磁粉濃度測定装置及び磁粉濃度測定方法
【課題】蛍光磁粉液の磁粉濃度を、瞬時に定量的に確認することができると共に評価することができるようにする。
【解決手段】蛍光磁粉液の蛍光磁粉が磁極により付着する疑似欠陥部4aを一面に有する標準試験体2と、を備える。更に、蛍光磁粉が付着した標準試験体2に紫外線光を照射し、蛍光磁粉を発光させる紫外線照射部5と、標準試験体2を撮影し、画像信号を得る撮像装置6と、を備える。そして、この画像信号から発光した蛍光磁粉の輝度値を演算すると共に前記輝度値を磁粉濃度に変換する処理部7bと、を備える。これにより、蛍光磁粉液の磁粉濃度を、瞬時に定量的に確認することができると共に検査する人によって差が生じることがなく、正確な蛍光磁粉の濃度を測定することができる。
【解決手段】蛍光磁粉液の蛍光磁粉が磁極により付着する疑似欠陥部4aを一面に有する標準試験体2と、を備える。更に、蛍光磁粉が付着した標準試験体2に紫外線光を照射し、蛍光磁粉を発光させる紫外線照射部5と、標準試験体2を撮影し、画像信号を得る撮像装置6と、を備える。そして、この画像信号から発光した蛍光磁粉の輝度値を演算すると共に前記輝度値を磁粉濃度に変換する処理部7bと、を備える。これにより、蛍光磁粉液の磁粉濃度を、瞬時に定量的に確認することができると共に検査する人によって差が生じることがなく、正確な蛍光磁粉の濃度を測定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼材、鉄鋼部品等の被検査物の欠陥を磁粉探傷するための蛍光磁粉液中に分散する蛍光磁粉の濃度を測定するようにした磁粉濃度測定装置及び磁粉濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、鉄鋼材、鉄鋼部品等の被検査物の傷等の欠陥を検査するために、湿式蛍光磁粉探傷試験法が使用されている。
【0003】
湿式蛍光磁粉探傷試験法は、被検査物を磁化し、欠陥部に生じた磁極によって、磁粉が欠陥部に付着することを利用して、欠陥部を検出する探傷試験法である。
【0004】
この湿式蛍光磁粉探傷試験法は、次のようにして被検査物の欠陥部を検出する。まず、鉄鋼材、鉄鋼部品等の被検査物を磁化する。すると、被検査物の欠陥部は、漏洩磁束が発生して、磁極を有する。次に、この磁化された被検査物に蛍光磁粉液を散布する。これにより、蛍光磁粉液中に分散する蛍光磁粉は、磁極によって被検査物の欠陥部に付着する。そして、暗室内で、蛍光磁粉液を散布した被検査物に、紫外線光を照射して、蛍光磁粉を発光させる。その結果、欠陥部に付着した蛍光磁粉が発光することにより被検査物の欠陥部を目視で検出することができる。この湿式蛍光磁粉探傷試験法は、蛍光輝度が高いため微細な欠陥でも容易に発見できるという効果を有している。
【0005】
この蛍光磁粉液は、2〜10μm程度の蛍光磁粉(蛍光体が付着された鉄粉)と、水又は白灯油と、所定量の分散剤とからなるものである。
【0006】
また、蛍光磁粉液における蛍光磁粉の分散濃度(磁粉濃度)は、被検査物の欠陥部における蛍光輝度の目視検出の正確性、即ち、被検査物から得られる蛍光輝度模様及びそれから得られる情報を左右する大きな要素である。
【0007】
従来の磁粉液(蛍光磁粉液)の磁粉濃度測定方法としては、次のような方法がある。この従来の磁粉濃度測定方法は、まず、磁粉を分散した磁粉液をよく撹拌する。次に、この磁粉液の規定量(100ml)を沈殿管に採取し、この沈殿管をスタンドに立てかける。そして、30分間経過後、この沈殿管の底部に沈殿した磁粉の量を目視で測定する。
【0008】
また、磁粉液の磁粉濃度測定方法の他の例としては、特許文献1に記載されているようなものがある。この特許文献1に記載されている磁粉濃度の測定方法は、次のようにして行われる。まず、予め標準試験片に、磁粉濃度が既知である数種の磁粉液を適用して、数種の比較用の磁粉模様を形成させる。次に、この標準試験片に、測定する磁粉液、即ち、磁粉濃度が未知である磁粉液を適用して、測定用の磁粉模様を形成させる。そして、数種の比較用の磁粉模様と測定用の磁粉模様を目視で比較して、磁粉濃度が未知である磁粉液の磁粉濃度を測定する。
【0009】
【特許文献1】特開平7−113787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の磁粉濃度測定方法では、蛍光磁粉の粒径が2〜10μm程度の場合、蛍光磁粉液を注入した沈殿管をスタンドに立てかけて30分間経過しても、蛍光磁粉が軽いため、分散させた蛍光磁粉の一部しか沈殿管の底部に沈殿しなかった。そのため、従来の磁粉濃度測定方法では、蛍光磁粉量を正確に測定することができない、という問題があった。更に、磁粉濃度の測定に時間がかかりすぎる、という不都合があった。
【0011】
また、特許文献1に開示された方法は、目視による測定であるため、検査する人によって差が生じていた。その結果、特許文献1に開示された磁粉濃度測定方法では、正確な磁粉濃度の測定は困難であった。
【0012】
本発明は、上述の問題点を考慮し、蛍光磁粉液の磁粉濃度を、瞬時に定量的に確認できると共に評価することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の磁粉濃度測定装置は、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が磁極により付着する疑似欠陥部を一面に有する標準試験体を備えた。更に、蛍光磁粉が付着した標準試験体に紫外線光を照射し、蛍光磁粉を発光させる紫外線照射部と、紫外線が照射された標準試験体を撮影し、画像信号を得る撮像装置と、を備えた。そして、この画像信号から発光した蛍光磁粉の輝度値を演算すると共に輝度値を磁粉濃度に変換する処理部と、を備えた。
【0014】
また、本発明の磁粉濃度測定方法は、標準試験体の一面に設けた疑似欠陥部に蛍光磁粉液の蛍光磁粉を磁極により付着させる工程と、を有する。次に、蛍光磁粉が付着した標準試験体に紫外線光を照射し、蛍光磁粉を発光させる工程と、紫外線光が照射された標準試験体を撮影し、画像信号を得る工程と、を有する。そして、この画像信号から発光した蛍光磁粉の輝度値を演算すると共に演算した輝度値を磁粉濃度に変換する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蛍光磁粉液の蛍光磁粉を発光させて、画像信号を得ると共にこの画像信号から輝度値を演算している。そして、この輝度値を磁粉濃度に変換することにより、蛍光磁粉液の磁粉濃度を、瞬時に定量的に確認することができる。更に、検査する人によって差が生じることがなく、正確な蛍光磁粉の濃度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の磁粉濃度測定装置及び磁粉濃度測定方法を実施するための実施形態の例(以下、「本例」という。)について説明する。
【0017】
1.磁粉濃度測定装置の構成
まず、図1〜図3を参照して本例における磁粉濃度測定装置について説明する。図1は、本例における磁粉濃度測定装置の構成を示すものである。図2は、本発明の磁粉濃度測定装置に係る標準試験体の第1の実施の形態例を示す斜視図である。図3は、本例における磁粉濃度測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【0018】
この図1に示すように、磁粉濃度測定装置100は、暗室1内の所定の位置に配置された標準試験体2と、紫外線照射部であるブラックライト5と、CCDカメラ6と、測定部の一具体例を示すパーソナルコンピュータ7と、メモリ8とから構成されている。
【0019】
[標準試験体]
図2に示すように、標準試験体2は、略円筒形の外筐2aと、磁石3と、略円形状の鉄板4とを有している。外筐2aは、略円筒形に形成されており、軸方向の一端が開放され、軸方向の他端が閉じている。この外筐2aは、例えば合成樹脂によって形成される。そして、この外筐2aの内部に磁石3が収納されている。更に、外筐2aの開口部を閉じるように、略円形状の鉄板4が取り付けられている。この鉄板4の一面には、例えば円形状に形成された疑似欠陥部4aが配設されている。疑似欠陥部4aには、グラインダがけや応力腐食によって意図的に欠陥部が形成されている。そして、この疑似欠陥部4aは、外筐2a内に収納された磁石3によって磁化されている。
【0020】
なお、本例では、標準試験体2の形状を略円柱状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、標準試験体2を角柱状に形成し、鉄板4を略四角形状に形成してもよい。
