説明

磁界結合装置および読取り装置

【課題】紙幣や有価証券等の財産的価値の高いシート状またはプレート状の対象物に含有・付加される微小な磁界結合回路要素に対して感応用および情報読取り用の高周波電磁界を適切に与えることができ、十分な磁界結合を確保でき、かつ十分な電力を供給できる磁界結合装置、および読取り装置を提供する。
【解決手段】読込みプローブ(磁界結合装置)100は、微小な磁界結合回路要素内のタンク回路と共振感応するための高周波電磁界を生成するループアンテナを備えた磁界結合装置であって、ループアンテナは、誘電体基板101と、誘電体基板の表面に形成された第1ループアンテナ102Aと、誘電体基板の裏面で第1ループアンテナと同じ位置に形成されかつ第1ループアンテナと同じ径を有する第2ループアンテナ102Bと、第1ループアンテナと第2ループアンテナを直列的に接続する接続部(スルーホール)108,110から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFパウダーとして集合的に使用し、紙幣等に含有・付加させて、外部から与えられる高周波磁界により情報読取りができる磁界結合装置、およびこれを利用して構成される読取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ICタグはユビキタス時代の入り口にある商品と考えられている。またRF−ID(超小型無線認識)として名札やスイカカード、FeRAMカードなど、以前から開発が行われている。RF−IDの技術は、紙幣や有価証券等の財産的価値を有する書面の識別への応用も考えられる。紙幣の偽造などが問題となっており、それらの問題を解決するための方法として、ICタグを紙幣等に埋め込むことが考えられる。
【0003】
ICタグチップは、チップ内の128ビットのメモリデータを2.45GHzのマイクロ波で読み取るようにしている(例えば非特許文献1参照)。ICタグ以外の要素を用いた、紙幣やクレジットカード等の識別等に応用できる無線周波数自動識別(RF/AID)システムも考えられている。その一例として、特許文献1では、紙やプラスチックからなる基板に固定した配置で配置され、基板上にランダムな空間位置を占め、複数の無線周波数に共振する複数の共振子を含んでいる。
【0004】
従来の無線ID(RFID)装置の一例を図25を参照して説明する。この無線ID装置では、例えば改札口の入出ゲート701に備えられたリーダ・ライタ702と、各利用者に個別に所持される非接触ICカード703とから構成される。利用者が入出ゲート701を通過するとき、非接触ICカード703をリーダ・ライタ702にかざす。このとき、リーダ・ライタ702と非接触ICカード703との間で、磁界704で電磁誘導による結合の関係を作り、情報送受(通信)と電力伝送とが実行される。磁界704は、リーダ・ライタ702内のループ状アンテナで生成され、図25では磁界発生状態を模式的に示している。非接触ICカード703は、乗車券、定期券、キャッシュカード、あるいはクレジットカード等の役目を果たす。
【0005】
図26に非接触ICカード703の構成を示す。非接触ICカード703には半導体チップ705が搭載されている。半導体チップ705はカード基板706の上に固定される。また半導体チップ705はIC回路を内蔵している。一般的には、カード基板706上にさらに印刷基板技術によりループ状の送受信アンテナ707が形成されている。送受信アンテナ707は、ボンディングワイヤ708で半導体チップ705と接続される。カード基板706上に形成された送受信アンテナ707の長さは、送受信効率を最大にするため、通常、送受信周波数の一波長に相当する長さに設定される。
【特許文献1】特開平10−171951号公報
【非特許文献1】宇佐美光雄、『超小型無線ICタグチップ「ミューチップ」』、応用物理、Vol.73、No.9、2004、p.1179−p.1183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、無線ID装置の新しい応用分野として紙幣認証システムが考えられている。このシステムでは、上記半導体チップ705に類似した半導体チップを印刷インクに混入させ、この印刷インクで紙幣上に必要な印刷を行う。そして、このような紙幣を、適宜な場所に設置したリーダ・ライタで非接触の無線通信により感知し、半導体チップ705内のメモリに記録された情報を読取り、紙幣認証を行う。
【0007】
上記の紙幣認証システムは、実用化の観点で次のような問題を有している。
第1に、紙幣上にアンテナを設けることができないので、必然的に半導体チップの表面上にループアンテナが形成されることになり、その結果、アンテナは極微細なものになるため、アンテナとリーダ・ライタとの間の電磁結合が困難になり、容易に無線通信を行うことができなくなる。
第2に、半導体チップはIC回路を含んでいることから、そのサイズを小さくするに当たって制約を受け、例えば400μm(0.4mm)程度が下限になる。このため、印刷インクに混入させて紙幣に印刷することで紙幣に付加したとしても、紙幣の表面上、突起異物が付加された形状となり、紙幣などの使用上好ましいものではない。
【0008】
紙幣認証システムをさらに実用的なものにするためには、上記半導体チップを、さらに微細化することが望まれる。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題を鑑み、紙幣や有価証券等の財産的価値の高いシート状またはプレート状の対象物に含有・付加される微小な回路要素と磁界結合して情報読取り用の高周波電磁界を適切に与えることができ、かつ十分な電力を供給できる磁界結合装置、および読取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る磁界結合装置および読取り装置は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0011】
第1の磁界結合装置は、微小なパウダのタンク回路と共振する高周波電磁界を生成するループコイル(以下では、これを「ループアンテナ」と呼ぶことにする。)を備えた磁界結合装置であって、ループアンテナは、誘電体基板と、誘電体基板の表面に形成された第1ループアンテナと、誘電体基板の裏面で第1ループアンテナと同じ位置に形成されかつ第1ループアンテナと同じ径を有する第2ループアンテナと、第1ループアンテナと第2ループアンテナを直列的に接続する接続部と、から構成されている。
【0012】
