を用いてもよい。
【0090】
前駆体複合構造体は,反応焼結構造体に関して上述した,温度,時間,及び雰囲気下で焼結してもよい。
【0091】
本発明はまた,上述の一実施形態による2つ以上の前駆体複合構造体から積層構造体を製造する方法に関する。
【0092】
積層構造体は,スタック形状を有する積層体を形成するように2つ以上の前駆体複合構造体を配置することにより形成されてもよい。構造体は,互いに結合されて単一の固定積層構造体を形成してもよい。これは,溶接により,又は,積層体が受ける後続の処理に応じて低温結合技術(例えば,ろう付け)により,行われてもよい。
【0093】
積層構造体は,例えば,熱交換器や温度調節装置における能動部品として使用するのに適した形で製造されてもよい。この能動部品は,例えば,フィンの形を有していてもよい。
【0094】
ある実施形態において,少なくとも1つのスペーサーが,隣接前駆体複合構造体間に設けられる。第1の実施形態において,スペーサーは,個々の構造体の1つ以上の表面に設けられるチャネルによって設けられる。上述したように,チャネルは,プロファイル圧延,加圧,放電切断,又はフライス加工により導入されてもよい。チャネルは,熱交換媒体が積層構造体を流れるのを可能にし,これにより,熱交換媒体と積層構造体との間の接触面積を増大させ,また,熱伝導特性を向上させる。
【0095】
一実施形態において,スペーサーは,積層体の隣接層間に位置する追加部材の形で設けられる。スペーサーは,例えば,スペーサーブロックの形態で,あるいは,型のスポークとして設けられてもよいし,波形テープの形態で設けられてもよい。波形テープは,噛み合う際に2つの歯の間に適当な間隔を有する2つの噛み合わされた歯の間で平らなテープを圧延することで製造してもよい。また,スペーサーは,自身が,磁気熱量活性材料を含んでもよいし,自身が,上述した実施形態の1つによる複合構造体であってもよい。
【0096】
積層構造体のチャネルは,熱交換媒体の流れを誘導し,流量を減少させつつ熱伝導を最大化するように配置されてもよい。一実施形態において,積層体の各層は,1つの表面が複数の略平行な溝を含む構造体を含む。積層体の隣接層の略平行な溝は,互いに略直交するように配置される。追加スペーサーを使用する場合,隣接層間に位置するスペーサーはまた,互いに直交するように配置されるチャネルを設けてもよい。
【0097】
積層構造体は,反応焼結処理が行われる前,又は反応焼結処理が行われた後に組み立てられてもよい。
【0098】
積層構造体はまた,部分的に反応した複合構造体から組み立てられてもよく,構造体が組み立てられ結合した後に最終反応焼結処理を受けて積層構造体を形成する。積層構造体は,反応焼結処理中に圧力を受けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
以下,本発明の実施形態を,添付図面を参照しながら説明する。
【0100】
【図1】図1は,反応焼結磁気構造体の密度と反応焼結温度の関係を示す図である。
【0101】
【図2】図2は,1060℃で4時間反応焼結された磁気構造体の研磨された断面の光学顕微鏡写真を示す図である。
【0102】
【図3】図3は,1160℃で8時間反応焼結された磁気構造体の研磨された断面の光学顕微鏡写真を示す図である。
【0103】
【図4】図4aは,1060℃で4時間反応焼結された磁気構造体の偏光Jの温度依存性を示す図である。
【0104】
図4bは,図4aの磁気構造体のエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す図である。
【0105】
【図5】図5aは,1153℃で4時間反応焼結された磁気構造体の偏光Jの温度依存性を示す図である。
【0106】
図5bは,図5aの磁気構造体のエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す図である。
【0107】
【図6】図6aは,1140℃で8時間反応焼結された磁気構造体の偏光Jの温度依存性を示す図である。
【0108】
図6bは,図6aの磁気構造体のエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す図である。
【0109】
【図7】図7aは,1140℃で8時間及び1100℃で11時間反応焼結された磁気構造体の偏光Jの温度依存性を示す図である。
【0110】
図7bは,図7aの磁気構造体のエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す図である。
【0111】
【図8】図8は,0.3重量%〜1.5重量%の炭素をさらに含む磁気構造体であって,1140℃で8時間反応焼結された磁気構造体のエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す図である。
【0112】
【図9】図9は,1.5重量%の炭素を含む磁気構造体であって,1160℃で8時間反応焼結された磁気構造体の研磨された断面の顕微鏡写真を示す図である。
【0113】
【図10】図10は,1重量%のPrをさらに含む磁気構造体及び2重量%のPrをさらに含む磁気構造体であって,1120℃で8時間反応焼結された磁気構造体のエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す図である。
【0114】
【図11】図11は,2.5重量%〜12.3重量%のCoをさらに含む磁気構造体であって,1140℃で8時間反応焼結された磁気構造体のエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す図である。
【0115】
【図12】図12は,前駆体粉末が金属外被に包まれて前駆体複合構造体を形成する,熱交換器用フィンの製造における1ステップを説明するための図である。
【0116】
【図13】図13は,図12の前駆体複合構造体の機械的変形を説明するための図である。
【0117】
【図14】図14は,図13の前駆体複合構造体をプロファイル圧延することによるスペーサーの製造を説明するための図である。
【0118】
【図15】図15は,図14に示される複数の前駆体複合構造体を含む積層構造体を組み立てたアッセンブリーを説明するための図である。
【0119】
【図16】図16は,スペーサーが追加部材として設けられる第2の実施形態による積層構造体を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0120】
[前駆体粉末の生成]
少なくとも1つのLa(Fe,Si)13ベース相を含む反応焼結磁気構造体が以下の方法により製造された。前駆体粉末は,粒径約200m m(ミクロン:μm)未満の水素化ランタン粉末,平均粒径(FSSS)3.5m mのカルボニル鉄粉末,及び平均粒径(FSSS)2.5m mのシリコン粉末を提供することにより調製された。
【0121】
水素化ランタン前駆体粉末は,500gの金属ランタンを鉄ホイルで包み,ホイルを0.3barのアルゴンと1barの水素の混合物を含む雰囲気にさらすことにより,製造された。新たな表面を提供することにより,LaHの形態をなす水素化ランタンを室温と同じ程度に低い温度で容易に製造可能である,ということが見出された。水素化ランタンは,粉砕されて,平均粒径200m m未満の粗粉末とされた。水素化ランタンは,その粒径をジェットミリングなどのフライス加工処理により容易に縮小することができるので,ランタン前駆体として使用された。
