説明

磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録媒体

【課題】記録層が凹凸パターンで形成され、表面が充分に平坦で良好な記録/再生特性が確実に得られる磁気記録媒体及びこのような磁気記録媒体を効率良く製造することができる磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】基板22上に導電層38、連続記録層、絶縁層がこの順で形成された被加工体の連続記録層を凹凸パターンに加工し、凹凸パターンの凸部に前記絶縁層が残存し、且つ、凹凸パターンの凹部26の底部に導電層38が露出するように記録要素24Aを形成してから、タングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材28を凹部26の底部に露出した導電層38上に選択的に堆積させるCVD法を用いて、凹部26に非磁性材28を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録層が所定の凹凸パターンで形成されて記録要素が凹凸パターンの凸部として形成された磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク等の磁気記録媒体は、記録層を構成する磁性粒子の微細化、材料の変更、ヘッド加工の微細化等の改良により著しい面記録密度の向上が図られており、今後も一層の面記録密度の向上が期待されているが、磁気ヘッドの加工限界、磁気ヘッドの記録磁界の広がりに起因する隣接トラックへの記録、再生時のクロストークなどの問題が顕在化し、従来の改良手法による面記録密度の向上は限界にきている。
【0003】
これに対し、一層の面記録密度の向上を実現可能である磁気記録媒体の候補として、記録層が凹凸パターンで形成され、記録要素が凹凸パターンの凸部として形成されたディスクリートトラックメディアや、パターンドメディアが提案されている(例えば、特許文献1参照)。尚、ハードディスク等の磁気記録媒体ではヘッド浮上高さを安定させるために、表面の平坦性が重視されるため、記録要素の間の凹部を非磁性材で充填し、記録層の表面を平坦化することが好ましい。
【0004】
記録層を凹凸パターンに加工する手法としては、ドライエッチング等の加工手法を利用しうる。又、凹部に非磁性材を充填し、表面を平坦化する手法としては、スパッタリング法、IBD(Ion Beam Deposition)法等で凹凸パターンの記録層上に凹部を充填するように非磁性材を成膜してから、CMP(Chemical Mechanical Polishing)やドライエッチングで余剰の非磁性材を除去し、表面を平坦化する手法を利用しうる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−97419号公報
【特許文献2】特開平12−195042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、CMP法は、nmのオーダーで加工量を制御することが困難であり、記録要素の上面の一部まで除去したり、記録要素の上に非磁性材が残存し、磁気記録媒体の特性が悪化することがある。又、CMP法は、スラリーの除去のために洗浄等に多大な時間、コストを要するという問題があった。更に、CMP法はウェットプロセスであるため、記録層を凹凸パターンに加工する工程等のドライプロセスと組合わせると、被加工体の搬送等が煩雑となり、製造工程全体の効率が低下するという問題がある。
【0007】
一方、ドライエッチングは、SIMS(Secondary−Ion Mass Spectrometry)による組成分析を行うことにより、nmのオーダーで加工量を制御することが可能である。又、ドライエッチングは、ドライプロセスであるのでスラリーの除去等の問題がなく、更に、記録層を凹凸パターンに加工する工程等のドライプロセスと組合わせることで生産効率の向上が可能であるが、凹凸パターンの記録層に倣って凹凸パターンで成膜される非磁性材をドライエッチングで平坦化する場合、例えば、データ領域とサーボ領域のように、記録要素の幅や凹凸パターンが異なる領域間でエッチングレートに差が生じやすく、表面を所望のレベルまで充分に平坦化できないことがあった。
【0008】
又、CMP法やドライエッチングを用いて表面を所望のレベルまで充分に平坦化しても、磁気記録媒体の表面が静電気を帯びて異物を吸着し、この異物のために記録/再生精度が低下してしまうことがあった。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、記録層が凹凸パターンで形成され、表面が充分に平坦で良好な記録/再生特性が確実に得られる磁気記録媒体及びこのような磁気記録媒体を効率良く製造することができる磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基板上に連続記録層が形成された被加工体の連続記録層を凹凸パターンに加工し、凹凸パターンの凸部の少なくとも上面に絶縁材が露出し、且つ、凹凸パターン凹部の底部に導電材が露出するように連続記録層を加工して記録要素を形成してから、タングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材を、凹部の底部に露出した導電材上に選択的に堆積させるCVD法を用いて、凹部に非磁性材を充填することにより、上記目的を達成するものである。
【0011】
即ち、凹部に非磁性材を充填するために、従来のように凹凸パターンの記録層の上に非磁性材を一様に成膜するのではなく、非磁性材を凹部に選択的に充填するので、凹部が非磁性材で充填された被加工体の表面には、記録層の凹凸パターンが殆ど残存せず、又、凹凸パターンが形成されても、その段差は従来よりも著しく小さく抑制される。従って、その後のドライエッチング等により、表面を所望のレベルまで確実、且つ、容易に平坦化することができる。
【0012】
又、本発明は、記録要素の間の凹部にタングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材が充填された磁気記録媒体により、上記目的を達成するものである。
【0013】
このように、記録要素の間の凹部に、導電性を有するタングステンやアルミニウムを充填することで、絶縁性の材料が記録要素の凹部に充填される磁気記録媒体よりも、静電気の帯電が抑制される。従って、異物等の吸着による記録/再生精度の低下を抑制することができる。