上記の構成において、誘電体基板の表面に、給電線路の信号線導体が接続される第1の端子パターンと、給電線路の接地導体が接続される第2の端子パターンとが形成され、さらに、第1の端子パターンは第1ループアンテナの入力端に接続され、第2の端子パターンはスルーホールを介して第2ループアンテナの出力端に接続される。
【0013】
上記の構成において、第1ループアンテナと第2ループアンテナはヘリカル構造を有している。
【0014】
また上記の構成において、第1ループアンテナと前記第2ループアンテナから成るアンテナユニットを、誘電体基板の表面上で複数配列している。
【0015】
上記の構成において、複数のアンテナユニットは、誘電体基板の表面上で、列方向における各アンテナユニットによるモニタ領域が隙間なく設定されるように配列されていることを特徴とする。また第1ループアンテナおよび第2ループアンテナの径は、タンク回路の磁界結合コイルの径とほぼ同一である。
【0016】
第2の磁界結合装置は、タンク回路と共振させるための高周波電磁界を生成するループアンテナを備えた磁界結合装置であって、ループアンテナは、第1層基板と第2層基板を有する2層構造の誘電体基板と、第1層基板の表面に形成された第1ループアンテナと、第1層基板の裏面に形成された第2ループアンテナと、第2層基板の表面に形成された第3ループアンテナと、第2層基板の裏面に形成された第4ループアンテナと、第1から第4の4つのループアンテナを直列的に接続する接続部とから構成され、第1から第4の4つのループアンテナは重なるように同じ位置に配置され、かつ同じ径を有している。
【0017】
上記の構成において、誘電体基板の第1層基板の表面に、給電線路の信号線導体が接続される第1の端子パターンと、給電線路の接地導体が接続される第2の端子パターンとが形成され、さらに、第1の端子パターンは第1ループアンテナの入力端に接続され、第2の端子パターンはスルーホールを介して第4ループアンテナの出力端に接続されることを特徴とする。
【0018】
上記の構成において、第1から第4の4つのループアンテナはヘリカル構造を有することを特徴とする。
【0019】
また上記の第1の磁界結合装置の構成において、誘電体基板の表面に、送信用給電線路の信号線導体が接続される送信用第1の端子パターンと、受信用給電線路の信号線導体が接続される受信用第1の端子パターンと、送信用給電線路の接地導体および受信用給電線路の接地導体が接続される第2の端子パターンとが形成され、さらに、送信用第1の端子パターンおよび受信用第1の端子パターンのいずれかは切替えスイッチを介して第1ループアンテナの入力端に接続され、第2の端子パターンはスルーホールを介して第2ループアンテナの出力端に接続される、ことを特徴とする。
【0020】
第3の磁界結合装置は、複数のセクタが設定されかつセクタごとに複数の磁界結合回路要素が付加されたシート状部材に対して、複数の磁界結合回路要素の各々に設けられた各タンク回路に共振するための高周波磁界を生成する手段を備えた磁界結合装置であって、平板状の誘電体基板の表面に列状に配列された複数の伝送線路セクタモニタを有し、複数の伝送線路セクタモニタの各々は、誘電体基板の表面に形成された伝送線路パターンと接地パターンを備えるように構成される。
【0021】
上記の構成において、シート状部材は紙幣であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る読取り装置は、前述したいずれかの磁界結合装置を読込みプローブとして備え、この読込みプローブによる共振作用に基づいて、パウダー粒子(磁界結合回路要素)を付加されたモニタ対象物から周波数情報を読み取ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る磁界結合装置および読取り装置によれば、次の効果を奏する。
第1に、紙幣等のRFパウダー含有基体に対する検査等においてRFパウダー粒子(磁界結合回路要素)内のタンク回路と共振するための各種の周波数の高周波磁界を生成し、タンク回路の大きさにほぼ合致した微細な読込みプローブとして機能するため、安定してかつ正確に各RFパウダー粒子の周波数情報を読み取ることができる。
第2に、RFパウダー粒子から周波数情報を取り出すときにタンク回路の共振作用に基づく磁界結合を利用するために、RFパウダー粒子の内部にIC回路を内蔵させる必要がなく、かつ周波数情報を有効に読み出すことができる。
第3に、本発明の磁界結合装置および読取り装置では、近接状態に基づく磁界結合を利用して周波数情報を読み出すため、高周波が外部に漏洩して他の通信回線などに攪乱を起こすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
まず最初に、図1〜図5を参照して、本発明に係る磁界結合装置および読取り装置が適用される磁界結合回路要素について説明する。本実施形態の説明で、「磁界結合回路要素」は、高周波電磁界(RF)に結合して電磁誘導現象を生じるコイルを備えたRFパウダー粒子であって、集合的に使用されてRFパウダーを形成するものである。
【0026】
図1はRFパウダー含有基体を示す断面斜視図である。RFパウダー含有基体は、RFパウダーを含む基体である。
【0027】
図1は、例えば紙幣等のシート状基体10に、例えば3種類のRFパウダー粒子11,12,13が入っている様子を示す拡大図である。RFパウダー粒子11〜13は、それぞれ、異なる周波数の高周波磁界に結合する特性を有している。図1では、RFパウダー粒子11〜13の大きさを若干変えて図示しているが、これは、RFパウダー粒子11〜13がそれぞれ異なる周波数の磁界に結合ことを分かりやすくするために描いたものであり、実際は、RFパウダー粒子11〜13はほぼ同じ大きさである。
【0028】
上記のRFパウダー粒子11〜13のそれぞれは、実際には、多数または大量のRFパウダー粒子により粉状体の使用態様にて集合的にて取り扱われ、RFパウダーを構成する。図1では、RFパウダー粒子11〜13は全部で13個が示されているが、RFパウダー粒子の個数はこれに限定されるものではない。粉状体のRFパウダーの使用態様を考慮すれば、実際には、当該RFパウダー粒子11〜13はシート状の形状を有する基体10の全体に分散的に広がって存在している。上記のごとく、その内部あるいは表面等に存在する多数のRFパウダーを含む基体10を「RFパウダー含有基体10」と呼ぶことにする。
【0029】
なおRFパウダー粒子11〜13は、印刷インクに混入され、基体10の表面に印刷されて付加・付着されてもよい。
【0030】
また上記の「RFパウダー」とは、パウダー(粉状体または粒状体)を形成する大量の粒子の各々が無線(高周波電磁界:RF)を介して外部のリーダとの間で磁界結合により電磁エネルギーの送受を行う電気回路要素を有し、通常の使用態様が集合的形態であるパウダーとして使用されるものを意味する。