【0122】
水素化ランタン,カルボニル鉄,及びシリコン粉末は,LaFe11.8Si1.2の公称化学量論を生成する量だけ検量され,ジェットミリングにより平均粒径(FSSS)2.7m mの微粉末を生成した。
【0123】
フライス加工処理及び混合処理後の出発粉末及び微粉末の重量パーセントの組成,並びに,この粉末から製造された反応焼結構造体の組成は,表1に要約される。

[表1]

【0124】
表1に示すように,微粉末の組成は,出発粉末の初期の化学量論に比べ,ランタン及びシリコンの含有量がわずかに少ない。反応焼結磁気構造体を製造するのに使用された微粉末は,La0.94Fe11.89Si1.11の化学量論を有した。
【0125】
[素地の生成]
前駆体粉末を使用して複数の素地を製造した。各素地につき,60gの前駆体粉末が形成され,2500barの圧力で平衡に加圧された。その後,素地を5つの部分に分けた。
【0126】
[反応焼結磁気構造体の生成]
素地は,さまざまな条件で,1060℃〜1180℃のさまざまな温度で,3時間〜24時間の間の時間にわたって反応焼結された。
【0127】
反応焼結温度が製造される反応焼結磁気構造体の密度に与える影響が調査され,その結果が図1に示される。反応焼結温度が1060℃から1150℃に上昇するにつれて,焼結体の密度は,6.25g/cmから6.83g/cmに増加する。1060℃で反応焼結されたサンプルは,1100℃で反応焼結されたものより高い空隙率を有することが見出された。格子定数を11.48nmとした場合のLaFe11.8Si1.1の理論密度は,7.30g/cmと計算される。調査されたサンプルは,理論密度の85.6%〜93.6%の間の密度を有する。
【0128】
素地から製造される反応焼結磁気構造体の粒径及び位相分布に反応焼結温度が与える影響が,図2と図3の比較により示される。
【0129】
図2に示される反応焼結磁気構造体の組成は,Laが18重量%,Siが3.65重量%,Oが0.44重量%,残りがFeであった。また,図3に示される反応焼結磁気構造体の組成は,Laが18.0重量%,Siが3.65重量%,Oが0.39重量%,残りがFeであった。2つの構造体の組成は,酸素含有量がわずかに異なる。
【0130】
図2は,1060℃で4時間反応焼結された磁気構造体の研磨された断面の光学顕微鏡写真を示し,図3は,1160℃で8時間反応焼結された磁気構造体の研磨された断面の光学顕微鏡写真を示す。
【0131】
図2と図3の比較から分かるように,温度が上昇するにつれ,粒径が増大するのが観察された。約1150℃以上の温度では,FeSiとLaSiに富む相の量が増加することによって,La(Fe,Si)13マトリクス中における分離が進み,大きな分離が形成されることが分かっている。
【0132】
温度の関数としての偏光J及び温度の関数としてのエントロピー変化ΔSが,これらのサンプルに対して,1kOe〜16kOeのさまざまな印加磁場で測定された。その結果は,図4及び図5にそれぞれ示される。1060℃の反応焼結温度及び12kOeの印加磁場では,約17J/kgKの最大エントロピー変化ΔSが測定された。1153℃の反応焼結温度及び12kOeの印加磁場では,最大エントロピー変化ΔSが約14J/kgKに減少した。二次相の形成は,図4と図5の比較から説明されるように,測定される最大エントロピー変化の減少につながりうる。
【0133】
さらなる実験により,約1150℃以上の温度で焼結された構造体において観察された相分離の影響は,より低い温度でさらなる熱処理を行うことで逆転しうることが明らかになった。これは,図6と図7の比較により説明される。
【0134】
図6aは,1140℃で8時間反応焼結された磁気構造体の1kOe〜16kOeの異なる印加磁場における偏光Jの温度依存性を示し,図6bは,図6aの磁気構造体の1kOe〜16kOeの異なる印加磁場におけるエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す。
【0135】
その後,このサンプルは,1100℃のさらなる熱処理を11時間受けた。このサンプルの1kOe〜16kOeの異なる印加磁場における偏光Jの温度依存性及びエントロピー変化ΔSの温度依存性は,図7a及び図7bにそれぞれ示される。
【0136】
1140℃での最初の熱処理後,12kOeの印加磁場での最大エントロピー変化は,約14J/kgKである(図6b)。1100℃での11時間のさらなる熱処理後,最大エントロピー変化は,約20J/kgKに上昇する(図7b)。
【0137】
したがって,反応焼結を用いて,単一の加圧及び単一の熱処理により,ランタン前駆体粉末,鉄前駆体粉末,及びシリコン前駆体粉末を含む前駆体粉末混合物から直接磁気熱量効果を示す構造体や構成要素を製造することができる。熱処理は単一の温度で行われてもよいし,第1段階と第2段階が異なる温度で行われる2段階処理が行われてもよい。
【0138】
この方法は,磁気熱量活性相の形成及び固形焼結体としての構造体の形成が同時に行われるため,鋳造ベースの製造方法よりも簡単である。一方,鋳造法において,合金は,まず鋳造され,次に熱処理を受けて合金は均質化され,磁気熱量活性相を形成し,続いて粉砕され,加圧されて,さらなる熱処理を与えて事前成形磁気熱量活性相の粒子を共に焼結して焼結体を形成する。
【0139】
反応焼結は,鋳造法で使用される温度よりも低い温度,特に1150℃未満の温度,例えば,1000℃〜1150℃の温度,で行われてもよい。これは,より小さい粒径,特に平均粒径が20m m未満の反応焼結構造体を生み出す。粒径が小さくなる結果,機械的強度及び耐食性が向上した構造体が提供される。
【0140】
La(Fe,Si)13相への元素添加
【0141】
図8〜図11は,反応焼結構造体に関する,さまざまな添加元素のキュリー温度Tに及ぼす影響を示す。
【0142】
反応焼結法は,前駆体粉末の組成を容易にかつ微細に調整することができ,それにより,反応焼結構造体の組成をキュリー温度Tなどの特性を最適化するように微細に調整することができる,というさらなる利点を有する。さまざまな組成からなるLa(Fe,Si)13ベース相を含む構造体もまた反応焼結を用いて製造することができるということを証明するために,さらなる実験もまた行われた。
【0143】
[C添加物]
第1の実施形態において,炭素添加物(C添加物)の影響が調査された。前駆体粉末を上述のように製造し,0.3重量%,0.6重量%,0.9重量%,1.2重量%,及び1.5重量%の黒鉛粉末の形態をなすC添加物を添加したものを製造した。これらの粉末は,上述のように加圧され,1140℃で8時間反応焼結され,反応焼結構造体を形成した。
【0144】
図8は,これらのサンプルの0.3重量%〜1.5重量%の炭素をさらに含む磁気構造体,及び炭素添加物を含まない比較サンプルの,1kOe〜16kOeの異なる印加磁場におけるエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す。
【0145】
図8によって,最大エントロピー変化が生じる温度がC含有量の増大とともに上昇することが説明される。比較サンプルの場合,最大エントロピー変化は,約−90℃の温度で生じる。この最大エントロピー変化は,0.3重量%のC含有量で約−65℃,0.6重量%のC含有量で約−38℃,0.9重量%のC含有量で約−25℃,1.2重量%のC含有量で約−10℃というように上昇する。最大エントロピー変化ΔSは,C含有量が0.6重量%以上の場合減少することが観察された。