【0021】
[紫外線照射部及び撮像装置]
また、図1に示すように、暗室1内において、標準試験体2の上方には、本発明の紫外線照射部を示すブラックライト5と本発明の撮像装置の一具体例を示すCCDカメラ6が設けられている。ブラックライト5は、暗室1内で標準試験体2に設けた鉄板4の一面(疑似欠陥部4a)に紫外線光を照射するものである。また、CCDカメラ6は、ブラックライト5によって紫外線光が照射された疑似欠陥部4aを撮影し、画像信号を得るものである。そして、CCDカメラ6は、パーソナルコンピュータ7に接続されており、撮影した画像信号をパーソナルコンピュータ7に供給している。なお、撮像装置には、CCDカメラだけでなく、COMSカメラ等を適用してもよいことは、言うまでもない。
【0022】
[測定部]
図3に示すように、パーソナルコンピュータ7は、表示部7aと、処理部7bとを有している。処理部7bは、輝度値演算部71と、磁粉濃度変換部72等から構成されている。輝度値演算部71は、CCDカメラ6で撮影した画像信号から輝度値を演算する処理を行う。そして、この輝度値演算部71は、磁粉濃度変換部72に接続されている。磁粉濃度変換部72は、輝度値演算部71で演算した輝度値から磁粉濃度を変換する処理を行う。そして、輝度値演算部71及び磁粉濃度変換部72は、表示部7aに接続されている。
【0023】
表示部7aには、CCDカメラ6で撮影した標準試験体2の画像、輝度値演算部71で演算された輝度値及び磁粉濃度変換部72で変換された磁粉濃度等が表示される。更に、このパーソナルコンピュータ7は、本発明の記憶部の一具体例を示すメモリ8と送受信可能に接続されている。また、パーソナルコンピュータ7は、キーボードやマウス等の入力部を有している。そして、この入力部から、蛍光磁粉の種類、標準試験体の種類や後述する輝度値−磁粉濃度変換データ81を作成するための既知の蛍光磁粉の濃度等のデータが入力される。
【0024】
[記憶部]
メモリ8には、磁粉濃度と輝度値との関係を示す輝度値−磁粉濃度変換データ81が記憶されている。そして、このメモリ8に記憶されている輝度値−磁粉濃度変換データ81に基づいて、パーソナルコンピュータ7の磁粉濃度変換部72が、輝度値を磁粉濃度に変換することで、蛍光磁粉液の磁粉濃度が測定される。
【0025】
なお、パーソナルコンピュータ7とメモリ8は、例えば、公衆通信回線、専用回線、インターネット等のネットワークを介して接続してもよい。
【0026】
2.輝度値−磁粉濃度変換データの作成方法
次に、メモリ8に格納された輝度値−磁粉濃度変換データの作成方法について説明する。なお、ここでは、蛍光磁粉としてマーテック(株)製のLY−10を用いた例を説明する。このLY−10は、粒度が3〜7μmであり、水分散専用のものである。
まず、濃度の異なる既知の磁粉濃度の蛍光磁粉液10aを複数用意する。本例では、磁粉濃度が0.1g/l、0.2g/l、0.3g/l、0.4g/l、0.5g/l、1g/l、1.5g/lの蛍光磁粉液を用意する。
【0027】
図4は、標準試験体を蛍光磁粉液に浸漬させた状態を示す図である。次に、この図4に示すように、これらの蛍光磁粉液10aを、それぞれ磁粉液槽10に注入する。そして、蛍光磁粉液10aが注入された磁粉液槽10内に、標準試験体2を一定時間浸漬する。ここで、標準試験体2に設けた疑似欠陥部4aは、磁石3により磁化されている。そのため、疑似欠陥部4aには、磁極が生じている。これにより、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が、標準試験体2の疑似欠陥部4aに生じた磁極によって、疑似欠陥部4aに付着する。なお、蛍光磁粉液を標準試験体2の鉄板4の一面に塗布することで、蛍光磁粉液の蛍光磁粉を疑似欠陥部4aに付着させてもよい。
【0028】
次に、図1に示すように、蛍光磁粉が付着した標準試験体2を暗室1内の所定の位置に配置する。そして、ブラックライト5を用いて標準試験体2の疑似欠陥部4aに紫外線光を照射する。これにより、疑似欠陥部4aに付着した蛍光磁粉が発光する。次に、紫外線光が照射された疑似欠陥部4aをCCDカメラ6で撮影する。そして、CCDカメラ6で撮影した画像信号をパーソナルコンピュータ7に供給する。
【0029】
次に、パーソナルコンピュータ7の処理部7bは、輝度値演算部71によって画像信号から輝度値を得る。即ち、輝度値演算部71は、まず疑似欠陥部4aに付着して発光している蛍光磁粉における各場所の明暗(輝度値)を測定して実測輝度値を得る。そして、この実測輝度値から平均輝度値を演算し、この平均輝度値を輝度値とする。本例では、蛍光磁粉液の磁粉濃度毎に、0.1g/lでは「12」、0.2g/lでは「18」、0.3g/lでは「23」、0.4g/lでは「28」、0.5g/l「35」、1g/l「47」、1.5g/lでは「47」という輝度値を得る。
【0030】
そして、図5は、上述した方法で得られた輝度値と磁粉濃度との関係を示すグラフである。この図5に示すように、蛍光磁粉液の磁粉濃度が高くなる程、疑似欠陥部4aに付着する蛍光磁粉の量が多くなり、輝度値(発光輝度値)が高くなることが分かる。
【0031】
これにより、磁粉濃度と輝度値との関係を示す輝度値−磁粉濃度変換データ81を作成することができる。そして、図3に示すように、輝度値演算部71で演算された輝度値は、図示しない入力部から入力された既知の磁粉濃度と共に輝度値−磁粉濃度変換データ81としてメモリ8に記憶される。
【0032】
3.磁粉濃度測定方法
次に、図1、図3及び図6を参照して未知の蛍光磁粉液の磁粉濃度の測定方法について説明する。図6は、磁粉濃度の測定方法を示すフローチャートである。なお、ここで測定する蛍光磁粉液の蛍光磁粉は、上述した輝度値−磁粉濃度変換データ81を作成する際に用いた蛍光磁粉と同一のLY−10を用いている。
【0033】
まず、図4に示すように、磁粉濃度が未知の蛍光磁粉液を磁粉液槽10に注入する。次に、蛍光磁粉液が注入された磁粉液槽10内に標準試験体2を一定時間浸漬する。この結果、上述した輝度値−磁粉濃度変換データの作成方法の場合と同様に、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が、標準試験体2の疑似欠陥部4aに生じた磁極によって、疑似欠陥部4aに付着する(ステップS1)。なお、なお、蛍光磁粉液を標準試験体2の疑似欠陥部4aに塗布することで、蛍光磁粉液の蛍光磁粉を疑似欠陥部4aに付着させてもよい。
【0034】
次に、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が付着した標準試験体2を暗室1内における所定の位置に配置する。そして、標準試験体2にブラックライト5を用いて紫外線光を照射する(ステップS2)。すると、疑似欠陥部4aに付着した蛍光磁粉が発光する。ここで、ブラックライト5の紫外線照射強度が変化すると、蛍光磁粉の発光の明るさである輝度値も変化する。そのため、ブラックライト5の照射強度を、上述した輝度値−磁粉濃度変換データ81を作成する際の照射強度と一定にすることが好ましい。次に、紫外線光が照射された疑似欠陥部4aをCCDカメラ6で撮影する(ステップS3)。そして、CCDカメラ6で撮影した画像信号は、パーソナルコンピュータ7に供給される。
【0035】
次に、パーソナルコンピュータ7の処理部7bは、輝度値演算部71によって画像信号から輝度値を演算する(ステップS4)。そして、パーソナルコンピュータ7の処理部7bは、磁粉濃度変換部72により、得られた輝度値を磁粉濃度に変換する(ステップS5)。即ち、処理部7bは、メモリ8に記憶された輝度値−磁粉濃度変換データ81を呼び出す。そして、処理部7bは、磁粉濃度変換部72により、輝度値を輝度値−磁粉濃度変換データ81と照合して、蛍光磁粉液の磁粉濃度に変換する。これにより、磁粉濃度が未知である蛍光磁粉液の磁粉濃度の測定が完了する。
【0036】
また、図7は、表示部7aに表示される画面の例を示すものである。この図7に示すように、パーソナルコンピュータ7の表示部7aには、CCDカメラ6で撮影した標準試験体2の画像73、輝度値演算部71で演算された輝度値及び磁粉濃度変換部72で変換された磁粉濃度74等が表示される。
【0037】
これにより、本発明の磁粉濃度測定方法によれば、輝度値−濃度変換データと照合することで、蛍光磁粉液の濃度を輝度値から、定量的に測定することができる。そのため、検査する人によって差が生じることがなく、正確で且つ瞬時に磁粉濃度を測定することができる。