【0031】
次に、図2〜図5を参照して、RFパウダーを作る1つのRFパウダー粒子の一例を説明する。
【0032】
図2はRFパウダー粒子の外観斜視図を示し、図3はRFパウダー粒子の平面図を示し、図4は図3におけるA−A線断面図を示し、図5は図3におけるB−B線断面図を示している。図4および図5の縦断面図においてRFパウダー粒子はその厚みを誇張して示している。
【0033】
RFパウダー粒子21は、好ましくは、立方体またはこれに類似した板状の直方体の形状を有し、外側表面での複数の矩形平面に関して、最長辺を含む矩形平面が好ましくは0.30mm角以下より好ましくは0.15mm角以下の大きさを有する3次元的な形状を有している。この実施形態のRFパウダー粒子21は、図3に示すように、その平面形状が正方形になるように形成されている。RFパウダー粒子21では、正方形の平面形状において、例えば図3中の一辺Lが0.15mm(150μm)となっている。
【0034】
RFパウダー粒子21では、シリコン(Si)等の基板22上に絶縁層23(SiO等)を形成し、この絶縁層23の上にコイル24(インダクタンス要素)とコンデンサ(またはキャパシタ)25(キャパシタンス要素)とが成膜技術によって形成される。絶縁層23の厚みは例えば10μm程度である。コンデンサ25は、2つの部分25a,25bから構成されている。
【0035】
絶縁層23上に形成されたコイル24とコンデンサ25は、特定の周波数(例えば2.45GHz)の高周波電磁界に結合する。コイル24は、図2または図3に示されるように、RFパウダー粒子21の正方形の平面形状の各辺に沿って、1本の導体配線を例えば三重巻きにすることにより形成されている。コイル24を形成する導体配線の材質は例えば銅(Cu)である。コイル24の両端部は所要の面積を有する正方形のパッド24a,24bとなっている。2つのパッド24a,24bは、それぞれ、コイル24の交差部分を間において内周側と外周側に配置されている。2つのパッド24a,24bを結ぶ方向は、コイル24の交差部分に対して直交する方向となっている。パッド24a,24bのそれぞれは、コンデンサ25の2つの部分25a,25bの上側電極として機能する。
【0036】
上記において、コイル24の巻数と長さ形状は任意に設計することができる。
【0037】
コンデンサ25は、本実施形態の場合には、例えば2つのコンデンサ要素25a,25bから構成されている。コンデンサ要素25aは、上側電極24aと下側電極26a(アルミニウム(Al)等)とそれらの間に位置する絶縁膜27(SiO等)とから構成されている。下側電極26aは上側電極24aとほぼ同形の電極形状を有している。絶縁膜27によって上側電極24aと下側電極26aは電気的に絶縁されている。またコンデンサ要素25bは、上側電極24bと下側電極26bとそれらの間に位置する絶縁膜27とから構成されている。この場合にも、同様に、下側電極26bは上側電極24bとほぼ同形の電極形状を有して、絶縁膜27によって上側電極24bと下側電極26bは電気的に絶縁されている。
【0038】
コンデンサ要素25a,25bの各々の下側電極26a,26bは導体配線26cで接続されている。実際には、2つの下側電極26a,26bと導体配線26cは一体物として形成されている。またコンデンサ要素25a,25bの各々の絶縁膜27は共通の一層の絶縁膜となっている。絶縁膜27の厚みは例えば30nmである。絶縁膜27は、2つのコンデンサ要素25a,25bの間の領域において、下側電極26a,26bの間を接続する導体配線26cと、コイル24とを電気的に絶縁している。
【0039】
上記の構成によって、コイル24の両端部の間には、電気的に直列に接続された2つのコンデンサ要素25a,25bで作られるコンデンサ25が接続されることになる。ループを形成するように接続されたコイル24とコンデンサ25とによってタンク回路(LC共振回路)が形成される。タンク回路は、その共振周波数に一致する周波数を有する高周波電磁界に結合して共振する。
【0040】
なお、図4および図5から明らかなように、RFパウダー粒子21の表面の全体はP−SiN膜28により被覆されている。P−SiN膜28は、RFパウダー粒子21におけるタンク回路が形成されている側の表面を保護している。
【0041】
上記において、コンデンサ25は2つのコンデンサ要素25a,25bで構成したが、これに限定されず、いずれか一方による1つのコンデンサ要素で作ることもできる。コンデンサ25の容量値は、電極の面積を調整することにより適宜に変更することができる。複数のコンデンサを並列に配置することにより適宜に設計することもできる。
【0042】
以上の構造を有するRFパウダー粒子21は、基板22の表面における絶縁面上にループ状に接続されたコイル24とコンデンサ25とから成るタンク回路を有するので、当該タンク回路の共振周波数で決まる高周波電磁界に結合して共振する作用を有することになる。このようにしてRFパウダー粒子21は設計された周波数の磁界に結合して共振する前述した「パウダー回路要素」として機能する。
【0043】
また絶縁層23の上に形成されたコイル24とコンデンサ25は、基板22の表面部分との間では、電気的配線で接続される関係を有していない。すなわち、基板22の上に堆積された絶縁層23にはコンタクトホールが形成されず、コンタクト配線が形成されてない。コイル24とコンデンサ25から成るタンク回路は、シリコン基板22から電気的に絶縁された状態で作られている。コイル24とコンデンサ25から成るタンク回路は、基板22から分離された状態で、その回路自身だけで共振回路として構成される。
【0044】
上記のRFパウダー粒子21で、土台の基板22はシリコン基板であり、その表面に絶縁層23が形成されているが、基板についてはシリコン基板の代わりに例えばガラス、樹脂、プラスチックス等の誘電体(絶縁体)を利用した基板を用いることができる。ガラス基板等を用いる場合には、本来的に材質は絶縁体(誘電体)であるので、絶縁層23を特別に設ける必要はない。
【0045】
次に図6〜図8を参照して、上記構造を有するRFパウダー粒子(11〜13)を含有するRFパウダー含有基体10に関する検査(モニタ)の方法、および検査時の作用を説明する。
【0046】
図6は検査装置の装置構成を示す。図1で説明したように紙幣等のシート状の基体10は、相当な数のRFパウダー粒子(11〜13)を含有している。図6では、基体10の厚みを誇張し、拡大して示している。
【0047】
