磁気記録媒体の製造方法
【課題】記録再生ヘッドの浮上性を確保しつつ、ヘッド位置決め精度がよく、SN比が良好で、高温多湿環境下でも高い信頼性を示す磁気記録媒体を製造できる方法を提供する。
【解決手段】基板上に磁気記録層を成膜し、前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層の一部をエッチングガスによりエッチングして磁気記録層に凹凸を形成し、凹部に残存する磁気記録層をNeガスにより改質して非記録部を形成し、全面に保護膜を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【解決手段】基板上に磁気記録層を成膜し、前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層の一部をエッチングガスによりエッチングして磁気記録層に凹凸を形成し、凹部に残存する磁気記録層をNeガスにより改質して非記録部を形成し、全面に保護膜を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブ(HDD)に組み込まれる磁気記録媒体において、隣接トラック間の干渉によりトラック密度の向上が妨げられるという問題が顕在化している。特に記録ヘッド磁界のフリンジ効果による書きにじみの低減は重要な技術課題である。
【0003】
このような問題に対して、記録トラック間を物理的に分離したディスクリートトラック型パターンド媒体(DTR媒体)や、記録ビット間を物理的に分離したビットパターンド媒体(BPM)が提案されている。DTR媒体やBPMは、記録時におけるサイドイレース、再生時におけるサイドリードを低減できるため、トラック密度を高めることが可能となり、高密度磁気記録媒体として有望である。
【0004】
DTR媒体のように、表面に凹凸が形成された媒体を浮上ヘッドで記録再生する際には、ヘッドの浮上性が問題になる。たとえば、DTR媒体で隣接トラック間を完全に分離しようとすると、厚さ約15nmの強磁性体からなる磁気記録層および厚さ約5nmの保護層の計20nmを除去して溝を形成する。一方、浮上ヘッドの浮上設計量は10nm程度であるため、溝を非磁性体で充填し、DTR媒体の表面を平滑にすることによってヘッドの浮上性を確保することが考えられていた。しかし、この平滑化工程は困難である。
【0005】
そこで、平滑な磁気記録層を局所的に変質させてパターン化する方法が提案されている(特許文献1〜4)。特許文献1は磁気記録層の一部をハロゲンと反応させて変質させることによりBPMを製造する方法を開示している。特許文献2は磁気記録層の一部に窒素イオン注入を行って変質させることによりDTR媒体を製造する方法を開示している。特許文献3は磁性層の一部にAgイオンを注入してその部位の保磁力を増大させることによりDTR媒体を製造する方法を開示している。特許文献4は磁性層の一部にHeイオンを照射して磁気特性を変質させることによりパターン化する方法を開示している。これらの方法では、媒体表面に凹凸を形成することなく磁性パターンを形成することができ、ヘッドの浮上性が確保されたDTR媒体やBPMを提供できる。
【0006】
しかし、特許文献2や特許文献4のような窒素イオンやHeイオンによる磁性層の変質を利用する方法では、記録トラック間の分離が不十分になることがわかってきた。
【0007】
特許文献1のようにハロゲンとの反応を用いる方法で製造された媒体は高温多湿環境下での信頼性に改善の余地があることがわかってきた。
【0008】
特許文献3は磁気記録層に重原子を注入した効果で照射部の磁気特性をよくするものであるが、ヘッド位置決め精度が20nm程度であり、仕様値の10nm以下を満たさない。磁気力顕微鏡(MFM)で媒体表面を観察したところ、サーボパターンの磁気的形状が非常に悪いことがわかった。これは、高エネルギーの重原子イオンが拡散して磁気記録層のダメージを与えているためであると考えられる。
【特許文献1】特許第3886802号公報
【特許文献2】特開平5−205257号公報
【特許文献3】特開2005−223177号公報
【特許文献4】特表2002−501300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、記録再生ヘッドの浮上性を確保しつつ、ヘッド位置決め精度がよく、SN比が良好で、高温多湿環境下でも高い信頼性を示す磁気記録媒体を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る磁気記録媒体の製造方法は、基板上に磁気記録層を成膜し、前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層の一部をエッチングガスによりエッチングして磁気記録層に凹凸を形成し、凹部に残存する磁気記録層をNeガスにより改質して非記録部を形成し、全面に保護膜を形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様に係る磁気記録媒体の製造方法は、基板上に磁気記録層を成膜し、前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層の一部をエッチングガスとNeガスとの混合ガスにより処理してエッチングおよび改質を同時に行い、磁気記録層に凹凸を形成するとともに凹部に非記録部を形成し、全面に保護膜を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに他の態様に係る磁気記録媒体の製造方法は、基板上に磁気記録層を成膜し、前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層をNeガスにより改質して非記録部を形成し、全面に保護膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、記録再生ヘッドの浮上性を確保しつつ、ヘッド位置決め精度がよく、SN比が良好で、高温多湿環境下でも高い信頼性を示す磁気記録媒体を製造できる。また、磁気記録層をNeガスで改質して非記録部を形成することにより、非記録部の表面に形成されるDLC保護膜の膜質を向上させることができ、さらなるSN比の向上につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記課題を解決するために、磁気記録層の表面に10nm以下の凹凸を形成したDTR媒体およびBPMの製造方法を検討した。現在のHDD媒体は、信号出力を確保するために磁気記録層の膜厚は15nm程度必要なため、10nm以下の凹凸を形成した状態では凹部の底に5nm以上の磁気記録層の一部が残る。この状態では、凹部の底に残った磁気記録層に記録能力があるので、サイドイレース現象、サイドリード現象を抑制することができない。そこで、凹部の底に残った5nm以上の磁気記録層を磁気的に失活させることにより、記録ヘッドの浮上性を確保しつつサイドイレース現象、サイドリード現象を抑制できるDTR媒体およびBPMを製造するようにした。
【0015】
凹部の底に残った5nm以上の磁気記録層を磁気的に失活させるには、Neガスに曝露させるのが好適であることがわかった。反応性ガスに曝露させた場合には経時劣化による信頼性低下が懸念される。HDDにおいては、空気中の水分との反応により磁気記録層の劣化やコロージョン発生がBER低下の原因になる。これに対して、Neガスは反応不活性であるので経時劣化による信頼性低下の懸念がない。また、Neは原子番号が小さく、適度な質量を有する点でも好ましい。磁気記録層の磁性の失活については、強磁性体に侵入した原子がエネルギーを失う過程で局所的に高温状態を生じ、強磁性体の結晶構造を破壊するのが主要因である。この観点からは強磁性体に重原子を侵入させることが好ましいが、重原子になるほど、強磁性体の膜厚方向に侵入しにくくなる傾向がある。また、侵入を受ける強磁性体と侵入元素との質量が近くなると、スパッタリング現象が生じるため、強磁性体と同程度の質量を有する原子は磁性を失活させる作用がむしろ小さくなる。逆に、Heのような軽元素は強磁性体に侵入しやすいが、軽すぎるため磁性を失活させる効果は小さい。これに対して、Neガスは適度な質量を有し、強磁性体の磁性を失活させるのに好適であり、しかも水との反応性が小さいという利点がある。
【0016】
また、Neガスは強磁性体の磁性を失活させるのに有利なため、必ずしも磁気記録層の表面に凹凸を形成する必要はなく、平坦な磁気記録層をNeガスに曝露させて磁性を失活させることによっても、サイドイレース現象、サイドリード現象を抑制できることを見出した。
【0017】
さらに、Neガスを曝露することで、その表面に形成されるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)保護膜の膜質が向上することがわかった。保護膜の膜質向上はヘッドの浮上性を良好にするため、さらなるS/N向上につながる。
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1に、本発明の実施形態に係る磁気記録媒体(DTR媒体)1の周方向に沿う平面図を示す。図1に示すように、媒体1の周方向に沿って、サーボ領域2と、データ領域3が交互に形成されている。サーボ領域2には、プリアンブル部21、アドレス部22、バースト部23が含まれる。データ領域3には互いに分断されたディスクリートトラック31が含まれる。
【0020】
図2に、本発明の実施形態に係る磁気記録媒体(BPM)1の周方向に沿う平面図を示す。図2に示すように、サーボ領域2は図1と同様な構成を有する。データ領域3には互いに分断された記録ビット32が含まれる。
【0021】
図3(a)〜(i)を参照して、本発明に係るDTR媒体またはBPMの製造方法を説明する。
【0022】
図3(a)に示すように、ガラス基板51上に、厚さ120nmのCoZrNbからなる軟磁性下地層(図示せず)、厚さ20nmのRuからなる配向制御用の下地層(図示せず)、厚さ15nmのCoCrPt−SiO2からなる磁気記録層52、厚さ20nmのカーボンからなるエッチング保護層53を順次成膜する。ここでは、簡略化のために、軟磁性下地層および配向制御層は図示していない。
【0023】