【0038】
図8は、種類の異なる複数の蛍光磁粉における輝度値と磁粉濃度との関係を示すグラフである。
図8に示す曲線bは、蛍光磁粉にマーテック(株)製のLY−20Pを用いた場合を示す輝度値と磁粉濃度の関係を示すグラフである。このLY−20Pは、粒度が3〜7μmであり、高輝度の水分散専用である。図8に示す曲線cは、蛍光磁粉にマーテック(株)製のLY−50を用いた場合を示す輝度値と磁粉濃度の関係を示すグラフである。このLY−50は、粒度がLY−20Pと同様に3〜7μmであり、一般用汎用品の油分散専用である。
【0039】
また、図8に示す曲線dは、蛍光磁粉にマーテック(株)製のLY−30を用いた場合を示す輝度値と磁粉濃度の関係を示すグラフである。このLY−30は、粒度が1〜4μmであり、超精密検査用である。なお、図8に示す曲線aは、図5に示すグラフと同一のものであり、蛍光磁粉としてマーテック(株)製のLY−10を用いた場合を示すものである。
【0040】
図8に示す複数の蛍光磁粉における輝度値と磁粉濃度の関係を示すデータは、輝度値−磁粉濃度変換データ81としてメモリ8に記憶される。このように、複数の異なる蛍光磁粉の輝度値−磁粉濃度変換データ81をそれぞれメモリ8に記憶する。この場合、磁粉濃度を測定する前に、測定する蛍光磁粉の種類を入力部でパーソナルコンピュータ7に入力する。そして、処理部7bは、メモリ8から入力された蛍光磁粉と同一の蛍光磁粉の輝度値−磁粉濃度変換データを呼び出し、輝度値を磁粉濃度に変換する。その結果、一種類の蛍光磁粉だけでなく、複数の異なる種類の蛍光磁粉液の磁粉濃度を測定することができる。
【0041】
4.第2の実施の形態例
図9及び図10は、標準試験体の第2の実施の形態例を示すものである。図9は、標準試験体の第2の実施の形態例を示す斜視図、図10は、標準試験体の第2の実施の形態例を示す平面図である。
【0042】
この図9及び図10に示す標準試験体は、JIS規格で定められたものであり、具体的には、JIS Z 2320−2で定められたタイプ1の試験体である。図9及び図10に示すように、標準試験体20は、略円盤状に形成されており、略中央に貫通孔21を有している。標準試験体20は、疑似欠陥部である一面に2種類の割れを有している。そして、欠陥部として作用する2種類の割れ24a,24bのうち比較的粗い割れ24aは、グラインダがけにより形成されている。また、2種類の割れ24a,24bのうち微細な割れ24bは、応力腐食によって形成されている。この2種類の割れ24a,24bが設けられた標準試験体20の一面に、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が付着する。
【0043】
また、標準試験体20は、電流貫通法によって永久的に磁化されている。これにより、磁石を別途用意する手間が省けるため、上述した第1の実施の形態例に係る標準試験体2に比べて部品点数を削減することができる。
【0044】
なお、標準試験体20は、例えば、次のようにして形成される。まず、鋼(等級 90MnCrV8)を用いて、表面が9.80mm±0.05mmになるまで平らにグラインダをかける。そして、グラインダをかけた鋼を、860℃±10℃で2時間保持した後、由中で焼き入れを行い、表面硬さが63〜70HRCになるようにする。更に、焼き入れ処理を行った鋼の表面を、例えば、速度35m/sで、且つ表面当たり0.05mmの削り代で、20mmを目標にしてグラインダをかける。そして、黒色酸化を145℃〜150℃で1.5時間処理を行う。更に、電流貫通法によってDC10000A(波高値)で磁化する。これにより、標準試験体20の製造が完成される。
【0045】
また、輝度値−磁粉濃度変換データの作成方法及び蛍光磁粉液の濃度の測定方法は、上述した第1の実施の形態例に係る標準試験体2と同様であるため、その説明は省略する。更に、このような、構成を有する標準試験体20を用いても、前述した第1の実施の形態例にかかる標準試験体2を用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
図11は、第2の標準試験体に付着した磁粉濃度が発光した状態を撮像装置で撮影した画像を示す図である。図11Aは、磁粉濃度が0.1g/l、図11Bは磁粉濃度が0.3g/l、図11Cは磁粉濃度が0.5g/l、図11Dは磁粉濃度が1g/l、図11Eは磁粉濃度が1.5g/lにおける蛍光磁粉液が発光した状態をCCDカメラ6で撮影した画像である。この図11A〜図11Eに示すように、蛍光磁粉の濃度が濃くなるほど、標準試験体20の欠陥部の明るさが明るくなることがわかる。
【0047】
5.第3の実施の形態例
次に、図12〜図14を参照して第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いた場合を説明する。
図12は、標準試験体の第3の実施の形態例を示すものである。また、図13は、第3の標準試験体に付着した蛍光磁粉が発光した状態を撮像装置で撮影した画像を示す図である。図14は、第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いたい場合における磁粉濃度測定装置の概略構成を示すブロック図である。図15は、第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いたい場合における磁粉濃度の測定方法を示すフローチャートである。
【0048】
この図12に示す第3の標準試験体30は、上述した第2の実施の形態例に係る標準試験体20と同様にJIS規格で定められたものであり、具体的には、JIS Z 2320−2で定められたタイプ2の試験体である。第3の標準試験体30は、略直方体状に形成されている。この第3の標準試験体30の長手方向の両端には、磁石33がそれぞれ設けられている。そして、第3の標準試験体30の疑似欠陥部として作用する一面には、欠陥部であるギャップ34と、目盛35が設けられている。
【0049】
ギャップ34は、第3の標準試験体30の一面の長手方向に沿って一直線状に形成された溝である。このギャップ34は、第3の標準試験体30の一面における2つの磁石33,33で挟んだ間に設けられている。そして、このギャップ34に、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が、ギャップ34の両端から付着し始め、中心に向かって蛍光磁粉の付着の量が減少する。
【0050】
ここで、図13Aは、磁粉濃度が0.1g/l、図13Bは磁粉濃度が0.3g/l、図13Cは磁粉濃度が0.5g/l、図13Dは磁粉濃度が1g/l、図13Eは磁粉濃度が1.5g/lにおける蛍光磁粉液が発光した状態をCCDカメラ6で撮影した画像である。この図13に示すように、蛍光磁粉の濃度が濃くなるほど、ギャップ34に付着した蛍光磁粉の長さが長くなることがわかる。
【0051】
図14に示すように、第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いたい場合におけるパーソナルコンピュータ7Aの処理部7bAは、輝度値演算部71Aと、長さ測定部75Aと、磁粉濃度変換部72Aを有している。長さ測定部75Aは、輝度値演算部71Aで演算された輝度値に基づいてギャップ34に付着した蛍光磁粉の長さを測定する処理を行う。具体的には、予め輝度値(明暗)に閾値を設定し、この閾値よりも連続して明るいところを検出する。そして、ギャップ34の一端から蛍光磁粉が途切れたところ(閾値よりも暗いところ)までの長さを測定する。磁粉濃度変換部72Aは、長さ測定部75Aで側愛知した長さから磁粉濃度を変換する処理を行う。
【0052】
また、メモリ8Aには、磁粉濃度と長さの関係を示す長さ−磁粉濃度変換データ81Aが記憶されている。そして、このメモリ8Aに記憶されている長さ−磁粉濃度変換データ81Aに基づいて、パーソナルコンピュータ7Aの磁粉濃度変換部72Aが、長さを磁粉濃度に変換することで、蛍光磁粉液の磁粉濃度が測定される。
【0053】
次に、図14及び図15を参照して、この第3の標準試験体30を用いたい場合における磁粉濃度の測定方法を説明する。
【0054】
まず、標準試験体30の一面に蛍光磁粉液を塗布し、ギャップ(疑似欠陥部)34に蛍光磁粉を付着させる(ステップS1A)。このとき、標準試験体30の目盛35が設けられている面が垂直になるように、標準試験体30を水平面から所定の角度(例えば、約45度)の方向に傾斜して設置する。そして、傾斜した状態で、標準試験体30に蛍光磁粉液を塗布する。これにより、余分な蛍光磁粉液は、標準試験体30の一面から流れ落ちる。