基体10はコンピュータ61に接続されたリーダ62によって走査される。コンピュータ61は複数のRFパウダー粒子11の応答の周波数依存データを読み込む。コンピュータ61はデータを処理する機能の本体61bのほかに表示装置61a、操作のためにキーボード61cを備えている。
【0048】
上記リーダ62は読込みプローブ63(図7と8を参照)を有し、読込みプローブ63は高周波電磁界を近傍に生成し、磁界結合によりパウダー粒子(RFパウダー粒子11〜13)と結合する。RFパウダー粒子の固有振動数が例えば2.45GHzのとき、高周波電磁界の周波数が同じ2.45GHzのときに共振して電磁界エネルギがRFパウダー粒子に伝達する。この伝達が効率よく起きるためには読込みプローブの生成する電磁界にRFパウダー粒子のコイルがよく結合するほどに、近傍にある必要がある。空間で結合が効率よく起きるためには、互いのコイルの大きさがほぼ同じで、また互いの距離はコイルの大きさと同じ程度にあるのが望ましい。エネルギの伝達が起き、伝達した先の回路にエネルギが伝達してそれが戻らないという損失があると反射率が小さくなるので、例えば反射率を測定すると共振を確認できる。RFパウダー粒子の固有の振動周波数2.45GHzを検出するには、読込みプローブ63は例えば1〜3GHzまで周波数を変化させる。リーダ62はRFパウダー粒子の位置を特定するために基体10の表面上を磁界結合が起きるように一定の距離を保ちながら走査動作をする。
【0049】
リーダ62は、読込みプローブ63を介して、基体10における複数のRFパウダー粒子11〜13の各々から周波数情報を読み込むため、基体10の表面に沿って一定の方向に走査動作すると共に、磁界結合のための周波数について特定の周波数帯域内で周波数を変化させる。読込みプローブ63の実際の構造は、単一のプローブ素子(コイル素子)を用いた構造でもよいし、複数のプローブ素子を所要の配置構成で配置させて成る構造でもよい。読込みプローブ63、または当該読込みプローブ63を構成するプローブ素子は、高周波電磁界を生成する機能を有している。
【0050】
なお図6〜図8に示したリーダ62および読込みプローブ63は概念的に描かれており、実際的な具体的構造を示すものではない。
【0051】
上記で説明した読込みプローブ63は本発明に係る「磁界結合装置」に相当し、リーダ62は本発明に係る「読取り装置」に相当する。
【0052】
図7はリーダ62の読込みプローブ63から所定のある周波数の高周波を生成したとき、固有の振動周波数が一致または近いRFパウダー粒子11のタンク回路のコイルに共振電流が流れて、RFパウダー粒子11の周りに電磁界Hが生成される様子を模式的に示したものである。これを「感応している」と、本実施形態の説明では表現するときがある。RFパウダ粒子は波長(例えば2GHz帯の場合は15cm)に比べて十分小さい(0.15mm)ので電磁波の放射の成分は無視できる。読込みプローブからの高周波エネルギの伝達と反射、損失は磁界結合を介して行われる。
【0053】
図8はRFパウダー粒子11が存在する場所で磁界結合してエネルギの伝達と反射が起きる様子をしめす。リーダ62が走査移動して読込みプローブ63がRFパウダー粒子11の上方にある。読込みプローブ63は定められた範囲で周波数を変化させながら周りに高周波磁界を生成する。RFパウダー粒子11の固有振動周波数に近づきまたは一致したときには磁界結合を介してRFパウダー粒子のコイルとコンデンサのタンク回路には同じ周波数で電流が流れ、エネルギの伝達(図8中、矢印64で示す。)が起きる。電流は伝達された(または「受信した」)エネルギの一部を回路内で熱として消費して損失エネルギ成分となる。損失エネルギ成分は読込みプローブから見ると、反射成分(図8中、矢印65で示す。)の低下として測定できる。固有振動数に一致するときに最も大きな損失となり反射成分が低下する。この測定を行うことにより共振した周波数をRFパウダー粒子11の周波数データ情報として図6に示すリーダ62は、読込みプローブ63の位置情報と共にコンピュータ61に送る。コンピュータ61は周波数情報を記憶して、必要に応じて基体データとして送信する。
【0054】
同様に、リーダ62が走査移動し、その読込みプローブ63がRFパウダー粒子12の上方に位置した場合において、読込みプローブ63が生成する高周波電磁界がRFパウダー粒子12の感応する周波数になったとき、RFパウダー粒子12はその高周波磁界と結合して共振し、同様にしてRFパウダー粒子12の周波数情報が読み出される。さらに同様に、リーダ62が走査移動し、その読込みプローブ63がRFパウダー粒子13の上方に位置した場合において、読込みプローブ63が生成する高周波電磁界がRFパウダー粒子13の感応する周波数になったとき、RFパウダー粒子13はその高周波磁界と結合して共振し、RFパウダー粒子13の周波数情報が読み出される。
【0055】
次に、図9〜図13を参照して、本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置(リーダ)の第1の実施形態を説明する。
【0056】
図9は読込みプローブの斜視図、図10は読込みプローブの要部の断面図、図11は読込みプローブの表面の平面図、図12は読込みプローブの誘電体基板の表面の拡大図、図13は同誘電体基板の裏面について表側が見た拡大透視図を示している。
【0057】
読込みプローブ100は、誘電体基板101と、誘電体基板101の上側表面に形成された1つの電磁ループパターン102Aと、誘電体基板101の下側裏面に形成された1つの電磁ループパターン102Bと、誘電体基板101の表面側に形成された第1の端子パターン103および第2の端子パターン104とから構成されている。表裏の2つの電磁ループパターン102A,102Bは共に一部を開いた円形リング形状を有し、中心位置は同じでありかつ同径の形状を有している。電力は、外部回路に接続された同軸線路105によって供給される。同軸線路105の中心導体105aはワイヤ106で端子パターン103に接続され、外部導体105bはワイヤ107で端子パターン104に接続されている。同軸線路105は、前述したリーダ62の内部に配置される。同軸線路105は、電磁ループパターン102A,102Bに高周波電力を供給し、電磁ループパターン102A,102Bは高周波電磁界を生成する。
【0058】
