説明

磁界方向および/または磁界強度の測定装置

本発明は、第1の空間方向における第1の磁界成分を検出する第1のセンサと、第2の空間方向における第2の磁界成分を検出する第2のセンサと、第3の空間方向における第3の磁界成分を検出する第3のセンサとを備えた、磁界方向および/または磁界強度の測定装置に関する。本発明によれば、第1のセンサは少なくとも1つのホールセンサを含み、第2のセンサおよび/または第3のセンサは少なくとも1つのフラックスゲートセンサを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の空間方向における第1の磁界成分を検出する第1のセンサと、第2の空間方向における第2の磁界成分を検出する第2のセンサと、第3の空間方向における第3の磁界成分を検出する第3のセンサとを備えた、磁界方向および/または磁界強度の測定装置に関する。
【0002】
前述した測定装置は、例えば、地磁場の方向および強度を測定するために用いられる。地磁場の測定方向は例えばディジタルコンパスの形態でユーザに対して視覚化される。また、測定値を、自動車、飛行機または船舶などを操縦するためのナビゲーション装置やオートパイロットシステムで利用することもできる。
【0003】
磁界方向、例えば地磁場方向を3次元で検出するためには、3つの空間方向すべてを検出しなければならない。このために従来技術では例えばホールセンサが用いられるが、この手段には、充分な精度で求められるのがセンサ平面に対して垂直な唯一の磁界成分のみであり、一方、センサ平面内の2つの磁界成分は充分な精度では求められないという欠点がある。或る磁界の3つの空間方向のすべてを検出するには、相互に直交するように配置された複数のホールセンサが必要である。このため、従来技術による磁界方向および/または磁界強度を3次元で測定する装置は、製造が煩雑であるし、また、大きな構造寸法を必要とする。
【0004】
こうした従来技術から出発して、本発明の基礎とする課題は、磁界方向および/または磁界強度を3次元で測定できる装置を小さな構造寸法で簡単かつ低コストに製造できるようにすることである。
【0005】
この課題は、第1の空間方向における第1の磁界成分を検出する第1のセンサと、第2の空間方向における第2の磁界成分を検出する第2のセンサと、第3の空間方向における第3の磁界成分を検出する第3のセンサとを備えた、磁界方向および/または磁界強度の測定装置において、第1のセンサが少なくとも1つのホールセンサを含み、第2のセンサおよび/または第3のセンサが少なくとも1つのフラックスゲートセンサを含むことを特徴とする磁界方向および/または磁界強度の測定装置を構成して解決される。
【0006】
本発明によれば、少なくとも1つのホールセンサと少なくとも1つのフラックスゲートセンサとが組み合わされる。ホールセンサは、最大感度を有するセンサ平面に対して垂直な磁界成分を検出する。これに対して、フラックスゲートセンサは、センサ平面内の磁界成分を検出するように構成されている。したがって、少なくとも1つのホールセンサおよび少なくとも1つのフラックスゲートセンサは1つの平面内、例えば唯一の基板上に配置され、スペースを節約することができる。ほぼ直角をなす2つのフラックスゲートセンサが設けられる場合、或る磁界の3つの空間方向すべての成分を検出することができ、その際にも第1の半導体基板に対して直角をなす第2の半導体基板を設ける必要がない。このため、本発明のセンサは構造高さが小さく、簡単に製造できる。
【0007】
本発明の有利な実施形態では、ホールセンサおよびフラックスゲートセンサを含む半導体基板が少なくとも1つの別の素子を含む。当該の付加的な素子によって、例えば、各センサへの電流供給または測定値検出を行うことができる。また、センサの出力値を妥当性検査プロセス、増幅プロセス、識別プロセスまたはディジタル化プロセスにかける際に、これらの付加的な素子を利用することもできる。
【0008】
本発明の別の有利な実施形態によれば、それぞれの空間方向に対して複数のセンサを設け、冗長測定によって測定装置の確実性を高めることができる。
【0009】
本発明の別の有利な実施形態によれば、少なくとも1つのフラックスゲートセンサはプレーナコイル技術または3Dマイクロコイル技術によって半導体基板上に形成される。この場合、フラックスゲートセンサは例えば1つまたは2つの金属面として配置される。このようにすれば、フラックスゲートセンサをホールセンサおよび他の電子素子とともに1つの作業工程で半導体基板上に形成することができる。
【0010】