【0014】
即ち、次のような本発明により、上記目的を達成することができる。
【0015】
(1)基板上に導電層、連続記録層、絶縁層がこの順で形成された被加工体の前記連続記録層を凹凸パターンに加工し、該凹凸パターンの凸部に前記絶縁層が残存し、且つ、前記凹凸パターンの凹部の底部に前記導電層が露出するように、前記凹凸パターンの凸部として記録要素を形成する記録層加工工程と、CVD法により、タングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材を、前記凹部の底部に露出した前記導電層上に選択的に堆積させ、前記凹部に前記非磁性材を充填する非磁性材充填工程と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0016】
(2) (1)において、前記被加工体は、前記導電層として前記記録層加工工程における加工速度が前記記録層よりも遅いストップ膜が形成された構成であり、前記記録層加工工程において、前記凹凸パターンの凹部に前記ストップ膜が残存するように、前記ストップ膜まで前記被加工体を加工することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0017】
(3)基板上に導電性を有する連続記録層、絶縁層がこの順で形成された被加工体の前記連続記録層を凹凸パターンに加工し、該凹凸パターンの凸部に前記絶縁層が残存し、且つ、前記凹凸パターンの凹部の底部に前記連続記録層が露出するように、前記凹凸パターンの凸部として記録要素を形成する記録層加工工程と、CVD法により、タングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材を、前記凹部の底部に露出した前記連続記録層上に選択的に堆積させ、前記凹部に前記非磁性材を充填する非磁性材充填工程と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0018】
(4) (1)乃至(3)のいずれかにおいて、前記非磁性材充填工程の後に、前記記録要素上に残存する前記絶縁層を除去し、表面を平坦化する平坦化工程が設けられたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0019】
(5) (1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記記録層加工工程と、前記非磁性材充填工程と、の間に、前記被加工体の上に絶縁膜を成膜する絶縁膜成膜工程と、前記記録要素の側面に前記絶縁膜が残存し、前記記録要素の上に前記絶縁層が残存し、且つ、前記凹凸パターン凹部の底部に前記導電層が露出するように、前記絶縁膜を部分的に除去する絶縁膜加工工程と、が設けられたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0020】
(6)基板上に導電層、絶縁性の連続記録層がこの順で形成された被加工体の前記連続記録層を凹凸パターンに加工し、該凹凸パターンの凸部として記録要素を形成して該記録要素を露出させ、且つ、前記凹凸パターンの凹部の底部に前記導電層を露出させる記録層加工工程と、CVD法により、タングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材を、前記凹部の底部に露出した前記導電層上に選択的に堆積させ、前記凹部に前記非磁性材を充填する非磁性材充填工程と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0021】
(7) (6)において、前記被加工体は、前記導電層として前記記録層加工工程における加工速度が前記記録層よりも遅いストップ膜が形成された構成であり、前記記録層加工工程において、前記凹凸パターンの凹部に前記ストップ膜が残存するように、前記ストップ膜まで前記被加工体を加工することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0022】
(8) (1)乃至(7)のいずれかにおいて、前記記録層加工工程において、イオンビームエッチングを用いて前記連続記録層を凹凸パターンに加工することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0023】
(9)基板上に所定の凹凸パターンで形成されて記録要素が前記凹凸パターンの凸部として形成された記録層と、前記記録要素の間の凹部に充填された、タングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【0024】
(10) (9)に記載の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に対してデータの記録/再生を行うための磁気ヘッドと、を備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
【0025】
尚、本出願において、「凹凸パターンで形成されて記録要素が凹凸パターンの凸部として形成された記録層」とは、連続記録層が所定のパターンで多数の記録要素に分割された記録層の他、連続記録層が所定のパターンで部分的に分割して形成され、一部が連続する記録要素で構成された記録層、又、例えば螺旋状の渦巻き形状の記録層のように、基板上の一部に連続して形成された記録層、凸部及び凹部双方が形成された連続した記録層も含む意義で用いることとする。
【0026】
又、本出願において「タングステンを主成分とする非磁性材」とは、全構成原子に対するタングステンの原子数の比率が90%以上の非磁性材という意義で用いることとする。「アルミニウムを主成分とする非磁性材」についても同様である。
【0027】
又、本出願において「磁気記録媒体」という用語は、情報の記録、読み取りに磁気のみを用いるハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ等に限定されず、磁気と光を併用するMO(Magneto Optical)等の光磁気記録媒体、磁気と熱を併用する熱アシスト型の記録媒体も含む意義で用いることとする。
【0028】