同軸線路105の中心導体105aの先端部は、電磁ループパターン102Aの端子パターン103に接続されており、同軸線路105によって供給された電力は、端子パターン103を経由して電磁ループパターン102Aに入力される。電磁ループパターン103Aの出力は他の端部のスルーホール(コンタクトホール)108を経由して、誘電体基板101の裏面側に形成された電磁ループパターン102Bに供給される。裏面側の電磁ループパターン102Bの出力は、出力側の端子パターン109およびスルーホール110を経由して表面側の第2の端子パターン104に供給される。端子パターン104には前述の通り同軸線路105の外部導体105bが接続されている。
【0059】
以上の電磁ループパターン102A,102Bによって、同軸線路105により高周波電力が給電される二重ヘリカルの読込みプローブ100が構成される。電磁誘導による結合作用を生じる読込みプローブ100の電磁ループパターン102A,102Bは、印刷基板技術を利用することにより、磁界結合回路要素であるRFパウダー粒子11等とほぼ同じ大きさに製作される。また誘電体基板101については、フレキシブル基板などを用いることにより、表裏の電磁ループパターン102A,102Bの間隔も数十μmの大きさにすることができる。読込みプローブ100は、RFパウダー粒子11等に密着させて配置することができるので、上記のリーダ62とRFパウダー粒子11との間に強い磁界結合を実現することができる。
【0060】
次に、図14〜図18を参照して、本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置の第2の実施形態を説明する。
【0061】
図14は読込みプローブの表面の平面図、図15は読込みプローブの誘電体基板の第1層基板の表面の図、図16は第1層基板の裏面の表面側から見た透視図、図17は読込みプローブの誘電体基板の第2層基板の表面の図、図16は第2層基板の裏面の表面側から見た透視図を示している。
【0062】
本実施形態に係る読込みプローブ200の誘電体基板201は多層構造を有している。層数は任意であるが、この実施形態の説明では2層の例で説明する。すなわち、読込みプローブ200の誘電体基板201は2層構造を有し、上側の第1層基板201aと下側の第2基板201bとを備えている。
【0063】
図14は前述した図11と同様な図である。図14において、図11で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。図14で、103は第1の端子パターン、104は第2の端子パターン、105は同軸線路である。同軸線路105の中心導体105aはワイヤ106で端子パターン103に接続され、外部導体105bはワイヤ107で端子パターン104に接続されている。この構成は、前述した第1実施形態の場合と同じである。
【0064】
誘電体基板201は第1層基板201aと第2層基板201bとから構成される。図15〜図18に示されるように、第1層基板201aの表裏面の各々には電磁ループパターン202A,202Bが形成され、さらに第2層基板201bの表裏面の各々には電磁ループパターン202C,202Dが形成されている。4つの電磁ループパターン202A〜202Dは、一部を開いた円形リング形状であって、同心位置でかつ同径で作られている。電磁ループパターン202A〜202Dは、隣接するもの同士で以下のごとく電気的につながっており、4重のヘリカルの読込みプローブ200を形成する。
【0065】
図15に示されるように、誘電体基板200の第1層基板201aの表面には、電磁ループパターン202Aと端子パターン103,104とが形成される。また誘電体基板200には4つのスルーホール203a,203b,203c,203dが形成されている。円形リング形状の電磁ループパターン202Aの一端は端子パターン103に接続され、他端は第1のスルーホール203aに接続されている。第4のスルーホール203dは端子パターン104に接続されている。
【0066】
図16に示すごとく、第1層基板201aの裏面に形成された電磁ループパターン202Bの一端は第1のスルーホール203aに接続され、残りの一端は第2のスルーホール203bに接続されている。
【0067】
図17に示すごとく、第2層基板201bの表面に形成された電磁ループパターン202Cの一端は第2のスルーホール203bに接続され、残りの一端は第3のスルーホール203cに接続されている。さらに図18に示すごとく、第2層基板201bの裏面に形成された電磁ループパターン202Dの一端は第3のスルーホール203cに接続され、残りの一端は第4のスルーホール203dに接続されている。
【0068】
上記のごとく構成される4つの電磁ループパターン202A〜202Dは、4重のヘリカルの読込みプローブ200を形成する。同軸線路105の中心導体から供給された高周波電力は、電磁ループパターン202A,202B,202C,202Dの順序で伝送され、最後に第4のスルーホール202dおよび端子パターン104を経由して同軸線路105の外部導体に伝送される。こうして読込みプローブ200で強い高周波電磁界を生成することができる。
【0069】
次に図19を参照して、本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置の第3の実施形態を説明する。図19は読込みプローブの表面の平面図であり、図11と同様な図である。
【0070】
図19に示す本実施形態に係る読込みプローブ300は、第1実施形態に係る読み込みプローブ100の変形例である。従って図19において、第1実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
【0071】
読込みプローブ300の誘電体基板101の表面には電磁ループパターン102Aが形成されている。また誘電体基板101の裏面側には前述した通りの電磁ループパターン102Bが形成されている。さらに読込みプローブ300では、誘電体基板101の表面上に2つの第1の端子パターン103a,103bが形成されると共に、第2の端子パターン104はパターン形状を大型化しかつ線対称の形状で作られている。第2の端子パターン104は2ヶ所のスルーホール301,302を備えている。2つの第1の端子パターン103a,103bが形成されたのに伴って、電磁ループパターン103Aの一方の端子との間には送受切替スイッチ303が配置される。この送受切替スイッチ303によって、電磁ループパターン103Aの一方の端子は、2つの端子パターン103a,103bのうちのいずれかに接続されることになる。また誘電体基板101の裏面に形成された電磁ループパターン103bの出力側の端子パターン304は、上記の2ヶ所のスルーホール301,302を経由して第2の端子パターン104に接続されている。
【0072】