図3(b)に示すように、エッチング保護層53上に、レジスト54として厚さ100nmのスピンオングラス(SOG)をスピンコートする。このレジスト54に対向するようにスタンパ60を配置する。このスタンパ60には図1または図2に示した磁性パターンと逆転した凹凸を有するパターンが形成されている。
【0024】
図3(c)に示すように、スタンパ60を用いてインプリントを行い、スタンパ60の凹部に対応してレジスト54の凸部54aを形成する。インプリント後、スタンパ60を除去する。
【0025】
図3(d)に示すように、パターン化されたレジスト54の凹部の底に残っているレジスト残渣を除去する。たとえばICP(誘導結合プラズマ)エッチング装置を用い、プロセスガスとしてCF4を導入してチャンバー圧を2mTorrとし、コイルのRFパワーとプラテンのRFパワーをそれぞれ100W、エッチング時間を30秒とする。
【0026】
図3(e)に示すように、レジスト54のパターンをマスクとして、エッチング保護層53をパターニングする。たとえば、ICPエッチング装置を用い、プロセスガスとしてO2を導入してチャンバー圧を2mTorrとし、コイルのRFパワーとプラテンのRFパワーをそれぞれ100W、エッチング時間を30秒とする。
【0027】
図3(f)に示すように、エッチング保護層53のパターンをマスクとして、磁気記録層52の一部をエッチングして凹凸を形成する。たとえば、ECR(電子サイクロトロン共鳴)イオンガンを用い、プロセスガスとしてArを導入し、マイクロ波パワー800W、加速電圧500Vで1分間エッチングする。なお、プロセスガスとしてArの代わりに、KrまたはXeを用いてもよい。こうして、磁気記録層52の非記録部にたとえば深さ10nmの凹部を形成する。
【0028】
図3(g)に示すように、凹部の底に残存する磁気記録層52をNeガスにより改質し、磁性を失活させて非記録部55を形成する。凹部の底に残存する磁気記録層52を完全に非磁性化する必要はなく、磁気記録できない状態にすればよい。たとえば、磁化(Ms)は持っているが垂直方向の保磁力(Hc)が1kOe以下というような軟磁性状態でもよいし、常磁性(外部磁場がないときには磁化を持たず、磁場を印加するとその方向に弱く磁化する磁性)状態でもよい。Neガスの曝露に用いる装置は、ICPエッチング装置でもよいし、ECRイオンガンでもよい。ICPエッチング装置を用いた場合、Neガスプラズマ中に試料を設置するので磁性を失活させる効果は高いが、基板バイアスによるダメージは発生する可能性がある。ECRイオンガンを用いた場合は約2keV程度までNeガスイオンを加速して試料に曝露できるため、深さ方向に精度よくNe原子を注入することができるので好適である。この場合、30秒程度のプロセス時間で磁性を失活させる効果が十分に発現し、プロセス時間を長くしても効果はそれほど変化しない。これは、Neガスの磁性失活効果が化学反応などの拡散律速ではなく、Neガスの注入深さに依存するためである。Ne原子の注入深さはプロセス時間ではなく、Ne原子の運動エネルギーに依存し、ECRイオンガンの場合には加速電圧、ICPエッチング装置の場合には基板バイアスパワーで決まる。なお、プロセス時間が長くなるとイオン種の絶対数が増加するため、磁性失活効果が若干増加する。
【0029】
図3(h)に示すように、エッチング保護層(カーボン)53のパターンを除去する。たとえば、酸素ガスを用い、100mTorr、100Wの条件でRIE(反応性イオンエッチング)を行う。通常、エッチング保護層53のパターン上に残存するレジスト(SOG)もリフトオフされる。ただし、最初にCF4ガスを用いたRIEにより残存しているSOGを剥離した後、酸素ガスを用いたRIEでカーボンを剥離してもよい。
【0030】
図3(i)に示すように、CVD(化学気相堆積法)にカーボンからなる表面保護膜56を形成する。表面保護膜56上に潤滑剤を塗布することにより本発明に係る磁気記録媒体を得る。
【0031】
図4(a)〜(h)に、本発明に係るDTR媒体またはBPMの他の製造方法を示す。この方法では、図4(f)において、エッチングマスクに覆われていない領域(非記録部)の磁気記録層52の一部をエッチングガス(たとえばAr)とNeガスとの混合ガスにより処理してエッチングおよび改質を同時に行い、磁気記録層52に凹凸を形成するとともに凹部に非記録部55を形成している。すなわち、図3(f)および(g)の工程を一工程で行っている。
【0032】
図5(a)〜(h)に、本発明に係るDTR媒体またはBPMのさらに他の製造方法を示す。この方法では、図5(f)において、エッチングマスクに覆われていない領域(非記録部)の磁気記録層52の一部をエッチングすることなく、平坦な磁気記録層52をNeガスにより改質して非記録部55を形成している。
【0033】
次に、本発明の実施形態において用いられる好適な材料について説明する。
【0034】
[基板]
基板としては、たとえばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、酸化表面を有するSi単結晶基板などを用いることができる。ガラス基板としては、アモルファスガラスおよび結晶化ガラスが用いられる。アモルファスガラスとしては、汎用のソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスが挙げられる。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスが挙げられる。セラミック基板としては、汎用の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの繊維強化物などが挙げられる。基板としては、上述した金属基板や非金属基板の表面にメッキ法やスパッタ法を用いてNiP層が形成されたものを用いることもできる。
【0035】
[軟磁性下地層]
軟磁性下地層(SUL)は、垂直磁磁気記録層を磁化するための単磁極ヘッドからの記録磁界を水平方向に通して、磁気ヘッド側へ還流させるという磁気ヘッドの機能の一部を担っており、磁界の記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる作用を有する。軟磁性下地層には、Fe、NiまたはCoを含む材料を用いることができる。このような材料として、FeCo系合金たとえばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金たとえばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系合金、FeSi系合金たとえばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金たとえばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金たとえばFeZrNなどを挙げることができる。Feを60at%以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrNなどの微結晶構造または微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることもできる。軟磁性下地層の他の材料として、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、TiおよびYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることもできる。Co合金には80at%以上のCoが含まれることが好ましい。このようなCo合金は、スパッタ法により製膜した場合にアモルファス層が形成されやすい。アモルファス軟磁性材料は、結晶磁気異方性、結晶欠陥および粒界がないため、非常に優れた軟磁性を示すとともに、媒体の低ノイズ化を図ることができる。好適なアモルファス軟磁性材料としては、たとえばCoZr、CoZrNbおよびCoZrTa系合金などを挙げることができる。
【0036】
軟磁性下地層の下に、軟磁性下地層の結晶性の向上または基板との密着性の向上のために、さらに下地層を設けてもよい。こうした下地層の材料としては、Ti、Ta、W、Cr、Pt、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。軟磁性下地層と記録層との間に、非磁性体からなる中間層を設けてもよい。中間層は、軟磁性下地層と記録層との交換結合相互作用を遮断し、記録層の結晶性を制御する、という2つの作用を有する。中間層の材料としては、Ru、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、Si、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。
【0037】
スパイクノイズ防止のために軟磁性下地層を複数の層に分け、0.5〜1.5nmのRuを挿入することで反強磁性結合させてもよい。また、CoCrPt、SmCo、FePtなどの面内異方性を持つ硬磁性膜またはIrMn、PtMnなどの反強磁性体からなるピン層と軟磁性層とを交換結合させてもよい。交換結合力を制御するために、Ru層の上下に磁性膜(たとえばCo)または非磁性膜(たとえばPt)を積層してもよい。
【0038】
[磁気記録層]
垂直磁気記録層としては、Coを主成分とし、少なくともPtを含み、さらに酸化物を含む材料を用いることが好ましい。垂直磁気記録層は、必要に応じて、Crを含んでいてもよい。酸化物としては、特に酸化シリコン、酸化チタンが好適である。垂直磁気記録層は、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)が分散していることが好ましい。この磁性粒子は、垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造であることが好ましい。このような構造を形成することにより、垂直磁気記録層の磁性粒子の配向および結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)を得ることができる。このような構造を得るためには、含有させる酸化物の量が重要となる。