又、本出願において「加工速度」という用語は、単位時間当たりの加工量という意義で用いることとする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、記録層が凹凸パターンで形成され、表面が充分に平坦で良好な記録/再生特性が確実に得られる磁気記録媒体を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係る磁気記録再生装置10は、磁気記録媒体12と、磁気記録媒体12に対してデータの記録/再生を行うための磁気ヘッド14と、を備えている。尚、磁気記録媒体12はチャック16に固定され、該チャック16と共に回転自在とされている。又、磁気ヘッド14は、アーム18の先端近傍に装着され、アーム18はベース20に回動自在に取付けられている。これにより、磁気ヘッド14は磁気記録媒体12の径方向に沿う円弧軌道で磁気記録媒体12の表面に近接して可動とされている。磁気記録再生装置10は、磁気記録媒体12の構成に特徴を有しており、他の構成については、本発明の理解のために特に必要とは思われないため、説明を適宜省略することとする。
【0032】
磁気記録媒体12は、円板状の垂直記録型のディスクリートトラックメディアであり、図2に示されるように、基板22上に所定の凹凸パターンで形成されて記録要素24Aが凹凸パターンの凸部として形成された記録層24と、記録要素24Aの間の凹部26に充填された、W(タングステン)を主成分とする非磁性材28と、を有している。尚、記録要素24Aは、データ領域において径方向に微細な間隔の同心円状のトラック形状で形成されており、図2はこれを示す径方向に沿う側断面図である。又、記録要素24Aは、サーボ領域において所定のサーボ情報のパターンで形成されている(図示省略)。
【0033】
基板22は、記録層24側の面が鏡面研磨されている。基板22の材料としては、ガラス、NiPで被覆したAl合金、Si、Al等の非磁性材料を用いることができる。
【0034】
記録層24は、厚さが5〜30nmである。記録層24の材料としては、CoCrPt合金等のCoCr系合金、FePt系合金、これらの積層体、SiO等の酸化物系材料の中にCoPt等の強磁性粒子をマトリックス状に含ませた材料等の保磁力が高い材料を用いることができる。又、記録層24は導電性を有している。尚、記録層24を凹凸パターンに加工する手法としては、イオンビームエッチング等のドライエッチングの手法を用いることができる。
【0035】
非磁性材28は、上記のように主成分がタングステンであり、記録層24と同様に導電性を有している。
【0036】
記録要素24A及び非磁性材28の上には保護層30、潤滑層32がこの順で形成されている。保護層30は、厚さが1〜5nmである。保護層30の材料としては、例えば、ダイヤモンドライクカーボンと呼称される硬質炭素膜等を用いることができる。尚、本出願において「ダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」という)」という用語は、炭素を主成分とし、アモルファス構造であって、ビッカース硬度測定で2×10〜8×1010Pa程度の硬さを示す材料という意義で用いることとする。又、潤滑層32は、厚さが1〜2nmである。潤滑層32の材料としては、PFPE(パーフロロポリエーテル)やフォンブリン系潤滑剤等を用いることができる。
【0037】
又、基板22及び記録層24の間には基板22側から、下地層34、軟磁性層36、配向層(導電層)38がこの順で形成されている。下地層34は、厚さが2〜40nmである。下地層34の材料としてはTa等を用いることができる。
【0038】
軟磁性層36は、厚さが50〜300nmである。軟磁性層36の材料としては、Fe(鉄)合金、Co(コバルト)アモルファス合金、フェライト等を用いることができる。
【0039】
配向層38は、厚さが2〜40nmである。配向層38の材料としては、非磁性、且つ、導電性のCoCr合金、Cr合金、Ti、Ru、RuとTaの積層体等を用いることができる。又、配向層38の材料としては、記録層24を凹凸パターンに加工するためのイオンビームエッチング等のドライエッチングに対する加工速度が記録層24よりも遅い材料を用い、配向層38が記録層24の加工におけるストップ膜を兼ねる構成とすることが好ましい。尚、後述するように本第1実施形態では、配向層38は、後述する非磁性材28の充填工程において非磁性材28が選択的に堆積する導電層を兼ねているが、例えば、軟磁性層36を導電層として用いてもよい。又、配向層38、軟磁性層36と別体で導電層を設けてもよい。
【0040】
磁気ヘッド14は、図示しない記録ヘッド及び再生ヘッドを備えている。
【0041】
次に、磁気記録再生装置10の作用について説明する。
【0042】
磁気記録再生装置10は、磁気記録媒体12が、記録要素24Aの間の凹部26に、導電性を有するW(タングステン)を主成分とする非磁性材28が充填されているので、凹部に絶縁性の材料が充填された磁気記録媒体よりも静電気が帯電しにくい。従って、異物等を吸着しにくく良好な記録/再生特性が確実に得られる。
【0043】
又、Wは耐食性に優れ、経時的な変形や剥離が生じにくく、この点でも良好な記録/再生特性が確実に得られる。
【0044】
更に、Wは、凹部26を充填するために従来のように凹凸パターンの記録層24の上に一様に成膜されるのではなく、後述するようにCVD法により、凹部26に選択的に充填できるので、磁気記録媒体12は、表面を所望のレベルまで充分に、確実、且つ、容易に平坦化でき、生産性が良い。
【0045】
即ち、Wは、CVD法により凹部26に選択的に充填できるので、従来のように凹凸パターンの記録層上に非磁性材を一様に形成する場合に対し、製造工程における非磁性材の使用量が少なくて足り、又、平坦化工程で除去される非磁性材が従来よりも少ないので、生産性が良い。
【0046】
又、磁気記録媒体12は、記録要素24Aが、データ領域においてトラック形状で形成されているので面記録密度が高くても記録対象のトラックに隣接するトラックへの記録や再生時のクロストーク等の問題が生じにくい。
【0047】
更に、磁気記録媒体12は、記録要素24A同士が分割され、記録要素24A間の凹部36には記録層24が存在しないので凹部36からノイズが発生することがなく、この点でも良好な記録/再生特性が得られる。
【0048】
次に、磁気記録媒体12の製造方法について、図3のフローチャートに沿って説明する。
【0049】
まず、図4に示されるような被加工体40の出発体を作製する(S102)。具体的には、被加工体40の加工出発体は、基板22の上に、下地層34、軟磁性層36、配向層38、連続記録層42、絶縁層44、主マスク層46、副マスク層48をこの順でスパッタリング法により形成し、更にレジスト層50をスピンコート法で塗布することにより得られる。尚、ディッピング法によりレジスト層50を塗布してもよい。