上記の構成を有する読込みプローブ300に対して、2本の同軸線路105−1,105−2が配置される。一方の同軸線路105−1の中心導体はワイヤ106で第1の端子パターン103aに接続され、かつその外部導体はワイヤ107で第2の端子パターン104に接続される。また他方の同軸線路105−2の中心導体はワイヤ106で他の第1の端子パターン103bに接続され、かつその外部導体はワイヤ107で第2の端子パターン104に接続される。同軸線路105−1は送信用の同軸線路であり、同軸線路105−2は受信用の同軸線路である。第2の端子パターン104は、2本の同軸線路105−1,105−2にとって共通の接地用端子パターンになっている。
【0073】
上記構成を有する読込みプローブ300によれば、送受切替スイッチ303により、端子パターン103aのいずれかを経由して送信用同軸線路105−1または受信用同軸線路105−2に接続することができる。送受切替スイッチ303は、半導体素子のスイッチング機能を利用して作られる。送受切替スイッチ303への切替えのための指令信号は外部回路から提供される。
【0074】
次に図20を参照して、本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置の第4の実施形態を説明する。図20は読込みプローブの表面の平面図であり、図19と同じ図である。なお図20において、前述した各実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。この実施形態に係る読込みプローブは、第3の実施形態に係る読込みプローブにおいて、電磁ループパターンの数を増した例である。
【0075】
上記の読込みプローブ100〜300では、読込みプローブの電磁ループパターンと磁界結合回路要素(RFパウダー粒子11)とが図9および図10に示すごとき所定の位置関係になったとき、両者の間で強い磁界結合を得ることができた。しかし、この条件を満たすためには、図10に示すごとく磁界結合回路要素(RFパウダー粒子11)の位置を正確に特定することが必要である。
【0076】
本実施形態に係る読込みプローブ400では、誘電体基板101の表面に、電磁ループパターン102A,102Bおよびこれに関連する第1の端子パターンと第2の端子パターンから成るユニット401を、例えば8個、アレイ状に配列させて設けるようにした。このような読込みプローブ400に対して2本の同軸線路105−1,105−2が配置される。
【0077】
誘電体基板101の表面に配列された8個の電磁ループパターン102Aのユニット401では、それぞれ送受切替スイッチ303が配置されている。また8個の電磁ループパターン102Aを設けたことに関連して、送信用の第1の端子パターン402および受信用の第1の端子パターン403と、第2の端子パターン404(端子パターン404a)とが、共通パターンとして誘電体基板101の表面上に形成されている。第1の端子パターン402は、図20中、誘電体基板101の表面でその中央部の横方向に形成されている。第2の端子パターン403は、図20中、誘電体基板101の表面でその上辺と下辺に沿って形成されている。第2の端子パターン404については、8個のユニット401の各々では、最終的に共通の端子パターン404につながる対応する第2の端子パターン404aを備えている。端子パターン404と9個の端子パターン404aとは誘電体基板101の裏面で接続されている。同軸線路については、送信用の同軸線路105−1と受信用の同軸線路105−2が配置されている。送信用同軸線路105−1の中心導体は端子パターン403に接続され、受信用同軸線路105−2の中心導体は端子パターン402に接続される。また2つの同軸線路105−1,105−2の各々の外部導体は、共通の第2の端子パターン404に接続される。
【0078】
上記の読込みプローブ400によれば、電磁ループパターン102A(102B)を、誘電体基板101の面上で多数配置されることにより、磁界結合回路要素(RFパウダー粒子11等)の位置を正確に特定することなく、磁界結合の作用を生じさせることができる。
【0079】
8個の電磁ループパターン102Aを備えた読込みプローブ400では、それぞれの送受切替スイッチ303は、磁界結合回路要素に高周波電磁界を与える場合には送信側に切り替えられ、また磁界結合回路要素からの高周波電磁界を受けるときには受信側に切り替えられるように使用される。読込みプローブ400に設けた8個の電磁ループパターン102Aを、以上のごとくいずれかに切り替えることにより、アレイ状に並べた電磁ループパターンのうちの1つの電磁ループパターンが発する高周波電磁界が他の電磁ループパターンに受信されるのを阻止することができる。
【0080】
図21は、本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置の第5の実施形態を説明する。図21は読込みプローブの表面の平面図であり、図20と同様な図である。本実施形態に係る読込みプローブは、第1および第4の実施形態の変形例である。この実施形態に係る読込みプローブ500では、誘電体基板101の表面上に6個の電磁ループパターン102Aが形成される。また誘電体基板101の裏面には、6個の電磁ループパターン102Aのそれぞれに対応して6個の電磁ループパターン102Bが形成されている。誘電体基板の表面において、列501に並ぶ3個の電磁ループパターン102Aに対して、列502に並ぶ電磁ループパターン102Aがそれらの間に位置するように交互に位置をずらせて配列させる。このように、本実施形態に係る読込みプローブ500によれば、誘電体基板の表面に配置される複数の電磁ループパターン102Aの間隔を狭くし、列501等の方向にて検査できない隙間を生じないようにすると共に、6個の電磁ループパターン105Aの各々に同軸線路105を設けるようにした点に特徴がある。図21において、第1および第4の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
上記の読込みプローブ500によれば、隣接する電磁ループパターンの間の間隔を十分に狭くすることができるので、磁界結合回路要素(RFパウダー粒子11等)との磁界結合を容易にかつ確実に作ることができる。
【0082】
次に、シート状のRFパウダー含有基体10を例えば1万円札とし、この1万円札から情報を読み取るリーダ(読取り装置)の他の実施形態を説明する。この実施形態に係るリーダに設けられる読込みプローブ(磁界結合装置)は伝送線路型プローブである。
【0083】
