説明

磁気軸受に支承されたシャフトのためのセンサ構造

本発明は、磁気軸受(2)に支承されたシャフト(1)のためのセンサ構造に関するものであり、磁気的にシールドされた領域を形成しながら磁気軸受(2)をシールドする磁気シールドと、磁気シールドされた領域でシャフト(1)に配置された磁気コーディング(10)と、磁気コーディング(10)の磁界の少なくとも1つの変化を検出する少なくとも1つの受信器(11)とを含んでいる。上述したセンサ構造は、本発明によると、シャフト(1)の磁気コーディング(10)を用いてシャフト(1)の位置をできるだけ磁気軸受(2)の近傍で検出することを可能にする、磁気軸受(2)に支承されたシャフト(1)のためにセンサ構造を提供するという課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載されている磁気軸受に支承されたシャフトのためのセンサ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気軸受に支承されたシャフトの実際の取扱から、軸受での軸方向または半径方向におけるシャフトの位置を判定するにあたって問題が生じることが知られており、それは、特にシャフトに磁気マーキングが付属していてその運動が検出され、シャフトの磁気マーキングの運動から、シャフトの位置または回転数やトルクといったその他の動作特性を推定する場合である。その場合、特に磁気軸受の近傍では、その磁界が磁気マーキングの磁界と重なり合うために、その結果として生じる磁界から、磁気マーキングの寄与分だけを一義的に取りだすことがまず不可能になってしまう。
【0003】
特許文献1は、支承されたシャフトのためのセンサ構造を記載しており、このセンサ構造は、シャフトの本体に構成された磁化領域として構成されている信号発生器としての磁気コーディングと、コイルとして構成された受信器とを含んでおり、コイルは磁気コーディングの磁界の変化を検出する。シャフトの本体における機械的な応力は、磁気ひずみ効果に基づいて磁気コーディングの磁界の変化を引き起こし、この変化が受信器によって検出され、軸受におけるシャフトの位置を間接的に推定することができる。このような種類の構造は、磁気軸受に支承されたシャフトについては容易に適用できるわけではない。磁気軸受の磁界が、磁気コーディングの磁化の変化と重なり合うからである。特に問題となるのは、磁気支承部の磁界が時間的に変化するために、磁気軸受が、コイルで測定される磁界に、時間依存的な信号を重なり合わせることである。さらに欠点なのは、上述した測定構造は、本体が磁化可能な材料でできているシャフトにしか適していないが、他ならぬそうしたシャフトこそが、磁気支承部の磁界によって影響をうけることにある。
【0004】
特許文献2は、導電性で磁化可能な材料で本体ができている支承されたシャフトのためのセンサ構造を記載している。このセンサ構造は、本体の側方でそのほぼ中心に配置された磁石を含んでいる。シャフトの本体を通って電流が流れ、本体で磁界が誘導されて、この磁界が磁石の場所で磁石の磁界と重なり合い、それにより、シャフトの本体では磁石の場所で、磁気ひずみ効果に基づいてシャフトの本体に機械的な応力が発生し、この応力がシャフトの本体に沿って伝搬し、シャフトの端部で検出することができる。最初の電流パルスと機械的応力の発生との間の時間から、シャフトに電流パルスが導入された位置から磁石のある場所までの間隔を間接的に推定することができ、それにより、磁石に対して相対的なシャフトの位置も間接的に検出可能となる。この構造は全体として高いコストがかかり、また、磁気軸受に支承されたシャフトにはほとんど適用可能ではない。磁気軸受の磁界はシャフトの本体でたえず変化する機械的応力を引き起こし、そうした応力が本来の測定量に重なり合うからである。また、シャフトの軸方向の位置決めしか検出することができず、軸受におけるシャフトの半径方向の位置は検出することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/013092A1号パンフレット
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第102004025387A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、磁気軸受に支承されたシャフトのために、シャフトの磁気コーディングを用いてシャフトの位置をできるだけ磁気軸受の近傍で検出することを可能にするセンサ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明によると、請求項1の構成要件を備えるセンサ構造によって解決される。
【0008】