【0050】
絶縁層44は、厚さが1〜10nmである。絶縁層44の材料としては、例えば、SiO等を用いることができる。
【0051】
主マスク層46は、厚さが3〜50nmである。主マスク層46の材料としてはC(炭素)、DLC等を用いることができる。副マスク層48は、厚さが3〜30nmである。主マスク層46の材料としてはNi等を用いることができる。レジスト層50は、厚さが30〜300nmである。尚、レジスト層50の材料はネガ型レジストでもポジ型レジストでもよい。
【0052】
次に、ナノ・インプリント法により、レジスト層50に、記録要素24Aの形状に対応する凹凸パターンを転写し、Oガスを反応ガスとする反応性イオンビームエッチングにより、凹凸パターンの凹部の底部のレジスト層50を除去する(S104)。尚、レジスト層50を露光・現像して、レジスト層50を凹凸パターンに加工してもよい。
【0053】
次に、Arガスを加工用ガスとするイオンビームエッチングにより、凹部の底部の副マスク層48を除去する(S106)。
【0054】
次に、Oガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングにより、凹部の底部の主マスク層46を除去する(S108)。これにより、凹部の底部に絶縁層44が露出する。
【0055】
次に、Arガスを加工用ガスとするイオンビームエッチングにより、凹部の底部の絶縁層44及び連続記録層42を除去し、記録要素24Aを形成する(S110)。この際、記録要素24Aの間の凹部26の底部に配向層38が露出するように、凹部の底部の連続記録層42は完全に除去する。これにより、図5に示されるように、連続記録層42が多数の記録要素24Aに分割され、記録層16が形成される。尚、記録要素24Aの上面に残存する主マスク層46は、Oガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングにより、完全に除去する。
【0056】
イオンビームエッチングは、凹部26の底部の加工速度が、凹部26の幅に殆ど依存しないので、被加工体40の全面において、凹部26は深さが均一に形成される。尚、配向層38の材料として、記録層24を凹凸パターンに加工するためのイオンビームエッチングに対する加工速度が記録層24よりも遅い材料を用い、配向層38が記録層24の加工におけるストップ膜を兼ねる構成とすれば、一層確実に、被加工体40の全面において凹部26の深さが均一に形成され、好ましい。尚、ストップ膜である配向層38の上面が露出したところで加工を停止してもよく、配向層38を厚さ方向に部分的に除去してもよい。
【0057】
次に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により図6に示されるように、W(非磁性材28)を凹部26の底部に露出した配向層(導電層)38上に選択的に堆積させ、図7に示されるように、凹部26に非磁性材28を充填する(S112)。尚、非磁性材28は、その上面が記録要素24Aの上面よりも、例えば1nm程度高くなるように凹部26内に堆積させ、凹部26内を完全に充填する。
【0058】
具体的には、温度が200〜300℃、圧力が0.1Pa程度に設定されたチャンバ(図示省略)内に被加工体40を保持し、WF(6フッ化タングステン)及びSiH(水素化ケイ素)の混合ガスを供給すると、以下の化学反応が起こり、Wが配向層(導電層)38上に選択的に堆積する。
【0059】
WF(g)+(6/n)M(s)→W(s)+(6/n)MFn(g)…(I)
2WF(g)+3SiH4(g)→2W(s)+3SiF4(g)+6H2(g)…(II)
【0060】
尚、式(I)、(II)において、Mは配向層38の構成元素、nはMの価数を示す。又、gは気体、sは固体を示す。チャンバ内では、式(I)、(II)に示される化学反応が同時に進行するが、いずれの化学反応においても、Wは、導電性の配向層38上に選択的に堆積し、絶縁層44上には堆積しない。
【0061】
凹部26の深さが均一であり、非磁性材28の堆積は厚さ方向に等しい速度で進行するので、被加工体40の全ての凹部26において、非磁性材28の上面は均一な高さとなる。
【0062】
このように凹部26を非磁性材28で充填するために、従来のように凹凸パターンの記録層24の上に非磁性材28を一様に成膜するのではなく、非磁性材28を凹部26に選択的に充填することができるので、凹部26が非磁性材28で充填された被加工体40の表面には記録層24の凹凸パターンに倣った凹凸パターンが殆ど形成されず、又、凹凸パターンが形成されても、その段差は従来よりも著しく小さく抑制される。
【0063】
次に、加工用ガスとしてArガスを用いたイオンビームエッチングにより、被加工体40の表面の法線に対して傾斜した方向からArのイオンビームを照射して、記録要素24A上の絶縁層44と共に余剰の非磁性材28を除去し、記録要素24A及び非磁性材28の表面を平坦化する(S114)。ここで、「余剰の非磁性材28」とは、記録要素24Aの上面を含む平面よりも上側(基板22と反対側)に存在する非磁性材28という意義で用いることとする。非磁性材充填工程(S112)において、被加工体40の表面の凹凸の段差が、従来よりも著しく小さく抑制されているので、例えば、サーボ領域とデータ領域のように、記録層24の凹凸パターンが異なる領域が存在しても、イオンビームエッチングを用いて、被加工体40の表面を所望のレベルまで効率良く、確実に平坦化することができる。
【0064】
次に、CVD法により記録要素24A及び非磁性材28の上面に保護層30を一様に形成し(S116)、ディッピング法により保護層30の上に潤滑層32を塗布する(S118)。これにより、前記図1に示される磁気記録媒体12が完成する。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0066】
本第2実施形態は、上記第1実施形態に対し、図8のフローチャートに示されるように、記録層加工工程(S110)と、非磁性材充填工程(S112)と、の間に、被加工体40の上に絶縁膜52を成膜する絶縁膜成膜工程(S202)と、記録要素24Aの側面に絶縁膜52が残存し、記録要素24Aの上に絶縁層44が残存し、且つ、凹凸パターン凹部の底部に配向層38が露出するように、絶縁膜52を部分的に除去する絶縁膜加工工程(S204)と、が設けられたことを特徴としている。その他は、上記第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0067】