【0055】
ここで、標準試験体30の傾斜角度は、長さ−磁粉濃度変換データ81Aを作成する時と同一の角度に設定する。なお、上述した第1及び第2の標準試験体2,20においても、余分な蛍光磁粉液を取り除くために、標準試験体の一面を水平面に対して傾斜して配置してもよいことは、言うまでもない。
【0056】
次に、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が付着した標準試験体30を暗室1内における所定の位置に配置する。そして、標準試験体30にブラックライト5を用いて紫外線光を照射する(ステップS2A)。すると、ギャップ34に付着した蛍光磁粉が発光する。次に、紫外線光が照射されたギャップ34をCCDカメラ6で撮影する(ステップS3A)。そして、CCDカメラ6で撮影した画像信号は、パーソナルコンピュータ7Aに供給される。
【0057】
次に、パーソナルコンピュータ7Aの処理部7bAは、輝度値演算部71Aによって画像信号から輝度値を演算する(ステップS4A)。そして、パーソナルコンピュータ7の処理部7bは、長さ測定部75Aにより、輝度値から蛍光磁粉の長さを測定する(ステップS5A)。
【0058】
次に、パーソナルコンピュータ7Aの処理部7bAは、磁粉濃度変換部72Aにより、測定した長さを磁粉濃度に変換する(ステップS6A)。即ち、処理部7bAは、メモリ8Aに記憶された長さ−磁粉濃度変換データ81Aを呼び出す。そして、処理部7bAは、磁粉濃度変換部72Aにより、長さを長さ−磁粉濃度変換データ81Aと照合して、蛍光磁粉液の磁粉濃度に変換する。これにより、磁粉濃度が未知である蛍光磁粉液の磁粉濃度の測定が完了する。
【0059】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる標準試験体2を用いた場合と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する標準試験体30を用いた場合によっても、前述した第1の実施の形態例にかかる標準試験体30を用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
本発明の磁粉濃度測定装置及び磁粉濃度測定方法によれば、予め輝度値又は試験体に付着した蛍光磁粉の長さと磁粉濃度との関係を示すデータを測定することで、磁粉濃度を輝度値から定量的に測定することができる。これにより、検査する人によって差が生じることがなく、正確で且つ素早く磁粉濃度を測定することが可能である。
【0061】
なお、本発明は前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0062】
なお、上述した実施の形態例では、紫外線照射部であるブラックライトの紫外線照射強度を一定に管理する例を説明した。しかしながら、ブラックライトは、使用を続けることで、紫外線照射強度が劣化する。そのため、ブラックライトが劣化した場合は、紫外線照射強度を一定に保つために、光源を交換できるようにしてもよい。また、磁粉濃度の測定の前にブラックライトの紫外線照射強度を測定する。そして、処理部において、紫外線照射強度の劣化に応じて蛍光磁粉の輝度値を演算するようにしてもよい、ことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態例に係る磁粉濃度測定装置の構成を示すものである。
【図2】本発明の磁粉濃度測定装置に係る標準試験体の第1の実施の形態例を示す斜視図である。
【図3】本発明の磁粉濃度測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】標準試験体を蛍光磁粉液に浸漬させた状態を示す図である。
【図5】輝度値と磁粉濃度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の磁粉濃度測定方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の磁粉濃度測定装置に係る測定部における表示部に表示される画面の一具体例を示すものである。
【図8】種類の異なる複数の蛍光磁粉における輝度値と磁粉濃度との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の磁粉濃度測定装置に係る標準試験体の第2の実施の形態例を示す斜視図である。
【図10】本発明の磁粉濃度測定装置に係る標準試験体の第2の実施の形態例を示す平面図である。
【図11】第2の標準試験体に付着した蛍光磁粉が発光した状態を撮像装置で撮影した画像を示す図である。
【図12】本発明の磁粉濃度測定装置に係る標準試験体の第3の実施の形態例を示す斜視図である。
【図13】第2の標準試験体に付着した蛍光磁粉が発光した状態を撮像装置で撮影した画像を示す図である。
【図14】第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いたい場合における磁粉濃度測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図15】第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いたい場合における磁粉濃度の測定方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1…暗室、 2,20,30…標準試験体、 3,33…磁石、 4a…疑似欠陥部、 5…ブラックライト(紫外線照射部)、 6…CCDカメラ(撮像装置)、 7,7A…パーソナルコンピュータ(測定部)、 7a…表示部、 7b,7bA…処理部、 8…メモリ(記憶部)、 10…磁粉液槽、 34・・・ギャップ、 71,71A…輝度値演算部、 72,72A…磁粉濃度変換部、 75…長さ測定部、 81…輝度値−磁粉濃度変換データ、 81A…長さ−磁粉濃度変換データ、 100…磁粉濃度測定装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼材、鉄鋼部品等の被検査物の欠陥を磁粉探傷するための蛍光磁粉液中に分散する蛍光磁粉の濃度を測定するようにした磁粉濃度測定装置及び磁粉濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、鉄鋼材、鉄鋼部品等の被検査物の傷等の欠陥を検査するために、湿式蛍光磁粉探傷試験法が使用されている。
【0003】
湿式蛍光磁粉探傷試験法は、被検査物を磁化し、欠陥部に生じた磁極によって、磁粉が欠陥部に付着することを利用して、欠陥部を検出する探傷試験法である。
【0004】
この湿式蛍光磁粉探傷試験法は、次のようにして被検査物の欠陥部を検出する。まず、鉄鋼材、鉄鋼部品等の被検査物を磁化する。すると、被検査物の欠陥部は、漏洩磁束が発生して、磁極を有する。次に、この磁化された被検査物に蛍光磁粉液を散布する。これにより、蛍光磁粉液中に分散する蛍光磁粉は、磁極によって被検査物の欠陥部に付着する。そして、暗室内で、蛍光磁粉液を散布した被検査物に、紫外線光を照射して、蛍光磁粉を発光させる。その結果、欠陥部に付着した蛍光磁粉が発光することにより被検査物の欠陥部を目視で検出することができる。この湿式蛍光磁粉探傷試験法は、蛍光輝度が高いため微細な欠陥でも容易に発見できるという効果を有している。
【0005】
この蛍光磁粉液は、2〜10μm程度の蛍光磁粉(蛍光体が付着された鉄粉)と、水又は白灯油と、所定量の分散剤とからなるものである。
【0006】
また、蛍光磁粉液における蛍光磁粉の分散濃度(磁粉濃度)は、被検査物の欠陥部における蛍光輝度の目視検出の正確性、即ち、被検査物から得られる蛍光輝度模様及びそれから得られる情報を左右する大きな要素である。
【0007】
従来の磁粉液(蛍光磁粉液)の磁粉濃度測定方法としては、次のような方法がある。この従来の磁粉濃度測定方法は、まず、磁粉を分散した磁粉液をよく撹拌する。次に、この磁粉液の規定量(100ml)を沈殿管に採取し、この沈殿管をスタンドに立てかける。そして、30分間経過後、この沈殿管の底部に沈殿した磁粉の量を目視で測定する。
【0008】