磁気シールドに基づき、および、磁気的にシールドされた領域への受信器の配置に基づき、受信器は磁気支承部の磁界からさほど影響をうけることがない。そして磁気コーディングを適切に構成することで、磁気支承部からほぼ影響をうけることなく、シャフトの位置を判定することができる。シャフトの本体の磁化に影響を及ぼす磁気支承部の効果は、受信器に付属する電子装置によって認識して取り除くことができる。
【0009】
磁気コーディングはシャフトの本体の磁化区域によって形成されており、それにより、シャフトが構造上の変更を必要としないことが意図されているのが好ましい。
【0010】
その別案として、磁気コーディングは、シャフトの本体に取り付けられたコーディング部材によって構成されることが意図されているのが好ましい。コーディング部材に基づき、磁化可能でない材料からなるシャフトにも磁気コーディングを設けることができる。しかも、このコーディング部材の構成では、磁気コーディングを軸方向にも半径方向にも設けることが可能であり、それにより、受信器は軸方向と半径方向で同時にシャフトの位置を判定することができる。
【0011】
磁気コーディングの構成に関して、磁気コーディングが振動回路を含んでおり、受信器は振動回路から放出される電磁放射の磁気割合を検出することが意図されるのが好ましい。このとき、振動回路から放出される電磁放射は、磁気ひずみ効果を考慮に入れる必要なく、受信器による磁気コーディングの検出を可能にする。さらに、放出される電磁放射の周波数は、受信器によって検出してさらに評価することのできる追加情報を供給することができる。電磁放射の周波数ないし周波数応答を前提としたうえで、受信器は、たとえば地磁気や完全にシールドされていない磁気支承部の磁界の割合のような外乱の影響を認識し、後置された評価部のためにこれを抑圧することができる。
【0012】
振動回路による磁気コーディングの構成に関して、受信器がコイルを含んでおり、このコイルは振動回路と誘導式に結合されており、コイルは振動回路を励起して電磁放射を放出させることが意図されるのが特別に好ましい。このように、受信器は振動回路に無接触の方式で電気エネルギーを供給し、ケーブルによる接続を必要とすることがない。振動回路が受信器に対して相対的に動いたとき、振動回路の平面が、コイルによって定義される方向に対して実質的に平行に位置している場合に限り、誘導式の結合が生じる。したがって、シャフトの円周に沿って配分されて配置されたさまざまな振動回路が、受信器の特定のコイルにそれぞれ短時間だけ反応するので、複数の振動回路ないし複数のコイルを設けることによって、いっそう高い半径方向または軸方向の解像度を位置測定にあたって実現することができる。
【0013】
磁気シールドはシールド板によって構成されるのが好ましい。その代替または追加として、磁気シールドは導電性コーティングによって構成することもでき、当然ながら、導電性コーティングは追加的にシールド板に設けられている。磁気シールドは受信器とは構造的に分離されていてよいが、受信器はハウジングの中に配置されていてよく、さらにハウジングは磁気的なシールド作用を有している。磁気的なシールドをする受信器のハウジングは、シールド板に基づく磁気シールドないし導電性コーティングに基づく磁気シールドの代替または補完をすることができ、それはたとえばハウジングが、シールド板ないし導電性コーティングによって完全にシールドされない磁気支承部の磁界の割合を、受信器から遠ざけることによってである。
【0014】
受信器は、磁気コーディングを半径方向で覆う2つの半円筒を含んでいるのが好ましい。両方の半円筒は、磁気コーディングをその円周に沿って覆い、それによってシールドするハウジングを形成する。半円筒は磁気コーディングを軸方向で少なくとも部分的に覆い、特に両側で覆うことが意図されるのが特別に好ましい。それにより、各々の半円筒は実質的にU字型の断面を有している。半円筒としての受信器のハウジングの構成は、U字の両方の脚部が磁気コーディングを軸方向で覆うように、各々の半円筒を磁気コーディングに取り付けることを可能にし、このとき半円筒は磁気コーディングの近傍にまで達することができ、磁気コーディングに対して2mmまたはこれ以下の間隔を有することができる。
【0015】
受信器それ自体は、磁気コーディングの磁界を検出することができる、特に磁気コーディングの磁界の変化を検出することができる、少なくとも1つのコイルを含んでいるのが好ましい。コイルは、ホールセンサやリードセンサといった他の磁界センサに比べて、特に磁気コーディングが誘導結合された振動回路で構成されている場合に、電磁放射の送信器としても作用できるという利点がある。
【0016】
磁気コーディングは、シャフトの側面にもシャフトの端面にも配置されていてよい。
【0017】