具体的には、記録層加工工程(S110)後、スパッタリング法により、図9に示されるように、被加工体40の表面に絶縁膜52を2〜10nmの厚さに成膜する(S202)。尚、絶縁膜52の材料としてはAl(アルミナ)等を用いることができる。絶縁膜52は、(記録要素24Aの上の)絶縁層44の上、記録要素24Aの側面、及び凹部26の底部の上に一様に成膜される。
【0068】
次に、Arガスを加工用ガスとするイオンビームエッチングにより、図10中に矢印で示されるように、被加工体40の表面に対して垂直な方向からArガスを照射し、絶縁膜52を部分的に除去する(S204)。イオンビームエッチングは、表面が加工用ガスの照射方向に対して平行な部分よりも垂直に近い部分の方が加工速度が速いので、記録要素24Aの側面に絶縁膜52が残存するように、凹部26の底部の上の絶縁膜52を除去することができる。尚、(記録要素24Aの上の)絶縁層44の上の絶縁膜52は、完全に除去してもよいし、絶縁層44上に残存してもよい。
【0069】
次に、上記第1実施形態と同様にCVD法により、図11に示されるように、W(非磁性材28)を凹部26の底部に露出した配向層(導電層)38上に選択的に堆積させ、図12に示されるように、凹部26に非磁性材28を充填する(S112)。
【0070】
導電性を有する記録要素24Aの側面が絶縁膜52で被覆されているので、Wの堆積が記録要素24Aの側面から進行することがなく、凹部26の底面から被加工体40の厚さ方向に確実に進行する。従って、非磁性材28は上面が、凹部26の底面と同様の平坦な形状に形成される。
【0071】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0072】
本第3実施形態は、上記第1及び第2実施形態に対し、非磁性材充填工程(S112)で用いるガスとして、WF及びSiHの混合ガスに代えて、WF及びHの混合ガスを用いるようにしたものである。その他は、上記第1及び第2実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0073】
本第3実施形態では、非磁性材充填工程(S112)において、チャンバ内で以下の化学反応が起こる。
【0074】
WF(g)+3H(g)→W(s)+6HF(g)…(III)
【0075】
この場合も、Wは、導電性の配向層38上に選択的に堆積し、絶縁層44には堆積しない。従って、本第3実施形態でも、上記第1及び第2実施形態と同様に、被加工体40の表面を所望のレベルまで効率良く、確実に平坦化することができる。
【0076】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0077】
本第4実施形態は、上記第1及び第2実施形態に対し、非磁性材28がAl(アルミニウム)を主成分とする材料であることを特徴としている。その他は、上記第1及び第2実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0078】
Alは、Wよりも導電性が高いので、上記第1及び第2実施形態よりも静電気の帯電を抑制する効果が高く、異物等の吸着を一層確実に防止することができる。
【0079】
又、AlもWと同様に耐食性に優れ、経時的な変形や剥離が生じにくく、良好な記録/再生特性が確実に得られる。
【0080】
更に、AlもWと同様に、凹部26を充填するために従来のように凹凸パターンの記録層24の上に一様に成膜されるのではなく、以下に示すようにCVD法により、凹部26に選択的に充填できるので、表面を所望のレベルまで充分に、確実、且つ、容易に平坦化でき、生産性が良い。
【0081】
尚、本第4実施形態では、非磁性材充填工程(S112)で用いるガスとして、上記第1及び第2実施形態のWF及びSiHの混合ガスに代えて、Al(C(トリイソブチルアルミニウム)ガスを用いる。具体的には、温度が200〜300℃、圧力が0.1Pa程度に設定されたチャンバ(図示省略)内に被加工体40を保持し、チャンバ内にAl(Cガスを供給すると、以下の化学反応が起こり、Alが凹部26の底部に露出した配向層(導電層)38上に選択的に堆積する。
【0082】
2Al(C4H9)3(g)→2Al(s)+3H2(g)+6C4H8(g)…(IV)
【0083】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0084】
本第5実施形態は、上記第1実施形態に対し、図13に示されるように、磁気記録媒体60が、凸部である記録要素62A及び凹部26双方が形成された、凹凸パターンの連続した記録層62を有している。尚、非磁性材28はWを主成分とする材料でもよく、上記第4実施形態と同様にAlを主成分とする材料でもよい。又、配向層38は導電性でもよく、絶縁性でもよい。他の構成については、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0085】
磁気記録媒体60も、磁気記録媒体12と同様に、導電性を有する記録要素62Aの間の凹部26に、導電性を有するW又はAlを主成分とする非磁性材28が充填されているので、凹部に絶縁性の材料が充填された磁気記録媒体よりも静電気が帯電しにくい。従って、異物等を吸着しにくく良好な記録/再生特性が確実に得られる。又、W、Alは耐食性に優れ、経時的な変形や剥離が生じにくく、この点でも良好な記録/再生特性が確実に得られる。
【0086】
又、磁気記録媒体60も、磁気記録媒体12と同様に、凹部26を充填するために、W又はAlを主成分とする材料を従来のように凹凸パターンの記録層62の上に一様に成膜するのではなく、CVD法により、凹部26に選択的に充填できるので、生産性が良い。
【0087】
ここで、磁気記録媒体60の製造方法について、上記第1実施形態に係る図3のフローチャートに沿って簡単に説明しておく。尚、上記第1〜第4実施形態と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0088】
まず、上記第1実施形態と同様に、被加工体の出発体作製工程(S102)、レジスト層加工工程(S104)、副マスク層加工工程(S106)、主マスク層加工工程(S108)を実行することにより、凹部の底部に絶縁層44が露出する。