また、磁粉液の磁粉濃度測定方法の他の例としては、特許文献1に記載されているようなものがある。この特許文献1に記載されている磁粉濃度の測定方法は、次のようにして行われる。まず、予め標準試験片に、磁粉濃度が既知である数種の磁粉液を適用して、数種の比較用の磁粉模様を形成させる。次に、この標準試験片に、測定する磁粉液、即ち、磁粉濃度が未知である磁粉液を適用して、測定用の磁粉模様を形成させる。そして、数種の比較用の磁粉模様と測定用の磁粉模様を目視で比較して、磁粉濃度が未知である磁粉液の磁粉濃度を測定する。
【0009】
【特許文献1】特開平7−113787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の磁粉濃度測定方法では、蛍光磁粉の粒径が2〜10μm程度の場合、蛍光磁粉液を注入した沈殿管をスタンドに立てかけて30分間経過しても、蛍光磁粉が軽いため、分散させた蛍光磁粉の一部しか沈殿管の底部に沈殿しなかった。そのため、従来の磁粉濃度測定方法では、蛍光磁粉量を正確に測定することができない、という問題があった。更に、磁粉濃度の測定に時間がかかりすぎる、という不都合があった。
【0011】
また、特許文献1に開示された方法は、目視による測定であるため、検査する人によって差が生じていた。その結果、特許文献1に開示された磁粉濃度測定方法では、正確な磁粉濃度の測定は困難であった。
【0012】
本発明は、上述の問題点を考慮し、蛍光磁粉液の磁粉濃度を、瞬時に定量的に確認できると共に評価することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の磁粉濃度測定装置は、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が磁極により付着する疑似欠陥部を一面に有する標準試験体を備えた。更に、蛍光磁粉が付着した標準試験体に紫外線光を照射し、蛍光磁粉を発光させる紫外線照射部と、紫外線が照射された標準試験体を撮影し、画像信号を得る撮像装置と、を備えた。そして、この画像信号から発光した蛍光磁粉の輝度値を演算すると共に輝度値を磁粉濃度に変換する処理部と、を備えた。
【0014】
また、本発明の磁粉濃度測定方法は、標準試験体の一面に設けた疑似欠陥部に蛍光磁粉液の蛍光磁粉を磁極により付着させる工程と、を有する。次に、蛍光磁粉が付着した標準試験体に紫外線光を照射し、蛍光磁粉を発光させる工程と、紫外線光が照射された標準試験体を撮影し、画像信号を得る工程と、を有する。そして、この画像信号から発光した蛍光磁粉の輝度値を演算すると共に演算した輝度値を磁粉濃度に変換する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蛍光磁粉液の蛍光磁粉を発光させて、画像信号を得ると共にこの画像信号から輝度値を演算している。そして、この輝度値を磁粉濃度に変換することにより、蛍光磁粉液の磁粉濃度を、瞬時に定量的に確認することができる。更に、検査する人によって差が生じることがなく、正確な蛍光磁粉の濃度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の磁粉濃度測定装置及び磁粉濃度測定方法を実施するための実施形態の例(以下、「本例」という。)について説明する。
【0017】
1.磁粉濃度測定装置の構成
まず、図1〜図3を参照して本例における磁粉濃度測定装置について説明する。図1は、本例における磁粉濃度測定装置の構成を示すものである。図2は、本発明の磁粉濃度測定装置に係る標準試験体の第1の実施の形態例を示す斜視図である。図3は、本例における磁粉濃度測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【0018】
この図1に示すように、磁粉濃度測定装置100は、暗室1内の所定の位置に配置された標準試験体2と、紫外線照射部であるブラックライト5と、CCDカメラ6と、測定部の一具体例を示すパーソナルコンピュータ7と、メモリ8とから構成されている。
【0019】
[標準試験体]
図2に示すように、標準試験体2は、略円筒形の外筐2aと、磁石3と、略円形状の鉄板4とを有している。外筐2aは、略円筒形に形成されており、軸方向の一端が開放され、軸方向の他端が閉じている。この外筐2aは、例えば合成樹脂によって形成される。そして、この外筐2aの内部に磁石3が収納されている。更に、外筐2aの開口部を閉じるように、略円形状の鉄板4が取り付けられている。この鉄板4の一面には、例えば円形状に形成された疑似欠陥部4aが配設されている。疑似欠陥部4aには、グラインダがけや応力腐食によって意図的に欠陥部が形成されている。そして、この疑似欠陥部4aは、外筐2a内に収納された磁石3によって磁化されている。
【0020】
なお、本例では、標準試験体2の形状を略円柱状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、標準試験体2を角柱状に形成し、鉄板4を略四角形状に形成してもよい。
【0021】
[紫外線照射部及び撮像装置]
また、図1に示すように、暗室1内において、標準試験体2の上方には、本発明の紫外線照射部を示すブラックライト5と本発明の撮像装置の一具体例を示すCCDカメラ6が設けられている。ブラックライト5は、暗室1内で標準試験体2に設けた鉄板4の一面(疑似欠陥部4a)に紫外線光を照射するものである。また、CCDカメラ6は、ブラックライト5によって紫外線光が照射された疑似欠陥部4aを撮影し、画像信号を得るものである。そして、CCDカメラ6は、パーソナルコンピュータ7に接続されており、撮影した画像信号をパーソナルコンピュータ7に供給している。なお、撮像装置には、CCDカメラだけでなく、COMSカメラ等を適用してもよいことは、言うまでもない。
【0022】
[測定部]
図3に示すように、パーソナルコンピュータ7は、表示部7aと、処理部7bとを有している。処理部7bは、輝度値演算部71と、磁粉濃度変換部72等から構成されている。輝度値演算部71は、CCDカメラ6で撮影した画像信号から輝度値を演算する処理を行う。そして、この輝度値演算部71は、磁粉濃度変換部72に接続されている。磁粉濃度変換部72は、輝度値演算部71で演算した輝度値から磁粉濃度を変換する処理を行う。そして、輝度値演算部71及び磁粉濃度変換部72は、表示部7aに接続されている。
【0023】
表示部7aには、CCDカメラ6で撮影した標準試験体2の画像、輝度値演算部71で演算された輝度値及び磁粉濃度変換部72で変換された磁粉濃度等が表示される。更に、このパーソナルコンピュータ7は、本発明の記憶部の一具体例を示すメモリ8と送受信可能に接続されている。また、パーソナルコンピュータ7は、キーボードやマウス等の入力部を有している。そして、この入力部から、蛍光磁粉の種類、標準試験体の種類や後述する輝度値−磁粉濃度変換データ81を作成するための既知の蛍光磁粉の濃度等のデータが入力される。
【0024】
[記憶部]
メモリ8には、磁粉濃度と輝度値との関係を示す輝度値−磁粉濃度変換データ81が記憶されている。そして、このメモリ8に記憶されている輝度値−磁粉濃度変換データ81に基づいて、パーソナルコンピュータ7の磁粉濃度変換部72が、輝度値を磁粉濃度に変換することで、蛍光磁粉液の磁粉濃度が測定される。
【0025】
なお、パーソナルコンピュータ7とメモリ8は、例えば、公衆通信回線、専用回線、インターネット等のネットワークを介して接続してもよい。
【0026】
2.輝度値−磁粉濃度変換データの作成方法
次に、メモリ8に格納された輝度値−磁粉濃度変換データの作成方法について説明する。なお、ここでは、蛍光磁粉としてマーテック(株)製のLY−10を用いた例を説明する。このLY−10は、粒度が3〜7μmであり、水分散専用のものである。
まず、濃度の異なる既知の磁粉濃度の蛍光磁粉液10aを複数用意する。本例では、磁粉濃度が0.1g/l、0.2g/l、0.3g/l、0.4g/l、0.5g/l、1g/l、1.5g/lの蛍光磁粉液を用意する。
【0027】
図4は、標準試験体を蛍光磁粉液に浸漬させた状態を示す図である。次に、この図4に示すように、これらの蛍光磁粉液10aを、それぞれ磁粉液槽10に注入する。そして、蛍光磁粉液10aが注入された磁粉液槽10内に、標準試験体2を一定時間浸漬する。ここで、標準試験体2に設けた疑似欠陥部4aは、磁石3により磁化されている。そのため、疑似欠陥部4aには、磁極が生じている。これにより、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が、標準試験体2の疑似欠陥部4aに生じた磁極によって、疑似欠陥部4aに付着する。なお、蛍光磁粉液を標準試験体2の鉄板4の一面に塗布することで、蛍光磁粉液の蛍光磁粉を疑似欠陥部4aに付着させてもよい。