【0039】
垂直磁気記録層の酸化物含有量は、Co、Cr、Ptの総量に対して、3mol%以上12mol%以下であることが好ましく、5mol%以上10mol%以下であることがより好ましい。垂直磁気記録層の酸化物含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁気記録層を形成した際、磁性粒子の周りに酸化物が析出し、磁性粒子を分離させ、微細化させることができるためである。酸化物の含有量が上記範囲を超えた場合、酸化物が磁性粒子中に残留し、磁性粒子の配向性、結晶性を損ね、さらには、磁性粒子の上下に酸化物が析出し、結果として磁性粒子が垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造が形成されなくなるため好ましくない。酸化物の含有量が上記範囲未満である場合、磁性粒子の分離、微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)が得られなくなるため好ましくない。
【0040】
垂直磁気記録層のCr含有量は、0at%以上16at%以下であることが好ましく、10at%以上14at%以下であることがより好ましい。Cr含有量として上記範囲が好ましいのは、磁性粒子の一軸結晶磁気異方性定数Kuを下げすぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られるためである。Cr含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子のKuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子の結晶性、配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。
【0041】
垂直磁気記録層のPt含有量は、10at%以上25at%以下であることが好ましい。Pt含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁性層に必要なKuが得られ、さらに磁性粒子の結晶性、配向性が良好であり、結果として高密度記録に適した熱揺らぎ特性、記録再生特性が得られるためである。Pt含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子中にfcc構造の層が形成され、結晶性、配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。Pt含有量が上記範囲未満である場合、高密度記録に適した熱揺らぎ特性に十分なKuが得られないため好ましくない。
【0042】
垂直磁気記録層は、Co、Cr、Pt、酸化物のほかに、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進し、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。上記元素の合計の含有量は、8at%以下であることが好ましい。8at%を超えた場合、磁性粒子中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子の結晶性、配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
【0043】
垂直磁気記録層としては、CoPt系合金、CoCr系合金、CoPtCr系合金、CoPtO、CoPtCrO、CoPtSi、CoPtCrSi、ならびにPt、Pd、Rh、およびRuからなる群より選択された少なくとも一種を主成分とする合金とCoとの多層構造、さらに、これらにCr、BおよびOを添加したCoCr/PtCr、CoB/PdB、CoO/RhOなどを使用することもできる。
【0044】
垂直磁気記録層の厚さは、好ましくは5ないし60nm、より好ましくは10ないし40nmである。この範囲であると、より高記録密度に適した磁気記録再生装置を作製することができる。垂直磁気記録層の厚さが5nm未満であると、再生出力が低過ぎてノイズ成分の方が高くなる傾向がある。垂直磁気記録層の厚さが40nmを超えると、再生出力が高過ぎて波形を歪ませる傾向がある。垂直磁気記録層の保磁力は、237000A/m(3000Oe)以上とすることが好ましい。保磁力が237000A/m(3000Oe)未満であると、熱揺らぎ耐性が劣る傾向がある。垂直磁気記録層の垂直角型比は、0.8以上であることが好ましい。垂直角型比が0.8未満であると、熱揺らぎ耐性に劣る傾向がある。
【0045】
[保護膜]
保護膜は、垂直磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐ目的で設けられる。保護膜の材料としては、たとえばC、SiO2、ZrO2を含むものが挙げられる。保護膜の厚さは1ないし10nmとすることが好ましい。これにより、ヘッドと媒体の距離を小さくできるので、高密度記録に好適である。カーボンは、sp2結合炭素(グラファイト)とsp3結合炭素(ダイヤモンド)に分類できる。耐久性、耐食性はsp3結合炭素のほうが優れるが、結晶質であることから表面平滑性はグラファイトに劣る。通常、カーボンの成膜はグラファイトターゲットを用いたスパッタリング法で形成される。この方法では、sp2結合炭素とsp3結合炭素が混在したアモルファスカーボンが形成される。sp3結合炭素の割合が大きいものはダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれ、耐久性、耐食性に優れ、アモルファスであることから表面平滑性にも優れるため、磁気記録媒体の表面保護膜として利用されている。CVD(chemical vapor deposition)法によるDLCの成膜は、原料ガスをプラズマ中で励起、分解し、化学反応によってDLCを生成させるため、条件を合わせることで、よりsp3結合炭素に富んだDLCを形成することができる。
【0046】
次に、本発明の実施形態における各工程の好適な製造条件について説明する。
【0047】
[インプリント]
基板の表面にレジストをスピンコート法で塗布し、スタンパを押し付けることにより、レジストにスタンパのパターンを転写する。レジストとしては、たとえば一般的なノボラック系のフォトレジストや、スピンオングラス(SOG)を用いることができる。サーボ情報と記録トラックに対応する凹凸パターンが形成されたスタンパの凹凸面を、基板のレジストに対向させる。このとき、ダイセットの下板にスタンパ、基板、バッファ層を積層し、ダイセットの上板で挟み、たとえば2000barで60秒間プレスする。インプリントによってレジストに形成されるパターンの凹凸高さはたとえば60〜70nmである。この状態で約60秒間保持することにより、排除すべきレジストを移動させる。また、スタンパにフッ素系の剥離材を塗布することで、スタンパをレジストから良好に剥離することができる。
【0048】
[残渣除去]
RIE(反応性イオンエッチング)により、レジストの凹部の底に残存している残渣を除去する。プラズマソースは、低圧で高密度プラズマを生成可能なICP(Inductively Coupled Plasma)が好適であるが、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマや、一般的な並行平板型RIE装置を用いてもよい。レジストにSOGを用いた場合には、フッ素ガスRIEを用いる。レジストにノボラック系フォトレジストを用いた場合には、酸素RIEを用いる。
【0049】
[磁気記録層エッチング]
残渣を除去した後、レジストパターンをエッチングマスクとして用い、磁気記録層を加工する。磁気記録層の加工には、Arイオンビームを用いたエッチング(Arイオンミリング)が好適であるが、Clガス、またはCOとNH3の混合ガスを用いたRIEでもよい。COとNH3の混合ガスを用いたRIEの場合、エッチングマスクにはTi、Ta、Wなどのハードマスクを用いる。RIEを用いた場合、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付きにくい。いかなる材料でもエッチング可能なArイオンミリングで磁気記録層を加工する場合、たとえば加速電圧を400Vとし、イオン入射角度を30°から70°まで変化させてエッチングを行うと、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付きにくい。ECRイオンガンを用いたミリングにおいては、静止対向型(イオン入射角90°)でエッチングすると、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付きにくい。
【0050】
[レジスト剥離]
磁気記録層をエッチングした後、レジストを剥離する。レジストとして一般的なフォトレジストを用いた場合、酸素プラズマ処理を行うことによって容易に剥離することができる。このとき、磁気記録層の表面にあるカーボン保護層も剥離される。レジストとしてSOGを用いた場合、フッ素系ガスを用いたRIEでSOGを剥離する。フッ素系ガスとしてはCF4やSF6が好適である。なお、フッ素系ガスが大気中の水と反応してHF、H2SO4などの酸が生じることがあるため、水洗を行うことが好ましい。
【0051】
[保護膜形成および後処理]
最後にカーボン保護膜を形成する。カーボン保護膜は、凹凸へのカバレッジをよくするためにCVDで成膜することが望ましいが、スパッタ法または真空蒸着法でもよい。CVD法によれば、sp3結合炭素を多く含むDLC膜が形成される。カーボン保護膜の膜厚が2nm未満だとカバレッジが悪くなり、10nmを超えると記録再生ヘッドと媒体との磁気スペーシングが大きくなってSNRが低下するので好ましくない。保護膜上に潤滑剤を塗布する。潤滑剤としては、たとえばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
【実施例】
【0052】
実施例1
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト)と記録トラックの凹凸パターンが形成されたスタンパを用いて、図3に示した方法で磁気記録層を加工した。図3(g)の改質工程では、ECRイオンガンを用い、加速電圧1000Vで試料表面にNeガスを曝露した。磁気記録層を加工した後、DLC保護膜を形成し、潤滑剤を塗付して、DTR媒体を製造した。