【0089】
次に、Arガスを加工用ガスとするイオンビームエッチングにより、凹部の底部の絶縁層44を除去すると共に連続記録層42を厚さ方向に部分的に除去し、記録要素62Aを形成する(S110)。即ち、記録要素62Aの間の凹部26の底部にも連続記録層42が残存するように連続記録層42を加工する。これにより、図14に示されるように、連続記録層42が凹凸パターンに加工されて該凹凸パターンの凸部として多数の記録要素62Aが形成された、連続した記録層62が形成される。尚、記録要素62Aの上面に残存する主マスク層46は、Oガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングにより、完全に除去する。
【0090】
次に、上記第1〜第4実施形態と同様にCVD法により図15に示されるように、W又はAlを主成分とする材料(非磁性材28)を凹部26の底部に露出した記録層62上に選択的に堆積させ、図16に示されるように、凹部26に非磁性材28を充填する(S112)。
【0091】
尚、上記第2実施形態と同様に、記録層加工工程(S110)後、絶縁膜成膜工程(S202)、絶縁膜加工工程(S204)を実行してから、非磁性材充填工程(S112)を実行してもよい。
【0092】
次に、上記第1実施形態と同様に、平坦化工程(S114)、保護層形成工程(S116)、潤滑層形成工程(S118)を実行することにより、前記図13に示される磁気記録媒体60が完成する。
【0093】
尚、上記第1〜第5実施形態において、平坦化工程(S114)において記録要素24、62上の絶縁層44及び凹部26上の余剰の非磁性材28を完全に除去しているが、所望の磁気特性が得られれば、これらの一部を残存させてもよい。
【0094】
又、上記第1〜第5実施形態において、非磁性材充填工程(S112)の後に、平坦化工程(S114)が設けられているが、非磁性材充填工程(S112)により、被加工体40の表面が所望のレベルまで充分に平坦化されていれば、平坦化工程(S114)は省略してもよい。
【0095】
又、上記第1〜第5実施形態において、記録層24、62を凹凸パターンに加工するためのドライエッチングとしてArガスを用いたイオンビームエッチングが例示されているが、例えばKr(クリプトン)、Xe(キセノン)等の他の希ガスを用いたイオンビームエッチングや、CO(一酸化炭素)及びNH(アンモニア)の混合ガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングにより、記録層24を凹凸パターンに加工してもよい。
【0096】
上記第1〜第4実施形態においては、このような反応性イオンエッチングを用いて記録層24を加工する場合も、配向層38の材料として、加工速度が記録層24の加工速度よりも遅い材料を用い、配向層38がストップ膜を兼ねる構成とすることで、被加工体40の全面において凹部26の深さを均一にする効果が得られる。CO及びNHの混合ガスを反応ガスとする反応性イオンエッチングを用いる場合の、ストップ膜を兼ねる配向層38の具体的な材料としては、Cr合金、Ti、Ru、Ru及びTaの積層体等を用いることができる。
【0097】
又、上記第1実施形態において、配向層38の材料として、記録層24を凹凸パターンに加工するためのイオンビームエッチング等のドライエッチングに対する加工速度が記録層24よりも遅い材料を用い、配向層38が記録層24の加工におけるストップ膜を兼ねる構成とすることが好ましい旨が示されているが、第1〜第4実施形態において、配向層38と軟磁性層36との間に、配向層38と別体で、導電性を有し、且つ、記録層24を凹凸パターンに加工するためのイオンビームエッチング等のドライエッチングに対する加工速度が記録層24よりも遅い、導電層を兼ねるストップ膜を形成してもよい。
【0098】
一方、ストップ膜がなくても凹部26の深さを充分均一に加工できれば、配向層38の材料として、記録層24を凹凸パターンに加工するためのイオンビームエッチング等のドライエッチングに対する加工速度が記録層24と同等、又は記録層24よりも速い材料を用いてもよい。
【0099】
又、上記第1〜第5実施形態において、絶縁層44の材料としてSiOが例示され、又、絶縁膜52の材料としてAlが例示されているが、例えば、絶縁層44の材料としてAlを用い、絶縁膜52の材料としてSiOを用いてもよく、絶縁層44、絶縁膜52の材料として他の絶縁材料を用いてもよい。
【0100】
又、上記第1〜第4実施形態において、配向層38の材料として導電性の材料を用い、凹部26の底部に露出した配向層38上に、非磁性材28を選択的に堆積させているが、配向層38の材料として絶縁性の材料を用い、配向層38と軟磁性層36との間に、配向層38と別体で、導電層を形成してもよい。この場合、記録層加工工程(S110)において、凹部の配向層38を完全に除去し、凹部26の底面から配向層38と別体の導電層を露出させればよい。
【0101】
又、上記第1〜第5実施形態において、連続記録層42の上に絶縁層44、主マスク層46、副マスク層48、レジスト層50を連続記録層42に形成し、3段階のドライエッチングで連続記録層42を分割しているが、連続記録層42を高精度で分割できれば、レジスト層、マスク層の材料、積層数、厚さ、ドライエッチングの種類等は特に限定されない。例えば、絶縁層44が主マスク層を兼ねるようにしてもよい。
【0102】
又、上記第1〜第5実施形態において、記録層24、62(連続記録層44)の材料はCoCrPt合金又はFePt合金であるが、記録層24、62の材料として、例えば、鉄族元素(Co、Fe(鉄)、Ni)を含む他の合金、これらの積層体等の他の材料を用いてもよい。
【0103】
又、以下に示す本発明の第6実施形態のように、記録層24の材料として、酸化物、窒化物等の絶縁性の磁性材料を用いてもよい。以下、本第6実施形態による磁気記録媒体12の製造方法について簡単に説明するが、記録層加工工程(S110)、非磁性材充填工程(S112)以外の工程については、上記第1実施形態と同様であるので、説明を適宜省略することとする。尚、この第6実施形態では、磁気記録媒体記録層24が絶縁性であり、磁気記録媒体12の製造工程において、絶縁層44は不要であるので、上記第1実施形態に係る被加工体40に対し、図17に示されるような、絶縁層44が省略された被加工体70を用いる。
【0104】