【0028】
次に、図1に示すように、蛍光磁粉が付着した標準試験体2を暗室1内の所定の位置に配置する。そして、ブラックライト5を用いて標準試験体2の疑似欠陥部4aに紫外線光を照射する。これにより、疑似欠陥部4aに付着した蛍光磁粉が発光する。次に、紫外線光が照射された疑似欠陥部4aをCCDカメラ6で撮影する。そして、CCDカメラ6で撮影した画像信号をパーソナルコンピュータ7に供給する。
【0029】
次に、パーソナルコンピュータ7の処理部7bは、輝度値演算部71によって画像信号から輝度値を得る。即ち、輝度値演算部71は、まず疑似欠陥部4aに付着して発光している蛍光磁粉における各場所の明暗(輝度値)を測定して実測輝度値を得る。そして、この実測輝度値から平均輝度値を演算し、この平均輝度値を輝度値とする。本例では、蛍光磁粉液の磁粉濃度毎に、0.1g/lでは「12」、0.2g/lでは「18」、0.3g/lでは「23」、0.4g/lでは「28」、0.5g/l「35」、1g/l「47」、1.5g/lでは「47」という輝度値を得る。
【0030】
そして、図5は、上述した方法で得られた輝度値と磁粉濃度との関係を示すグラフである。この図5に示すように、蛍光磁粉液の磁粉濃度が高くなる程、疑似欠陥部4aに付着する蛍光磁粉の量が多くなり、輝度値(発光輝度値)が高くなることが分かる。
【0031】
これにより、磁粉濃度と輝度値との関係を示す輝度値−磁粉濃度変換データ81を作成することができる。そして、図3に示すように、輝度値演算部71で演算された輝度値は、図示しない入力部から入力された既知の磁粉濃度と共に輝度値−磁粉濃度変換データ81としてメモリ8に記憶される。
【0032】
3.磁粉濃度測定方法
次に、図1、図3及び図6を参照して未知の蛍光磁粉液の磁粉濃度の測定方法について説明する。図6は、磁粉濃度の測定方法を示すフローチャートである。なお、ここで測定する蛍光磁粉液の蛍光磁粉は、上述した輝度値−磁粉濃度変換データ81を作成する際に用いた蛍光磁粉と同一のLY−10を用いている。
【0033】
まず、図4に示すように、磁粉濃度が未知の蛍光磁粉液を磁粉液槽10に注入する。次に、蛍光磁粉液が注入された磁粉液槽10内に標準試験体2を一定時間浸漬する。この結果、上述した輝度値−磁粉濃度変換データの作成方法の場合と同様に、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が、標準試験体2の疑似欠陥部4aに生じた磁極によって、疑似欠陥部4aに付着する(ステップS1)。なお、なお、蛍光磁粉液を標準試験体2の疑似欠陥部4aに塗布することで、蛍光磁粉液の蛍光磁粉を疑似欠陥部4aに付着させてもよい。
【0034】
次に、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が付着した標準試験体2を暗室1内における所定の位置に配置する。そして、標準試験体2にブラックライト5を用いて紫外線光を照射する(ステップS2)。すると、疑似欠陥部4aに付着した蛍光磁粉が発光する。ここで、ブラックライト5の紫外線照射強度が変化すると、蛍光磁粉の発光の明るさである輝度値も変化する。そのため、ブラックライト5の照射強度を、上述した輝度値−磁粉濃度変換データ81を作成する際の照射強度と一定にすることが好ましい。次に、紫外線光が照射された疑似欠陥部4aをCCDカメラ6で撮影する(ステップS3)。そして、CCDカメラ6で撮影した画像信号は、パーソナルコンピュータ7に供給される。
【0035】
次に、パーソナルコンピュータ7の処理部7bは、輝度値演算部71によって画像信号から輝度値を演算する(ステップS4)。そして、パーソナルコンピュータ7の処理部7bは、磁粉濃度変換部72により、得られた輝度値を磁粉濃度に変換する(ステップS5)。即ち、処理部7bは、メモリ8に記憶された輝度値−磁粉濃度変換データ81を呼び出す。そして、処理部7bは、磁粉濃度変換部72により、輝度値を輝度値−磁粉濃度変換データ81と照合して、蛍光磁粉液の磁粉濃度に変換する。これにより、磁粉濃度が未知である蛍光磁粉液の磁粉濃度の測定が完了する。
【0036】
また、図7は、表示部7aに表示される画面の例を示すものである。この図7に示すように、パーソナルコンピュータ7の表示部7aには、CCDカメラ6で撮影した標準試験体2の画像73、輝度値演算部71で演算された輝度値及び磁粉濃度変換部72で変換された磁粉濃度74等が表示される。
【0037】
これにより、本発明の磁粉濃度測定方法によれば、輝度値−濃度変換データと照合することで、蛍光磁粉液の濃度を輝度値から、定量的に測定することができる。そのため、検査する人によって差が生じることがなく、正確で且つ瞬時に磁粉濃度を測定することができる。
【0038】
図8は、種類の異なる複数の蛍光磁粉における輝度値と磁粉濃度との関係を示すグラフである。
図8に示す曲線bは、蛍光磁粉にマーテック(株)製のLY−20Pを用いた場合を示す輝度値と磁粉濃度の関係を示すグラフである。このLY−20Pは、粒度が3〜7μmであり、高輝度の水分散専用である。図8に示す曲線cは、蛍光磁粉にマーテック(株)製のLY−50を用いた場合を示す輝度値と磁粉濃度の関係を示すグラフである。このLY−50は、粒度がLY−20Pと同様に3〜7μmであり、一般用汎用品の油分散専用である。
【0039】
また、図8に示す曲線dは、蛍光磁粉にマーテック(株)製のLY−30を用いた場合を示す輝度値と磁粉濃度の関係を示すグラフである。このLY−30は、粒度が1〜4μmであり、超精密検査用である。なお、図8に示す曲線aは、図5に示すグラフと同一のものであり、蛍光磁粉としてマーテック(株)製のLY−10を用いた場合を示すものである。
【0040】
図8に示す複数の蛍光磁粉における輝度値と磁粉濃度の関係を示すデータは、輝度値−磁粉濃度変換データ81としてメモリ8に記憶される。このように、複数の異なる蛍光磁粉の輝度値−磁粉濃度変換データ81をそれぞれメモリ8に記憶する。この場合、磁粉濃度を測定する前に、測定する蛍光磁粉の種類を入力部でパーソナルコンピュータ7に入力する。そして、処理部7bは、メモリ8から入力された蛍光磁粉と同一の蛍光磁粉の輝度値−磁粉濃度変換データを呼び出し、輝度値を磁粉濃度に変換する。その結果、一種類の蛍光磁粉だけでなく、複数の異なる種類の蛍光磁粉液の磁粉濃度を測定することができる。
【0041】
4.第2の実施の形態例
図9及び図10は、標準試験体の第2の実施の形態例を示すものである。図9は、標準試験体の第2の実施の形態例を示す斜視図、図10は、標準試験体の第2の実施の形態例を示す平面図である。
【0042】
この図9及び図10に示す標準試験体は、JIS規格で定められたものであり、具体的には、JIS Z 2320−2で定められたタイプ1の試験体である。図9及び図10に示すように、標準試験体20は、略円盤状に形成されており、略中央に貫通孔21を有している。標準試験体20は、疑似欠陥部である一面に2種類の割れを有している。そして、欠陥部として作用する2種類の割れ24a,24bのうち比較的粗い割れ24aは、グラインダがけにより形成されている。また、2種類の割れ24a,24bのうち微細な割れ24bは、応力腐食によって形成されている。この2種類の割れ24a,24bが設けられた標準試験体20の一面に、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が付着する。
【0043】
また、標準試験体20は、電流貫通法によって永久的に磁化されている。これにより、磁石を別途用意する手間が省けるため、上述した第1の実施の形態例に係る標準試験体2に比べて部品点数を削減することができる。
【0044】
なお、標準試験体20は、例えば、次のようにして形成される。まず、鋼(等級 90MnCrV8)を用いて、表面が9.80mm±0.05mmになるまで平らにグラインダをかける。そして、グラインダをかけた鋼を、860℃±10℃で2時間保持した後、由中で焼き入れを行い、表面硬さが63〜70HRCになるようにする。更に、焼き入れ処理を行った鋼の表面を、例えば、速度35m/sで、且つ表面当たり0.05mmの削り代で、20mmを目標にしてグラインダをかける。そして、黒色酸化を145℃〜150℃で1.5時間処理を行う。更に、電流貫通法によってDC10000A(波高値)で磁化する。これにより、標準試験体20の製造が完成される。
【0045】