図22は1万円札の正面図を簡略して示す。1万円札601において、例えばその短辺に平行に一列に複数(例えば14個)のRFパウダー粒子(磁界結合回路要素)602を配置している。14個のRFパウダー粒子602は、例えば印刷インクに混入され、印刷によって1万円札601の表面に付加される。14個のRFパウダー粒子602は、4つのセクタ603A,603B,603C,603Dに散らばせて配置されている。14個のRFパウダー粒子602のそれぞれのタンク回路には10種の共振周波数のいずれか1つの周波数が設定されている。10種の共振周波数としては、例えば、1.0GHz、1.5GHz、2.0GHz、2.5GHz、3.0GHz、3.5GHz、4.0GHz、4.5GHz、5.0GHz、5.5GHzである。なお、セクタの数や形状は上記に限定されない。印刷インクで文字等が表示された領域であってもよい。
【0084】
上記の1万円札601の情報読取りの検査では、1万円札601に付加された複数のRFパウダー粒子602の各々の共振周波数の組合せに基づいて、当該1万円札601に係るID情報を取得する。
【0085】
図23は、1万円札601に付加された複数のRFパウダー粒子602の周波数情報を読取るリーダを示す。リーダ604は、誘電体基板による板状の形状を有し、その一方の表面に4つの伝送線路セクタモニタ605A,605B,605C,605Dが一列状に形成されている。4つの伝送線路セクタモニタ605A〜605Dは、それぞれ、1万円札601の上記の4つのセクタ603A〜603Dに対応している。各伝送線路セクタモニタ605A〜605Dは、伝送線路パターン606とその両側の接地パターン607とから形成される。リーダ604において、給電用電気回路等の図示は省略されている。各伝送線路セクタモニタ605A〜605Dは伝送線路パターン606に所定の高周波電流を供給されることにより、伝送線路パターン606の直線部の周りに磁界が作られる。この磁界は、リーダ604の表面の箇所では当該表面に対してほぼ直角になるように生成される。また4つの伝送線路セクタモニタ605A〜605Dのそれぞれの伝送線路パターン606に給電される高周波電流の周波数は、モニタしようとする紙幣に付加されたRFパウダー粒子11の共振周波数に配慮して適宜に切り替えられ、共振感応を生じさせるための高周波電磁界の周波数は切り替えられる。
【0086】
上記構成を有するリーダ604に対して、図23に示すごとくリーダ604の表面に平行になるようにかつ1万円札601を移動させる。リーダ604に設けられた4つの伝送線路セクタモニタ605A〜605Dの各々は、1万円札601における対応するセクタ603A〜603D内の14個のRFパウダー粒子602をモニタし、各RFパウダー粒子602のタンク回路に感応し、当該RFパウダー粒子の周波数情報を読み取る。
【0087】
上記のリーダ604によって読み取られる1万円札601の情報は、当該1万円札601に付加された14個のRFパウダー粒子602のそれぞれの共振周波数に係る周波数情報である。こうして読み取られた14個のRFパウダー粒子602の各周波数情報の組合せに基づいて符号化データを作成することができる。この符号化データに基づいて上記1万円札601を識別しモニタすることができる。
【0088】
上記のリーダ604は、誘電体基板の一方の面に伝送線路セクタモニタを設けるようにした片面のリーダである。このリーダ604について、図24に各種の変形例を示す。なお図24の(A)は上記のリーダ604を示している。図24において、(B)は、前述にしたリーダ604の基板裏面の全面に接地導体608を付設した構成を有する。この構成によれば、磁界結合が強化される。また(C)は上記リーダ604を2枚用意し、伝送線路セクタモニタが形成された面を対向させるようにして、2枚のリーダ604を隙間609をあけて対向させる構造を有している。上記の1万円札601は隙間609の箇所を通過させられる。この構成によれば、さらに磁界結合度が高くなる。(D)は、(C)に示した構成において、2枚のリーダ604の各基板裏面の全面に接地導体608を付設した構成を有している。
【0089】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る磁界結合回路要素の磁界結合装置等は、偽造紙幣等の防止に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】RFパウダー含有基体の断面斜視図である。
【図2】RFパウダー含有基体中に含まれる1つのRFパウダー粒子の一例を示す斜視図である。
【図3】RFパウダー粒子の平面図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】図3におけるB−B線断面図である。
【図6】RFパウダー含有基体を検査するための装置構成を示す構成図である。
【図7】リーダがRFパウダー含有基体を検査するときの高周波電磁界による磁界結合の状態を示す側面図である。
【図8】1つのRFパウダー粒子の存在場所でのリーダとの高周波電磁界の送受関係を示す図である。
【図9】本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置(リーダ)の第1の実施形態を示し、読込みプローブの斜視図である。
【図10】第1実施形態に係る読込みプローブの要部の縦断面図である。
【図11】第1実施形態に係る読込みプローブの表面の平面図である。
【図12】第1実施形態に係る読込みプローブの誘電体基板の表面を示す拡大図である。
【図13】第1実施形態に係る読込みプローブの誘電体基板の裏面について表側が見た拡大透視図である。
【図14】本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置(リーダ)の第2の実施形態を示し、読込みプローブの平面図である。
【図15】第2実施形態に係る読込みプローブの第1層基板の表面の平面図である。
【図16】第2実施形態に係る読込みプローブの第1層基板の裏面についての表側から見た透視図である。
【図17】第2実施形態に係る読込みプローブの第2層基板の表面の平面図である。
【図18】第2実施形態に係る読込みプローブの第2層基板の裏面についての表側から見た透視図である。
【図19】本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置(リーダ)の第3の実施形態を示し、読込みプローブの平面図である。
【図20】本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置(リーダ)の第4の実施形態を示し、読込みプローブの平面図である。
【図21】本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置(リーダ)の第5の実施形態を示し、読込みプローブの平面図である。