【0053】
得られたDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、8nm浮上ヘッドによるグライド試験を通過した。
【0054】
得られたDTR媒体をドライブへ組み込み、オントラックでBER(ビットエラーレート)を測定したところ、−4.5乗を得た。記録再生ヘッド位置決め精度は6nmであった。また、以下のようにして、サイドリードおよびサイドイレースの指標となるフリンジ試験を行った。すなわち、中央トラックに記録を行った後にBERを測定し、次に隣接トラックに10万回記録し、中央トラックのBERを再び測定し、BERの低下を調べた。その結果、BER劣化は見られず、良好なフリンジ耐性を示した。
【0055】
さらに、温度65℃、湿度80%の環境で信頼性試験を行ったところ、96時間経過してもBERの劣化は見られなかった。
【0056】
本実施例の方法で製造したDTR媒体は、ヘッドの浮上性がよく、ヘッド位置決め精度もよく、フリンジ耐性にも優れることがわかった。
【0057】
比較例1
図3(g)の改質工程を省略した以外は実施例1と同様の方法でDTR媒体を製造した。得られたDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、10nm浮上ヘッドによるグライド試験を通過したが、8nm浮上ヘッドではグライドノイズが発生した。得られたDTR媒体をドライブに組み込み、オントラックでBERを測定したところ、−4.3乗を得た。記録再生ヘッド位置決め精度は6nmであった。フリンジ試験を行ったところ、隣接トラックに50回記録した時点ではBER劣化が見られなかったが、隣接トラックに1000回記録するとBERが−3.0乗まで低下した。
【0058】
比較例1のDTR媒体の特性が劣るのは以下のような理由によると考えられる。すなわち、Neガスによる改質工程を行わない場合、図7に示すように、凹部の磁気記録層52の表面にArイオンによるダメージ層52aが形成される。このようにダメージ層52aが形成されると、その上に形成されるDLCからなる保護膜56の膜質を劣化させ、さらにその上に塗布される潤滑剤の表面状態を悪化させる。このため、オントラックBERが低下すると考えられる。また、フリンジ耐性が劣るのは、凹部に残存している磁気記録層52に記録がなされる磁化が生じるため、サイドイレースおよびサイドリードが抑えられないことによる。
【0059】
これに対して、実施例1のDTR媒体では、図6に示すように改質ガスによる処理で凹部に非記録部55を形成する際に、表面のダメージ層も改質されるため、その上に形成されるDLCからなる保護膜56との密着性を良好にするという効果があり、さらにその上に塗布される潤滑剤の表面状態を良好にする。このため、オントラックBERも良好である。
【0060】
実施例2
図4に示した方法でDTR媒体を製造した。すなわち、図4(f)の工程で、ArとHeとの混合ガスを用い、磁気記録層のエッチングと改質を同時に行った。ガスの混合比をAr80%、Neガス20%(流量比をAr20sccm、Ne5sccm)とし、ECRイオンガンを用い加速電圧1000Vで処理を行い、凹部の深さが10nmになるように調整した。
【0061】
得られたDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、8nm浮上ヘッドによるグライド試験を通過した。得られたDTR媒体をドライブへ組み込み、オントラックでBERを測定したところ、−4.5乗を得た。記録再生ヘッド位置決め精度は6nmであった。フリンジ試験を行ったところ、良好なフリンジ耐性を得た。温度65℃、湿度80%の環境で信頼性試験を行ったところ、96時間経過してもBERの劣化は見られなかった。
【0062】
また、図4(f)の工程で用いるArとNeの混合比を変えて上記と同様の検討を行った。Ne含有量が多くなるほどエッチングレートは低下するが、磁気記録層の磁性の失活にかかる時間は短くなった。これは、Neガス濃度が多いほど磁性を失活させる効果が高いからである。なお、図4(f)の工程で磁気記録層のエッチングと改質を同時に行うには、混合ガス中のArガスの混合比を5%以上95%以下(Neガスの混合比を95%以下5%以上)にすることが好ましい。磁気記録層に深さ10nmの凹部を形成するのに必要なプロセス時間で十分な磁性の失活を実現するには、Neガスの混合比を10〜50%とするのが好適である。
【0063】
実施例3
図2に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト)と記録ビットの凹凸パターンが形成されたスタンパを用いて、図3に示した方法で磁気記録層を加工した。図3(g)の改質工程では、ECRイオンガンを用い、加速電圧1000Vで試料表面にNeガスを曝露した。磁気記録層を加工した後、DLC保護膜を形成し、潤滑剤を塗付して、DTR媒体を製造した。
【0064】
得られたDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、8nm浮上ヘッドによるグライド試験を通過した。
【0065】
BPMは、BERを定義できないため、信号振幅強度で評価した。磁気記録層を一方向に着磁した状態でBPMをドライブへ組み込み、再生波形を観察したところ、200mVの信号振幅強度が得られた。記録再生ヘッド位置決め精度は6nmであった。65℃湿度80%の環境で信頼性試験を行ったところ、96時間経過しても信号振幅強度の劣化は見られなかった。
【0066】
実施例4
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト)と記録トラックの凹凸パターンが形成されたスタンパを用いてパターンを転写した。磁気記録層のエッチングを行うことなく、図5(f)の改質工程で、ECRイオンガンを用い、加速電圧1000Vで試料表面にNeガスを曝露した。その後、エッチング保護膜を除去し、DLC保護膜を形成し、潤滑剤を塗付して、DTR媒体を製造した。
【0067】
得られたDTR媒体の表面をAFM(原子間力顕微鏡)で観察したところ、凹凸はほとんどなく表面が平滑であった。得られたDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、8nm浮上ヘッドによるグライド試験を通過した。
【0068】
得られたDTR媒体をドライブへ組み込み、オントラックでBER(ビットエラーレート)を測定したところ、−4.8乗を得た。記録再生ヘッド位置決め精度は6nmであった。フリンジ試験を行ったところ、良好なフリンジ耐性を示した。
【0069】
さらに、温度65℃、湿度80%の環境で信頼性試験を行ったところ、96時間経過してもBERの劣化は見られなかった。
【0070】
この方法で作製したDTR媒体は、表面に凹凸がなく平滑なため、記録再生ヘッドの浮上性が極めて良好であり、BERが従来のDTR媒体に比べて良い。反応性ガスや重原子を注入した媒体(特許文献1〜3)で製作した媒体はヘッド位置決め精度がよくない。これに対して、本発明のNeガスによるプロセスは、Neガスが軽原子であるため垂直方向にNe原子が侵入しやすいので、サーボパターンの磁区形状を悪化させることがないためBERが良好である。
【0071】
以上説明したように、本発明の方法で製造したDTR媒体やBPMは、記録再生ヘッドの浮上性を確保しつつ、ヘッド位置決め精度がよく、信号S/Nが良好で、高温多湿環境下でも安定して使用できる。さらに、DLC保護膜の膜質がよくなる結果、BERを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ディスクリートトラック媒体を示す平面図。
【図2】ビットパターンド媒体を示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法を示す断面図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法を示す断面図。
【図5】本発明のさらに他の実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法を示す断面図。
【図6】本発明の方法で製造されたDTR媒体の断面図。
【図7】比較例の方法で製造されたDTR媒体の断面図。
【符号の説明】
【0073】
1…磁気記録媒体、2…サーボ領域、21…プリアンブル部、22…アドレス部、23…バースト部、3…データ領域、31…ディスクリートトラック、32…記録ビット、51…ガラス基板、52…磁気記録層、53…エッチング保護層、54…レジスト、55…非記録部、56…表面保護膜、60…スタンパ。
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブ(HDD)に組み込まれる磁気記録媒体において、隣接トラック間の干渉によりトラック密度の向上が妨げられるという問題が顕在化している。特に記録ヘッド磁界のフリンジ効果による書きにじみの低減は重要な技術課題である。
【0003】
このような問題に対して、記録トラック間を物理的に分離したディスクリートトラック型パターンド媒体(DTR媒体)や、記録ビット間を物理的に分離したビットパターンド媒体(BPM)が提案されている。DTR媒体やBPMは、記録時におけるサイドイレース、再生時におけるサイドリードを低減できるため、トラック密度を高めることが可能となり、高密度磁気記録媒体として有望である。
【0004】
DTR媒体のように、表面に凹凸が形成された媒体を浮上ヘッドで記録再生する際には、ヘッドの浮上性が問題になる。たとえば、DTR媒体で隣接トラック間を完全に分離しようとすると、厚さ約15nmの強磁性体からなる磁気記録層および厚さ約5nmの保護層の計20nmを除去して溝を形成する。一方、浮上ヘッドの浮上設計量は10nm程度であるため、溝を非磁性体で充填し、DTR媒体の表面を平滑にすることによってヘッドの浮上性を確保することが考えられていた。しかし、この平滑化工程は困難である。
【0005】