まず、第1実施形態と同様の要領で被加工体70の連続記録層42を、図18に示されるように凹凸パターンに加工し、凹凸パターンの凸部として記録要素24Aを形成して該記録要素24Aを露出させ、且つ、凹凸パターンの凹部26の底部に配向層(導電層)38を露出させる(S110)。
【0105】
次に、上記第1、第3又は第4実施形態と同様の要領で、CVD法により図19に示されるように、W又はAl(非磁性材28)を凹部26の底部に露出した配向層38上に選択的に堆積させ、図20に示されるように、凹部26に非磁性材28を充填する(S112)。
【0106】
この際、記録要素24Aが絶縁性であるので、W又はAlの堆積が記録要素24Aの側面から進行することがなく、凹部26の底面から被加工体70の厚さ方向に確実に進行する。従って、非磁性材28は上面が、凹部26の底面と同様の平坦な形状に形成される。尚、記録要素24Aの上に絶縁層が形成されていないので、絶縁層を除去する工程は不要であるが、必要に応じて、ドライエッチング等により、記録要素24A、非磁性材28の表面を平坦化してもよい。更に、上記第1実施形態と同様に、保護層30、潤滑層32を形成することにより、磁気記録媒体12が得られる。
【0107】
尚、上記第1〜第6実施形態において、基板22と記録層24、62との間に下地層34、軟磁性層36、配向層38が形成されているが、記録層24、62の下の層の構成は、磁気記録媒体の種類に応じて適宜変更すればよい。例えば、下地層34、軟磁性層36、配向層38のうち一又は二の層を省略してもよい。
【0108】
又、上記第1〜第6実施形態において、磁気記録媒体12、60はデータ領域において記録要素24A、62Aがトラックの径方向に微細な間隔で形成された垂直記録型の磁気ディスクであるが、記録層がトラックの周方向(セクタの方向)に微細な間隔で形成された磁気ディスク、トラックの径方向及び周方向の両方向に微細な間隔で形成された磁気ディスク、記録層が螺旋形状をなす磁気ディスクの製造についても本発明は当然適用可能である。又、MO等の光磁気ディスク、磁気と熱を併用する熱アシスト型の磁気ディスク、更に、磁気テープ等ディスク形状以外の他の凹凸パターンの記録層を有する磁気記録媒体の製造に対しても本発明を適用可能である。又、面内記録型の磁気記録媒体についても本発明は適用可能である。
【実施例】
【0109】
上記第2実施形態のとおり、直径が約65mmで、記録層24の分割パターンが異なる3種類の磁気記録媒体12を作製した。各試料の具体的な分割パターンを表1に示す。尚、表1中の凹部の深さは、記録層加工工程(S110)後、且つ、絶縁膜成膜工程(S202)前の、絶縁層44の上面と、凹部26の底面との厚さ方向の長さである。
【0110】
記録層24の厚さは約20nmとし、記録層24の材料はCoCr合金を用いた。又、絶縁層44の厚さは約3nmとし、絶縁層44の材料はSiOを用いた。又、絶縁膜52の厚さは約2nmとし、絶縁膜52の材料はAlを用いた。
【0111】
非磁性材充填工程(S112)におけるCVDの条件は、チャンバ内の圧力を約0.1Pa、被加工体40の温度を約200℃に設定した。又、WFガス及びSiHガスは流量比が1:1となるようにチャンバ内に供給した。非磁性材28は、その上面が記録要素24Aの上面よりも1nm高くなるように、約21nmの厚さに堆積させた。
【0112】
又、平坦化工程(S114)におけるイオンビームの照射角は、被加工体40の表面に対して約2°に設定して余剰の非磁性材28Aを除去し、記録要素24Aの上面が露出するまで平坦化した。
【0113】
平坦化工程(S114)後、AFM(Atomic Force Microscope)により、記録要素24Aの上面と非磁性材28の上面との段差を測定した。各試料の記録要素24Aの上面と非磁性材28の上面との段差の測定結果を表1に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
表1に示されるように、記録層24の分割パターンによらず、平坦化工程(S114)後の記録要素24Aの上面と非磁性材28の上面との段差はほぼ一定で、表面が所望のレベルまで充分に平坦化されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、例えば、ディスクリートトラックタイプのハードディスク等の記録層が凹凸パターンで形成された磁気記録媒体に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造を模式的に示す斜視図
【図2】前記磁気記録再生装置の磁気記録媒体の構造を模式的に示す側断面図
【図3】前記磁気記録媒体の製造工程の概要を示すフローチャート
【図4】前記磁気記録媒体の製造工程における被加工体の出発体の構造を模式的に示す側断面図
【図5】連続記録層が分割された前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図6】凹部の底部に非磁性材が堆積した前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図7】前記凹部が前記非磁性材で充填された前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図8】本発明の第2実施形態に係る磁気記録媒体の製造工程の概要を示すフローチャート
【図9】同磁気記録媒体の製造工程における表面に絶縁膜が成膜された被加工体を模式的に示す側断面図
【図10】前記絶縁膜が部分的に除去された前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図11】凹部の底部に非磁性材が堆積した前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図12】前記凹部が前記非磁性材で充填された前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図13】本発明の第5実施形態に係る磁気記録媒体の構造を模式的に示す側断面図
【図14】同磁気記録媒体の製造工程における、連続記録層が加工された被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図15】凹部の底部に非磁性材が堆積した前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図16】前記凹部が前記非磁性材で充填された前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図17】本発明の第6実施形態に係る磁気記録媒体の製造工程における被加工体の出発体の構造を模式的に示す側断面図