【0146】
図9は,1160℃で8時間焼結された1.5重量%のCを含む反応焼結磁気構造体の研磨された断面の顕微鏡写真を示し,構造体が,La及びCに富む相に加え,FeSiに富む相をも含むことを示す。
【0147】
Cは,La(Fe,Si)13相の結晶構造の格子間に大部分が収容されていると考えられる。
【0148】
[Pr添加物]
第2の実施形態において,Pr添加物の影響が調査された。前駆体粉末を上述のように製造し,1.0重量%のPr添加物を添加したものと,2重量%のPr添加物を添加したものを製造した。Prは,平均粒径(FSSS)4m mの粉末としてPrHの形態で添加された。これらの粉末は,上述のように加圧され,1120℃で8時間反応焼結され,反応焼結構造体を形成した。
【0149】
図10は,1重量%のPrをさらに含む磁気構造体と2重量%のPrをさらに含む磁気構造体であって,1120℃で8時間反応焼結された磁気構造体,及び,Pr添加物を含まない比較サンプルの,1kOe〜16kOeの異なる印加磁場におけるエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す。最大エントロピー変化が生じる温度は,Pr含有量が増加するにつれ,わずかに低下することが分かった。
【0150】
[Co添加物]
第3の実施形態において,コバルト添加物(Co添加物)の影響が調査された。前駆体粉末を上述のように製造し,2.5重量%,4.9重量%,7.4重量%,9.9重量%,及び12.3重量%のCo添加物を添加したものを製造した。Co添加物は,平均粒径(FSSS)1.2m mの微細粉末の形態で前駆体粉末に添加された。これらの粉末は,上述のように加圧され,1140℃で8時間反応焼結され,反応焼結構造体を形成した。
【0151】
図11は,2.5重量%〜12.3重量%のCoをさらに含む磁気構造体であって,1140℃で8時間反応焼結された磁気構造体と,Coを含まない比較サンプルと,Gdのサンプルの,1kOe〜16kOeの範囲内で異なる印加磁場におけるエントロピー変化ΔSの温度依存性を示す。
【0152】
最大エントロピー変化が生じる温度は,コバルト含有量が増加するにつれ,−90℃から室温以上に上昇する。
【0153】
[他の組成物]
反応焼結構造体はまた,原子を気相状態から結晶構造に導入するために,さらなる熱処理を受けてもよい。例えば,水素をLa(Fe,Si)13ベース相のNaZn13結晶構造に導入するために,構造体を水素含有雰囲気中で加熱してもよい。水素は,NaZn13結晶構造中の格子間部位の大部分を占めると考えられている。他の揮発性元素やガス状元素もまた,同様に導入されてもよい。例えば,反応焼結構造体の酸素や窒素の含有量が調整されてもよい。得られる効果は,導入された元素による。例えば,水素の導入は,Tの上昇につながる。
【0154】
[反応焼結構造体の他の動作]
反応焼結磁気構造体は,磁気冷却システムにおける能動部品として,例えば,熱交換器におけるフィンとして,使用することができる。素地は,反応焼結処理後,反応焼結構造体が所望の形状にほぼ相当するか,又はほとんどそのものである寸法を有するように形成することができる。また,さらなる粉砕や研磨を行って形状をさらに精製し,反応焼結後にまさに所望の大きさを提供することも可能である。
【0155】
所望の場合,構造体はまた,構造体が動作する雰囲気又は熱交換媒体との反応の結果としての腐食を防止するための外部保護コーティングを設けることもできる。コーティングは,磁気熱量活性構造体の熱伝導特性をさらに向上させるべく,高い熱伝導率を有するように選択される金属コーティングであってもよい。金属コーティングは,Al,Cu,Sn,又はNiであってもよい。
【0156】
このコーティングは,ほぼ室温で実行可能であるという利点を有するガルバニック蒸着により蒸着してもよい。ガルバニック蒸着は,さらに,より複雑な性質をもつ三次元形状を容易にコーティングすることができる,という利点を有する。あるいは,浸漬や溶射もまた用いることができる。
【0157】
別の実施形態において,1つ以上のチャネルが,反応焼結磁気構造体の1つ以上の表面に設けられる。単数又は複数のチャネルは,構造体の表面積を増大させ,磁気熱量活性構造体から熱交換媒体への熱伝導を向上させる。これらのチャネルは,渦流を減少させ,熱交換媒体の流れ抵抗を低下させるよう熱交換媒体の流れを誘導するように構成されてもよく,これにより,熱伝導及び熱交換器の効率がさらに向上する。チャネルは,反応焼結構造体に,例えば,放電切断により形成してもよい。チャネルはまた,素地に形成してもよく,必要に応じ又は所望の場合,反応焼結後にさらに加工してもよい。
【0158】
外部保護コーティングを設ける場合,コーティングを施す前にまずチャネルを製造してもよい。コーティングの厚さ及びチャネルの深さに応じ,チャネルをコーティングにのみ形成することができる。
【0159】
上述した実施形態の1つによる反応焼結磁気構造体は,本質的に同じ又は異なる形状,及び/又は,同じ又は異なるTを有する,2つ以上の構造体を含む複合構造又は積層構造の一部を形成してもよい。
【0160】
[複合反応焼結構造体]
本発明の別の実施形態において,外被と少なくとも1つのコアとを含む構造体が提供される。コアは,上述した実施形態の1つによる前駆体粉末を含んでいてもよい。別の実施形態において,複合構造体は熱処理され,コアの前駆体粉末は反応焼結されて,外被に包まれるLa(Fe,Si)13ベース相を含む磁気熱量活性コアを生成する。構造体及びその製造処理は,パウダー・イン・チューブ法の1つであるとみなしてもよい。
【0161】
この構造体は,磁気冷却システムにおける能動部品として使用するのに適した形状で提供されてもよいし,さらなる磁気熱量活性複合構造体と組み合わせて使用されて,より複雑な形状の積層構造体や複合構造体を形成してもよい。
【0162】
2つ以上の複合構造体が提供される場合,各構造体は,上述した前駆体粉末混合物の化学量論を調整することで,La(Fe,Si)13相の組成を調整することにより提供される異なるTを含んでいてもよい。
【0163】
複合構造体が単一のコアを含む実施形態が,図12〜図14に示される。
【0164】
一実施形態では,図12に示されるように,1つ以上の磁気熱量活性La(Fe,Si)13ベース相を含む複合構造体1が,鉄製外被5と,ランタン前駆体,鉄前駆体,及びシリコン前駆体を含む多数の前駆体粉末4と,を提供することによって製造される。前駆体粉末4はまた,コバルト(Co)やプラセオジム(Pr)といったさらなる元素や,上述した他の元素を含んでいてもよい。さまざまな前駆体粉末は,各々,所望のLa(Fe,Si)13ベース相の化学量論を提供するだけの量が提供される。前駆体粉末は,磁気熱量活性La(Fe,Si)13ベース相をほとんど含まない。
【0165】
前駆体粉末4の組成は,出発前駆体粉末がより効率よく粉砕されるよう,初めは水素化物の形態で提供されてもよい。この場合,前駆体粉末は,前駆体粉末4が外被5に包まれる前に,真空中で1000℃未満の温度で脱水素化される。
【0166】
前駆体粉末4は,後に外被5に包まれる加圧された素地として提供されてもよいし,あるいは,ルーズパウダーとして提供されてもよい。
【0167】