そこで、平滑な磁気記録層を局所的に変質させてパターン化する方法が提案されている(特許文献1〜4)。特許文献1は磁気記録層の一部をハロゲンと反応させて変質させることによりBPMを製造する方法を開示している。特許文献2は磁気記録層の一部に窒素イオン注入を行って変質させることによりDTR媒体を製造する方法を開示している。特許文献3は磁性層の一部にAgイオンを注入してその部位の保磁力を増大させることによりDTR媒体を製造する方法を開示している。特許文献4は磁性層の一部にHeイオンを照射して磁気特性を変質させることによりパターン化する方法を開示している。これらの方法では、媒体表面に凹凸を形成することなく磁性パターンを形成することができ、ヘッドの浮上性が確保されたDTR媒体やBPMを提供できる。
【0006】
しかし、特許文献2や特許文献4のような窒素イオンやHeイオンによる磁性層の変質を利用する方法では、記録トラック間の分離が不十分になることがわかってきた。
【0007】
特許文献1のようにハロゲンとの反応を用いる方法で製造された媒体は高温多湿環境下での信頼性に改善の余地があることがわかってきた。
【0008】
特許文献3は磁気記録層に重原子を注入した効果で照射部の磁気特性をよくするものであるが、ヘッド位置決め精度が20nm程度であり、仕様値の10nm以下を満たさない。磁気力顕微鏡(MFM)で媒体表面を観察したところ、サーボパターンの磁気的形状が非常に悪いことがわかった。これは、高エネルギーの重原子イオンが拡散して磁気記録層のダメージを与えているためであると考えられる。
【特許文献1】特許第3886802号公報
【特許文献2】特開平5−205257号公報
【特許文献3】特開2005−223177号公報
【特許文献4】特表2002−501300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、記録再生ヘッドの浮上性を確保しつつ、ヘッド位置決め精度がよく、SN比が良好で、高温多湿環境下でも高い信頼性を示す磁気記録媒体を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る磁気記録媒体の製造方法は、基板上に磁気記録層を成膜し、前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層の一部をエッチングガスによりエッチングして磁気記録層に凹凸を形成し、凹部に残存する磁気記録層をNeガスにより改質して非記録部を形成し、全面に保護膜を形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様に係る磁気記録媒体の製造方法は、基板上に磁気記録層を成膜し、前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層の一部をエッチングガスとNeガスとの混合ガスにより処理してエッチングおよび改質を同時に行い、磁気記録層に凹凸を形成するとともに凹部に非記録部を形成し、全面に保護膜を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに他の態様に係る磁気記録媒体の製造方法は、基板上に磁気記録層を成膜し、前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層をNeガスにより改質して非記録部を形成し、全面に保護膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、記録再生ヘッドの浮上性を確保しつつ、ヘッド位置決め精度がよく、SN比が良好で、高温多湿環境下でも高い信頼性を示す磁気記録媒体を製造できる。また、磁気記録層をNeガスで改質して非記録部を形成することにより、非記録部の表面に形成されるDLC保護膜の膜質を向上させることができ、さらなるSN比の向上につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記課題を解決するために、磁気記録層の表面に10nm以下の凹凸を形成したDTR媒体およびBPMの製造方法を検討した。現在のHDD媒体は、信号出力を確保するために磁気記録層の膜厚は15nm程度必要なため、10nm以下の凹凸を形成した状態では凹部の底に5nm以上の磁気記録層の一部が残る。この状態では、凹部の底に残った磁気記録層に記録能力があるので、サイドイレース現象、サイドリード現象を抑制することができない。そこで、凹部の底に残った5nm以上の磁気記録層を磁気的に失活させることにより、記録ヘッドの浮上性を確保しつつサイドイレース現象、サイドリード現象を抑制できるDTR媒体およびBPMを製造するようにした。
【0015】
凹部の底に残った5nm以上の磁気記録層を磁気的に失活させるには、Neガスに曝露させるのが好適であることがわかった。反応性ガスに曝露させた場合には経時劣化による信頼性低下が懸念される。HDDにおいては、空気中の水分との反応により磁気記録層の劣化やコロージョン発生がBER低下の原因になる。これに対して、Neガスは反応不活性であるので経時劣化による信頼性低下の懸念がない。また、Neは原子番号が小さく、適度な質量を有する点でも好ましい。磁気記録層の磁性の失活については、強磁性体に侵入した原子がエネルギーを失う過程で局所的に高温状態を生じ、強磁性体の結晶構造を破壊するのが主要因である。この観点からは強磁性体に重原子を侵入させることが好ましいが、重原子になるほど、強磁性体の膜厚方向に侵入しにくくなる傾向がある。また、侵入を受ける強磁性体と侵入元素との質量が近くなると、スパッタリング現象が生じるため、強磁性体と同程度の質量を有する原子は磁性を失活させる作用がむしろ小さくなる。逆に、Heのような軽元素は強磁性体に侵入しやすいが、軽すぎるため磁性を失活させる効果は小さい。これに対して、Neガスは適度な質量を有し、強磁性体の磁性を失活させるのに好適であり、しかも水との反応性が小さいという利点がある。
【0016】
また、Neガスは強磁性体の磁性を失活させるのに有利なため、必ずしも磁気記録層の表面に凹凸を形成する必要はなく、平坦な磁気記録層をNeガスに曝露させて磁性を失活させることによっても、サイドイレース現象、サイドリード現象を抑制できることを見出した。
【0017】
さらに、Neガスを曝露することで、その表面に形成されるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)保護膜の膜質が向上することがわかった。保護膜の膜質向上はヘッドの浮上性を良好にするため、さらなるS/N向上につながる。
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1に、本発明の実施形態に係る磁気記録媒体(DTR媒体)1の周方向に沿う平面図を示す。図1に示すように、媒体1の周方向に沿って、サーボ領域2と、データ領域3が交互に形成されている。サーボ領域2には、プリアンブル部21、アドレス部22、バースト部23が含まれる。データ領域3には互いに分断されたディスクリートトラック31が含まれる。
【0020】
図2に、本発明の実施形態に係る磁気記録媒体(BPM)1の周方向に沿う平面図を示す。図2に示すように、サーボ領域2は図1と同様な構成を有する。データ領域3には互いに分断された記録ビット32が含まれる。
【0021】
図3(a)〜(i)を参照して、本発明に係るDTR媒体またはBPMの製造方法を説明する。
【0022】
図3(a)に示すように、ガラス基板51上に、厚さ120nmのCoZrNbからなる軟磁性下地層(図示せず)、厚さ20nmのRuからなる配向制御用の下地層(図示せず)、厚さ15nmのCoCrPt−SiO2からなる磁気記録層52、厚さ20nmのカーボンからなるエッチング保護層53を順次成膜する。ここでは、簡略化のために、軟磁性下地層および配向制御層は図示していない。
【0023】
図3(b)に示すように、エッチング保護層53上に、レジスト54として厚さ100nmのスピンオングラス(SOG)をスピンコートする。このレジスト54に対向するようにスタンパ60を配置する。このスタンパ60には図1または図2に示した磁性パターンと逆転した凹凸を有するパターンが形成されている。
【0024】
図3(c)に示すように、スタンパ60を用いてインプリントを行い、スタンパ60の凹部に対応してレジスト54の凸部54aを形成する。インプリント後、スタンパ60を除去する。
【0025】
図3(d)に示すように、パターン化されたレジスト54の凹部の底に残っているレジスト残渣を除去する。たとえばICP(誘導結合プラズマ)エッチング装置を用い、プロセスガスとしてCF4を導入してチャンバー圧を2mTorrとし、コイルのRFパワーとプラテンのRFパワーをそれぞれ100W、エッチング時間を30秒とする。
【0026】
図3(e)に示すように、レジスト54のパターンをマスクとして、エッチング保護層53をパターニングする。たとえば、ICPエッチング装置を用い、プロセスガスとしてO2を導入してチャンバー圧を2mTorrとし、コイルのRFパワーとプラテンのRFパワーをそれぞれ100W、エッチング時間を30秒とする。
【0027】
図3(f)に示すように、エッチング保護層53のパターンをマスクとして、磁気記録層52の一部をエッチングして凹凸を形成する。たとえば、ECR(電子サイクロトロン共鳴)イオンガンを用い、プロセスガスとしてArを導入し、マイクロ波パワー800W、加速電圧500Vで1分間エッチングする。なお、プロセスガスとしてArの代わりに、KrまたはXeを用いてもよい。こうして、磁気記録層52の非記録部にたとえば深さ10nmの凹部を形成する。
【0028】