また、輝度値−磁粉濃度変換データの作成方法及び蛍光磁粉液の濃度の測定方法は、上述した第1の実施の形態例に係る標準試験体2と同様であるため、その説明は省略する。更に、このような、構成を有する標準試験体20を用いても、前述した第1の実施の形態例にかかる標準試験体2を用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
図11は、第2の標準試験体に付着した磁粉濃度が発光した状態を撮像装置で撮影した画像を示す図である。図11Aは、磁粉濃度が0.1g/l、図11Bは磁粉濃度が0.3g/l、図11Cは磁粉濃度が0.5g/l、図11Dは磁粉濃度が1g/l、図11Eは磁粉濃度が1.5g/lにおける蛍光磁粉液が発光した状態をCCDカメラ6で撮影した画像である。この図11A〜図11Eに示すように、蛍光磁粉の濃度が濃くなるほど、標準試験体20の欠陥部の明るさが明るくなることがわかる。
【0047】
5.第3の実施の形態例
次に、図12〜図14を参照して第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いた場合を説明する。
図12は、標準試験体の第3の実施の形態例を示すものである。また、図13は、第3の標準試験体に付着した蛍光磁粉が発光した状態を撮像装置で撮影した画像を示す図である。図14は、第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いたい場合における磁粉濃度測定装置の概略構成を示すブロック図である。図15は、第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いたい場合における磁粉濃度の測定方法を示すフローチャートである。
【0048】
この図12に示す第3の標準試験体30は、上述した第2の実施の形態例に係る標準試験体20と同様にJIS規格で定められたものであり、具体的には、JIS Z 2320−2で定められたタイプ2の試験体である。第3の標準試験体30は、略直方体状に形成されている。この第3の標準試験体30の長手方向の両端には、磁石33がそれぞれ設けられている。そして、第3の標準試験体30の疑似欠陥部として作用する一面には、欠陥部であるギャップ34と、目盛35が設けられている。
【0049】
ギャップ34は、第3の標準試験体30の一面の長手方向に沿って一直線状に形成された溝である。このギャップ34は、第3の標準試験体30の一面における2つの磁石33,33で挟んだ間に設けられている。そして、このギャップ34に、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が、ギャップ34の両端から付着し始め、中心に向かって蛍光磁粉の付着の量が減少する。
【0050】
ここで、図13Aは、磁粉濃度が0.1g/l、図13Bは磁粉濃度が0.3g/l、図13Cは磁粉濃度が0.5g/l、図13Dは磁粉濃度が1g/l、図13Eは磁粉濃度が1.5g/lにおける蛍光磁粉液が発光した状態をCCDカメラ6で撮影した画像である。この図13に示すように、蛍光磁粉の濃度が濃くなるほど、ギャップ34に付着した蛍光磁粉の長さが長くなることがわかる。
【0051】
図14に示すように、第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いたい場合におけるパーソナルコンピュータ7Aの処理部7bAは、輝度値演算部71Aと、長さ測定部75Aと、磁粉濃度変換部72Aを有している。長さ測定部75Aは、輝度値演算部71Aで演算された輝度値に基づいてギャップ34に付着した蛍光磁粉の長さを測定する処理を行う。具体的には、予め輝度値(明暗)に閾値を設定し、この閾値よりも連続して明るいところを検出する。そして、ギャップ34の一端から蛍光磁粉が途切れたところ(閾値よりも暗いところ)までの長さを測定する。磁粉濃度変換部72Aは、長さ測定部75Aで側愛知した長さから磁粉濃度を変換する処理を行う。
【0052】
また、メモリ8Aには、磁粉濃度と長さの関係を示す長さ−磁粉濃度変換データ81Aが記憶されている。そして、このメモリ8Aに記憶されている長さ−磁粉濃度変換データ81Aに基づいて、パーソナルコンピュータ7Aの磁粉濃度変換部72Aが、長さを磁粉濃度に変換することで、蛍光磁粉液の磁粉濃度が測定される。
【0053】
次に、図14及び図15を参照して、この第3の標準試験体30を用いたい場合における磁粉濃度の測定方法を説明する。
【0054】
まず、標準試験体30の一面に蛍光磁粉液を塗布し、ギャップ(疑似欠陥部)34に蛍光磁粉を付着させる(ステップS1A)。このとき、標準試験体30の目盛35が設けられている面が垂直になるように、標準試験体30を水平面から所定の角度(例えば、約45度)の方向に傾斜して設置する。そして、傾斜した状態で、標準試験体30に蛍光磁粉液を塗布する。これにより、余分な蛍光磁粉液は、標準試験体30の一面から流れ落ちる。
【0055】
ここで、標準試験体30の傾斜角度は、長さ−磁粉濃度変換データ81Aを作成する時と同一の角度に設定する。なお、上述した第1及び第2の標準試験体2,20においても、余分な蛍光磁粉液を取り除くために、標準試験体の一面を水平面に対して傾斜して配置してもよいことは、言うまでもない。
【0056】
次に、蛍光磁粉液の蛍光磁粉が付着した標準試験体30を暗室1内における所定の位置に配置する。そして、標準試験体30にブラックライト5を用いて紫外線光を照射する(ステップS2A)。すると、ギャップ34に付着した蛍光磁粉が発光する。次に、紫外線光が照射されたギャップ34をCCDカメラ6で撮影する(ステップS3A)。そして、CCDカメラ6で撮影した画像信号は、パーソナルコンピュータ7Aに供給される。
【0057】
次に、パーソナルコンピュータ7Aの処理部7bAは、輝度値演算部71Aによって画像信号から輝度値を演算する(ステップS4A)。そして、パーソナルコンピュータ7の処理部7bは、長さ測定部75Aにより、輝度値から蛍光磁粉の長さを測定する(ステップS5A)。
【0058】
次に、パーソナルコンピュータ7Aの処理部7bAは、磁粉濃度変換部72Aにより、測定した長さを磁粉濃度に変換する(ステップS6A)。即ち、処理部7bAは、メモリ8Aに記憶された長さ−磁粉濃度変換データ81Aを呼び出す。そして、処理部7bAは、磁粉濃度変換部72Aにより、長さを長さ−磁粉濃度変換データ81Aと照合して、蛍光磁粉液の磁粉濃度に変換する。これにより、磁粉濃度が未知である蛍光磁粉液の磁粉濃度の測定が完了する。
【0059】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる標準試験体2を用いた場合と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する標準試験体30を用いた場合によっても、前述した第1の実施の形態例にかかる標準試験体30を用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
本発明の磁粉濃度測定装置及び磁粉濃度測定方法によれば、予め輝度値又は試験体に付着した蛍光磁粉の長さと磁粉濃度との関係を示すデータを測定することで、磁粉濃度を輝度値から定量的に測定することができる。これにより、検査する人によって差が生じることがなく、正確で且つ素早く磁粉濃度を測定することが可能である。
【0061】
なお、本発明は前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0062】
なお、上述した実施の形態例では、紫外線照射部であるブラックライトの紫外線照射強度を一定に管理する例を説明した。しかしながら、ブラックライトは、使用を続けることで、紫外線照射強度が劣化する。そのため、ブラックライトが劣化した場合は、紫外線照射強度を一定に保つために、光源を交換できるようにしてもよい。また、磁粉濃度の測定の前にブラックライトの紫外線照射強度を測定する。そして、処理部において、紫外線照射強度の劣化に応じて蛍光磁粉の輝度値を演算するようにしてもよい、ことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態例に係る磁粉濃度測定装置の構成を示すものである。
【図2】本発明の磁粉濃度測定装置に係る標準試験体の第1の実施の形態例を示す斜視図である。
【図3】本発明の磁粉濃度測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】標準試験体を蛍光磁粉液に浸漬させた状態を示す図である。