本発明の上記以外の利点や構成要件は、実施例の説明ならびに従属請求項から明らかとなる。
【0018】
次に、添付の図面を参照しながら好ましい実施例を用いて本発明を詳しく説明、解説する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるセンサ構造の実施例を示す分解図である。
【図2】図1の実施例の個々の部分を示す4つの部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、磁気支承部2に支承されたシャフト1を示している。磁気支承部2は、溝4を有する軸受リング3を含んでいる。溝4の中にシールド板5の一区域を挿入可能である。
【0021】
シャフト1の本体6は磁化可能ではない材料でできており、たとえば少量の割合のクロムを含む鋼材でできている。シャフト1の本体6には円環状のコーディング部材7を取付可能であり、コーディング部材7は図1の図面では2部分で図示されている。組み付けられた位置のとき、コーディング部材7はシャフト1の本体6にプレス嵌めによって取り付けられる。
【0022】
コーディング部材7は、シャフト1の本体6から離れるほうを向く周回する半径方向の円周面8と、軸受リング3から離れるほうを向く軸方向の端面9とを有している。コーディング部材7には、異なる磁化の区域の連続として端面9にも円周面8にも構成された磁気コーディング10が設けられている。
【0023】
さらに図1は、2つの半円筒13で構成されたハウジング12を備える受信器11を示している。各々の半円筒13はU字型の断面を有しており、U字の脚部は、組み付けられた位置のとき、コーディング部材7の端面9およびもう一方の端面に上から係合し、それに対してU字の底面はコーディング部材の円周面8を覆う。
【0024】
ハウジング12の中には、コーディング部材7がコイルに対して相対的に動くとただちに、コーディング部材7の磁化の磁界の変化を検出するコイルがさらに配置されている。さらに、各々の半円筒13に通じていて、半円筒13の内部に配置されたコイルに作用する、ないしは、コーディング部材7の磁界によってコイルで誘導される電圧が端部での電圧降下を生起する、電気引込線14を見ることができる。
【0025】
組み付けられた位置のとき、シールド板5は軸受リング3の溝4へ区域的に収容され、それにより、シールド板5は磁気軸受2の軸受リング3に取り付けられる。シールド板5に対して軸方向で間隔をおきながら、コーディング部材7がプレス嵌めによってシャフト1の本体6に接合されており、受信器11はコーディング部材7を円周方向では完全に覆い、軸方向では少なくとも部分的に覆う。
【0026】
磁気シールドは、部分的にはシールド板5によって、また部分的にはコーディング部材7とシールド板5との間の距離によって、ならびに部分的には受信器のハウジング12によって惹起され、ハウジング12では特に、コーディング部材の端面9への部分的な上からの係合によって、ないしはハウジング12によるコーディング部材の円周面8の覆いによって惹起される。両方のハウジング半体13は、磁気的な外乱場の影響を抑制するために、コーディング部材7に対して2mmよりも短い間隔を有している。
【0027】
図2は、図1に示す実施例をそれぞれ詳細に図示しており、ここでは同じ構成部品または匹敵する構成部品には同じ符号が付されている。図2の左上の部分図には、ハウジング12の半円筒13のうちの1つとコーディング部材7とともに、シャフト1の平面図が模式的に示されており、ハウジングの中に受信器11が配置されている。図2は、右上の部分図に、シールド板5の上側区域を示している。ここで当然ながら、図1に一体的に示しているシールド板5は、2部分で構成されていてもよい。図2は、左下の部分図に、シャフト1と、半円筒13を有するハウジング12の中に配置された受信器11と、受信器11への供給をするための引込線14と、シールド板5と、シャフト1の本体6を収容する軸受リング3を備えた磁気支承部2とを含む側面図を示している。シールド板5が縁部側の折り返しによって収容される、軸受リング3の溝4を見ることができる。図2の右下の部分図にはコーディング部材7の半分が示されており、半径方向の円周面8と軸方向の端面9には磁気コーディング10があり、この磁気コーディングは、磁化の異なる周回する領域の連続で構成されており、ないしは、磁化のある領域とない領域との連続で構成されている。
【0028】
上に説明した実施例では、コーディング部材7は中空円筒状に構成されており、シャフト1の本体6の側面に取り付けられていた。当然ながら、コーディング部材はシャフト1の端面に配置されていてもよく、たとえば円形であってよく、このとき磁化区域は円切片状に構成される。さらに当然ながら、円形部分と中空円筒部分の組み合わせからなるコーディング部材が設けられていてもよく、このようなコーディング部材はシャフト1の端部区域に取り付けられる。