図3(g)に示すように、凹部の底に残存する磁気記録層52をNeガスにより改質し、磁性を失活させて非記録部55を形成する。凹部の底に残存する磁気記録層52を完全に非磁性化する必要はなく、磁気記録できない状態にすればよい。たとえば、磁化(Ms)は持っているが垂直方向の保磁力(Hc)が1kOe以下というような軟磁性状態でもよいし、常磁性(外部磁場がないときには磁化を持たず、磁場を印加するとその方向に弱く磁化する磁性)状態でもよい。Neガスの曝露に用いる装置は、ICPエッチング装置でもよいし、ECRイオンガンでもよい。ICPエッチング装置を用いた場合、Neガスプラズマ中に試料を設置するので磁性を失活させる効果は高いが、基板バイアスによるダメージは発生する可能性がある。ECRイオンガンを用いた場合は約2keV程度までNeガスイオンを加速して試料に曝露できるため、深さ方向に精度よくNe原子を注入することができるので好適である。この場合、30秒程度のプロセス時間で磁性を失活させる効果が十分に発現し、プロセス時間を長くしても効果はそれほど変化しない。これは、Neガスの磁性失活効果が化学反応などの拡散律速ではなく、Neガスの注入深さに依存するためである。Ne原子の注入深さはプロセス時間ではなく、Ne原子の運動エネルギーに依存し、ECRイオンガンの場合には加速電圧、ICPエッチング装置の場合には基板バイアスパワーで決まる。なお、プロセス時間が長くなるとイオン種の絶対数が増加するため、磁性失活効果が若干増加する。
【0029】
図3(h)に示すように、エッチング保護層(カーボン)53のパターンを除去する。たとえば、酸素ガスを用い、100mTorr、100Wの条件でRIE(反応性イオンエッチング)を行う。通常、エッチング保護層53のパターン上に残存するレジスト(SOG)もリフトオフされる。ただし、最初にCF4ガスを用いたRIEにより残存しているSOGを剥離した後、酸素ガスを用いたRIEでカーボンを剥離してもよい。
【0030】
図3(i)に示すように、CVD(化学気相堆積法)にカーボンからなる表面保護膜56を形成する。表面保護膜56上に潤滑剤を塗布することにより本発明に係る磁気記録媒体を得る。
【0031】
図4(a)〜(h)に、本発明に係るDTR媒体またはBPMの他の製造方法を示す。この方法では、図4(f)において、エッチングマスクに覆われていない領域(非記録部)の磁気記録層52の一部をエッチングガス(たとえばAr)とNeガスとの混合ガスにより処理してエッチングおよび改質を同時に行い、磁気記録層52に凹凸を形成するとともに凹部に非記録部55を形成している。すなわち、図3(f)および(g)の工程を一工程で行っている。
【0032】
図5(a)〜(h)に、本発明に係るDTR媒体またはBPMのさらに他の製造方法を示す。この方法では、図5(f)において、エッチングマスクに覆われていない領域(非記録部)の磁気記録層52の一部をエッチングすることなく、平坦な磁気記録層52をNeガスにより改質して非記録部55を形成している。
【0033】
次に、本発明の実施形態において用いられる好適な材料について説明する。
【0034】
[基板]
基板としては、たとえばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、酸化表面を有するSi単結晶基板などを用いることができる。ガラス基板としては、アモルファスガラスおよび結晶化ガラスが用いられる。アモルファスガラスとしては、汎用のソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスが挙げられる。結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスが挙げられる。セラミック基板としては、汎用の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの繊維強化物などが挙げられる。基板としては、上述した金属基板や非金属基板の表面にメッキ法やスパッタ法を用いてNiP層が形成されたものを用いることもできる。
【0035】
[軟磁性下地層]
軟磁性下地層(SUL)は、垂直磁磁気記録層を磁化するための単磁極ヘッドからの記録磁界を水平方向に通して、磁気ヘッド側へ還流させるという磁気ヘッドの機能の一部を担っており、磁界の記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる作用を有する。軟磁性下地層には、Fe、NiまたはCoを含む材料を用いることができる。このような材料として、FeCo系合金たとえばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金たとえばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系合金、FeSi系合金たとえばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金たとえばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金たとえばFeZrNなどを挙げることができる。Feを60at%以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrNなどの微結晶構造または微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることもできる。軟磁性下地層の他の材料として、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、TiおよびYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることもできる。Co合金には80at%以上のCoが含まれることが好ましい。このようなCo合金は、スパッタ法により製膜した場合にアモルファス層が形成されやすい。アモルファス軟磁性材料は、結晶磁気異方性、結晶欠陥および粒界がないため、非常に優れた軟磁性を示すとともに、媒体の低ノイズ化を図ることができる。好適なアモルファス軟磁性材料としては、たとえばCoZr、CoZrNbおよびCoZrTa系合金などを挙げることができる。
【0036】
軟磁性下地層の下に、軟磁性下地層の結晶性の向上または基板との密着性の向上のために、さらに下地層を設けてもよい。こうした下地層の材料としては、Ti、Ta、W、Cr、Pt、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。軟磁性下地層と記録層との間に、非磁性体からなる中間層を設けてもよい。中間層は、軟磁性下地層と記録層との交換結合相互作用を遮断し、記録層の結晶性を制御する、という2つの作用を有する。中間層の材料としては、Ru、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、Si、これらを含む合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物を用いることができる。
【0037】
スパイクノイズ防止のために軟磁性下地層を複数の層に分け、0.5〜1.5nmのRuを挿入することで反強磁性結合させてもよい。また、CoCrPt、SmCo、FePtなどの面内異方性を持つ硬磁性膜またはIrMn、PtMnなどの反強磁性体からなるピン層と軟磁性層とを交換結合させてもよい。交換結合力を制御するために、Ru層の上下に磁性膜(たとえばCo)または非磁性膜(たとえばPt)を積層してもよい。
【0038】
[磁気記録層]
垂直磁気記録層としては、Coを主成分とし、少なくともPtを含み、さらに酸化物を含む材料を用いることが好ましい。垂直磁気記録層は、必要に応じて、Crを含んでいてもよい。酸化物としては、特に酸化シリコン、酸化チタンが好適である。垂直磁気記録層は、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)が分散していることが好ましい。この磁性粒子は、垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造であることが好ましい。このような構造を形成することにより、垂直磁気記録層の磁性粒子の配向および結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)を得ることができる。このような構造を得るためには、含有させる酸化物の量が重要となる。
【0039】
垂直磁気記録層の酸化物含有量は、Co、Cr、Ptの総量に対して、3mol%以上12mol%以下であることが好ましく、5mol%以上10mol%以下であることがより好ましい。垂直磁気記録層の酸化物含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁気記録層を形成した際、磁性粒子の周りに酸化物が析出し、磁性粒子を分離させ、微細化させることができるためである。酸化物の含有量が上記範囲を超えた場合、酸化物が磁性粒子中に残留し、磁性粒子の配向性、結晶性を損ね、さらには、磁性粒子の上下に酸化物が析出し、結果として磁性粒子が垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造が形成されなくなるため好ましくない。酸化物の含有量が上記範囲未満である場合、磁性粒子の分離、微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号ノイズ比(SN比)が得られなくなるため好ましくない。
【0040】
垂直磁気記録層のCr含有量は、0at%以上16at%以下であることが好ましく、10at%以上14at%以下であることがより好ましい。Cr含有量として上記範囲が好ましいのは、磁性粒子の一軸結晶磁気異方性定数Kuを下げすぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られるためである。Cr含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子のKuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子の結晶性、配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。
【0041】
垂直磁気記録層のPt含有量は、10at%以上25at%以下であることが好ましい。Pt含有量として上記範囲が好ましいのは、垂直磁性層に必要なKuが得られ、さらに磁性粒子の結晶性、配向性が良好であり、結果として高密度記録に適した熱揺らぎ特性、記録再生特性が得られるためである。Pt含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子中にfcc構造の層が形成され、結晶性、配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。Pt含有量が上記範囲未満である場合、高密度記録に適した熱揺らぎ特性に十分なKuが得られないため好ましくない。