【図5】輝度値と磁粉濃度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の磁粉濃度測定方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の磁粉濃度測定装置に係る測定部における表示部に表示される画面の一具体例を示すものである。
【図8】種類の異なる複数の蛍光磁粉における輝度値と磁粉濃度との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の磁粉濃度測定装置に係る標準試験体の第2の実施の形態例を示す斜視図である。
【図10】本発明の磁粉濃度測定装置に係る標準試験体の第2の実施の形態例を示す平面図である。
【図11】第2の標準試験体に付着した蛍光磁粉が発光した状態を撮像装置で撮影した画像を示す図である。
【図12】本発明の磁粉濃度測定装置に係る標準試験体の第3の実施の形態例を示す斜視図である。
【図13】第2の標準試験体に付着した蛍光磁粉が発光した状態を撮像装置で撮影した画像を示す図である。
【図14】第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いたい場合における磁粉濃度測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図15】第3の実施の形態例に係る標準試験体を用いたい場合における磁粉濃度の測定方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1…暗室、 2,20,30…標準試験体、 3,33…磁石、 4a…疑似欠陥部、 5…ブラックライト(紫外線照射部)、 6…CCDカメラ(撮像装置)、 7,7A…パーソナルコンピュータ(測定部)、 7a…表示部、 7b,7bA…処理部、 8…メモリ(記憶部)、 10…磁粉液槽、 34・・・ギャップ、 71,71A…輝度値演算部、 72,72A…磁粉濃度変換部、 75…長さ測定部、 81…輝度値−磁粉濃度変換データ、 81A…長さ−磁粉濃度変換データ、 100…磁粉濃度測定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光磁粉液の蛍光磁粉が磁極により付着する疑似欠陥部を一面に有する標準試験体と、
前記蛍光磁粉が付着した前記標準試験体に紫外線光を照射し、前記蛍光磁粉を発光させる紫外線照射部と、
紫外線が照射された前記標準試験体を撮影し、画像信号を得る撮像装置と、
前記画像信号から発光した前記蛍光磁粉の輝度値を演算すると共に前記輝度値を磁粉濃度に変換する処理部と、
を備えたことを特徴とする磁粉濃度測定装置。
【請求項2】
前記処理部と送受信可能に接続され、且つ磁粉濃度と輝度値との関係を示すデータが記憶された記憶部を有し、
前記処理部は、前記記憶部に記憶された前記データに基づいて、前記輝度値を磁粉濃度に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁粉濃度測定装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記輝度値から前記疑似欠陥部に付着している前記蛍光磁粉の長さを測定すると共に前記蛍光磁粉の長さを磁粉濃度に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁粉濃度測定装置。
【請求項4】
前記標準試験体、前記紫外線照射部及び前記撮像装置が配置される暗室を有し、
前記暗室内で前記標準試験体に紫外線光を照射し、且つ前記標準試験体を撮影する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁粉濃度測定装置。
【請求項5】
前記標準試験体は、JIS規格のJIS Z 2320−2で定められた試験体である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁粉濃度測定装置。
【請求項6】
測定した前記磁粉濃度を表示する表示部を有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁粉濃度測定装置。
【請求項7】
標準試験体の一面に設けた疑似欠陥部に蛍光磁粉液の蛍光磁粉を磁極により付着させる工程と、
前記蛍光磁粉が付着した前記標準試験体に紫外線光を照射し、前記蛍光磁粉を発光させる工程と、
前記紫外線光が照射された前記標準試験体を撮影し、画像信号を得る工程と、
前記画像信号から発光した前記蛍光磁粉の輝度値を演算すると共に演算した前記輝度値を磁粉濃度に変換する工程と、
を有することを特徴とする磁粉濃度測定方法。
【請求項1】
蛍光磁粉液の蛍光磁粉が磁極により付着する疑似欠陥部を一面に有する標準試験体と、
前記蛍光磁粉が付着した前記標準試験体に紫外線光を照射し、前記蛍光磁粉を発光させる紫外線照射部と、
紫外線が照射された前記標準試験体を撮影し、画像信号を得る撮像装置と、
前記画像信号から発光した前記蛍光磁粉の輝度値を演算すると共に前記輝度値を磁粉濃度に変換する処理部と、
を備えたことを特徴とする磁粉濃度測定装置。
【請求項2】
前記処理部と送受信可能に接続され、且つ磁粉濃度と輝度値との関係を示すデータが記憶された記憶部を有し、
前記処理部は、前記記憶部に記憶された前記データに基づいて、前記輝度値を磁粉濃度に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁粉濃度測定装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記輝度値から前記疑似欠陥部に付着している前記蛍光磁粉の長さを測定すると共に前記蛍光磁粉の長さを磁粉濃度に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁粉濃度測定装置。
【請求項4】
前記標準試験体、前記紫外線照射部及び前記撮像装置が配置される暗室を有し、
前記暗室内で前記標準試験体に紫外線光を照射し、且つ前記標準試験体を撮影する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁粉濃度測定装置。
【請求項5】
前記標準試験体は、JIS規格のJIS Z 2320−2で定められた試験体である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁粉濃度測定装置。
【請求項6】
測定した前記磁粉濃度を表示する表示部を有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁粉濃度測定装置。
【請求項7】
標準試験体の一面に設けた疑似欠陥部に蛍光磁粉液の蛍光磁粉を磁極により付着させる工程と、
前記蛍光磁粉が付着した前記標準試験体に紫外線光を照射し、前記蛍光磁粉を発光させる工程と、
前記紫外線光が照射された前記標準試験体を撮影し、画像信号を得る工程と、
前記画像信号から発光した前記蛍光磁粉の輝度値を演算すると共に演算した前記輝度値を磁粉濃度に変換する工程と、
を有することを特徴とする磁粉濃度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図11】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図11】
【図13】
【公開番号】特開2009−75098(P2009−75098A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220263(P2008−220263)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年6月29日 社団法人 日本非破壊検査協会主催の「表面探傷分科会」に文書をもって発表
【出願人】(591027042)日本電磁測器株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年6月29日 社団法人 日本非破壊検査協会主催の「表面探傷分科会」に文書をもって発表
【出願人】(591027042)日本電磁測器株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
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