前駆体粉末4は,鉄製外被又は鞘5が前駆体粉末4を囲んで包まれるように,鉄製外被5に配置される。外被5の両端は,互いに溶接されて密封容器を形成してもよい。外被5は,未反応前駆体粉末4のコア6を取り囲む。
【0168】
粉末コア6と鉄製外被5の質量比は,好ましくは,少なくとも4である。複合構造体1の単位体積あたりの冷却力を高めるためには,複合構造体1の充填率ができるだけ高い方が有利である。
【0169】
前駆体粉末4を含むコア6は,次に,図13に示されるように,前駆体複合構造体を機械的に変形させることにより,圧縮されてもよい。圧延,スエージ加工,引抜といった従来の機械的変形法を使用してもよい。図12に示されるように,最初の構造体が,プレート状構造を有する場合,圧延を容易に用いることができる。しかしながら,最初の構造体が管状構造を有する場合,引抜あるいはスエージ加工を用いてもよく,変形した複合構造体が,プレート状あるいはテープ状の形状を有することが望ましい場合は,その後に圧延を行ってもよい。
【0170】
粉末4が鉄製外被5の内部に包まれた後,この配置は,脱気処理を受けてもよく,それは,機械的変形が行われる前に,この配置を真空中に置くことにより行われうる。
【0171】
脱気熱処理は,除去しなければ,外被5の内部に捕捉され,反応焼結処理中に望ましくない二次相や不純物相の形成につながる可能性のある,空気その他の揮発性成分を除去する。
【0172】
あるいは,外被5は,コア6の周囲に封止され,機械的変形が行われてもよい。
【0173】
さらに,外被は,一端又は両端が開いた管状で提供されてもよいし,片側又は両側が開いた平らなエンベロープを有するものであってもよいし,あるいは,前駆体を包み込むホイル状の外被であってもよい。単一の縦長のシームは,機械的変形処理中に外被同士の溶接により封止されてもよいし,溶接やろう付けにより封止されてもよい。
【0174】
機械的変形処理後,これが行われると,前駆体複合構造体は熱処理が施されて,コア6の前駆体粉末4を反応焼結し,少なくとも1つの磁気熱量活性La(Fe,Si)13ベース相を形成する。この熱処理は,上述の範囲内の温度,時間,及び条件下で行うことができる。
【0175】
所望のLa(Fe,Si)13ベース相を形成する化学反応は,前駆体粉末が外被5に包まれた後に行われるため,外被5は,該反応が行われる条件下で機械的かつ化学的に安定しているべきである。
【0176】
好ましくは,外被は,約1100℃以上の融点を有する金属又は合金を含む。適切な金属には,鋼,ステンレス鋼,ニッケル合金,及びケイ素鉄がある。ステンレス鋼及びニッケル合金は,耐食性があり,前駆体粉末及び反応La(Fe,Si)13ベース相の両方に外部保護コーティングを提供することができるという利点を有する。
【0177】
外被5はまた,異なる材料からなる2つ以上の層を含んでいてもよい。これは,内側外被が前駆体の材料と化学的に親和性を有しうるという点で有利でありうる。その意味で,「化学的親和性を有する」とは,化学量論を所望の化学量論から遠ざけるような望ましくない反応が外被5とコア6の材料間で発生しないことを示すために用いられる。外側外被は,コアに対して化学的親和性を有しなくてもよいが,機械的安定性や耐食性を提供してもよい。外側外被は,既述の実施形態の1つに似たホイル状又は管状で提供されてもよい。あるいは,外被は,コーティングとして,外被5に蒸着されてもよい。
【0178】
機械的変形処理後の前駆体複合構造体の厚さは,プレート状で提供される場合,およそ1mm(ミリメートル)以下であってもよい。
【0179】
不図示の別の実施形態において,複合構造体は,外被と複数のコアとを含む。複数のコアは,複数の複合構造体を圧縮し,第2の外側外被で包むことにより設けられてもよい。この新しいマルチコア構造は,次に,反応焼結熱処理が行われる前に,さらなる機械的変形処理を受けてもよい。
【0180】
あるいは,又は上記に加え,マルチコア構造は,最初に,金属合金シートにより分離された複数の前駆体素地を互いに積み重ねることにより設けることができる。外側の外被をこの配置及び機械的に変形したマルチコア構造の周囲に設けることができる。
【0181】
外被及び1つ以上のコアを含む複合構造体は,製造された構造体が適切なものでない場合,所望の形状を有する部品を熱交換器に提供するようさらに加工されてもよい。
【0182】
例えば,長いテープやワイヤを製造する場合,これをコイル状やスプール状に巻きつけてもよい。コイルは,多層化されるソレノイドコイルの形を有してもよいし,コアは,平らなパンケーキコイルの形で提供されてもよい。これらのパンケーキコイルのいくつかは,互いに積み重ねられて円筒形部品を提供するようにしてもよい。
【0183】
あるいは,テープやワイヤは,望ましい形状(例えば,正方形や長方形や六角形)の型の周囲に巻きつけてもよい。
【0184】
プレートやプレート状の形を製造する場合,これらは,一方の上に他方が積み重ねられて,所望の側面の大きさと厚さをもつ積層構造を提供してもよい。いずれの場合も,異なる層は,互いに溶接やろう付けがなされてもよい。望ましい側面形状は,プレート状やホイル状の複合構造体から所望の形状を打ち抜くことにより得られる。
【0185】
しかしながら,組み立てられた構造体がさらなる熱処理を受けない場合,用途に適した熱安定性を有する接着剤を用いてもよい。これらの材料のキュリー温度,ひいてはこれらの材料の動作温度,は,室温近傍であるため,従来の接着剤や樹脂を使用することができる。
【0186】
別の実施形態において,外被5及び1つ以上のコアを含む複合構造体の表面積は,1つ以上のチャネル7を1つ以上の表面に設けることにより増大する。これは,プロファイル圧延により簡単かつ単純に実現することができる。この実施形態は,図14に示される。
【0187】
プロファイル圧延を反応焼結処理の前又は後に行ってもよい。
【0188】
一実施形態において,複合構造体は,複合構造体の1つの表面が,複数の略平行な突起8により分離される複数の略平行な溝7を含むように,プロファイル圧延を受ける。
【0189】
別の実施形態において,チャネル7は,複合構造体が熱交換器に取り付けられる際,熱交換媒体の流れを誘導するように構成される。これは,熱交換媒体の流れ抵抗を減少させ,熱交換器の効率を向上させることができる。
【0190】
本発明の別の実施形態は,各々,外被5と1つ以上のコア6とを含む,2つ以上の複合構造体1を含む積層構造体9に関する。
【0191】
図15は,図14に示される複数の前駆体複合構造体1を含む積層構造体9を組み立てたアッセンブリーを示す。
【0192】
図14に示される実施形態において,積層構造体9は,層状構造体9の隣接層11間に位置する少なくとも1つのスペーサー10を含む。スペーサー10は,積層構造体9に間隙を提供し,この間隙を通じて熱交換媒体が流れることができ,これにより,熱交換媒体と積層構造体9の接触面積が増大し,熱伝導が向上する。スペーサー10はまた,熱交換媒体が流れることのできる一連のチャネル7を提供するように構成される形で設けられてもよい。これらのチャネル7は,さらに,流れ抵抗を減少させるように,熱交換媒体の流れを誘導するように構成されてもよい。
【0193】
第1の実施形態において,スペーサー10は,複合構造体1の不可欠な部分として設けられる。本実施形態の例では,上述のように,また,図14に示されるように,構造体は,表面に1つ以上のチャネル7,例えば,複数の基本的に平行な溝7,と突起8を含む。
【0194】