本発明の装置は地磁場の磁界方向および/または磁界強度を測定するために用いられる。本発明の装置は、特に、携帯電話機、PDAまたはナビゲーション装置などの消費者向けエレクトロニクス機器に適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】基板上の部品の各配置を示す図である。
【0012】
以下に本発明を図示の実施例に則して詳細に説明する。ただし、実施例は説明のためのものであり、本発明の思想を限定するものではない。
【0013】
図1の測定装置は基板10上に配置されている。基板10はここでは例えば半導体基板、特にケイ素基板である。設定可能な導電型を調整するために、半導体基板10にドープ物質をドープすることもできる。基板10と表面に配置された素子とのあいだの電気的短絡を防止するために、基板10の表面に絶縁体をコーティングすることもできる。ここでの絶縁体には、特に、ケイ素窒化物、ケイ素酸化物またはケイ素酸化窒化物が含まれる。
【0014】
基板10の表面にはホールセンサ12が配置されている。ホールセンサ12は、ここでは、電荷担体移動度の高い半導体材料を含む、空間的に周囲を制限された領域である。測定装置の駆動時には、ホールセンサ12の方向に沿って電場が印加され、このホールセンサを通る電流が生じる。基板10の表面に対して垂直な方向に作用する磁場が存在する場合、電流の流れに直交する方向で磁場の強度にしたがって増大する電圧がホールセンサ12で測定される。つまり、ホールセンサ12は半導体基板10の表面に垂直に存在する磁場の成分の測定に用いられる。
【0015】
ホールセンサ12も公知の手法で半導体基板10のパターニングによって製造される。本発明の別の実施例として、半導体基板の表面にホールセンサ12の材料を気相から蒸着し、続いてパターニングし、金属の端子コンタクトを設けてもよい。
【0016】
ホールセンサ12は半導体基板10の表面に対してほぼ垂直に作用する磁場ないし磁界成分zを検出するように構成されており、このホールセンサ12のほか、半導体基板10のx−y平面の磁場ないし磁界成分を検出するように構成された2つのフラックスゲートセンサ13,14も設けられている。ここで、第1のフラックスゲートセンサ13および第2のフラックスゲートセンサ14は相互にほぼ直交するように配置されており、これらのセンサがホールセンサ12と協働することによって3つの空間方向すべての磁界成分を求めることができる。こうして、所定の空間における磁場の方向が求められる。
【0017】
各フラックスゲートセンサ13,14は少なくとも1つのコイルコアを含み、このコイルコアは有利には軟磁性材料から形成される。コイルコアの周囲にはそれぞれ励起コイルおよび検出コイルが配置される。励起コイルによってコイルコアに磁場を周期的に誘導し、検出コイル内の誘導信号を位相を合わせて走査することにより、第1のフラックスゲートセンサ13でx方向の磁界ないし磁場成分が求められる。同様に、第2のフラックスゲートセンサ14によってy方向の磁界ないし磁場成分が求められる。
【0018】
フラックスゲートセンサ13,14は例えばマイクロメカニカル素子として製造され、接着、溶接またはボンディングにより、基板10の表面に固定される。この実施例では、基板は例えばセラミックから成るかまたはプリント回路板として構成される。
【0019】
本発明の別の実施例では、フラックスゲートセンサ13,14の巻線およびコアは気相から半導体基板10の表面へ堆積され、続いてパターニングされる。当該の堆積は、例えば、蒸着、スパッタリング、CVDまたはPVDによって行われる。パターニングは例えばエッチングステップを含み、ここで、基板表面の部分領域はフォトレジストまたはハードマスクによってエッチングの侵襲に対して保護される。コアと巻線とのあいだには場合により絶縁層を配置することができる。当該の絶縁層も有利には気相プロセスで堆積され、続いてパターニングされる。このようにすれば、磁場の方向および/または強度の測定装置を、公知のCMOSプロセスによって簡単に製造することができる。
【0020】
また、半導体基板10の表面には、3つの磁界センサ12〜14を駆動し、データを検出する電子素子を含む領域15が存在する。当該の領域15は、例えば、ホールセンサ12を通る設定可能な長手方向電流を形成する電流制御部を含む。また、領域15は、フラックスゲートセンサ13,14のコアに交流磁場を形成するコイル電流を調製する交流電圧源を含む。さらに、領域15は、ホールセンサ12のホール電圧およびフラックスゲートセンサ13,14の測定コイルに誘導された信号電圧を読み出す電気素子としての評価回路16を含む。