【図18】連続記録層が分割された前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図19】凹部の底部に非磁性材が堆積した前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【図20】前記凹部が前記非磁性材で充填された前記被加工体の形状を模式的に示す側断面図
【符号の説明】
【0118】
10…磁気記録再生装置
12、60…磁気記録媒体
14…磁気ヘッド
16…チャック
18…アーム
20…ベース
22…基板
24、62…記録層
24A、62A…記録要素
26…凹部
28…非磁性材
30…保護層
32…潤滑層
34…下地層
36…軟磁性層
38…配向層(導電層)
40、70…被加工体
42…連続記録層
44…絶縁層
46…主マスク層
48…副マスク層
50…レジスト層
52…絶縁膜
S102…被加工体の出発体作製工程
S104…レジスト層加工工程
S106…副マスク層加工工程
S108…主マスク層加工工程
S110…記録層加工工程
S112…非磁性材充填工程
S114…平坦化工程
S116…保護層形成工程
S118…潤滑層形成工程
S202…絶縁膜成膜工程
S204…絶縁膜加工工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に導電層、連続記録層、絶縁層がこの順で形成された被加工体の前記連続記録層を凹凸パターンに加工し、該凹凸パターンの凸部に前記絶縁層が残存し、且つ、前記凹凸パターンの凹部の底部に前記導電層が露出するように、前記凹凸パターンの凸部として記録要素を形成する記録層加工工程と、CVD法により、タングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材を、前記凹部の底部に露出した前記導電層上に選択的に堆積させ、前記凹部に前記非磁性材を充填する非磁性材充填工程と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記被加工体は、前記導電層として前記記録層加工工程における加工速度が前記記録層よりも遅いストップ膜が形成された構成であり、前記記録層加工工程において、前記凹凸パターンの凹部に前記ストップ膜が残存するように、前記ストップ膜まで前記被加工体を加工することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
基板上に導電性を有する連続記録層、絶縁層がこの順で形成された被加工体の前記連続記録層を凹凸パターンに加工し、該凹凸パターンの凸部に前記絶縁層が残存し、且つ、前記凹凸パターンの凹部の底部に前記連続記録層が露出するように、前記凹凸パターンの凸部として記録要素を形成する記録層加工工程と、CVD法により、タングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材を、前記凹部の底部に露出した前記連続記録層上に選択的に堆積させ、前記凹部に前記非磁性材を充填する非磁性材充填工程と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記非磁性材充填工程の後に、前記記録要素上に残存する前記絶縁層を除去し、表面を平坦化する平坦化工程が設けられたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記記録層加工工程と、前記非磁性材充填工程と、の間に、前記被加工体の上に絶縁膜を成膜する絶縁膜成膜工程と、前記記録要素の側面に前記絶縁膜が残存し、前記記録要素の上に前記絶縁層が残存し、且つ、前記凹凸パターン凹部の底部に前記導電層が露出するように、前記絶縁膜を部分的に除去する絶縁膜加工工程と、が設けられたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
基板上に導電層、絶縁性の連続記録層がこの順で形成された被加工体の前記連続記録層を凹凸パターンに加工し、該凹凸パターンの凸部として記録要素を形成して該記録要素を露出させ、且つ、前記凹凸パターンの凹部の底部に前記導電層を露出させる記録層加工工程と、CVD法により、タングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材を、前記凹部の底部に露出した前記導電層上に選択的に堆積させ、前記凹部に前記非磁性材を充填する非磁性材充填工程と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記被加工体は、前記導電層として前記記録層加工工程における加工速度が前記記録層よりも遅いストップ膜が形成された構成であり、前記記録層加工工程において、前記凹凸パターンの凹部に前記ストップ膜が残存するように、前記ストップ膜まで前記被加工体を加工することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記記録層加工工程において、イオンビームエッチングを用いて前記連続記録層を凹凸パターンに加工することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
基板上に所定の凹凸パターンで形成されて記録要素が前記凹凸パターンの凸部として形成された記録層と、前記記録要素の間の凹部に充填された、タングステン及びアルミニウムのいずれかを主成分とする非磁性材と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項10】
請求項9に記載の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に対してデータの記録/再生を行うための磁気ヘッドと、を備えることを特徴とする磁気記録再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2006−92659(P2006−92659A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277008(P2004−277008)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】