図15に示される実施形態において,積層体9は,各々,片面にプロファイル圧延による複数の溝7を含む,複合構造体1の7つの層11を含む。これらの複合構造体1は,溝7を含む側が溝のない基板12の方を向くように積み重なっている。基板12もまた,複合構造体1であり,外被5と,La(Fe,Si)13ベース相を含むコア6とを含む。このように,複数のチャネル7の形をしたスペーサー10は,積層構造体9の隣接層11間に設けられる。
【0195】
積層構造体9は,反応焼結処理前に組み立てられてもよく,反応焼結中,機械的圧力下に置かれてもよい。
【0196】
あるいは,積層構造体は,反応焼結処理後に組み立てられてもよく,反応焼結磁気活性La(Fe,Si)13ベース相を含む複数の複合構造体は,互いに積み重ねられて,場合によっては互いにはんだ付けされて,積層体9を形成してもよい。
【0197】
別の実施形態において,積層構造体9は,1つの層11の溝7が,隣接層11の溝7に対して直交する位置に位置するように積み重ねられる。これは,熱交換器のフィンに十字型の配置を提供する。1方向を流入として,もう1方向を流出として用いることができる。
【0198】
本発明の別の実施形態において,スペーサーは,積層構造体9の隣接構造体1間に位置する追加要素の形で設けられる。
【0199】
スペーサーは,型(フォーマー)として設けてもよい。型は,隣接層11間に位置する一連のポストやロッドであってもよい。あるいは,長いテープやワイヤーが提供される場合,ホイールは,ホイールの形で提供されてもよく,ホイールは,その中心からテープやワイヤーが巻かれる周縁に,間隔を置いて垂直に配置される複数のピンを有する。
【0200】
別の実施形態において,図16に示されるように,積層構造体13は,波形テープ14により形成されるスペーサー10を含む。したがって,積層構造体13は,段ボールの構造で周知のような平らな複合構造体1と波形テープ14とが交互に重なった層を含む。波形テープ14はまた,既述のように熱交換媒体の流れを誘導するように構成されるチャネル7を提供してもよい。図16に示される実施形態において,積層構造体13は,波形テープ14の形をした2つのスペーサー10と,3つの平らな複合構造体1と,を含む。しかしながら,任意の数の層を設けてもよい。スタックの最外層もまた,波形テープ14を含んでもよい。
【0201】
別の実施形態において,波形テープ14は,少なくとも1つの磁気熱量活性La(Fe,Si)13ベース相を含む。言い換えると,波形テープ14の形をしたスペーサー10は,上述した実施形態の1つによる,外被5と少なくとも1つのコア6とを含む波形複合構造体1により設けられてもよい。本実施形態は,積層構造体13の強度が高いという利点,また,波形スペーサー10を提供するテープ14及びフラットテープ1の厚さを,所望のチャネル7の断面積及び大きさに応じて変えることができるという利点,を有する。
【0202】
追加のスペーサー10を使用すると,スペーサーを,フラットテープと波形テープを共に曲げる(co-wind)ことでコイル型構造に容易に組み込むことができるという利点がある。また,共に曲がったパンケーキコイルやソレノイドコイルも,同様の方法で製造することができる。
【0203】
波形テープ14は,かみ合わさった2つの歯の間でテープ又はテープ状の複合構造体1を圧延することにより製造してもよい。
【符号の説明】
【0204】
次に,符号について説明する。
【0205】
1 複合構造体
【0206】
4 前駆体粉末
【0207】
5 外被
【0208】
6 コア
【0209】
7 溝
【0210】
8 突起
【0211】
9 第1の積層構造体
【0212】
10 スペーサー
【0213】
11 層
【0214】
12 基板
【0215】
13 第2の積層構造体
【0216】
14 波形テープスペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む反応焼結磁気構造体であって,
0≦a≦0.9,0≦b≦0.2,0.05≦c≦0.2,−1≦d≦+1である,
反応焼結磁気構造体。
【請求項2】
前記構造体は,NaZn13型の結晶構造を有する(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む少なくとも1つの相を含む,
請求項1に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項3】
前記結晶構造の空間群は,Fm3c又は14/mcmである,
請求項1又は2に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項4】
前記反応焼結磁気構造体は,11.1Å≦a≦11.5Åの格子定数又は7.8Å≦a≦8.1Å及び11.1Å≦c≦11.8Åの格子定数を有する(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む少なくとも1つの相を含む,
請求項1〜3のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項5】
Mは,Ce,Pr,及びNdの1つ以上の元素である,
請求項1〜4のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項6】
Mは,Ceであり,
0≦a≦0.9である,
請求項1〜4のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項7】
Mは,Pr及びNdの1つ以上の元素であり,
0≦a≦0.5である,
請求項1〜4のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項8】
Tは,Co,Ni,Mn,及びCrの1つ以上の元素である,
請求項1〜7のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項9】
Yは,Si,Al,As,Ga,Ge,Sn,及びSbの1つ以上の元素である,
請求項1〜8のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項10】
をさらに含み,
Xは,H,B,C,N,Li,及びBeの1つ以上の元素である
請求項1〜9のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項11】
Xは,少なくとも一部が(La1−a)(Fe1−b−c13−dの結晶構造の格子間に収容される,
請求項10に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項12】
0<e≦3である,
請求項10又は11に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項13】
500ppm〜8000ppmの酸素含有量をさらに含む,
請求項1〜12のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項14】
前記反応焼結磁気構造体は,(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含み,かつ,磁気熱量効果を示す,1つ以上の相を少なくとも80体積%含む,
請求項1〜13のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項15】