【0029】
上に説明した実施例では、シールド板5、コーディングリング7、および受信器11を備えるセンサ構造が、磁気軸受2の外部で軸受リング3にすぐ接するように配置されていた。当然ながら、センサ構造は磁気軸受2の内部で、たとえば磁気軸受2の軸受リング2と他方の軸受リングとの間に配置されていてもよい。その場合、両方の軸受リングに向かって両側に磁気シールドが設けられる。
【符号の説明】
【0030】
1 シャフト
2 磁気軸受
3 軸受リング
4 溝
5 シールド板
6 シャフト1の本体
7 コーディング部材
8 半径方向の円周面
9 軸方向の端面
10 磁気コーディング
11 受信器
12 ハウジング
13 半円筒
14 引込線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気軸受(2)に支承されたシャフト(1)のためのセンサ構造において、
磁気的にシールドされた領域を形成しながら前記磁気軸受(2)をシールドする磁気シールドと、
磁気シールドされた前記領域で前記シャフト(1)に配置された磁気コーディング(10)と、
前記磁気コーディング(10)の磁界の少なくとも1つの変化を検出する少なくとも1つの受信器(11)とを含んでいるセンサ構造。
【請求項2】
前記磁気コーディングは前記シャフト(1)の本体(6)の磁化区域によって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のセンサ構造。
【請求項3】
前記磁気コーディング(10)は前記シャフト(1)の本体(6)に取り付けられたコーディング部材(7)によって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のセンサ構造。
【請求項4】
前記磁気コーディングは振動回路を含んでおり、前記受信器は前記振動回路から放出される電磁放射の磁気割合を検出することを特徴とする、請求項3に記載のセンサ構造。
【請求項5】
前記受信器はコイルを含んでおり、前記コイルは前記振動回路と誘導式に結合されており、前記コイルは前記振動回路を励起して電磁放射を放出させることを特徴とする、請求項4に記載のセンサ構造。
【請求項6】
前記磁気シールドはシールド板(5)によって構成されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載のセンサ構造。
【請求項7】
前記磁気シールドは導電性コーディングによって構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサ構造。
【請求項8】
前記受信器(11)は2つの半円筒(13)を含むハウジング(12)を含んでおり、両方の前記半円筒(13)は前記磁気コーディング(10)を半径方向で覆っていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のセンサ構造。
【請求項9】
前記半円筒(13)は前記磁気コーディング(10)を軸方向で少なくとも部分的に覆っていることを特徴とする、請求項8に記載のセンサ構造。
【請求項10】
前記受信器(11)は少なくとも1つのコイルを含んでいることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のセンサ構造。
【請求項11】
前記磁気コーディング(10)は前記シャフト(1)の側面に配置されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサ構造。
【請求項12】
前記磁気コーディング(10)は前記シャフト(1)の端面に配置されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサ構造。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−538281(P2010−538281A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523273(P2010−523273)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001484
【国際公開番号】WO2009/030221
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(510068035)シェフラー テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】