【0042】
垂直磁気記録層は、Co、Cr、Pt、酸化物のほかに、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進し、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。上記元素の合計の含有量は、8at%以下であることが好ましい。8at%を超えた場合、磁性粒子中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子の結晶性、配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
【0043】
垂直磁気記録層としては、CoPt系合金、CoCr系合金、CoPtCr系合金、CoPtO、CoPtCrO、CoPtSi、CoPtCrSi、ならびにPt、Pd、Rh、およびRuからなる群より選択された少なくとも一種を主成分とする合金とCoとの多層構造、さらに、これらにCr、BおよびOを添加したCoCr/PtCr、CoB/PdB、CoO/RhOなどを使用することもできる。
【0044】
垂直磁気記録層の厚さは、好ましくは5ないし60nm、より好ましくは10ないし40nmである。この範囲であると、より高記録密度に適した磁気記録再生装置を作製することができる。垂直磁気記録層の厚さが5nm未満であると、再生出力が低過ぎてノイズ成分の方が高くなる傾向がある。垂直磁気記録層の厚さが40nmを超えると、再生出力が高過ぎて波形を歪ませる傾向がある。垂直磁気記録層の保磁力は、237000A/m(3000Oe)以上とすることが好ましい。保磁力が237000A/m(3000Oe)未満であると、熱揺らぎ耐性が劣る傾向がある。垂直磁気記録層の垂直角型比は、0.8以上であることが好ましい。垂直角型比が0.8未満であると、熱揺らぎ耐性に劣る傾向がある。
【0045】
[保護膜]
保護膜は、垂直磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐ目的で設けられる。保護膜の材料としては、たとえばC、SiO2、ZrO2を含むものが挙げられる。保護膜の厚さは1ないし10nmとすることが好ましい。これにより、ヘッドと媒体の距離を小さくできるので、高密度記録に好適である。カーボンは、sp2結合炭素(グラファイト)とsp3結合炭素(ダイヤモンド)に分類できる。耐久性、耐食性はsp3結合炭素のほうが優れるが、結晶質であることから表面平滑性はグラファイトに劣る。通常、カーボンの成膜はグラファイトターゲットを用いたスパッタリング法で形成される。この方法では、sp2結合炭素とsp3結合炭素が混在したアモルファスカーボンが形成される。sp3結合炭素の割合が大きいものはダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれ、耐久性、耐食性に優れ、アモルファスであることから表面平滑性にも優れるため、磁気記録媒体の表面保護膜として利用されている。CVD(chemical vapor deposition)法によるDLCの成膜は、原料ガスをプラズマ中で励起、分解し、化学反応によってDLCを生成させるため、条件を合わせることで、よりsp3結合炭素に富んだDLCを形成することができる。
【0046】
次に、本発明の実施形態における各工程の好適な製造条件について説明する。
【0047】
[インプリント]
基板の表面にレジストをスピンコート法で塗布し、スタンパを押し付けることにより、レジストにスタンパのパターンを転写する。レジストとしては、たとえば一般的なノボラック系のフォトレジストや、スピンオングラス(SOG)を用いることができる。サーボ情報と記録トラックに対応する凹凸パターンが形成されたスタンパの凹凸面を、基板のレジストに対向させる。このとき、ダイセットの下板にスタンパ、基板、バッファ層を積層し、ダイセットの上板で挟み、たとえば2000barで60秒間プレスする。インプリントによってレジストに形成されるパターンの凹凸高さはたとえば60〜70nmである。この状態で約60秒間保持することにより、排除すべきレジストを移動させる。また、スタンパにフッ素系の剥離材を塗布することで、スタンパをレジストから良好に剥離することができる。
【0048】
[残渣除去]
RIE(反応性イオンエッチング)により、レジストの凹部の底に残存している残渣を除去する。プラズマソースは、低圧で高密度プラズマを生成可能なICP(Inductively Coupled Plasma)が好適であるが、ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマや、一般的な並行平板型RIE装置を用いてもよい。レジストにSOGを用いた場合には、フッ素ガスRIEを用いる。レジストにノボラック系フォトレジストを用いた場合には、酸素RIEを用いる。
【0049】
[磁気記録層エッチング]
残渣を除去した後、レジストパターンをエッチングマスクとして用い、磁気記録層を加工する。磁気記録層の加工には、Arイオンビームを用いたエッチング(Arイオンミリング)が好適であるが、Clガス、またはCOとNH3の混合ガスを用いたRIEでもよい。COとNH3の混合ガスを用いたRIEの場合、エッチングマスクにはTi、Ta、Wなどのハードマスクを用いる。RIEを用いた場合、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付きにくい。いかなる材料でもエッチング可能なArイオンミリングで磁気記録層を加工する場合、たとえば加速電圧を400Vとし、イオン入射角度を30°から70°まで変化させてエッチングを行うと、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付きにくい。ECRイオンガンを用いたミリングにおいては、静止対向型(イオン入射角90°)でエッチングすると、凸状の磁性パターンの側壁にテーパが付きにくい。
【0050】
[レジスト剥離]
磁気記録層をエッチングした後、レジストを剥離する。レジストとして一般的なフォトレジストを用いた場合、酸素プラズマ処理を行うことによって容易に剥離することができる。このとき、磁気記録層の表面にあるカーボン保護層も剥離される。レジストとしてSOGを用いた場合、フッ素系ガスを用いたRIEでSOGを剥離する。フッ素系ガスとしてはCF4やSF6が好適である。なお、フッ素系ガスが大気中の水と反応してHF、H2SO4などの酸が生じることがあるため、水洗を行うことが好ましい。
【0051】
[保護膜形成および後処理]
最後にカーボン保護膜を形成する。カーボン保護膜は、凹凸へのカバレッジをよくするためにCVDで成膜することが望ましいが、スパッタ法または真空蒸着法でもよい。CVD法によれば、sp3結合炭素を多く含むDLC膜が形成される。カーボン保護膜の膜厚が2nm未満だとカバレッジが悪くなり、10nmを超えると記録再生ヘッドと媒体との磁気スペーシングが大きくなってSNRが低下するので好ましくない。保護膜上に潤滑剤を塗布する。潤滑剤としては、たとえばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
【実施例】
【0052】
実施例1
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト)と記録トラックの凹凸パターンが形成されたスタンパを用いて、図3に示した方法で磁気記録層を加工した。図3(g)の改質工程では、ECRイオンガンを用い、加速電圧1000Vで試料表面にNeガスを曝露した。磁気記録層を加工した後、DLC保護膜を形成し、潤滑剤を塗付して、DTR媒体を製造した。
【0053】
得られたDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、8nm浮上ヘッドによるグライド試験を通過した。
【0054】
得られたDTR媒体をドライブへ組み込み、オントラックでBER(ビットエラーレート)を測定したところ、−4.5乗を得た。記録再生ヘッド位置決め精度は6nmであった。また、以下のようにして、サイドリードおよびサイドイレースの指標となるフリンジ試験を行った。すなわち、中央トラックに記録を行った後にBERを測定し、次に隣接トラックに10万回記録し、中央トラックのBERを再び測定し、BERの低下を調べた。その結果、BER劣化は見られず、良好なフリンジ耐性を示した。
【0055】
さらに、温度65℃、湿度80%の環境で信頼性試験を行ったところ、96時間経過してもBERの劣化は見られなかった。
【0056】
本実施例の方法で製造したDTR媒体は、ヘッドの浮上性がよく、ヘッド位置決め精度もよく、フリンジ耐性にも優れることがわかった。
【0057】
比較例1
図3(g)の改質工程を省略した以外は実施例1と同様の方法でDTR媒体を製造した。得られたDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、10nm浮上ヘッドによるグライド試験を通過したが、8nm浮上ヘッドではグライドノイズが発生した。得られたDTR媒体をドライブに組み込み、オントラックでBERを測定したところ、−4.3乗を得た。記録再生ヘッド位置決め精度は6nmであった。フリンジ試験を行ったところ、隣接トラックに50回記録した時点ではBER劣化が見られなかったが、隣接トラックに1000回記録するとBERが−3.0乗まで低下した。
【0058】
比較例1のDTR媒体の特性が劣るのは以下のような理由によると考えられる。すなわち、Neガスによる改質工程を行わない場合、図7に示すように、凹部の磁気記録層52の表面にArイオンによるダメージ層52aが形成される。このようにダメージ層52aが形成されると、その上に形成されるDLCからなる保護膜56の膜質を劣化させ、さらにその上に塗布される潤滑剤の表面状態を悪化させる。このため、オントラックBERが低下すると考えられる。また、フリンジ耐性が劣るのは、凹部に残存している磁気記録層52に記録がなされる磁化が生じるため、サイドイレースおよびサイドリードが抑えられないことによる。