前記反応焼結磁気構造体は,(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む2つ以上の相を含み,
各相は,異なるTを含む,
請求項14に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項16】
平均粒径kは,20m m以下である,
請求項1〜15のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項17】
前記平均粒径kは,10m m以下である,
請求項16に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項18】
5000Oe未満の磁場間隔で常磁性状態から強磁性状態への遷移が発生する,
請求項1〜17のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項19】
500Oe未満の磁場間隔で常磁性状態から強磁性状態への遷移が発生する,
請求項18に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項20】
等温磁気エントロピー変化は,0kOe〜16kOeの磁場変化に対して少なくとも5J/kgKである,
請求項1〜19のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項21】
前記反応焼結磁気構造体の密度は,少なくとも6.00g/cmである,
請求項1〜20のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項22】
前記反応焼結磁気構造体は,熱交換器,冷却システム,空調装置の部品である,
請求項1〜21のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項23】
外部保護コーティングをさらに含む,
請求項1〜22のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項24】
前記外部保護コーティングは,金属又は合金又はポリマーを含む,
請求項23に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項25】
表面に少なくとも1つのチャネルをさらに含む,
請求項1〜24のいずれか1項に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項26】
前記チャネルは,熱交換媒体の流れを誘導するように構成される,
請求項25に記載の反応焼結磁気構造体。
【請求項27】
外被と少なくとも1つのコアとを含む構造体であって,
該コアは,請求項1〜13のいずれか1項に記載の反応焼結(La1−aMa)(Fe1−b−c13−d又はその前駆体を含む,
構造体。
【請求項28】
前記外被で包まれる複数のコアを含む,
請求項27に記載の構造体。
【請求項29】
前記複数のコアは,基盤に埋め込まれている,
請求項27に記載の構造体。
【請求項30】
前記外被は,塑性変形可能である,
請求項27〜29のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項31】
前記外被は,2つの層を含む,
請求項27〜30のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項32】
前記外被は,融点が1100℃よりも高い材料を含む,
請求項27〜31のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項33】
前記外被は,鉄又はケイ素鉄又はニッケル又は鋼又はステンレス鋼を含む,
請求項32に記載の構造体。
【請求項34】
前記基盤及び前記外被は,同じ又は異なる材料を含む,
請求項28〜33のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項35】
前記構造体は,細長い,
請求項27〜34のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項36】
前記構造体は,テープ,ワイヤー,又はプレートの形状を含む,
請求項27〜35のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項37】
前記構造体は,ソレノイドコイルの形状に巻かれている,
請求項27〜36のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項38】
前記構造体は,パンケーキコイルの形状に巻かれている,
請求項27〜36のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項39】
前記構造体は,複数のパンケーキ巻きコイルを含む,
請求項38に記載の構造体。
【請求項40】
各コイルは,異なるTを含む,
請求項39に記載の構造体。
【請求項41】
前記構造体は,表面に少なくとも1つのチャネルをさらに含む,
請求項27〜40のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項42】
前記チャネルは,熱交換媒体の流れを誘導するように構成される,
請求項41に記載の構造体。
【請求項43】
前記構造体の少なくとも一方の表面に複数の略平行な溝が設けられている,
請求項41又は42に記載の構造体。
【請求項44】
前記構造体は,熱交換器,冷却システム,温度調節装置,空調ユニット,又は産業用・商業用・家庭用の冷凍庫の部品である,
請求項27〜43のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項45】
請求項27〜43のいずれか1項に記載の構造体を少なくとも1つ含む,
熱交換器。
【請求項46】
請求項27〜44のいずれか1項に記載の構造体を複数含む,
積層構造体。
【請求項47】
少なくとも1つのスペーサーをさらに含み,
該スペーサーは,隣接構造体間に位置する,
請求項46に記載の積層構造体。
【請求項48】
前記スペーサーは,構造体の表面の1つ以上の突起部により設けられる,
請求項47に記載の積層構造体。
【請求項49】
前記突起部は,前記構造体の表面の複数の溝により設けられる,
請求項47又は48に記載の積層構造体。
【請求項50】
前記スペーサーは,追加要素として設けられる,
請求項47に記載の積層構造体。
【請求項51】
前記スペーサーは,型として設けられる,
請求項50に記載の積層構造体。
【請求項52】
前記スペーサーは,波形テープである,
請求項50に記載の積層構造体。
【請求項53】
前記スペーサーは,請求項1〜13のいずれか1項に記載の(La1−a)(Fe1−b−c13−d又はその前駆体を含む,
請求項48〜52のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項54】
前記スペーサーは,熱交換媒体の流れを誘導するように構成される1つ以上のチャネルを提供する,
請求項48〜53のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項55】
各層間の前記スペーサーは,複数の略平行な溝を含み,
スペーサーの該溝は,前記積層構造体の隣接スペーサーの溝に略直交に配置される,