【0021】
場合により、領域15はさらに、例えば信号のディジタル化、増幅、識別または妥当性検査のための別の回路を含むこともできるし、センサの自己テストのための回路を含むこともできる。さらに、半導体基板10の領域15は、センサエレメントへ駆動電圧を印加するための第1のボンディングパッドや、測定値を読み出すための第2のボンディングパッドを含んでもよい。
【0022】
本発明は3つの空間方向に対する磁界センサに関しており、各空間方向に対する全てのセンサが基板10の表面上の1つの平面に配置されている。これにより、本発明のセンサは小さい構造高さを有する。また、本発明のセンサは簡単に製造できる。なぜなら、相互に直交する複数の方向で磁場を測定するにあたり、複数のホールセンサ12を複数の基板の上にそれぞれ直交方向で配置しなくてよいからである。
【0023】
当分野の技術者には、本発明の図示の実施例が説明のためのものであって本発明を限定するものでなく、本発明の範囲内で種々の修正および変更が可能であることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の空間方向における第1の磁界成分を検出する第1のセンサ(12)と、
第2の空間方向における第2の磁界成分を検出する第2のセンサ(13)と、
第3の空間方向における第3の磁界成分を検出する第3のセンサ(14)と
を備えた、
磁界方向および/または磁界強度の測定装置において、
前記第1のセンサは少なくとも1つのホールセンサ(12)を含み、
前記第2のセンサおよび/または前記第3のセンサは少なくとも1つのフラックスゲートセンサ(13,14)を含む
ことを特徴とする磁界方向および/または磁界強度の測定装置。
【請求項2】
少なくとも、前記第1のセンサ、前記第2のセンサおよび前記第3のセンサは1つの基板上に配置されている、請求項1記載の磁界方向および/または磁界強度の測定装置。
【請求項3】
少なくとも1つの電子モジュール(16)が前記基板上にさらに配置されている、請求項2記載の磁界方向および/または磁界強度の測定装置。
【請求項4】
前記基板は半導体基板として構成されており、各センサはCMOSプロセスによって製造されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の磁界方向および/または磁界強度の測定装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフラックスゲートセンサはプレーナコイル技術または3Dマイクロコイル技術によって構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の磁界方向および/または磁界強度の測定装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのフラックスゲートセンサは気相蒸着プロセスおよびその後のパターニングプロセスによって形成されたコアを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の磁界方向および/または磁界強度の測定装置。
【請求項7】
相互に直交する複数の方向で1つの磁界を測定する少なくとも2つのフラックスゲートセンサ(13,14)が設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の磁界方向および/または磁界強度の測定装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の磁界方向および/または磁界強度の測定装置を備えていることを特徴とする携帯電話機。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項記載の磁界方向および/または磁界強度の測定装置を地磁場の磁界方向および/または磁界強度の測定に使用することを特徴とする測定装置の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−505420(P2012−505420A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531414(P2011−531414)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060490
【国際公開番号】WO2010/043433
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】