【0059】
これに対して、実施例1のDTR媒体では、図6に示すように改質ガスによる処理で凹部に非記録部55を形成する際に、表面のダメージ層も改質されるため、その上に形成されるDLCからなる保護膜56との密着性を良好にするという効果があり、さらにその上に塗布される潤滑剤の表面状態を良好にする。このため、オントラックBERも良好である。
【0060】
実施例2
図4に示した方法でDTR媒体を製造した。すなわち、図4(f)の工程で、ArとHeとの混合ガスを用い、磁気記録層のエッチングと改質を同時に行った。ガスの混合比をAr80%、Neガス20%(流量比をAr20sccm、Ne5sccm)とし、ECRイオンガンを用い加速電圧1000Vで処理を行い、凹部の深さが10nmになるように調整した。
【0061】
得られたDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、8nm浮上ヘッドによるグライド試験を通過した。得られたDTR媒体をドライブへ組み込み、オントラックでBERを測定したところ、−4.5乗を得た。記録再生ヘッド位置決め精度は6nmであった。フリンジ試験を行ったところ、良好なフリンジ耐性を得た。温度65℃、湿度80%の環境で信頼性試験を行ったところ、96時間経過してもBERの劣化は見られなかった。
【0062】
また、図4(f)の工程で用いるArとNeの混合比を変えて上記と同様の検討を行った。Ne含有量が多くなるほどエッチングレートは低下するが、磁気記録層の磁性の失活にかかる時間は短くなった。これは、Neガス濃度が多いほど磁性を失活させる効果が高いからである。なお、図4(f)の工程で磁気記録層のエッチングと改質を同時に行うには、混合ガス中のArガスの混合比を5%以上95%以下(Neガスの混合比を95%以下5%以上)にすることが好ましい。磁気記録層に深さ10nmの凹部を形成するのに必要なプロセス時間で十分な磁性の失活を実現するには、Neガスの混合比を10〜50%とするのが好適である。
【0063】
実施例3
図2に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト)と記録ビットの凹凸パターンが形成されたスタンパを用いて、図3に示した方法で磁気記録層を加工した。図3(g)の改質工程では、ECRイオンガンを用い、加速電圧1000Vで試料表面にNeガスを曝露した。磁気記録層を加工した後、DLC保護膜を形成し、潤滑剤を塗付して、DTR媒体を製造した。
【0064】
得られたDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、8nm浮上ヘッドによるグライド試験を通過した。
【0065】
BPMは、BERを定義できないため、信号振幅強度で評価した。磁気記録層を一方向に着磁した状態でBPMをドライブへ組み込み、再生波形を観察したところ、200mVの信号振幅強度が得られた。記録再生ヘッド位置決め精度は6nmであった。65℃湿度80%の環境で信頼性試験を行ったところ、96時間経過しても信号振幅強度の劣化は見られなかった。
【0066】
実施例4
図1に示したようなサーボパターン(プリアンブル、アドレス、バースト)と記録トラックの凹凸パターンが形成されたスタンパを用いてパターンを転写した。磁気記録層のエッチングを行うことなく、図5(f)の改質工程で、ECRイオンガンを用い、加速電圧1000Vで試料表面にNeガスを曝露した。その後、エッチング保護膜を除去し、DLC保護膜を形成し、潤滑剤を塗付して、DTR媒体を製造した。
【0067】
得られたDTR媒体の表面をAFM(原子間力顕微鏡)で観察したところ、凹凸はほとんどなく表面が平滑であった。得られたDTR媒体についてグライド試験を行ったところ、8nm浮上ヘッドによるグライド試験を通過した。
【0068】
得られたDTR媒体をドライブへ組み込み、オントラックでBER(ビットエラーレート)を測定したところ、−4.8乗を得た。記録再生ヘッド位置決め精度は6nmであった。フリンジ試験を行ったところ、良好なフリンジ耐性を示した。
【0069】
さらに、温度65℃、湿度80%の環境で信頼性試験を行ったところ、96時間経過してもBERの劣化は見られなかった。
【0070】
この方法で作製したDTR媒体は、表面に凹凸がなく平滑なため、記録再生ヘッドの浮上性が極めて良好であり、BERが従来のDTR媒体に比べて良い。反応性ガスや重原子を注入した媒体(特許文献1〜3)で製作した媒体はヘッド位置決め精度がよくない。これに対して、本発明のNeガスによるプロセスは、Neガスが軽原子であるため垂直方向にNe原子が侵入しやすいので、サーボパターンの磁区形状を悪化させることがないためBERが良好である。
【0071】
以上説明したように、本発明の方法で製造したDTR媒体やBPMは、記録再生ヘッドの浮上性を確保しつつ、ヘッド位置決め精度がよく、信号S/Nが良好で、高温多湿環境下でも安定して使用できる。さらに、DLC保護膜の膜質がよくなる結果、BERを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ディスクリートトラック媒体を示す平面図。
【図2】ビットパターンド媒体を示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法を示す断面図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法を示す断面図。
【図5】本発明のさらに他の実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法を示す断面図。
【図6】本発明の方法で製造されたDTR媒体の断面図。
【図7】比較例の方法で製造されたDTR媒体の断面図。
【符号の説明】
【0073】
1…磁気記録媒体、2…サーボ領域、21…プリアンブル部、22…アドレス部、23…バースト部、3…データ領域、31…ディスクリートトラック、32…記録ビット、51…ガラス基板、52…磁気記録層、53…エッチング保護層、54…レジスト、55…非記録部、56…表面保護膜、60…スタンパ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に磁気記録層を成膜し、
前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、
前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層の一部をエッチングガスによりエッチングして磁気記録層に凹凸を形成し、
凹部に残存する磁気記録層をNeガスにより改質して非記録部を形成し、
全面に保護膜を形成する
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
基板上に磁気記録層を成膜し、
前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、
前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層の一部をエッチングガスとNeガスとの混合ガスにより処理してエッチングおよび改質を同時に行い、磁気記録層に凹凸を形成するとともに凹部に非記録部を形成し、
全面に保護膜を形成する
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
基板上に磁気記録層を成膜し、
前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、
前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層をNeガスにより改質して非記録部を形成し、
全面に保護膜を形成する
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記エッチングガスとしてArを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項1】
基板上に磁気記録層を成膜し、
前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、
前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層の一部をエッチングガスによりエッチングして磁気記録層に凹凸を形成し、
凹部に残存する磁気記録層をNeガスにより改質して非記録部を形成し、
全面に保護膜を形成する
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
基板上に磁気記録層を成膜し、
前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、
前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層の一部をエッチングガスとNeガスとの混合ガスにより処理してエッチングおよび改質を同時に行い、磁気記録層に凹凸を形成するとともに凹部に非記録部を形成し、
全面に保護膜を形成する
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
基板上に磁気記録層を成膜し、
前記磁気記録層の記録部に対応する領域にマスクを形成し、
前記マスクに覆われていない領域の磁気記録層をNeガスにより改質して非記録部を形成し、
全面に保護膜を形成する
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記エッチングガスとしてArを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−181673(P2009−181673A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21904(P2008−21904)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]