請求項48〜53のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項56】
前記積層構造体は,熱交換器,冷却システム,温度調節装置,空調ユニット,又は産業用・商業用・家庭用の冷凍庫の部品である,
請求項48〜55のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項57】
請求項48〜55のいずれか1項に記載の積層構造体を少なくとも1つ含む,
熱交換器。
【請求項58】
(La1−a)(Fe1−b−c13−d磁気熱量相の化学量論を提供する量のLa前駆体,Fe前駆体,及びY前駆体を含み,
該前駆体は,(La1−a)(Fe1−b−c13−d相をほとんど含まず,
0≦a≦0.9,0≦b≦0.2,0.05≦c≦0.2,−1≦d≦+1である,
焼結磁気構造体の製造用の前駆体粉末。
【請求項59】
前記La前駆体は,水素化ランタンである,
請求項58に記載の前駆体粉末。
【請求項60】
前記Fe前駆体は,カルボニル鉄である,
請求項58又は59に記載の前駆体粉末。
【請求項61】
前記La前駆体及び前記Fe前駆体は,二成分前駆体として提供される,
請求項58に記載の前駆体粉末。
【請求項62】
前記La前駆体及び前記Y前駆体は,二成分前駆体として提供される,
請求項58に記載の前駆体粉末。
【請求項63】
Mは,Ce,Pr,及びNdの1つ以上の元素である,
請求項58〜62のいずれか1項に記載の前駆体粉末。
【請求項64】
Mは,Ceであり,
0≦a≦0.9である,
請求項58〜62のいずれか1項に記載の前駆体粉末。
【請求項65】
Mは,Pr及びNdの1つ以上の元素であり,
0≦a≦0.5である,
請求項58〜62のいずれか1項に記載の前駆体粉末。
【請求項66】
Tは,Co,Ni,Mn,及びCrの1つ以上の元素である,
請求項58〜65のいずれか1項に記載の前駆体粉末。
【請求項67】
Yは,Si,Al,As,Ga,Ge,Sn,及びSbの1つ以上の元素である,
請求項58〜66のいずれか1項に記載の前駆体粉末。
【請求項68】
をさらに含み,
0≦e≦3である,
請求項58〜67のいずれか1項に記載の前駆体粉末。
【請求項69】
Xは,H,B,C,N,Li,及びBeの1つ以上の元素である,
請求項68に記載の前駆体粉末。
【請求項70】
前記粉末の平均粒径は,20m m未満である,
請求項58〜69のいずれか1項に記載の前駆体粉末。
【請求項71】
前記粉末の平均粒径は,10m m未満である,
請求項70に記載の前駆体粉末。
【請求項72】
前記粉末の平均粒径は,5m m未満である,
請求項71に記載の前駆体粉末。
【請求項73】
請求項58〜72のいずれか1項に記載の前駆体粉末混合物を提供するステップと,
該前駆体粉末混合物を圧縮して素地を形成するステップと,
該素地を1000℃〜1200℃の間の温度で2〜24時間の間の時間にわたって焼結して(La1−a)(Fe1−b−c13−dの組成を有する少なくとも1つの相を形成するステップと,を含む,
反応焼結磁気構造体の製造方法。
【請求項74】
前記La前駆体及びY前駆体は,二成分前駆体として提供され,
該二成分前駆体は,ブックモールディング又はストリップキャスティングにより製造される,
請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記La前駆体及びFe前駆体は,二成分前駆体として提供され,
該二成分前駆体は,ブックモールディング又はストリップキャスティングにより製造される,
請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記素地は,理論密度の少なくとも90%の密度にまで焼結される,
請求項73〜75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記素地は,1150℃未満の温度で焼結される,
請求項73〜76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記焼結は,第1段階は真空下で,第2段階は不活性ガス下で行われる,
請求項73〜77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記焼結時間の少なくとも50%は,真空下で行われる,
請求項73〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記焼結時間の少なくとも80%は,真空下で行われる,
請求項73〜79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
2段階焼結処理が行われ,
第1段階の焼結温度は,第2段階の焼結温度よりも約0℃〜約100℃高い,
請求項73〜80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記第1段階は,最大12時間行われ,全焼結時間は,2時間〜24時間である。
請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記焼結処理後,前記構造体の平均粒径は,20m m未満である,
請求項73〜82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記前駆体粉末は,前記前駆体を混合して,該前駆体の平均粒径を縮小することにより製造される,
請求項73〜83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記前駆体の混合前に,少なくとも1つの前駆体は,水素を取り込んでいる,
請求項73〜84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記焼結処理中,H,B,C,及び/又はOが,前記磁気構造体に導入される,
請求項73〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記焼結処理後,H,B,C,及び/又はOが,前記磁気構造体に導入される,
請求項73〜86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記構造体は,H,B,C,及び/又はOを含む雰囲気でさらなる処理を受ける,
請求項87に記載の方法。
【請求項89】
20℃〜500℃の温度,1mbar〜10barの圧力で0.1〜100時間にわたってさらなる処理を受ける,
請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記焼結磁気構造体の製造後,少なくとも1つのチャネルが,該焼結磁気構造体の表面に導入される,
請求項73〜89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記チャネルは,のこ引き又は放電切断により導入される,
請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記焼結磁気構造体の製造後,該構造体は,保護層でコーティングされる,
請求項73〜91に記載の方法。
【請求項93】
(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む反応焼結磁気構造体を製造するための反応焼結の使用であって,
0≦a≦0.9,0≦b≦0.2,0.05≦c≦0.2,−1≦d≦+1,0≦e≦3であり,