【図22】複数個のRFパウダー粒子を付加した1万円札の正面図である。
【図23】本発明に係る磁界結合装置(読込みプローブ)と読取り装置(リーダ)の他の実施形態を示し、リーダの斜視図である。
【図24】他の実施形態に係るリーダの変形例を示す図である。
【図25】従来の非接触ICカードの読取り装置の例を示す斜視図である。
【図26】従来の非接触ICカードの構成を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
10 RFパウダー含有基体(紙幣等)
11,12,13 RFパウダー粒子
21 RFパウダー粒子
22 基板
23 絶縁層
24 コイル
25 コンデンサ(キャパシタ)
27 絶縁膜
31 タンク回路
62 リーダ
63 読込みプローブ
100 読込みプローブ
101 誘電体基板
102A,102B 電磁ループパターン
105 同軸線路
200〜500 読込みプローブ
602 RFパウダー粒子
603A〜603D セクタ
604 リーダ
605a〜605D 伝送線路セクタモニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク回路と共振させるための高周波電磁界を生成させるループアンテナを備えた磁界結合装置であって、
前記ループアンテナは、
誘電体基板と、
前記誘電体基板の表面に形成された第1ループアンテナと、
前記誘電体基板の裏面で前記第1ループアンテナと同じ位置に形成されかつ前記第1ループアンテナと同じ径を有する第2ループアンテナと、
前記第1ループアンテナと前記第2ループアンテナを直列的に接続する接続部と、から成る、
ことを特徴とする磁界結合装置。
【請求項2】
前記誘電体基板の前記表面に、給電線路の信号線導体が接続される第1の端子パターンと、前記給電線路の接地導体が接続される第2の端子パターンとが形成され、
さらに、前記第1の端子パターンは前記第1ループアンテナの入力端に接続され、前記第2の端子パターンはスルーホールを介して前記第2ループアンテナの出力端に接続される、
ことを特徴とする請求項1記載の磁界結合装置。
【請求項3】
前記第1ループアンテナと前記第2ループアンテナはヘリカル構造を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁界結合装置。
【請求項4】
前記第1ループアンテナと前記第2ループアンテナから成るアンテナユニットを、前記誘電体基板の前記表面上で複数配列したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁界結合装置。
【請求項5】
複数の前記アンテナユニットは、前記誘電体基板の前記表面上で、列方向における各アンテナユニットによるモニタ領域が隙間なく設定されるように配列されていることを特徴とする請求項4記載の磁界結合装置。
【請求項6】
前記第1ループアンテナおよび前記第2ループアンテナの径は、前記タンク回路の磁界結合コイルの径とほぼ同一であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁界結合装置。
【請求項7】
タンク回路と共振させるための高周波電磁界を生成させるループアンテナを備えた磁界結合装置であって、
前記ループアンテナは、
第1層基板と第2層基板を有する2層構造の誘電体基板と、
第1層基板の表面に形成された第1ループアンテナと、
前記第1層基板の裏面に形成された第2ループアンテナと、
前記第2層基板の表面に形成された第3ループアンテナと、
前記第2層基板の裏面に形成された第4ループアンテナと、
第1から第4の4つの前記ループアンテナを直列的に接続する接続部と、から成り、
第1から第4の4つの前記ループアンテナは重なるように同じ位置に配置され、かつ同じ径を有する、
ことを特徴とする磁界結合装置。
【請求項8】
前記誘電体基板の前記第1層基板の前記表面に、給電線路の信号線導体が接続される第1の端子パターンと、前記給電線路の接地導体が接続される第2の端子パターンとが形成され、
さらに、前記第1の端子パターンは前記第1ループアンテナの入力端に接続され、前記第2の端子パターンはスルーホールを介して前記第4ループアンテナの出力端に接続される、
ことを特徴とする請求項7記載の磁界結合装置。
【請求項9】
第1から第4の4つの前記ループアンテナはヘリカル構造を有することを特徴とする請求項7または8記載の磁界結合装置。
【請求項10】
前記誘電体基板の前記表面に、送信用給電線路の信号線導体が接続される送信用第1の端子パターンと、受信用給電線路の信号線導体が接続される受信用第1の端子パターンと、前記送信用給電線路の接地導体および前記受信用給電線路の接地導体が接続される第2の端子パターンとが形成され、
さらに、前記送信用第1の端子パターンおよび前記受信用第1の端子パターンのいずれかは切替えスイッチを介して前記第1ループアンテナの入力端に接続され、前記第2の端子パターンはスルーホールを介して前記第2ループアンテナの出力端に接続される、
ことを特徴とする請求項1記載の磁界結合装置。
【請求項11】
複数のセクタが設定されかつ前記セクタごとに複数の磁界結合回路要素が付加されたシート状部材に対して、前記複数の磁界結合回路要素の各々に設けられた各タンク回路に共振感応するための高周波電磁界を生成する手段を備えた磁界結合装置であって、
平板状の誘電体基板の表面に列状に配列された複数の伝送線路セクタモニタを有し、
前記複数の伝送線路セクタモニタの各々は、前記誘電体基板の表面に形成された伝送線路パターンと接地パターンを備える、
ことを特徴とする磁界結合装置。
【請求項12】
前記シート状部材は紙幣であることを特徴とする請求項11記載の磁界結合装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載された磁界結合装置を読込みプローブとして備え、前記読込みプローブによる共振作用に基づいて、磁界結合回路要素を付加されたモニタ対象物から周波数情報を読み取ることを特徴とする読取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−136019(P2008−136019A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321096(P2006−321096)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(305054854)株式会社フィルテック (45)
【Fターム(参考)】