Mは,Ce,Pr,及びNdの1つ以上の元素であり,
Tは,Co,Ni,Mn,及びCrの1つ以上の元素であり,
Yは,Si,Al,As,Ga,Ge,Sn,及びSbの1つ以上の元素であり,
Xは,H,B,C,N,Li,及びBeの1つ以上の元素である,
使用。
【請求項94】
(La1−a)(Fe1−b−c13−dを含む熱交換器,冷却システム,又は空調装置の部品を製造するための反応焼結の使用であって,
0≦a≦0.9,0≦b≦0.2,0.05≦c≦0.2,−1≦d≦+1,0≦e≦3であり,
Mは,Ce,Pr,及びNdの1つ以上の元素であり,
Tは,Co,Ni,Mn,及びCrの1つ以上の元素であり,
Yは,Si,Al,As,Ga,Ge,Sn,及びSbの1つ以上の元素であり,
Xは,H,B,C,N,Li,及びBeの1つ以上の元素である,
使用。
【請求項95】
請求項58〜72のいずれか1項に記載の前駆体粉末混合体を提供するステップと,
外被を提供するステップと,
該前駆体粉末を該外被で包んで前駆体複合構造体を形成するステップと,
該前駆体複合構造体を1000℃〜1200℃の温度で2〜24時間の間焼結して(La1−a)(Fe1−b−c13−dの組成を有する少なくとも1つの相を形成するステップと,を含む,
磁気複合構造体の製造方法。
【請求項96】
前記前駆体粉末を前記外被で包んだ後,前記前駆体複合構造体は,脱気される,
請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記前駆体複合構造体は,焼結前に少なくとも1つの機械的変形処理を受ける,
請求項95又は96に記載の方法。
【請求項98】
前記機械的変形処理は,圧延,スエージ加工,及び引抜の1つ以上である,
請求項97に記載の方法。
【請求項99】
多段階にわたる機械的変形/焼結処理が行われる,
請求項97又は98に記載の方法。
【請求項100】
前記前駆体複合構造体の製造後に,少なくとも1つのチャネルが,該前駆体複合構造体の表面に導入される,
請求項95〜99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記チャネルは,前記前駆体複合構造体の少なくとも一方の表面の塑性変形により導入される,
請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記チャネルは,プロファイル圧延により導入される,
請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記前駆体複合構造体は,1150℃未満の温度で焼結される,
請求項95〜102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記焼結は,第1段階は真空下で,第2段階は不活性ガス下で行われる,
請求項95〜103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
前記焼結時間の少なくとも50%は,真空下で行われる,
請求項95〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記焼結時間の少なくとも80%は,真空下で行われる,
請求項95〜104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
2段階焼結処理が行われ,
第1段階の焼結温度は,第2段階の焼結温度よりも0℃〜100℃高い,
請求項95〜106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記第1段階は,最大12時間行われ,全焼結時間は,2時間〜24時間である。
請求項107に記載の方法。
【請求項109】
請求項95〜102のいずれか1項に記載の2つ以上の前駆体複合構造体を配置して積層構造体を形成するステップを含む,
積層構造体の製造方法。
【請求項110】
請求項100〜102のいずれか1項に記載の前駆体複合構造体に設けられるチャネルの配置により,スペーサーが,前記積層構造体の隣接前駆体複合構造体間に設けられる,
請求項109に記載の方法。
【請求項111】
スペーサーが,追加部材の形で設けられる,
請求項109に記載の方法。
【請求項112】
前記スペーサーは,前記追加部材を前記積層構造体の隣接前駆体複合構造体間に配置することにより設けられる,
請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記積層構造体の隣接スペーサーのチャネルは,互いに略直交に配置される,
請求項110〜112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
前記スペーサーは,請求項95〜102のいずれか1項に記載の複合構造体である,
請求項110〜113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記積層構造体は,前記焼結処理前に組み立てられる,
請求項109〜114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記積層構造体は,前記焼結処理後に組み立てられる,
請求項109〜115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
前記前駆体複合構造体は,1150℃未満の温度で焼結される,
請求項109〜116のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
前記焼結は,第1段階は真空下で,第2段階は不活性ガス下で行われる,
請求項109〜117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
前記焼結時間の少なくとも50%は,真空下で行われる,
請求項109〜118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
前記焼結時間の少なくとも80%は,真空下で行われる,
請求項119に記載の方法。
【請求項121】
2段階焼結処理が行われ,
第1段階の焼結温度は,第2段階の焼結温度よりも0℃〜100℃高い,
請求項109〜120のいずれか1項に記載の方法。
【請求項122】
前記第1段階は,最大12時間行われ,合計焼結時間は,2時間〜24時間である,
請求項121に記載の方法。

【図1】
image rotate

image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公表番号】特表2010−519407(P2010−519407A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548757(P2009−548757)
【出願日】平成19年2月12日(2007.2.12)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050449
【国際公開番号】WO2008/099234
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(504227958)ヴァキュームシュメルツェ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (16)
【Fターム(参考)】